JP4992173B2 - アントラセンジエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アントラセンジエーテルの製造方法に関する。さらに詳しくは、紫外線などのエネルギー線を光源とする光硬化性組成物の増感剤として有用なジアルコキシアントラセン、特に、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジフェノキシアントラセンのようなジアリールオキシアントラセンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、9,10−ジアルコキシアントラセンの製造方法としては、例えば、U.Seitzet et al., Synthesis, 686-688(1986)に記載されているように、アントラセンジオン化合物を還元アルキル化させる製造方法が知られている。この刊行物に記載の方法は水と塩化メチレンとを混合した二相溶媒系で、還元剤としてハイドロサルファイトを、アルキル化剤としてヨウ化メチルを用いる方法である。しかしながら、この刊行物に記載の方法によると、溶媒の塩化メチレンによる環境汚染の懸念があり、さらには高価なアルキル化剤を用いるなど、工業的に有利な方法であるとは言い難い。
【0003】
さらに、特開2000−119208号公報に、アントラセンジオン化合物を、アルコール媒体中で、還元剤としてハイドロサルファイト、アルキル化剤としてジエチル硫酸を用いて還元アルキル化する方法が記載されている。しかしながら、本発明者らの実験によれば、この刊行物に記載の方法によってジプロポキシアントラセンを合成する際、アルキル化剤としてプロピル硫酸又は、臭化プロピルを使用すると、副生物が多く、目的物のジプロポキシアントラセンを得ることができなかった。また、アルキル化剤として臭化ブチルを使用した場合にも、ジブトキシアントラセンを得ることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる状況にあって、ジアルコキシアントラセン、特に9,10−ジプロポキシアントラセンや9,10−ジブトキシアントラセンなどのアントラセンジエーテルを、工業的に有効に製造する方法を提供することを目的として鋭意検討の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、アルカリ性作用剤を含有する水性媒体中の9,10−アントラセンジオール化合物と、エーテル化剤を反応させるにあたり、第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物の存在下で反応を行うことを特徴とする下式(1)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、Rはアルキル基、アリル基、アリール基、ベンジル基、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R5及びR6はエーテル化に対して不活性な置換基であり、m及びnは0〜4の整数を表す。)で表されるアントラセンジエーテルの製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る製造方法では、アルカリ性作用剤を含有する水性媒体中の9,10−アントラセンジオール化合物を原料とする。9,10−アントラセンジオール化合物は、下式(2)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、R5及びR6はエーテル化に対して不活性な置換基であり、m及びnは0〜4の整数を表す。)で表され、対応する9,10−アントラセンジオン化合物を還元することによって得られる。
【0011】
置換基R5 及びR6 は、本発明方法のエーテル化反応に対して不活性な置換基であり、具体的には、炭素数が1〜3のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基などが挙げられる。m及びnは芳香環に結合するこれらの置換基の数を表し、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数である。
【0012】
アルカリ性作用剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられ、9,10−アントラセンジオール化合物に対し、好ましくは2モル倍以上、さらに好ましくは、2.2〜3モル倍用いる。水性媒体とは、水の他、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール又はこれら低級アルコールと水との混合媒体を意味する。
【0013】
アルカリ性作用剤を含有する水性媒体中、9,10−アントラセンジオール化合物は、下式(3)
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、R5及びR6はエーテル化に対して不活性な置換基であり、Mはアルカリ金属であり、m及びnは0〜4の整数を表す。)で表される9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩として溶解している。9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩の溶解度は、置換基の種類により異なるが、水溶液の場合、おおむね5〜30重量%の濃度の溶液が選られる。
【0016】
9,10−アントラセンジオン化合物を還元する方法としては、(1)アルコールなどの溶媒中で、水素化触媒の存在化に水素還元する方法、(2)水性媒体中ハイドロサルファイトを用いて還元する方法、などが挙げられる。上記(2)の方法では、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物の存在下に還元することによって、そのまま9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩を得ることができるので好ましい。さらには、(3)9,10−アントラセンジオンを、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのアルカリ性化合物の溶液で還元し、アントラセンジオールのアルカリ塩を製造する方法(特開平9−16982号公報参照)、などが挙げられる。この(3)の方法によれば、還元に使用した1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンがアントラセンジオールとなるので、使用後の還元剤を除去する必要がなく、特に好ましい。
【0017】
本発明において、エーテル化剤としては、以下に記載するアルキル化剤、アリール化剤、アリル化剤などが挙げられる。すなわち、アルキル化剤としては、硫酸ジエチル、硫酸ジプロピルなどの硫酸ジアルキル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチルなどのハロゲン化アルキルなどが挙げられる。アリール化剤としては、ブロモベンゼン、クロルベンゼン、p−クロルトルエン、p−ブロモトルエン、m−ブロモトルエン、m−クロルトルエン、α―クロルナフタリン、α―ブロモナフタリン、β―クロルナフタリン、β―ブロモナフタリンなどのハロゲン化アリールが挙げられる。また、アリル化剤としては、臭化アリル、塩化アリル、塩化メタリルなどのハロゲン化アリルが挙げられる。その他エーテル化剤としては、ヒドロキシエチル化には、2−ブロモエタノール、メトキシエチル化には2−ブロモエチルメチルエーテルが挙げられる。
【0018】
これらエーテル化剤のうち、反応性等の面から好ましくは、硫酸ジアルキル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アリルが挙げられ、特に好ましくは臭化プロピルや臭化ブチル等のハロゲン化アルキルが挙げられる。これらエーテル化剤は、原料の9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩に対し、2モル倍以上とするのが好ましく、なかでも2〜5モル倍の範囲とするのが望ましい。2モル倍よりも少ないと未反応が増加し、5モル倍より過剰の場合、副反応が増加するので好ましくない。
【0019】
本発明においては、上記エーテル化剤を有機溶媒に溶解して反応に用いることもできる。この場合の有機溶媒としては、エーテル化剤を安定に溶解することのできる溶媒であればいずれも使用できるが、特に極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、非プロトン性極性溶媒又はプロトン性極性溶媒が挙げられるが、非プロトン性極性溶媒がより好ましい。
【0020】
非プロトン性極性溶媒としては、次のものが挙げられる。すなわち、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N―ジエチルホルムアミド、N,N―ジプロピルホルムアミド、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N―ジエチルアセトアミド、N,N―ジプロピルアセトアミド、N,N―ジメチルプロピオン酸アミド等のC1〜C3―カルボン酸のN,N―ジ−C1〜C2―アルキルアミド類、N−メチルピロリドン等の環状のN−アルキルカルボン酸アミド類、N−ホルミルホリン、N−ホルミルピペリジン等の環状のN−ホルミル化合物、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド類、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド等のスルホキシド類、テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トリオキサン等の環状エーテル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のアセタール類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。
【0021】
一方、プロトン性極性溶媒としては、次のものが挙げられる。すなわち、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類が挙げられる。
【0022】
これらの極性溶媒の中で特に好ましくは、沸点が60℃以上の非プロトン性極性溶媒であり、N−メチルピロリドン、N,N―ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。その他利用可能な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒や、ヘキサン、シクロヘキサン等も挙げられる。これらの有機溶媒の使用量は、通常原料の9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩に対し、1.5〜10重量倍が適当である。
【0023】
本発明の適当な第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物は次のようなものである。すなわち、下式(4)
【0024】
【化6】
【0025】
(式中のR1〜R4は互いに独立的にそれぞれ低分子又は高分子の有機基、殊に置換されていないか又は置換されているアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Yは窒素原子又はりん原子であり、そしてAn-は陰イオンである)で表される第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物である。
【0026】
特に満足なものであることがわかった化合物は、上記の与えられた式中Y=Nで、R1、R2、及びR3、が互いに独立にそれぞれC1〜C18−アルキル基であり、そしてR4はC1〜C18−アルキル基又はフェニル基である第4級アンモニウム化合物である。
【0027】
適当なアルキル基は例えば、C1〜C18−アルキル基例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基及びオクタデシル基のようなもの、及びヒドロキシ基、シアノ基又はフェニル基で置換されたC1〜C18−アルキル基例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基又は2−フェニルエチル基のようなものである。適当なR1〜R4のシクロアルキル基は特にC5〜C6シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基、そしてC1〜C4−アルキル基によって置換されたフェニル基である。陰イオンAn-はことにハロゲン化物イオンで特に塩素イオン又は臭素イオン、並びに硫酸水素イオンである。
【0028】
本発明に使うことができる第4級アンモニウム化合物は、例えば次のようなものである。テトラブチルアンモニウムブロミド又はクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、n−ヘキサデシルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリヘキシルアンモニウムブロミド、ベンジルトリオクチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、N−ドデシルピリジニウムブロミド、シクロヘキシルトリエチルアンモニウムブロミド、n−ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、n−オクチルトリブチルアンモニウムブロミド、n―ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n−ヘキサデシルトリエチルアンモニウムブロミド、n−ヘキサデシルトリプロピルアンモニウムブロミド、n−ドデシル−ビス−(β−ヒドロキシエチル)−ベンジルアンモニウムクロリド及びn−ヘキサデシル−トリ−(β−ヒドロキシエチル)−アンモニウムクロリド。適当なホスホニウム塩は例えば、n−ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド及びトリオクチルエチルホスホニウムブロミドである。これらのうち、特に好ましいものは、テトラブチルアンモニウムブロミド又はテトラブチルアンモニウムクロリド、n−ヘキサデシルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド又はクロリド、又はトリオクチルメチルアンモニウムブロミド又はクロリドである。
【0029】
本発明におけるこれら第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物の使用量は幅広い範囲内で変えることができるが、9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩1モルに対し0.001〜10倍モル、好ましくは0.01〜1倍モルである。第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物を用いないと、反応が速やかに進行せず、また副生成物が増加する等好ましくない結果となる。また、過剰に使用するのは、経済的に不利になるので好ましくない。
【0030】
本発明においては、アルカリ性作用剤を含有する水性媒体中の9,10−アントラセンジオール化合物と、エーテル化剤を反応させるにあたり、第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物の存在下で反応を行うことにより、アントラセンジエーテルを得ることができる。
【0031】
具体的には、第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物の存在下に、上記のエーテル化剤又は有機溶媒に溶解したエーテル化剤と9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩を溶解している水性媒体を混合して反応させる。これらの混合の順序はいずれも採用できるが、エーテル化剤又は有機溶媒に溶解したエーテル化剤に、第4級アンモニウム化合物又は第4級ホスホニウム化合物を所定量添加した後、9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩を溶解している水性媒体を添加する方法が好ましい。
【0032】
エーテル化の反応を遂行させる際の温度は、前記9,10−アントラセンジオール化合物のアルカリ塩の水溶液が凍結しない0℃以上、常圧下では溶媒に溶解するエーテル化剤の沸点以下の温度で行うのが好ましい。温度が20℃以下であると、エーテル化の反応が進み難く、100℃以上であると副反応が進みやすくなるため、20〜100℃の範囲で選ぶのが好ましい。
【0033】
本発明に係る製造方法によるときは、前記の式(1)で表されるアントラセンジエーテルが得られる。置換基Rのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは1〜4のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基などが挙げられる。アリル基としては、アリル及び2−メチルアリルなどが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、ナフチル基及びビフェニル基などが挙げられる。
【0034】
ヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−メチル−2−ヒドロキシエチル基、2−エチル−2−ヒドロキシエチル基が挙げられ、アルコキシアルキル基としては2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−エトキシエチル基、3−エトキシプロピル基などが挙げられる。
【0035】
前記式(1)で表されるアントラセンジエーテルの具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン,2,3−ジエチル−9,10−ジエトキシアントラセンのようなジアルコキシアントラセン、9,10−ジフェノキシアントラセン、9,10−ジ(p−トリルオキシ)アントラセン、9,10−ジナフチルオキシアントラセンのようなジアリールオキシアントラセン、9,10−ジアリルオキシアントラセン、9,10−ジ(2−メチルアリルオキシ)アントラセンのようなジアリルオキシアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−メトキシエトキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0036】
本発明に係る製造方法によって得られる前記式(1)で表されるアントラセンジエーテル、特にジアルコキシアントラセンは、紫外線などのエネルギー線を光源とする光硬化性組成物の増感剤として有用である。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の記載例によって限定されるものではない。
【0038】
「実施例1」
撹拌機、温度計、加熱ジャケット、仕込み口などを装備した容量が500ミリリットルの三ツ口フラスコ中、水酸化ナトリウム16gを水80gに溶解し、撹拌下、9,10−アントラセンジオン40gを仕込んで懸濁させ、フラスコ内の空気を窒素で置換した。このフラスコ内容物を撹拌しつつ、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩の水溶液209g(アントラキノン濃度として22重量%)を添加し、内温を95〜97℃の範囲で4時間保持し、9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩水溶液を得た。
【0039】
撹拌機、温度計、加熱ジャケット、仕込み口などを装備した容量が300ミリリットルのオートクレーブに、メチルエチルケトン70gに臭化ブチル(1−ブロモブタン、以下同じ。)40g、テトラブチルアンモニウムブロミド1.9gを溶解した溶液を仕込み、内温を70℃に昇温して保持した。このオートクレーブに、撹拌下、上記の方法で合成した9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩の水溶液100gを、3時間かけて連続的に添加した。9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩水溶液の連続添加終了後、さらに内温を70℃として1時間保持した。その後、内温を30℃に冷却し、オートクレーブ中にメタノール50mlを加え、生成物の結晶を析出させ、結晶を濾過し、100ミリリットルのメタノールで洗浄し、乾燥して生成物を得た。生成物は、融点は107℃で、NMRスペクトルにより、9,10−ジブトキシアントラセンであることが確認された。生成物の量は33gで、9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率として90モル%であった。
【0040】
「比較例1」
実施例1に記載の方法で、テトラアンモニウムブロミドを加えない事以外は同様な操作を行なったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、14モル%であった。
【0041】
「比較例2」
実施例1に記載の方法で、メチルエチルケトンの代わりにオルトキシレンを用いた以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、43モル%であった。
【0042】
「比較例3」
実施例1に記載の方法と逆の添加方法として、テトラアンモニウムブロミドを加えた9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩の水溶液に、メチルエチルケトン70gに臭化ブチル40gを溶解した溶液を3時間かけて添加する以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、70モル%であった。
【0043】
「実施例2」
実施例1に記載の方法で、臭化ブチルの代わりにジエチル硫酸を用いた以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジエトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率として87モル%であった。
【0044】
「実施例3」
実施例1に記載の方法で、有機溶媒のメチルエチルケトンを使用するかわりに、臭化ブチルを57gに増やした以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、85モル%であった。
【0045】
「実施例4」
実施例1に記載の方法で、メチルエチルケトンのかわりに、N,N―ジメチルホルムアミドを用いた以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、70モル%であった。
【0046】
「実施例5」
実施例1に記載の方法で、臭化ブチルのかわりに、臭化プロピル(1−ブロモプロパン)を用いた以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジプロポキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、89モル%であった。
【0047】
「比較例4」
実施例1に記載の方法で、有機溶媒にN,N―ジメチルホルムアミドを用い、テトラアンモニウムブロミド加えない以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、64モル%であった。
【0048】
「実施例6」
実施例1に記載の方法で、メチルエチルケトンのかわりに、メチルイソブチルケトンを用いた以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、82モル%であった。
【0049】
「比較例5」
実施例1に記載の方法で、メチルエチルケトンのかわりに、イソプロピルアルコールを用いた以外は同様な操作を行ったところ、9,10−ジブトキシアントラセンの9,10−アントラセンジオールのナトリウム塩に対する収率は、50モル%であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る製造方法によれば、エーテル化剤としてジアルキル硫酸の他、工業的に安価なハロゲン化アルキルなどを使用して目的のアントラセンジエーテルを工業的に有利に製造することができる。
2.本発明に係る製造方法によれば、従来の製造法に比べて高純度のアントラセンジエーテルを、高収率で製造することができる。
3.特に、有機溶媒としてメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンを用いたり、有機溶媒を用いずに臭化ブチルをそのまま用いた場合に極めて高い収率を達成することができる。
Claims (6)
- 非プロトン性極性溶媒が、N−メチルピロリドン、N,N―ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンから選ばれたものである請求項2に記載のアントラセンジエーテルの製造方法。
- アルカリ性作用剤が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 水性媒体が、水、メチルアルコール、エチルアルコール若しくはイソプロピルアルコールから選ばれる低級アルコール又はこれら低級アルコールと水の混合媒体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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