JP4991684B2 - 無線装置 - Google Patents

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Description

本発明は無線装置に係り、特に、個別に給電される2以上のアンテナ素子を有して構成されたアンテナ装置を備えた無線装置に関する。
近年の携帯電話等の無線装置には、いわゆるセルラ方式の移動通信システムだけでなく、各種の無線システム(例えば、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、全地球測位システム(GPS)、無線個体識別(RFID)、地上波デジタルテレビジョン放送、その他)に対応する機能が搭載される。この傾向は今後も拡大し、無線装置のさらなる多用途化、多機能化が進むものと予想される。
無線装置の多用途・多機能化の進展に対応して、無線装置に設けられるアンテナ装置に対してはさらなる多共振化、広帯域化が求められている。その一方で、無線装置の小型化とデザイン性向上の見地から、アンテナ装置についても小型化、コンパクト化が必要とされる。これらの互いに相反しがちな要求に応えるためには、複数の無線システムに対応し得るアンテナ装置を用いることが必要である。
このようなアンテナ装置の構成には、大別して2通りのアプローチが考えられる。その1つは、相異なる共振点を有する複数のアンテナ素子の結合体(無給電素子を含んでもよい。)に対して共通に給電し、スイッチ又はデュプレクサからなるアンテナ共用機を介して複数のシステムに分配する形式の構成である。他の1つは、互いに近接してコンパクトに配置された複数のアンテナに対して、各システムが個別に給電する形式の構成である。
アンテナ共用機で分配する構成においては、アンテナ共用機のアイソレーション性能が相異なるシステム間のアイソレーションを左右する。アンテナ共用機のアイソレーションの不足を補うため、さらに帯域通過フィルタ(BPF)等の追加を必要とすることもある。その結果、アンテナ共用機やフィルタの挿入損失が増えて、例えば送信出力や受信感度のような基本的性能の低下を招くことがある。
複数のアンテナ素子に対して各システムが個別に給電する構成においては、アンテナ共用機やフィルタの挿入損失を考える必要がないので、無線装置の基本的性能の面では有利である。その一方、アンテナどうしが近接するためアイソレーションの確保が難しいという問題がある。これに対して、アイソレーションの確保を図るための技術が提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照。)。
上記の特許文献1は、本願出願人が過去に行った特許出願に係り、同一の接地導体板上に配置したアンテナ装置における各アンテナ間の相互結合及び送信側のアンテナから受信側のアンテナ素子への電波の漏れ込みを低減させることを課題とする。各アンテナの給電点の間の接地導体板上に板状短絡素子をほぼ垂直に設けて、給電点どうしの見通しを遮るように構成することにより、上記の課題を解決したものである。
上記の特許文献2によれば、2のアンテナのうち一方の素子長を対応周波数の1/2波長相当にして素子の先端を接地することにより、励振されたとき1波長ループアンテナと等価に動作して地板における共振を抑えるように構成する。そうすると、他方のアンテナが近傍の周波数で励振された場合でも、等価ループアンテナ側の給電点近傍の電流分布が小さいので両アンテナ間の結合を抑えられる旨が記載されている。
特開第2003−332840号公報(第2ないし4ページ、図1) 特開第2005−198245号公報(第2、5ページ、図1、図6)
出願人が上述した特許文献1に開示した従来の技術は、接地導体板に垂直な方向に板状の短絡素子を設けて両アンテナ間を遮へいするものである。このような構成は、特に機器の小型・低背化を求められる携帯電話のような小型の無線装置には必ずしも適さない可能性がある。
上述した特許文献2に開示された従来の技術は、一方のアンテナ素子の給電点と短絡点の間隔をできるだけ拡げて擬似的にループアンテナとして動作させるという原理に基づいている。また、両アンテナの使用周波数帯が近いものであることを前提としている(例えば明細書の段落「0015」、「0022」、「0034」、「0043」参照。)。したがって、このような従来技術を無線装置の広範な多用途・多機能化に対応させるには限界がある。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、小型の無線装置の複数のアンテナ素子間のアイソレーションを確保することのできるアンテナ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の無線装置は、第1の無線システムに接続された第1の給電点及び前記第1の無線システムと異なる第2の無線システムに接続された第2の給電点が設けられた基板と、前記第1の給電点において給電されると共に、前記基板において前記第1の給電点及び前記第2の給電点に挟まれた範囲に設けられた第1の短絡点において接地されるように構成された第1のアンテナ素子と、前記第2の給電点において給電されると共に、前記基板において前記第2の給電点の近傍であって前記第1の給電点及び前記第2の給電点に挟まれた範囲に設けられた第2の短絡点において接地されるように構成された第2のアンテナ素子とを備え、前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子は、それぞれ前記第1の給電点近傍の部分と前記第2の給電点近傍の部分が、互いに交差する向きに形成されたことを特徴とする。
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。なお以下の各図を参照しながら上下左右、水平、垂直(鉛直)又は正面、背面をいうときは、特に断らない限り、図が表された紙面における上下左右、水平、垂直(鉛直)又は正面、背面を意味するものとする。また、各図の間で同一の符号は、同一の構成を表すものとする。
以下、図1ないし図3を参照して、本発明の実施例1を説明する。図1は、本発明の実施例1に係るアンテナ装置10の構成を表す図である。アンテナ装置10は、図示しない無線装置に含まれる基板1の上側の端辺近傍に設けられる。アンテナ装置10は、第1アンテナ素子11及び第2アンテナ素子12を備えている。基板1は必ずしも単一の基板からなるとは限らず、複数の基板から構成されたものであってもよい。
第1アンテナ素子11は、基板1に設けられた第1給電点13において給電されると共に、基板1に設けられた第1短絡点14において基板1の接地回路に短絡されることにより接地されるように構成される。第2アンテナ素子12は、折り返された往復線路からなり、基板1に設けられた第2給電点15において給電されると共に、基板1において第2給電点15の近傍に設けられた第2短絡点16において基板1の接地回路に短絡されることにより接地されるように折り返し型モノポールアンテナとして構成される。なお、第1アンテナ素子11の先端は開放端17である。
アンテナ装置10は、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12の間のアイソレーションを改善するために3つの構成上の特徴を有している。第1の特徴は、第1アンテナ素子11が第1短絡点14において、第2アンテナ素子12が第2短絡点16において、それぞれ接地されることである。その結果、第1アンテナ素子11又は第2アンテナ素子12が短絡点を持たない先端開放モノポール型である場合に比べてアイソレーションが改善される(当該効果のシミュレーションによる実証例については、実施例2と併せて図7を参照して後述する。)。
アンテナ装置10の第2の特徴は、第1短絡点14と第2短絡点16が、第1給電点13と第2給電点15の間に挟まれた範囲に設けられたことである。より具体的に述べると、第1短絡点14と第1給電点13との間隔は、第1給電点13と第2給電点15との間隔より小さい。また、第1短絡点14と第2給電点15との間隔は、第1給電点13と第2給電点15との間隔より小さい。すなわち、第1短絡点14は第1給電点13と第2給電点15の間にあって、第1給電点13と第2給電点15を結ぶ直線から大きく離れないように位置する。
次に、第2短絡点16と第1短絡点14との間隔は、第1短絡点14と第2給電点15との間隔より小さい。また、第2短絡点16と第2給電点15との間隔は、第1短絡点14と第2給電点15との間隔より小さい。すなわち、第2短絡点16は第1短絡点14と第2給電点15の間にあって、第1短絡点14と第2給電点15を結ぶ直線から大きく離れないように位置する。
図1において第1給電点13、第1短絡点14、第2短絡点16及び第2給電点15が基板1の上側の端辺に沿ってほぼ一直線上に表されているのは、上述した各給電点及び各短絡点の位置関係の一例である。上記の各給電点及び各短絡点は、必ずしもこのように一直線上に配列されなくてもよい。2の給電点の間に2の短絡点が挟まれた位置関係にあって第2短絡点16が第2給電点15の近傍にあるならば、程度の差はあってもアイソレーション改善の効果を得ることができる(当該効果のシミュレーションによる実証例については、実施例2と併せて図10を参照して後述する。)。
アンテナ装置10の第3の特徴は、第2短絡点16が第2給電点15の近傍に設けられたことである。その結果、第2短絡点16が第2給電点15から遠ざけられた場合に比べてアイソレーションが改善される(当該効果のシミュレーションによる実証例については、実施例2と併せて図13を参照して後述する。)。
図1において、第1アンテナ素子11及び第2アンテナ素子12は、基板1の上側の端辺の近傍において、互いに略同一の向き(この実施例では左向き)に形成されている。このように第1アンテナ素子11及び第2アンテナ素子12の形成される向きを略同一にすることにより、アンテナ装置10を小型の無線装置に設けることが可能になる。
図2は、実施例1の変形例に係るアンテナ装置10aの構成を表す図である。アンテナ装置10aは、図1に表したのと同じ基板1の上側の端辺近傍に設けられる。アンテナ装置10aは、図1に表したのと同じ第1アンテナ素子11の他、第2アンテナ素子12aを備えている。
第2アンテナ素子12aは、上述した第2アンテナ素子12と同様に、基板1に設けられた第2給電点15において給電されると共に、基板1において第2給電点15の近傍に設けられた第2短絡点16において基板1の接地回路に短絡されることにより接地されるように構成される。第2アンテナ素子12aは、折り返し箇所18で折り返された往復線路からなる。アンテナ装置10aにおける第1給電点13、第1短絡点14、第2給電点15及び第2短絡点16の位置関係は、図1を参照して説明したアンテナ装置10におけるそれらの位置関係と同じである。
アンテナ装置10aは、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12aの間のアイソレーションを改善するために、上述したアンテナ装置1の第1ないし第3の特徴と同じ特徴を有している。これに加えて、第1アンテナ素子11は開放端17が左向きに形成され、第2アンテナ素子12aは折り返し箇所18が右向きに形成されている。すなわち、第1アンテナ素子11及び第2アンテナ素子12aは開放端17と折り返し箇所18が互いに遠ざかる向きに形成されている。
第1アンテナ素子11はいわゆる逆F型アンテナを構成し、給電されたとき相対的に高い電圧が開放端17とその近傍の部分に分布する。また、第2アンテナ素子12aは折り返し型モノポールアンテナを構成し、給電されたとき相対的に高い電圧が折り返し箇所18とその近傍の部分に分布する。
上述したように、給電されたとき相対的に高い電圧が分布する開放端17と折り返し箇所18が互いに遠ざかる向きに形成されたことにより、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12aの間の電圧結合が抑制され、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12aの間のアイソレーションを改善することができる。
無線装置の実装スペースの制約から、第1アンテナ素子11の開放端17を基板1の左側の端辺よりさらに左方へ位置させることは難しい場合が考えられる。そのような場合においては、第1アンテナ素子11が基板1の上側の端辺近傍において第2アンテナ素子12aから遠ざかる向きに形成され、かつ、開放端17が上側の端辺の左端近傍に位置するように設けられる。
図3は、実施例1の他の変形例に係るアンテナ装置10bの構成を表す図である。アンテナ装置10bは、図1に表したのと同じ基板1の上側の端辺近傍に設けられる。アンテナ装置10bは、図1に表したのと同じ第1アンテナ素子11の他、第2アンテナ素子12bを備えている。
第2アンテナ素子12bは、上述した第2アンテナ素子12と同様に、基板1に設けられた第2給電点15において給電されると共に、基板1において第2給電点15の近傍に設けられた第2短絡点16において基板1の接地回路に短絡されることにより接地されるように構成される。アンテナ装置10bにおける第1給電点13、第1短絡点14、第2給電点15及び第2短絡点16の位置関係は、図1を参照して説明したアンテナ装置10におけるそれらの位置関係と同じである。
アンテナ装置10bは、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12bの間のアイソレーションを改善するために、上述したアンテナ装置1の第1ないし第3の特徴と同じ特徴を有している。これに加えて、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12bは、それぞれ第1給電点13近傍の部分と第2給電点15近傍の部分が互いに交差する向き(一方を平行移動したり延長したりすれば交わる場合を含む。以下同様。)に形成されている。
上述したように、給電されたとき相対的に値の大きい電流が分布する第1給電点13近傍の部分と第2給電点15近傍の部分が互いに交差する向きに形成されたことにより、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12bの間の電流結合が抑制され、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12bの間のアイソレーションを改善することができる。なお、図2に示したアンテナ装置10aについても、同様の変形をすることができる。
本発明の実施例1によれば、アンテナ装置を構成する複数のアンテナ素子の給電点と短絡点の位置関係と、電圧又は電流分布の高低と対応付けた素子間の位置関係を選ぶことにより、アンテナ素子間のアイソレーションを改善することができる。
以下、図4ないし図14を参照して、本発明の実施例2を説明する。図4は、本発明の実施例2に係るアンテナ装置20の構成を表す図である。アンテナ装置20は、実施例1について説明したのと同じ基板1の上側の端辺近傍に設けられる。アンテナ装置20は、第1アンテナ素子21、第2アンテナ素子22及び第2アンテナ素子22から分岐した分岐素子22aを備えている。
第1アンテナ素子21は、基板1に設けられた第1給電点23において給電されると共に、基板1に設けられた第1短絡点24において基板1の接地回路に短絡されることにより接地されるように構成される。第1アンテナ素子21の先端は、開放端27である。第1アンテナ素子21は実施例1の第1アンテナ素子11と同一であって、各部分の符号のみを更新したものとする。
第2アンテナ素子22は、基板1に設けられた第2給電点25において給電されると共に、基板1において第2給電点25の近傍に設けられた第2短絡点26において基板1の接地回路に短絡されることにより接地されるように構成される。第2アンテナ素子22は折り返し箇所28で折り返された往復線路からなり、その往路と復路がブリッジ29において短絡されている。
第2アンテナ素子22は、実施例1の変形例に係るアンテナ装置10aの第1アンテナ素子12aと同一の素子(各部分の符号のみを更新したもの)にブリッジ29を付加し、さらに分岐素子22aを分岐させたものである。
アンテナ装置20における第1給電点23、第1短絡点24、第2給電点25及び第2短絡点26の位置関係は、図2を参照して説明したアンテナ装置10aにおける第1給電点13、第1短絡点14、第2給電点15及び第2短絡点16の位置関係と同じである。
上記のように構成されたアンテナ装置20は、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の間のアイソレーションを改善するために、実施例1のアンテナ装置10又はアンテナ装置10aと同じ第1ないし第3の特徴を有している。
また、給電されたとき相対的に高い電圧が分布する開放端27と折り返し箇所28が互いに遠ざかる向きに形成されたことにより、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の間の電圧結合が抑制され、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の間のアイソレーションを改善することができる。
アンテナ装置20は、分岐素子22aを分岐させて多共振化を図ると共にブリッジ29を付加してインピーダンス整合の改善を図りつつ、上記の構成上の特徴をアンテナ装置10aと共通にすることにより、アンテナ装置10aと同様の効果を発揮することができる。
上述したアンテナ装置20の第1の特徴による効果をシミュレーションにより評価した結果を、図5ないし図7を参照して説明する。図5は、図4に表したアンテナ装置20における逆F型のアンテナ素子21を、比較の対象とする先端開放モノポール型のアンテナ素子21aで置き換えたアンテナ装置20aの構成を表す図である。図5に表した各構成は、アンテナ素子21aを除いて図4に表した各構成とそれぞれ同じである(基板1は、一部のみ表す。)。
図6は、図4に表したアンテナ装置20における逆F型のアンテナ素子21を、比較の対象とする折り返しモノポール型のアンテナ素子21bで置き換えたアンテナ装置20bの構成を表す図である。図6に表した各構成は、アンテナ素子21bを除いて図4に表した各構成とそれぞれ同じである(基板1は、一部のみ表す。)。
図7は、図4ないし図6にそれぞれ表したアンテナ装置20、20a及び20bのアイソレーション対周波数特性をシミュレーションにより評価した一例を表すグラフである。グラフの横軸は周波数を表し、縦軸はアイソレーションのデシベル(dB)値を表す。なお、図4ないし図6において、第1給電点23は基板1の上側の端辺の左端から20ミリメートル(mm)の個所に位置するものとした。
実施例2では一例として、携帯電話、ブルートゥース等に割り当てられた周波数帯域に着目し、これらの帯域外の周波数は図7の横軸から省いている(以降の図10、図14及び実施例3の図17において同じ。)。また、素子ごとの共振周波数については、一例として、第1アンテナ素子21、21a又は21bが2.4GHz帯(ブルートゥース)、第2アンテナ素子22が800MHz帯(携帯電話)、分岐素子22aが1.7GHz帯(第3世代携帯電話)にそれぞれ対応するものとする。
図7において、ひし形のプロット(モノポール)を結ぶ折れ線は、図5に表したアンテナ装置20a(先端開放モノポール型の第1アンテナ素子21aを含む。)の特性を表す。正方形のプロット(逆F)を結ぶ折れ線は、図4に表したアンテナ装置20(逆F型の第1アンテナ素子21を含む。)の特性を表す。三角形のプロット(折返し)を結ぶ折れ線は、図6に表したアンテナ装置20b(折り返しモノポール型のアンテナ素子21bを含む。)の特性を表す。
図7によれば、第1アンテナ素子21又は21bが第1短絡点24において接地されるアンテナ装置20又は20bの方が、特に携帯電話用の800MHz帯において、第1アンテナ素子21aが短絡点を持たないアンテナ装置20aより優れたアイソレーション特性を示す。
図7においては、アンテナ装置20a(ひし形のプロット)のアイソレーション特性は低い方の周波数帯においてアンテナ装置20(正方形のプロット)又は20b(三角形のプロット)に劣っており、アンテナ素子が短絡点を有することによるアイソレーションの改善が示されている。アイソレーションの所要値を例えば−20dB以下とすると、アンテナ装置20または20bは図示された全帯域において該所要値を満たし、アンテナ装置20aは低い方の周波数帯において該所要値を満たさない。
上述したアンテナ装置20の第2の特徴による効果をシミュレーションにより評価した結果を、図8ないし図10を参照して説明する。図8は、図4に表したアンテナ装置20における逆F型のアンテナ素子21を、比較の対象とするため向きを変えた逆F型のアンテナ素子21cで置き換えたアンテナ装置20cの構成を表す図である。
図8に表した各構成は、アンテナ素子21cを除いて図4に表した各構成とそれぞれ同じである(基板1は、一部のみ表す。)。図8において、第1給電点23は、第1短絡点24よりも第2アンテナ素子22寄りに設けられる。第1アンテナ素子21cは、開放端が第2アンテナ素子22に対向する向きに配設されている。
図9は、図4に表したアンテナ装置20における逆F型のアンテナ素子21を、比較の対象とするため向きを変えた逆F型のアンテナ素子21dで置き換えたアンテナ装置20dの構成を表す図である。
図9に表した各構成は、アンテナ素子21dを除いて図4に表した各構成とそれぞれ同じである(基板1は、一部のみ表す。)。図9において、第1給電点23は、第1短絡点24よりも第2アンテナ素子22寄りに設けられる。第1アンテナ素子21dは、開放端が第2アンテナ素子22から遠ざかる向きに配設されている。
図10は、図4、図8及び図9にそれぞれ表したアンテナ装置20、20c及び20dのアイソレーション対周波数特性をシミュレーションにより評価した一例を表すグラフである。グラフの横軸、縦軸は、図7と共通である。なお、図4、図8及び図9において、第1給電点23は基板1の上側の端辺の左端から10mmの個所に位置するものとした。
図10において、ひし形のプロット(ショートピン中間、先端逃げ)を結ぶ折れ線は、図4に表したアンテナ装置20の特性を表す。「ショートピン中間」とは、第1短絡点24が第1給電点23と第2給電点25の中間の範囲内にあることを表す。「先端逃げ」とは、開放端27が第2アンテナ素子22から遠ざかる向きにあることを表す。
図10において、正方形のプロット(ショートピン端、先端逃げ)を結ぶ折れ線は、図9に表したアンテナ装置20dの特性を表す。「ショートピン端」とは、第1短絡点24が第1給電点23と第2給電点25の中間の範囲外(基板1の端部に近い位置)にあることを表す。「先端逃げ」とは、アンテナ素子21dの開放端が第2アンテナ素子22から遠ざかる向きにあることを表す。
図10において、三角形のプロット(ショートピン端、先端対向)を結ぶ折れ線は、図8に表したアンテナ装置20cの特性を表す。「先端対向」とは、アンテナ素子21cの開放端が第2アンテナ素子22に対向する向きにあることを表す。
図10において、第1短絡点24が第1給電点23と第2給電点25の中間の範囲外にあるアンテナ装置20c(三角形のプロット)又は20d(正方形のプロット)は、相対的に低い方又は高い方の周波数帯域において、第1短絡点24が第1給電点23と第2給電点25の中間の範囲内にあって開放端27が第2アンテナ素子22から遠ざかる向きにあるアンテナ装置20(ひし形のプロット)よりもアイソレーション特性が劣化する。
アイソレーションの所要値を例えば−20dB以下とすると、アンテナ装置20が図10に示した周波数帯域の大部分において上記の所要値を満たすのに対して、アンテナ装置20c又は20dは相対的に低い方又は高い方の周波数帯域において当該所要値を満たさないことがわかる。
2のアンテナ素子の給電点と短絡点の位置関係がアイソレーション特性に及ぼす影響について、より単純化したモデルを用いて検討する。図11は、そのようなモデルの構成を表す図である。当該モデルは、一部のみを表した基板3と、逆F型アンテナ素子31と、折り返し型アンテナ素子32を備えている。
逆F型アンテナ素子31は、基板3の上側の端辺の2箇所において基板3に接続されており、そのうち1箇所は給電点、もう1箇所は短絡点とする。折り返し型アンテナ素子32は、基板3の上側の端辺の2箇所において基板3に接続されており、そのうち1箇所は給電点、もう1箇所は短絡点とする。
図12は、逆F型アンテナ素子31の給電点及び短絡点の位置(基板3の外側(左)寄り又は内側(右)寄り)並びに折り返し型アンテナ素子32の給電点及び短絡点の位置(基板3の外側(右)寄り又は内側(左)寄り)と、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の間のアイソレーション特性の関係を、一例として2.4GHz帯におけるシミュレーションにより求めて表す図である。
図12の横軸の左端の「逆F(外)−折返し(外)」は、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の給電点がそれぞれ外側寄り(基板3の上側の端辺において、左から給電−短絡−短絡−給電の配列)の場合を表す。
横軸の左から2番目の「逆F(外)−折返し(内)」は、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の給電点がそれぞれ外側寄り及び内側寄り(基板3の上側の端辺において、左から給電−短絡−給電−短絡の配列)の場合を表す。横軸の左から3番目の「逆F(内)−折返し(外)」は、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の給電点がそれぞれ内側寄り及び外側寄り(基板3の上側の端辺において、左から短絡−給電−短絡−給電の配列)の場合を表す。
横軸の右端の「逆F(内)−折返し(内)」は、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の給電点がそれぞれ内側寄り(基板3の上側の端辺において、左から短絡−給電−給電−短絡の配列)の場合を表す。縦軸は、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32のアイソレーションを表す。
図11に示したアンテナ素子間のアイソレーション特性は、図12に示すように2の短絡点を2の給電点で挟む配列の場合に最も改善され、2の給電点を2の短絡点で挟む配列の場合に最も劣化する。上記のシミュレーションにおいて基板3、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の電流分布を求めて発明者が鋭意検討した結果、次のことを推測している。
(1)逆F型アンテナ素子31の給電点近傍部分の電流分布は給電点が内側寄りの場合の方が外側寄りの場合よりも大きく、給電点にも相応の電流が誘起されると推定される。
(2)折り返し型アンテナ素子32の往復線路のうち、基板3に近い方(内側寄り)の線路の電流分布が相対的に常に大きいので、給電点が内側寄りの場合に相対的に大きい電流が給電点に誘起されると推定される。
(3)したがって、両アンテナ素子31、32の給電点が共に内側寄りの場合、両方の給電点に誘起される相対的に大きい電流が基板3を介して相互に作用し、アイソレーションの劣化を招く。一方、短絡点が給電点どうしの間に入ると電流の結合に対する一種の壁として作用することから、図12に表れたようにアイソレーションが改善されると推定される。
折り返し型アンテナ素子32の給電点と短絡点の間隔がアイソレーション特性に及ぼす影響について、図11に示したモデルを用いて検討する。図13は、折り返し型アンテナ素子32の給電点と短絡点の間隔と、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32の間のアイソレーション特性の関係を、一例として2.4GHz帯におけるシミュレーションにより求めて表す図である。
図13の横軸は折り返し型アンテナ素子32の給電点と短絡点の波長単位で表した間隔である。縦軸は、逆F型アンテナ素子31及び折り返し型アンテナ素子32のアイソレーションを表す。図13に表れたように、折り返し型アンテナ素子32の給電点と短絡点の間隔が0.1波長(10分の1波長)を超えると、折り返し型よりもむしろループ型の電流モードが支配的になってアイソレーション特性が急速に劣化することがわかる。
折り返し型アンテナ素子32の給電点と短絡点の間隔が小さいほど、インピーダンスの誘導性が強まるので低い周波数に対応させやすくなり、またインピーダンス値が上がるので給電回路との整合が容易になるという利点がある。その結果、図13に示すように、上記の間隔が0.08波長、0.05波長、0.04波長、0.02波長と小さくなるにしたがってアイソレーション特性が向上する。
図4、図7及び図10に戻って、アイソレーション特性に影響する他の要因について検討する。図7の正方形のプロットと図10のひし形のプロットはいずれも図4に表したアンテナ装置20のアイソレーション特性を表すが、第1給電点23の位置(基板1の上側の端辺の左端との間隔)に依存して異なる特性を示している。そこで、上記の第1給電点23の位置(基板1の上側の端辺の、第2アンテナ素子22から遠い側の一端である左端との間隔)をパラメータとして、アンテナ装置20のアイソレーション特性をシミュレーションにより評価する。
図14は、上記のシミュレーション評価の一例を表すグラフである。グラフの横軸、縦軸は、図7と共通である。第1給電点23と基板1の上側の端辺の左端との間隔をパラメータy(単位はmm)とする。第1アンテナ素子21の共振周波数は、2.5ギガヘルツ(GHz)と仮定する。図14において、ひし形のプロットはy=25mmに、正方形のプロットはy=20mmに、三角形のプロットはy=15mmに、×印のプロットはy=10mmに、それぞれ対応する。
図14によれば、y=20mm(第1アンテナ素子21の共振周波数の6分の1波長相当)又はy=15mm(第1アンテナ素子21の共振周波数の8分の1波長相当)の場合に、図示した周波数帯域の全部においてアンテナ装置20のアイソレーション特性が概ね良好であることがわかる。
すなわち、第1給電点23と基板1の上側の端辺の左端との間隔が第1アンテナ素子21の共振周波数の8分の1波長以上であって6分の1波長以下の値に設定され、かつ、第1アンテナ素子21が図4に示すように第1給電点23から第2アンテナ素子22に対して遠ざかる向きに形成されることにより、アンテナ装置20は広帯域にわたって良好なアイソレーション特性を実現することができる。
実施例2に係るアンテナ装置20についても、実施例1の図3に示したのと同じように第1給電点23近傍の部分と第2給電点25近傍の部分が互いに交差する向きに変形することができる。その場合、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の電流結合を抑制して、アイソレーションを改善することができる。
本発明の実施例2によれば、多共振化やインピーダンス整合を目的としてアンテナ素子を変形した場合にも、複数のアンテナ素子の給電点と短絡点の位置関係と、電圧又は電流分布の高低と対応付けた素子間の位置関係を選ぶことにより、アンテナ素子間のアイソレーションを改善することができる。
以下、図15ないし図17を参照して、本発明の実施例3を説明する。図15は、本発明の実施例3に係るアンテナ装置30の構成を表す図である。アンテナ装置30は、実施例1について説明したのと同じ基板1の上側の端辺近傍に設けられる。アンテナ装置30は、実施例2に係るアンテナ装置20に第3アンテナ素子33を付加したものである。したがって、第3アンテナ素子33を除くアンテナ装置30の各構成は、図4に同一の符号を付して表したアンテナ装置20の各構成と同じである。
第3アンテナ素子33は、第2給電点25の近傍において第2アンテナ素子22から分岐し、開放端に至る。第3アンテナ素子33は、第2アンテナ素子22の第2短絡点26に接続された部分よりも、基板1に対して遠い側に位置するように配設されている。図15において、ハッチングを施した第3アンテナ素子33を第2アンテナ素子22の第2短絡点26に接続された部分の背面側に描くことにより、上記の位置関係を表している。
図16は、アンテナ装置30の電圧定在波比(VSWR)の周波数特性をシミュレーションにより評価した一例を、実施例2のアンテナ装置20の特性と対比して表すグラフである。グラフの横軸は周波数を表し、縦軸はVSWRの値を表す。
実施例3では一例として、実施例2と同様に携帯電話、ブルートゥース等に割り当てられた周波数帯に着目する。また、素子ごとの共振周波数は、一例として、第1アンテナ素子21が2.4GHz帯(ブルートゥース)、第2アンテナ素子22が800MHz帯(携帯電話)、分岐素子22aが1.7GHz帯(第3世代携帯電話)、第3アンテナ素子33が2.1GHz帯(第3世代携帯電話)にそれぞれ対応するものとする。
図16の左端(800MHz帯)のカーブは、第2アンテナ素子22の共振特性に対応する。図16の中央よりやや右(1.8GHz前後)の実線のカーブは、分岐素子22aと第3アンテナ素子33の共振特性の合成されたものに対応する。図16の中央よりやや右(1.9GHz前後)の破線のカーブは、分岐素子22a単独(第3アンテナ素子33が付加されていない状態)の共振特性に対応する。図16の右端(2.4GHz前後)のカーブは、第1アンテナ素子21の共振特性に対応する。
図16の左端及び右端のカーブは、いずれも実施例2のアンテナ装置20及び実施例3のアンテナ装置30に共通の共振特性を表す。図16の中央よりやや右の実線のカーブはアンテナ装置30の共振特性を表し、破線のカーブは実施例2のアンテナ装置20の共振特性を表す。
上記の1.8GHz前後の破線のカーブによれば、2.1GHz帯のVSWR値が5以上であるから、実施例2のアンテナ装置20は2.1GHz帯の利用に適するとはいえない。一方、1.9GHz前後の実線のカーブによれば、2.1GHz帯のVSWR値がほぼ3以下であるから、アンテナ装置30は2.1GHz帯の利用に適する。これは、実施例2のアンテナ装置20の構成に対し第3アンテナ素子33を追加して多共振化をさらに進めた結果である。
図17は、アンテナ装置30のアイソレーション対周波数特性をシミュレーションにより評価した一例を、他の構成例に係る特性と対比して表すグラフである。グラフの横軸、縦軸は、図7と共通である。図17において、正方形のプロットを結ぶ折れ線はアンテナ装置30の特性を表す。ひし形のプロットを結ぶ折れ線は、実施例2のアンテナ装置20の特性を表す。
図17において、円形のプロットを結ぶ破線の折れ線はアンテナ装置30の変形例の特性を表す。当該アンテナ装置30の変形例は、第3アンテナ素子33が、第2アンテナ素子22の第2短絡点26に接続された部分よりも基板1に対して近い側に位置するように配設されたものである。
図17によれば、アンテナ装置30は各周波数帯域においてアイソレーションが概ね良好(例えば−20dB以下)であり、かつ、2.2GHz以上の周波数帯域においてアンテナ装置20に優るアイソレーション特性を示す。他方、上記アンテナ装置30の変形例は、2GHz以上の周波数帯域においてアイソレーション特性がアンテナ装置30よりも10dB以上劣っている。
アンテナ装置30においては、第3アンテナ素子33が第2アンテナ素子22の第2短絡点26に接続された部分よりも基板1に対して遠い側に位置することにより、第3アンテナ素子33が励振されたときのイメージ電流が基板1の接地回路よりもむしろ第2アンテナ素子22の方に分布する。その結果、当該イメージ電流が基板1の接地回路及び第1給電点23を介して第1アンテナ素子21へ影響するのを抑えることができる。
これに対して、上記アンテナ装置30の変形例においては、第3アンテナ素子33が第2アンテナ素子22の第2短絡点26に接続された部分よりも基板1に対して近い側に位置するため、第3アンテナ素子33が励振されたときのイメージ電流が第2アンテナ素子22よりもむしろ基板1の接地回路の方に分布する。その結果、当該イメージ電流が基板1の接地回路及び第1給電点23を介して第1アンテナ素子21へ影響しやすいために、アンテナ装置30に比べてアイソレーション特性が劣るものになる。
なお、アンテナ装置30と異なる構成により多共振化を進める他の例として、実施例2に係るアンテナ装置20に無給電素子を付加することもできる。その場合、実装上の都合から第2給電点25の近傍に片側接地の無給電素子を設けるという構成が一般に考えられる。しかしその場合には、無給電素子が励振されたときのイメージ電流が基板1の接地回路に分布するため、やはりアンテナ装置30に比べてアイソレーション特性が劣るものになる。
図15に示したアンテナ装置30の構成においては、次の2点に留意することが特性改善のために好ましい。第1点は、分岐素子22a及び第3アンテナ素子33が基板1の接地回路に近づき過ぎないように各素子間の位置関係を選ぶことである。分岐素子22a又は第3アンテナ素子33と基板1の間隔が小さいと、第2給電点25におけるインピーダンスが低下してイメージ電流が基板1の接地回路に分布しやすくなり、上述したようにアイソレーション特性の劣化の原因となる。
第2点は、第2アンテナ素子22の折り返し箇所28を含む、往路と復路が共に折り返された形状の部分の長さをできるだけ縮めることである。この部分が長いと、往路と復路が共に折り返される箇所の前後の線路が相互に結合するため、集中定数素子の装荷と類似の状態が形成される。そうすると800MHz帯の3倍波の周波数が理論値よりも低下し、例えば第1アンテナ素子21が近傍に位置する場合に上記の3倍波が第1アンテナ素子21に対して干渉することがある。これを避けるため、往路と復路が共に折り返された形状の部分の長さをできるだけ縮めて800MHz帯の3倍波の周波数を低下させないことが好ましい。
なお、図15に示すように第1アンテナ素子21及び第2アンテナ素子22の形成される向きを略同一にすることにより、アンテナ装置30を小型の無線装置に設けることが可能になる。また、給電されたとき相対的に高い電圧が分布する開放端27と折り返し箇所28が互いに遠ざかる向きに形成されたことにより、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の間の電圧結合が抑制され、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の間のアイソレーションを改善することができる。
第1アンテナ素子21は基板1の上側の端辺近傍において第2アンテナ素子22から遠ざかる向きに形成されると共に、開放端27が上側の端辺の左端近傍に位置するように設けられることが可能である。また、実施例2について説明したのと同様に、第1給電点23と基板1の上側の端辺の左端との間隔が第1アンテナ素子21の共振周波数の8分の1波長以上であって6分の1波長以下の値に設定され、かつ、第1アンテナ素子21が第1給電点23から第2アンテナ素子22に対して遠ざかる向きに形成されることにより、アイソレーションを改善することができる。
実施例3に係るアンテナ装置30についても、実施例1の図3に示したのと同じように第1給電点23近傍の部分と第2給電点25近傍の部分が交差する向きに変形することができる。その場合、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の電流結合を抑制して、アイソレーションを改善することができる。
本発明の実施例3によれば、アンテナ装置の多共振化をさらに進めるのと同時に、アンテナ素子間のアイソレーションを改善することができる。
以下、図18ないし図20を参照して、本発明の実施例4を説明する。図18は、本発明の実施例4に係るアンテナ装置40の構成を表す図である。アンテナ装置40は、複数のアンテナ素子が例えば誘電体からなる同一のアンテナ用部材41に例えばめっきされて構成されたものである。
上記のアンテナ素子は、実施例2の図4を参照して説明した第1アンテナ素子21、第2アンテナ素子22及び第2アンテナ素子22から分岐した分岐素子22aとする。上記の各アンテナ素子の各部は図4に示した通りであるから、同じ符号を付して表す。なお、各アンテナ素子のうち、アンテナ用部材41の図18における正面からは見えない底面又は背面に設けられた部分は点線で表している。
アンテナ用部材41は、基板1の上側の端辺近傍に配設される。第1アンテナ素子21は、基板1に設けられた第1給電点23において給電されると共に、基板1に設けられた第1短絡点24において基板1の接地回路に短絡されることにより接地される。第1アンテナ素子21は、アンテナ用部材41の底面に設けられている。なお、第1アンテナ素子21はアンテナ用部材41の底面に当接する基板1の面上に設けられるとしてもよい。
第2アンテナ素子22は、基板1に設けられた第2給電点25において給電されると共に、基板1において第2給電点25の近傍に設けられた第2短絡点26において基板1の接地回路に短絡されることにより接地される。第2アンテナ素子22は、アンテナ用部材41の正面、上面及び背面にまたがって設けられている。分岐素子22aは第2アンテナ素子22から分岐し、アンテナ用部材41の正面及び上面にまたがって設けられている。
図18に示すように第1短絡点24と第2短絡点26が第1給電点23と第2給電点25の間に挟まれた範囲に設けられたことにより、アンテナ装置40は実施例2に係るアンテナ装置20と同様に第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22の間に良好なアイソレーション特性を保つことができる。
図18の上方に、アンテナ装置40を紙面の手前(基板1の上側の端辺に直交する向き)から見下ろす状態を記号とブロック矢印で表している。第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22は同一のアンテナ用部材41に設けられており、このような向きから互いに重なって見える部分がある。
また、第1アンテナ素子21の空間的な輪郭によって形成される仮想的な立体は、アンテナ用部材41の外形にほぼ一致し、基板1の上側の端辺に平行な向きの寸法を若干縮めたものということができる。第2アンテナ素子22は、上記の仮想的な立体に当接するように配設されている。第2アンテナ素子22の位置を図18に示したよりも例えば上方に若干ずらせて、上記の仮想的な立体に内包されるように配設してもよい。
例えば携帯電話機のような小型の無線装置への応用を考えると、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22が互いに近接した状態になる。その結果、上述した第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22が視角により重なって見えたり、一方が形成する仮想的な立体に他方が内包されたり当接したりする位置関係をとることがある。このような位置関係は、同一のアンテナ用部材に複数のアンテナ素子を設ける場合に限らず、例えば実施例1ないし実施例3のような形態でも生じることがある。
アンテナ装置40のように複数のアンテナ素子を同一のアンテナ用部材に形成することにより、製作コストを抑えられるのに加えて、アンテナ装置単体での評価や作り込みが可能になることから評価コストを抑えられるという効果が得られる。
アンテナ装置40(又は、実施例1ないし実施例3のアンテナ装置10、20又は30)を、上述したように例えば携帯電話機のような小型の無線装置に実装することができる。図19は、そのような無線装置の筐体におけるアンテナ装置の実装箇所を例示する図である。
図19に表した無線装置は、折りたたみ(クラムシェル)型の携帯通信端末50である。携帯通信端末50は、上筐体51と下筐体52が相互に開閉可能に連結されて構成されたものである。携帯通信端末50に対するアンテナ装置の実装箇所としては、上筐体51の上端近傍(点線の楕円で囲んで表す。以下同じ。)、下筐体52の上端(又は上筐体51との連結部)近傍、下筐体52の右端近傍、下筐体52の下端近傍等が考えられるが、これらに限定されるものではない。
図20に表した無線装置は、いわゆるスマートフォン型の携帯通信端末60である。携帯通信端末60は、表示部側筐体51と操作部側筐体62が相互に開閉(折りたたみ又はスライド)可能に連結されて構成されたものである。携帯通信端末60に対するアンテナ装置の実装箇所としては、表示部側筐体61の左端近傍、右端近傍、左右いずれかの下端(若しくは操作部側筐体62との連結部)近傍、操作部側筐体62の左端近傍、右端近傍、左右いずれかの下端近傍等が考えられるが、これらに限定されるものではない。
なお、図19又は図20においてアンテナ装置を連結部の近傍に実装することは、通話時に手や頭部から一定の距離を保てるので放射効率の低下を抑える効果がある。また、筐体の部材そのものにアンテナ素子を一体で成形する場合に、連結部は薄型化を求められる他の部位(例えば上筐体51の上端又は下筐体52の下端)よりも厚みをとりやすいので、アンテナ体積を確保するのに有利である。
本発明の実施例4によれば、複数のアンテナ素子を例えば同一部材に形成することにより近接させて配置し、携帯通信端末等の小型の無線装置への実装上の便宜を向上させることができる。
以上の実施例1ないし実施例4の説明において、無線装置、基板又はアンテナ装置に含むアンテナ素子の形状、構成、接続等は例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変形が可能である。
本発明の実施例1に係るアンテナ装置の構成を表す図。 実施例1の変形例に係るアンテナ装置の構成を表す図。 実施例1の他の変形例に係るアンテナ装置の構成を表す図。 本発明の実施例2に係るアンテナ装置の構成を表す図。 実施例2に係るアンテナ装置の一部を比較のため置き換えた第1の例を表す図。 実施例2に係るアンテナ装置の一部を比較のため置き換えた第2の例を表す図。 実施例2に係るアンテナ装置並びに図5及び図6にそれぞれ表したアンテナ装置のアイソレーション特性をシミュレーションにより評価して表す図。 実施例2に係るアンテナ装置の一部を比較のため置き換えた第3の例を表す図。 実施例2に係るアンテナ装置の一部を比較のため置き換えた第4の例を表す図。 実施例2に係るアンテナ装置並びに図8及び図9にそれぞれ表したアンテナ装置のアイソレーション特性をシミュレーションにより評価して表す図。 実施例2に係るアンテナ素子の給電点と短絡点の位置関係がアイソレーション特性に及ぼす影響を評価するモデルを表す図。 実施例2に係るアンテナ素子の給電点と短絡点の位置関係とアイソレーション特性の関係の一例をシミュレーションにより求めて表す図。 実施例2に係る折り返し型アンテナ素子の給電点と短絡点の間隔とアイソレーション特性の関係の一例をシミュレーションにより求めて表す図。 実施例2に係るアンテナ装置のアイソレーション特性を、第1給電点の位置をパラメータとするシミュレーションにより評価して表す図。 本発明の実施例3に係るアンテナ装置の構成を表す図。 実施例3に係るアンテナ装置のVSWR特性をシミュレーションにより評価した一例を、実施例2に係るアンテナ装置の特性と対比して表す図。 実施例3に係るアンテナ装置のアイソレーション特性をシミュレーションにより評価した一例を、他の構成例の特性と対比して表す図。 本発明の実施例4に係るアンテナ装置の構成を表す図。 本発明の実施例4に係るアンテナ装置の折りたたみ型携帯通信端末における実装箇所を例示する図。 本発明の実施例4に係るアンテナ装置のスマートフォン型携帯通信端末における実装箇所を例示する図。
符号の説明
1、3 基板
10、10a、10b、20、20a、20b、20c、20d、30、40 アンテナ装置
11、21、21a、21b、21c、21d 第1アンテナ素子
12、12a、12b、22 第2アンテナ素子
13、23 第1給電点
14、24 第1短絡点
15、25 第2給電点
16、26 第2短絡点
17、27 開放端
18、28 折り返し箇所
22a 分岐素子
29 ブリッジ
31 逆F型アンテナ素子
32 折り返し型アンテナ素子
33 第3アンテナ素子
41 アンテナ用部材
50、60 携帯通信端末
51 上筐体
52 下筐体
61 表示部側筐体
62 操作部側筐体

Claims (10)

  1. 第1の無線システムに接続された第1の給電点及び前記第1の無線システムと異なる第2の無線システムに接続された第2の給電点が設けられた基板と、
    前記第1の給電点において給電されると共に、前記基板において前記第1の給電点及び前記第2の給電点に挟まれた範囲に設けられた第1の短絡点において接地されるように構成された第1のアンテナ素子と、
    前記第2の給電点において給電されると共に、前記基板において前記第2の給電点の近傍であって前記第1の給電点及び前記第2の給電点に挟まれた範囲に設けられた第2の短絡点において接地されるように構成された第2のアンテナ素子とを備え、
    前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子は、それぞれ前記第1の給電点近傍の部分と前記第2の給電点近傍の部分が、互いに交差する向きに形成されたことを特徴とする無線装置。
  2. 第1の無線システムに接続された第1の給電点及び前記第1の無線システムと異なる第2の無線システムに接続された第2の給電点が設けられた基板と、
    前記第1の給電点において給電されると共に、前記基板において前記第1の給電点及び前記第2の給電点に挟まれた範囲に設けられた第1の短絡点において接地されるように構成された第1のアンテナ素子と、
    前記第2の給電点において給電されると共に、前記基板において前記第2の給電点の近傍であって前記第1の給電点及び前記第2の給電点に挟まれた範囲に設けられた第2の短絡点において接地されるように構成された第2のアンテナ素子とを備え、
    前記第1の給電点は、前記基板の第1の端辺の近傍において、前記第1の端辺の両端のうち前記第1のアンテナ素子に近い側の一端から、前記第1のアンテナ素子の共振周波数の8分の1波長以上であって6分の1波長以下の間隔をおいて設けられ、
    前記第1のアンテナ素子は、前記第1の給電点から前記第2のアンテナ素子に対して遠ざかる向きに形成されたことを特徴とする無線装置。
  3. 前記第1のアンテナ素子は、前記基板において前記第1の短絡点と前記第1の給電点の間隔が前記第1の給電点と前記第2の給電点の間隔より小さく、かつ、前記第1の短絡点と前記第2の給電点の間隔が前記第1の給電点と前記第2の給電点の間隔より小さい位置に設けられ、
    前記第2のアンテナ素子は、前記基板において前記第2の短絡点と前記第1の短絡点の間隔が前記第1の短絡点と前記第2の給電点の間隔より小さく、かつ、前記第2の短絡点と前記第2の給電点の間隔が前記第1の短絡点と前記第2の給電点の間隔より小さい位置に設けられてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線装置。
  4. 前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子は、前記基板の第1の端辺の近傍に配設されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無線装置。
  5. 前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子は、前記基板の第1の端辺の近傍において、互いに略同一の向きに形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無線装置。
  6. 前記第2のアンテナ素子は、折り返された往復線路からなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の無線装置。
  7. 前記第2のアンテナ素子は、折り返しモノポール型アンテナとして構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の無線装置。
  8. 前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子は、それぞれ給電されたとき相対的に高い電圧が分布する部分どうしが互いに遠ざかる向きに形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の無線装置。
  9. 前記第1のアンテナ素子は、前記基板の第1の端辺の近傍において前記第2のアンテナ素子から遠ざかる向きに形成されると共に、給電されたとき相対的に高い電圧が分布する部分が前記第1の端辺の一端の近傍に位置するように設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の無線装置。
  10. 前記第1のアンテナ素子及び前記第2のアンテナ素子は、同一の部材に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の無線装置。
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