以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の電極チップ抜き取り装置(以下「チップ抜き取り装置」と省略する)M1は、図1に示すように、抵抗溶接機の溶接ガン1の上下一対のシャンク3U,3Dに嵌め込まれた電極チップ6(6U,6D)を、シャンク3U,3Dから抜き取るためのものである。溶接ガン1は、図示しない多関節の溶接ロボットのアームの先端に保持されるサーボガンとしている。このサーボガン1は、汎用のものであり、一対の電極チップ6U,6Dを、エンコーダを内蔵させたサーボモータ2により移動させるように保持するとともに、相互に接近させる位置制御機能を備えて構成されている。
なお、実施形態では、特に断らない限り、シャンク3U,3Dの軸方向に沿った方向を上下方向とし、シャンク3U,3Dの軸直交方向であって抜き取り装置M1の後述する楔材40の移動方向に沿った方向を前後方向とし、シャンク3U,3Dの軸直交方向であって抜き取り装置M1の幅方向に沿った方向を左右方向として、説明する。
各シャンク3U,3Dには、先細り状とされた略円錐台状のテーパ軸3aが、段差面3bから突出して形成されている。各電極チップ6U,6Dは、溶接時のワークに接触させる先端側に、円形の先端面6aと、この先端面6aから円柱状の元部6cにかけて拡径する拡径部6bと、を備える構成とされている(図14参照)。また、各電極チップ6U,6Dは、元部6c側に、各シャンク3U,3Dの先細り状のテーパ軸3aを嵌合可能なテーパ状の嵌合孔6dを備える構成とされ、元部側端面6eと段差面3bとの間に隙間を設けるようにして、各シャンク3U,3Dのテーパ軸3aに嵌合される構成である(図14参照)。
抜き取り装置M1は、溶接ロボットの作動によるサーボガン1の稼動範囲内に配設されて、図2〜5に示すように、抜き取り装置本体15と、抜き取り装置本体15を支持するベース部8と、から構成されている。
ベース部8は、平板状とされて、ガイドロッド9と、ガイドロッド9の周囲に外装される圧縮コイルばね12とを介して、抜き取り装置本体15を支持している構成である。ガイドロッド9は、ベース部8から上方に突出して、シャンク3U,3Dの軸方向に沿うように上下方向に沿って配置されるもので、実施形態の場合、抜き取り装置本体15の左右両側となる位置に、2本配置されている。具体的には、ガイドロッド9,9は、図1,2に示すように、ベース部8の後端近傍となる位置であって、抜き取り装置本体15の前後の略中間部位(後述する駆動装置44のやや前方)となる位置に配置されるもので、抜き取り装置本体15の後述するホルダ45の側壁部46L,46Rから左右両側に突出するスリーブ部54に貫通されて、抜き取り装置本体15を上下に摺動可能に、構成されている。また、ガイドロッド9の上下両端側には、ブラケット10,11が、配設され、各ブラケット10,11とスリーブ部54との間に、計4個の圧縮コイルばね12が、ガイドロッド9,9に外装されて、介在されている。そして、抜き取り装置本体15は、この圧縮コイルばね12の伸縮により、ガイドロッド9,9に沿って、シャンク3U,3Dの軸方向に沿った上下方向に揺動可能に、ベース部8に対して取り付けられている構成である。
抜き取り装置本体15は、シャンク3U,3Dの軸方向に沿って上下で2分割された固定側部材17と移動側部材27とを備える抜き取り本体具16と、固定側部材17と移動側部材27との相互に対向する対向面の間に配置される楔材40と、楔材40を駆動させる駆動装置44と、抜き取り本体具16を支持するホルダ45と、から、構成されている。
抜き取り本体具16は、前後方向に沿った長尺状とされるもので、実施形態の場合、図5に示すように、前後の長さ寸法を、ホルダ45の前後の長さの略半分として、ホルダ45の前端側となる位置に、配置されている。
固定側部材17は、長尺板状とされるもので、楔材40側となる下面17c側を、楔材40の前方移動時における摺動案内面としている。固定側部材17における前端17a側には、前方側と上方側を開口されて、電極チップ6U,6Dを挿通可能な開口幅寸法とするように、前後方向の断面を略半長円状として切り欠かれた挿入用凹部18が形成され、この挿入用凹部18の底面側が、薄肉の板状とされている。そして、この挿入用凹部18の底面側の板状部位19に、図13のBに示すように、左右両縁側を略円弧状に湾曲させた略菱形状の開口19aが形成され、この開口19aの周縁が、電極チップ6U,6Dの元部側端面6eとシャンク3U,3Dの段差面3bとの間に挿入される固定側爪片部20とされる構成である。実施形態の場合、開口19aは、前後方向の開口幅寸法W1を電極チップ6U,6Dにおける元部6c側の直径D1より若干大きな寸法とし、左右方向の開口幅寸法W2を電極チップ6U,6Dの元部6c側の直径D1より小さな寸法に設定された略菱形状とされるもので(図13のB参照)、実施形態の場合、固定側爪片部20は、電極チップ6U,6Dをセットした際に、シャンク3U,3Dにおけるテーパ軸3aの前後両端付近を除いて、テーパ軸3aの周囲の軸回り方向に沿った略全域にわたって配置されている。また、挿入用凹部18の上端側は、上方から電極チップ6Uを挿入する際のガイドとなるように、前端側にかけて厚さ寸法を小さくするようにテーパ状に切り欠かれたガイド面18aとされている。また、固定側部材17における挿入用凹部18近傍と後端17b近傍とには、略円形として左右に貫通して構成される貫通孔21A,21Bが、形成されている。この貫通孔21A,21Bは、固定側部材17を、ホルダ45の後述する側壁部46L,46Rに固定させて支持させるための支持ピン53F,53Bを挿通させるためのものである。
実施形態の場合、固定側部材17は、固定側爪片部20(開口19a周縁の部位)を中心として、ホルダ45の側壁部46L,46R側に向かう方向となる左右方向で2分割された2つの固定側分割体23L,23Rから、構成されている。この固定側分割体23L,23Rは、左右対称形とされるもので、それぞれ、図7〜9に示すように、挿入用凹部18を構成する凹部用切欠部23aと、開口19aを構成する開口用切欠部23bと、貫通孔21A,21Bを構成する穴部23c,23cと、を備える構成である。また、各固定側分割体23L,23Rの後端近傍となる外側面側(図7における右側面側)には、外方に向かって突出するような段差部23dが、設けられている。この段差部23dは、固定側部材17が、後述する離隔用のコイルばね24により、各固定側分割体23L,23Rの前端側相互を左右方向に離隔させるように開き方向側に付勢された状態で配置された際に、各固定側分割体23L,23Rの前端付近がホルダの各側壁部46L,46Rと干渉するのを防止するための隙間を、各固定側分割体23L,23Rの前端付近と各側壁部46L,46Rとの間に確保するために、形成されている。さらに、各固定側分割体23L,23Rにおける穴部23c(固定側部材17における貫通孔21A)の後方側となる位置には、コイルばね24を収納可能な収納凹部23eが、相互に対向する内側面(図7における左側面)を切り欠くようにして、形成されている。なお、図7〜9には、右側の固定側分割体23Rを図示しているが、左側の固定側分割体23Lは、左右対称形とされる以外は、右側の固定側分割体23Rと同一の構成であり、詳細な説明を省略する。
そして、実施形態の場合、固定側部材17は、各固定側分割体23L,23Rの収納凹部23e内において左右方向に沿って配置される離隔用のコイルばね24により、図13のAに示すように、各固定側分割体23L,23Rの前端側部位を相互に左右に離隔させるように付勢される構成である。コイルばね24は、電極チップ6U,6Dの挿入前に、各固定側分割体23L,23Rの前端相互を、左右方向側となる開き方向側に離隔させるように付勢するもので、コイルばね24に開き方向側に付勢された状態では、各固定側分割体23L,23Rの開口用切欠部23b,23bから構成される開口19aは、左右の開口幅寸法W3(図13のA参照)を、電極チップ6U,6Dの元部6c側の直径D1(図14のA参照)より大きく設定されて、電極チップ6U,6Dを上下方向側から挿通可能に、設定されている。そして、固定側部材17は、電極チップ6U,6Dの挿入時に、後述する合体用付勢手段としてのエアシリンダ52により、図13のBに示すように、各固定側分割体23L,23Rを、コイルばね24の付勢力に抗して、前端側を相互に近接させるように閉じ方向側に付勢させ、内周側面を相互に当接させた状態で、電極チップ6U,6Dを抜き取ることとなる。
移動側部材27は、上面27c側に、後述する楔材40の押圧摺動面41と対応して、押圧摺動面41と平行とされ、後端27b側を下方に位置させるような受圧摺動面28を備えるように、後端27b側にかけて上下に狭幅とされる略直方体状とされるもので、前後の長さ寸法を、固定側部材17と略同一に設定されている。移動側部材27の前端27a側には、電極チップ6U,6Dを挿通可能な開口幅寸法とするように、前方側と下方側を開口されて、前後方向の断面を略半長円状として切り欠かれた挿入用凹部29が、形成され、この挿入用凹部29の底面(上面)側が、薄肉の板状とされている。そして、この挿入用凹部29の底面(上面)側となる板状部位30には、前述の固定側部材17に形成される開口19aに対応して、開口30aが形成されている。そして、この開口30aの周縁が、電極チップ6U,6Dの元部側端面6eとシャンク3U,3Dの段差面3bとの間に挿入される移動側爪片部31とされる構成である。なお、固定側爪片部20の厚さ寸法t1と移動側爪片部31の厚さ寸法t2との和は、図14に示すように、電極チップ6U(6D)の元部側端面6eとシャンク3U(3D)の段差面3bとの間の隙間T1よりも小さく設定されている。そして、実施形態の場合、移動側爪片部31は、強度を確保できるように、厚さ寸法t2を、固定側爪片部20の厚さ寸法t1より、大きく設定されている。また、挿入用凹部29の下端側は、下方から電極チップ6Dを挿入させる際のガイドとなるように、前端側にかけて厚さ寸法を小さくするようにテーパ状に切り欠かれたガイド面29aとされている。
移動側部材27における後端27b近傍には、回動軸部32が、ホルダ45の各側壁部46L,46R側となる左右両側に向かって突出するように、形成されている。この回動軸部32は、固定側部材17の後端17b近傍を固定させる支持ピン53Bの略直下となる位置に、形成されるもので、ホルダ45の各側壁部46L,46Rに形成される揺動支持部47に軸支される構成である。また、移動側部材27における前端27a近傍であって、挿入用凹部29近傍となる位置には、移動側部材27を、ホルダ45の後述する底壁部49から離隔させ、固定側部材17側となる上方側に付勢する支持用付勢手段としてのコイルばね34を収納させるための略円筒状に凹ませた収納凹部33が、形成されている。実施形態の場合、収納凹部33は、後述するコイルばね37の略直下となる位置に、配設されている。そして、移動側部材27は、コイルばね34により常に底壁部49から離隔させるような付勢力を受けて、固定側部材17側に向かって付勢された状態で、コイルばね34を介して、ホルダ45の底壁部49に支持されるとともに、コイルばね34より後方側となる位置において、回動軸部32を中心として、側壁部46L,46Rに対して回動可能に軸支される構成である。
また、実施形態の場合、移動側部材27は、前述の固定側部材17と同様に、移動側爪片部31(開口30a周縁の部位)を中心として、左右方向で2分割された2つの移動側分割体36L,36Rから、構成されている。この移動側分割体36L,36Rは、左右対称形とされるもので、それぞれ、図10〜12に示すように、挿入用凹部29を構成する凹部用切欠部36aと、開口30aを構成する開口用切欠部36bと、収納凹部33を構成する収納用切欠部36cと、を備える構成である。また、各移動側分割体36L,36Rの後端近傍となる外側面側(図10における右側面側)には、前述の固定側分割体23L,23Rと同様に、外方に向かって突出するような段差部36dが、設けられている。また、各移動側分割体36L,36Rにも、各固定側分割体23L,23Rにおける収納凹部23eの略直下となる位置に、離隔用のコイルばね37を収納可能な収納凹部36eが、形成されている。なお、図10〜12には、右側の移動側分割体36Rを図示しているが、左側の移動側分割体36Lは、左右対称形とされる以外は、右側の移動側分割体36Rと同一の構成であり、詳細な説明を省略する。
また、移動側部材27も、収納凹部36e内において、前述のコイルばね24と同様に左右方向に沿って配置される離隔用のコイルばね37(図5参照)により、各移動側分割体36L,36Rの前端側部位を相互に左右に離隔させるように付勢される構成である。そして、移動側部材27は、前述の固定側部材17と同様に、電極チップ6U,6Dの挿入前には、前端側を開き方向側に付勢されて、電極チップ6U,6Dを上下方向側から挿通可能として、電極チップ6U,6Dの挿入時に、合体用付勢手段としてのエアシリンダ52により、各移動側分割体36L,36Rを、コイルばね37の付勢力に抗して、前端側を相互に近接させるように閉じ方向側に付勢させ、内周側面を相互に当接させた状態で、電極チップ6U,6Dを抜き取る構成とされている。
楔材40は、図5に示すように、前後方向の長さ寸法を、ホルダ45の前後の長さの略半分として、前端側を、移動側部材27の後端27bの上方に位置させるように、固定側部材17と移動側部材27との相互に対向する対向面である下面17cと上面27cとの間に配置されている。そして、楔材40は、前端側から後端側にかけて厚さ寸法を厚くするようなテーパ状とされて、固定側部材17側となる上面40a側を、固定側部材17の下面17cに対して摺動可能に前後方向に沿わせた形状とし、移動側部材27側となる下面40b側に、移動側部材27の受圧摺動面28と平行とされる押圧摺動面41を配設させた構成とされている。また、楔材40は、図15のAに示すように、上下方向に沿わせるように形成される前面40cと、上面40a及び下面40b(押圧摺動面41)との間に、それぞれ、テーパ面40d,40eを配設させた構成とされている。このテーパ面40eが、押圧摺動面41の前端41aにおいて、固定側部材17側となる上方側に延びる折曲面とされるもので、折曲面40eと押圧摺動面41との交差部位が、楔材40の前進移動時に、移動側部材27の受圧摺動面28に当接する前端当接部42を構成することとなる。そして、楔材40は、前進移動初期に、前端当接部42を、図15のAの二点鎖線に示すように、移動側部材27の受圧摺動面28において、コイルばね34より後方側であって回動軸部32により前方側となるエリア、具体的には、コイルばね34と回動軸部32との間の略中央となる位置28aに当接させる構成とされている。
また、楔材40は、ロッド43を介して駆動装置44に連結されている。駆動装置44は、作動時に、ロッド43を繰り出し可能に構成されるもので、ロッド43を介して、楔材40を、図6に示すように、固定側部材17と移動側部材27との間に差し込むように前進移動させる構成とされている。駆動装置44は、ロッド43の繰り出し時に、楔材40を前進移動可能であれば、駆動源を特に限られるものではなく、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。
ホルダ45は、固定側部材17及び移動側部材27の左右両側に配置される側壁部46L,46Rと、移動側部材27の下方に配置される底壁部49と、固定側部材17の後方側に配置される天井壁部50と、から構成されている。また、ホルダ45における各側壁部46L,46Rの後端近傍には、ガイドロッド9,9を上下に貫通可能なスリーブ部54が、左右両側に突出して、配設されている。
各側壁部46L,46Rは、固定側部材17,移動側部材27における挿入用凹部18,29の部位を除いて、抜き取り本体具16と楔材40との左右両側を略全域にわたって覆うように構成されるもので、後端側を、駆動装置44に連結させている。また、各側壁部46L,46Rは、上端側において、支持ピン53F,53Bを利用して、固定側部材17を固定させている。そして、各側壁部46L,46Rにおける移動側部材27に形成される回動軸部32に対応した部位には、回動軸部32を軸支する揺動支持部47が、配設されている。
揺動支持部47は、回動軸部32を挿通可能とされるとともに、下端側を前方に位置させ、上端側を後方に位置させるような略長円状の開口47aから、構成されている。また、揺動支持部47(開口47a)は、前面側を、前進移動する楔材40の押圧時における移動側部材27の前進移動を規制して、回動軸部32を支持する支持面47cとしている。そして、揺動支持部47(開口47a)は、開口形状を、具体的には、楔材40の前進移動時において、図15のB及び図16のAに示すように、移動側部材27を、コイルばね34の付勢力に抗して、移動側爪片部31の前端における固定側爪片部20の前端との当接部位31aを回転中心P1として、固定側部材17から離れる下方への回転(第1動作)時の回動軸部32の移動を許容し、図16のA及び図16のBの二点鎖線に示すように、その後の揺動支持部47の支持面47bに前方移動を規制された回動軸部32付近を回転中心P2とした移動側爪片部31を固定側爪片部20から離隔させる方向への回転(第2動作)時の回動軸部32の動作を許容し、さらにその後の移動側爪片部31をシャンク3U,3Dの軸方向に沿って固定側部材17の固定側爪片部20から下方に離隔させる移動(第3動作)時の回動軸部32の移動を許容するような、開口形状として、構成されている。
また、各側壁部46L,46Rにおいて、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを相互に離隔させるように付勢する離隔用のコイルばね24,37の左右側方となる4箇所には、図2〜4に示すように、作動時に、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、それぞれ、相互に近接させて内周側面を相互に当接させるように、閉じ方向側に付勢させて復元可能な、合体用付勢手段としてのエアシリンダ52が、配設されている。このエアシリンダ52は、作動時に、図13のBに示すように、内周側に向かって突出させたピストン52aにより、コイルばね24,37によって開き方向側に付勢されて相互に離隔されている各固定側分割体23L,23R(移動側分割体36L,36R)の前端側を、相互に当接させるように、閉じ方向側に付勢させて固定側部材17及び移動側部材27を形成する構成である。
底壁部49は、側壁部46L,46Rの下端側において、移動側部材27の下方から楔材40の下方にかけてを覆うように配置されるもので、後端側を駆動装置44に連結されるとともに、左右両端側を側壁部46L,46Rに連結されている。底壁部49は、支持用付勢手段としてのコイルばね34を介して移動側部材27を支持する構成とされている。
天井壁部50は、図5に示すように、固定側部材17の後方において、楔材40の上方を覆うように配置されるもので、後端側を駆動装置44に連結されるとともに、左右両端側を側壁部46L,46Rに連結されている。
次に、第1実施形態の抜き取り装置M1の使用状態について説明すると、溶接ロボットが、サーボガン1を抜き取り装置M1の近傍に配置させ、サーボガン1が作動されて、上方のシャンク3Uに嵌合されているチップ6Uを、抜き取り本体具16における固定側部材17の挿入用凹部18内に、上方から挿入させるように、シャンク3Uを下方移動させる。このとき、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rの前端側は、コイルばね24,37により開き方向側に付勢された状態である。そして、チップ6Uを、図14のA,Bに示すように、開口19aの上方から、元部6c側の部位まで挿入させた後、合体用付勢手段としてのエアシリンダ52を作動させて、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、前端側を当接させるように、閉じ方向側に付勢させて合わせ、固定側部材17及び移動側部材27を形成する。そして、チップ6Uをさらに下方移動させ、図14のC及び図15のAに示すように、固定側爪片部20,移動側爪片部31を、電極チップ6Uの元部側端面6eとシャンク3Uの段差面3bとの間に挿入させる。
その後、駆動装置44を作動させ、楔材40を前進移動させれば、まず、図15のAの二点鎖線に示すように、楔材40の前端当接部42が、移動側部材27の受圧摺動面28において、コイルばね34より後方側であって回動軸部32より前方側となるエリアの中央位置28aに、当接することとなる。その後、楔材40を、前端当接部42を、移動側部材27の受圧摺動面28に摺動させつつ、移動側部材27を押圧するように前進移動させれば、移動側部材27が、移動側爪片部31の前端における固定側爪片部20前端との当接部位31aを回転中心P1として、後端27b側を固定側部材17から離れる下方に向けるように、回転されて、図15のBに示すごとく、固定側爪片部20が、上面側をシャンク3Uの段差面3bに当接させ、移動側爪片部31の後下端側が、電極チップ6Uの元部側端面6eに当接することとなる。その後、さらに、楔材40を、前端当接部42を移動側部材27の受圧摺動面28に摺動させつつ移動側部材27を押圧するように前進移動させれば、図16のAに示すように、移動側部材27が、後端27bの下端側をホルダ45の底壁部49に当接させるまで、当接部位31aを回転中心P1として、さらに回転されて(第1動作)、下方移動した移動側爪片部31の後端31b側の部位により、電極チップ6Uが、シャンク3Uの軸方向に対して傾くように、元部側端面6eにおける後部側部位6ebを下方に押圧されることとなる。このとき、第1動作において、揺動支持部47が、支持面47bにより回動軸部32の前面側を支持することから、移動側部材27は、楔材40により押されても前進移動せず、円滑に回転することとなる。
そして、その後、移動側部材27は、楔材40の前進移動に伴って、図16のA及びBの二点鎖線に示すごとく、揺動支持部47に支持された回動軸部32を回転中心P2として、移動側爪片部31を固定側爪片部20から離隔させつつ、受圧摺動面28を楔材40の押圧摺動面41に面接触させるように、回転して、作動前の状態と略平行(固定側部材17と略平行)となるように配置されることとなり(第2動作)、下方移動した移動側爪片部31の前端31c側の部位により、電極チップ6Uが、元部側端面6eにおける前部側部位6efを下方に押圧されることとなる。その後、さらに、楔材40を前進移動させれば、楔材40の押圧摺動面41によって受圧摺動面28を押圧されることにより、移動側部材27が、全体をシャンク3Uに沿って平行移動させるように、支持用付勢手段としてのコイルばね34に抗して、固定側部材17から離隔させるように下方移動することとなる(第3動作)。そして、固定側爪片部20から離隔させるように下方移動した移動側爪片部31により、電極チップ6Uの元部側端面6e全体がシャンク3Uの段差面3bから離隔されるように押圧されることとなって、シャンク3Uから電極チップ6Uを抜き取ることができる。
電極チップ6Uの抜き取り後、合体用付勢手段としてのエアシリンダ52の作動を停止し、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rの前端側を、コイルばね24,37により開き方向側に付勢させた状態で、シャンク3Uを上方移動させる。そして、楔材40を、作動前の位置に戻す。楔材40を作動前の位置に戻せば、支持用付勢手段としてのコイルばね34が復元して、移動側部材27が、抜き取り前の位置に配置されることとなる。
逆に、下方のシャンク3Dに嵌合されている電極チップ6Dを抜き取る場合には、下方のシャンク3Dに嵌合されているチップ6Dを、抜き取り本体具16における移動側部材27の挿入用凹部29内に、下方から挿入させるように、シャンク3Dを上方移動させ、チップ6Dを、開口30aの下方から、元部6c側の部位まで挿入させた後、エアシリンダ52を作動させて、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、前端側を当接させるように、閉じ方向側に付勢させる。そして、チップ6Dをさらに上方移動させ、図17のAに示すように、固定側爪片部20,移動側爪片部31を、電極チップ6Dの元部側端面6eとシャンク3Dの段差面3bとの間に挿入させた後、同様に、駆動装置44を作動させて、図17のB,Cに示すごとく、楔材40を前進移動させれば、下方移動した移動側爪片部31によりシャンク3Dの段差面3bが押し下げられるような態様となるが、シャンク3Dの段差面3bは下方移動しないことから、この下方移動した移動側爪片部31の押圧力を受けて、抜き取り装置本体15全体が、コイルばね12に支持されつつ上方へ押し上げられ、相対的に、電極チップ6Dの元部側端面6eが、固定側爪片部20により押し上げられて、シャンク3Dの段差面3bから離隔されるような態様となって、図17のCに示すように、シャンク3Dから電極チップ6Dを抜き取ることができる。下方のシャンク3Dに嵌合されている電極チップ6Dを抜き取る場合、電極チップ6Dが自然に落下しないことから、図17のCに示すように、エアAを吹き付けて落下させる構成としてもよい。
すなわち、第1実施形態のチップ抜き取り装置M1では、移動側部材27を3段階の動作で作動させることとなる、そして、まず、移動側部材27を、第1動作として、移動側爪片部31の前端における固定側爪片部20の前端との当接部位31aを回転中心P1として回転させることにより、移動側爪片部31の後端31b側が、電極チップ6Uの元部側端面6e(下方の電極チップ6Dを抜き取る場合は、シャンク3Dの段差面3b)に当接されることとなる。そのため、電極チップ6Uの元部側端面6e(下方の電極チップ6Dを抜き取る場合は、シャンク3Dの段差面3b)が、まず、第1動作としてのてこ動作により、後部側部位6ebを、移動側爪片部31の後端31b側の部位により押圧されて、移動側爪片部31がくぎ抜きのように作用することから、このとき、電極チップ6U,6Dがシャンク3U,3Dから外れなくても、嵌合状態を緩めることができ、その後、移動側部材27が回動軸部32付近を回転中心P2として回転した第2動作の際や、移動側部材27が平行移動する第3動作の際の力で、容易に電極チップ6U,6Dをシャンク3U,3Dから抜き取ることができる。そのため、単に、移動側部材を、固定側部材に対して平行移動させるように移動させて電極チップを押し下げる場合と比較して、大きなエネルギーを必要とせず、小さな力で、円滑に電極チップ6U,6Dを抜き取ることができる。その結果、第1実施形態のチップ抜き取り装置M1では、従来の電極チップ抜き取り装置と比較して、駆動力を1/3〜1/5程度とすることができ、さらに、楔材40の前進移動量や、楔材40の移動方向に沿った側の寸法(前後の長さ寸法)を小さくすることができて、装置をコンパクトにすることができる。
したがって、第1実施形態の電極チップ抜き取り装置M1では、抜き取り時の駆動力を低減させて装置をコンパクトにしても、電極チップ6U,6Dを円滑に抜き取ることができる。
また、第1実施形態のチップ抜き取り装置M1では、固定側部材17と移動側部材27とを、それぞれ、固定側爪片部20,移動側爪片部31(開口19a,30a)を中心としてシャンク3U,3Dの軸直交方向に沿う方向となる前後方向に沿う分割面として、左右に2分割された固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rから、構成し、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、それぞれ、前端近傍となる部位において、相互に合わせて固定側部材17と移動側部材27とを形成するように付勢する合体用付勢手段としてのエアシリンダ52を介して各側壁部46L,46Rに支持させる構成としている。そのため、第1実施形態のチップ抜き取り装置M1では、電極チップ6U,6Dをシャンク3U,3Dの軸方向となる上下方向に沿って移動させるだけで、電極チップ6U,6Dを抜き取り装置M1にセットすることができ、電極チップ6U,6Dをシャンク3U,3Dの軸直交方向となる前後方向や左右方向に移動させなくともよい。そのため、電極チップ6U,6Dの移動スペースを小さくすることができ、装置を一層コンパクト化することが可能となる。また、第1実施形態のチップ抜き取り装置M1では、電極チップ6U,6Dを抜き取り装置本体15にセットした際において、各固定側爪片部20,移動側爪片部31が、電極チップ6U,6Dの元部側端面6eとシャンク3U,3Dの段差面3bとの間において、シャンク3U,3Dのテーパ軸3aの周囲の軸回り方向に沿った全域に配置されていることから(図18のA参照)、抜き取り時に、各固定側爪片部20,移動側爪片部31が、電極チップ6U,6Dの元部側端面6e若しくはシャンク3U,3Dの段差面3bと当接するエリアを広く確保することができる。
そして、第1実施形態のチップ抜き取り装置M1では、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、電極チップ6U,6Dの挿入前に、前端側を相互に離隔させるように、離隔用のコイルばね24,37により開き方向側に付勢させた状態とし、電極チップ6U,6Dを、元部6c側の部位まで、開口19a,30a内に挿入させた後、合体用付勢手段としてのエアシリンダ52を作動させて、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、前端側で相互に合わせるように閉じ方向に付勢させて、固定側部材17及び移動側部材27を形成し、電極チップ6U,6Dを抜く構成である。すなわち、第1実施形態の抜き取り装置M1では、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rを、開き方向側に付勢するコイルばね24,37を使用して、電極チップ6U,6Dの挿入前には、開口19a,30aを、電極チップ6U,6Dの上下方向側からの挿入を可能な寸法に、開かせていることから、電極チップ6U,6Dの先端面6aの形状にかかわらず、電極チップ6U,6Dを開口19a,30aに挿入させ、電極チップ6U,6Dの元部側端面6eとシャンク3U,3Dの段差面3bとの間に、固定側爪片部20,移動側爪片部31を挿入させることができ、先端面6aから拡径部6bにかけての形状を大きく変形させた電極チップ6U,6Dであっても、円滑に抜き取ることができる。
また、抜き取る際の電極チップ6U,6Dの先端面6aから拡径部6bにかけての形状を考慮しなければ、図18に示す構成の抜き取り装置本体15Aを使用してもよい。抜き取り装置本体15Aでは、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36R間に、前端側を開き方向側に付勢するコイルばねは配置されず、図18のAに示すごとく、各固定側分割体23L,23R(移動側分割体36L,36R)とホルダ45の側壁部46L,46Rとの間に、各固定側分割体23L,23R(移動側分割体36L,36R)の前端側を閉じ方向側に付勢する合体用付勢手段としてのコイルばね56が、それぞれ、配設されている構成である。抜き取り装置本体15Aでは、電極チップ6U,6Dの挿入時に、図19のA,Bに示すように、電極チップ6U,6Dの先端面6aから拡径部6bにかけての部位により、各固定側分割体23L,23R,移動側分割体36L,36Rの前端側を、コイルばね56の付勢力に抗して左右に押し開くようにして(図18のB参照)、電極チップ6U,6Dを、上下方向側から、開口19a,30aに挿入させる。そして、電極チップ6U,6Dが開口19a,30aに挿通されれば、コイルばね56が復元して、図19のCに示すように、固定側爪片部20,移動側爪片部31が、電極チップ6U(6D)の元部側端面6eとシャンク3U(3D)の段差面3bとの間に挿入されることとなる。抜き取り装置本体15Aをこのような構成とすれば、前述の抜き取り装置本体15と比較して構成を簡便にすることができる。
さらにまた、実施形態のチップ抜き取り装置M1では、抜き取り装置本体15を、シャンク3U,3Dの軸方向側となる上下方向に沿って揺動可能に、付勢手段としてのコイルばね12を介してガイドロッド9に支持させていることから、固定側爪片部20,移動側爪片部31をシャンク3U,3Dの段差面3bと電極チップ6U,6Dの元部側端面6eとの間に挿入させた際の電極チップ6U,6Dの配置位置が、チップ抜き取り装置M1に対して、シャンク3U,3Dの軸方向に沿った上下方向に沿って多少異なっていても、上下方向の移動距離を多めに確保しておけば、対応させることができて、抜き取り作業ができることから、サーボガン1を保持した抵抗溶接機における電極チップ6U,6Dの抜き取り工程のティーチングを容易にさせることができる。
次に、本発明の第2実施形態である抜き取り装置M2について説明をする。抜き取り装置M2は、図20〜22に示すように、図示しないサーボガンの稼動範囲内において、載置台59に載置された抜き取り装置本体60から、構成されている。
抜き取り装置本体60は、図23に示すように、前後方向に沿った長尺状とされるとともに上下で並設される2つの抜き取り本体具61U,61Dと、楔材77と、楔材77を駆動させる駆動装置44Aと、抜き取り本体具61U,61Dを支持するホルダ82と、から、構成されている。
抜き取り本体具61U,61Dは、シャンク3U,3Dの軸方向に沿った上下方向で対称とされるもので、上方に配置される抜き取り本体具61Uは、シャンク3Uに嵌め込まれた電極チップ6Uを抜き取る構成とされ、下方に配置される抜き取り本体具61Dは、シャンク3Dに嵌め込まれた電極チップ6Dを抜き取る構成とされている。各抜き取り本体具61U,61Dは、それぞれ、上下で2分割された固定側部材62U,62Dと移動側部材68U,68Dとを備える構成とされている。なお、実施形態では、以下において、上方側に配置される抜き取り本体具61Uの固定側部材62Uと移動側部材68Uとを詳細に説明するが、下方に配置される抜き取り本体具61Dの固定側部材62D及び移動側部材68Dは、抜き取り本体具61Uの固定側部材62U及び移動側部材68Uと、上下対称形である以外は、同様の構成であり、同一の符号の末尾に「D」を付して説明を省略する。
固定側部材62Uは、前後方向の長さ寸法をホルダ82と略同一に設定された長尺板状とされるもので、楔材77の後述する楔本体78U側となる下面62c側を、楔本体78Uの前方移動時における摺動案内面としている。固定側部材62Uにおける前端62a側には、前方側と上方側を開口されて、シャンク3Uを挿通可能とするように、前後方向の断面を略半長円状として切り欠かれた挿入用凹部63Uが形成され、この挿入用凹部63Uの下方となる底面側が、薄肉の板状とされている。そして、この挿入用凹部63Uの底面側の板状部位64Uに、前端側から略U字形状に切り欠いて構成される開口64aが、形成されている。この開口64aは、開口幅寸法W4(図21参照)を、電極チップ6Uの元部6c側の直径D1(図14参照)より小さく設定されるとともに、シャンク3Uのテーパ軸3aを挿通可能な寸法に、設定されている。そして、開口64aにおける後縁64b側の部位が、電極チップ6Uの元部側端面6eとシャンク3Uの段差面3bとの間に挿入される固定側爪片部65Uとされている。また、固定側部材62Uは、左右両端側を、ホルダ82の後述する側壁部83L,83Rに連結されるとともに、後端62b側を駆動装置44Aに連結されている。
移動側部材68Uは、図23に示すように、前後の長さ寸法を、固定側部材62Uの半分程度として、ホルダ82の前端側となる位置に配置されるもので、上面68c側に、楔材77の楔本体78Uの押圧摺動面79Uと対応して、押圧摺動面79Uと平行とされ、後端68b側を下方に位置させるような受圧摺動面69Uを備えるように、後端68b側にかけて上下に狭幅とされる略直方体状とされている。移動側部材68Uにおける前端68a側には、前方側と下方側とを開口されて、チップ6U抜き取り時に、チップ6Uを収納可能とされる収納凹部70Uが、前後方向の断面を略半長円状として、上面側を除いた上下の全域にわたって、形成されている。そして、収納凹部70Uの上面(底面)側は、薄肉の板状とされており、この板状部位71Uには、固定側部材62Uの板状部位64Uに形成される開口64aに対応して、開口71aが、形成されている。そして、この開口71aにおける後縁71b側の部位が、電極チップ6Uの元部側端面6eとシャンク3Uの段差面3bとの間に挿入される移動側爪片部72Uとされている。第2実施形態の抜き取り装置M2においても、図22に示すように、固定側爪片部65Uの厚さ寸法t3と移動側爪片部72Uの厚さ寸法t4との和は、電極チップ6Uの元部側端面6eとシャンク3Uの段差面3bとの間の隙間T1(図14参照)よりも小さく設定され、移動側爪片部72Uは、厚さ寸法t4を、固定側爪片部65Uの厚さ寸法t3より大きくするように、設定されている。
移動側部材68Uにおける後端68b近傍には、前述の移動側部材27と同様に、回動軸部73Uが、ホルダ82の各側壁部83L,83R側となる左右両側に向かって突出するように、形成されている。この回動軸部73Uは、ホルダ82の各側壁部83L,83Rに形成される揺動支持部84Uに軸支される構成である。また、移動側部材68Uにおける前端68a近傍であって、収納凹部70U近傍となる位置には、移動側部材68Uを、ホルダ82の後述する底壁部としての区画壁部86から離隔させ、固定側部材62U側となる上方側に付勢する支持用付勢手段としてのコイルばね75Uを収納するための略円筒状に凹ませた収納凹部74Uが、形成されている。そして、移動側部材68Uは、コイルばね75Uにより常に区画壁部86から離隔させるような付勢力を受けて、固定側部材62U側に向かって付勢された状態で、コイルばね75Uを介して、ホルダ82の区画壁部86に支持されるとともに、コイルばね75Uより後方側となる位置において、回動軸部73Uを中心として、側壁部83L,83Rに対して回動可能に軸支される構成である。
楔材77は、各抜き取り本体具61U,61Dにおける固定側部材62U,62Dと移動側部材68U,68Dとの間に配置される2つの楔本体78U,78Dと、楔本体78U,78Dを連結するように上下方向に沿って配設される連結板部81と、から構成されるもので、前述の抜き取り装置M1と同様に、連結板部81を、ロッド43Aを介して駆動装置44Aに連結させて、駆動装置44Aの作動時に、各楔本体78U,78Dを前進移動可能に、構成されている。各楔本体78U,78Dは、上下対称形とされるもので、上側に配置される楔本体78Uを例に採り説明すると、楔本体78Uは、前後方向の長さ寸法を、固定側部材62Uの半分程度として、前端側を、移動側部材68の後端68bの上方に位置させるように、固定側部材62Uと移動側部材68Uとの相互に対向する対向面である下面62cと上面68cとの間に配置されている。そして、楔本体78Uは、前端側から後端側にかけて厚さ寸法を厚くするようなテーパ状とされて、固定側部材62U側となる上面78a側を、固定側部材62Uの下面62cに対して摺動可能に略前後方向に沿わせた形状とし、移動側部材68U側となる下面78b側に、移動側部材68Uの受圧摺動面69Uと平行とされる押圧摺動面79Uを配設させた構成とされている。また、楔本体78Uは、前述の楔材40と同様に、上下方向に沿わせるように形成される前面78cと、上面78a及び下面78b(押圧摺動面79U)との間に、それぞれ、テーパ面78d,78eを配設させた構成とされている(図25のA参照)。そして、テーパ面78eが、押圧摺動面79Uの前端において、固定側部材62U側となる上方側に延びる折曲面とされるもので、折曲面78eと押圧摺動面79Uとの交差部位が、楔本体78Uの前進移動時に、移動側部材68Uの受圧摺動面69Uに当接する前端当接部80Uを構成することとなる。
楔本体78U(78D)は、前進移動初期に、前端当接部80U(80D)を、図25のBの二点鎖線に示すように、移動側部材68U(68D)の受圧摺動面69U(69D)において、コイルばね75U(75D)より後方側であって回動軸部73U(73D)により前方側となるエリア、具体的には、コイルばね75U(75D)と回動軸部73U(73D)との間の略中央となる位置69aに当接させ、その後、前進移動して、前述の楔材40と同様に、移動側部材68U(68D)を3段階で動作させることとなり、図24に示すように、固定側爪片部65U,65Dと移動側爪片部72U,72Dとを上下方向に沿って相互に離隔させるように、上方に位置する移動側部材68Uが下方移動し、下方に位置する移動側部材68Dが上方移動することとなる。
ホルダ82は、抜き取り本体具61U,61Dの左右両側に配置される側壁部83L,83Rと、抜き取り本体具61U,61D間に配置される底壁部としての区画壁部86と、から、構成されている。
各側壁部83L,83Rは、抜き取り本体具61U,61Dと楔材77との左右両側を略全域にわたって覆うように構成されるもので、後端側を、駆動装置44Aに連結されている。また、各側壁部83L,83Rは、上下両端側において、固定側部材62U,62Dを固定させている。そして、各側壁部83L,83Rにおける移動側部材68U,68Dの回動軸部73U,73Dに対応した部位には、回動軸部73U,73Dを軸支する揺動支持部84U,84Dが、配設されている。
揺動支持部84U,84Dは、上下対称となる位置に、配設されて上下対称形とされるもので、上側に配置される揺動支持部84Uを例に採り説明すると、揺動支持部84Uは、前述の揺動支持部47と同様に、回動軸部73Uを挿通可能とされるとともに、下端側を前方に位置させ、上端側を後方に位置させるような略長円状の開口84aから、構成されている。また、揺動支持部84(開口84a)は、前面側を、前進移動する楔材77(楔本体78U)の押圧時における移動側部材68Uの前進移動を規制して、回動軸部73Uを支持する支持面84bとしている。そして、揺動支持部84(開口84a)は、具体的には、前述の揺動支持部47と同様に、楔本体78Uの前進移動時において、移動側部材68Uを、コイルばね75Uの付勢力に抗して、移動側爪片部72Uの前端における固定側爪片部65Uの前端との当接部位72aを回転中心P3として、固定側部材62Uから離れる下方への回転(第1動作)時の回動軸部73Uの移動を許容し、その後の揺動支持部84Uの支持面84bに前方移動を規制された回動軸部73Uを回転中心P4とした移動側爪片部72Uを固定側爪片部65Uから離隔させる方向への回転(第2動作)時の回動軸部73Uの動作を許容し、さらにその後の移動側爪片部72Uをシャンク3U,3Dの軸方向に沿って固定側部材62Uの固定側爪片部65Uから下方に離隔させる移動(第3動作)時の回動軸部73Uの移動を許容するような、開口形状として、構成されている。
区画壁部86は、前後の長さ寸法を、移動側部材68U,68Dの前後の長さ寸法より若干短く設定されるもので、移動側部材68U,68Dの間において、前後方向に沿うように配設され、左右両端側を、側壁部83L,83Rに連結されている。そして、区画壁部86は、上面側において、コイルばね75Uを介して移動側部材68Uを支持し、下面側において、コイルばね75Dを介して移動側部材68Dを支持する構成とされている。
第2実施形態のチップ抜き取り装置M2では、抜き取り時に、図25のA,Bに示すように、シャンク3U,3Dに嵌合されているチップ6U,6Dを、それぞれ、各抜き取り本体具61U,61Dの前方側から、シャンク3U,3Dのテーパ軸3aを開口64a,71aに挿通させるようにして、収納凹部70U,70Dに収納させ、固定側爪片部65U,65D,移動側爪片部72U,72Dを、それぞれ、チップ6U,6Dの元部側端面6eとシャンク3U,3Dの段差面3bとの間に挿入させる。その後、駆動装置44Aを作動させ、図26のA,Bに示すように、移動側部材68Uを楔本体78Uにより押し上げ、移動側部材68Dを楔本体78Dにより押し下げれば、移動した移動側部材68U,68Dの移動側爪片部72U,72Dにより、チップ6U,6Dの元部側端面6eをシャンク3U,3Dの段差面3bから離隔させることができ、図26のBに示すように、シャンク3U,3Dからチップ6U,6Dを抜き取ることができる。
そして、第2実施形態の抜き取り装置M2においても、上方側の電極チップ6Uの抜き取りを例に採り説明すると、電極チップ6Uの抜き取り時において、固定側爪片部65U,移動側爪片部72Uを、チップ6Uの元部側端面6eとシャンク3Uの段差面3bとの間に挿入させた状態で、楔材77を前進移動させれば、まず、図25のBの二点鎖線に示すように、楔本体78Uの前端当接部80Uが、移動側部材68Uの受圧摺動面69Uにおいて、コイルばね75Uの後方側であって回動軸部73Uより前方側となる中央位置69aに、当接することとなり、その後、楔本体78Uを、前端当接部80Uを受圧摺動面69Uに摺動させつつ、移動側部材68Uを押圧するように移動させれば、移動側部材68Uが、移動側爪片部72Uの前端における固定側爪片部65U前端との当接部位72aを回転中心P3として、回転されて(第1動作)、下方移動した移動側爪片部72Uの後端側の部位により、電極チップ6Uが、シャンク3Uの軸方向に対して傾くように、下方に押圧されることとなる(図26のA参照)。そして、その後、楔本体78Uをさらに前進移動させれば、移動側部材68Uが、移動側爪片部72Uを固定側爪片部65Uから離隔させつつ、受圧摺動面69Uを押圧摺動面79Uに面接触させるように、回動軸部73Uを回転中心P4として、作動前の状態と略平行となるように配置されることとなり(第2動作)、さらなる楔本体78Uの前進移動に伴って、受圧摺動面69Uを押圧摺動面79Uにより押圧されることにより、図26のBに示すように、移動側部材68Uが、全体をシャンク3Uの軸方向に沿って平行移動させるように、コイルばね75Uの付勢力に抗して、固定側部材62Uから離隔させるように下方移動することとなる(第3動作)。そして、移動側爪片部72Uが、シャンク3Uの軸方向に沿って固定側爪片部65Uから離隔させるように下方移動することとなる。そして、シャンク3Uの軸方向に沿って固定側爪片部65Uから離隔移動された移動側爪片部72Uにより、電極チップ6Uの元部側端面6e全体がシャンク3Uの段差面3bから離隔されることとなり、シャンク3Uから電極チップ6Uを抜き取ることができる。
すなわち、第2実施形態のチップ抜き取り装置M2においても、移動側部材68Uを3段階で動作させることとなり、まず、移動側部材68Uを、第1動作として、移動側爪片部72Uの前端における固定側爪片部65Uの前端との当接部位72aを回転中心P3として回転させることにより、移動側爪片部72Uの後端側が、電極チップ6Uの元部側端面6eに当接されることとなる。そのため、後部側部位6ebを、移動側爪片部72Uの後端72b側により押圧されて、移動側爪片部72Uがくぎ抜きのように作用することから、このとき、電極チップ6Uがシャンク3Uから外れなくても、嵌合状態を緩めることができ、その後、移動側部材68Uが回動軸部73U付近を回転中心として回転した第2動作の際や、移動側部材68Uが平行移動する第3動作の際の力で、容易に電極チップ6Uをシャンク3Uから抜き取ることができる。そのため、小さな力で、円滑に電極チップ6Uを抜き取ることができる。第2実施形態のチップ抜き取り装置では、2つの抜き取り本体具61U,61Dは上下対称形とされており、下方のシャンク3Dに嵌め込まれたチップ6Dも、図26に示すように、同様にして、抜き取り本体具61Dにより抜き取ることができる。その結果、第2実施形態の実施形態のチップ抜き取り装置M2においても、従来の電極チップ抜き取り装置と比較して、駆動力を1/3〜1/5程度とすることができ、楔材77の前進移動量や、楔材77における楔本体78U,78Dの移動方向に沿った側の寸法(前後の長さ寸法)を小さくすることができて、装置をコンパクトにすることができる。
したがって、第2実施形態のチップ抜き取り装置M2においても、抜き取り時の駆動力を低減させて装置をコンパクトにしても電極チップ6U,6Dを円滑に抜き取ることができる。
また、第2実施形態のチップ抜き取り装置M2では、抜き取り本体具61U,61Dを、溶接ガン1の一対のシャンク3U,3Dに嵌合される2つの電極チップ6U,6Dを同時に抜き取り可能な構成としていることから、一対のシャンク3U,3Dに嵌合された2つの電極チップ6U,6Dを一度に抜き取ることができて、好ましい。また、第2実施形態のチップ抜き取り装置M2では、楔材77の駆動装置44Aを1つとでき、共用可能となることから、装置が大型化することを抑えることができる。
なお、実施形態のチップ抜き取り装置M1,M2では、移動側部材27,68U,68D側に回動軸部32,73U,73Dを設け、側壁部46L,46R,83L,83R側に揺動支持部47,84U,84Dを配設させている構成であるが、勿論、側壁部に、移動側部材側に突設される回動軸部を配設させ、移動側部材に、揺動支持部を配設させる構成としてもよい。