JP4987326B2 - 表面硬化フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動性、耐疵付き性が要求される物品への加工に適した表面硬化フェライト系ステンレス鋼板に関する。
SUS430やSUS304に代表されるステンレス鋼は、不働体皮膜による優れた耐食性を活かして厨房機器や各種器物等の加工用素材として幅広く使用されている。家電製品や業務用電気・電子機器の外板等には従来、塗装鋼板が多く使用されているが、耐食性を重視する用途ではステンレス鋼の使用も増えている。
近年、物品の外観部分を構成する上記のような部材では、単に耐食性のみならず「摺動性」や「耐疵付き性」にも配慮した材料の要求が高まっている。ところが、SUS430やSUS304等のステンレス鋼では良好な加工性を確保するために軟質に仕上げる必要がある。軟質に仕上げられたステンレス鋼では摺動性および耐疵付き性が低下してしまう。
摺動性や耐疵付き性を改善するには、表面の硬さを増大することが有効である。その意味で、例えばSUS301やSUS630等の高強度ステンレス鋼を使用することが有利である。またSUS430やSUS304等の汎用ステンレス鋼でも加工硬化を利用して高強度化することにより、摺動性や耐疵付き性をある程度改善することは可能である。しかし、このような高強度化したステンレス鋼材料では、加工性が犠牲となってしまい、所定形状の物品への加工が困難になる場合がある。また摺動性や耐疵付き性自体に関しても、単に高強度化するだけでは必ずしも十分なレベルの改善が達成できるとは限らない。
一方、表面に塗装等を施した表面処理鋼板では、その表面処理層が厳しい加工に耐えられない場合が多く、一般に加工度の高い物品に成形することは難しい。また、無垢の金属表面が呈する独特の金属感が損なわれる。
高強度と高延性を同時に実現したステンレス鋼として、特許文献1に示されるようなマルテンサイト+フェライト複相組織ステンレス鋼が開発されている。しかし、この鋼は表面の摺動性・耐疵付き性を改善することを意図したものではない。この複相化の手法を用いて十分な摺動性・耐疵付き性が得られるまでに高強度化すると、やはり加工性の方が犠牲になってしまう。
特開平7−138704号公報
このように、ステンレス鋼材料において良好な加工性と、摺動性・耐疵付き性を高レベルで両立させることは難しい。本発明はこのような現状に鑑み、厨房機器、家電製品、業務用電気・電子機器等の外板や、各種器物、内装建材等に十分加工可能な良好な加工性を有するステンレス鋼板において、優れた摺動性・耐疵付き性を付与したものを開発し提供しようというものである。
発明者らは種々検討の結果、上記目的は、フェライト系ステンレス鋼板の表面にマルテンサイト相を含む硬質表層を形成することによって実現できることを知見した。
すなわち本発明では、マルテンサイト相を含む硬質表層を有し、それより板厚方向内部はフェライト組織であり、表面硬さが250HV以上、板厚中央部の硬さが230HV以下であり、前記フェライト組織は質量%でC:0.005〜0.1%、Si:0.5%未満、Mn:0.1〜1%、Cr:11〜25%、N:0.1%以下を含み、さらに必要に応じてNi:1%以下、Cu:1.5%以下、Ti:0.5%以下、Mo:1.5%以下の1種または2種以上を含み、残部がFおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式で定義されるγmaxが−5〜30の組成を有している摺動性に優れる表面硬化フェライト系ステンレス鋼板が提供される。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−50Nb−52Al+470N+189 ……(1)
ここで、表面硬さはマイクロビッカース硬度計を用いて0.98Nで鋼板表面にコーンを押し込む方法で測定した値が採用できる。板厚中央部の硬さは、圧延方向および板厚方向に平行な断面(L断面)の板厚中央部について上記と同様の方法で測定した値が採用できる。上記(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該各元素の含有量の値(無添加の元素については0%)が代入される
硬質表層を構成するマルテンサイト相としては、焼鈍時に雰囲気中の窒素を吸収することにより生成したオーステナイト相から変態したものが好適な対象となる。
このようなマルテンサイト相を含む硬質表層は、N2:15〜35体積%、H2:65〜85体積%の還元雰囲気中800〜1100℃で光輝(BA)焼鈍することにより形成することができる。
本発明によれば、厨房機器、家電製品、業務用電気・電子機器等の外板や、各種器物、内装建材等に十分加工可能な良好な加工性を維持しながら、摺動性および耐疵付き性を安定して顕著に改善することができた。加工性と摺動性・耐疵付き性とは本来トレードオフの関係にあり、ステンレス鋼においてその両立は従来極めて難しかったことである。本発明では光輝焼鈍を利用して表面から窒素を吸収させる手法が採用でき、既存設備を用いて実施化が比較的容易である。また、ベース鋼に安価なフェライト系鋼種が使用できるため、コスト増も抑制できる。
発明者らは、ステンレス鋼板の加工性を高く維持しながら摺動性および耐疵付き性を改善する方法について種々検討を重ねてきた。その結果、軟質で加工性の良い組織状態を基本とする鋼板において、表層部付近だけを硬質化する手法が有効であることがわかった。
従来、鋼の表層を硬質化する処理として、浸炭、窒化などの熱処理が知られている。これらは加工後の機械部品(例えば歯車)を特殊な雰囲気で熱処理して、表層部に焼入れ・焼戻し時に顕著に硬化する特性を付与したり(浸炭)硬質な窒化物を生成させたり(窒化)する手法である。しかし、本発明では製品に加工する前の「素材鋼板」の段階で、加工性を確保しながら表面硬化を図り、かつステンレス鋼に特有な美麗な光沢表面を維持することを狙う。このため、浸炭や窒化の手段は採用できない。
そこで本発明では、光輝焼鈍を利用してステンレス鋼板の表面付近に雰囲気ガス成分の窒素を吸収させる手法をとる。その際、基材鋼板(表面硬化層を形成する熱処理に供するための鋼板)の化学組成を予め厳密に調整して、焼鈍温度域において窒素濃度の上昇した表層部だけが常温より高温にMs点をもつオーステナイト相となり、窒素濃度の変わらない内部はフェライト相となるようにしておく。そうすると、当該光輝焼鈍の冷却過程で表層部だけをマルテンサイト変態を利用して硬質化することができるのである。内部は焼鈍された軟質なフェライト相となるので良好な加工性も確保される。しかも光輝焼鈍を採用するので美麗な金属光沢表面を得ることができる。
基材鋼板(表面硬化層を形成する熱処理に供するための鋼板)の化学組成は以下のような範囲に調整する。なお、この基材鋼板の化学組成は、本発明鋼板において、硬化表層より板厚方向内部にあるフェライト組織の化学組成にそのまま反映されるものである。
Cは、フェライト系ステンレス鋼の強度を上昇させる元素であり、良好な加工性を確保する観点からは少ない方が望ましく、本発明では0.1質量%以下に制限される。ただしCはオーステナイト形成元素でもあり、熱処理時に窒素を吸収させた表層でオーステナイト相を十分生成させるには0.005質量%以上のCを含有させることが有利となる。0.01質量%以上とすることがより好ましい。
Siは、鋼の脱酸元素として有効であるが、固溶強化作用を呈して鋼を硬質化するので、加工性を確保する観点から0.5質量%未満に制限される。
Mnは、フェライト系ステンレス鋼を軟質に維持したまま後述のγmaxを調整するのに適した元素であり、0.1質量%以上の含有量を確保することが望ましい。ただし、多量のMn含有は耐食性の低下につながるので、Mn含有量は1質量%以下の範囲とする。
Crは、ステンレス鋼に要求される耐食性を確保する上で必須の元素であり、少なくとも11質量%以上の含有が必要である。ただし、多量のCr含有は鋼を硬質化させ、加工性を維持する上で不利となる。またCrはフェライト形成元素であることから表層でのマルテンサイトの生成を阻害する要因にもなる。したがってCr含有量は25質量%以下に抑える。より好ましいCr含有量は13〜20質量%である。
Nは、Cと同様、フェライト系ステンレス鋼の強度を上昇させる元素であり、良好な加工性を確保する観点から本発明では0.1質量%以下に制限される。また、基材鋼板中のN含有量が0.1%以下の範囲で、光輝焼鈍時に吸収した窒素と併せて表層のオーステナイトバランスを適正化できる。
Niは、Mnと同様に鋼を軟質に維持したままγmaxを調整することのできる元素であり、必要に応じて含有させることができる。ただし多量のNi含有はコスト増を招くので、Niを含有させる場合は1質量%以下の範囲とすることが望ましく、0.5質量%以下が一層好ましい。
Cuは、Mn、Niと同様に鋼を軟質に維持したままγmaxを調整するのに適した元素であり、必要に応じて含有させることができる。ただし多量のCu含有は耐食性に不利となるので、Cuを含有させる場合は1.5質量%以下の範囲とすることが望ましく、0.7質量%以下が一層好ましい。
iは、固溶C、Nを固定する作用を有し、最終焼鈍状態でのC、N固溶量を低減させ加工性、耐食性を向上させるので、必要に応じて含有させることができる。しかし過剰に含有させると固溶Tiが多くなって製造性が低下するので、Tiの含有量は0.5質量%以下とする。
Moは、Cr含有鋼の耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる。ただしMoは高価な元素であり多量添加はコスト増を招くので、Moを含有させる場合は1.5質量%以下の範囲で行う。
その他、V:0.1質量%以下、W:1質量%以下、Zr:1質量%以下、REM(希土類元素):合計0.1質量%以下、Ca:0.1質量%以下、Y:0.1質量%以下、Mg:0.1質量%以下等、本発明の作用を害さない範囲で種々の元素の混入が許容される。
さらに本発明では、基材鋼板の各成分間に下記(1)式で示されるγmaxが−5〜30となる関係が成立するように成分調整する必要がある。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−50Nb−52Al+470N+189 ……(1)
γmaxは高温での最大オーステナイト量を評価する指標である。この値が−5〜30の範囲にある基材鋼板の場合、光輝焼鈍時に雰囲気ガス成分の影響を受けない「内部」においては、焼鈍温度域でオーステナイト相が生成しないか、生成しても量が少ないため、焼鈍後の冷却過程で硬化が起こるほどの量のマルテンサイト相は生成せず、光輝焼鈍後には軟質なフェライト組織が得られる。一方、光輝焼鈍で窒素を吸収した表層においては、吸収した窒素を加えた組成がγmaxの上昇をもたらし、焼鈍温度域で多量のオーステナイト相が生成する。このオーステナイト相は冷却時にマルテンサイト相に変態して硬化に寄与する。つまり、基材鋼板のγmaxが上記範囲に調整されているときに、表層部には顕著な硬化を生じさせるに足る量のマルテンサイト量が確保され、表層域のみの硬化が達成される。
上述したような種々の物品への加工性を考慮したとき、硬質表層より板厚方向内部の領域は硬さが230HV以下のフェライト組織となっている必要がある。その硬さは板厚中央部の断面硬さを測定することによって知ることができる。フェライト組織はフェライト相を主体とするマトリクスで構成される金属組織、具体的にはフェライト相が90体積%以上を占める金属組織である。フェライト相以外には少量のマルテンサイト相や、一般的なフェライト系ステンレス鋼板に見られる介在物、析出物を含んでいて構わない。
一方、硬質表層はマルテンサイト相を含んで硬化した表層であり、その厚さは特に規定する必要はないが、表面硬さとして250HV以上を呈する必要がある。これより軟質だと摺動性および耐疵付き性を十分確保することが難しくなる。この表面硬さは、表面から概ね5μm以内の深さ領域における硬さである。なお、通常、硬質表層の厚さは数μm〜数十μm程度である。この硬質表層の最表面には不働体皮膜が存在し、ステンレス鋼の耐食性が維持される。
表面硬さと板厚中央部の硬さの差(Δh)はHV値で50以上であることが望ましい。Δhが大きいとそれぞれの用途(加工性レベル)に応じて表面硬さの向上効果が顕著に発揮され、好ましい。Δhは75以上であることが一層好ましい。
以上のような特性を有するステンレス鋼板は以下のようにして作ることができる。
前述の化学組成に調整された鋼を一般的なステンレス鋼の製鋼プロセスにて溶製し、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延を経て光輝焼鈍に供する基材鋼板を製造する。基材鋼板の板厚は概ね0.5〜2.0mm程度とすることができる。また、その目標板厚に応じて適宜「焼鈍、冷間圧延」を複数回行うことができる。これらの各工程は通常のフェライト系ステンレス鋼板の製造法に従えばよい。光輝焼鈍に供する基材鋼板の冷間圧延率(冷間圧延を複数回行う場合は最後の冷間圧延における圧延率)は50〜80%とすることが望ましい。
次いで基材鋼板を光輝焼鈍に供する。光輝焼鈍の雰囲気はN2:15〜35体積%を含む還元雰囲気とすればよい。雰囲気ガスのN2濃度を10体積%以上にしたとき、雰囲気中の窒素は鋼中に吸収されて固溶し、γmaxの上昇に十分寄与するようになる。ただし、雰囲気ガスのN2濃度が35体積%を超えると鋼中に吸収された窒素が鋼成分と反応し、表面欠陥や応力集中の原因になる窒化物を形成しやすくなり、好ましくない。具体的な雰囲気ガスとして、N2:15〜35体積%+H2:65〜85体積%の混合ガスが採用できる。焼鈍温度は800〜1100℃とすればよい。焼鈍時間は均熱0〜2分とすることが好ましい。光輝焼鈍後の冷却過程で表層に生成したオーステナイト相がマルテンサイト相に変態する。冷却速度は普通鋼の焼入れ処理とは異なりあまり大きくする必要はなく、概ね1〜10℃/secの範囲とすればよい。この光輝焼鈍は連続焼鈍ラインで実施可能である。
光輝焼鈍後の鋼板は、必要に応じて調質圧延に供することができる。その際、表面硬さおよび板厚中央部の硬さが上記の範囲となるように圧延率を調整する。例えば10%以下の圧延率とすることが好ましい。
このようにして、良好な加工性を維持しながら摺動性および耐疵付き性を付与したフェライト系ステンレス鋼板が実現でき、これを無垢のまま製品に成形加工して使用することができる。用途によってはさらに塗装その他の表面処理に供することもできる。この場合でも、下地鋼板の優れた摺動性および耐疵付き性は、表面処理後の表面における耐久性の向上をもたらす。ただし、要求される成形加工に耐えうる範囲で表面処理手段を選択する必要がある。
表1に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を溶製し、30kgのインゴットに鋳造し、熱間圧延し、その後、焼鈍、冷間圧延を繰り返して板厚0.5mmの冷延鋼板(焼鈍後、最後に行った冷間圧延での圧延率:各鋼種とも約65%)とした。次いで各冷延鋼板を種々の条件で最終焼鈍に供した。最終焼鈍は一部の試料を除きH2+N2混合ガス中での光輝焼鈍とした。焼鈍条件は表2に記載してある。光輝焼鈍時間は均熱0.5分(共通)である。一部の試料では光輝焼鈍の代わりに大気焼鈍を採用し、酸洗に供した。さらに、一部の試料について2%の調質圧延を施した。
このようにして得られた最終焼鈍後の材料または調質圧延後の材料を供試材とし、表面硬さ、板厚中央部の硬さ、摺動性、耐疵付き性、加工性を調べた。
表面硬さは、板の表面をマイクロビッカース硬度計にて0.98Nで測定して求めた。
板厚中央部の硬さは、圧延方向と板厚方向に平行な断面(L断面)をマイクロビッカース硬度計にて0.98Nで測定して求めた。
摺動性は、JIS B1501の鋼球(1/4インチ)を荷重3.92Nで供試材鋼板の表面に押し付け、20mmのストロークで運動させるときのスタート時に生じた荷重(静摩擦)をロードセルで測定し、前記静摩擦が0.59N以下のものを○(良好)、0.59超え〜0.98N以下のものを△(やや不良)、0.98Nを超えるものを×(不良)と評価した。
耐疵付き性は、JIS B1501の鋼球(1/4インチ)を荷重0.49Nで供試材鋼板の表面に押し付けた状態で、15mmのストロークで50往復させ、試験後に疵が認められないものを◎(優秀)、疵が認められるが、その幅が0.1mm未満であるものを○(良好)、0.1mm幅以上の疵が認められるものを×(不良)と評価した。
加工性は、圧延方向に対して直角方向を曲げ軸とする90°曲げを行い、内側R=0.2mmの曲げで加工部表面にクラックが認められないものを◎(優秀)、内側R=0.2mmの曲げで加工部表面にクラックが認められるが、内側R=0.5mmの曲げではクラックが認められないものを○(良好)、内側R=0.5mmの曲げで加工部表面にクラックが認められるものを×(不良)と評価した。
結果を表2に示す。
Figure 0004987326
Figure 0004987326
本発明例の鋼板はいずれもマルテンサイト相を含む硬質表層をもち、それより板厚方向内部はフェライト組織であることが組織観察によって確認された。硬質表層の平均厚さは、研磨後にフッ酸+硝酸+グリセリンの混合溶液でエッチングした試料断面を光学顕微鏡で観察した結果、8〜35μmの範囲に入っていた。表2からわかるように、本発明例の鋼板は表面硬さが250HV以上、板厚中央部の硬さが230HV以下となり、良好な加工性を維持しながら、優れた摺動性および耐疵付き性を呈した。
これに対し、比較例であるNo.1〜3はSi含有量が高いSUS430を使用したことにより、最終焼鈍条件を変えたり調質圧延を行ったりしても優れた摺動性を実現することができなかった。No.4はSUS430J1L相当の鋼、No.5はSUS430LX相当の鋼であり、いずれもγmaxが低いために硬質表層が形成されず摺動性および耐疵付き性に劣った。No.6は光輝焼鈍雰囲気のN2濃度が低かったために硬質表層が形成されず摺動性および耐疵付き性に劣った。No.7は光輝焼鈍雰囲気のN2濃度が高かったために表層に硬質な窒化物が生成し、これが加工性劣化の原因になった。No.8は光輝焼鈍温度が低かったことにより硬質表層が形成されず摺動性および耐疵付き性に劣った。No.9は大気中の焼鈍を行ったので硬質表層が形成されず摺動性および耐疵付き性に劣った。

Claims (4)

  1. マルテンサイト相を含む硬質表層を有し、それより板厚方向内部はフェライト組織であり、表面硬さが250HV以上、板厚中央部の硬さが230HV以下であり、前記フェライト組織は質量%でC:0.005〜0.1%、Si:0.5%未満、Mn:0.1〜1%、Cr:11〜25%、N:0.1%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式で定義されるγmaxが−5〜30の組成を有する摺動性に優れる表面硬化フェライト系ステンレス鋼板。
    γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−50Nb−52Al+470N+189 ……(1)
  2. 前記組成において、さらにNi:1%以下、Cu:1.5%以下、Ti:0.5%以下、Mo:1.5%以下の1種または2種以上を含む請求項1に記載の摺動性に優れる表面硬化フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 硬質表層のマルテンサイト相は、焼鈍時に雰囲気中の窒素を吸収することにより生成したオーステナイト相から変態したものである請求項1または2に記載の摺動性に優れる表面硬化フェライト系ステンレス鋼板。
  4. マルテンサイト相を含む硬質表層は、N2:15〜35体積%、H2:65〜85体積%の還元雰囲気中800〜1100℃で光輝焼鈍することにより形成されたものである請求項1または2に記載の摺動性に優れる表面硬化フェライト系ステンレス鋼板。
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