JP4561136B2 - 窒化処理用鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品や機械部品などの耐摩耗性や耐疲労特性、耐焼付性等が求められる部品、中でも窒化処理によってこれらの諸特性を付与する部品に用いられる窒化処理用鋼板に関するものである。
自動車部品や機械部品、工具などの中には、耐摩耗性や耐疲労特性、耐焼付性等が必要とされる部品が数多く存在する。このような部品は、素材となる鋼板を、打抜き加工や曲げ加工、プレス加工等により部品形状に成形した後、表面硬化処理を施して使用されることが多い。上記表面硬化処理の代表的なものとして、浸炭処理や窒化処理が良く知られている。
浸炭処理は、最も一般的な表面硬化処理であるが、高温での浸炭処理後に、焼入処理をするため、焼入歪による部品の形状変化や寸法精度(以下、単に「寸法精度」と言う)の低下が避けられない。そのため、部品の形状矯正ならびに焼戻しの工程が必要となり、部品の製造コストが高くなるという問題がある。
一方、窒化処理は、鋼中に窒素または窒素と同時に炭素などを侵入させる処理であり、処理工程での加熱温度が鋼のA1変態点よりも低いため、素材の相変態による寸法精度の低下が起こらない。また、窒化処理に伴う素材表層部の体積変化が小さく、部品の寸法精度を良好に保つことが容易である等の優れた特長がある。
軟窒化処理に用いられる素材としては、例えば、特許文献1や特許文献2には、成形性に優れた窒化用鋼板として、Alを0.060wt%を超えて含有する鋼板に、さらに窒化促進元素として多量のCrと同時にTiやVを複合添加した低炭素鋼板が提案されている。また、特許文献3には、窒化促進元素としてCrを0.20〜2.00wt%含有し、フェライト結晶粒度番号を5以上12以下に調整した軟窒化処理用の低炭素鋼板が開示されている。さらに、特許文献4には、C含有量が0.001〜0.005wt%の極低炭素鋼において、伸びフランジ性や穴拡げ性を確保したプレス成形性に優れる軟窒化処理用鋼板が開示されている。
特開平9−25513号公報 特開平9−25543号広報 特開2003−105489号公報 特開2003−119548号公報
ところで、窒化処理は、表面硬化能に優れるため、従来から広く利用されているが、その表面硬化能は、部品表面から侵入した窒素が鋼中に含まれる炭窒化形成元素と硬い析出物を形成し、その析出物が結晶格子に大きな歪を引き起こし、部品表層に大きな圧縮応力を発生することにより得られる。その結果、窒化処理を施した部品表面には、大きな歪が発生し、寸法変化が発生すると考えられている。この寸法変化は、浸炭処理によるそれと比較して小さい。しかしながら、近年における部品の小型化、高精度化に伴い、窒化処理部品に対しても、より寸法精度の向上が望まれるようになり、中でも回転体部品や他の部品と組み合わせて用いられる部品に対しては、特に高い寸法精度が要求されるようになった。そこで、窒化処理が施される部品に用いられる素材に対しても、窒化処理による寸法変化の小さい特性が求められるようになってきた。
しかしながら、上述した従来の鋼板は、窒化処理に用いられる素材(鋼板)の硬度分布制御や疲労特性の改善などについてのものが主であり、窒化処理による部品の寸法変化については考慮されていない。特に、窒化処理の実務においては、単なる寸法の変化以外に、窒化処理した部品の異方性(素材鋼板の圧延方向に対する方向によって寸法が変化する現象)が問題となっており、寸法精度の向上を図る上で大きな障害となっていた。しかし、従来技術においては、窒化処理により寸法変化の異方性については全く検討されていないのが実情である。
本発明の目的は、窒化処理による寸法変化およびその異方性が小さい窒化処理用鋼板を提供することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて、種々の特性の異なる鋼板を作製し、これら鋼板の特性と窒化処理による寸法変化およびその異方性との関係について検討を行った。その結果、窒化処理によって起こる寸法変化の大きさは、窒化層深さにより変化する他、素材鋼板が有するr値(平均r値)よっても変化すること、また、窒化処理による寸法変化の異方性は、素材鋼板が有するr値の異方性と極めて強い相関があり、これらを適正に制御することにより、窒化処理による寸法変化およびその異方性を小さく抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.002〜0.09mass%、Si:0.005〜0.5mass%、Mn:0.01〜1.0mass%、P:0.001〜0.10mass%、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.3mass%、Cr:0.20〜1.5mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、プレス成形後、窒化処理して用いられる薄鋼板であって、平均r値が0.9以上で、下記(1)式で定義されるr値の異方性の絶対値|Δr|が0.4以下であることを特徴とする窒化処理による寸法変化の異方性が小さい窒化処理用鋼板である。

|Δr|=|(r−2r45+r90)/2| ・・・ (1)
ここで、r:圧延方向に対して0度の方向におけるr値
45:圧延方向に対して45度の方向におけるr値
90:圧延方向に対して90度の方向におけるr値
なお、本発明の窒化処理用鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.005〜0.3mass%、Nb:0.005〜0.3mass%およびV:0.005〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
上記窒化処理用鋼板は、下記(2)式で定義される窒化処理前後の寸法変化率dの異方性Δdが0.08%以下であることが好ましい。

Δd=(d−2d45+d90)/2 …… (2)
ここで、d:圧延方向に対して0度の方向における寸法変化率(%)
45:圧延方向に対して45度の方向における寸法変化率(%)
90:圧延方向に対して90度の方向における寸法変化率(%)
また、上記窒化処理用鋼板は、圧延方向に対して0度、45度および90度の方向における窒化処理前後の寸法変化率の最大値と最小値の差が0.10%以下であることが好ましい。
本発明によれば、素材鋼板の平均r値およびその異方性を規制することにより、窒化処理による部品の寸法変化ならびにその異方性を小さく抑えることができるので、寸法精度の高い窒化処理部品を安定して製造することが可能となる。
本発明を開発する契機となった実験について説明する。
表1に示した成分組成を有するA〜Iの鋼スラブを、1180℃に加熱後、830℃以上の仕上圧延温度により板厚1.6mmとする熱間圧延した後、550〜650℃で巻き取り、r値(Lankford値、塑性歪比とも称する)の異なる各種の熱延鋼板を得た。また、表1の鋼Jについては、該スラブを上記と同じ条件で熱間圧延して板厚3.5〜6.0mmの熱延鋼板とした後、冷間圧延により板厚1.6mmに圧延し、その後、連続焼鈍を行い、r値の異なる各種冷延鋼板を得た。これらの熱延鋼板および冷延鋼板から、圧延方向に対して0°、45°、90°の方向から採取したJIS Z 2201に規定された5号試験片を採取し、これを用いて、JIS Z 2254に準拠して各方向のr値を求め、この結果を元に、下記(1),(2)式により、平均r値およびr値の異方性Δrを求めた。

平均r値=(r+2r45+r90)/4 ……(1)
Δr=(r−2r45+r90)/2 ……(2)
ただし、r:圧延方向に対して0度の方向におけるr値
45:圧延方向に対して45度の方向におけるr値
90:圧延方向に対して90度の方向におけるr値
また同様に、上記の熱延鋼板および冷延鋼板から、圧延方向に対して0°、45°、90°の方向から採取したJIS 5号試験片を採取し、この試験片に5%の引張歪を付与した後、NH3+RXガス混合ガス中で560〜580℃×0.5〜5hrの熱処理を行い、窒化層深さが0.2〜1.0mmの範囲となるようガス軟窒化処理を施した後、80℃のクエンチオイル中に油冷した。なお、上記窒化層深さは、窒化処理後、板厚方向断面のビッカース硬さを測定し、JIS G 0562に規定された方法により求めた実用窒化層深さのことである。また、窒化処理前後において、JIS 5号試験片の標点間距離を測定することにより、各方向の寸法変化率dを求めた。ここで、上記寸法変化率dは、下記(3)式で定義される値である。また、この値を元に、下記(4),(5)式により、平均d値およびd値の異方性Δdを求めた。さらに、下記(6)式で定義される、各方向の寸法変化率の最大値と最小値の差で定義される寸法変化率の変動幅Dについても求めた。

d=(窒化処理後の寸法−窒化処理前の寸法)/窒化処理前の寸法×100(%) ……(3)
平均d=(d+2d45+d90)/4 ……(4)
Δd=(d−2d45+d90)/2 ……(5)
D=(d,d45およびd90内の最大値−d,d45およびd90内の最小値) ……(6)
ここで、d:圧延方向に対して0度の方向における寸法変化率d(%)
45:圧延方向に対して45度の方向における寸法変化率d(%)
90:圧延方向に対して90度の方向における寸法変化率d(%)
Figure 0004561136
Figure 0004561136
上記測定の結果を表2に、また、この表2の結果を整理して図1〜6に示した。
図1は、圧延方向に対して0°、45°、90°方向の寸法変化率d、d45、d90および平均dと窒化層深さとの関係を示したものである。この図1から、いずれの方向においても、窒化層深さが大きくなるほど寸法変化率dは大きくなること、その変化率の窒化層深さによる変化率は方向により余り差はなく、
寸法変化率d(%)≒窒化層深さ(mm)×0.5
の関係があることがわかる。また、図2は、図1のデータを窒化層深さによって3区分し、寸法変化率dに及ぼす平均r値の影響を見たものである。この図2から、r値が高い材料ほど、寸法変化率が小さくなる傾向が認められる。
これらの結果から、窒化処理による寸法変化の大きさは、窒化処理深さ(有効窒化層深さ)および、素材鋼板が有する平均r値より変化する、すなわち、窒化層深さおよび素材鋼板の平均r値を規制することにより、寸法変化を小さく抑えられることがわかった。しかしながら、前述した、窒化処理による寸法変化の異方性は、窒化層深さや、平均r値によっては予測できない。例えば、図3は寸法変化率dの変動幅Dと窒化層深さとの関係を、また図4は寸法変化率dの変動幅Dと平均r値との関係を示したものであるが、いずれも相関が認められない。従って、寸法変化の異方性の問題は、単なる窒化層深さや素材鋼板のr値の制御のみでは解決できないことがわかった。
そこで、発明者らは、機械的特性の異方性を表す指標であるr値の異方性Δrに着目し、このΔrと窒化処理による寸法変化率の異方性との関係について検討した。図5および図6は、それぞれ素材鋼板が有するr値の異方性の絶対値|Δr|と、窒化処理による寸法変化率の異方性の絶対値|Δd|および寸法変化率の変動幅Dとの関係を示したものであるが、明らかに相関が認められる。これから、窒化処理による寸法変化の異方性を抑制するためには、素材鋼板のr値の異方性Δrを制御すればよいこと、つまり、寸法変化の異方性を小さくするには、素材鋼板のr値の異方性を小さく制御すればよいことが明らかとなった。
本発明は、上記の従来技術にはない全く新しい知見に基づき開発したものである。
次に、本発明に係る窒化処理用鋼板について説明する。なお、本発明の窒化処理用鋼板は、上記実験で説明したように熱延鋼板だけでなく、冷延鋼板をも含むものである。
平均r値:0.9以上
本発明の窒化処理用鋼板は、窒化処理による寸法変化の大きさが小さく、かつ、寸法変化率の異方性Δdおよび寸法変化率の変動幅Dが小さいことに特徴がある。このうち、寸法変化の大きさについては、前述したように、窒化層深さによって大きく影響される。しかし、この窒化層深さは、窒化処理部品に要求される耐磨耗特性や耐疲労特性等により決定される因子であるため規制することは難しい。しかし、図2からわかるように、素材鋼板の平均r値を高めることにより、寸法変化の程度を軽減することは可能である。例えば、窒化層深さが0.3mm超え0.4mm未満の場合、平均r値が0.9超えの鋼板の寸法変化率dは、平均r値が0.8未満のそれの約1/2に軽減されている。そこで、本発明の窒化処理用鋼板は、平均r値を0.9以上に、好ましくは1.0以上に制限する。
r値の異方性の絶対値|Δr|:0.4以下
上記に説明した実験結果から明らかなように、窒化処理による寸法変化の異方性を小さく抑えるには、素材鋼板のr値の異方性Δrを小さく制御する必要がある。ここで、実用上、寸法異方性が問題とならないレベルとは、寸法変化率の異方性の絶対値|Δd|は0.08%以下、寸法変化率の変動幅Dは0.10%以下の範囲であると言われており、本発明においても、この基準を採用する。このような小さな寸法変化率の異方性を得るためには、図4および図5から、|Δr|が0.4以下であればよいことがわかる。よって、本発明の窒化処理用鋼板は、|Δr|を0.4以下に制限する。好ましくは、|Δr|が0.3以下、より好ましくは|Δr|が0.2以下である。なお、ここで、Δrについて絶対値で示す理由は、Δrはプラス、マイナスいずれの符号にもなり得るからである。いずれにせよ、絶対値が上記範囲であれば、良好な寸法時変化の異方性を確保することができる。
次に、本発明の窒化処理用鋼板の製造方法について説明する。
本発明の鋼板の成分組成は、従来公知の窒化処理用鋼板と同じでよいが、以下の範囲であることが好ましい。
C:0.002〜0.09mass%
Cは、鋼板の加工性に大きな影響を及ぼす元素であり、含有量が多くなるほど加工性が低下する。よって、Cの含有量は0.09mass%以下に制限するのが好ましい。一方、C含有量が低い程、加工性は向上するため、Cの下限値は0.002mass%まで許容することができる。しかし、機械構造用鋼としての強度が要求される部品に用いられる場合には、C含有量は0.01mass%超えとすることが好ましい。
Si:0.005〜0.5mass%
Siは、強度を高める元素であるが、過度の添加は加工性を低下させる他、表面酸化によって窒化反応を阻害するので、0.5mass%以下に制限するのが好ましい。なお、Siの0.005mass%未満への低減は、製鋼コストの増大を招くので、下限値は0.005mass%とするのが好ましい。
Mn:0.01〜1.0mass%
Mnは、Siと同様、強度を高める元素であるが、過度の添加は加工性を低下させるため、その上限値を1.0mass%とするのが好ましい。一方、Mn含有量の過度の低減は、製鋼コストの上昇を招くため、下限値は0.01mass%するのが好ましい。
P:0.001〜0.10mass%
Pは、加工性の低下を招くことなく強度を上げる元素であるが、0.10mass%を超える添加は、成形性の劣化や2次加工脆性などを招くので好ましくない。一方、Pの過度の低減は、製鋼コストの増大を招くので、下限値は0.001mass%とするのが好ましい。
S:0.01mass%以下
Sは、0.010mass%を超えて含有すると、表面疵の発生および延性の低下を招くので好ましくない。よって、Sは0.01mass%以下に制限するのが好ましい。
Al:0.005〜0.3mass%
Alは、溶鋼の脱酸剤として添加される元素であり、0.005mass%以上添加することが好ましい。一方、過度の添加は加工性を低下させるので、Alの上限値は0.3mass%とするのが好ましい。また、Alは、窒素との親和力が強く、窒化による硬化処理においては、重要な元素であり、特に化合物層の表層硬度を高める働きがある。その効果を有効に発揮させるためには、0.03mass%以上の添加がより好ましい。なお、Alは、Ar3変態点を高める効果があり、熱延時の仕上温度を確保することが困難な場合には、0.2mass%以下に制限することが望ましい。
Cr:0.20〜1.5mass%
Crは、窒化による硬化処理する上では特に重要な元素であり、0.20mass%未満の添加では、窒化による硬度上昇および硬化深さが十分に得られない。しかしながら、1.5mass%を超えて添加すると、高応力負荷環境における疲労強度が低下するため、1.5mass%を上限とするのが好ましい。
Ti:0.005〜0.3mass%
Tiは、必要に応じて選択的に添加することができる元素である。Tiを0.005〜0.02mass%の微量範囲で添加した場合には、鋼中Nを固着してAlN形成を抑制し、Alが窒化処理時に有効に働くようになる。さらに、Tiを0.02〜0.3mass%の範囲で添加した場合には、窒化処理時にTiN形成により表面硬化に有効に寄与する。ただし、0.3mass%を超えるTiの添加は、Ar3変態点を著しい上昇を招き、熱間圧延における所望の仕上圧延温度を確保することが困難となるため、上限を0.3mass%とするのが好ましい。
Nb:0.005〜0.3mass%
Nbも、Tiと同様、必要に応じて選択的に添加することができる元素である。特に、Nbは、Cとの親和力が強く、結晶粒の微細化に効果がある。また、短時間の窒化処理でも、表面硬度を高めることができる。これらの効果を得るためには、少なくとも0.005mass%以上添加することが好ましい。しかしながら、0.3mass%を超える添加は、加工性を低下させるため、上限値を0.3mass%とするのが好ましい。
V:0.005〜0.3mass%
Vは、Ti,Nbと同様に、選択的に添加することができる元素である。Vは、Nの拡散を促進させる働きがあり、硬化深さを深めるのに有効な元素であるとともに、Crとの複合効果により析出物の大きさを微細化する効果を有する。このような効果は、0.005mass%未満では得られない。一方、0.3mass%を超えて添加すると、成形性が低下するので、上限値は0.3mass%とするのが好ましい。
本発明の窒化処理用鋼板は、上記成分組成に調整された鋼を転炉等、従来公知の方法で溶製し、鋼スラブとした後、熱間圧延あるいはさらに冷間圧延、焼鈍工程を経て製造することができる。各工程における製造条件については、従来公知の条件でよい。ただし、平均r値を0.9以上、r値の異方性|Δr|を0.4以下とするためには、熱延最終仕上温度はAr3変態点以上、巻取温度は400〜650℃とし、また、冷延鋼板である場合には、冷延圧下率は50〜80%の範囲に制御することが好ましい。
本発明の窒化処理用鋼板は、あらゆる窒化処理に対応でき、例えば、ガス窒化、ガス軟窒化、イオン窒化、プラズマ窒化、塩浴窒化、酸窒化、浸硫窒化、塩浴浸硫窒化、プラズマ浸硫窒化などいずれにも好適に用いることができる。また、所望の実用窒化層深さを得るには、窒化処理条件(ガスの種類、窒化処理温度および時間など)を調整して窒化処理を行えばよい。なお、本発明の知見に基づけば、製品への要求特性から決定される予定した実用窒化層深さと素材鋼板が有するr値から、寸法変化率を精度よく予測することができるので、予め、窒化処理後の寸法変化を予測して製品設計を行えば、寸法精度に優れた窒化処理部品を製造することができる。
C:0.038mass%、Si:0.02mass%、Mn:0.21mass%、P:0.016mass%、S:0.005mass%、Al:0.066mass%、N:0.0016mass%、O:0.0038mass%、Cr:0.78mass%、残部が実質的にFeからなる鋼スラブを加熱後、熱間圧延し、酸洗を行った後、冷間圧延し、焼鈍して板厚:1.2mmの冷延鋼板とした。この際、冷間圧下率を種々に変更することによりr値を変化させた。このようにして得た冷延鋼板について、先述した方法と同様にして圧延方向に対し0°、45°、90°方向のr値を測定し、r値の異方性Δrを求めた。また、上記の冷延鋼板から、ブランク径300mmφの円板を打抜き、この円板を絞り加工し、図7に示したような高さ80mmのドーム形状のプレス成形品を作製した。このドーム形状のプレス成形品の、圧延方向となす角度が0°、45°、90°の各方向の寸法を測定し、その後、NH3+RXの混合ガスを用い、57O℃×3時間の熱処理により実用窒化層深さが0.25mmとなるガス軟窒化処理を施したのち、再度、上記と同じ位置の寸法を測定し、窒化処理前後における寸法変化率dおよび寸法変化率の変動幅Dを求めた。
得られた結果について、図8および図9に示した。図8は、r値の異方性|Δr|と寸法変化率dの異方性の絶対値|Δd|との関係を示したものであり、Δrの正負に拘わらず、その絶対値|Δr|を0.4以下に制御すれば、寸法変化率dの異方性|Δd|を0.08%以下に抑制することができることがわかる。また、図9は、Δrと寸法変化率dの変動幅Dとの関係を示したものであるが、同様に、|Δr|を0.4以下に制御すれば、寸法変化率dの変動幅Dを0.10%以下に抑制することができることがわかる。
C:0.045mass%、Si:0.01mass%、Mn:0.25mass%、P:0.01mass%、S:0.004mass%、Al:0.11mass%、Cr:1.2mass%、Ti:0.009 mass%、残部が実質的にFeからなる鋼スラブを、仕上圧延終了温度を800〜900℃の間で変化させて熱間圧延し、r値が異なる板厚1.6mmの熱延鋼板を製造した。この熱延鋼板より、圧延方向に対して0°、45°、90°の3方向からJIS 5号試験片を採取し、各方向のr値を測定し、これから平均r値を求めた。また、上記熱延鋼板の表面スケールを酸洗除去したのち、先述した図7と同じドーム形状に成型加工した後、ガス窒化処理を施し、素材鋼板の圧延方向に対して0°、45°、90°3方向の窒化処理前後の寸法変化を測定して寸法変化率dを求め、これから平均dを求めた。なお、ガス窒化処理においては、ガス組成、窒化処理温度または窒化処理時間のいずれかを変化させることにより、実用窒化処理深さを0.25mm、0.30mmおよび0.40mmの3段階に変化させた。
得られた結果を、図10に示した。この図から、窒化処理により寸法変化率dは大きく変化するが、素材鋼板の平均r値を0.9以上に大きくすることにより、寸法変化率を小さく抑制できることが確認された。
本発明の技術は、自動車パワートレイン系部品ならびに平板から複雑な形状に至る各種の駆動系部品にも適用できる。
窒化層深さと寸法変化率との関係を示すグラフである。 窒化処理による寸法変化率に及ぼす鋼板r値の影響を示すグラフである。 寸法変化率の変動幅Dと窒化層深さとの関係を示すグラフである。 寸法変化率の変動幅Dと平均r値との関係を示すグラフである 窒化処理による寸法変化率の異方性Δdに及ぼすr値の異方性の絶対値|Δr|の影響を示すグラフである。 窒化処理による寸法変化率の変動幅Dに及ぼすr値の異方性の絶対値|Δr|の影響を示すグラフである。 窒化処理による寸法変化率を測定するのに用いた窒化処理部品を説明する図である。 窒化処理による寸法変化率の異方性Δdとr値の異方性の絶対値|Δr|との関係を示すグラフである。 窒化処理による寸法変化率の変動幅Dとr値の異方性の絶対値|Δr|との関係を示すグラフである。 窒化処理による寸法変化率dと鋼板r値および有効窒化層深さとの関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. C:0.002〜0.09mass%、Si:0.005〜0.5mass%、Mn:0.01〜1.0mass%、P:0.001〜0.10mass%、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.3mass%、Cr:0.20〜1.5mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、プレス成形後、窒化処理して用いられる薄鋼板であって、平均r値が0.9以上で、下記(1)式で定義されるr値の異方性の絶対値|Δr|が0.4以下であることを特徴とする窒化処理による寸法変化の異方性が小さい窒化処理用鋼板。

    |Δr|=|(r−2r45+r90)/2| ・・・ (1)
    ここで、r:圧延方向に対して0度の方向におけるr値
    45:圧延方向に対して45度の方向におけるr値
    90:圧延方向に対して90度の方向におけるr値
  2. 上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.005〜0.3mass%、Nb:0.005〜0.3mass%およびV:0.005〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の窒化処理用鋼板。
  3. 下記(2)式で定義される窒化処理前後の寸法変化率dの異方性Δdが0.08%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の窒化処理用鋼板。

    Δd=(d−2d45+d90)/2 ・・・ (2)
    ここで、d:圧延方向に対して0度の方向における寸法変化率(%)
    45:圧延方向に対して45度の方向における寸法変化率(%)
    90:圧延方向に対して90度の方向における寸法変化率(%)
  4. 圧延方向に対して0度、45度および90度の方向における窒化処理前後の寸法変化率の最大値と最小値の差が0.10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化処理用鋼板。」
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