JP4561136B2 - 窒化処理用鋼板 - Google Patents
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Description
記
|Δr|=|(r0−2r45+r90)/2| ・・・ (1)
ここで、r0 :圧延方向に対して0度の方向におけるr値
r45:圧延方向に対して45度の方向におけるr値
r90:圧延方向に対して90度の方向におけるr値
なお、本発明の窒化処理用鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.005〜0.3mass%、Nb:0.005〜0.3mass%およびV:0.005〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
記
Δd=(d0−2d45+d90)/2 …… (2)
ここで、d0:圧延方向に対して0度の方向における寸法変化率(%)
d45:圧延方向に対して45度の方向における寸法変化率(%)
d90:圧延方向に対して90度の方向における寸法変化率(%)
表1に示した成分組成を有するA〜Iの鋼スラブを、1180℃に加熱後、830℃以上の仕上圧延温度により板厚1.6mmとする熱間圧延した後、550〜650℃で巻き取り、r値(Lankford値、塑性歪比とも称する)の異なる各種の熱延鋼板を得た。また、表1の鋼Jについては、該スラブを上記と同じ条件で熱間圧延して板厚3.5〜6.0mmの熱延鋼板とした後、冷間圧延により板厚1.6mmに圧延し、その後、連続焼鈍を行い、r値の異なる各種冷延鋼板を得た。これらの熱延鋼板および冷延鋼板から、圧延方向に対して0°、45°、90°の方向から採取したJIS Z 2201に規定された5号試験片を採取し、これを用いて、JIS Z 2254に準拠して各方向のr値を求め、この結果を元に、下記(1),(2)式により、平均r値およびr値の異方性Δrを求めた。
記
平均r値=(r0+2r45+r90)/4 ……(1)
Δr=(r0−2r45+r90)/2 ……(2)
ただし、r0:圧延方向に対して0度の方向におけるr値
r45:圧延方向に対して45度の方向におけるr値
r90:圧延方向に対して90度の方向におけるr値
記
d=(窒化処理後の寸法−窒化処理前の寸法)/窒化処理前の寸法×100(%) ……(3)
平均d=(d0+2d45+d90)/4 ……(4)
Δd=(d0−2d45+d90)/2 ……(5)
D=(d0,d45およびd90内の最大値−d0,d45およびd90内の最小値) ……(6)
ここで、d0:圧延方向に対して0度の方向における寸法変化率d(%)
d45:圧延方向に対して45度の方向における寸法変化率d(%)
d90:圧延方向に対して90度の方向における寸法変化率d(%)
図1は、圧延方向に対して0°、45°、90°方向の寸法変化率d0、d45、d90および平均dと窒化層深さとの関係を示したものである。この図1から、いずれの方向においても、窒化層深さが大きくなるほど寸法変化率dは大きくなること、その変化率の窒化層深さによる変化率は方向により余り差はなく、
寸法変化率d(%)≒窒化層深さ(mm)×0.5
の関係があることがわかる。また、図2は、図1のデータを窒化層深さによって3区分し、寸法変化率dに及ぼす平均r値の影響を見たものである。この図2から、r値が高い材料ほど、寸法変化率が小さくなる傾向が認められる。
本発明は、上記の従来技術にはない全く新しい知見に基づき開発したものである。
平均r値:0.9以上
本発明の窒化処理用鋼板は、窒化処理による寸法変化の大きさが小さく、かつ、寸法変化率の異方性Δdおよび寸法変化率の変動幅Dが小さいことに特徴がある。このうち、寸法変化の大きさについては、前述したように、窒化層深さによって大きく影響される。しかし、この窒化層深さは、窒化処理部品に要求される耐磨耗特性や耐疲労特性等により決定される因子であるため規制することは難しい。しかし、図2からわかるように、素材鋼板の平均r値を高めることにより、寸法変化の程度を軽減することは可能である。例えば、窒化層深さが0.3mm超え0.4mm未満の場合、平均r値が0.9超えの鋼板の寸法変化率dは、平均r値が0.8未満のそれの約1/2に軽減されている。そこで、本発明の窒化処理用鋼板は、平均r値を0.9以上に、好ましくは1.0以上に制限する。
上記に説明した実験結果から明らかなように、窒化処理による寸法変化の異方性を小さく抑えるには、素材鋼板のr値の異方性Δrを小さく制御する必要がある。ここで、実用上、寸法異方性が問題とならないレベルとは、寸法変化率の異方性の絶対値|Δd|は0.08%以下、寸法変化率の変動幅Dは0.10%以下の範囲であると言われており、本発明においても、この基準を採用する。このような小さな寸法変化率の異方性を得るためには、図4および図5から、|Δr|が0.4以下であればよいことがわかる。よって、本発明の窒化処理用鋼板は、|Δr|を0.4以下に制限する。好ましくは、|Δr|が0.3以下、より好ましくは|Δr|が0.2以下である。なお、ここで、Δrについて絶対値で示す理由は、Δrはプラス、マイナスいずれの符号にもなり得るからである。いずれにせよ、絶対値が上記範囲であれば、良好な寸法時変化の異方性を確保することができる。
本発明の鋼板の成分組成は、従来公知の窒化処理用鋼板と同じでよいが、以下の範囲であることが好ましい。
C:0.002〜0.09mass%
Cは、鋼板の加工性に大きな影響を及ぼす元素であり、含有量が多くなるほど加工性が低下する。よって、Cの含有量は0.09mass%以下に制限するのが好ましい。一方、C含有量が低い程、加工性は向上するため、Cの下限値は0.002mass%まで許容することができる。しかし、機械構造用鋼としての強度が要求される部品に用いられる場合には、C含有量は0.01mass%超えとすることが好ましい。
Siは、強度を高める元素であるが、過度の添加は加工性を低下させる他、表面酸化によって窒化反応を阻害するので、0.5mass%以下に制限するのが好ましい。なお、Siの0.005mass%未満への低減は、製鋼コストの増大を招くので、下限値は0.005mass%とするのが好ましい。
Mnは、Siと同様、強度を高める元素であるが、過度の添加は加工性を低下させるため、その上限値を1.0mass%とするのが好ましい。一方、Mn含有量の過度の低減は、製鋼コストの上昇を招くため、下限値は0.01mass%するのが好ましい。
Pは、加工性の低下を招くことなく強度を上げる元素であるが、0.10mass%を超える添加は、成形性の劣化や2次加工脆性などを招くので好ましくない。一方、Pの過度の低減は、製鋼コストの増大を招くので、下限値は0.001mass%とするのが好ましい。
Sは、0.010mass%を超えて含有すると、表面疵の発生および延性の低下を招くので好ましくない。よって、Sは0.01mass%以下に制限するのが好ましい。
Alは、溶鋼の脱酸剤として添加される元素であり、0.005mass%以上添加することが好ましい。一方、過度の添加は加工性を低下させるので、Alの上限値は0.3mass%とするのが好ましい。また、Alは、窒素との親和力が強く、窒化による硬化処理においては、重要な元素であり、特に化合物層の表層硬度を高める働きがある。その効果を有効に発揮させるためには、0.03mass%以上の添加がより好ましい。なお、Alは、Ar3変態点を高める効果があり、熱延時の仕上温度を確保することが困難な場合には、0.2mass%以下に制限することが望ましい。
Crは、窒化による硬化処理する上では特に重要な元素であり、0.20mass%未満の添加では、窒化による硬度上昇および硬化深さが十分に得られない。しかしながら、1.5mass%を超えて添加すると、高応力負荷環境における疲労強度が低下するため、1.5mass%を上限とするのが好ましい。
Tiは、必要に応じて選択的に添加することができる元素である。Tiを0.005〜0.02mass%の微量範囲で添加した場合には、鋼中Nを固着してAlN形成を抑制し、Alが窒化処理時に有効に働くようになる。さらに、Tiを0.02〜0.3mass%の範囲で添加した場合には、窒化処理時にTiN形成により表面硬化に有効に寄与する。ただし、0.3mass%を超えるTiの添加は、Ar3変態点を著しい上昇を招き、熱間圧延における所望の仕上圧延温度を確保することが困難となるため、上限を0.3mass%とするのが好ましい。
Nbも、Tiと同様、必要に応じて選択的に添加することができる元素である。特に、Nbは、Cとの親和力が強く、結晶粒の微細化に効果がある。また、短時間の窒化処理でも、表面硬度を高めることができる。これらの効果を得るためには、少なくとも0.005mass%以上添加することが好ましい。しかしながら、0.3mass%を超える添加は、加工性を低下させるため、上限値を0.3mass%とするのが好ましい。
Vは、Ti,Nbと同様に、選択的に添加することができる元素である。Vは、Nの拡散を促進させる働きがあり、硬化深さを深めるのに有効な元素であるとともに、Crとの複合効果により析出物の大きさを微細化する効果を有する。このような効果は、0.005mass%未満では得られない。一方、0.3mass%を超えて添加すると、成形性が低下するので、上限値は0.3mass%とするのが好ましい。
Claims (4)
- C:0.002〜0.09mass%、Si:0.005〜0.5mass%、Mn:0.01〜1.0mass%、P:0.001〜0.10mass%、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.3mass%、Cr:0.20〜1.5mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、プレス成形後、窒化処理して用いられる薄鋼板であって、平均r値が0.9以上で、下記(1)式で定義されるr値の異方性の絶対値|Δr|が0.4以下であることを特徴とする窒化処理による寸法変化の異方性が小さい窒化処理用鋼板。
記
|Δr|=|(r0−2r45+r90)/2| ・・・ (1)
ここで、r0 :圧延方向に対して0度の方向におけるr値
r45:圧延方向に対して45度の方向におけるr値
r90:圧延方向に対して90度の方向におけるr値 - 上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.005〜0.3mass%、Nb:0.005〜0.3mass%およびV:0.005〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の窒化処理用鋼板。
- 下記(2)式で定義される窒化処理前後の寸法変化率dの異方性Δdが0.08%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の窒化処理用鋼板。
記
Δd=(d0−2d45+d90)/2 ・・・ (2)
ここで、d0 :圧延方向に対して0度の方向における寸法変化率(%)
d45:圧延方向に対して45度の方向における寸法変化率(%)
d90:圧延方向に対して90度の方向における寸法変化率(%) - 圧延方向に対して0度、45度および90度の方向における窒化処理前後の寸法変化率の最大値と最小値の差が0.10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化処理用鋼板。」
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