JP2005298848A - 鋼板の熱間プレス方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温成形後に高強度が得られる鋼板の熱間プレス方法を提供する。
【解決手段】 C:0.15〜0.35%、Al:1.5〜3.5%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を850〜1050℃に加熱してフェライト相が面積率で(以下同じ)5〜30%存在するフェライト+オーステナイト二相組織とし、150℃以下の金型にてプレス成形後、鋼板のミクロ組織としてフェライト相が5〜30%存在したフェライト+マルテンサイト二相組織からなり、マルテンサイト相中におけるAl濃度に対するフェライト相中におけるAl濃度の比が1.5以上である成形品を得ることを特徴とする鋼板の熱間プレス方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車部品の構造部材に代表されるような強度が必要とされる部材に適した鋼板の熱間プレス方法に関する。
近年、環境保護と地球温暖化を防止するため、化石燃料の消費を抑制する動きが強まっており、移動手段として我々の生活に欠かせない自動車においても車体の軽量化が強く求められている。この軽量化を達成するためには、従来に比べ高い機械強度を有する材料を使用することが必要となるが、一般に高い強度を有する材料は曲げ加工などの成形加工において形状凍結性が低下する傾向にあり、また複雑な形状のものに対しては成形そのものが困難である。これらの問題を解決する方法のひとつとして鋼板を800℃以上の高温に加熱し、プレス加工を行った後冷却する、いわゆる熱間(高温、ホット)プレス(スタンプ)による方法が有望である。
熱間プレスに適した鋼板の鋼成分については、例えば特許第3389562号公報(特許文献1)にはプレス加工後の引張強度が1400MPa以上の鋼板について、また、特開2003−34844号公報(特許文献2)及び特開2003−82436号公報(特許文献3)にはアルミめっき鋼板あるいはアルミ−亜鉛めっき鋼板についての発明が開示されている。また、この鋼成分と密接に関係する加熱時の金属組織については特開2000−38640号公報(特許文献4)に検討例がある。
特許第3389562号公報 特開2003−34844号公報 特開2003−82436号公報 特開2000−38640号公報
しかしながら、上記従来技術は加工後の引張強度が1500MPa超になった場合には、薄鋼板であっても懸念される部材の靭性に対する配慮がなされておらず、本発明が対象とする加工後に高強度となる鋼板のプレス方法としては不十分と言わざるを得ない。
すなわち、特許文献1に記載の発明は、加熱温度から推定してオーステナイト単相組織を出発組織とした金型冷却による焼入(マルテンサイト変態)での高強度化を指向しているものの、その到達強度は1500MPa程度に留まっており、冷間プレスと比較すれば優れるものの熱間プレス材自体の靭性改善については何ら言及されていない。
また、特許文献2、3に記載の発明は、2000MPa程度までの高強度が得られる鋼板について鋼成分を規定したものであるが、その目的はめっきのプレス時の剥離によって生じる耐食性低下を防止するための成分検討であり、また、鋼板の靭性については同じく言及されていない。一方、特許文献4に記載の発明は実施例が少なく詳細は不明であるが、オーステナイト単相からの焼入のみならず、フェライト相を含む二相組織を出発組織とすることで機械特性を変化させる技術が開示されている。
しかしながら、これはマルテンサイト単相組織で得られる強度よりも低強度の材質を得るための強度調整として提案されているものであり、本発明が対象とする高強度を具備した機械的性質を改善するための方策ではない。更に、鋼成分として特別な配慮がなされていないために加熱温度を750〜840℃と低温にする必要があり、実用上はプレス成形前の温度確保が困難となることが予想される。そこで本発明は、プレス加工後の引張強度が1500MPa超の高強度部材を念頭に、鋼組成およびその加熱時の金属組織の観点からその機械的性質として懸念される靭性を改善する製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、まず高強度鋼板の靭性向上として利用される組織細粒化について検討を行った。しかし、熱間プレスに先立つ加熱温度として、プレス時の鋼板ハンドリングの時間確保などから通常加熱温度として採用されている800℃以上では、鋼板の組織が高温ではオーステナイト単相となり、この加熱温度が高くなるほど、またその加熱時間が長くなるほど組織は粗大化し、結果得られる焼入後のマルテンサイト組織も粗いものしか得られなかった。ところが高温での組織と深く関わる鋼成分について種々実験した結果、Alを鋼中に過剰に含有させた場合、通常の加熱条件でありながら高温での組織が細粒化し、高強度でも靭性が改善される場合があることを知見した。更にこの際、加熱条件としてその温度や時間が多少変動した場合でも強度を含めて材質特性がそれほど変動しないことを確認し、工業的に十分利用可能な技術として本発明をなしたものである。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%にて(以下同じ)、C:0.15〜0.35%、Al:1.5〜3.5%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を850〜1050℃に加熱してフェライト相が面積率で(以下同じ)5〜30%存在するフェライト+オーステナイト二相組織とし、150℃以下の金型にてプレス成形後、鋼板のミクロ組織としてフェライト相が5〜30%存在したフェライト+マルテンサイト二相組織からなり、マルテンサイト相中におけるAl濃度に対するフェライト相中におけるAl濃度の比が1.5以上である成形品を得ることを特徴とする鋼板の熱間プレス方法。
(2)さらに、Si≦2%、Mn≦3%、P≦0.05%、S≦0.01%、N≦0.01%、Cr≦2%、Mo≦1%、Ti≦0.1%、B≦0.005%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)記載の鋼板の熱間プレス方法。
(3)鋼板表面にアルミめっき、アルミ−亜鉛めっき又は亜鉛めっきが施されていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の鋼板の熱間プレス方法にある。
本発明は、自動車部品の構造部材に代表されるような強度が必要とされる部材に適した鋼板のプレス成形法を提供するものであり、工業的に価値の大きなものである。
以下に本発明を更に詳細に説明する。まず、本発明における成形後の鋼板のミクロ組織の限定理由を記述する。
本発明のミクロ組織は、加熱後、フェライト相が5〜30%存在するフェライト+オーステナイト二相組織とし、成形後、フェライト相が5〜30%存在するフェライト+マルテンサイト二相組織(DP組織)からなり、マルテンサイト相中におけるAl濃度に対するフェライト相中におけるAl濃度の比が1.5以上であることが特徴である。
熱間プレスに先立つ加熱時の高温組織を通常のオーステナイト単相組織ではなく、フェライト相が5〜30%存在するフェライト+オーステナイト二相組織とするのは、オーステナイト相に対してフェライト相がいわば第二相として存在していると高温での組織粗大化が著しく防止されることからその存在量を規定したものである。但しその量が5%未満では十分に粗大化防止に寄与せず、一方、30%超では鋼板製造時の熱延工程においてもこの二相組織状態となって熱延割れなどを誘発することから、その存在量は5〜30%とする。
このフェライト相の存在は高温組織ひいてはプレス後のミクロ組織の微細化に寄与すると共にプレス成形品の鋼板の延性改善にも寄与して靭性の向上が図れるので、成形後の組織はフェライト相が5〜30%存在したフェライト+マルテンサイト二相組織からなると規定する。なお、高温加熱時に安定した二相組織状態になるため鋼中の成分はフェライトとオーステナイト(常温ではマルテンサイト)の二相間で成分分配し、本発明に必須のAlについては、マルテンサイト相中におけるAl濃度に対するフェライト相中におけるAlの濃度の比(分配比)を1.5以上とする。
成形品がフェライト相を含むにも関わらずマルテンサイト組織のみよりなる鋼板と同等の強度が得られること、更にはそのフェライト相の組織分率が変化するにも関わらずその強度が安定していること、などは非常に興味深い知見であるため現在詳細に調査中であるが、前述した通り二相間で成分分配する鋼成分のうちCはフェライト相の増加に伴いオーステナイト相中に濃化するため、変態後のマルテンサイトの強度が高くなる結果、軟質なフェライト相の存在による強度低下をうまく補完しているのではないかと考えられる。
ところで熱間プレスの際に十分焼入性が確保されていない場合、例えば加熱時にオーステナイト単相組織となる場合でも冷却中にマルテンサイト変態の前に高温変態相であるフェライトが生成し、結果的に本発明と同様なDP組織が得られることがある。しかしこのような冷却中に変態生成するフェライトはその組織分率が極めて冷却速度によって変動し、結果として得られる部材の強度が著しく変動する可能性がある。
また、Alなどのいわゆる置換型固溶元素が本発明のように成分分配することもない。本発明のフェライト相は加熱時に安定的に存在するものであり、このような焼入が不十分な場合に生成するフェライト相とは基本的に異なる。金型の温度を150℃以下にするのは金型により鋼板の熱を抜熱してオーステナイト相をマルテンサイトに焼き入れるための冷却速度を確保するためであり、好ましくは100℃以下、更には室温とすることが好ましい。
次に、本発明の化学成分の限定理由について説明する。化学成分の量は質量%である。 Cは、加工時の焼入性、および焼入時の強度を確保するために本発明鋼における最も重要な元素であり、1500MPa超の高強度を安定して得る為には最低0.15%以上は必要である。一方、0.35%超になるとフェライト相を加熱時に5%以上得ることが困難となり、十分な靭性を確保することができないため、その成分範囲を0.15〜0.35%とする。
Alは、プレス前の加熱時の組織をオーステナイト相とフェライト相の二相混合組織にするために不可欠な元素である。加熱温度を後述する850〜1050℃とした場合、1.5%未満ではフェライト相を5%以上得ることができず、一方、3.5%超ではフェライト相が30%超存在し、前述したように鋼板製造中の熱延時に熱延割れなどを誘発することから、その成分範囲を1.5〜3.5%とする。
Si、Mnは、通常高強度鋼板に含まれる強化元素であり、本発明においても適宜添加されるべき元素であるが、過度な添加は鋼板製造時の熱延工程での延性低下やその結果として表面性状などを損ねることから、その量は各々、Si≦2%、Mn≦3%とした。下限は特に限定することなく本発明の効果を得ることができるが、製鋼技術上、それぞれ0.01%以上、0.05%以上とすることが経済的である。
P、S、Nは、通常不可避不純物として鋼中に存在するものであるが、本発明鋼は高強度鋼板であるため靭性の観点からは極力低減することが好ましい。しかし、いたずらに低減することは鋼板製造時の製鋼工程での精錬コストアップを招くことから、その量は各々、P≦0.05%、S≦0.01%、N≦0.01%とした。
Cr、Moは、オーステナイト相の焼入性を高める元素としてしばしば活用されており、本発明鋼でも適宜添加してもよい。しかし、過度の添加はいたずらに合金コストアップを招くことから、その量は各々、Cr≦2%、Mo≦1%とした。下限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、上記の効果を得るためには、それぞれ、0.05%以上、0.02%以上とすることが好ましい。
Ti、Bは、共に添加することでTiが鋼中のNをTiNとして固着し、BがBNなどの析出物とならずに固溶状態としてCrやMoと同様に焼入性に寄与する。しかし、過度のTi添加はTi(C,N)の粗大化を招き表面疵などの起点となること、また、Bは過剰に添加してもその焼入性の効果が飽和することから、その量は各々、Ti≦0.1%、B≦0.005%とした。下限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、上記の効果を得るためには、それぞれ、0.01%以上、0.0002%以上とすることが好ましい。
なお、本発明に用いる鋼板は熱間プレス鋼板として加熱時の表面酸化防止などのため付与されるアルミやアルミ−亜鉛、若しくは亜鉛などのめっきを施してもよく、これによる機械的性質への影響はない。これはめっきが鋼板表面のみに付着していること、及びその加熱中の合金化反応が鋼板表面のみの現象であることから、鋼中のAl含有量やその高温での組織状態には何ら影響及ぼさないためであると推察される。
本発明において鋼板を熱間プレスする際の加熱温度は850〜1050℃とする。これは850℃未満ではプレスの際のハンドリング時間からプレス前の組織を安定させることができず、前述したように冷却中にオーステナイト相の部分がフェライト変態を起こしていわゆる焼入が不十分となるためである。一方、1050℃超では本発明鋼の成分として限定したAlの上限を持ってしてもフェライト相を5%以上加熱時に存在させることができない。しかしながら、通常の熱間プレスにおける加熱温度は本発明で限定する温度範囲内であり、この温度の限定は特に熱間プレスの操業上で問題になるものではない。
なお、成形後の引張強さが1500MPa超となる鋼板においてはその遅れ破壊特性も問題となることが予想されるが、本発明で機械特性として着目した靭性は衝撃特性の優劣を表す指標と共に、この遅れ破壊特性の優劣をも推定する上で有用な指標と考えられる。薄鋼板の遅れ破壊特性については未だ試験方法が確立していないため本発明では直接の評価はしていないものの、本発明はこの遅れ破壊特性の改善も意図したものであることは言うまでもない。
以下に、実施例により本発明をさらに説明する。表1に示す種々の化学成分の鋼を鋳造し、1150℃〜1250℃の温度に再加熱後、熱延、酸洗、冷間圧延、焼鈍しさらに圧下率0.8%の調質圧延を施した。この際、一部の鋼板には表2に示すように焼鈍後めっき処理(アルミめっきあるいはアルミ−亜鉛(ガルバリウム)めっきあるいは亜鉛めっき、付着量両面120g/m2 )を行った。これらの鋼板を同じく表2に示す加熱温度に大気で約5分間加熱後、常温の金型によりプレス成形し、得られたプレス成形品から試験片を切出した。ただしめっき処理を施こしていないものについてはサンプル表面のスケールの密着性が悪かったため、加工前にショットブラストにより脱スケールした。
フェライト率は鋼板断面の板厚中央部を研鏡後ナイタールエッチングにより組織を現出させ光学顕微鏡によって相の面積率をポイントカウントにより算出した。また、ミクロ組織を構成する各相のAl濃度はEPMAを用いて測定しその濃度比を求めた。強度はサンプルをJIS Z 2201、5号試験片に加工し、同2241記載の試験方法にしたがって引張試験を行い求めた。靭性はサンプルをJIS Z 2202、3号試験片に加工し、同2242記載の試験方法にしたがって種々の温度でシャルピー試験を行い、50%破面遷移温度(Trs50)を求めた。その評価結果を表2に併記した。
Figure 2005298848
Figure 2005298848
鋼種A〜Hは本発明範囲の成分鋼であり、これらを本発明範囲の製造条件で製造したNo.1〜5および7〜9は、フェライト相を5〜30%含んでおり、機械的性質もTSが1500MPa超あり、また、靭性も十分確保されている。しかし、本発明鋼を用いた試験でも、No.6のように加熱温度が本発明条件より高い場合にはフェライト相が減少し靭性が劣化しており、No.10のように逆に低い場合には冷却中の変態により生成したフェライトがフェライト分率を高めて十分な強度が得られていない。
また、Al濃度の比もほぼ1であり、本発明条件の1.5以上を満足していない。これに対し、鋼種I〜LはCやAlにおいて本発明範囲外の成分鋼であるため、No.11〜13のように加熱温度が本発明条件であっても組織が本発明の規定を満足しておらず、強度が低かったり、靭性に劣るものとなっている。なお、鋼種Lの材料は熱延中に割れが生じ、試験に供することができなかったため、表2には含まれていない。


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (3)

  1. 質量%にて、C:0.15〜0.35%、Al:1.5〜3.5%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を850〜1050℃に加熱してフェライト相が面積率で(以下同じ)5〜30%存在するフェライト+オーステナイト二相組織とし、150℃以下の金型にてプレス成形後、鋼板のミクロ組織としてフェライト相が5〜30%存在したフェライト+マルテンサイト二相組織からなり、マルテンサイト相中におけるAl濃度に対するフェライト相中におけるAl濃度の比が1.5以上である成形品を得ることを特徴とする鋼板の熱間プレス方法。
  2. さらに、質量%にて、Si≦2%、Mn≦3%、P≦0.05%、S≦0.01%、N≦0.01%、Cr≦2%、Mo≦1%、Ti≦0.1%、B≦0.005%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の鋼板の熱間プレス方法。
  3. 鋼板表面にアルミめっき、アルミ−亜鉛めっき又は亜鉛めっきが施されていることを特徴とする請求項1又2記載の鋼板の熱間プレス方法。
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