JP2000212706A - Cr系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

Cr系ステンレス鋼板およびその製造方法

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JP2000212706A
JP2000212706A JP11015186A JP1518699A JP2000212706A JP 2000212706 A JP2000212706 A JP 2000212706A JP 11015186 A JP11015186 A JP 11015186A JP 1518699 A JP1518699 A JP 1518699A JP 2000212706 A JP2000212706 A JP 2000212706A
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Masaharu Hatano
正治 秦野
Shinji Tsuge
信二 柘植
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高い表面硬さと優れたプレス加工性および耐食
性を有するCr系ステンレス鋼板とその製造方法を提供
する。 【解決手段】質量%で、Cr:12〜18%、C+N:
0.03〜0.1%、Nb:0.1×(C+N)〜(C
+N)%を含む化学組成を有し、少なくとも片面の表層
部は30体積%以上のマルテンサイト相を含む組織、内
層部はマルテンサイト相の割合が50体積%以下でかつ
表層部のマルテンサイト相の割合以下の低い組織とす
る。この鋼板は、最終冷間圧延後、Ac1点以上、110
0℃未満の温度領域で連続焼鈍して製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れたプレス加工
性と耐食性を備えるとともに表面硬さの高い、例えばフ
ロッピイーディスクのセンターコア用材に好適なCr系
ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体として用いられるフロッピ
イーディスクのセンターコア用材料として、Cr系ステ
ンレス鋼板が従来から使用され、また家電製品の外板用
鋼板として、Ni系ステンレス鋼板に替わって、安価な
Cr系ステンレス鋼板が使用されるようになってきた。
【0003】このうち、フロッピイーディスクのセンタ
ーコア用の材料には、表面硬さが硬いこと(ビッカース
硬度Hvで220以上)、プレス加工性に優れること、
耐食性に優れること、および強磁性を有することが要求
される。
【0004】センターコアは、中央の円形基板の外側
に、約2mm程度の段差を有するツバ部を設けた一体成
形品である。また、円形基板には、固定孔が設けられて
おり、この固定孔に、装置側に設けた固定金具が挿入さ
れるまでセンターコアが回転することにより、フロッピ
ーディスクが装置に装着される。
【0005】したがって、センターコア用の材料の硬度
としては、固定金具との摺動によって傷がつかないよう
に、少なくともHv220以上が要求される。また、プ
レス加工性としては、2mm程度の浅絞り加工を施した
際に、加工部に微細割れやネッキングが発生せず、ま
た、ツバ部の平坦度が高い(粗さ測定したときの単位長
さ中の山頂線と谷底線との差が30μm以下)ことが要
求される。さらに、美観の点からは、光輝焼鈍を施して
光沢が付与されたものが好ましい。
【0006】このような材料として、従来、一般には、
比較的優れた耐食性を有するとともに強磁性材料である
Cr系ステンレス鋼、例えばJIS SUS430に規
定されるステンレス鋼の冷延鋼板が使用されてきた。
【0007】このCr系ステンレス冷延鋼板は、製造工
程における最終焼鈍後に、表層部を硬くする目的で、少
なくとも加工度15%程度の調質圧延が施される。しか
し、この方法で表層部を硬くすると、鋼板の伸びが低く
なり、塑性異方性が大きくなってプレス加工性の悪化い
う問題が生じる。
【0008】一方、表層部の硬さは劣るが伸びの高い鋼
板をセンターコアの形状にプレス加工し、その後、クロ
ムめっきを施して表層部を硬くする方法もあるが、この
方法では、プレス加工後にクロムめっき処理が必要とな
り、製造コストが高くなる。
【0009】高い表層部硬さと良好なプレス加工性を備
える強磁性鋼板と、その製造方法が、特開平5−311
336号公報および特公平6−40424号公報に開示
されている。
【0010】前記の特開平5−311336号公報に
は、重量%でCr:13〜20%、C:0.1%以下、
N:0.1%以下の化学組成を有し、表層部は窒化処理
によるマルテンサイトの単相組織、内層部はフェライト
相の単相組織からなるCr系ステンレス鋼板が開示され
ている。そして、その製造方法として、冷間圧延後の最
終焼鈍を、オーステナイト単相となる950〜1200
℃程度の高温域で、窒素還元雰囲気にて実施し、鋼板表
層部を十分に窒化させる方法が記載されている。
【0011】しかし、通常のCr系ステンレス鋼、例え
ばJIS SUS430ステンレス鋼の場合、オーステ
ナイト単相となる高温域で加熱すると、冷却後には材料
の内部まで硬質なマルテンサイト相となり、プレス加工
性に必要な延性が著しく低下する。また、加熱時に一旦
固溶したCr炭窒化物が、冷却時に結晶粒界に再析出
し、粒界近傍にCr欠乏を生じる鋭敏化現象により耐食
性が著しく劣化するという問題が生じる。
【0012】これらの問題を回避するために、特開平5
−311336号公報の技術では、好ましくはC+N≦
0.08%として、最終焼鈍後50〜100℃/秒の速
度で冷却することが記載されている。
【0013】また、前記の特公平6−40424号公報
には、重量%でCr:10.0〜18.0%、C:0.
08%以下、N:0.05%以下の化学組成を有し、5
〜70体積%のフェライト相と30〜95体積%のマル
テンサイト相を含む複相組織を有するCr系ステンレス
鋼板(鋼帯)が開示されている。
【0014】そして、その製造方法として、冷間圧延後
の最終焼鈍を、フェライト+オーステナイトの2相域と
なるAC1点(830℃)以上1100℃以下の高温域で
実施する方法が記載されている。ここで、2相域焼鈍に
よるステンレス鋼板の鋭敏化現象を防止するため、好ま
しくは、C:0.03%以下、N:0.02%以下と
し、さらに、1000℃/秒以下の急冷処理が必要とさ
れている。
【0015】前記2つの公報に開示された技術では、焼
鈍後の冷却速度を速く制御する必要がある。しかし、通
常の製造ラインで用いられている連続焼鈍炉で最終焼鈍
する場合の冷却速度は、5〜40℃/秒の範囲である。
そのため、冷却速度を速く制御するための連続焼鈍炉の
設備改造にコストがかかるという問題が生じる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、高い
表面硬さと優れたプレス加工性および耐食性を有し、製
造コストの上昇を招くことなく、容易に製造することの
できるCr系ステンレス鋼板と、その製造方法を提供す
ることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の
(1)のCr系ステンレス鋼板と、(2)のその製造方
法にある。
【0018】(1)質量%で、Cr:12〜18%、C
+N:0.03〜0.1%、Nb:0.1×(C+N)
〜(C+N)%を含む化学組成を有し、少なくとも片面
の表層部は30体積%以上のマルテンサイト相を含む組
織からなり、内層部はマルテンサイト相の割合が50体
積%以下でかつ表層部のマルテンサイト相の割合以下の
組織からなることを特徴とするプレス加工性と耐食性に
優れた表面硬さの高いCr系ステンレス鋼板。
【0019】(2)質量%で、Cr:12〜18%、C
+N:0.03〜0.1%、Nb:0.1×(C+N)
〜(C+N)%を含むCr系ステンレス鋼を熱間圧延お
よび冷間圧延した後、Ac1点以上、1100℃未満の温
度領域で連続焼鈍することを特徴とする前記(1)記載
のCr系ステンレス鋼板の製造方法。
【0020】なお、前記(1)の鋼板で、片面のみの表
層部のマルテンサイト相が30体積%以上の場合、他方
の面の表層部は、内層部と同じ組織でよい。
【0021】本発明者は、前記の課題を解決すべく、C
r系ステンレス鋼板の組織に及ぼす化学組成と冷間圧延
後の連続焼鈍条件との影響について研究し、以下の知見
を得た。本発明は、この知見に基づくものである。
【0022】(a)化学組成 通常のCr系ステンレス鋼の化学組成を基本とし、(C
+N)量に応じてNbを微量添加した鋼板を、AC1点以
上、1100℃未満の温度領域で焼鈍すると、微量のN
bの作用により、鋼板表層部の鋭敏化現象が抑制される
とともに、高い表面硬さを得ることができる。
【0023】フェライト系ステンレス鋼の溶接部の鋭敏
化を抑制するために、(C+N)量の15倍以上のNb
が添加されることが多い。しかし、フェライト−オース
テナイトの2相域で焼鈍された後の冷却中に生じる鋭敏
化を抑制するためには、わずかな量のNbの添加でよ
い。また、焼鈍後の冷却速度を通常の連続焼鈍における
冷却速度より速くする必要もない。 (b)連続焼鈍条件 Cr系ステンレス鋼板を、AC1点以上、1100℃未満
の温度領域で連続焼鈍すると、板厚全てにわたり30体
積%以上のマルテンサイト相を含む組織となる。また、
化学組成を本発明で規定する範囲内とすると、板厚全て
にわたり30〜50体積%のマルテンサイト相を含む組
織を得ることができる。
【0024】連続焼鈍時の雰囲気を、N2 ガスとH2
ガスとを含む混合ガス雰囲気とし、前記の温度領域でC
r系ステンレス鋼板を連続焼鈍すると、窒素が、鋼板表
面から0.03mm程度までの範囲に浸透する。窒素
は、代表的なオーステナイト形成元素であり、窒素が浸
透した表層部は、連続焼鈍時にフェライト相からオース
テナイト相への変態が促進され、冷却後の表層部は30
体積%以上のマルテンサイト相を含む組織となる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のCr系ステンレ
ス鋼板とその製造方法について、具体的に説明する。
【0026】(a)化学組成 本発明に係わる鋼板の化学組成は、通常のCr系ステン
レス鋼板(例えばJIS SUS430ステンレス鋼
板)を基本とするが、AC1点以上、1100℃未満の温
度領域で焼鈍を施した際に、表層部の鋭敏化現象を抑制
するとともに、硬さをHv220以上とするために、質
量%で以下の範囲とする。
【0027】Cr:Crは代表的なフェライト形成元素
であるとともに、耐食性を確保するために必要な元素で
ある。フロッピーディスクのセンターコア用材に要求さ
れる耐食性を確保するには、12%以上必要である。
【0028】一方、18%を超えると、原料コストが高
くなるばかりでなく、30体積%以上のマルテンサイト
相を含む組織を生成させて表層部の硬度Hv220以上
を得るのに必要なオーステナイト形成元素の添加量が多
くなり、靭性や加工性の低下をもたらす。
【0029】したがって、Cr含有量は12〜18%と
する。さらに好適な範囲は14〜16%である。
【0030】C+N:CおよびNは代表的なオーステナ
イト形成元素であり、マルテンサイト硬化能を支配す
る。焼鈍により表層部に30体積%以上のマルテンサイ
ト相を含む組織を生成させてHv220以上の表面硬度
を得るには、0.03%以上必要である。一方、0.1
%を超えると、マルテンサイ相そのものの硬度が高くな
り、また、焼鈍による鋭敏化現象を起こしやすくなり、
耐食性が著しく劣化する。
【0031】したがって、(C+N)の含有量は0.0
3〜0.1%とする。好ましい範囲は、0.04〜0.
06%である。
【0032】Nb:微量のNbは、焼鈍後の冷却過程で
2層組織を構成するフェライトの粒界へのCr炭窒化物
の析出を遅らせて、鋭敏化を抑制する。さらに、フェラ
イト相およびオーステナイト相から変態したマルテンサ
イト相に固溶し、加工性を低下させることなく高度を上
昇させる作用を持つ。このためには、0.1×(C+
N)%以上必要である。
【0033】一方、フェライト安定化元素であるため、
(C+N)%を超えるとAC1点を上昇させ、マルテンサ
イト相の生成を抑制する。また、マルテンサイト相に固
溶すべきCおよびNを固定してしまい、マルテンサイト
相の硬さを低下させる。
【0034】したがって、Nbの含有量は0.1×(C
+N)〜(C+N)%とする。
【0035】前記の成分以外に、Cr系ステンレス鋼に
通常添加される成分が含まれてもよい。その代表的な成
分は、Ni、MnおよびCuである。
【0036】Ni、Mn、Cu:これらはいずれもオー
ステナイト生成元素であり、焼鈍後のマルテンサイト相
の量および硬さの制御に有効である。また、これらを添
加することにより、(C+N)の量を低減することがで
き、軟質マルテンサイトとして加工性を向上させるとと
もに、鋭敏化現象を抑制する。さらに、AC1点を低下さ
せる作用を持つ。これらの元素は、効果とコストとを考
慮して、必要により添加する元素であり、添加する場合
は、Niは0.3〜0.5%程度、Mnは0.3〜0.
6%程度、Cuは0.3〜0.5%程度がよい。
【0037】(b)金属組織 本発明の鋼板では、少なくとも片面の表層部の組織は、
マルテンサイト単相組織、または、マルテンサイト相の
割合が30体積%以上のマルテンサイト−フェライトの
2相組織とする。これは、表層部の硬度をHv220以
上とするためである。
【0038】内層部は、フェライト単相組織、または、
マルテンサイト相の割合が50体積%以下のフェライト
−マルテンサイトの2相組織とする。これはプレス加工
に必要な延性を得るためである。ただし、表層部のマル
テンサイト相の割合は、内層部と同等またはそれ以上と
する。
【0039】表層部の厚さは、表面から10〜50μm
とするのがよい。表層部の厚さが10μm未満である
と、表層部の硬度にバラツキが生じる虞があり、Hv2
20以上の硬度が安定して得られない。一方、表層部の
厚さが50μmを超えると、プレス成形に必要な延性が
低下する。
【0040】なお、マルテンサイト相が30体積%以
上、50体積%以下の範囲において、鋼板の表層部から
内層部まで板厚全てにわたって同じ組織であってもよ
い。
【0041】表層部を鋼板の少なくとも片面に形成する
のは、フロッピーディスクを装置に装着するときに、セ
ンターコアの片面が固定金具と摺動し、少なくともこの
摺動する側の面に前記表層部が必要なためである。表層
部は両面に形成しても差し支えない。
【0042】(c)溶製〜冷間圧延 溶製から冷間圧延までの製造方法には特に制約はなく、
常法によればよい。例えば、転炉にて精錬して溶湯の化
学組成を前記のように調整した後、必要に応じて真空脱
ガスを行い、連続鋳造法によりスラブ(例えば、厚さ1
20〜280mm、幅700〜1200mm、長さ8〜
10m)を製造する。
【0043】この連続鋳造スラブを1100〜1300
℃程度に加熱した後、熱間圧延して厚さ2〜10mm程
度の熱延鋼板となし、その後、焼鈍と酸洗を施す。この
熱延鋼板に冷間圧延と焼鈍および酸洗を施して、板厚
0.2〜1.0mmの冷延鋼板とする。
【0044】(d)最終冷間圧延後の連続焼鈍 前述の金属組織を持つ鋼板を得るためには、最終冷間圧
延後、通常の燃焼ガス雰囲気中で連続焼鈍する方法と、
2 ガスとH2 ガスとを混合した雰囲気中で光輝焼鈍す
る方法の2通りがある。
【0045】通常の雰囲気での連続焼鈍では、表層部お
よび内層部のマルテンサイト相の割合が同じ組織の鋼板
が得られ、光輝焼鈍では、表層部のマルテンサイト相の
割合が、内層部より多い鋼板が得られる。
【0046】いずれの場合も焼鈍温度は、AC1点以上1
100℃未満の温度領域とする。通常の雰囲気でAC1
以上の温度領域で連続焼鈍すると、表層部から内層部ま
で板厚全てにわたり30体積%以上50体積%以下のマ
ルテンサイト相を含む組織を得ることができる。
【0047】一方、1100℃以上の温度で連続焼鈍す
ると、表層部から内層部板厚全てにわたり50体積%を
超えるマルテンサイト相を含む組織となり、プレス加工
に必要な延性が低下する。したがって、焼鈍温度は、A
C1点以上、1100℃未満とする。
【0048】連続焼鈍時の均熱時間および冷却速度は、
通常の製造ラインで用いられている連続焼鈍の処理条件
でよく、均熱時間は、10〜60秒の範囲、また、冷却
速度は、5〜40℃/秒の範囲とすればよい。
【0049】光輝焼鈍では、雰囲気ガス中の窒素を、鋼
板表面から0.03mm程度までの範囲に浸透させる。
窒素は、代表的なオーステナイト形成元素であり、窒素
が浸透した表層部は、光輝焼鈍時にフェライト相からオ
ーステナイト相への変態が促進され、冷却後はこのオー
ステナイト相がマルテンサイト相に変態する。マルテン
サイト相の割合が30体積%以上の表層部を得るには、
2 ガスは雰囲気ガス中に体積%で20%以上とするの
がよい。
【0050】N2 ガスにH2 ガスを混合するのは、雰囲
気ガス中に不可避的に混入する酸素により、鋼板表面に
形成される酸化皮膜をH2 ガスにより還元して、酸化皮
膜厚さを100オングストローム未満程度に薄くし、N
2 ガス相から表層部への窒素の吸収を促進するためであ
る。このために、混合ガス中のH2 ガスは雰囲気ガス中
に体積%で50%以上とするのがよい。
【0051】また、光輝焼鈍における雰囲気ガスの露点
が高いと、鋼板表面には緻密でかつ100オングストロ
ーム以上程度の厚い酸化皮膜が形成され、表層部の窒素
の吸収が進行しなくなるため、雰囲気ガスの露点は、−
45℃以下に制御することが好ましい。雰囲気ガスに
は、表面酸化の恐れのないArガス等の不活性ガスおよ
び窒化反応を促進させるNH3 等の触媒を含んでいても
差し支えない。
【0052】光輝焼鈍を、AC1点より低温のフェライト
+(Cr,Fe)236 の領域で行うと、鋼板表面に生
成する酸化皮膜(Cr23)が安定化し、さらにフェラ
イト相の窒素の固溶量が少ないことから、N2 ガス相か
ら表層部への窒素の吸収はほとんど起こらない。
【0053】しかし、AC1点を超える高温域で行うと、
鋼板表面のCr23皮膜が還元されて薄く(100オン
グストローム未満)なるとともに、Cr23皮膜および
鋼中の窒素原子の拡散速度が速くなり、かつ、鋼の窒素
固溶量も多くなり、表層部にマルテンサイト相を生成さ
せ得るに十分な窒素を吸収させることができる。
【0054】一方、1100℃以上の温度で光輝焼鈍を
行うと、内層のマルテンサイト相が50体積%を超える
2相組織となり、プレス加工に必要な延性が低下する。
【0055】以上のように、連続焼鈍を光輝焼鈍とする
と、内層部の延性を確保した状態で、表層部のマルテン
サイト相を増加させて、より高い表面硬度を得ることが
できる。
【0056】光輝焼鈍時の均熱時間および冷却速度は、
特に限定しない。これらの条件は、通常の製造ラインで
用いられている連続焼鈍の処理条件でよく、均熱時間
は、10〜60秒の範囲、また、冷却速度は、5〜40
℃/秒の範囲とすればよい。
【0057】なお、30体積%以上のマルテンサイト相
を含む組織の表層部を片面のみに形成する場合は、他方
の面を例えばマスキング処理し、雰囲気ガス中からの窒
素の吸収を防止すればよい。このようにすれば、内層か
ら他方の面にわたって、マルテンサイト相の割合が50
体積%以下の組織となる。
【0058】
【実施例】〈実施例1〉化学組成が本発明で規定する範
囲内のCr系ステンレス鋼および本発明で規定する範囲
をはずれるCr系ステンレス鋼からなる板厚0.3mm
の冷間圧延鋼板を製造した。表1に化学組成をAC1点と
ともに示す。
【0059】
【表1】
【0060】前記の鋼板から試験片を採取し、焼鈍温度
を変更して連続焼鈍した。表2に連続焼鈍条件(焼鈍温
度、均熱時間)を示す。雰囲気ガスは、燃焼ガス雰囲気
を模擬してN2 ガスを使用し、露点を−20℃以上に制
御した。また、ヒートパターンは、平均加熱速度20℃
/秒、平均冷却速度10℃/秒とした。
【0061】得られた鋼板の表層部および内層部のマル
テンサイト相の体積率、表面および内層部の硬さ、耐食
性(発銹の有無、粒界析出物の有無)およびプレス加工
性(浅絞り加工部表面のネッキング有無、平坦度)を調
査した。結果を表2にあわせて示す。
【0062】マルテンサイ層の体積率は、試験片を樹脂
に埋め込み、断面部に鏡面研磨を施した後、鏡面研磨面
をエチルアルコールを溶媒とする1%ピクリン酸−5%
塩酸溶液にて腐食し、次いで、腐食面を光学顕微鏡を用
いて200倍で観察し、視野中に占めるマルテンサイト
相の面積率を測定し、その測定値を体積率に換算した。
【0063】硬さは、ビッカース硬さ試験法により、2
00g荷重の条件にて測定した。ここで、表面硬さは試
験片の両表面にビッカース圧子を打ち、内層部硬さは試
験片を樹脂に埋め込み、断面部に鏡面研磨を施し、その
内層部にビッカース圧子を打つことにより測定した。
【0064】耐食性については、Cl濃度を1%に調整
したpH4の45℃のNaCl水溶液に500時間浸漬
した後、目視で発銹状況を観察する方法で評価した。さ
らに、鋭敏化現象の詳細を調べるために、表層組織の結
晶粒界を透過型電子顕微鏡を用いて観察し、Cr炭窒化
物の粒界析出の有無を調査した。
【0065】電子顕微鏡観察では、鋼板の表層部から抽
出レプリカ試料を作製し、明視野像法により粒界析出物
の有無を確認した。次いで電子線回析法により、確認さ
れた粒界析出物の回析パターンを撮影し、得られた回析
パターンより析出物の格子定数を求め、さらにエネルギ
ー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)により析
出物の元素を確認することにより析出物を同定した。
【0066】プレス加工性は、試験片に2mmの浅絞り
加工を施してセンターコア形状に成形して、板厚減少に
よる浅絞り加工部のネッキングの有無、ツバ部の平坦度
を測定することにより評価した。
【0067】浅絞り加工部のネッキングの有無は、セン
ターコアの成形品を樹脂に埋め込み、断面部を鏡面研磨
した後、光学顕微鏡にて観察することにより行った。ツ
バ部の平坦度の評価は、水平台上にセンターコアの成形
品を置き、粗さ測定器によりツバ部20mm間の凹凸ま
たはうねりの山頂線と谷底線との差を測定することによ
り行った。
【0068】
【表2】
【0069】表2の結果は、マルテンサイト相の体積率
が表層部と内層部とで同一の場合の例である。試験片N
o. 1〜6は本発明例であり、マルテンサイト相の体積
率は30〜40%で本発明で規定する条件を満足し、か
つ、表面硬度は目標とするHv220以上である。ま
た、発銹およびCr炭窒化物の粒界析出も認められず、
さらに、センターコアに成形した際に良好な加工性を有
していた。
【0070】これに対し、試験片No. 7、8、13およ
び14の比較例は、マルテンサイトの体積率が30〜4
0%で、目標の表面硬度と良好なプレス加工性は得られ
ているものの、発銹および粒界析出が認められ耐食性に
劣る。
【0071】試験片No. 9、11、12、15、17お
よび18の比較例は、良好なプレス加工性と耐食性が得
られているものの、マルテンサイ相の体積率が0〜20
%と本発明で規定する表層部の体積率を下まわり、目標
の表面硬度は得られなかった。
【0072】試験片No. 10および16の比較例は、目
標の表面硬度と良好な耐食性は得られているものの、マ
ルテンサイ相の体積率が70〜75%と本発明で規定す
る内層部の体積率を超え、加工性に劣る。
【0073】〈実施例2〉表1の化学組成を有するCr
系ステンレス鋼からなる板厚0.3mmの冷間圧延鋼板
から試験片を採取して光輝焼鈍を施し、鋼板の両面に表
層部を形成した。
【0074】表3に光輝焼鈍条件(焼鈍温度、均熱時
間)を示す。光輝焼鈍には、N2 ガス25体積%とH2
ガス75体積%との混合ガスを使用し、雰囲気ガスの露
点を−45℃以下に制御した。また、ヒートパターン
は、平均加熱速度20℃/秒、平均冷却速度10℃/秒
とした。
【0075】得られた鋼板の表層部および内層部のマル
テンサイト相の体積率、表面および内層部の硬さ、耐食
性(発銹の有無、粒界析出物の有無)およびプレス加工
性(浅絞り加工部表面のネッキング有無、平坦度)を実
施例1と同様の方法で調査した。結果を表3にあわせて
示す。
【0076】
【表3】
【0077】表3において、試験片No. 19〜23は本
発明例であり、マルテンサイト相の体積率が表層部で4
0%以上、内層部で35%以下といずれも本発明で規定
する条件を満足しており、かつ、表面硬度は目標とする
Hv220以上である。また、発銹およびCr炭窒化物
の粒界析出も認められず、さらに、センターコアに成形
した際に良好な加工性を有している。
【0078】これに対し、試験片No. 25、26、31
および32の比較例は、マルテンサイトの体積率が、外
層部で75〜95%、内層部で25〜35%といずれも
本発明に規定する条件を満足し、目標の表面硬度と良好
なプレス加工性は得られているものの、耐食性に劣る。
【0079】試験片No. 27、29、30、33、35
および36の比較例は、内層部のマルテンサイトの体積
率が0〜20%と本発明で規定する条件を満足し、プレ
ス加工性と耐食性が得られているものの、外層部のマル
テンサイトの体積率が0〜25%と本発明で規定する条
件を下まわり、目標の表面硬度は得られなかった。
【0080】試験片No. 28および34の比較例は、外
層部のマルテンサイトの体積率が100%と本発明で規
定する条件を満足し、目標の表面硬度と良好な耐食性は
得られているものの、内層部のマルテンサイトの体積率
が70〜75%と本発明で規定する条件を超え、加工性
に劣る。
【0081】
【発明の効果】本発明のCr系ステンレス鋼板は、高い
表面硬さと優れたプレス加工性および耐食性を備えてお
り、フロッピーディスクのセンターコア用材に適用すれ
ばその性能が特に効果的に発揮される。また、家電製品
の外板用に用いれば、容易に加工することができ、表面
に傷が生じるのを防止することができる。本発明の製造
方法によれば、前記鋼板を仕上げ焼鈍時に急冷を行うこ
となく製造することができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、Cr:12〜18%、C+N:
    0.03〜0.1%、Nb:0.1×(C+N)〜(C
    +N)%を含む化学組成を有し、少なくとも片面の表層
    部は30体積%以上のマルテンサイト相を含む組織から
    なり、内層部はマルテンサイト相の割合が50体積%以
    下でかつ表層部のマルテンサイト相の割合以下の組織か
    らなることを特徴とするプレス加工性と耐食性に優れた
    表面硬さの高いCr系ステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】質量%で、Cr:12〜18%、C+N:
    0.03〜0.1%、Nb:0.1×(C+N)〜(C
    +N)%を含むCr系ステンレス鋼を熱間圧延および冷
    間圧延した後、Ac1点以上、1100℃未満の温度領域
    で連続焼鈍することを特徴とする請求項1記載のCr系
    ステンレス鋼板の製造方法。
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