JP4985588B2 - 耐放射線性樹脂組成物、及び耐放射線ケーブル - Google Patents
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Description
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る耐放射線性樹脂組成物を用いた耐放射線ケーブルの断面を示す。
本実施の形態においてハロゲン系ポリマ(塩素系ポリマ)は、例えば、ポリクロロプレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、又は塩素化ポリエチレン等の塩素を含む高分子化合物を用いる。
GRT、WD、WRT、WXJ、WK<GN、GS、GNA、WB、WX<W、WM−1、WHV<HC、AD、AG、CG
第1の実施の形態に係るハロゲン系ポリマに対して耐放射線性を付与する耐放射線性付与剤としては、老化防止剤及び加工助剤を用いることができる。
老化防止剤は、耐熱性を維持する機能と耐放射線性を発揮する機能とを耐放射線性樹脂組成物に付与する。老化防止剤は、フェノール系の一次老化防止剤、又はアミン系の一次老化防止剤を用いることができる。また、老化防止剤は、イオウ系の二次老化防止剤、又はリン系の二次老化防止剤を用いることもできる。具体的に、第1の実施の形態に係る老化防止剤は、一次老化防止剤としてのアミン系老化防止剤を用いる。また、老化防止剤は、アミン系老化防止剤と他の老化防止剤とを併用することもできる。
第1の実施の形態に係る加工助剤は、耐放射線性樹脂組成物の混練又は押出時の加工性を安定させる配合剤としての機能と、耐放射線性を耐放射線性樹脂組成物に付与する耐放射線性付与剤(アンチラッド)としての機能とを有する。加工助剤は、例えば、石油系油(すなわち、プロセス油)、又は芳香環(ベンゼン環)を含むエステル系可塑剤を用いることができる。
ケーブル被覆材料の評価方法において、逆逐次法による評価は、逐次法による評価に比べて、その評価結果が示すケーブル被覆材料の評価は劣る。すなわち、ケーブル被覆材料(例えば、CRからなるシース材料、CSMからなるシース材料等)を逆逐次法により評価した場合に、逐次法による評価よりも顕著に劣化していることを示す評価になる。この理由は、本発明者の検討の結果、以下の理由であるとの知見が得られた。
非晶質無機材は、放射線の照射に起因する脱塩化作用によってハロゲン系ポリマ中に発生するイオン性成分を捕捉する。具体的に、非晶質無機材としては、焼成クレーを用いる。焼成クレーは、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とする無機材料であって、クレーを所定の温度(例えば、600℃以上800℃以下の温度)下で焼成することにより得られる。クレーが焼成されると、当該クレーが含有する結晶水が放出され、結晶構造が崩壊する(非晶質となる)ことによって、活性が向上したイオン性成分捕捉効果を有する焼成クレーとなる。なお、クレーが焼成されて含有結晶水が放出されると、クレー中には多数の孔(すなわち、結晶水が存在していた領域が孔、空孔となる)が生成してクレーは多孔質化する。この多数の孔に、孔径より小さいサイズのイオン性物質、臭い成分等が捕捉される。本実施の形態において「活性が向上」するとは、クレーが多孔質化することによってイオン性物質等を捕捉する状態になることをいう。本実施の形態においては、逆逐次法試験による脱塩化作用によりイオン性成分が多量に発生した場合でも、イオン性成分を効果的に捕捉することにより、耐放射線性樹脂組成物に優れた耐水性を付与することができる。また、優れたイオン性成分捕捉効果を得ることを目的として、光散乱法又は回折法による平均結晶粒径が2.0μm以下の粒径を有する焼成クレーを用いることが好ましい。
補強材は、絶縁性を有すると共にハロゲン系ポリマの機械的強度を補強する機能を有する。本実施の形態において補強材は、カーボンブラックを用いる。カーボンブラックは製造方法によってその種類が分類される。具体的に、カーボンブラックには、チャンネル式、ファーネス式、アセチレン式、及びサーマル式のカーボンブラックが存在する。本実施の形態においては、絶縁性を有するカーボンブラックとして、ファーネス式、及びサーマル式のカーボンブラックを用いる。また、本実施の形態においては、優れた補強効果を得ることができると共に、水の侵入により耐放射線性樹脂組成物が膨潤することを抑制でき、耐放射線性樹脂組成物に十分な耐水性を付与することを目的として、電子顕微鏡法による平均粒径が200nm以下のカーボンブラックを用いる。
補強材としてのカーボンブラックと非晶質無機材としての焼成クレーとのハロゲン系ポリマへの添加量は、ハロゲン系ポリマ100重量部に対して、カーボンブラックと焼成クレーとの合計で40重量部以上120重量部であることが好ましい。そして、カーボンブラックは、ハロゲン系ポリマに対して、焼成クレーの単位量に対して1/5以上1以下の割合で添加されることが好ましい。
本実施の形態においてハロゲン系ポリマは、ハロゲン系ポリマ自身がハロゲンの存在に起因する難燃性を有するが、難燃剤を添加することにより、難燃性を更に向上させることができる。難燃剤は、無機系の難燃剤又は有機系の難燃剤を用いることができる。無機系の難燃剤は、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、又はリン系化合物等を用いることができる。また、有機系の難燃剤は、塩素系、臭素系等のハロゲン系有機難燃剤を用いることができる。
ハロゲン系ポリマの架橋方法には、各ポリマに適した架橋方法を採用する。例えば、ハロゲン系ポリマとしてポリクロロプレンを用いる場合、金属酸化物を架橋剤として用いることができる。金属酸化物は、例えば、マグネシア、亜鉛華、リサージ、鉛丹、ハイドロタルサイト等を用いることができる。また、金属酸化物と所定の促進剤とを併用することもできる。ここで、耐放射線性樹脂組成物に耐水性を備えさせることを考慮して、金属酸化物としては、リサージ、鉛丹、又はハイドロタルサイト等と所定の促進剤とを併用することが好ましい。
例えば、ゴム材料の合成等において用いられる滑剤、充填剤、着色剤等を更に配合剤として用いることができる。なお、ハロゲン系ポリマの架橋方法、ハロゲン系ポリマに所定の配合剤を物理的に混合する混練技術、及び耐放射線性樹脂組成物からなるシース材料を所定形状に形成する押出技術等は通常の方法を採用することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る耐放射線性樹脂組成物は、ハロゲン系ポリマに所定粒径のカーボンブラックと所定粒径の焼成クレーとを所定の割合で添加したので、放射線の照射及び熱劣化によってイオン性成分が発生したとしても、焼成クレーが発生したイオン性成分を効率的に捕捉すると共に、カーボンブラックが耐放射線性樹脂材料中への水分の侵入による耐放射線性樹脂組成物の膨潤を抑制する。これにより、本実施の形態に係る耐放射線性樹脂組成物によれば、BWR用のシース材料、及びPWR用のシース材料として用いることができると共に、難燃性、耐熱性、耐放射線性、及び耐水性に優れ、逆逐次法による試験に対応することのできる耐放射線性樹脂組成物、耐放射線性組成物からなるシース材料、及び当該シース材料を備える耐放射線ケーブル1を提供できる。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る耐放射線ケーブルの断面の概要を示す。
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る耐放射線ケーブルの断面の概要を示す。
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る耐放射線ケーブルの断面の概要を示す。
本実施例及び比較例に係る耐放射線性樹脂組成物のコンパウンドは、以下のようにして製造した。まず、表1に示す各化合物を実施例及び比較例毎に秤量した。次に、実施例及び比較例毎に、架橋剤(DCP、TAIC、鉛丹、及び/又は硫黄)を除く各化合物を、No.3バンバリーミキサーを用いて混練して第1のコンパウンドを得た(例えば、実施例1に係る第1のコンパウンド、実施例2に係る第1のコンパウンド等)。続いて、約60℃に保持した50リッターニーダー中において、得られた第1のコンパウンドに架橋剤を添加すると共に混合した。これにより、実施例及び比較例に係る耐放射線性樹脂組成物用の第2のコンパウンドをそれぞれ製造した(例えば、実施例1に係る耐放射線性樹脂組成物用の第2コンパウンド、実施例2に係る耐放射線性樹脂組成物用の第2のコンパウンド等)。
次に、得られた耐放射線ケーブルに対して、以下に示す各項目についての試験を実施して総合評価した。
試験(B)押出加工性:90mm押出機にて第2のコンパウンドを押し出した時の外観を目視にて評価すると共に、限界負荷内で押出し可能か否かを評価した。
試験(C)シース材料の引張試験:シース材を耐放射線ケーブルから剥離した後、厚さを約2mmに調整して、ダンベル4号形状に打ち抜き、ショッパー型引張試験機において、速度500mm/minで測定した。
試験(D)酸素指数:シースの同一ロットの第2のコンパウンド(例えば、実施例1においては、実施例1に係る耐放射線ケーブルのシースの原材料である耐放射線性樹脂組成物用の第2のコンパウンド)を用い、180℃×10分のプレス架橋により3mmtのシートを作製して、形状を調整後、酸素指数を測定した。
試験(E)新VTFT試験:IEEE Std.1202−1991に従って実施した。
試験(F)耐水性:耐圧容器(SUS3034製、内径70φ×長さ200mm)中に、約150mmの長さに切断した耐放射線ケーブル(以下、「ケーブル試料」という)と共に水道水を約500cc入れ、耐圧容器を密閉した。そして、170℃の恒温槽中に24時間放置した後、室温まで冷却した。次に、耐圧容器からケーブル試料を取り出して、ケーブル試料のシースの膨潤の程度を目視にて観察すると共に、700mmφのマンドレルにケーブル試料を1回押し付け曲げを加え、更に、この曲げ方向の反対方向に曲げを加えたときのクラックの有無を観察した。以上の試験後、総合的に耐水性の合否判定をした。
試験(G−1)耐放射線性(1):耐放射線ケーブルを約600mmφの束に丸め、60Coγ線にて4kGy/hの線量率で760kGyの照射をした後、121℃×7日の熱老化試験を実施した。その後、試験(C)と同様に引張試験を実施した。ここで、伸びが50%以上の場合を合格とした。
試験(G−2)耐放射線性(2):実施例5及び6に係る耐放射線ケーブルを約600mmφの束に丸め、60Coγ線にて4kGy/hの線量率で2MGyの照射をした後、140℃×9日の熱老化試験を実施した。その後、試験(C)と同様に引張試験を実施した。ここで、伸びが50%以上の場合を合格とした。
10 導体
20 絶縁体
30 シース
40 介在物
50 テープ
60 撚り対線
70 シールド層
80 発泡樹脂層
Claims (5)
- 塩素を含むポリマと、
耐放射線性を前記ポリマに付与する耐放射線性付与剤と、
放射線の照射により前記ポリマ中に発生するイオン性成分を捕捉する非晶質無機材と、
前記ポリマの機械的強度を補強し、前記非晶質無機材の量以下の量の補強材とを備え、
前記非晶質無機材は、平均粒径が2.0μm以下の焼成クレーであり、
前記補強材は、平均粒径が200nm以下のカーボンブラックであり、
前記非晶質無機材と前記補強剤とは、前記ポリマ100重量部に対し、前記非晶質無機材と前記補強剤との合計で40重量部以上120重量部以下、添加され、
前記耐放射線性付与剤は、老化防止剤と加工助剤とを含み、
前記老化防止剤は、前記ポリマ100重量部に対して2重量部以上添加され、
前記加工助剤は、前記ポリマ100重量部に対して5重量部以上40重量部以下添加され、
前記加工助剤は、アロマチック系油及び/又は芳香環を含むエステル系可塑剤からなる耐放射線性樹脂組成物。 - 前記補強材は、前記ポリマに、前記非晶質無機材の単位量に対して1/5以上1以下の割合で添加される請求項1に記載の耐放射線性樹脂組成物。
- 前記ポリマは、ポリクロロプレン、塩素化ポリエチレン、及びクロロスルフォン化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1つのハロゲン系ポリマを含む請求項1または2に記載の耐放射線性樹脂組成物。
- 絶縁体が被覆された導体の周囲に、請求項1から3のいずれか1項に記載の耐放射線性樹脂組成物を備える耐放射線ケーブル。
- 絶縁体が被覆された導体を複数本撚り合わせて形成された撚り合わせ電線の周囲を、請求項3に記載の耐放射線性樹脂組成物で被覆した耐放射線ケーブル。
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