JP4982642B2 - クマリン誘導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はクマリン誘導体に関するものであり、とりわけ、分子内にカルコン構造を有する新規なクマリン誘導体とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報表示の分野では、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と略記する。)が次世代の表示素子として脚光を浴びている。現在、コンピューター端末機やテレビジョン受像機などの比較的大型の情報表示機器においては、主として、ブラウン管が用いられている。しかしながら、ブラウン管は体積、重量ともに大きく、動作電圧も高いので、民生用機器や携帯性を重視する小形の機器には適さない。小形機器には、もっと薄く、軽量の平板状であって、動作電圧が低く、消費電力の小さいものが必要とされている。現在では、液晶素子が動作電圧が低く、消費電力の比較的小さい点が買われて、多方面で頻用されている。しかしながら、液晶素子を用いる情報表示機器は、見る角度によってコントラストが変わるので、ある角度の範囲で読み取らないと明瞭な表示が得られないうえに、通常、バックライトを必要とするので、消費電力がそれほど小さくならないという問題がある。これらの問題を解決する表示素子として登場したのが有機EL素子である。
【0003】
有機EL素子は、通常、陽極と陰極との間に発光性化合物を含有する発光層を介挿してなり、その陽極と陰極との間に直流電圧を印加して発光層に正孔及び電子をそれぞれ注入し、それらを互いに再結合させることによって発光性化合物の励起状態を作出し、その励起状態が基底状態に戻るときに放出される蛍光や燐光などの発光を利用する発光素子である。有機EL素子は、発光層を形成するに当って、ホスト化合物として適切な有機化合物を選択するとともに、そのホスト化合物に組合せるゲスト化合物(ドーパント)を変更することにより、発光の色調を適宜に変えることができる特徴がある。また、ホスト化合物とゲスト化合物の組合せによっては、発光の輝度と寿命を大幅に向上できる可能性がある。そもそも、有機EL素子は自ら発光する素子なので、これを用いる情報表示機器は視野角依存性がないうえに、バックライトが不要なので、消費電力を小さくできる利点があり、原理的に優れた発光素子であると言われている。
【0004】
ところが、これまで、緑色域で発光する有機EL素子においては、ゲスト化合物の配合による発光効率や発光スペクトルの改善が報告されているけれども、赤色域で発光する有機EL素子においては、未だ効果的なゲスト化合物が見出されていないことから、色純度や輝度のみならず、耐久性においても信頼性においても、依然、不充分な状況にある。例えば、特開平10−60427号公報及び米国特許第4769292号明細書に開示された有機EL素子は、輝度が小さいうえに、発光が純粋な赤色ではないことから、フルカラーを実現するうえでなお問題があると言わざるを得ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、有機EL素子をはじめとする、可視領域に発光極大を有する化合物が必要とされる諸分野において有用な有機化合物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決すべく、本発明者が鋭意研究し、検索した結果、活性メチル基若しくは活性メチレン基を有するクマリン化合物とアルデヒド基を有するクマリン化合物とを反応させることによって得ることのできる、分子内にカルコン様構造(1,3−ジピロニル−2−プロペン−1−オン)を有するクマリン誘導体(以下、単に「クマリン誘導体」と言うことがある。)は、可視領域に発光極大を有し、励起すると赤色乃至橙色光を発光することを見出した。この発明は新規なクマリン誘導体の発見に基づくものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明は前記の課題を分子内にカルコン様構造を有するクマリン誘導体、とりわけ、一般式1で表されるクマリン誘導体を提供することによって解決するものである。
【0008】
【化7】
Figure 0004982642
【0009】
一般式1において、R乃至R11は水素原子又は適宜の置換基を表す。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、キシリル基、メシチル基、ビフェニリル基、スチリル基、シンナモイル基、ナフチル基、アントニル基、フェナントリル基などの芳香族炭化水素基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピペリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホニル基、キノリル基、イソキノリル基などの複素環基、メトキシ基、エトキシ基、トリハロメトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアミノ基、さらには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基、スルホ基、スルフィノ基、シアノ基、ニトロ基などの電子吸引性基が挙げられる。
【0010】
これらの置換基においては、その水素原子の1又は複数が置換されていてもよい。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの短鎖長脂肪族炭化水素基、メトキシ基、トリハロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基、メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、エチルスルホニル基などのアルキルスルホニル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基などが挙げられる。
【0011】
ただし、一般式1において、R又はR10のいずれかが一般式2で表される置換基である場合、他方は水素原子か他の置換基を表すものとする。この場合、一般式2で表される置換基であるR又はR10において、一般式2におけるR12及び/又はR13は、R又はR10が結合する炭素原子に隣接する炭素原子と環状構造Z及び/又はZか、あるいは、Z及び/又はZを形成してなる、一般式3又は一般式4のいずれかで表される構造を形成してもよい。
【0012】
【化8】
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【0013】
【化9】
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【0014】
【化10】
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【0015】
一般式2において、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はエーテル基を表し、それらの脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及びエーテル基は置換基を有していてもよい。一般式2における脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及びエーテル基並びにそれらが有することある置換基は一般式1のR乃至R11におけると同様のものが選択される。したがって、環状構造Z乃至Zとしては、環内に窒素原子を1以上含んでなる、置換基を1又は複数有することある、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ユロリジン環などの単環式又は多環式の複素五員環若しくは複素六員環ということになる。なお、環状構造Z乃至Zのいずれかが存在するときには、それぞれ、一般式1におけるR、R、R又はR11は、見掛け上、存在しないこととなる。
【0016】
この発明で用いるクマリン誘導体の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式50で表されるものが挙げられる。これらは、いずれも、可視領域に蛍光極大などの発光極大を有することから、単独又は他の発光性化合物と組合せることによって、有機EL素子において極めて有利に用いることができる。
【0017】
【化11】
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【0018】
【化12】
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【0019】
【化13】
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【0020】
【化14】
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【0021】
【化15】
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【0022】
【化16】
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【0023】
【化17】
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【0024】
【化18】
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【0025】
【化19】
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【0026】
【化20】
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【0027】
【化21】
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【0028】
【化22】
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【0029】
【化23】
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【0030】
【化24】
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【0031】
【化25】
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【0032】
【化26】
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【0033】
【化27】
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【0034】
【化28】
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【0035】
【化29】
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【0036】
【化30】
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【0037】
【化31】
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【0038】
【化32】
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【0039】
【化33】
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【0040】
【化34】
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【0041】
【化35】
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【0042】
【化36】
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【0043】
【化37】
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【0044】
【化38】
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【0045】
【化39】
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【0046】
【化40】
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【0047】
【化41】
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【0048】
【化42】
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【0049】
【化43】
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【0050】
【化44】
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【0051】
【化45】
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【0052】
【化46】
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【0053】
【化47】
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【0054】
【化48】
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【0055】
【化49】
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【0056】
【化50】
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【0057】
【化51】
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【0058】
【化52】
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【0059】
【化53】
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【0060】
【化54】
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【0061】
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【0063】
【化57】
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【0064】
【化58】
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【0065】
【化59】
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【0066】
【化60】
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【0067】
この発明で用いるクマリン誘導体は諸種の方法で調製することができるが、経済性を重視するのであれば、活性メチル基若しくは活性メチレン基を有するクマリン化合物とアルデヒド基を有するクマリン化合物とを反応させる工程を経由する方法が好適であり、この方法によるときには、一般式1に対応するR乃至Rを有する一般式5で表される化合物と、一般式1に対応するR乃至R11を有する一般式6で表される化合物とを反応させることによって、この発明のクマリン誘導体が好収量で生成する。
【0068】
【化61】
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【0069】
【化62】
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【0070】
すなわち、反応容器に一般式5で表される化合物と一般式6で表される化合物をそれぞれ適量とり(通常等モル前後)、必要に応じて、適宜溶剤に溶解し、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどの塩基性化合物、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、無水酢酸などの酸性化合物、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、四塩化錫、四塩化チタンなどのルイス酸性化合物を加えた後、加熱還流などにより加熱・攪拌しながら周囲温度か周囲温度を上回る温度で反応させる。
【0071】
溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化合物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、酢酸、無水酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸エチル、炭酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド、燐酸トリメチルなどの酸及び酸誘導体、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシドなどの含硫化合物、水などが挙げられ、必要に応じて、これらは適宜混合して用いられる。
【0072】
溶剤を用いる場合、一般に、溶剤の量が多くなると反応の効率が低下し、反対に、少なくなると、均一に加熱・攪拌するのが困難になったり、副反応が起こり易くなる。したがって、溶剤の量を重量比で原料化合物全体の100倍まで、通常、5乃至50倍にするのが望ましい。原料化合物の種類や反応条件にもよるけれども、反応は10時間以内、通常、0.5乃至5時間で完結する。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。化学式1乃至化学式50で表されるクマリン誘導体は、いずれも、この方法により所望量を製造することができる。
【0073】
なお、一般式4で表される化合物は、例えば、小竹無二雄監修、『大有機化学』、1959年、株式会社朝倉書店発行、第14巻(I)、241乃至269頁に記載された方法に準じて、一般式1に対応するR乃至Rを有する一般式7で表されるサリチルアルデヒド誘導体と、一般式1に対応するR及びRを有する3−オキソブタン酸エチルエステル誘導体とを反応させることによって調製することができる。一方、一般式7で表される化合物は、例えば、前掲書に記載された方法か、あるいは、特公昭60−2336号公報に記載された方法に準じて得られる、一般式1に対応するR乃至R11を有する一般式8で表されるクマリン誘導体の3位を社団法人日本化学会編『新実験化学講座』、1977年、丸善株式会社発行、第14巻(II)、688乃至699頁に記載されたヴィルスマイヤー反応によりホルミル化することによって調製することができる。
【0074】
【化63】
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【0075】
【化64】
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【0076】
斯くして得られるクマリン誘導体は、用途によっては反応混合物のまま用いられることもあるけれども、通常、使用に先立って、例えば、溶解、分液、傾斜、濾過、抽出、濃縮、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、昇華、結晶化などの類縁化合物を精製するための汎用の方法により精製され、必要に応じて、これらの方法は組合せて適用される。この発明のクマリン誘導体を、例えば、有機EL素子や色素レーザーに用いる場合には、使用に先立って、例えば、蒸留、結晶化及び/又は昇華などの方法により高度に精製しておくのが望ましい。このうち、昇華は、1回の操作で高純度の結晶が容易に得られるうえに、操作に伴うクマリン誘導体の損失が少なく、しかも、溶剤が結晶中に取り込まれることがないので、特に優れている。適用する昇華方法は、常圧昇華法であっても減圧昇華法であってもよいが、通常、後者の減圧昇華法が適用される。この発明のクマリン誘導体を減圧昇華するには、例えば、適量のクマリン誘導体を昇華精製装置内へ仕込み、装置内を10−2Torrを下回る減圧、望ましくは、10- Torr以下に保ちながら、クマリン誘導体が分解しないように、融点を下回るできるだけ低い温度で加熱する。昇華精製へ供するクマリン誘導体の純度が比較的低い場合には、不純物が混入しないように、減圧度や加熱温度を加減することによって昇華速度を抑え、また、クマリン誘導体が昇華し難い場合には、昇華精製装置内へ希ガスなどの不活性ガスを通気することによって昇華を促進する。昇華によって得られる結晶の大きさは、昇華精製装置内における凝縮面の温度を加減することによって調節することができ、凝縮面を加熱温度よりも僅かに低い温度に保ち、徐々に結晶化させると比較的大きな結晶が得られる。
【0077】
この発明によるクマリン誘導体の用途について説明すると、この発明のクマリン誘導体は、既述のとおり、可視領域に発光極大を有し、励起すると赤色乃至橙色の蛍光などを発光することから、単独又は適宜ホスト化合物と組合せることによって、有機EL素子用発光剤として極めて有利に用いることができる。
【0078】
この発明のクマリン誘導体をレーザー作用物質として用いるには、公知の色素系レーザー発振装置を構築する場合と同様に精製し、適宜溶剤に溶解し、必要に応じて、溶液のpHを適宜レベルに調整した後、レーザー発振装置における色素セル内に封入する。この発明のクマリン誘導体は、公知のクマリン誘導体と比較して、可視領域において、極めて広い波長域で増幅利得が得られるばかりか、耐光性が大きく、長時間用いても劣化し難い特徴がある。
【0079】
さらに、この発明のクマリン誘導体は可視領域に吸収極大を有し、可視光を実質的に吸収することから、重合性化合物を可視光に露光させることによって重合させるための材料、太陽電池を増感させるための材料、光学フィルターにおける色度調整材料、さらには、諸種の衣料を染色するための材料として多種多様の用途を有する。とりわけ、この発明のクマリン誘導体の多くは、その吸収極大波長が、例えば、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザーなどの気体レーザー、CdS系レーザーなどの半導体レーザー、分布帰還型若しくは分布ブラッグ反射型Nd−YAGレーザーなどの固体レーザーをはじめとする、波長450乃至550nmに発振線を有する汎用可視レーザーの発振波長に近接していることから、斯かる可視レーザーを露出光源とする光重合性組成物に光増感剤として配合することによって、ファクシミリ、複写機、プリンターなどの情報記録の分野や、フレキソ製版、グラビア製版などの印刷の分野、さらには、フォトレジストなどの印刷回路の分野において極めて有利に用いることができる。
【0080】
また、この発明のクマリン誘導体を、必要に応じて、紫外領域、可視領域及び/又は赤外領域の光を吸収する他の材料の1又は複数とともに、衣料一般や、衣料以外の、例えば、ドレープ、レース、ケースメント、プリント、ベネシャンブラインド、ロールスクリーン、シャッター、のれん、毛布、布団、布団地、布団カバー、布団綿、シーツ、座布団、枕、枕カバー、クッション、マット、カーペット、寝袋、テント、自動車の内装材、ウインドガラス、窓ガラスなどの建寝装用品、紙おむつ、おむつカバー、眼鏡、モノクル、ローネットなどの保健用品、靴の中敷、靴の内張地、鞄地、風呂敷、傘地、パラソル、ぬいぐるみ及び照明装置や、例えば、ブラウン管ディスプレー、液晶ディスプレー、電界発光ディスプレー、プラズマディスプレーなどを用いるテレビジョン受像機やパーソナルコンピューターなどの情報表示装置用のフィルター類、パネル類及びスクリーン類、サングラス、サンルーフ、PETボトル、貯蔵庫、ビニールハウス、寒冷紗、光ファイバー、プリペイドカード、電子レンジ、オーブンなどの覗き窓、さらには、これらの物品を包装、充填又は収納するための包装用材、充填用材、容器などに用いるときには、生物や物品における自然光や人工光などの環境光による障害や不都合を防止したり低減することができるだけではなく、物品の色彩、色調、風合などを整えたり、物品から反射したり透過する光を所望の色バランスに整えることができる実益がある。
【0081】
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
【0082】
【実施例1】
<クマリン誘導体>
反応容器にクロロホルムを適量とり、化学式51で表される化合物2.0g及び化学式52で表される化合物1.8gを加え、加熱溶解した後、ピペリジン1.8ml及び酢酸1.1mlを加え、4時間加熱還流した。反応混合物を濃縮した後、エタノールを加え、析出した粗結晶をクロロホルム/エタノール混液を用いて再結晶したところ、化学式31で表されるクマリン誘導体の茶紅色結晶が1.2g得られた。
【0083】
【化65】
Figure 0004982642
【0084】
【化66】
Figure 0004982642
【0085】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は250乃至255℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(メタノール溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長501nm及び649nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、ジメチル−dスルホキシド溶液のH−核磁気共鳴スペクトル(以下、「H−NMRスペクトル」と略記する。)を測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.26(6H、s)、1.47(6H、s)、1.70(2H、t)、1.76(2H、t)、3.50乃至3.90(4H、m)、6.78(1H、d)、6.86(1H、dd)、7.39(1H、s)、7.60(1H、d)、7.80(1H、d)、8.02(1H、d)、8.23(1H、s)、8.31(1H、s)及び8.61(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0086】
可視領域に吸収極大と蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0087】
【実施例2】
<クマリン誘導体>
反応容器にクロロホルムを適量とり、化学式53で表される化合物2.0g及び化学式54で表される化合物2.3gを加え、加熱溶解した後、ピペリジン2.5ml及び酢酸1.4mlを加え、4時間加熱還流した。反応混合物を濃縮した後、エタノールを加え、析出した粗結晶をクロロホルム/エタノール混液を用いて再結晶したところ、化学式12で表されるクマリン誘導体の輝緑紅色結晶が1.3g得られた。
【0088】
【化67】
Figure 0004982642
【0089】
【化68】
Figure 0004982642
【0090】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は240乃至245℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長479nm及び623nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.14(6H、t)、3.48(4H、q)、6.60(1H、d)、6.75乃至6.85(3H、m)、6.86(1H、dd)、7.52(1H、d)、7.61(1H、d)、7.80(1H、d)、8.04(1H、d)、8.33(1H、s)及び8.61(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0091】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0092】
【実施例3】
<クマリン誘導体>
化学式52で表される化合物に代えて化学式54で表される化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式30で表されるクマリン誘導体の輝紅色結晶が得られた。
【0093】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は235℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長505nm及び675nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.24(6H、t)、3.45(4H、q)、6.48(1H、d)、6.61(1H、dd)、7.30乃至7.45(3H、m)、7.60乃至7.70(2H、m)、7.82(1H、d)、7.90(1H、s)、8.13(1H、s)及び8.50(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0094】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0095】
【実施例4】
<クマリン誘導体>
化学式54で表される化合物に代えて化学式52で表される化合物を用いた以外は実施例2におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式13で表されるクマリン誘導体の明橙色結晶が得られた。
【0096】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は278℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(メタノール溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長474nm及び606nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、ジメチル−dスルホキシド溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.31(6H、s)、1.56(6H、s)、1.76(2H、t)、1.81(2H、t)、3.29(2H、t)、3.37(2H、t)、7.15(1H、s)、7.30乃至7.45(2H、m)、7.59乃至7.64(2H、m)、7.85(1H、s)、7.85(1H、d)、8.15(1H、d)及び8.51(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0097】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0098】
【実施例5】
<クマリン誘導体>
化学式52で表される化合物に代えて化学式55で表される化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式32で表されるクマリン誘導体の暗緑色結晶が得られた。
【0099】
【化69】
Figure 0004982642
【0100】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は278乃至284℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長504nm及び678nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.31(6H、s)、1.55(6H、s)、1.73乃至1.80(4H、m)、3.28(2H、t)、3.37(2H、t)、3.99(3H、s)、7.15(1H、s)、7.85(1H、d)、7.86(1H、s)、8.11(1H、d)及び8.47(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0101】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0102】
【実施例6】
<クマリン誘導体>
化学式54で表される化合物に代えて化学式56で表される化合物を用いた以外は実施例2におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式21で表されるクマリン誘導体の輝赤茶色結晶が得られた。
【0103】
【化70】
Figure 0004982642
【0104】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は289乃至294℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長484nm及び649nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d/トリフルオロ酢酸溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.23(6H、t)、3.75(4H、q)、7.43(1H、d)、7.56(1H、d)、7.62(1H、dd)、7.72(1H、dd)、7.77(1H、d)、7.82(1H、d)、7.93(1H、d)、8.29(1H、s)、8.40(1H、d)及び8.70(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0105】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0106】
【実施例7】
<クマリン誘導体>
化学式54で表される化合物に代えて化学式55で表される化合物を用いた以外は実施例2におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式14で表されるクマリン誘導体の橙色結晶が得られた。
【0107】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は243乃至251℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長480nm及び623nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.23(6H、t)、3.64(4H、q)、4.00(3H、s)、7.30(5H、m)、7.72(1H、d)、7.81(1H、d)、8.12(1H、s)、8.32(1H、d)及び8.64(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0108】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0109】
【実施例8】
<クマリン誘導体>
化学式52で表される化合物に代えて化学式56で表される化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式45で表されるクマリン誘導体の橙色結晶が得られた。
【0110】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は248乃至251℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長509nm及び582nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.31(6H、s)、1.56(6H、s)、1.76(2H、t)、1.81(2H、t)、3.29(2H、t)、3.38(2H、t)、7.15(1H、s)、7.33(1H、d)、7.56(1H、dd)、7.62(1H、d)、7.83(1H、s)、7.83(1H、d)、8.12(1H、d)及び8.40(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0111】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0112】
【実施例9】
<クマリン誘導体>
化学式52で表される化合物に代えて化学式57で表される化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式48で表されるクマリン誘導体の黒色結晶が得られた。
【0113】
【化71】
Figure 0004982642
【0114】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は255乃至260℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長511nm及び564nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.31(6H、s)、1.56(6H、s)、1.76乃至1.81(4H、m)、3.29(2H、t)、3.38(2H、t)、7.14(1H、s)、7.72(1H、d)、7.83(1H、s)、7.84(1H、d)、7.96(1H、d)、8.06(1H、d)及び8.33(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0115】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0116】
【実施例10】
<クマリン誘導体>
化学式54で表される化合物に代えて化学式57で表される化合物を用いた以外は実施例2におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式24で表されるクマリン誘導体の茶褐色結晶が得られた。
【0117】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は268乃至272℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(塩化メチレン溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長490nm及び581nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、N,N−ジメチルホルムアミド−d溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.31(6H、t)、3.61(4H、q)、6.71(1H、d)、6.95(1H、dd)、7.67(1H、d)、7.85(1H、d)、8.05(1H、d)、8.36(2H、m)、8.45(1H、s)及び8.69(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0118】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0119】
【実施例11】
<クマリン誘導体>
化学式54で表される化合物に代えて化学式58で表される化合物を用いた以外は実施例2におけると同様に反応させた後、反応混合物を精製したところ、化学式14で表されるクマリン誘導体の赤色結晶が得られた。
【0120】
【化72】
Figure 0004982642
【0121】
常法にしたがって測定したところ、本例のクマリン誘導体の融点は288乃至292℃であった。さらに、常法にしたがって可視吸収スペクトル(メタノール溶液)及び蛍光スペクトル(塩化メチレン溶液)を測定したところ、本例のクマリン誘導体は、それぞれ、波長476nm及び603nmに吸収極大及び蛍光極大を示した。さらに、クロロホルム−d/トリフルオロ酢酸溶液のH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.23(6H、t)、3.74(4H、q)、3.96(1H、s)、3.99(1H、s)、6.37(1H、d)、6.52(1H、d)、7.53(1H、d)、7.59(1H、dd)、7.81(1H、d)、7.91(1H、d)、8.27(1H、s)、8.48(1H、d)及び9.08(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0122】
可視領域に吸収極大及び蛍光極大を有する本例のクマリン誘導体は、有機EL素子用発光剤をはじめとして、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする諸分野において多種多様の用途を有する。
【0123】
【実施例12】
<クマリン誘導体>
実施例1乃至実施例11の方法により得た11種類のクマリン誘導体のいずれかを水冷式昇華精製装置内へ仕込み、常法にしたがって、装置内を減圧に保ちながら加熱することによってそれぞれ昇華精製した。
【0124】
本例のクマリン誘導体は、高純度の発光性化合物を必要とする有機EL素子や色素レーザーにおいて極めて有用である。
【0125】
なお、この発明のクマリン誘導体は、構造によって仕込条件や収率に若干の違いはあるものの、例えば、上記以外の化学式1乃至化学式50で表されるものを含めて、いずれも、実施例1乃至実施例12の方法によるか、あるいは、それらの方法に準じて所望量を製造することができる。
【0126】
【発明の効果】
この発明は分子内にカルコン様構造を有する新規なクマリン誘導体の発見に基づくものである。この発明のクマリン誘導体は可視領域において発光することから、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする、例えば、有機EL素子、色素レーザーの分野において極めて有利に用いることができる。さらに、この発明のクマリン誘導体は可視領域に吸収極大を有することから、光化学的重合、太陽電池、光学フィルター、さらには、染色の分野などにおいて多種多様の用途を有することとなる。
【0127】
斯くも有用なクマリン誘導体は、活性メチル基若しくは活性メチレン基を有するクマリン化合物とアルデヒド基を有するクマリン化合物とを反応させる工程を経由するこの発明の製造方法により所望量を製造することができる。
【0128】
斯くも顕著な効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。

Claims (3)

  1. 一般式1で表されるクマリン誘導体。
    Figure 0004982642
    一般式1において、R 、R 乃至 、及び11は水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ジエチルアミノ基、エトキシカルボニル基、フルオロ基、クロロ基、又はブロモ基を表し、R及びR10のうち、一方が一般式2で表される置換基であって、他方は水素原子かヒドロキシ基又はメトキシ基を表すものとする。
    Figure 0004982642
    一般式2において、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子か、あるいは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はエーテル基を表し、それらの脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及びエーテル基は一般式1のR 、R 乃至 、及び11 置換基を有していてもよい。
  2. 一般式1におけるR又はR10のいずれかが一般式2で表される置換基であって、そのR又はR10において、一般式2におけるR12及び/又はR13が、それぞれ、R又はR10が結合する炭素原子に隣接する炭素原子と環状構造Z及び/又はZか、あるいは、Z及び/又はZを形成してなる、一般式3又は一般式4のいずれかで表される請求項1に記載のクマリン誘導体。
    Figure 0004982642
    Figure 0004982642
  3. 一般式1に対応するR乃至Rを有する一般式5で表される化合物と、一般式1に対応するR乃至R11を有する一般式6で表される化合物とを反応させる工程を経由する請求項1又は2に記載のクマリン誘導体の製造方法。
    Figure 0004982642
    Figure 0004982642
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