JP4897145B2 - 光機能性材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は光機能性材料に関するものであり、とりわけ、光増感能及び/又は電界発光能を有するクマリン誘導体を含んでなる光機能性材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報表示の分野では、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と略記する。)が次世代の表示素子として注目を浴びている。現在、コンピューター端末機やテレビジョン受像機などの比較的大型の情報表示機器においては、主として、ブラウン管が用いられている。しかしながら、ブラウン管は体積、重量ともに大きく、動作電圧も高いので、民生用機器や携帯性を重視する小形の機器には適さない。小形機器には、もっと薄く、軽量の平板状であって、動作電圧が低く、消費電力の小さいものが必要とされている。現在では、液晶素子が動作電圧が低く、消費電力の比較的小さい点が買われて、多方面で頻用されている。しかしながら、液晶素子を用いる情報表示機器は見る角度によってコントラストが変り、ある角度の範囲で読み取らないと明瞭な表示が得られないうえに、通常、バックライトを必要とするので、消費電力がそれほど小さくならないという問題がある。これらの問題を解決する表示素子として登場したのが有機EL素子である。
【0003】
有機EL素子は、通常、陽極と陰極との間に発光性化合物を含有する発光層を介挿してなり、その陽極と陰極との間に直流電圧を印加して発光層に正孔及び電子をそれぞれ注入し、それらを互いに再結合させることによって発光性化合物の励起状態を作出し、その励起状態が基底状態に戻るときに放出される蛍光や燐光などの発光を利用する発光素子である。有機EL素子は、発光層を形成するに当って、ホスト化合物として適切な有機化合物を選択するとともに、そのホスト化合物に組合せるゲスト化合物(ドーパント)を変更することにより、発光の色調を適宜に変えることができる特徴がある。また、ホスト化合物とゲスト化合物の組合せによっては、発光の輝度と寿命を大幅に向上できる可能性がある。そもそも、有機EL素子は自ら発光する素子なので、これを用いる情報表示機器は視野角依存性がないうえに、バックライトが不要なので、消費電力を小さくできる利点があり、原理的に優れた表示素子であると言われている。
【0004】
ところが、これまで、緑色域で発光する有機EL素子においては、ゲスト化合物の配合による発光効率や発光スペクトルの改善が報告されているけれども、赤色域で発光する有機EL素子においては、未だ効果的なゲスト化合物が見出されていないことから、色純度や輝度のみならず、耐久性においても信頼性においても、依然、不充分な状況にある。例えば、特開平10−60427号公報及び米国特許第4769292号明細書に開示された有機EL素子は、輝度が小さいうえに、発光が純粋な赤色ではないことから、フルカラーを実現するうえでなお問題があると言わざるを得ない。
【0005】
光増感能や電界発光能を具備する光機能性材料は、有機EL素子のような情報表示の分野だけではなく、それ以外の、例えば、光化学的重合、色素レーザー、染色などの分野でも鶴首されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、光増感能及び/又は電界発光能を具備する新規な光機能性材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】
この課題を解決すべく、本発明者が鋭意研究し、検索した結果、クマリン骨格の3位にモノメチン鎖か、あるいは、奇数個のメチン基が連なってなるポリメチン鎖のいずれかを有し、かつ、そのモノメチン鎖又はポリメチン鎖の先端に単環式又は多環式の複素環基が結合してなるクマリン誘導体(以下、単に「クマリン誘導体」と言うことがある。)は、可視領域に吸収極大を有し、重合性化合物などを光増感する性質が顕著であるうえに、その多くが、励起すると、可視領域において顕著な発光をもたらすことが判明した。この発明は特定のクマリン誘導体の新規な特性の発見に基づくものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明は、一般式1で表される構造を有し、かつ、光増感能及び/又は電界発光能を具備するクマリン誘導体を含んでなる光機能性材料に関するものである。
【0009】
【化3】
Figure 0004897145
【0010】
一般式1において、mは零又は自然数を表し、用途にもよるけれども、通常、零、1又は2から選択される。一般式1におけるR乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子又は適宜の置換基を表し、個々の置換基としては、例えば、メチル基、メチレン基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などの炭素数20まで、通常、炭素数1乃至18の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基、フェニル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、メシチル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナモイル基、ビフェニリル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、m−メチルフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、第一級アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基などのアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、フェニルチオ基などのチオ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基などのような酸素原子、硫黄原子及び/又は窒素原子を含んでなる特性基が挙げられる。なお、R乃至Rのいずれかがカルボキシ基などの酸性置換基である場合、その置換基は、例えば、金属イオンやアミンなどの無機塩基又は有機塩基と塩、錯体又は複合体を形成していてもよい。
【0011】
乃至Rのいずれかが置換基である場合、その置換基における水素原子は、その1又は複数が、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、m−メチルフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、スルホニル基、メチルスルホニル基、ジメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ジエチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ジプロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ジイソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ジブチルスルホニル基、o−トルエンスルホニル基、m−トルエンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基などのスルホニル基、さらには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホアミノ基、シアノ基、ニトロ基などによって置換されていてもよい。その際、水素原子がカルボキシ基などの酸性置換基によって置換されている場合、その置換基は、例えば、金属イオンやアミンなどの無機塩基又は有機塩基と塩、錯体又は複合体を形成していてもよい。
【0012】
一般式1におけるAは、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などのヘテロ原子を1又は複数含むことある単環式又は多環式の環状基を表し、その環状基は一般式1におけるR乃至Rと同様の置換基を1又は複数有していてもよい。望ましい環状基としては、例えば、一般式3乃至一般式6で表されるものが挙げられる。
【0013】
【化4】
Figure 0004897145
【0014】
【化5】
Figure 0004897145
【0015】
【化6】
Figure 0004897145
【0016】
【化7】
Figure 0004897145
【0017】
一般式3乃至一般式6におけるR乃至R13は、それぞれ独立に、水素原子か、あるいは、一般式1におけるR乃至Rと同様の置換基を表す。一般式3において、Zは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれるヘテロ原子を表す。Zが窒素原子である場合、その窒素原子は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの脂肪族炭化水素基を結合していてもよく、また、その脂肪族炭化水素基における水素原子は、その1又は複数が、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、m−メチルフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、さらには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基などによって置換されていてもよい。また、一般式3、一般式4及び一般式6におけるY乃至Yは、それぞれ独立に、水素原子か、あるいは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれるヘテロ原子を表す。
【0018】
一般式1に関連してさらに説明すると、一般式1におけるRが一般式7で表される置換基である場合、その一般式7におけるR14及び/又はR15は、それぞれ、一般式1におけるR又はRと環状構造を形成し、一般式1に対応するR、R、m及びAを有する一般式2で表される構造を有していてもよい。一般式2における環状構造B及びCとしては、R乃至Rのありように鑑み、環内に窒素原子を1以上含んでなり、かつ、置換基を1又は複数有することがある、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ユロリジン環などの単環式又は多環式の複素五員環若しくは複素六員環ということになる。なお、環状構造B及びCは互いに同じであっても異なっていてもよく、また、両方が存在しても、いずれか一方が存在してもよい。
【0019】
【化8】
Figure 0004897145
【0020】
【化9】
Figure 0004897145
【0021】
この発明によるクマリン誘導体の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式31で表されるものが挙げられる。これらは、いずれも、可視領域に吸収極大を有し、可視光を実質的に吸収するうえに、その多くが可視領域に蛍光極大などの発光極大を有し、励起すると可視光を発光することから、この発明の光機能性材料において極めて有利に用いることができる。斯かる光機能性材料は、単独又は他の材料と組合せることによって、光増感剤、発光剤などとして多種多様の用途を有する。なお、一般式1で表されるクマリン誘導体において、例えば、化学式29及び化学式30で表されるクマリン誘導体のように、構造上、シス/トランス異性体が存在する場合には、いずれの異性体もこの発明に包含されるものとする。
【0022】
【化10】
Figure 0004897145
【0023】
【化11】
Figure 0004897145
【0024】
【化12】
Figure 0004897145
【0025】
【化13】
Figure 0004897145
【0026】
【化14】
Figure 0004897145
【0027】
【化15】
Figure 0004897145
【0028】
【化16】
Figure 0004897145
【0029】
【化17】
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【0030】
【化18】
Figure 0004897145
【0031】
【化19】
Figure 0004897145
【0032】
【化20】
Figure 0004897145
【0033】
【化21】
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【0034】
【化22】
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【0035】
【化23】
Figure 0004897145
【0036】
【化24】
Figure 0004897145
【0037】
【化25】
Figure 0004897145
【0038】
【化26】
Figure 0004897145
【0039】
【化27】
Figure 0004897145
【0040】
【化28】
Figure 0004897145
【0041】
【化29】
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【0042】
【化30】
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【0043】
【化31】
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【0044】
【化32】
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【0045】
【化33】
Figure 0004897145
【0046】
【化34】
Figure 0004897145
【0047】
【化35】
Figure 0004897145
【0048】
【化36】
Figure 0004897145
【0049】
【化37】
Figure 0004897145
【0050】
【化38】
Figure 0004897145
【0051】
【化39】
Figure 0004897145
【0052】
【化40】
Figure 0004897145
【0053】
この発明で用いるクマリン誘導体は種々の方法で製造することができるけれども、経済性を重視するのであれば、3位にアルデヒド基を有するクマリン化合物と活性メチレン基を有する複素環化合物とを反応させる工程を経由する方法が好適である。この方法によるときには、例えば、一般式1に対応するR乃至Rを有する一般式8で表される化合物と、一般式1に対応する複素環Aを有する一般式9で表される化合物とを反応させることによって、この発明で用いるクマリン誘導体が好収量で生成する。なお、一般式8において、mは一般式1に対応する零又は自然数を表す。
【0054】
【化41】
Figure 0004897145
【0055】
【化42】
Figure 0004897145
【0056】
すなわち、反応容器に一般式8及び一般式9で表される化合物をそれぞれ適量とり(通常等モル前後)、必要に応じて、適宜溶剤に溶解するとともに、例えば、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、モルホリン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどの塩基性化合物、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、無水酢酸などの酸性化合物、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、四塩化チタンなどのルイス酸性化合物を適量加えたうえで(通常、クマリン化合物に対して0.1乃至10倍モル)、加熱還流などにより加熱・攪拌しながら周囲温度か周囲温度を上回る温度で反応させる。
【0057】
溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、酢酸、無水酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド、燐酸トリメチルなどの酸及び酸誘導体、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシドなどの含硫化合物、水などが挙げられ、必要に応じて、これらは適宜混合して用いられる。
【0058】
溶剤を用いる場合、一般に、溶剤の量が多くなると反応の効率が低下し、反対に、少なくなると、均一に加熱・攪拌するのが困難になったり、副反応が起こり易くなる。したがって、溶剤の量を重量比で原料化合物全体の100倍まで、通常、5乃至50倍にするのが望ましい。原料化合物の種類や反応条件にもよるけれども、反応は10時間以内、通常、0.5乃至5時間で完結する。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。化学式1乃至化学式31で表されるクマリン誘導体は、いずれも、上記した方法により所望量を製造することができる。
【0059】
ちなみに、一般式8及び一般式9で表される化合物は、公知の方法か公知の方法に準じて調製することができる。例えば、一般式8で表されるクマリン化合物を調製するには、先ず、特公昭60−2336号公報に記載された方法か、あるいは、小竹無二雄監修、『大有機化学』、1959年、株式会社朝倉書店発行、第14巻(I)、241乃至269頁に記載された方法のいずれかに準じて一般式1に対応するR乃至Rを有する一般式10で表されるクマリン化合物を調製し、次いで、そのクマリン化合物の3位を社団法人日本化学会編『新実験化学講座』、1977年、丸善株式会社発行、第14巻(II)、688乃至699頁に記載されたヴィルスマイヤー反応によりホルミル化すればよい。斯くして得られる一般式11で表されるクマリン化合物は、必要に応じて、その3位のアルデヒド基をウイティッヒ反応により所望の鎖長を有するオレフィンにした後、前掲書に記載されたヴィルスマイヤー反応などにより、そのオレフィン鎖の末端をホルミル化する。
【0060】
【化43】
Figure 0004897145
【0061】
【化44】
Figure 0004897145
【0062】
斯くして得られるクマリン誘導体は、用途によっては反応混合物のまま用いられることもあるけれども、通常、使用に先立って、例えば、溶解、分液、傾斜、濾過、抽出、濃縮、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、昇華、結晶化などの類縁化合物を精製するための汎用の方法によって精製され、必要に応じて、これらの方法は組合せて適用される。クマリン誘導体を、例えば、有機EL素子や色素レーザーに用いる場合には、使用に先立って、例えば、蒸留、結晶化及び/又は昇華などの方法により高度に精製しておくのが望ましい。このうち、昇華は、1回の操作で高純度の結晶が容易に得られるうえに、操作に伴うクマリン誘導体の損失が少なく、しかも、溶剤が結晶中に取り込まれることがないので、特に優れている。適用する昇華方法は、常圧昇華法であっても減圧昇華法であってもよいが、通常、後者の減圧昇華法が採用される。この発明のクマリン誘導体を減圧昇華するには、例えば、適量のクマリン誘導体を昇華精製装置内へ仕込み、装置内を10−2Torrを下回る減圧、詳細には、10−3Torr以下に保ちながら、クマリン誘導体が分解しないように、融点を下回るできるだけ低い温度で加熱する。昇華精製へ供するクマリン誘導体の純度が比較的低い場合には、不純物が混入しないように、減圧度や加熱温度を加減することによって昇華速度を抑え、また、クマリン誘導体が昇華し難い場合には、昇華精製装置内へ希ガスなどの不活性ガスを通気することによって昇華を促進する。昇華によって得られる結晶の大きさは、昇華精製装置内における凝縮面の温度を加減することによって調節することができ、凝縮面を加熱温度よりも僅かに低い温度に保ち、徐々に結晶化させると比較的大きな結晶が得られる。
【0063】
この発明でいう光機能性材料とは、斯かるクマリン誘導体をその吸光能及び/又は発光能が実質的に発揮される程度に含んでなる材料全般を意味するものであって、それが液状、半液状又は固状のいずれであっても、用途に応じた適宜材料との組成物であっても構わない。この発明による光機能性材料の用途について説明すると、この発明で用いるクマリン誘導体は、可視光を吸収し、その光エネルギーにより重合性化合物や重合開始剤を増感する性質が顕著であることから、例えば、ラジカル重合、イオン重合、開環重合などの開始過程にのみ光が関与する光開始重合、さらには、成長過程に光が関与する光重付加重合をはじめとする光化学的重合における光増感剤として極めて有用である。とりわけ、この発明のクマリン誘導体の多くは、その吸収極大波長が、例えば、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザーなどの気体レーザー、CdS系レーザーなどの半導体レーザー、分布帰還型若しくは分布ブラッグ反射型Nd−YAGレーザーなどの固体レーザーをはじめとする、波長450乃至550nmに発振線を有する汎用の可視レーザーの発振波長に近接していることから、斯かる可視レーザーを露出光源とする光重合性組成物に光増感剤として配合することによって、ファクシミリ、複写機、プリンターなどの情報記録や、フレキソ製版、グラビア製版などの印刷の分野、さらには、フォトレジストなどの印刷回路の分野において極めて有利に用いることができる。
【0064】
さらに、この発明によるクマリン誘導体の多くは著明な電界発光能を有し、単独又は適宜ホスト化合物の存在下で電場を印加すると赤色乃至橙色の可視光を発光することから、単独又は適宜ホスト化合物と組合せることによって、有機EL素子用発光剤として極めて有利に用いることができる。斯かる発光は、この発明によるクマリン誘導体を光励起することによっても得ることができる。この発明によるクマリン誘導体の多くは、可視領域に蛍光極大などの発光極大を有し、光励起すると電界発光におけると同様の可視光を発光することから、この発明の光機能性材料は、有機EL素子における用途に加えて、斯かる性質を具備する有機化合物を必要とする、例えば、色素レーザーにおけるレーザー作用物質としても有用である。この場合には、公知の色素レーザー発振装置を構築する場合と同様にしてクマリン誘導体を精製し、適宜溶剤に溶解し、必要に応じて、溶液のpHを適宜レベルに調整した後、レーザー発振装置における色素セル内に封入する。この発明のクマリン誘導体は、色素レーザーに用いると、公知のクマリン誘導体と比較して、可視領域において、極めて広い波長域で増幅利得が得られるばかりか、耐光性が大きく、長時間用いても劣化し難い特徴がある。
【0065】
加えて、この発明によるクマリン誘導体は、可視領域に吸収極大を有し、可視光を実質的に吸収することから、光学フィルターにおける色度調整材料や諸種の衣料を染色するための材料としても有用である。この発明のクマリン誘導体を、必要に応じて、紫外領域、可視領域又は赤外領域の光を吸収する他の材料の1又は複数とともに、衣料一般や、衣料以外の、例えば、ドレープ、レース、ケースメント、プリント、ベネシャンブラインド、ロールスクリーン、シャッター、のれん、毛布、布団、布団地、布団カバー、布団綿、シーツ、座布団、枕、枕カバー、クッション、マット、カーペット、寝袋、テント、自動車を含む車輌の内装材、ウインドガラス、窓ガラスなどの建寝装用品、紙おむつ、おむつカバー、眼鏡、モノクル、ローネットなどの保健用品、靴の中敷、靴の内張地、鞄地、風呂敷、傘地、パラソル、ぬいぐるみ、照明装置や、例えば、ブラウン管ディスプレー、電界発光ディスプレー、プラズマディスプレーなどを用いるテレビジョン受像機やパーソナルコンピューターなどの情報表示装置用のフィルター類、パネル類及びスクリーン類、サングラス、サンルーフ、PETボトル、貯蔵庫、ビニールハウス、寒冷紗、光ファイバー、プリペイドカード、電子レンジ、オーブンなどの覗き窓、さらには、これらの物品を包装、充填又は収容するための包装用材、充填用材、容器などに用いるときには、生物や物品における自然光や人工光などの環境光による障害や不都合を防止したり低減することができるだけではなく、物品の色彩、色調、風合などを整えたり、物品から反射したり透過する光を所望の色バランスに整えることができる実益がある。
【0066】
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
【0067】
【実施例1】
反応容器にトルエンを適量とり、化学式32で表される化合物5gと1,3−インダンジオン3gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.3mlを加え、4時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶を濾取し、クロロホルム及びメタノールを用いて再結晶したところ、化学式20で表されるこの発明のクマリン誘導体の輝緑色結晶が2.7g得られた。
【0068】
【化45】
Figure 0004897145
【0069】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、280乃至285℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトル及び螢光スペクトルを測定したところ、それぞれ、波長577nm及び618nmに吸収極大及び螢光極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−核磁気共鳴スペクトル(以下、「H−NMRスペクトル」と略記する。)を測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.33(6H、s)、1.56(6H、s)、1.78(2H、t)、1.82(2H、t)、3.36(2H、t)、3.45(2H、t)、7.33(1H、s)、7.74乃至7.77(2H、m)、7.91乃至7.97(2H、m)、8.36(1H、)及び10.00(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0070】
可視領域に吸収極大と螢光極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、有機EL素子、色素レーザー、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0071】
【実施例2】
<クマリン誘導体>
反応容器にトルエンを適量とり、化学式32で表される化合物5gと3−フェニル−5−イソオキサゾロン3gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.3mlを加え、4時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶を濾取し、エタノール及びクロロホルムを用いて再結晶したところ、化学式17で表されるこの発明のクマリン誘導体の輝緑色結晶が2.7g得られた。
【0072】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、248乃至251℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長582nmに吸収極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.32(6H、s)、1.53(6H、s)、1.77(2H、t)、1.82(2H、t)、3.86(2H、t)、3.48(2H、t)、7.31(1H、s)、7.52乃至7.63(5H、m)、8.09(1H、s)及び10.00(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0073】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0074】
【実施例3】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式33で表される化合物3gと化学式34で表される化合物2.6gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.96mlを加え、1.5時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶を濾取し、クロロホルム及びメタノールを用いて再結晶したところ、化学式9で表される赤紫色結晶が4.6g得られた。
【0075】
【化46】
Figure 0004897145
【0076】
【化47】
Figure 0004897145
【0077】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、230乃至241℃であった。また、塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長522nmに吸収極大が観察された。
【0078】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0079】
【実施例4】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式32で表される化合物3.25gと化学式34で表される化合物2.15gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.8mlを加え、1.5時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶を濾取し、クロロホルム及びメタノールを用いて再結晶したところ、化学式16で表されるこの発明のクマリン誘導体の輝暗緑色結晶が1.5g得られた。
【0080】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、308乃至333℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長544nmに吸収極大が観察された。また、N,N−ジメチルホルムアミド−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.30(6H、s)、1.50(6H、s)、1.75(2H、t)、1.82(2H、t)、2.61(2H、t)、3.42(2H、t)、3.50(2H、t)、4.32(2H、t)、7.66(1H、s)、7.72(1H、s)及び8.11(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0081】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0082】
【実施例5】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式33で表される化合物2.5gと化学式35で表される化合物2.04gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.8mlを加え、1.5時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶を濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルを用いて再結晶したところ、化学式8で表されるこの発明のクマリン誘導体の朱色結晶が3.1g得られた。
【0083】
【化48】
Figure 0004897145
【0084】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、230乃至232℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長518nmに吸収極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.27(6H、t)、3.51(4H、q)、4.69(2H、s)、6.51(1H、s)、6.70(1H、dd)及び7.40乃至7.45(3H、m)の位置にピークが観察された。
【0085】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0086】
【実施例6】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式32で表される化合物3.25gと化学式35で表される化合物2gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.8mlを加え、2時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶を濾取し、クロロホルム及びアセトニトリルを用いて再結晶したところ、化学式15で表されるこの発明のクマリン誘導体の紫褐色結晶が4.67g得られた。
【0087】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、244乃至246℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長540nmに吸収極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.31(6H、s)、1.54(6H、s)、1.70乃至1.83(4H、m)、3.30(2H、t)、3.39(2H、t)、4.68(2H、s)、7.12(1H、s)、7.62(1H、s)及び7.80(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0088】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0089】
【実施例7】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式32で表される化合物3.25gと3−エチルロダニン1.69gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.8mlを加え、2時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶をクロロホルム及びメタノールを用いて再結晶したところ、化学式14で表されるこの発明のクマリン誘導体の輝黒紫色結晶が3.55g得られた。
【0090】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、240乃至242℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトル及び螢光スペクトルを測定したところ、それぞれ、波長540nm及び584nmに吸収極大及び螢光極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.29(9H、m)、1.55(6H、s)、1.74乃至1.83(4H、m)、3.31(2H、t)、3.40(2H、t)、4.19(2H、q)、7.13(1H、s)、7.62(1H、s)及び7.81(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0091】
可視領域に吸収極大と螢光極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、有機EL素子、色素レーザー、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0092】
【実施例8】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式36で表される化合物1gと化学式34で表される化合物0.64gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.3mlを加え、40分間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷し、析出した粗結晶を濾取し、メタノールを用いて再結晶したところ、化学式30で表されるこの発明のクマリン誘導体の深緑色結晶が0.48g得られた。
【0093】
【化49】
Figure 0004897145
【0094】
常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長531nmに吸収極大が観察された。また、N,N−ジメチルホルムアミド−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.45(6H、s)、1.67(6H、s)、1.91乃至1.97(4H、m)、2.39(2H、t)、3.28(4H、m)、4.48(2H、t)、7.50(2H、m)、7.59(1H、s)、7.68(1H、dd)及び8.36(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0095】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0096】
【実施例9】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式36で表される化合物1gと化学式35で表される化合物0.6gを添加し、加熱溶解した後、40分間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷し、析出した粗結晶をエタノールを用いて再結晶したところ、化学式29で表されるこの発明のクマリン誘導体の深緑色結晶が0.45g得られた。
【0097】
常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、波長529nmに吸収極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.30(6H、s)、1.55(8H、m)、1.71乃至1.83(8H、m)、2.94(4H、m)、3.28乃至3.39(4H、m)、4.68(2H、t)、6.95(1H、d)、7.13(1H、s)、7.25(1H、dd)、7.41(1H、d)及び7.81(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0098】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0099】
【実施例10】
<クマリン誘導体>
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式37で表される化合物3gと3−エチルロダニン1.5gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.9mlを加え、2時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷した後、析出した粗結晶をメタノール及びクロロホルムを用いて再結晶したところ、化学式23で表されるこの発明のクマリン誘導体の輝金茶色結晶が4.2g得られた。
【0100】
【化50】
Figure 0004897145
【0101】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、330乃至342℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトル及び螢光スペクトルを測定したところ、それぞれ、波長525nm及び592nmに吸収極大及び螢光極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.28(3H、t)、1.32(6H、s)、1.54(6H、q)、1.77(2H、t)、1.82(2H、t)、2.55(3H、s)、3.28(2H、t)、3.38(2H、t)、4.18(2H、q)、7.38(1H、s)及び7.85(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0102】
可視領域に吸収極大と螢光極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、有機EL素子、色素レーザー、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0103】
【実施例11】
<クマリン誘導体>
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式32で表される化合物1gと3−エチル−2−チオオキサゾリドン0.45gを添加し、加熱溶解した後、2時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷し、析出した粗結晶を濾取し、溶離液としてメタノール/クロロホルム混液を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した後、酢酸エチルを用いて再結晶したところ、化学式12で表されるこの発明のクマリン誘導体の明橙色結晶が0.25g得られた。
【0104】
結晶の一部をとり、常法により融点を測定したところ、290乃至295℃であった。塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトル及び螢光スペクトルを測定したところ、それぞれ、波長486nm及び613nmに吸収極大及び螢光極大が観察された。また、クロロホルム−d溶液におけるH−NMRスペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.30(3H、t)、1.32(6H、s)、1.54(6H、s)、1.77(2H、t)、1.81(2H、t)、2.43(3H、s)、3.25(2H、t)、3.34(2H、t)、3.95(2H、q)、7.03(1H、s)及び7.34(1H、s)の位置にピークが観察された。
【0105】
可視領域に吸収極大と螢光極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、有機EL素子、色素レーザー、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0106】
【実施例12】
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式32で表される化合物1gと化学式38で表される化合物0.7gを添加し、加熱溶解した後、ピペリジン0.2mlを加え、1.5時間加熱還流して反応させた。反応混合物を放冷し、傾斜によりアセトニトリルを除去した後、得られた油状物をクロロホルム及びイソプロピルアルコールを用いて再結晶したところ、化学式29で表されるこの発明のクマリン誘導体の深緑色結晶が0.32g得られた。
【0107】
【化51】
Figure 0004897145
【0108】
常法により測定したところ、本例のクマリン誘導体は実施例9で得たクマリン誘導体と同様の可視吸収スペクトル及びH−NMRスペクトルを示した。
【0109】
可視領域に吸収極大を有する本例のクマリン誘導体は、例えば、光化学的重合、染色の分野における光機能性材料として極めて有用である。
【0110】
【実施例13】
実施例1、実施例7、実施例10又は実施例11の方法により得た4種類のクマリン誘導体のいずれかを水冷式昇華精製装置内へ仕込み、常法にしたがって、装置内を減圧に保ちながら加熱することによってそれぞれ昇華精製した。
【0111】
純度の高い本例のクマリン誘導体は、有機EL素子や色素レーザーをはじめとする有機エレクトロニクスの分野において極めて有用である。
【0112】
なお、この発明のクマリン誘導体は、構造によって原料、反応条件及び収量に若干の違いはあるものの、例えば、上記以外の化学式1乃至化学式31で表されるものを含めて、いずれも、実施例1乃至実施例13に記載された方法か、あるいは、それらの方法に準じて所望量を製造することができる。
【0113】
【実施例14】
<光重合組成物>
常法にしたがって、2−エトキシエタノール900重量部に光重合性モノマートしてペンタエリスリトールアクリレート100重量部、バインダー樹脂としてアクリル酸−メタアクリル酸共重合体100重量部、そして、重合開始剤として3,3´,4,4´−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフエノン8重量部をそれぞれ配合し、さらに、光増感剤として表1に示すクマリン誘導体のいずれかを1重量部配合して光重合組成物を得た。
【0114】
常法にしたがって、これらの組成物のいずれかを表面処理した砂目立アルミ板に均一に塗布して感光層を形成した後、酸素による重合阻害を防止すべく、感光層の表面にポリビニルアルコール層を形成した。この感光層にグレーススケールを密着させて3KW超高圧水銀灯を設置し、シャープカットオフフィルター(商品名『Y47』及び『Y52』、東芝硝子株式会社製造)、干渉フィルター(商品名『KL49』及び『KL54』、東芝硝子株式会社製造)及び熱線カットフィルター(商品名『HA30』、ホーヤ株式会社製造)を組合せて得た波長488nm又は532nmの光(YAGレーザーの第二高調波に相当)を照射した。その後、常法にしたがって、アルカリ系現像液により現像した後、数1に示す数式にステップタブレットn段目における透過率T、露出時間t及び露出強度I0をそれぞれ代入し、光硬化したステップの段数から感度を計算した。併行して、この発明のクマリン誘導体に代えて、化学式39及び化学式40で表される公知の類縁化合物を用いる系を設け、これらを上記と同様に処置して対照とした。
結果を表1に併記する。
【0115】
【数1】
Figure 0004897145
【0116】
【化52】
Figure 0004897145
【0117】
【化53】
Figure 0004897145
【0118】
【表1】
Figure 0004897145
【0119】
表1の結果に見られるとおり、試験に供したこの発明のクマリン誘導体は、いずれも、対照を有意に上回る高感度(約5倍以上)を発揮した。このことは、この発明のクマリン誘導体が光化学的重合において、重合性化合物や重合開始剤の光増感に極めて有用であることを物語っている。
【0120】
【発明の効果】
叙上のとおり、この発明は特定のクマリン誘導体の産業上有用な新規な特性の発見に基づくものである。光増感能及び/又は電界発光能を具備するこの発明の光機能性材料は、例えば、光化学的重合、有機EL素子、色素レーザー、光学フィルター、染色などの分野における光機能性材料として極めて有用である。

Claims (4)

  1. 下記化学式14、15、22、及び28のいずれかで表される構造を有し、かつ、光増感能及び/又は電界発光能を具備するクマリン誘導体を含んでなる光機能性材料。
    Figure 0004897145
    Figure 0004897145
    Figure 0004897145
    Figure 0004897145
  2. 重合性化合物を光増感するための請求項1に記載の光機能性材料。
  3. 励起すると可視光を発光する請求項1又は2に記載の光機能性材料。
  4. 有機電界発光素子用発光剤としての請求項1、2又は3に記載の光機能性材料。
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