JP4982533B2 - 偏光板の製造方法 - Google Patents
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位相差板がλ/4板であり、位相差板と直線偏光膜とが位相差板の遅相軸と直線偏光膜の透過軸とが45°の角度となるように配置されていると、偏光板は円偏光板として機能する。円偏光板の用途では、λ/4板として機能する位相差板の光学的性質(レターデーション値)が非常に重要である。
従来のλ/4板はλ/4板と称していても、特定波長でのみλ/4を達成しているものが大部分であった。
特許文献4にも、二枚のポリマーフイルムを積層することにより広い波長領域でλ/4を達成できる位相差板が開示されている。
ポリマーフイルムとしては、ポリカーボネートのような合成ポリマーの延伸フイルムが使用されている。ポリマーフイルムは2枚を重ね合わせて使用するため、厚みが厚くなり、貼合せ工程が必要なためコストが高くなり易いという欠点を有している。さらに各波長でのレターデーション値が目標値(各波長の1/4)からのずれが大きく、特に高波長域でのずれが顕著であった。
特許文献6には、複数の芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として含む一枚のセルロースエステルフイルムからなる広帯域λ/4板が開示されている。レターデーション上昇剤を使用することにより、高い光学異方性(複屈折率)が得られ、薄いセルロースエステルフイルム一枚でも広帯域λ/4を実現できる。
本発明の目的は、高温で乾燥した条件に置かれても、取り付けられた位相差板の光学的性質が大きく変化しない偏光板を提供することである。
(1)0.003乃至0.1質量%の水を含む溶剤中にセルロースアシレートが溶解しているセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフイルムを形成する工程;形成したセルロースアシレートフイルムを温度50乃至150℃、相対湿度0乃至10%の条件で0.5乃至200時間熱処理する工程;熱処理したセルロースアシレートフイルムを縦/横の延伸比が0.3乃至2となる条件で延伸する工程;そして、延伸したセルロースアシレートフイルムからなる位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜、第2透明保護膜、および防湿層を、位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜、そして第2透明保護膜の順序で、かつ位相差板と直線偏光膜との間に防湿層が存在するように積層するか、あるいは、延伸したセルロースアシレートフイルムからなる第1透明保護膜兼位相差板、防湿層、直線偏光膜、そして第2透明保護膜をこの順序で積層する工程により偏光板を製造することを特徴とする偏光板の製造方法。
(3)製造された偏光板を温度60℃、相対湿度10%の条件で3時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値から、さらに偏光板を温度60℃、相対湿度10%の条件で47時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値の変化が15nm未満である(1)に記載の偏光板の製造方法。
(4)偏光板から位相差板を除いた構造全体の透湿量が5g/m2・日未満である。
(5)防湿層が、10−12乃至10−7(cm3/cm・sec・cmHg)の水蒸気透過係数を有する。
(6)防湿層が、平均長径が0.3乃至20μmであり、平均アスペクト比が20乃至1万である平板状粒子を1乃至50質量%含み、平板状粒子がバインダー中に分散している。
(8)セルロースアシレートフイルムが含水率2乃至10%の条件で、1.1倍乃至2倍に延伸されている。
(9)セルロースアシレートフイルムが含水処理によって含水率2乃至10%に調整され、含水処理前に、セルロースアシレートフイルムが温度50乃至150℃、相対湿度0乃至30%の条件で3秒乃至30分加熱乾燥処理されている。
(11)位相差板が、ニップロールとフイルムとのラップ角が30°未満の条件で多段延伸されたセルロースアシレートフイルムからなる。
(12)偏光板を温度25℃、相対湿度60%の条件で24時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値から、さらに偏光板を温度25℃、相対湿度60%の条件で216時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値の変化が15nm未満である。
(14)位相差板の面内の遅相軸方向の屈折率nx、位相差板の面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび位相差板の厚み方向の屈折率nzが、1.1<(nx−nz)/(nx−ny)<3を満足する。
(16)表示面に(1)で製造した偏光板が取り付けられている反射型液晶表示装置。
(18)表示面に(1)で製造した偏光板が取り付けられているタッチパネル。
本発明に従う偏光板は、下記(A)または(B)の基本構成を有する。
偏光板を画像表示装置に組み込む際には、下側(位相差板側)が内側(画像表示面側)となり、上側(第2透明保護膜側)が外側(視認側)となる。位相差板と画像表示面と間には、一般に粘着剤層を設ける。
(A) (B)
────────────────────────────────────
第2透明保護膜 第2透明保護膜
直線偏光膜 直線偏光膜
第1透明保護膜 第1透明保護膜兼位相差板
位相差板
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本発明者が、偏光板の使用(または保存)条件における位相差板のレターデーション値変化を研究した結果、位相差板のレターデーション値が変動しやすい偏光板の使用(または保存)条件が判明した。
本発明では、そのような条件においても、位相差板のレターデーション値が実質的に変化しないように偏光板を改良する。
図1に示すように、第1に、偏光板を温度25℃、相対湿度60%の条件で調温調湿してから、波長550nmで位相差板のレターデーション値を測定する(第1測定)。
調温調湿に要する時間は、その前の偏光板の保存条件により異なる。すなわち、調温調湿の前に、温度25℃、相対湿度60%に近い条件で偏光板を保存していたならば、短時間で調温調湿処理が完了する。逆に、大きく異なる条件で偏光板を保存していたならば、調温調湿処理を長時間実施する必要がある。
具体的には、レターデーション値が実質的に変動しなくなる(例えば、変動が±1nm/時間未満となる)まで、偏光板を調温調湿する。一般的には(あるいは偏光板の保存条件が不明である場合には)、24時間調温調湿することが望ましい。
調温調湿後、偏光板から位相差板を剥離し、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmでレターデーション値を測定する。
3時間保存後、偏光板から位相差板を剥離し、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmでレターデーション値を測定する。
本発明の第1の態様では、第1測定におけるレターデーション値から、第2測定におけるレターデーション値の変化が15nm未満である(本発明の第1過程)。レターデーション値の変化は、12nm未満が好ましく、10nm未満がさらに好ましい。図1に示す試料番号12の結果では、レターデーション値の変化が8nmである。
第1過程におけるレターデーション変化は、位相差板の製造において生じた歪みが、製造後に解消されることによって、位相差板が構造変化することにより生じる。図1に示す試料番号12の結果と同様に、第1過程では一般にレターデーション値が低下する(第1測定値>第2測定値)。
第2測定の後も、さらに偏光板の保存と、位相差板の測定を続けることが好ましい。
47時間保存後、偏光板から位相差板を剥離し、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmでレターデーション値を測定する。
本発明の第1の態様では、第2測定におけるレターデーション値から、第3測定におけるレターデーション値の変化が15nm未満であること(本発明の第2過程)が好ましい。レターデーション値の変化は、12nm未満がより好ましく、10nm未満がさらに好ましい。図1に示す試料番号12の結果では、レターデーション値の変化が5nmである。
第2過程におけるレターデーション変化は、位相差板に含まれる水分が、乾燥により減少することにより生じる。第2過程における変化は、第1過程よりもゆっくりしており、長時間(47時間)の保存が必要である。図1に示す試料番号12の結果と同様に、第2過程では一般にレターデーション値が上昇する(第2測定値<第3測定値)。
第3測定の後も、さらに偏光板の保存と、位相差板の測定を続けることが好ましい。
なお、本発明の第2の態様では、第1測定および第2測定を省略し、温度60℃、相対湿度10%の条件で調温調湿してから、波長550nmで位相差板のレターデーション値の測定(第3測定)を実施する。調温調湿に要する時間については、第1測定と同様である。
24時間保存後、偏光板から位相差板を剥離し、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmでレターデーション値を測定する。
本発明の第1の態様では、第3測定におけるレターデーション値から、第4測定におけるレターデーション値の変化が15nm未満であること(本発明の第3過程)が好ましい。レターデーション値の変化は、12nm未満がより好ましく、10nm未満がさらに好ましい。図1に示す試料番号12の結果では、レターデーション値の変化が4nmである。
本発明の第2の態様では、第3測定におけるレターデーション値から、第4測定におけるレターデーション値の変化が15nm未満である(本発明の第3過程)。レターデーション値の変化は、12nm未満が好ましく、10nm未満がさらに好ましい。
第3過程におけるレターデーション変化は、温度変化(冷却)に伴い、位相差板内の分子配列が変化することにより生じると推定される。図1に示す試料番号12の結果と同様に、第3過程では一般にレターデーション値が上昇する(第3測定値<第4測定値)。
第4測定の後も、さらに偏光板の保存と、位相差板の測定を続けることが好ましい。
216時間保存後、偏光板から位相差板を剥離し、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、波長550nmでレターデーション値を測定する。
本発明の第1および第2の態様では、いずれも、第4測定におけるレターデーション値から、第5測定におけるレターデーション値の変化が15nm未満であること(本発明の第4過程)が好ましい。レターデーション値の変化は、12nm未満がより好ましく、10nm未満がさらに好ましい。図1に示す試料番号12の結果では、レターデーション値の変化が5nmである。
第4過程におけるレターデーション変化は、位相差板が吸湿することにより生じる。図1に示す試料番号12の結果と同様に、第4過程では一般にレターデーション値が低下する(第4測定値>第5測定値)。
第1過程のレターデーション値変化が本発明の条件を満足するためには、位相差板が、温度50乃至150℃、相対湿度0乃至70%の条件で0.5乃至200時間加熱処理されたポリマーフイルムからなることが好ましい。
加熱温度は、70乃至140℃がより好ましく、90乃至120℃がさらに好ましい。相対湿度は、0乃至50%がより好ましく、0乃至30%がさらに好ましい。加熱時間は、1乃至100時間がより好ましく、3乃至50時間がさらに好ましい。加熱処理によりポリマーフイルムの構造を緩和し、第1測定値と第2測定値との差を小さくすることができる。
加熱処理により、ポリマーフイルムのガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱ピークの熱量(緩和熱量)が、0.1乃至2.0J/gとなることが好ましい。Tg近傍の吸熱ピークとは、Tg−10℃〜Tg+50℃の範囲に存在するピークを意味する。Tg近傍の吸熱ピークの熱量は、0.3乃至1.8J/gであることが好ましく、0.5乃至1.6J/gであることがさらに好ましい。なお、加熱処理を実施しないと、ポリマーフイルムには一般に、吸熱ピークが出現しない(0J/gである)。
上記の低透湿量は、偏光板に防湿層を設けることで達成できる。防湿層の水蒸気透過係数は、1×10−12乃至1×10−7(cm3/cm・sec・cmHg)であることが好ましく、5×10−11 乃至5×10−8(cm3/cm・sec・cmHg)であることがより好ましく、1×10−10乃至1×10−8(cm3/cm・sec・cmHg)であることがさらに好ましい。
防湿層は、平均長径が0.3乃至20μmであり、平均アスペクト比が20乃至1万である平板状粒子を1乃至50質量%含み、平板状粒子がバインダー中に分散している層であることが好ましい。平均アスペクト比(円に換算した表面積の直径と厚みとの比)は、100乃至5万であることが好ましく、200乃至1万であることがさらに好ましい。
具体的には、セルロースアシレートフイルムを、含水率2乃至10%の条件で、1.1倍乃至2倍に延伸することが好ましい。含水率は、2.5乃至8%であることがより好ましく、3乃至6%であることがさらに好ましい。
含水状態で延伸することにより、湿度に対するレターデーション変化を小さくすることができる。すなわち、延伸により配向した分子がレターデーションを発現するが、分子配向は湿度変化で変動する。予め水分を含む状態で延伸すると、分子配向の変化を小さく抑制できると推定される。
含水率は、セルロースアシレートフイルムの含水処理によって調整する。含水処理前に、セルロースアシレートフイルムを温度50乃至150℃、相対湿度0乃至30%の条件で3秒乃至30分間加熱乾燥処理することが好ましい。加熱温度は、60乃至120℃がより好ましく、70乃至110℃がさらに好ましい。相対湿度は、0乃至25%がより好ましく、0乃至20%がさらに好ましい。加熱時間は、5秒乃至10分がより好ましく、10秒乃至3分がさらに好ましい。
ポリマー溶液に含まれる微量の水分が、レターデーションの温度変化を小さくしているようである。すなわち、製膜中に微量に存在する水分が、ポリマーの分子間に水素結合を形成する。その状態で、乾燥工程で熱がかかるため、より結晶化しやすい。この結晶が温度変化での分子の変化を抑制し、レターデーション変化が小さく抑えられるものと推測される。
従って、製膜後に水分が入っても効果は少なく、流延における乾燥前に微量の水分が存在することが必要である。
微量の水分を含む溶剤としては、回収溶剤の使用が最適である。回収溶剤は、流延製膜したフイルムを乾燥する工程で揮発した溶剤を、乾燥ゾーンから回収し、分留して得られる。乾燥工程で回収する際、少量の外気も取り込まれ、外気に水分が微量に混入する。そのため、回収溶剤は、一般に0.01乃至0.1質量%の水分を含む。全溶剤中に、回収溶剤は30質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましく、50質量%以上含まれることがさらに好ましい。
延伸前のポリマーフイルムの幅をW、延伸間距離をLとしたときに、縦横比L/Wが0.3≦L/W≦2であることが好ましい。より好ましくは0.3≦L/W≦1.5であり、さらに好ましくは0.3≦L/W≦1である。通常の延伸は一般に、縦横比L/Wが2を越える値で実施している。通常の延伸における高い縦横比では、延伸中に分子が延伸方向に高度に配列するためレターデーションは発現しやすい。しかし、直交(幅)方向の絡み合いが減少するため分子が動きやすく、温度によるレターデーション変化が発現しやすい。すなわち、高縦横比では、延伸スパン間が長く、この間にネックインが発生するため、縦方向に分子が並びすぎる。従って、温度によるレターデーション変化を抑制するために、縦横比を小さくすることが有効である。低縦横比では、ネックインが発生しにくい。すなわち、低縦横比では、ネックインしようとするフイルムを横方向に応力を加えて阻止しているのと同じ効果が得られ、横方向にも分子が配列する。その結果、低縦横比では、縦、横に分子が絡み合い、温度変化にも安定な構造になるものと推定される。
ポリマーフイルムの延伸倍率は、1.1乃至2倍であることが好ましく、1.2乃至1.8倍であることがより好ましく、1.3乃至1.7倍であることがさらに好ましい。
低縦横比の延伸では延伸に大きな応力を要し、擦り傷を発生しやすい。延伸は一般に、2対以上のニップロールの周速を変えて実施する。ニップロールのラップ角が大きく、フイルムとロールの接触面積が大きくなると、より擦り傷が発生しやすい。このため、ラップ角は30°未満が好ましく、20°未満がより好ましく、30°未満がさらに好ましい。
上記の低透湿量は、偏光板に防湿層を設けることで達成できる。防湿層の詳細については、第2過程について説明した防湿層と同様である。
位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板および第2透明保護膜は、ポリマーフイルムからなる。位相差板または第1透明保護膜兼位相差板に用いるポリマーフイルムは、光学異方性を有する。第1透明保護膜または第2透明保護膜に用いるポリマーフイルムは、光学異方性は不要である(光学等方性である方が好ましい)。
光学異方性との観点を除けば、位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板および第2透明保護膜に好ましく使用できるポリマーフイルムは、ほぼ同様である。
ポリマーフイルムに用いるポリマーは、セルロースアシレートが好ましい。
セルロースアシレートは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
セルロースアセテートは、55.0乃至62.5%の酢化度を有することが好ましい。酢化度は、57.0乃至62.0%であることがさらに好ましく、58.5乃至61.5%であることが最も好ましい。
酢化度は、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
ポリマーフイルムに用いるポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。
有機溶媒は、炭素原子数が2乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が2乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。
有機溶媒は、アルコール性ヒドロキシルのような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3乃至12のケトンの例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が2乃至12のエステルの例には、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
回収した溶剤は、分留塔を用いて各成分に分けてから利用できる。あるいは、回収溶剤の組成をガスクロマトグラフィーで定量した後、不足した成分を追添し利用しても良い。回収溶剤は、フレッシュな溶剤と異なり、外気の混入に伴う水分が必ず微量添加されているのが特徴である。
ポリマーの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。ポリマーの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にポリマーを撹拌しながら徐々に添加する。
ポリマーの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましく、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10乃至40%(好ましくは18乃至35%)となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
剥取り時の残留溶剤量は、10乃至45質量%以下が好ましい。剥ぎ取ったフイルムは、100乃至160℃の乾燥ゾーンを10分乃至2時間かけて通し、残留揮発分を2質量%以下にする。フイルム両端は、トリミングし、ナーリング加工を行い巻き取る。
乾燥工程の後半において、スチームあるいは溶剤蒸気を吹きかけることで、フイルムをカールコントロールすることも好ましく行われる。
支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から、複数のポリマー溶液をそれぞれ流延し、積層させながらフイルムを作製する方法(特開昭61−158414号、特開平1−122419号、同11−198285号の各公報記載)が採用できる。2つの流延口からポリマー溶液を流延することにより、フイルムを形成する方法(特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、同61−94725号、同61−104813号、同61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載)を実施してもよい。高粘度ポリマー溶液の流れを低粘度のポリマー溶液で包み込み、その高、低粘度のポリマー溶液を同時に押出すポリマーフイルム流延方法(特開昭56−162617号公報記載)を採用してもよい。
ポリマー溶液は、他の機能層(例、粘着剤層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、直線偏光膜、防湿層)と同時に流延することもできる。
単一層の流延では、一定のフイルム厚さを得るために高濃度で高粘度のポリマー溶液を押出す場合がある。高濃度で高粘度のポリマー溶液は、安定性が悪く、固形物が発生し、ブツ故障となり、平面性が不良である問題が生じることが多い。この問題の解決として、複数のポリマー溶液を流延口から流延すればよい。複数の高粘度溶液を同時に支持体上に押出すことにより、平面性が良化し優れた面状のフイルムが作製できる。また、濃厚なポリマー溶液を用いることで、乾燥負荷を低減し、フイルムの生産効率を高めることができる。
可塑剤の添加量は、ポリマーの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
ポリマーフイルムを、偏光板の透明保護膜として機能させる場合、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理を実施することが好ましく、アルカリ処理がさらに好ましい。ポリマーがセルロースアシレートである場合、アルカリ処理は、アルカリケン化処理として機能する。
アルカリは、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがさらに好ましい。溶液の溶媒は、水または有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、低級アルコールが好ましい。低級アルコールは、炭素原子数が1乃至5のアルコールまたはグリコールであることがさらに好ましい。低級アルコールの例には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが含まれる。イソプロパノールおよびプロピレングリコールが好ましい。二種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。混合溶媒の例には、イソプロパノール/プロピレングリコール/水(容積比:70/15/15)、イソプロパノール/水(容積比:85/15)およびイソプロパノール/プロピレングリコール(容積比:85/15)が含まれる。
ポリマーフイルムは、アルカリ溶液に浸漬することでアルカリ処理を実施できる。アルカリ溶液を、ポリマーフイルムに塗布(バー塗布、カーテン塗布)してもよい。
ポリマーフイルムには、製造時のハンドリング性向上のために、マット層を設けてもよい。マット層は、ポリマーフイルムの両面に設けてもよい。マット層は、一般にマット剤とポリマーを含有する。マット剤およびポリマーについては、特開平10−44327号公報に記載がある。
光学等方性のポリマーフイルムは、第1透明保護膜または第2透明保護膜として使用できるが、位相差板もしくは第1透明保護膜兼位相差板に用いるポリマーフイルムは、光学異方性が必要である。
位相差板の光学異方性は、偏光板の用途に応じて決定する。ただし、本発明は、厳密な光学異方性を要求する円偏光板のような用途において、特に有効である。円偏光板の用途においては、位相差板はλ/4板として機能させる。
Re550は、110nm<Re550<250nmを満足することがより好ましく、120nm<Re550<200nmを満足することがさらに好ましい。
レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxは、ポリマーフイルムの面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、dは厚さ(nm)である。
NZ値は、位相差板中の分子の面配向の指数を意味する。NZ値が大きいフイルムは、面配向が大きい。
位相差板に使用する光学異方性を有するポリマーフイルムは、レターデーション上昇剤の使用および延伸処理の実施により製造することができる。
レターデーション上昇剤は、ポリマー100質量部に対して、0.01乃至10質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1乃至8質量部の範囲で用いることがさらに好ましく、0.1乃至6質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション上昇剤を併用してもよい。
レターデーション上昇剤は、230乃至360nmの波長領域に最大吸収波長を有することが好ましい。また、レターデーション上昇剤は、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多数の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環は、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましい。
芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
棒状芳香族化合物は、液晶性を示すことが好ましい。棒状芳香族化合物は、加熱により液晶性を示す(サーモトロピック液晶性を有する)ことがさらに好ましい。液晶相は、ネマチィク相またはスメクティック相が好ましい。
(I)Ar1−L1−Ar2
式(I)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を芳香族環として有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましく、2乃至8であることがより好ましく、2乃至6であることがさらに好ましく、2乃至4であることがさらにまた好ましく、2(ビニレンまたはエチニレン)であることが最も好ましい。
二価の飽和ヘテロ環基は、3員乃至9員のヘテロ環を有することが好ましい。ヘテロ環のヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子またはゲルマニウム原子が好ましい。飽和ヘテロ環の例には、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、1,3−チアゾリジン環、1,3−オキサゾリジン環、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジチオラン環および1,3,2−ジオキサボロランが含まれる。特に好ましい二価の飽和ヘテロ環基は、ピペラジン−1,4−ジイレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイレンおよび1,3,2−ジオキサボロラン−2,5−ジイレンである。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
L−7:−O−CO−二価の飽和ヘテロ環基−CO−O−
L−8:−CO−O−二価の飽和ヘテロ環基−O−CO−
(II)Ar1−L2−X−L3−Ar2
式(II)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基は、前述した芳香族炭化水素環および芳香族性ヘテロ環を芳香族環おとして有する。芳香族基の置換基も、前述した芳香族環の置換基と同様である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
L2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
以下に、式(I)で表される棒状芳香族化合物の例を示す。
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
レターデーション上昇剤は、二種類以上の化合物を混合して用いてもよい。
延伸は2対以上のニップロールを用いて行う。出口側のニップロールのライン速度を調整する(一般に速くする)ことで、縦横を調整できる。ニップロールの間隔は、縦横比L/W(延伸前のポリマーフイルムの幅をWとニップロール間距離Lの比)が0.5≦L/W≦2であることが好ましく、0.7≦L/W≦1.8であることがより好ましく、0.9≦L/W≦1.6であることがさらに好ましい。なお、通常の延伸処理における縦横比は、3を越える値であることが普通である。
延伸は、2対以上、より好ましくは2対以上8対以下、さらに好ましくは2対以上6対以下のニップロールを用いて延伸する。2対のニップロールでの延伸は1段延伸であり、3対以上のニップロールを用いる場合は多段延伸となる。2段以上の多段延伸が好ましい。低縦横比の延伸では、1段で延伸しようとすると破断しやすく、多段で少しずつ延伸する方が好ましい。
ニップロールの幅は、延伸前のフイルム幅の1.01乃至1.5倍が好ましく、1.03乃至1.4倍がより好ましく、1.05乃至1.3倍がさらに好ましい。
多段延伸の場合、少なくとも1対のニップロールが上記のラップ角であることが好ましい。使用する全てのニップロールが、上記のラップ角であることがさらに好ましい。
ニップ力は、ニップロールの幅1mあたり50乃至800kgが好ましく、100乃至600kgがより好ましく、150乃至400kgがさらに好ましい。
延伸処理に要する時間は、1乃至30秒が好ましく、2乃至25秒がより好ましく、3乃至20秒がさらに好ましい。
幅方向の均一性を向上させるため、両端の温度を中央部より1℃乃至30℃高い温度条件で延伸することが好ましい。
温度分布は、幅方向に沿って設置した分割熱源を用いることで実現できる。具体的には、放射熱源(例、IRヒーター)を用いて端部を加熱するか、複数の分割吹き出し口を設け、端部の吹き出し温度を高くすればよい。
ドライ延伸は、加熱しながら乾燥雰囲気で行なわれる一般的な延伸方法である。
加熱温度は、100乃至160℃が好ましく、110乃至150℃がさらに好ましく、120乃至145℃であることが最も好ましい。
延伸倍率は、1.1乃至1.7倍が好ましく、1.2乃至1.6倍がさらに好ましく、1.3乃至1.5倍が最も好ましい。
ドライ延伸は、2対以上のニップロールを用い、入口側の送り速度より出口側の速度を大きくする条件で実施することが好ましい。ニップロールの数は、2対乃至8対がさらに好ましく、2対乃至6対が最も好ましい。
加熱は、一定温度に昇温したケーシング内で行う方法が好ましい。ケーシング内で延伸する方が、一般的な加熱手段(加熱ロールまたは放射熱源)を用いる方法よりも、幅方向の光学特性変化を小さくすることができる。
含水延伸の前に、ポリマーフイルムに予め含水させる処理を実施する。それよりも前に、フイルムを相対湿度0乃至30%の乾燥状態で、50乃至150℃に加熱する乾燥熱処理を実施することが好ましい。加熱温度は、60乃至120℃がより好ましく、70乃至110℃がさらに好ましい。相対湿度は、0乃至25%がより好ましく、0乃至20%がさらに好ましい。加熱時間は、3秒乃至30分が好ましく、5秒乃至10分がより好ましく、10秒乃至3分がさらに好ましい。加熱手段としては、ヒートロール、熱風あるいは放射熱源(例、IRヒーター)を使用できる。
ポリマーフイルムに水を含ませるためには、ポリマーフイルムを水に浸漬するか、ポリマーフイルムを水蒸気に曝す。
水に浸漬する場合、水温は、60乃至100℃が好ましく、70乃至100℃がさらに好ましく、80乃至100℃であることが最も好ましい。浸漬時間は、0.1乃至20分が好ましく、0.2乃至10分がさらに好ましく、0.5乃至5分が最も好ましい。ポリマーフイルムは、水槽に設置したロール間を搬送させることで、水を含ませることができる。
水に浸漬する方法と、水蒸気に曝す方法とを組み合わせて実施してもよい。水蒸気に曝す方法を単独で実施することが特に好ましい。
含水延伸の温度は、50乃至100℃が好ましく、60乃至95℃がさらに好ましく、70乃至95℃が最も好ましい。含水延伸における相対湿度は、60乃至100%が好ましく、70乃至100%がさらに好ましく、80乃至95%が最も好ましい。相対湿度が高い条件での延伸処理は、高湿度雰囲気下あるいは水中に浸漬しながら実施すればよい。高湿度雰囲気下で実施することが好ましい。
高湿度雰囲気下での延伸は、調湿したケーシング内に2対以上のニップロールを設置し、出口側のニップロールの線速度を速くすることで実施できる。水中での延伸は、加熱した水槽内に2対以上のニップロールを設置し、出口側のニップロールの線速度を速くすることで実施できる。
乾燥温度は、40乃至150℃が好ましく、50乃至130℃がさらに好ましく、60乃至120℃が最も好ましい。
乾燥時間は、10秒乃至20分が好ましく、20秒乃至10分がさらに好ましく、30秒乃至7分が最も好ましい。
乾燥後のポリマーフイルムの含水率は、2%未満であることが好ましい。
延伸前のポリマーフイルムは、幅が60cm乃至3mであることが好ましく、70cm乃至2.5mであることがさらに好ましく、80cm乃至2mであることが最も好ましい。
延伸後のポリマーフイルムは、厚みが40乃至250μmであることが好ましく、50乃至230μmであることがさらに好ましく、60乃至200μmであることが最も好ましい。
延伸後のポリマーフイルムは、ヘイズ値が0乃至2%であることが好ましく、0乃至1.5%であることがさらに好ましく、0乃至1%であることが最も好ましい。
加熱温度は、50乃至150℃が好ましく、70乃至140℃がさらに好ましく、90乃至120℃が最も好ましい。
加熱時間は、0.5乃至200時間が好ましく、1乃至100時間がさらに好ましく、3乃至50時間が最も好ましい。
加熱処理は、ポリマーフイルムを加熱ゾーン内で搬送することにより実施できる。ポリマーフイルムは、ロールを用いて搬送することが好ましい。ロールでの加熱は、フイルム表面と内部とに温度差を生じやすい。温度差は、面状の低下(皺の発生)を起こす。温度差を解消するため、中空の巻心を用いてロール内部から加熱するか、あるいは、ゆっくりロールを回転しながら加熱することが好ましい。
加熱処理により、ポリマーフイルムに構造緩和を起こし、その結果、ポリマーのガラス転移温度(Tg)近傍の温度に、吸熱ピークを出現させることが好ましい。吸熱ピークは、0.1乃至2.0J/gであることが好ましく、0.3乃至1.8J/gであることがさらに好ましく、0.5乃至1.6J/gであることが最も好ましい。ポリマーフイルムに構造緩和を起こし、吸熱ピークを大きくすると、温度変化に伴う光学異方性(レターデーション値)の変化を小さくすることができる。
なお、偏光板(のポリマーフイルム)に防湿層(下記)を設ける場合、ポリマーフイルムに防湿層を設けてから、加熱処理を実施することが好ましい。
偏光板から位相差板を除いた構造全体の透湿量を5g/m2・日未満に抑制することが好ましい。透湿量は、0.01乃至4g/m2・日であることが好ましく、0.05乃至3g/m2・日であることがさらに好ましい。
低透湿量を実現するため、偏光板に防湿層を設けることが好ましい。
前記基本構成(A)の偏光板では、製造工程の都合から、位相差板と第1透明保護膜との間に粘着剤層を設けることが普通である。すなわち、(A)の偏光板は、一般に、先に第1透明保護膜〜第2透明保護膜の構造を製造し、それを位相差板と粘着剤で貼り合わせる。
以上の理由から、前記基本構成(A)の偏光板に一層の防湿層を設ける場合、下記(A1)〜(A5)のいずれか一つの態様を採用することが好ましい。
(A1) (A2) (A3) (A4) (A5)
────────────────────────────────────
第2保護膜 第2保護膜 第2保護膜 第2保護膜 防湿層
直線偏光膜 直線偏光膜 直線偏光膜 防湿層 第2保護膜
第1保護膜 第1保護膜 防湿層 直線保護膜 直線偏光膜
粘着剤層 防湿層 第1保護膜 第1保護膜 第1保護膜
防湿層 粘着剤層 粘着剤層 粘着剤層 粘着剤層
位相差板 位相差板 位相差板 位相差板 位相差板
────────────────────────────────────
(B1) (B2) (B3)
────────────────────────────────────
第2保護膜 第2保護膜 防湿層
直線偏光膜 防湿層 第2保護膜
防湿層 直線偏光膜 直線偏光膜
第1保護膜兼位相差板 第1保護膜兼位相差板 第1保護膜兼位相差板
────────────────────────────────────
ただし、一般には、防湿層を一層設けるだけで、前記の低透湿量を実現することができる。
防湿層は、有機材料または無機材料から形成できる。有機材料と無機材料とを組み合わせてもよい。
防湿層は、前記の低透湿量を実現するために設ける。透湿量は、水蒸気透過係数に比例し、厚みに反比例する。従って、透湿量(g/m2・日)は、水蒸気透過係数(cm3/cm・sec・cmHg)および厚み(μm)から、下記式により計算できる。
透湿量=1010×水蒸気透過係数/厚み
ポリマー 水蒸気透過係数 必要な厚み
────────────────────────────────────
#1エチレン/ビニルアルコールコポリマー 6×10−10 6μm
#2酢酸ビニル/エチレンコポリマー 8×10−10 8μm
#3ポリビニルアルコール 9×10−10 9μm
#4ポリ塩化ビニリデン 1×10−9 10μm
#5ポリ弗化ビニル 1×10−9 10μm
#6高密度ポリエチレン 1×10−9 10μm
#7塩酸ゴム 1×10−9 10μm
#8塩化ビニリデン/アクリル酸コポリマー 1×10−9 10μm
#9塩化ビニル/アクリロニトリルコポリマー 2×10−9 20μm
#10ポリエチレンナフタレート 5×10−9 50μm
#11ポリプロピレン 6×10−9 60μm
#12ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー 8×10−9 80μm
#13四弗化エチレン/エチレンコポリマー 1×10−8 100μm
#14低密度ポリエチレン 1×10−8 100μm
#15ポリアミド(MXナイロン) 2×10−8 200μm
#16エチレン/プロピレンコポリマー 4×10−8 400μm
#17ポリプロピレン 6×10−9 60μm
#18ポリヘキサメチレンアジポアミド 8×10−8 800μm
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(註)ポリヘキサメチレンアジポアミド:6,6−ナイロン
ポリマーからなる防湿層は、ポリマーを結晶化させることにより、防湿機能を高めることができる。ポリマーを結晶化するためには、ポリマーを含む塗布液(溶液、分散液、乳化液)を、塗布および乾燥後に熱処理することが好ましい。
熱処理温度は、100乃至200℃が好ましく、120乃至180℃がさらに好ましく、140乃至170℃が最も好ましい
熱処理時間は、0.5乃至60分が好ましく、1乃至20分がさらに好ましく、2乃至10分が最も好ましい。
ガラス板のように、全く水蒸気を透過しない無機材料のみで防湿層を構成すれば、低い水蒸気透過係数を容易に達成できる。しかし、無機材料のみで構成される層は、一般に脆く厚くなるため、画像表示装置に取り付ける偏光板の構成層としては適切ではない。そのため、無機材料と有機材料とを組み合わせて防湿層を構成することが好ましい。
無機材料と有機材料とを組み合わせて防湿層を構成すると、柔軟な層でありながら、低い透湿係数を容易に達成できる。無機材料と有機材料とを組み合わせると、有機材料を単独で用いた場合に比べて、1/100程度にまで透湿係数を低下させることができる。
無機材料は、酸化物が好ましい。無機材料の例には、二酸化珪素、アルミナ、タルク、雲母、珪藻土、酸化チタン、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトおよびリン酸ジルコニウムが含まれる。
無機材料の形状は、層状であることが好ましい。層状の無機材料としては、雲母およびタルクが好ましい。
無機層状化合物の平均長径は、0.3乃至20μmが好ましく、0.5乃至10μmがさらに好ましく、1乃至5μmが最も好ましい。無機層状化合物の平均厚さは、0.1μm未満が好ましく、0.05μm未満がさらに好ましく、0.01μm未満が最も好ましい。
無機材料と有機材料とを組み合わせた防湿層は、溶液分散法または溶融分散法により形成できる。
(1)有機材料を溶媒に溶解または乳化して、溶液またはラテックスを調製する。溶液またはラテックスの濃度は、0.3乃至30質量%が好ましく、0.5乃至20質量%がさらに好ましく、1乃至10質量%が最も好ましい。溶剤は、無機化合物の分散性を考慮して、極性溶剤が好ましい。極性溶媒は、水、アルコールまたはそれらの混合物が好ましい。
(2)無機材料を、水、アルコールまたはそれらの混合物に分散する。
(3)無機材料の分散液を、有機材料の溶液またはラテックスに、ゆっくり滴下して、撹拌する。
(4)得られた塗布液を、ポリマーフイルム(位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板または第2透明保護膜)に塗布する。
(5)塗布層を乾燥する。
(1)有機材料を加熱して、溶融する。
(2)無機材料を、溶融した有機材料に添加して、撹拌する。攪拌は、ニーダーを用いることが好ましい。
(3)ポリマーフイルム(位相差板、第1透明保護膜、第1透明保護膜兼位相差板または第2透明保護膜)を構成するポリマーと、上記混合物とを共押出しを行い、ポリマーフイルムと防湿層とを同時に形成する。
あるいは、上記混合物のみで押出しを行い形成したフイルムを、ポリマーフイルム上に粘着層を介して貼り合わせて、防湿層とする。
無機材料がポリマー(有機材料)中に分散している防湿層は、ポリマーを結晶化させることにより、防湿機能を高めることができる。ポリマーを結晶化するためには、防湿層を形成後に熱処理することが好ましい。
熱処理温度は、100乃至200℃が好ましく、120乃至180℃がさらに好ましく、140乃至170℃が最も好ましい。
熱処理時間は、0.5乃至60分が好ましく、1乃至20分がさらに好ましく、2乃至10分が最も好ましい。
ポリマー 無機材料 添加量 水蒸気透過係数 必要な厚み
────────────────────────────────────
#1 膨潤性雲母 3質量% 3×10−10 3μm
#1 膨潤性雲母 10質量% 6×10−11 0.6μm
#1 膨潤性雲母 20質量% 6×10−12 0.06μm
#1 モンモリオナイト 15質量% 5×10−11 0.5μm
#1 スメクタイト 7質量% 2×10−10 2μm
────────────────────────────────────
(註)#1:エチレン/ビニルアルコールコポリマー
ポリマー 無機材料 添加量 水蒸気透過係数 必要な厚み
────────────────────────────────────
#2 膨潤性雲母 3質量% 4×10−10 4μm
#2 膨潤性雲母 10質量% 8×10−11 0.8μm
#2 膨潤性雲母 20質量% 8×10−12 0.08μm
#2 モンモリオナイト 15質量% 7×10−11 0.7μm
#2 スメクタイト 7質量% 2×10−10 2μm
────────────────────────────────────
(註)#2:酢酸ビニル/エチレンコポリマー
ポリマー 無機材料 添加量 水蒸気透過係数 必要な厚み
────────────────────────────────────
#3 膨潤性雲母 3質量% 2×10−10 2μm
#3 膨潤性雲母 10質量% 4×10−11 0.4μm
#3 膨潤性雲母 20質量% 3×10−12 0.03μm
#3 モンモリオナイト 15質量% 6×10−11 0.6μm
#3 スメクタイト 7質量% 1×10−10 1μm
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(註)#3:ポリビニルアルコール
ポリマー 無機材料 添加量 水蒸気透過係数 必要な厚み
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#4 膨潤性雲母 3質量% 2×10−9 20μm
#4 膨潤性雲母 10質量% 3×10−10 3μm
#4 膨潤性雲母 20質量% 4×10−11 0.4μm
#4 モンモリオナイト 15質量% 3×10−10 3μm
#4 スメクタイト 7質量% 9×10−10 9μm
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(註)#4:ポリ塩化ビニリデン
ポリマー 無機材料 添加量 水蒸気透過係数 必要な厚み
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#16 膨潤性雲母 3質量% 2×10−8 200μm
#16 膨潤性雲母 10質量% 4×10−9 40μm
#16 膨潤性雲母 20質量% 3×10−10 3μm
#16 モンモリオナイト 15質量% 3×10−9 30μm
#16 スメクタイト 7質量% 1×10−8 100μm
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(註)#16:エチレン/プロピレンコポリマー
複数の防湿層を積層する場合は、ポリマーフイルム側から、有機材料と無機材料とを含む防湿層、そして有機材料のみからなる防湿層の順序で積層することが好ましい。有機材料と無機材料とを含む防湿層は、無機材料により表面に凹凸が発生し、表面ヘイズが上昇しやすい。その上に、有機材料のみからなる防湿層を設けると、表面凹凸を緩和し、ヘイズを下げることができる。
複数の防湿層の屈折率は、近い値であることが好ましい。そのためには、複数の防湿層に、同じ有機材料を用いることが好ましい。
具体的な蒸着手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法やイオンプレーティング法が採用できる。真空蒸着法が好ましい。二層以上の蒸着層を形成してもよい。
蒸着防湿層の厚さは、10乃至1000nm(10nm以上、1000nm未満)が好ましく、20乃至800nmがさらに好ましく、30乃至500nmが最も好ましい。
直線偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコールフイルムを用いて製造する。
ポリビニルアルコールフイルムをヨウ素含有水溶液に含浸した後、25乃至100℃で2乃至7倍以下延伸することで、ヨウ素系の直線偏光膜を製造できる。
延伸は、ポリビニルアルコールフイルムの幅方向に直角に行ってもよい。直交方向の延伸は、特開平7−333425号、同9−274108号、特開2000−141926号、同2000−147251号、同2001−290026号の各公報に記載がある。
斜め方向の延伸は、テンターをフイルムの幅方向に取り付けて実施できる。左右のテンタークリップの長さを変えることで、斜め延伸が実現できる。具体的には、“く”字型に屈曲したテンターを用い、左右の周長差を利用して延伸する。
延伸フイルムにおける配向軸の傾斜角度は、テンター出口(保持解除点)幅Wと、実質的左右保持手段の行程差|L1−L2|の比率で制御、調整することができる。45°に近い配向角を得るためには、0.9W<|L1−L2|<1.1Wであることが好ましく、0.97W<|L1−L2|<1.03Wであることがさらに好ましい。
一方端のテンター保持開始点から保持解除点までの長さ(L1)、他端のテンターの保持開始点から保持解除点までの長さ(L2)、そして、保持解除点間の幅(W)が、|L2−L1|>0.4Wの関係を満足することが好ましい。また、揮発分率が5%以上の状態を存在させて延伸したのち、収縮させながら揮発分率を低下させることも好ましい。
斜め延伸法については、米国特許公開2002−8840A1号明細書の記載を参照できる。
透過軸が長手方向に対して実質的に45°であるロール状直線偏光膜を用いると、それをロール状位相差板とロール・ツー・ロールで貼り合わせるだけで、円偏光板を製造できる。
偏光板(特に円偏光板)は、様々な画像表示装置に用いることができる。画像表示装置には、液晶表示装置、タッチパネルおよび有機EL素子が含まれる。タッチパネルは、特開平5−127822号公報に記載がある。有機EL素子は、特開平11−305729号、同11−307250号、特開2000−267097号の各公報に記載がある。
本発明に従う偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。液晶表示装置は、反射型、半透過型および透過型に分類できる。本発明に従う偏光板は、反射型または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。反射型の液晶表示装置が特に好ましい。
下基板と反射電極が反射板を構成する。下配向膜〜上配向膜が液晶セルを構成する。上記偏光板を、本発明に従う構成にする。位相差板をλ/4板として、偏光板を円偏光板として機能させることが好ましい。
カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を設ける。カラーフィルター層は、反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
反射電極の代わりに透明電極を用いて、別に反射板を取り付けてもよい。透明電極と組み合わせて用いる反射板としては、金属板が好ましい。反射板の表面が平滑であると、正反射成分のみが反射されて視野角が狭くなる場合がある。そのため、反射板の表面に凹凸構造(特許275620号公報記載)を導入することが好ましい。反射板の表面が平坦である場合は(表面に凹凸構造を導入する代わりに)、偏光膜の片側(セル側あるいは外側)に光拡散フイルムを取り付けてもよい。
TN型液晶セルのツイスト角は、40乃至100°であることが好ましく、50乃至90°であることがさらに好ましく、60乃至80°であることが最も好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.1乃至0.5μmであることが好ましく、0.2乃至0.4μmであることがさらに好ましい。
STN型液晶セルのツイスト角は、180乃至360°であることが好ましく、220乃至270°であることがさらに好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.3乃至1.2μmであることが好ましく、0.5乃至1.0μmであることがさらに好ましい。
HAN型液晶セルは、片方の基板上では液晶が実質的に垂直に配向しており、他方の基板上のプレチルト角が0乃至45°であることが好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.1乃至1.0μmであることが好ましく、0.3乃至0.8μmであることがさらに好ましい。液晶を垂直配向させる側の基板は、反射板側の基板であってもよいし、透明電極側の基板であってもよい。
OCBモードでは棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させる配向モードの液晶セルを用いたものである。この結果自己光学補償能を有する。OCBモードの液晶セルは、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に記載されている。
ECBモードでは水平に液晶を配向させていることが特徴であり、特開平5−203946号に詳細が記載されている。
タッチパネルについては、特開平5−127822号、特開2002−048913号の各公報に記載がある。
(水蒸気透過係数の測定方法)
サンプルフイルムで隔てた2つの容器を真空にし、一次側に、相対湿度92%の水蒸気を導入する。フイルムを透過し二次側に出てきた水蒸気量を、25℃において真空計を用いて計測する。これを経時で測定し、縦軸に二次側水蒸気圧(cmHg)、横軸に時間(秒)をとり透過曲線を作製する。この透過曲線の直線部の勾配から下記式に従い水蒸気透過係数を求める。
水蒸気透過係数(cm3(STP)・cm−1・sec−1・cmHg−1)=(Δp/Δt)×(V/760)×(l/p・a)
Δp/Δt:透過曲線の直線部の勾配
V: 二次側の容積(cm3)
l: フイルムの厚み(cm)
p: 一次側の水上気圧(cmHg)
a: フイルムの厚さ(cm)
外径82mm、高さ15mmのステンレス製の円筒であり、一方に直径6cmの穴のあいた容器を用意する。
乾燥剤(無水塩化カルシウム)を20g坪量し、容器に入れる。
容器の穴の周囲に(穴を塞がないように)両面テープを貼り付け、この上に直径82mmのサンプルフイルムを貼り付ける。
サンプルフイルムの外周5mmにマイラー粘着テープを巻き付け、ステンレス容器とくっつける。
これを、精密天秤を用いて坪量する。この値をW(0)(g)とする。ここまでの操作は、全て温度25℃、相対湿度10%で実施する。
これを温度25℃、相対湿度60%の環境に移し放置する。
24時間後に、温度25℃、相対湿度60%の環境下で坪量する。この質量をW(1)gとする。下記式から透湿量を求める。
透湿量(g/m2・日)=354×(W(1)−W(0))
サンプルフイルムを温度25℃、相対湿度60%に3時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、温度25℃、相対湿度60%において、サンプルフイルム表面に対し垂直方向から波長450nm、550nmおよび650nmにおけるレターデーション値を測定し、Re450、Re550およびRe650の値とする。
エリプソメーター(KOBRA−21ADH/PR、王子計測器(株)製)を用い、遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを求める。そいて、NZ値として、(nx−nz)/(nx−ny)の値を計算する。
サンプルフイルムを温度25℃、相対湿度60%および温度25℃、相対湿度10%で2時間以上調温調湿する。
同じ雰囲気下で、ATR結晶板(KRS−5、入射角60度、5cm×1cm)の両側にサンプルフイルムを挟みこむ。
赤外分光器に、入射光側から偏光子、ATR測定器の順にセットし、偏光角90度(フイルム面に垂直な偏光)、0度(フイルム面に平行な偏光)で各々200回積算測定を行なう。
アセチル基の伸縮振動に起因するピーク(1700cm−1〜1800cm−1に現れるピーク)の吸光度を測定する。即ち、ピークの最高部の吸光部と、ピーク両脇のバックグランドとの差を求める。
90度偏光の吸光度をA(90°)、0度偏光の吸光度をA(0°)とし、B=A(90°)/A(0°)を赤外2色比とする。これを、温度25℃、相対湿度60%で調湿した時の値(B(相対湿度60%))と、温度25℃相対湿度10%で調湿した時の値(B(相対湿度10%))を求め、B(相対湿度60%)−B(相対湿度10%)をカルボニル基の伸縮振動の2色比の減少量とする。
フイルムを約20mgサンプリングし、これを精秤した後、アルミパンに入れる。
30℃から250℃まで20℃/分で昇温しながらDSC(走査型示差熱分析計)で測定を行う。
Tgでは、ベースラインが不連続に平行移動するが、この点を挟んで現れる吸熱ピークの熱量を求める。即ちTgに対し低温側のベースラインから吸熱ピークが立ち上がる点と、吸熱ピークが高温側のベースラインに合一する点を結び、この上に形成されるピークの面積から吸熱量を求める。これをサンプルフイルムの質量で割った値を、緩和熱量とする。
無機化合物サンプルを平滑な基板(ガラス板、金属板)の上に分散し、この上から導電性物質(金、銀、カーボン)を蒸着する。これを走査型電子顕微鏡(S−900、日立製作所(株)製)を用いて観察する。
基板の正面(真上)から観察し、無機化合物粒子50点を撮影し、この表面積を計測する。これと同じ面積を有する円の直径を求めDとする。この50点の平均値をDaとする。
基板を90度回転させ真横から無機化合物の断面50点を撮影し、この短辺側を厚みTとする。この50点の平均値をTaとする。
Da/Taを、この無機化合物のアスペクト比とする。
カールフィッシャー法にて、下記のように測定する。
(1)0.9m×4.5cmのサンプルを2枚秤量する。サンプルが濡れている場合は、表面の水分を良く拭う。サンプリング後、直ちにり栓の付いたガラス瓶に入れ水分計のところまで運び、サンプリング後3分以内に測定する。
(2)気化器(VA−05型、三菱化学(株)製)を用い、150℃にてサンプル中の水分を揮発させ、水分計に導入する。カールフィッシャー水分計(CA−03型、三菱化学(株)製)を用い、測定する。
(3)水分計の示した水分量(μg)をWとし、秤量したサンプル量をF(mg)として、含水率(%)=0.1×(W/F)を計算する。
ポリマー・ジャーナル(Polymer Journal vol17. 1065−1069(1985))に記載の方法で、13C−NMRスペクトルから測定する。
1−1.位相差板の作製
(1)組成
下記組成のセルロースアセテートドープ(高濃度溶液)を作製した。なお、レターデーション上昇剤は、下記の化合物である。
メチレンクロリド(MC)系ドープ組成
────────────────────────────────────
セルロースアセテート(酢化度は第1表に記載) 100質量部
トリフェニルホスフェート 10.0質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 5.0質量部
メチレンクロリド 565.6質量部
メタノール 49.2質量部
レターデーション上昇剤 第1表に記載
シリカ微粒子(粒径:20nm) 0.05質量部
────────────────────────────────────
酢酸メチル(MA)系ドープ組成
────────────────────────────────────
セルロースアセテート(酢化度は第1表に記載) 118質量部
トリフェニルホスフェート 9.19質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 4.60質量部
トリベンジルアミン 2.36質量部
酢酸メチル 530質量部
エタノール 99.4質量部
ブタノール 33.1質量部
レターデーション上昇剤 第1表に記載
シリカ微粒子(粒径:20nm) 0.05質量部
────────────────────────────────────
MC系は常温溶解法、MA系は冷却溶解法を用いて溶解し、ドープを作製した。なお、いずれの方法も、セルロースアセテートは、後述の製膜屑から回収したものを20質量%添加した。これらのセルロースアセテートはいずれも含水率が1質量%以下となるように120℃で2時間以上乾燥したものを用いた。
溶媒中に、よく攪拌しつつ上記の化合物を徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物を、還流冷却機を有する混合タンク中で50℃において撹拌しながら溶解した。
溶媒中に、よく攪拌しつつ上記の化合物を徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物をゆっくり撹拌しながら、−8℃/分で−30℃まで冷却、その後第1表記載の温度まで冷却し6時間経過した後、+8℃/分で昇温し、内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。50℃まで加温しドープを得た。
下記2方式から選択し製膜し、第1表に記載した。いずれの方法も、製膜乾燥後巻取り前に、これらの両端15cmずつトリミングし、両端に高さ50μm幅1cmのナーリング(厚みだし加工)を行い、幅1.5m、長さ3000mの未延伸セルロースアセテートフイルムを得た。なお、ここでトリミングしたセルロースアセテートフイルム屑(製膜屑)からセルロースアセテートを単離し、上述のようにドープ原料として混合し、再使用される。
上記方法により得られた溶液(ドープ)を、濾紙(安積濾紙(株)製No.244)およびネル製の濾布で濾過した後、定量ギアポンプで加圧ダイに送液し、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥、延伸後の最終膜厚が第2表に記載の厚みになるように流延した。バンド温度は0℃とした。乾燥のため2秒間風に当て、フイルム中の揮発分が50質量%になったときに、フイルムをバンドから剥ぎ取り、さらに100℃で3分、130℃で5分、そして160℃で5分、フイルムを固定せず自由に収縮させて段階的に乾燥して、残りの溶剤を蒸発させ1質量%以下にした後、巻き取った。
三層共流延ダイを用い、内層から上記組成のドープを、両側に10%に溶剤量を増加し希釈したドープを、金属支持体上に同時に吐出させて重層流延した後、流延膜を支持体から剥ぎ取り、乾燥して、本発明の三層構造のセルロースアセテートフイルム積層体(内層の厚さ:各表面層の厚さ=8:1)を製造した。乾燥は70℃で3分、130℃で5分した後、ガラス板からフイルムを剥ぎ取り、そして160℃、30分で段階的に乾燥して溶剤を蒸発させ1質量%以下にした後、巻き取った。
第1表に記載の条件で延伸を行い、位相差板を得た。
延伸前の含水は、浸漬法あるいは水蒸気法から選択した。前者は90℃の温水浸漬し、後者は120℃の水蒸気に曝し、第1表記載の含水率とした。含水処理前に、第1表に記載の条件で乾燥加熱処理した。
延伸はニップロールを用い長手(MD)方向に実施し、その倍率は第1表に記載した。1段延伸の場合ニップロールを2対用い、多段延伸の場合はタンデムに配置した3対以上のニップロールを用いて連続して行った。多段延伸の場合、総延伸倍率は、格段の各延伸倍率の積となる。なお、各段の延伸の縦横比(ニップロールの中心軸間距離/延伸前の原反の幅)は、第1表に記載した。第1表に記載したラップ角は、いずれのニップロールも同じになるように調整した。
延伸時間(延伸開始から終了までに要した延伸時間)は、20秒となるように実施した。なお、多段延伸の場合は、第1段開始から最終段終了までが延伸時間である。
延伸温度は、両端の温度が中央部より20℃高くなるように調整した。
延伸後のフイルムは、両端3cmずつトリミングしてから、巻き取った。このようにして、幅1.3m、長さ3000mの延伸フイルムを得た。
得られた位相差板の光学物性を、前述した方法で評価した。結果を第2表に記載する。第2表に記載の擦り傷は、100Wのタングステンランプの下でフイルム表面の反射光を10cm四方観察し、星状の輝点の数を数え、単位面積あたりに換算した値で表した。
位相差板または透明保護膜に、第3表に記載の防湿層を、第4表に示すように塗布により設けた。
防湿層の透湿量の測定は、密着の悪い基板(ポリフッ化ビニリデンフイルム)上に塗布した後、剥離し、この透湿量を前記の方法で測定して求めた。
また、防湿層を付与する前に下記方法のいずれかを選択し(第4表に記載)、位相差板または透明保護膜の表面をケン化した。
位相差板または透明保護膜の片面に60℃において#3バーで塗布し、30秒後に水洗、60℃で乾燥した。
ケン化液は、イソプロパノール/プロピレングリコール/水(容積比:70/15/15)に水酸化カリウムを溶解した1.5規定濃度の溶液を用いた。
位相差板または透明保護膜を、水酸化ナトリウムの1N水溶液に、40℃で3分間浸漬した後、水洗し、60℃で3分乾燥した。
防湿層を設けた位相差板を、第1表に記載の温度および時間で熱処理した(相対湿度:10〜20%)。表裏の防湿層を剃刀で削り落とした後、前記の方法でDSC測定を行い、緩和熱量を測定し、第2表に示す結果を得た。
位相差板、直線偏光膜、第3表記載の防湿層を、第4表の記載の順に積層し、円偏光板を作製した。透明保護膜に設ける防湿層は、透明保護膜に用いるセルローストリアセテートフイルムを、下記方法から選択した方法でケン化し、その上に塗布により設けた。
位相差板の片面に60℃において#3バーで塗布し、30秒後に水洗、60℃で乾燥した。
ケン化液は、イソプロパノール/プロピレングリコール/水(容積比:70/15/15)に水酸化カリウムを溶解した1.5規定濃度の溶液を用いた。
水酸化ナトリウムの1N水溶液に、40℃で3分間浸漬した後、水洗し、60℃で3分乾燥した。
得られた円偏光板の光学的性質を調べたところ、いずれも60℃経時中、経時後も広い波長領域(450〜590nm)において、レターデーション値は殆ど変化せず、ほぼ完全な円偏光が達成されていた。
(1)ポリビニルアルコール流延
平均重合度4000、ケン化度99.8モル%のポリビニールアルコール(PVA)を水に溶解し、4.0%の水溶液を得た。この溶液をバンド流延、乾燥し、バンドから剥ぎ取り、未延伸ポリビニルアルコールフイルムを得た。
(2)ヨウ素含浸
未延伸ポリビニルアルコールフイルムをヨウ素2.0g/リットル、ヨウ化カリウム4.0g/リットルの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/リットルの水溶液に25℃にて60秒浸漬した後、水洗槽にて20℃で、10秒間水洗した。
ヨウ素含浸フイルムを未乾燥のまま80℃において5.3倍に延伸した。このとき原反(未延伸ポリビニルアルコールフイルム)の長手方向に平行に延伸したものを「平行」延伸、原反長手方向に45度に延伸したものを「斜め」延伸として、第3表に記載した。なお、平行延伸は一対のニップロールを用い出口側ニップロールの速度を速く回転することで達成した。斜め延伸は、“く”字状に45度屈曲させたテンターを用い、屈曲部までに5.3倍に延伸した後、平行に保ちながら搬送することで斜め方向に延伸した。このとき左右両テンタークリップの速度は同速とした。
延伸後、80℃で5分間乾燥して長尺上の直線偏光膜を得た。これらはいずれも幅は1290mm、厚みは20μmであった。
直線偏光膜を、ポリビニルアルコール(PVA−117H、(株)クラレ製)の3質量%水溶液を接着剤として、2枚の透明保護膜(フジタック、富士写真フイルム(株)製)の間に挟みこみ、透明保護膜を取り付けた。なお、透明保護膜のレターデーション(Re550)は、3.0nmである。透明保護膜の直線偏光膜と接する面は、あらかじめ上記浸漬法でケン化しておいた。
これを温度25℃、相対湿度60%中で波長550nmのレターデーションを測定し(第1測定)、これをRe(0)とした。
これを温度60℃、相対湿度10%の空気恒温槽の中に入れ、3時間後に温度25℃、相対湿度60%中に取りだし、30分放置した後、この環境中で波長550nmのレターデーション測定を行った(第2測定)。これをRe(1)とする。Re(0)からRe(1)を差し引いた値が温度60℃、相対湿度10%で3時間のレターデーション変化であり、前述した第1過程に相当する。第4表には「60℃3hr」と表記した。
温度60℃、相対湿度10%の空気恒温槽に50時間入れた後に温度25℃、相対湿度60%中に取りだし、24時間放置した後、この環境中で波長550nmのレターデーション測定を行った(第4測定)。これをRe(3)とする。Re(3)からRe(3)を差し引いた値が、温度60℃、相対湿度10%で50時間から温度25℃、相対湿度60%で24時間のレターデーション変化であり、前述した第3過程に相当する。第4表には「60℃50hr−25℃60%24hr」と表記した。
これらのレターデーション変化は、延伸フイルムの中央と幅方向端部で同様の値が得られた。
次に、第4表記載の円偏光板から位相差板のみを除外した積層体を温度25℃、相対湿度10%で作製し、これを用いて上記方法で透湿量を計測し、第4表に示す結果を得た。これにより、位相差板に到達する水分量を求めた。なお、試料番号22の透湿量が、防湿層の透湿係数と厚みから上記(A)式を用い求めた値より小さいのは、積層した偏光板の防湿性に起因している。
(1)TN型反射型液晶表示装置の作製
ITO透明電極を設けたガラス基板と、微細な凹凸が形成されたアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。二枚のガラス基板の電極側に、それぞれポリイミド配向膜(SE−7992、日産化学(株)製)を形成し、ラビング処理を行った。3.4μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、110°の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の間隙に、液晶(MLC−6252、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。このようにして、ツイスト角が70°、Δndの値が269nmのTN型液晶セル(対角12インチ)を作製した。
ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、作製した円偏光板を温度25℃、相対湿度60%で調湿後、偏光層の反対側から貼り付けた。
作製した反射型液晶表示装置に、1kHzの矩形波電圧を印加した。白表示1.5V、黒表示4.5Vとして目視で評価を行ったところ、白表示においても、黒表示においても、色味がなく、ニュートラルグレイが表示されていることが確認できた。
次に、測定機(EZcontrast160D、Eldim社製)を用いて反射輝度のコントラスト比を測定し、正面からのコントラスト比、コントラスト比3となる視野角を測定した。
試料番号1〜3、5〜10、12〜21では、上記液晶表示装置作製直後も、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中においても、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下130°、左右130°であった。また、位相差板の幅方向中央部、端部も同様の結果となった。
試料番号4、11、22は、作製直後は正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°、左右120°であったが、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中に、正面からのコントラスト比が最大12にまで低下し、コントラスト比10となる視野角は、いずれも最大上下60°、左右60°に低下していた。
ITO透明電極を設けたガラス板と、平坦なアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。二枚のガラス基板の電極側に、それぞれポリイミド配向膜(SE−150、日産化学(株)製)を形成し、ラビング処理を行った。6.0μmのスペーサーを介して二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、60°の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の隙間に、液晶(ZLI−2977、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。このようにしてツイスト角が240°、Δndの値が791nmのSTN型液晶セル(対角12インチ)を作製した。
ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、内部拡散シート(IDS、大日本印刷(株)製)と、上述の円偏光板を温度25℃、相対湿度60%で調湿後、この順序でそれぞれ粘着を介して、偏光板が最外層となるように貼り付けた。
作製した反射型液晶表示装置に、55Hzの矩形波電圧を印加した。黒表示2.0V、白表示2.5Vとして目視で評価を行ったところ、白表示においても黒表示においても、色味がなく、ニュートラルグレイが表示されていることが確認できた。
次に、測定機(EZcontrast160D、Eldim社製)を用いて反射輝度のコントラスト比を測定し、正面からのコントラスト比、コントラスト比3となる視野角を測定した。
試料番号1〜3、5〜10、12〜21では上記液晶表示装置作製直後も、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中においても、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下130°、左右130°であった。また、位相差板の幅方向中央部、端部も同様の結果となった。
試料番号4、11、22は、作製直後は正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°、左右120°であったが、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中に、正面からのコントラスト比が最大12に低下し、コントラスト比10となる視野角は、いずれも最大上下60°、左右60°に低下していた。
VA型液晶表示装置は下から順に、下側ガラス基板、絶縁膜、薄膜トランジスタ、反射板、下側配向膜、液晶、上側配向膜、ITO透明電極、オーバーコート層、カラーフィルター、上側ガラス基板からなる。
ITO透明電極を設けたガラス基板と、微細な凹凸が形成されたアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。上側配向膜、下側配向膜にはそれぞれ垂直配向膜(RN783、日産化学(株)製)を用意し、ラビング処理を行った。1.7μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、110°の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の間隙に、Δn=0.08、Δε=−4の液晶(メルク社製)を真空注入法により注入し、液晶層を形成した。このようにして、ツイスト角が45°、Δndの値が135nmのVA型液晶セルを作製した。
ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、ガラス基板側から、上記防湿層を設けた位相差板、市販の偏光板(HLC2−5618HCS、(株)サンリッツ製)をこの順で粘着剤を介して積層した。防湿層を設けた位相差板と偏光膜を貼り合わせる際、偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸とが45°になるように貼り合わせた。
試料番号1〜3、5〜10、12〜21では上記液晶表示装置作製直後も、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中においても正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であった。また、位相差板の幅方向中央部、端部も同様の結果となった。
試料番号4、11、22は、作製直後は正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であったが、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中に、正面からのコントラスト比が最大12に低下し、コントラスト比10となる視野角は、いずれも最大上下60°、左右60°に低下していた。
特開平11−316378の実施例1に従い、第2透明支持体を、上記防湿層を設けた位相差板とした。但し、これと偏光膜を貼り合わせる際、偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸とが45度になるように貼り合わせた。これを用いて特開平11−316378の実施例6に従いECB型液晶表示素子を作製した。
試料番号1〜3、5〜10、12〜21では上記液晶表示装置作製直後も、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中においても正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であった。また、位相差板の幅方向中央部、端部も同様の結果となった。
試料番号4、11、22は、作製直後は正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であったが、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中に、正面からのコントラスト比が最大12に低下し、コントラスト比10となる視野角は、いずれも最大上下60°、左右60°に低下していた。
サイバーショット(SONY社製)の液晶表示部の液晶セルの上側部分の偏光板、λ/2板、λ/4板を剥がし、ガラス基板側から、上記防湿層を設けた位相差板(λ/4板)、市販の偏光板(HLC2−5618HCS、(株)サンリッツ製)をこの順で粘着剤を介して積層した。位相差板と偏光膜を貼り合わせる際、偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸とが45°になるように貼り合わせた。
試料番号1〜3、5〜10、12〜21では上記液晶表示装置作製直後も、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中においても、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であった。また、位相差板の幅方向中央部、端部も同様の結果となった。
試料番号4、11、22は、作製直後は正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であったが、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中に、正面からのコントラスト比が最大12にまで低下し、コントラスト比10となる視野角は、いずれも最大上下60°、左右60°に低下していた。
タッチパネル付き反射型液晶表示装置(シャープ社製、ザウルス)でタッチパネル/偏光板/位相差板/液晶セルの偏光板と位相差板を剥がして、上記防湿層を設けた位相差板、市販の偏光板(HLC2−5618HCS、(株)サンリッツ製)に置き換えた。この際、偏光膜の吸収軸と位相差板の遅相軸とが45°になるように貼り合わせ、コントラストが最大となるように貼り合わせた。
試料番号1〜3、5〜10、12〜21では上記液晶表示装置作製直後も、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中においても、正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であった。また、位相差板の幅方向中央部、端部も同様の結果となった。
試料番号4、11、22は、作製直後は正面からのコントラスト比が25であり、コントラスト比3となる視野角は、いずれも上下120°以上、左右120°以上であったが、60℃経時中、およびこの後温度25℃、相対湿度60%で経時中に、正面からのコントラスト比が最大12にまで低下し、コントラスト比10となる視野角は、いずれも最大上下60°、左右60°に低下していた。
Claims (3)
- 0.003乃至0.1質量%の水を含む溶剤中にセルロースアシレートが溶解しているセルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフイルムを形成する工程;形成したセルロースアシレートフイルムを温度50乃至150℃、相対湿度0乃至10%の条件で0.5乃至200時間熱処理する工程;熱処理したセルロースアシレートフイルムを縦/横の延伸比が0.3乃至2となる条件で延伸する工程;そして、延伸したセルロースアシレートフイルムからなる位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜、第2透明保護膜、および防湿層を、位相差板、第1透明保護膜、直線偏光膜、そして第2透明保護膜の順序で、かつ位相差板と直線偏光膜との間に防湿層が存在するように積層するか、あるいは、延伸したセルロースアシレートフイルムからなる第1透明保護膜兼位相差板、防湿層、直線偏光膜、そして第2透明保護膜をこの順序で積層する工程により偏光板を製造することを特徴とする偏光板の製造方法。
- 製造された偏光板を温度25℃、相対湿度60%の条件で調温調湿して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値から、さらに偏光板を温度60℃、相対湿度10%の条件で3時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値の変化が15nm未満である請求項1に記載の偏光板の製造方法。
- 製造された偏光板を温度60℃、相対湿度10%の条件で3時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値から、さらに偏光板を温度60℃、相対湿度10%の条件で47時間保存して波長550nmで測定した位相差板のレターデーション値の変化が15nm未満である請求項1に記載の偏光板の製造方法。
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