JP2011118370A - 液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バックライト側に第1位相差膜(10b)、及び表示面側に第2位相差膜(10a)を有する液晶表示装置であって、1)第1位相差膜が、所定のセルロースアシレート系ポリマーであり;2)第2位相差膜が、所定のセルロースアセテートを主成分とするコア層と、所定のセルロースアセテートを主成分とするスキン層とを有する積層フィルムであり;3)前記第1位相差膜の有する下記(式1)から算出される光弾性係数に関する値が、前記第2位相差膜の有する値より大きく;並びに4)前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きいことを特徴とする液晶表示装置である。
{(CTD)2+(CMD)2}(1/2) (式1)
式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。
【選択図】図1
Description
VAモード液晶表示装置は、他の液晶表示モードと比較して一般にコントラストが高いというメリットがあるが、視角によってコントラスト及び色味の変化が大きいという問題もある。この問題を解決するために、液晶セルの上下に偏光板をその吸収軸を互いに直交させて配置し、さらに、偏光板のそれぞれと液晶セルとの間に、光学的に2軸性の位相差膜を配置することにより、視角によるコントラスト低下を低減できることが知られている(例えば、特許文献1)。また、液晶セルの上下それぞれに、光学的に2軸性で光学異方性が等しい位相差膜を備えた液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献2)。また、前記位相差膜に要求される光学特性を満足するポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート系ポリマーフィルム及びノルボルネン系ポリマーフィルムが提案されている(例えば、特許文献3及び4)。
このVAモード液晶表示装置の光学補償方式では、同一のフィルムを上下に配置して光学補償しているので、大量生産した場合コスト上のメリットがある。
さらに環境湿度による表示特性変動が小さい表示パネルとして、特定の位相差膜を表示面側に配置する技術が開示されている。(例えば、特許文献5)。
従って、本発明は、視野角特性に優れるとともに、環境温度に依存した表示特性の変動がより少ない液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置を提供することを課題とする。
[1] バックライト、液晶セル、該液晶セルと前記バックライトとの間に配置された第1偏光子、前記液晶セルに対して前記第1偏光子と反対側に配置された第2偏光子、前記第1偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第1位相差膜、及び前記第2偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第2位相差膜を有する液晶表示装置であって、以下の条件を充たす液晶表示装置:
1)第1位相差膜が、セルロースアシレート系ポリマーであって、アセチル、プロピオニル基及びブチル基から選ばれる少なくとも2種のアシル基を有するセルロースアシレート系ポリマーを主成分とする膜であること;
2)第2位相差膜が、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.00以上2.70未満であるセルロースアセテートを主成分とするコア層と、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.70以上であるセルロースアセテートを主成分とするスキン層とからなる積層フィルムであること;
3)下記(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、前記第1位相差膜の有する値が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
4)前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
{(CTD)2+(CMD)2}(1/2) (式1)
式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。
(I) 30≦Re(548)≦80
(II)70≦Rth(548)≦140
ここで、Re(λ)及びRth(λ)はそれぞれ、波長λ[nm]で測定した面内レターデーション[nm]及び膜厚方向レターデーション[nm]である。
[3] 前記第1及び第2位相差膜の有する弾性率に関する値、TD方向とMD方向の弾性率の平均値E1ave(Mpa)及びE2ave(Mpa)が、下記(式2)を満たすことを特徴とする[1]又は[2]の液晶表示装置:
−500<E1ave−E2ave<300 (式2)
式中、E1ave(Mpa)は第1位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表し、E2ave(Mpa)は第2位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表す。
[5] VAモードであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re、Rth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
図1のVAモード液晶表示装置は、液晶セルLC(表示面側基板1、バックライト側基板3、及び液晶層5、からなる)と、液晶セルLCを挟持して配置される一対の表示面側偏光板P1及びバックライト側偏光板P2とを有する。なお、ポリビニルアルコールフィルム系偏光膜からなる偏光子は、通常、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板として液晶表示装置に組み込まれるのが一般的であるが、図1では、外側に配置される保護フィルムは省略した。偏光板P1及びP2は、それぞれ偏光膜8a(第2偏光膜)及び偏光膜8b(第1偏光膜)を有し、偏光膜8a及び8bは、その吸収軸9a及び9bを互いに直交方向にして配置されている。液晶セルLCはVAモードの液晶セルであり、黒表示時には、図1に示す通り、液晶層5はホメオトロピック配向になる。基板1及び3は、それぞれ内面に、配向膜(図示せず)と電極層(図示せず)を有し、さらにいずれか一方の内面には、カラーフィルタ層(図示せず)を有する。
(I) 30nm≦Re(548)≦80nm
(II) 70nm≦Rth(548)≦140nm
さらに、下記式(I)’及び(II)’を満足しているのがより好ましい。
(I)’ 45nm≦Re(548)≦65nm
(II)’ 100nm≦Rth(548)≦140nm
[第1及び第2位相差膜の性質]
本発明では、下記(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、バックライト側に配置される第1位相差膜の有する値が、表示面側に配置される第2位相差膜の有する値より大きいという条件;及び
及び前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であるという条件;
を満足する。本発明では、この条件を満足する第1位相差膜及び第2位相差膜を組合せて用い、所定の配置とすることで、環境温度に依存する表示特性の変動を軽減している。
式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。
本発明の液晶表示装置に用いられる第1及び第2の位相差膜は、(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、バックライト側に配置される第1位相差膜の有する値が、表示面側に配置される第2位相差膜の有する値より大きいという条件を満足する。第1の位相差膜と第2の位相差膜との(式1)の値の差は、正面(表示面に対して法線方向)光漏れが経時で大きくなるのを軽減するという観点では、3以上であるのが好ましく、5以上であるのが好ましい。上限値については特に制限はない。第1及び第2の位相差膜は、上記条件を満足することを前提に、機械方向(以下、「MD方向」という)の光弾性係数、及び機械方向に垂直な方向(以下、「TD方向」という)の光弾性係数がともに、5.0×10-11m2/N以下であり、かつ、MD方向の光弾性係数/TD方向の光弾性係数の比が0.80〜1.20であることが好ましい。
より好ましくは、MD方向の光弾性係数およびTD方向の光弾性係数がともに4.0×10-11m2/N以下であり、かつ、MD方向の光弾性係数/TD方向の光弾性係数の比が0.82〜1.18である。
さらに好ましくは、MD方向の光弾性係数およびTD方向の光弾性係数がともに3.0×10-11m2/N以下であり、かつ、MD方向の光弾性係数/TD方向の光弾性係数の比が0.84〜1.16である。
具体的な測定方法としては、第1及び第2の位相差膜として用いられるフィルムの試料片(10mm×100mm)を準備し、その長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出することができる。
本発明の液晶表示装置に用いられる第1及び第2の位相差膜の透湿度は、第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であるという条件を満足する。第1の位相差膜と第2の位相差膜との透湿度の差は、正面光漏れが経時で大きくなるのを軽減するという観点では、500g/m2・24h以上であるのが好ましく、1000g/m2・24h以上であるのが好ましい。上限値については特に制限はない。第1及び第2の位相差膜は、上記条件を満足することを前提に、400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。なお、本明細書において、透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算した値をいうものとする。透湿度が2000g/m2・24hを超えると、フィルムのRe値及びRth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、例えは、第1及び第2の位相差膜が、セルロースアシレートフィルム等のポリマーフィルム上に光学異方性層を積層して作製される位相差フィルムであると、Re値及びRth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。このような位相差フィルムや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす場合がある。また、第1及び第2の位相差膜の透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、該膜により接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる場合がある。
第1及び第2の位相差膜の膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度÷実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、フィルム試料70mmφを25℃、90%RHおよび60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK709007、東洋精機(株))にて、JIS Z 0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量/調湿前質量で求めることができる。
更に、本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜のTD方向とMD方向の弾性率の平均値E1ave(Mpa)が、表示面側に配置される第2位相差膜の同平均値E2ave(Mpa)に近い値であると、長時間点灯した場合にも、光漏れなどがなく、ムラのない画像を表示できるので好ましい。液晶表示装置の電源を長時間点灯していると、バックライトの熱によって液晶表示装置内部の温度が上昇するが、バックライトからの距離の違いにより、視認側とバックライト側とでは温度に差が生じる。一般的には、ポリマーフィルム等からなる位相差膜は、熱によって変形する傾向があるが、視認側及びバックライト側に温度差があると、それぞれに配置されている位相差膜の変形量にも差が生じる。本発明者が鋭意検討した結果、バックライト側に配置される第1位相差膜の弾性率を、表示面側に配置される第2位相差膜より大きくすると、位相差膜の変形量の違いに起因する光漏れを軽減できるとの知見が得られた。一方、その差(E1ave−E2ave)が大き過ぎると、バックライト側位相差膜の変形量が視認側位相差膜の変形量より大きくなり、再び光漏れが増加してしまうので好ましくない。この点を考慮すると、E1ave−E2aveは300未満であるのが好ましく、即ち、下記(式2)
−500<E1ave−E2ave<300 (式2)
を満足するのが好ましく、下記(式2)’
−500<E1ave−E2ave<0 (式2)’
を満足するのがより好ましい。
弾性率を上記の式の範囲となるように調整することにより、前記条件を満足する第1及び第2位相差膜を用いた液晶表示装置の表示特性の変動をより軽減することができる。
なお、フィルム試料の弾性率は、フィルム試料10mm×150mmを、温度25℃・相対湿度60%で2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ―R2(東洋精機製))で、チャック間距離50mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で測定することができる。MD方向の弾性率はMD150mm、TD10mmの試料をMD方向に引っ張ることにより測定し、TD方向の弾性率はMD10mm、TD150mmの試料をTD方向に引っ張ることにより測定し、それらの値から、平均値E1ave及びE2aveが算出できる。
本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜は、Re及びRthの温度依存性及び弾性率が比較的大きく、及び表示面側に配置される第2位相差膜は、Re及びRthの温度依存性及び弾性率が比較的小さいのが好ましい。この様に、Re及びRthの温度依存性及び弾性率の点で互いに異なる第1及び第2位相差膜は、主成分(本明細書では、「主成分」とは、全原料中に占める割合が60質量%以上の成分をいうものとする)が互いに異なる異種のポリマーフィルムからそれぞれ作製する。
本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜が、アセチル基、及びプロピオニル基及び/又はブチリル基を有するセルロースアシレートを主成分とするフィルムを用い、第2位相差膜にセルロースアセテートを主成分とするフィルムを用いるのが好ましい。
また、第1位相差膜及び第2位相差膜にアシル置換度が互いに異なるセルロースアシレートを主成分とするフィルムを用い、第1位相差膜にアシル置換度が高いセルロースアシレートを主成分とするフィルムを用いるのも好ましい。
以下、これらのポリマーフィルムについて、詳細に説明する。
例えば、特開2009−223305号公報、WO2007/125764号公報に記載されたポリマーを主成分として含むフィルムが好ましい。従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を主成分として用いるのも好ましい。
特に好ましくは、WO2007/125764号公報に記載されたセルロースアセテートプロピオネートが挙げられる。
なお、前記セルロースアシレートフィルムをソルベントキャスト法で作製する場合は、下記の液晶化合物等の添加剤は、セルロースアシレート組成物の溶液中に添加される。例えば、下記の液晶化合物等を有機溶媒に溶解した溶液を、セルロースアシレート組成物の溶液に添加してもよい。
第2位相差膜に用いるセルロースアセテートを主成分とするフィルムが、所望の光学特性を満足するために、下記の材料を含有するセルロースアセテート組成物からセルロースアセテートフィルムを作製するのが好ましい。
本発明では、光学特性の発現のために、少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸残基と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸残基とを含む平均炭素数が5.5以上10.0以下のジカルボン酸残基と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5以上8.0以下の脂肪族ジオール残基とを含む重縮合エステルを用いることがさらに好ましい。
ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、ジオール残基の場合も同様で、脂肪族ジオール残基の平均炭素数は、脂肪族ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
前記重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースエステルへの相溶性が優れ、セルロースエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
前記重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明に用いる重縮合エステルの芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であり、40mol%〜95mol%であることが好ましい。45mol%〜70mol%であることがより好ましく、50mol%〜70mol%であることが更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースアシレートフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であればセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
重縮合エステルには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
具体的には、芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、さらに好ましくはテレフタル酸残基を含む。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースエステルフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステルのジカルボン酸残基中のテレフタル酸残基の含有量は40mol%〜95mol%であることが好ましく、45mol%〜70mol%であることが好ましく、50mol%〜70mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルには混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
ジカルボン酸残基は、平均炭素数が5.5以上10.0以下であることが好ましく、5.5〜8.0であることがより好ましく、5.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジオールの平均炭素数が7.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジオールの平均炭素数が2.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。ジオール残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、セルロースエステルとの相溶性の点で好ましい。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジオール残基は−O−R−O−である。
重縮合エステルを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、少なくとも脂肪族ジオールを含む。
重縮合エステルには平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオール残基を含む。好ましくは平均炭素数が2.5以上4.0以下の脂肪族ジオール残基である。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースエステルとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
本発明に用いられる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
重縮合エステルには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
ジオール残基はエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基、及び1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基又は1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
脂肪族ジオール残基のうち、エチレングリコール残基が20mol%〜100mol%であることが好ましく、50mol%〜100mol%であることがより好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
前記重縮合エステルの末端はより好ましくは封止がなくジオール残基のままか、酢酸又はプロピオン酸による封止がさらに好ましい。
前記重縮合エステルの両末端は封止、未封止を問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
前記重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5以上8.0以下であり、縮合体の両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。
縮合体の両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
前記重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、縮合体の両末端はモノカルボン酸残基である重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
即ち封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明の重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
本発明に使用可能な重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法等を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50以上190以下であることが好ましく、50以上130以下であることがさらに好ましい。
本発明に用いる第1又は第2位相差膜の一例は、Reの波長依存性が逆分散性であり、またRthについても波長依存性が逆分散性の位相差膜である。Re及びRthが逆分散性の位相差膜は、特開2009−223305号公報の[0040]〜[0066]に記載の一般式(A)で表される液晶化合物の少なくとも一種を含有するセルロースアシレート組成物から作製することができる。但し、主成分の種類や製造条件によっては、前記添加剤を添加しなくても、レターデーションが逆分散性を示すフィルムを作製可能な場合もある。
本発明に用いる第1又は第2位相差膜としての条件を満足するセルロースアシレートフィルムを作製するために、セルロースアシレートフィルム中に、Rth発現剤を添加することができる。ここで、「Rth発現剤」とはフィルムの厚み方向に複屈折を発現する性質を有する化合物である。
前記Rth発現剤としては、250nm〜380nmの波長範囲に吸収極大を有する分極率異方性の大きい化合物が好ましい。前記Rth発現剤としては、下記一般式(I)で表される化合物を特に好ましく使用できる。
高温多湿環境下において、セルロースアシレートフィルム中の添加剤がフィルム外に析出や揮発することを防止するために、少なくとも1種の脂肪族多価アルコールエステルを添加してもよい。脂肪族多価アルコールエステルは、脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸とのエステルである。
脂肪族多価アルコール:
前記脂肪族多価アルコールは、下記一般式(V)で表される。
(V) R1−(OH)m
式中、R1はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数を表し、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表し、mは2〜20が好ましい。
前記脂肪族多価アルコールエステル形成に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができるが、セルロースエステルフィルムの透湿性向上、保留性向上の観点から、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いることが好ましい。
具体的には、使用可能なモノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、及びアラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が含まれる。これらは更に置換基を有していてもよい。
前記芳香環としては、芳香族炭素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、p−テルフェニル環、ジフェニルメタン環、トリフェニルメタン環、ビベンジル環、スチルベン環、インデン環、テトラリン環、アントラセン環、フェナントレン環等)や芳香族複素環、例えば、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、1,2,3−オキサジアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、s−トリアジン環、ベンゾフラン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、キノリン環及びイソキノリン環等が挙げられる。
前期シクロアルキル環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等が挙げられる。
前記第1又は第2位相差膜として利用するセルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがよりさらに好ましい。
前記第1又は第2位相差膜として利用するセルロースアシレートフィルムは、マット剤として微粒子を含有していてもよい。本発明に使用可能な微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)35頁〜36頁に詳細に記載されており、好ましく用いることができる。
前記第1又は第2位相差膜として利用するセルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を超えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びトリベンジルアミン(TBA)である。
前記第1及び第2位相差膜として利用可能なセルロースアシレートフィルム製造方法の好ましい例は、ドープを支持体上に流延し溶媒を蒸発させて製膜する製膜工程、及びその後、当該製膜したフィルムを延伸する延伸工程、さらにその後得られたフィルムを乾燥する乾燥工程、さらに、該乾燥工程終了後、150〜200℃の温度で1分以上熱処理する工程を含む製造方法である。以下、各工程について説明する。
製膜は、公知のセルロースエステルフィルムを作製する方法等で広く採用される製膜工程と同様に実施することができ、ソルベントキャスト法による製膜を実施するのが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を製膜する。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及びCOO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
ここで、本発明における添加剤とは、本発明の光学フィルムの諸機能の向上等を目的として添加される成分であり、セルロースエステルに対し、1質量%以上の範囲で含まれている成分をいう。すなわち、不純物や残留溶媒等は、本発明における添加剤ではない。
本発明では、特に、添加剤の含量が、セルロース系樹脂に対して、4〜30質量%であることが好ましく10〜25質量%であることがより好ましい本発明では、ΔSPの値を所定の範囲とする限り、2種類以上の添加剤を用いることができる。2種類以上用いることにより、それぞれの添加剤により、光学特性、フィルム弾性率、フィルム脆性や、ウェブハンドリング適性を両立できるというメリットがある。
共流延を実施してもよい。具体的には、同時又は逐次で多層流延製膜を実施することができる。特に第2位相差膜用のセルロースアセテートフィルムの作製に適する。
すなわち、上記ドープを、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースエステル液を流延してもよい。複数のセルロースエステル溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースエステルを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースエステル溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースエステル溶液の流れを低粘度のセルロースエステル溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースエステル溶液を同時に押出すセルロースエステルフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロール群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量のさらに好ましい範囲は70質量%以下であり、より好ましくは10質量%〜50質量%、特に好ましくは12質量%〜35質量%である。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
延伸倍率は、1.05〜1.5であることが好ましく、1.15〜1.4であることがより好ましい。
また、延伸は縦方向に行っても横方向に行っても両方向に行ってもよく、好ましくは少なくとも縦方向に行う。本発明に使用可能なセルロースアシレートフィルムの一例は、幅方向に延伸されて得られたものであり、該延伸倍率が、搬送方向に対して垂直な方向に5%以上100%以下であることが好ましい。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率Nx、Ny、Nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。例えば流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大きすぎると、Nzの値が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、例えばテンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。さらに、互いに直交する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。光学フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなる。光学フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ1.2〜2.0倍、0.7〜1.0倍の範囲とすることが好ましい。ここで、一方の方向に対して1.2〜2.0倍に延伸し、直交するもう一方を0.7〜1.0倍にするとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して0.7〜1.0倍の範囲にすることを意味している。
したがって、一方向のみに力を与えて続けて延伸すると直角方向の幅は縮まってしまうが、これを幅規制せずに縮まる量に対して、縮まり量を抑制していることを意味しており、その幅規制するクリップやピンの間隔を延伸前に対して0.7〜1.0倍の範囲に規制していることを意味している。このとき、長手方向には、幅手方向への延伸によってフィルムが縮まろうとする力が働いている。長手方向のクリップあるいはピンの間隔をとることによって、長手方向に必要以上の張力がかからないようにしているのである。ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
前記製造方法では、乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
このような処理によりフィルムの収縮率を小さくできる理由は明確ではないが、延伸工程にて延伸される処理を経たフィルムにおいては、延伸方向の残留応力が大きいため、熱処理によって前記残留応力が解消されることにより、熱処理温度以下の領域での収縮力が低減されるものと推定される。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことがさらに好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことがさらに好ましい。
熱処理温度が200℃を超えて長時間加熱すると、フィルム中に含まれる可塑剤の飛散量が増大するため問題となる場合がある。
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
前記セルロースアシレートフィルムを、位相差膜としての機能に加えて、偏光膜の透明保護膜としても機能させる場合等、偏光子との接着性を改善するために、セルロースアシレートフィルムを表面処理することが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理を実施する。酸処理又はアルカリ処理を実施することが好ましく、アルカリ処理を実施することがさらに好ましい。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースエステルフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースエステルに対する鹸化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
セルロースエステルフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1乃至3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースエステルフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
前記第1及び第2位相差膜として利用されるセルロースアシレートフィルムの膜厚は20μm〜180μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましく、20μm〜80μmがさらに好ましい。膜厚が20μm以上であれば偏光板等に加工する際のハンドリング性や偏光板のカール抑制の点で好ましい。また、前記セルロースアシレートフィルムの膜厚むらは、搬送方向及び幅方向のいずれも0〜2%であることが好ましく、0〜1.5%がさらに好ましく、0〜1%であることが特に好ましい。
前記セルロースアシレートフィルムのヘイズは、0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらに好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、ヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。
本発明の液晶表示装置には、前記第1及び第2位相差膜として用いられるポリマーフィルムを、直線偏光膜(偏光膜フィルム)と一体化させた偏光板を用いることができる。前記偏光板は、前記位相差膜と直線偏光膜(以下、単に「偏光膜」、「偏光フィルム」という場合は「直線偏光膜」をいうものとする)とを積層することによって作製することができる。前記位相差膜として用いるセルロースアシレートフィルムは、直線偏光膜の保護膜を兼ねていてもよい。
ポリマーフィルムは、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
(位相差膜B)
WO2007/125764号公報に記載の方法(セルロースエステルフィルム108)により、位相差膜を作製し、これを位相差膜Bとして用いた。
(位相差膜D及びG)
特開2009−223305号公報の実施例に記載の方法に従って、位相差膜Dを作製し、これを位相差膜Dとして用いた。また、同公報の実施例に記載の方法に従って位相差膜Gを作製し、これを位相差膜Gとして用いた。
(位相差膜F)
位相差膜Fとしては、富士フイルム製TD80ULを用いた。
《セルロースアシレートの調製》
下記表に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中のセルロースアシレートの種類における、他の置換基Bは、アセチル基以外の、例えばブチリル基、プロピオニル基等のアシル基である。
・セルロースアシレートドープA
セルロースアシレート樹脂:表2中のC−2 100質量部
添加剤A:表1中に記載のA−3 11質量部
化合物A 4質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
セルロースアシレートドープAの調製において、C−2の代わりにC−4を用い、化合物Aを4質量部添加しなかった以外は、セルロースアシレートドープAと同様の方法によりセルロースアシレートドープBを調製した。
図4に示すように、走行する流延バンド85の上に流延ダイ89から、内部層(コア層)としてドープB、コア層の両側の表面層(スキン層)としてドープA、即ち3種類(A/B/A)のドープを共に流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することにより内部層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚t1〜t3は内部層が55μm、表面層がそれぞれ2.5μmとなるように同時多層流延を行い流延膜70を形成させた。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより140℃の熱風を当てつつ幅方向に30%延伸を行った。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、さらに120℃から150℃で乾燥し巻き取り、これにより位相差膜Aを得た。
位相差膜Aにおいて、添加剤Aおよび化合物Aの添加量を下記表に示した添加量に変えた以外は位相差膜Aと同様にして、位相差膜H〜Lをそれぞれ作製した。
まず、得られた各位相差膜について、試料フィルムを1cm幅×10cm長(測定方向(MD又はTD)が10cmになるようにする)に切り出した。これをエリプソ測定装置(M 150、商品名、日本分光製)にセットし、長手方向(10cm長)に沿って100g、200g、300g、400g及び500gの荷重をかけながら、順次25℃・相対湿度60%において632.8nmの光でそれぞれReを測定した。次いで、横軸に応力(荷重をフィルム断面積で割った値(kgf/cm2))、縦軸にRe変化(nm)をプロットし、この傾きから光弾性定数(cm2/kgf)を求めた。
前述の方法により求めた。
液晶表示装置を暗室内で黒表示時の色変化を、以下の基準で評価をした。
○:全ての極角方向、方位角方向で色味付きがほとんど観察されない。
△:極角60度方向で、液晶セルの法線を中心として360度回転させた時、やや色味付きが観察される。
×:極角60度方向で、液晶セルの法線を中心として360度回転させた時、色味付きが観察される。
暗室内で黒表示時の液晶表示装置を極角60°且つ方位角45°方向から観察した時の光漏れ(Fresh斜め光漏れ)を、以下の基準で官能評価を行った。
○:ほとんど光漏れが視認されない。
△:僅かに光漏れが視認される。
×:光漏れが視認される。
温度50℃・相対湿度60%の環境下で250時間連続点灯した際の(正面からの)光漏れの有無を確認し、以下の基準で官能評価を行った。
○:光漏れが全くない。
△:全体の5%以上10%未満の面積で光漏れがある。
×:全体の10%以上の面積で光漏れがある。
これらの結果を、下記表に示す。
即ち、本発明の実施例のVAモード液晶表示装置は、所定の条件を満足する第1及び第2の位相差膜を所定の関係で配置することで、斜め方向の光漏れ及び色変化が軽減されているのみならず、正面方向の経時による光漏れの上昇も軽減されていることが理解できる。
上記実施例1で作製した位相差膜A,B,D,及びFについて、上記した方法で、TD方向及びMD方向の弾性率をそれぞれ測定し、平均値Eaveを算出した。結果を下記表に示す。
3 液晶セル下側基板
5 液晶層(液晶分子)
8a 表示面側偏光膜(第2偏光子)
8b バックライト側偏光膜(第1偏光子)
9a、9b 偏光膜の吸収軸
10a 表示面側位相差膜(第2位相差膜)
10b バックライト側位相差膜(第1位相差膜)
P1、P2 偏光板
LC 液晶セル
BL バックライト
70 流延膜
85 流延バンド
86a 回転ローラ
89 流延ダイ
120 内部層用ドープ
121 表面A層用ドープ
122 表面B層用ドープ
120a 内部層
121a 表面A層
122a 表面B層
t1 内部層膜厚
t2 表面A層膜厚
t3 表面B層膜厚
Claims (5)
- バックライト、液晶セル、該液晶セルと前記バックライトとの間に配置された第1偏光子、前記液晶セルに対して前記第1偏光子と反対側に配置された第2偏光子、前記第1偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第1位相差膜、及び前記第2偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第2位相差膜を有する液晶表示装置であって、以下の条件を充たす液晶表示装置:
1)第1位相差膜が、セルロースアシレート系ポリマーであって、アセチル、プロピオニル基及びブチル基から選ばれる少なくとも2種のアシル基を有するセルロースアシレート系ポリマーを主成分とする膜であること;
2)第2位相差膜が、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.00以上2.70未満であるセルロースアセテートを主成分とするコア層と、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.70以上であるセルロースアセテートを主成分とするスキン層とからなる積層フィルムであること;
3)下記(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、前記第1位相差膜の有する値が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
4)前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
{(CTD)2+(CMD)2}(1/2) (式1)
式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。 - 前記第1及び第2位相差膜がそれぞれ、下記式(I)及び(II)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置:
(I) 30≦Re(548)≦80
(II)70≦Rth(548)≦140
ここで、Re(λ)及びRth(λ)はそれぞれ、波長λ[nm]で測定した面内レターデーション[nm]及び膜厚方向レターデーション[nm]である。 - 前記第1及び第2位相差膜の有する弾性率に関する値、TD方向とMD方向の弾性率の平均値E1ave(Mpa)及びE2ave(Mpa)が、下記(式2)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置:
−500<E1ave−E2ave<300 (式2)
式中、E1ave(Mpa)は第1位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表し、E2ave(Mpa)は第2位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表す。 - 前記第1及び第2位相差膜の双方が、Re及びRthについて逆分散性を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
- VAモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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