JP5509031B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、偏光板及び位相差膜を含む液晶表示装置、特にVA(vertically aligned)モードの液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、VAモードによる広視野角液晶表示装置が実用化されるに至り、テレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
VAモード液晶表示装置は、他の液晶表示モードと比較して一般にコントラストが高いというメリットがあるが、視角によってコントラスト及び色味の変化が大きいという問題もある。この問題を解決するために、液晶セルの上下に偏光板をその吸収軸を互いに直交させて配置し、さらに、偏光板のそれぞれと液晶セルとの間に、光学的に2軸性の位相差膜を配置することにより、視角によるコントラスト低下を低減できることが知られている(例えば、特許文献1)。また、液晶セルの上下それぞれに、光学的に2軸性で光学異方性が等しい位相差膜を備えた液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献2)。また、前記位相差膜に要求される光学特性を満足するポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート系ポリマーフィルム及びノルボルネン系ポリマーフィルムが提案されている(例えば、特許文献3及び4)。
このVAモード液晶表示装置の光学補償方式では、同一のフィルムを上下に配置して光学補償しているので、大量生産した場合コスト上のメリットがある。
さらに環境湿度による表示特性変動が小さい表示パネルとして、特定の位相差膜を表示面側に配置する技術が開示されている。(例えば、特許文献5)。
特許第3330574号 特開2004−341561号公報 特開2004−198904号公報 特開2005−43740号公報 特開2009−223305号公報
近年、画面サイズの大型化に伴い、環境温度に依存した表示特性の変動がより小さい表示パネルが求められている。
従って、本発明は、視野角特性に優れるとともに、環境温度に依存した表示特性の変動がより少ない液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置を提供することを課題とする。
本発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、バックライト側に配置される位相差膜と比較して、光弾性係数が小さい位相差膜を表示面側に配置することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] バックライト、液晶セル、該液晶セルと前記バックライトとの間に配置された第1偏光子、前記液晶セルに対して前記第1偏光子と反対側に配置された第2偏光子、前記第1偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第1位相差膜、及び前記第2偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第2位相差膜を有する液晶表示装置であって、以下の条件を充たす液晶表示装置:
1)第1位相差膜が、セルロースアシレート系ポリマーであって、アセチル、プロピオニル基及びブチル基から選ばれる少なくとも2種のアシル基を有するセルロースアシレート系ポリマーを主成分とする膜であること;
2)第2位相差膜が、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.00以上2.70未満であるセルロースアセテートを主成分とするコア層と、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.70以上であるセルロースアセテートを主成分とするスキン層とからなる積層フィルムであること;
3)下記(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、前記第1位相差膜の有する値が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
4)前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
{(CTD2+(CMD2(1/2) (式1)
式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。
[2] 前記第1及び第2位相差膜がそれぞれ、下記式(I)及び(II)を満たすことを特徴とする[1]の液晶表示装置:
(I) 30≦Re(548)≦80
(II)70≦Rth(548)≦140
ここで、Re(λ)及びRth(λ)はそれぞれ、波長λ[nm]で測定した面内レターデーション[nm]及び膜厚方向レターデーション[nm]である。
[3] 前記第1及び第2位相差膜の有する弾性率に関する値、TD方向とMD方向の弾性率の平均値E1ave(Mpa)及びE2ave(Mpa)が、下記(式2)を満たすことを特徴とする[1]又は[2]の液晶表示装置:
−500<E1ave−E2ave<300 (式2)
式中、E1ave(Mpa)は第1位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表し、E2ave(Mpa)は第2位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表す。
[4] 前記第1及び第2位相差膜の双方が、Re及びRthについて逆分散性を示すことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] VAモードであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
本発明によれば、視野角特性に優れるとともに、環境温度に依存した表示特性の変動が少ない液晶表示装置を提供することができる。
本発明の液晶表示装置の一例の概略模式図である。 本発明の液晶表示装置の光学補償を説明するために用いた図面である。 本発明の液晶表示装置の光学補償を説明するために用いた図面である。 実施例において位相差膜Aの作製に利用した流延装置の一部の断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re、Rth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005509031
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明において、位相差膜等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=548nmでの値である。また、本明細書中、Re及びRth等の光学特性について、測定時の環境(温度及び湿度)を特定していない場合は、常温・常圧で測定した光学特性であることを意味するものとする。また、所定の温度及び相対湿度の環境下におけるRe及びRthは、該環境下に測定対象試料を2時間以上放置した後に測定するものとする。差を求める場合も、それぞれの環境下に上記時間以上放置した後、それぞれの環境下でのRe及びRthを測定し、差を求めるものとする。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
まず、本発明の液晶表示装置の実施形態を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
図1のVAモード液晶表示装置は、液晶セルLC(表示面側基板1、バックライト側基板3、及び液晶層5、からなる)と、液晶セルLCを挟持して配置される一対の表示面側偏光板P1及びバックライト側偏光板P2とを有する。なお、ポリビニルアルコールフィルム系偏光膜からなる偏光子は、通常、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板として液晶表示装置に組み込まれるのが一般的であるが、図1では、外側に配置される保護フィルムは省略した。偏光板P1及びP2は、それぞれ偏光膜8a(第2偏光膜)及び偏光膜8b(第1偏光膜)を有し、偏光膜8a及び8bは、その吸収軸9a及び9bを互いに直交方向にして配置されている。液晶セルLCはVAモードの液晶セルであり、黒表示時には、図1に示す通り、液晶層5はホメオトロピック配向になる。基板1及び3は、それぞれ内面に、配向膜(図示せず)と電極層(図示せず)を有し、さらにいずれか一方の内面には、カラーフィルタ層(図示せず)を有する。
液晶セルLCの基板1と偏光膜8aとの間、及び液晶セルLCの基板3と偏光膜8bとの間にはそれぞれ、位相差膜10a(第2位相差膜)及び10b(第1位相差膜)がそれぞれ配置されている。位相差膜10a及び10bは、所定のRe(550)及びRth(550)を有し、吸収軸9a及び9bが直交配置からずれる斜め方向において、黒表示時に生じる光漏れを軽減する作用がある。図1の液晶表示装置は、位相差膜10a及び10bは、バックライト側に配置される位相差膜10b(第1位相差膜)の光弾性係数に関わる値が、表示面側に配置されている位相差膜10a(第2位相差膜)の値と比較して、大きくなっていて、且つバックライト側に配置される位相差膜10b(第1位相差膜)の透湿度が、表示面側に配置されている位相差膜10a(第2位相差膜)の透湿度より大きくなっている。この構成により、表示特性の変動が軽減されることを、本発明者が種々検討の結果、見出した。なお、「光弾性係数に関する値」については、後述する。
位相差膜10a及び10bの弾性率は、さらに後述する(式2)を満足している、即ち、バックライト側に配置される位相差膜10bのTD方向とMD方向の弾性率の平均値E1aveと、表示面側に配置される位相差膜10aのTD方向とMD方向の弾性率の平均値E2aveとの差が、−500より大きく300より小さいのが好ましい。その差が、−500より大きいと、長時間点灯させた後も光漏れなどが発生し難く、ムラのない画像を表示できるので好ましい。但し、その差が大きすぎると、後述する不都合が生じるので、その差は300未満であるのが好ましい。(式2)については、後述する。
従来、液晶セルを中心として対称的な位置に配置された、光学異方性が同等の2つの位相差膜のRe及びRthによって、液晶セルLCの黒表示時の斜め方向に生じる複屈折性を補償する態様では、その偏光状態の動きを、ポアンカレ球上の動きとして模式的に示すと、図2のようになる。なお、ポアンカレ球は偏光状態を記述する三次元マップで、球の赤道上は楕円率が0の直線偏光の偏光状態を表している。図2は、ポアンカレ球を、S2軸の正の方向から見た図である。図2中の点(i)は、黒表示時に斜め方向から入射した光が表示面側偏光膜を通過して直線偏光となった、その偏光状態を示していて、偏光状態点(i)が、S1軸上の消光点である偏光状態点(ii)に変換されれば、液晶表示装置に斜め入射した際のコントラストの低下はなくなる。RLは液晶セルの上下に対照的に配置された位相差膜を通過する際の光の偏光状態の軌跡を示し、及びLCは液晶セルを通過する際の光の偏光状態の軌跡を示している。従来は、等しい光学異方性の位相差膜を上下に対照的に配置したVAモード液晶表示装置では、図2に示すように、点対照の軌跡(図2中矢印RL)によって、入射光の偏光状態を変換して、黒表示時の斜め方向の光漏れを軽減していた。生産コストの観点及び図2に示す点対称な偏光状態の変換を可能にするという観点から、従来、一つの位相差膜を所定の大きさに裁断した2枚の等しい位相差膜を一枚ずつ、バックライト側及び表示面側に配置するのが一般的であった。即ち、従来、図2に示す様な光学補償機構に利用される2枚の位相差膜は、光学異方性の観点のみならず、材料の観点でも相等しいものが好ましいとされていた。
一方、本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜(図1中では位相差膜10b)と、表示面側に配置される第2位相差膜(図1中では位相差膜10a)とでは、上記した通り、後述の(式1)から算出される光弾性係数に関する値が互いに異なり、且つ透湿度が互いに異なっている。これらの性質は、フィルムの原料に影響されることが大きく、従って、本発明では、第1位相差膜及び第2位相差膜として、後述する(I)及び(II)を満足するために(好ましくはさらに(式2)を満足するために)、主成分が互いに異なるポリマーフィルムを利用するのが好ましい。ところで、互いに異なる主成分を含有するポリマーフィルム等によって、互いに等しい光学異方性を達成するのは、困難である。従って、本発明の液晶表示装置は、図2中矢印RLで示すような、点対称な軌跡によって、入射光の偏光状態を変換する補償機構を利用する態様であってもいいことは勿論であるが、一方、位相差膜の製造容易性の観点では、互いに異なる光学異方性の2枚の位相差膜(図1中の位相差膜10a及び10b)によって、図3中の矢印RLa及びRLbで示す非対称な軌跡によって、入射光の偏光状態を変換する補償機構を利用する態様であるのが好ましい。VAモード液晶表示装置の光学補償の態様として公知の、AプレートとCプレートとの組合せによる補償機構を利用する態様であってもよい。但し、Cプレートは、その光学特性を満足するポリマーフィルムを作製するのが困難である。したがって、製造適性の観点では、本発明の液晶表示装置は、図3に示す様な非対称な軌跡による光学補償を可能とする第1及び第2位相差膜(図1中の位相差膜10b及び10a)を利用するのが好ましく、そのためには、第1及び第2位相差膜はそれぞれ、下記式(I)及び(II)を満足しているのが好ましく、
(I) 30nm≦Re(548)≦80nm
(II) 70nm≦Rth(548)≦140nm
さらに、下記式(I)’及び(II)’を満足しているのがより好ましい。
(I)’ 45nm≦Re(548)≦65nm
(II)’ 100nm≦Rth(548)≦140nm
ここで、Re及びRthの波長分散性には、入射光の波長が短波長なほどその値が大きくなる順分散性、入射光の波長が長波長なほどその値が大きくなる逆分散性、及び入射光の波長によらず一定の3つに分類される。本発明においては、第1位相差膜及び第2位相差膜のRe及びRthのそれぞれの波長分散性は、いずれも以下のようなものが好ましい。即ち、位相差領域を通過することによる偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、該位相差領域の光学特性、Nz値(具体的にはRth/Reに0.5を加えた値)に応じて決定される特定の軸の回りに、特定の角度回転させることで表される。該回転角度の大きさ(回転量)は、通過した位相差領域の位相差に比例し、且つ入射光の波長の逆数に比例するので、例えば、Reが波長に依存せずフラットの位相差膜を用いると、短波長の光ほど大きく回転し、長波長の光ほど小さく回転する。その結果、可視光域の中間波長であるG光(550nm程度)で消光点となるように光学特性を最適化したとしても、それよりも長波長なR光(650nm程度)や短波長なB光(450nm程度)では、偏光状態を消光点へ変換することができず、斜め方向においてカラーシフトが生じる。このカラーシフトを軽減するためには、第1及び第2位相差膜の双方が、Re及びRthについて逆分散性を示すのが好ましい。
本発明は、図1に示す様な、VAモード液晶表示装置の態様が好ましい。VAモードの中でも、一画素を複数の領域に分割するマルチドメインと呼ばれる構造にすると上下左右の視野角特性が平均化され、表示品質が向上するので好ましい。VAモード液晶表示装置では、従来、液晶層のΔnd(Δn:液晶の複屈折性、d:層厚み)は350nm程度である。本発明においても、Δndは従来と同様の値であってもよいし、薄型化の要請に応えるために、Δndを250〜345nm程度にしてもよい。
本発明の液晶表示装置は、駆動方法により、TFT(Thin Film Transistor)やMIM(Metal Insulator Metal)のような3端子又は2端子反導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置と、時分割駆動と呼ばれるSTN型に代表されるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様があり、本発明はいずれにおいても有効である。
以下、本発明の液晶表示装置に用いられる種々の部材について詳細に説明する。
[第1及び第2位相差膜の性質]
本発明では、下記(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、バックライト側に配置される第1位相差膜の有する値が、表示面側に配置される第2位相差膜の有する値より大きいという条件;及び
及び前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であるという条件;
を満足する。本発明では、この条件を満足する第1位相差膜及び第2位相差膜を組合せて用い、所定の配置とすることで、環境温度に依存する表示特性の変動を軽減している。
{(CTD2+(CMD2(1/2) (式1)
式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。
(光弾性係数)
本発明の液晶表示装置に用いられる第1及び第2の位相差膜は、(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、バックライト側に配置される第1位相差膜の有する値が、表示面側に配置される第2位相差膜の有する値より大きいという条件を満足する。第1の位相差膜と第2の位相差膜との(式1)の値の差は、正面(表示面に対して法線方向)光漏れが経時で大きくなるのを軽減するという観点では、3以上であるのが好ましく、5以上であるのが好ましい。上限値については特に制限はない。第1及び第2の位相差膜は、上記条件を満足することを前提に、機械方向(以下、「MD方向」という)の光弾性係数、及び機械方向に垂直な方向(以下、「TD方向」という)の光弾性係数がともに、5.0×10-112/N以下であり、かつ、MD方向の光弾性係数/TD方向の光弾性係数の比が0.80〜1.20であることが好ましい。
より好ましくは、MD方向の光弾性係数およびTD方向の光弾性係数がともに4.0×10-112/N以下であり、かつ、MD方向の光弾性係数/TD方向の光弾性係数の比が0.82〜1.18である。
さらに好ましくは、MD方向の光弾性係数およびTD方向の光弾性係数がともに3.0×10-112/N以下であり、かつ、MD方向の光弾性係数/TD方向の光弾性係数の比が0.84〜1.16である。
具体的な測定方法としては、第1及び第2の位相差膜として用いられるフィルムの試料片(10mm×100mm)を準備し、その長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出することができる。
(透湿度)
本発明の液晶表示装置に用いられる第1及び第2の位相差膜の透湿度は、第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であるという条件を満足する。第1の位相差膜と第2の位相差膜との透湿度の差は、正面光漏れが経時で大きくなるのを軽減するという観点では、500g/m2・24h以上であるのが好ましく、1000g/m2・24h以上であるのが好ましい。上限値については特に制限はない。第1及び第2の位相差膜は、上記条件を満足することを前提に、400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。なお、本明細書において、透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算した値をいうものとする。透湿度が2000g/m2・24hを超えると、フィルムのRe値及びRth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、例えは、第1及び第2の位相差膜が、セルロースアシレートフィルム等のポリマーフィルム上に光学異方性層を積層して作製される位相差フィルムであると、Re値及びRth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。このような位相差フィルムや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす場合がある。また、第1及び第2の位相差膜の透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、該膜により接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる場合がある。
第1及び第2の位相差膜の膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度÷実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、フィルム試料70mmφを25℃、90%RHおよび60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK709007、東洋精機(株))にて、JIS Z 0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量/調湿前質量で求めることができる。
(弾性率)
更に、本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜のTD方向とMD方向の弾性率の平均値E1ave(Mpa)が、表示面側に配置される第2位相差膜の同平均値E2ave(Mpa)に近い値であると、長時間点灯した場合にも、光漏れなどがなく、ムラのない画像を表示できるので好ましい。液晶表示装置の電源を長時間点灯していると、バックライトの熱によって液晶表示装置内部の温度が上昇するが、バックライトからの距離の違いにより、視認側とバックライト側とでは温度に差が生じる。一般的には、ポリマーフィルム等からなる位相差膜は、熱によって変形する傾向があるが、視認側及びバックライト側に温度差があると、それぞれに配置されている位相差膜の変形量にも差が生じる。本発明者が鋭意検討した結果、バックライト側に配置される第1位相差膜の弾性率を、表示面側に配置される第2位相差膜より大きくすると、位相差膜の変形量の違いに起因する光漏れを軽減できるとの知見が得られた。一方、その差(E1ave−E2ave)が大き過ぎると、バックライト側位相差膜の変形量が視認側位相差膜の変形量より大きくなり、再び光漏れが増加してしまうので好ましくない。この点を考慮すると、E1ave−E2aveは300未満であるのが好ましく、即ち、下記(式2)
−500<E1ave−E2ave<300 (式2)
を満足するのが好ましく、下記(式2)’
−500<E1ave−E2ave<0 (式2)’
を満足するのがより好ましい。
弾性率を上記の式の範囲となるように調整することにより、前記条件を満足する第1及び第2位相差膜を用いた液晶表示装置の表示特性の変動をより軽減することができる。
なお、フィルム試料の弾性率は、フィルム試料10mm×150mmを、温度25℃・相対湿度60%で2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ―R2(東洋精機製))で、チャック間距離50mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で測定することができる。MD方向の弾性率はMD150mm、TD10mmの試料をMD方向に引っ張ることにより測定し、TD方向の弾性率はMD10mm、TD150mmの試料をTD方向に引っ張ることにより測定し、それらの値から、平均値E1ave及びE2aveが算出できる。
[第1及び第2位相差膜の材料]
本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜は、Re及びRthの温度依存性及び弾性率が比較的大きく、及び表示面側に配置される第2位相差膜は、Re及びRthの温度依存性及び弾性率が比較的小さいのが好ましい。この様に、Re及びRthの温度依存性及び弾性率の点で互いに異なる第1及び第2位相差膜は、主成分(本明細書では、「主成分」とは、全原料中に占める割合が60質量%以上の成分をいうものとする)が互いに異なる異種のポリマーフィルムからそれぞれ作製する。
(主成分)
本発明では、バックライト側に配置される第1位相差膜が、アセチル基、及びプロピオニル基及び/又はブチリル基を有するセルロースアシレートを主成分とするフィルムを用い、第2位相差膜にセルロースアセテートを主成分とするフィルムを用いるのが好ましい。
また、第1位相差膜及び第2位相差膜にアシル置換度が互いに異なるセルロースアシレートを主成分とするフィルムを用い、第1位相差膜にアシル置換度が高いセルロースアシレートを主成分とするフィルムを用いるのも好ましい。
以下、これらのポリマーフィルムについて、詳細に説明する。
バックライト側に配置される第1位相差膜の主成分材料としては、アセチル基、及びプロピオニル基及びブチリル基から選ばれる少なくとも2種以上のアシル基を有するセルロースアシレート系ポリマーが好ましい。アセチル基と、プロピオニル及び/又はブチリル基とを有するセルロースアシレート系ポリマーが好ましく;アセチル基の置換度が1.0〜2.97で、プロピオニル及び/又はブチリル基の置換度が0.2〜2.5のセルロースアシレート系ポリマーがより好ましい。
例えば、特開2009−223305号公報、WO2007/125764号公報に記載されたポリマーを主成分として含むフィルムが好ましい。従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を主成分として用いるのも好ましい。
特に好ましくは、WO2007/125764号公報に記載されたセルロースアセテートプロピオネートが挙げられる。
ここで、セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度(アシル化度)は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
表示面側に配置される第2位相差膜は、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.00以上2.70未満であるポリマーを主成分とするコア層と、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.70以上であるポリマーを主成分とするスキン層とからなる積層フィルムからなるのが好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
本発明において、第1又は第2位相差膜として用いるセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造されるのが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の記載を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等に記載の例を参考にすることができる。
なお、前記セルロースアシレートフィルムをソルベントキャスト法で作製する場合は、下記の液晶化合物等の添加剤は、セルロースアシレート組成物の溶液中に添加される。例えば、下記の液晶化合物等を有機溶媒に溶解した溶液を、セルロースアシレート組成物の溶液に添加してもよい。
(添加剤)
第2位相差膜に用いるセルロースアセテートを主成分とするフィルムが、所望の光学特性を満足するために、下記の材料を含有するセルロースアセテート組成物からセルロースアセテートフィルムを作製するのが好ましい。
《重縮合エステル》
本発明では、光学特性の発現のために、少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸残基と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸残基とを含む平均炭素数が5.5以上10.0以下のジカルボン酸残基と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5以上8.0以下の脂肪族ジオール残基とを含む重縮合エステルを用いることがさらに好ましい。
脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数の計算は、ジカルボン酸残基とジオール残基で個別に行う。
ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、ジオール残基の場合も同様で、脂肪族ジオール残基の平均炭素数は、脂肪族ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
重縮合エステルの数平均分子量は500〜2000であることが好ましく、600〜1500がより好ましく、700〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースエステルフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなる。また、2000以下であればセルロースエステルとの相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
前記重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
本発明にかかる芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物としてのジカルボン酸は、炭素数の平均が5.5以上10.0以下のジカルボン酸である。より好ましくは5.6以上8以下である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースエステルへの相溶性が優れ、セルロースエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
前記重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
前記芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明に用いる重縮合エステルの芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であり、40mol%〜95mol%であることが好ましい。45mol%〜70mol%であることがより好ましく、50mol%〜70mol%であることが更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースアシレートフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であればセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
本発明に使用可能な芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
重縮合エステルには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
具体的には、芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、さらに好ましくはテレフタル酸残基を含む。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースエステルフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステルのジカルボン酸残基中のテレフタル酸残基の含有量は40mol%〜95mol%であることが好ましく、45mol%〜70mol%であることが好ましく、50mol%〜70mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルには混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
ジカルボン酸残基は、平均炭素数が5.5以上10.0以下であることが好ましく、5.5〜8.0であることがより好ましく、5.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジオールの平均炭素数が7.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジオールの平均炭素数が2.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。ジオール残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、セルロースエステルとの相溶性の点で好ましい。
本発明において、ジカルボン酸は2種又は3種を用いることが好ましい。2種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを1種ずつ用いることが必要であり、3種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸を1種と芳香族ジカルボン酸を2種又は脂肪族ジカルボン酸を2種と芳香族ジカルボン酸を1種用いることができる。ジカルボン酸残基の平均炭素数の値を調整しやすく、かつ芳香族ジカルボン酸残基の含有量を好ましい範囲とすることができ、偏光子の耐久性を向上し得るためである。
前記脂肪族ジオール残基は、脂肪族ジオールとジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジオール残基は−O−R−O−である。
重縮合エステルを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、少なくとも脂肪族ジオールを含む。
重縮合エステルには平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオール残基を含む。好ましくは平均炭素数が2.5以上4.0以下の脂肪族ジオール残基である。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースエステルとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
本発明に用いられる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。1,2−プロパンジオール、又は1,3−プロパンジオールを用いることにより重縮合エステルの結晶化を防止することができる。
重縮合エステルには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
ジオール残基はエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基、及び1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基又は1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
脂肪族ジオール残基のうち、エチレングリコール残基が20mol%〜100mol%であることが好ましく、50mol%〜100mol%であることがより好ましい。
前記重縮合エステルの末端は封止がなくジオールあるいはカルボン酸のままであるか、さらにモノカルボン酸類又はモノアルコール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
前記重縮合エステルの末端はより好ましくは封止がなくジオール残基のままか、酢酸又はプロピオン酸による封止がさらに好ましい。
前記重縮合エステルの両末端は封止、未封止を問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
前記重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5以上8.0以下であり、縮合体の両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。
縮合体の両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
前記重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、縮合体の両末端はモノカルボン酸残基である重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
即ち封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明の重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
以下の表に本発明に使用可能な重縮合エステルの具体例A−1〜A−31、及びB−1〜B−10を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005509031
本発明に使用可能な重縮合エステルの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
前記第1又は第2位相差膜として用いられるセルロースアシレートフィルムにおける前記重縮合エステルの含有量は、セルロースアシレート(第2位相差膜ではセルロースアセテート)量に対し5〜40質量%であることが好ましく、8〜30質量%であることがさらに好ましく、10〜25質量%であることがよりさらに好ましい。
前記重縮合体が含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルのセルロースエステルフィルム中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
本発明に使用可能な重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法等を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50以上190以下であることが好ましく、50以上130以下であることがさらに好ましい。
本発明に用いられる第1及び第2位相差膜の厚みについては特に制限されないが、薄膜化の要請に応えるためには、厚みは、100μm以下であるのが好ましく、80μm以下であるのがより好ましく、60μm以下であるのがさらに好ましい。薄膜化の観点では、厚みは薄いほど好ましいが、一般的には、第1及び第2位相差膜として用いられるフィルムの厚みは30μm程度以上となる。
《波長分散調整剤》
本発明に用いる第1又は第2位相差膜の一例は、Reの波長依存性が逆分散性であり、またRthについても波長依存性が逆分散性の位相差膜である。Re及びRthが逆分散性の位相差膜は、特開2009−223305号公報の[0040]〜[0066]に記載の一般式(A)で表される液晶化合物の少なくとも一種を含有するセルロースアシレート組成物から作製することができる。但し、主成分の種類や製造条件によっては、前記添加剤を添加しなくても、レターデーションが逆分散性を示すフィルムを作製可能な場合もある。
《Rth発現剤》
本発明に用いる第1又は第2位相差膜としての条件を満足するセルロースアシレートフィルムを作製するために、セルロースアシレートフィルム中に、Rth発現剤を添加することができる。ここで、「Rth発現剤」とはフィルムの厚み方向に複屈折を発現する性質を有する化合物である。
前記Rth発現剤としては、250nm〜380nmの波長範囲に吸収極大を有する分極率異方性の大きい化合物が好ましい。前記Rth発現剤としては、下記一般式(I)で表される化合物を特に好ましく使用できる。
Figure 0005509031
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又はS−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−又はS−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−又はS−である。また、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、芳香族環基又は複素環基であり;R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基である。
以下に前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例(I−(1)〜IV−(10))を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 0005509031
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Figure 0005509031
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Figure 0005509031
Figure 0005509031
Figure 0005509031
Figure 0005509031
《脂肪族多価アルコールエステル》
高温多湿環境下において、セルロースアシレートフィルム中の添加剤がフィルム外に析出や揮発することを防止するために、少なくとも1種の脂肪族多価アルコールエステルを添加してもよい。脂肪族多価アルコールエステルは、脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸とのエステルである。
脂肪族多価アルコール:
前記脂肪族多価アルコールは、下記一般式(V)で表される。
(V) R1−(OH)m
式中、R1はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数を表し、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表し、mは2〜20が好ましい。
前記一般式(V)中、n価の脂肪族有機基の例として、2価の基の例には、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、エテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基、3−ペンチニレン基等)、及びシクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)等が含まれる。
前記一般式(V)中、n価の脂肪族有機基の例として、3価の基の例には、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ウンデカントリイル基、ドデカントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロペンタントリイル基、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基、1,2,3−プロパントリイル基等が含まれる。
前記一般式(V)中、n価の脂肪族有機基の例として、4価の基の例には、プロパンジイリデン基、1,3−プロパンジイル−2−イリデン基、ブタンジイリデン基、ペンタンジイリデン基、ヘキサンジイリデン基、ヘプタンジイリデン基、オクタンジイリデン基、ノナンジイリデン基、デカンジイリデン基、ウンデカンジイリデン基、ドデカンジイリデン基、シクロヘキサンジイリデン基、シクロペンタンジイリデン基、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基等が含まれる。
また、上記n価の脂肪族有機基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基の例には、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、2−メトキシエチル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基など)、アリール基、(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基など)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基など)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基など)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、p−トリルチオ基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メトキシエチルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、クロロアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、トリフルオロアセチルアミノ基等)、アルキルウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、メトキシエチルウレイド基、ジメチルウレイド基等)、アリールウレイド基(例えば、フェニルウレイド基等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、トリフルオロメチルスルホンアミド基、2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、フェニルスルホンアミド基、トリルスルホンアミド基等)、アルキルアミノスルホニルアミノ基(例えば、メチルアミノスルホニルアミノ基、エチルアミノスルホニルアミノ基等)、アリールアミノスルホニルアミノ基(例えば、フェニルアミノスルホニルアミノ基等)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピロリル基、インドリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、チエニル基等)が含まれる。
前記式(V)で表される脂肪族多価アルコールの好ましい例には、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等が含まれる。
中でも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが特に好ましい。
モノカルボン酸:
前記脂肪族多価アルコールエステル形成に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができるが、セルロースエステルフィルムの透湿性向上、保留性向上の観点から、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いることが好ましい。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
具体的には、使用可能なモノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、及びアラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が含まれる。これらは更に置換基を有していてもよい。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例には、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、及びそれらの誘導体が含まれる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、及びそれらの誘導体が含まれる。特に安息香酸が好ましい。この他、芳香族モノカルボン酸の芳香環には置換基を有していてもよい。
本発明に使用可能な多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。ここで、上記の脂肪族多価アルコールエステルの分子量は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて測定できる。
前記脂肪族多価アルコールエステルにおいて、複数のエステル部位を構成しているカルボン酸は一種類でも、二種以上であってもよい。また、脂肪族多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。分子内に芳香環またはシクロアルキル環を3つ以上有する脂肪族多価アルコールエステルが好ましい。
前記芳香環としては、芳香族炭素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、p−テルフェニル環、ジフェニルメタン環、トリフェニルメタン環、ビベンジル環、スチルベン環、インデン環、テトラリン環、アントラセン環、フェナントレン環等)や芳香族複素環、例えば、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、1,2,3−オキサジアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、s−トリアジン環、ベンゾフラン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、キノリン環及びイソキノリン環等が挙げられる。
前期シクロアルキル環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等が挙げられる。
以下、本発明に使用可能な脂肪族多価アルコールエステルの具体例を示すが、これらに限定されない。
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前記脂肪族多価アルコールエステルの使用量(含有量でもよい)は、セルロースアシレートフィルムの全成分の質量に対して、3質量%〜30質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、5質量%〜25質量%の範囲であり、特に好ましくは、5質量%〜20質量%の範囲である。
《可塑剤》
前記第1又は第2位相差膜として利用するセルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがよりさらに好ましい。
《マット剤微粒子》
前記第1又は第2位相差膜として利用するセルロースアシレートフィルムは、マット剤として微粒子を含有していてもよい。本発明に使用可能な微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)35頁〜36頁に詳細に記載されており、好ましく用いることができる。
《その他の添加剤》
前記第1又は第2位相差膜として利用するセルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を超えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びトリベンジルアミン(TBA)である。
前記第1又は第2位相差膜として利用するフィルムは、延伸処理を施されたフィルムであってもよい。延伸倍率は、3〜100%程度であることが好ましい。延伸処理は、テンターを用いて実施できる。また、ロール間にて縦延伸を行ってもよい。
[第1及び第2位相差膜の製造方法]
前記第1及び第2位相差膜として利用可能なセルロースアシレートフィルム製造方法の好ましい例は、ドープを支持体上に流延し溶媒を蒸発させて製膜する製膜工程、及びその後、当該製膜したフィルムを延伸する延伸工程、さらにその後得られたフィルムを乾燥する乾燥工程、さらに、該乾燥工程終了後、150〜200℃の温度で1分以上熱処理する工程を含む製造方法である。以下、各工程について説明する。
(製膜工程)
製膜は、公知のセルロースエステルフィルムを作製する方法等で広く採用される製膜工程と同様に実施することができ、ソルベントキャスト法による製膜を実施するのが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を製膜する。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及びCOO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
一般的な方法でセルロースアシレート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温又は高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレテートフィルムを製造することができる。
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
本発明ではセルロースエステルフィルムの添加剤として公知の低分子量添加剤を広く採用することができる。添加剤の含量は、セルロースエステルに対して、1〜35質量%であり、4〜30質量%であることが好ましく10〜25質量%であることがさらに好ましい。添加量を1質量%以下では、温度湿度変化に対応できず、添加量を30質量%以上ではフィルムが白化してしまう。さらに、物理的特性も劣るものとなってしまう。
ここで、本発明における添加剤とは、本発明の光学フィルムの諸機能の向上等を目的として添加される成分であり、セルロースエステルに対し、1質量%以上の範囲で含まれている成分をいう。すなわち、不純物や残留溶媒等は、本発明における添加剤ではない。
本発明では、特に、添加剤の含量が、セルロース系樹脂に対して、4〜30質量%であることが好ましく10〜25質量%であることがより好ましい本発明では、ΔSPの値を所定の範囲とする限り、2種類以上の添加剤を用いることができる。2種類以上用いることにより、それぞれの添加剤により、光学特性、フィルム弾性率、フィルム脆性や、ウェブハンドリング適性を両立できるというメリットがある。
低分子量添加剤としては、Rth制御剤・調整剤、劣化防止剤、紫外線防止剤、剥離促進剤、他の可塑剤、赤外線吸収剤等を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
(共流延)
共流延を実施してもよい。具体的には、同時又は逐次で多層流延製膜を実施することができる。特に第2位相差膜用のセルロースアセテートフィルムの作製に適する。
すなわち、上記ドープを、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースエステル液を流延してもよい。複数のセルロースエステル溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースエステルを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースエステル溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースエステル溶液の流れを低粘度のセルロースエステル溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースエステル溶液を同時に押出すセルロースエステルフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースエステル溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースエステル溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースエステル層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースエステル溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明のセルロースエステル溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースエステル溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースエステル溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースエステル溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースエステル溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。
共流延の場合、置換度の異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。例えば、TAC層/DAC層/TAC層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることも、DAC層/TAC層/DAC層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることも出来る。また、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースエステルアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。例えば、マット剤は、表面層に多く、又は表面層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤は表面層よりも内部層に多くいれることができ、内部層のみにいれてもよい。又、内部層と表面層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば表面層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、内部層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側の表面層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、表面層に貧溶媒であるアルコールを内部層より多く添加することも好ましい。表面層と内部層のTgが異なっていてもよく、表面層のTgより内部層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースエステルを含む溶液の粘度も表面層と内部層で異なっていてもよく、表面層の粘度が内部層の粘度よりも小さいことが好ましいが、内部層の粘度が表面層の粘度より小さくてもよい。
(乾燥工程、延伸工程)
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロール群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量のさらに好ましい範囲は70質量%以下であり、より好ましくは10質量%〜50質量%、特に好ましくは12質量%〜35質量%である。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
延伸倍率は、1.05〜1.5であることが好ましく、1.15〜1.4であることがより好ましい。
また、延伸は縦方向に行っても横方向に行っても両方向に行ってもよく、好ましくは少なくとも縦方向に行う。本発明に使用可能なセルロースアシレートフィルムの一例は、幅方向に延伸されて得られたものであり、該延伸倍率が、搬送方向に対して垂直な方向に5%以上100%以下であることが好ましい。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率Nx、Ny、Nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。例えば流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大きすぎると、Nzの値が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、例えばテンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。さらに、互いに直交する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。光学フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなる。光学フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ1.2〜2.0倍、0.7〜1.0倍の範囲とすることが好ましい。ここで、一方の方向に対して1.2〜2.0倍に延伸し、直交するもう一方を0.7〜1.0倍にするとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して0.7〜1.0倍の範囲にすることを意味している。
一般に、2軸延伸テンターを用いて幅手方向に1.2〜2.0倍の間隔となるように延伸する場合、その直角方向である長手方向には縮まる力が働く。
したがって、一方向のみに力を与えて続けて延伸すると直角方向の幅は縮まってしまうが、これを幅規制せずに縮まる量に対して、縮まり量を抑制していることを意味しており、その幅規制するクリップやピンの間隔を延伸前に対して0.7〜1.0倍の範囲に規制していることを意味している。このとき、長手方向には、幅手方向への延伸によってフィルムが縮まろうとする力が働いている。長手方向のクリップあるいはピンの間隔をとることによって、長手方向に必要以上の張力がかからないようにしているのである。ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
(熱処理工程)
前記製造方法では、乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
このような処理によりフィルムの収縮率を小さくできる理由は明確ではないが、延伸工程にて延伸される処理を経たフィルムにおいては、延伸方向の残留応力が大きいため、熱処理によって前記残留応力が解消されることにより、熱処理温度以下の領域での収縮力が低減されるものと推定される。
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことがさらに好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことがさらに好ましい。
熱処理温度が200℃を超えて長時間加熱すると、フィルム中に含まれる可塑剤の飛散量が増大するため問題となる場合がある。
なお前記熱処理工程において、フィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。この収縮を可能な限り抑制しながら熱処理することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましく、幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。さらに、フィルムの幅方向及び搬送方向に、それぞれ0.9倍〜1.5倍に延伸することが好ましい。
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られた光学フィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲であることが好ましい。又は、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
(加熱水蒸気処理)
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。本発明のセルロースエステルフィルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
(表面処理)
前記セルロースアシレートフィルムを、位相差膜としての機能に加えて、偏光膜の透明保護膜としても機能させる場合等、偏光子との接着性を改善するために、セルロースアシレートフィルムを表面処理することが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理を実施する。酸処理又はアルカリ処理を実施することが好ましく、アルカリ処理を実施することがさらに好ましい。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースエステルフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースエステルに対する鹸化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
セルロースエステルフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1乃至3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。本発明のセルロースエステルフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースエステルフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
(膜厚)
前記第1及び第2位相差膜として利用されるセルロースアシレートフィルムの膜厚は20μm〜180μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましく、20μm〜80μmがさらに好ましい。膜厚が20μm以上であれば偏光板等に加工する際のハンドリング性や偏光板のカール抑制の点で好ましい。また、前記セルロースアシレートフィルムの膜厚むらは、搬送方向及び幅方向のいずれも0〜2%であることが好ましく、0〜1.5%がさらに好ましく、0〜1%であることが特に好ましい。
(ヘイズ)
前記セルロースアシレートフィルムのヘイズは、0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらに好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、ヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。
[偏光板]
本発明の液晶表示装置には、前記第1及び第2位相差膜として用いられるポリマーフィルムを、直線偏光膜(偏光膜フィルム)と一体化させた偏光板を用いることができる。前記偏光板は、前記位相差膜と直線偏光膜(以下、単に「偏光膜」、「偏光フィルム」という場合は「直線偏光膜」をいうものとする)とを積層することによって作製することができる。前記位相差膜として用いるセルロースアシレートフィルムは、直線偏光膜の保護膜を兼ねていてもよい。
直線偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。直線偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
直線偏光膜の位相差膜を貼り付けた表面と反対側の表面には、ポリマーフィルムを配置する(位相差膜/偏光膜/ポリマーフィルムの配置とする)ことが好ましい。
ポリマーフィルムは、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[位相差膜用セルロースアシレート系フィルムの作製又は準備]
(位相差膜B)
WO2007/125764号公報に記載の方法(セルロースエステルフィルム108)により、位相差膜を作製し、これを位相差膜Bとして用いた。
(位相差膜D及びG)
特開2009−223305号公報の実施例に記載の方法に従って、位相差膜Dを作製し、これを位相差膜Dとして用いた。また、同公報の実施例に記載の方法に従って位相差膜Gを作製し、これを位相差膜Gとして用いた。
(位相差膜F)
位相差膜Fとしては、富士フイルム製TD80ULを用いた。
(位相差膜A)
《セルロースアシレートの調製》
下記表に記載のアシル基の種類、置換度の異なるセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中のセルロースアシレートの種類における、他の置換基Bは、アセチル基以外の、例えばブチリル基、プロピオニル基等のアシル基である。
Figure 0005509031
以下に示すセルロースアシレートドープA及びBを調製した。
・セルロースアシレートドープA
セルロースアシレート樹脂:表2中のC−2 100質量部
添加剤A:表1中に記載のA−3 11質量部
化合物A 4質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
Figure 0005509031
ドープAにはセルロースアシレート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製、2次平均粒子サイズ1.0μm以下)0.13質量部となる様に、マット剤分散液を混合、攪拌した。
・セルロースアシレートドープB
セルロースアシレートドープAの調製において、C−2の代わりにC−4を用い、化合物Aを4質量部添加しなかった以外は、セルロースアシレートドープAと同様の方法によりセルロースアシレートドープBを調製した。
《共流延フィルム》
図4に示すように、走行する流延バンド85の上に流延ダイ89から、内部層(コア層)としてドープB、コア層の両側の表面層(スキン層)としてドープA、即ち3種類(A/B/A)のドープを共に流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することにより内部層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚t1〜t3は内部層が55μm、表面層がそれぞれ2.5μmとなるように同時多層流延を行い流延膜70を形成させた。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより140℃の熱風を当てつつ幅方向に30%延伸を行った。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、さらに120℃から150℃で乾燥し巻き取り、これにより位相差膜Aを得た。
(位相差膜H〜L)
位相差膜Aにおいて、添加剤Aおよび化合物Aの添加量を下記表に示した添加量に変えた以外は位相差膜Aと同様にして、位相差膜H〜Lをそれぞれ作製した。
Figure 0005509031
<光弾性定数の測定>
まず、得られた各位相差膜について、試料フィルムを1cm幅×10cm長(測定方向(MD又はTD)が10cmになるようにする)に切り出した。これをエリプソ測定装置(M 150、商品名、日本分光製)にセットし、長手方向(10cm長)に沿って100g、200g、300g、400g及び500gの荷重をかけながら、順次25℃・相対湿度60%において632.8nmの光でそれぞれReを測定した。次いで、横軸に応力(荷重をフィルム断面積で割った値(kgf/cm2))、縦軸にRe変化(nm)をプロットし、この傾きから光弾性定数(cm2/kgf)を求めた。
<弾性率の測定及び透湿度の測定>
前述の方法により求めた。
上記作製したフィルムのそれぞれを、下記表に示す組合せで用いて、図1と同様の構成のVAモード液晶表示装置11〜19を作製した。なお、図1の偏光板P1及びP2の外側保護フィルム(図1中不図示)には、TD80UL(富士フイルム製)を用いた。この液晶表示装置11〜19について、以下の評価を行った。
(色変化)
液晶表示装置を暗室内で黒表示時の色変化を、以下の基準で評価をした。
○:全ての極角方向、方位角方向で色味付きがほとんど観察されない。
△:極角60度方向で、液晶セルの法線を中心として360度回転させた時、やや色味付きが観察される。
×:極角60度方向で、液晶セルの法線を中心として360度回転させた時、色味付きが観察される。
(斜め光漏れ)
暗室内で黒表示時の液晶表示装置を極角60°且つ方位角45°方向から観察した時の光漏れ(Fresh斜め光漏れ)を、以下の基準で官能評価を行った。
○:ほとんど光漏れが視認されない。
△:僅かに光漏れが視認される。
×:光漏れが視認される。
(正面光漏れ)
温度50℃・相対湿度60%の環境下で250時間連続点灯した際の(正面からの)光漏れの有無を確認し、以下の基準で官能評価を行った。
○:光漏れが全くない。
△:全体の5%以上10%未満の面積で光漏れがある。
×:全体の10%以上の面積で光漏れがある。
これらの結果を、下記表に示す。
Figure 0005509031
Figure 0005509031
本発明の条件を満足する実施例のVAモード液晶表示装置はいずれも、経時による正面方向の光漏れが軽減されているのに対して、比較例のVAモード液晶表示装置12、13及び14はいずれも、正面方向の光漏れが経時により悪化していることが理解できる。これは、液晶表示装置12及び14については、第1及び第2の位相差膜の光弾性係数に関する(式1)の値の関係及び透湿度の関係が、本発明の条件を満足してないこと、並びに液晶表示装置13については、第2の位相差膜が、所定の低置換度セルロースアセテートからなるコア層と所定の高置換度セルロースアセテートからなるスキン層との積層体ではなく、非積層構造の高置換度セルロースアセテートからなる市販のセルロースアセテートフィルムであることによるものであると理解できる。
即ち、本発明の実施例のVAモード液晶表示装置は、所定の条件を満足する第1及び第2の位相差膜を所定の関係で配置することで、斜め方向の光漏れ及び色変化が軽減されているのみならず、正面方向の経時による光漏れの上昇も軽減されていることが理解できる。
[実施例2]
上記実施例1で作製した位相差膜A,B,D,及びFについて、上記した方法で、TD方向及びMD方向の弾性率をそれぞれ測定し、平均値Eaveを算出した。結果を下記表に示す。
Figure 0005509031
次に、この位相差膜を用いて、図1と同様の構成のVAモード液晶表示装置を作製し、1000時間連続点灯した後の表示ムラ(光漏れ)の発生具合を目視で評価した。ムラが全く視認されないものを「○」、ムラの面積が画面全体に対する比率が20%未満のものを「△」、同じく20%以上のものを「×」とした。結果を下記表に示す。
Figure 0005509031
上記表に示す結果から、第1及び第2位相差膜の弾性率の平均値が、(式2)を満足していると、長時間点灯後の光漏れがより少なく、表示ムラが発生し難いことが理解できる。
1 液晶セル上側基板
3 液晶セル下側基板
5 液晶層(液晶分子)
8a 表示面側偏光膜(第2偏光子)
8b バックライト側偏光膜(第1偏光子)
9a、9b 偏光膜の吸収軸
10a 表示面側位相差膜(第2位相差膜)
10b バックライト側位相差膜(第1位相差膜)
P1、P2 偏光板
LC 液晶セル
BL バックライト
70 流延膜
85 流延バンド
86a 回転ローラ
89 流延ダイ
120 内部層用ドープ
121 表面A層用ドープ
122 表面B層用ドープ
120a 内部層
121a 表面A層
122a 表面B層
t1 内部層膜厚
t2 表面A層膜厚
t3 表面B層膜厚

Claims (5)

  1. バックライト、液晶セル、該液晶セルと前記バックライトとの間に配置された第1偏光子、前記液晶セルに対して前記第1偏光子と反対側に配置された第2偏光子、前記第1偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第1位相差膜、及び前記第2偏光子と前記液晶セルとの間に配置された第2位相差膜を有する液晶表示装置であって、以下の条件を充たす液晶表示装置:
    1)第1位相差膜が、セルロースアシレート系ポリマーであって、アセチル、プロピオニル基及びブチル基から選ばれる少なくとも2種のアシル基を有するセルロースアシレート系ポリマーを主成分とする膜であること;
    2)第2位相差膜が、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.00以上2.70未満であるセルロースアセテートを主成分とするコア層と、セルロースアセテートであって、アセチル置換度が2.70以上であるセルロースアセテートを主成分とするスキン層とからなる積層フィルムであること;
    3)下記(式1)で表される膜の光弾性係数に関する値において、前記第1位相差膜の有する値が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
    4)前記第1位相差膜の透湿度が、前記第2位相差膜の有する値より大きい値であること;
    {(CTD2+(CMD2(1/2) (式1)
    式中、CTDはTD方向の光弾性係数を表し、CMDはMD方向の光弾性係数を表す。ただし、前記第1位相差膜及び前記第2位相差膜のMD方向およびTD方向の光弾性係数は、ともに5.0×10 -11 2 /N以下である。
  2. 前記第1及び第2位相差膜がそれぞれ、下記式(I)及び(II)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置:
    (I) 30≦Re(548)≦80
    (II)70≦Rth(548)≦140
    ここで、Re(λ)及びRth(λ)はそれぞれ、波長λ[nm]で測定した面内レターデーション[nm]及び膜厚方向レターデーション[nm]である。
  3. 前記第1及び第2位相差膜の有する弾性率に関する値、TD方向とMD方向の弾性率の平均値E1ave(Mpa)及びE2ave(Mpa)が、下記(式2)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置:
    −500<E1ave−E2ave<300 (式2)
    式中、E1ave(Mpa)は第1位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表し、E2ave(Mpa)は第2位相差膜の有するTD方向とMD方向の弾性率の平均値を表す。
  4. 前記第1及び第2位相差膜の双方が、Re及びRthについて逆分散性を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. VAモードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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