以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、上述の内側の層(コア層)に位相差発現性の高い低置換度のセルロースアシレートを用い、外側の層(スキン層)にアルカリ溶液への耐性が高い高置換度のセルロースアシレートを用いた積層位相差フィルムにおいて、面内リタデーションRoの逆波長分散性を損なうことなくリタデーション発現性を高める検討を行った。
セルロースアシレートフィルムの製造工程におけるリタデーション発現性を高める技術としては、リタデーション上昇剤を用いると前述のように面内リタデーションRoが逆波長分散性となる為好ましくなく、他の方法としては延伸処理を適宜行うことが好ましい。延伸処理としては、残留溶媒量をできる限り低減させた状態で延伸する方法、低温で延伸する方法、延伸倍率を高める方法等が挙げられる。
しかしながら、該積層位相差フィルムにおいて上記延伸条件の調整によってリタデーション発現性を高めようとするとヘイズが発生し易く、積層位相差フィルムの透明性が低下することから液晶表示装置のコントラストが低下し、従って十分な延伸処理を行うには限界があることが分かった。
本発明者はこの課題を精査した結果、透明性の低下の大部分は、積層位相差フィルムの大部分を占めるコア層ではなく、スキン層にヘイズが発生することで引き起こされるものであることを突き止めた。そこで、更に検討を進めた結果、積層位相差フィルムのリタデーションを延伸処理で発現させるには、コア層、スキン層におけるリタデーションの発現性や面内方向のリタデーションRo、厚み方向のリタデーションRthのバランス等を考慮して該延伸処理の条件が設定されるが、その際、フィルム表面に位置するスキン層は残留溶媒が乾燥過程でコア層よりも先に蒸発して低下するため、スキン層がコア層と比較して硬脆くなりやすく、リタデーションの発現を十分に高めようと延伸した場合により応力の働きやすいスキン層にヘイズが発生することを見出した。
本発明者はかかる問題について検討を重ねた結果、延伸時の応力をスキン層に偏らないようにスキン層とコア層の柔軟性のバランスを整えれば延伸処理によるヘイズの上昇を抑えられることを見出し、位相差フィルムに用いられるセルロースアシレート、可塑剤等の材料の種類、使用量、スキン層とコア層への配分、及び延伸条件を特定の範囲にすることで上記課題を解決するに至った。
本発明の位相差フィルムは、下記式(1)を満たすセルロースアシレートを含むコア層と、下記式(2)を満たすセルロースアシレートを含み、前記コア層よりも膜厚が薄いスキン層を該コア層の両面に有する延伸処理された位相差フィルムであって、
該位相差フィルムの下記式(3)で表される面配向度Sthが3.3/1000以上であり、該位相差フィルムの下記式(4)で表される面内方向のリタデーション値Roが逆波長分散性を示し、かつ該コア層と該スキン層は下記式(5)を満たすことを特徴とするものであり、かかる構成によりスキン層とコア層の柔軟性のバランスが最適化され、延伸処理によるヘイズの上昇を抑えつつ、面内リタデーションRoが逆波長分散性であって、かつ薄膜でありながら光学補償に必要な厚み方向のリタデーションRthが高いセルロースアシレートを含有する位相差フィルムを提供することができた。
式(1)2.0<Z1<2.5 (式(1)中、Z1はコア層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
式(2)2.7<Z2<3.0 (式(2)中、Z2はスキン層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
式(3)Sth=(nx+ny)/2−nz (式中、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内方向であり、x方向に直行するy方向における屈折率、nzはフィルムの膜厚方向であるz方向における平均屈折率を表す)
式(4)Ro=(nx−ny)×d (式中、nx、nyは式(3)と同様であり、dは位相差フィルムの膜厚(nm)を表す)
式(5)NDS/NDC<0.96 (式中、NDC及びNDSは、前記コア層及びスキン層を構成する材料を同一の溶媒に対して固形分として20質量%のドープとした場合における各ドープの粘度を表す)
以下、本発明を要素毎に詳細に説明する。
最初に本発明に係る位相差フィルムの各パラメータ、特性値について説明する。
<式(3)、逆波長分散性の説明>
本発明の位相差フィルムは、下記式(3)で表される面配向度Sthが3.3/1000以上である。
式(3)Sth=(nx+ny)/2−nz (式中、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内方向であり、x方向に直行するy方向における屈折率、nzはフィルムの膜厚方向であるz方向における平均屈折率を表す)
屈折率の測定は、例えばアタゴ社製 アッペ屈折率計2Tを用いてJIS K7142の方法で測定する。
これは、位相差フィルムを薄膜化しようとすると、厚みあたりの位相差発現性(面配光度)を更に高める必要があることによるものであり、Sthの好ましい範囲は、3.3/1000≦Sth≦5.8/1000の範囲である。この範囲を満たすには、延伸倍率、延伸温度、セルロースアシレートのアシル置換度、可塑剤種、添加量等を調整することで達成できる。
また、本発明の位相差フィルムは、下記式(4)で表される面内方向のリタデーションRoが逆波長分散性を示すことが特徴である。
式(4)Ro=(nx−ny)×d (式中、nx、nyは式(3)と同様であり、dは位相差フィルムの膜厚(nm)を表す)
上記Roは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長450nm、550nm、630nmの三点の波長での測定を行い、波長分散性を調べる。
コア層、スキン層に式(1)、式(2)のセルロースアシレートを各々含有し、かつ式(5)満たす材料によって構成される積層フィルムに、必要十分な延伸処理を施すことによって、ヘイズ上昇がなく、面内リタデーションRoが逆波長分散性であり、かつ薄膜でありながら光学補償に必要な厚み方向のリタデーションRthが高い位相差フィルムを得ることが可能になる。
ここで、逆波長分散性とは、波長λnmにおける面内方向のリタデーションRo(λ)が、Ro(450nm)<Ro(550nm)<Ro(630nm)の関係を有することをいう。位相差の波長分散性がこの関係を満たさない場合は、可視光領域の直線偏光をこのフィルムに入射した際、得られる楕円偏光の状態が波長により大きく異なるため、十分な光学補償能を得られない場合がある。特に、下記式(6)を満足する場合は、高品位な液晶表示装置が得られるため好ましい。位相差の波長分散性がこの範囲から外れた場合は、視野角による色シフトが大きくなる場合がある。
式(6) Ro(450nm)/Ro(630nm)=0.80〜0.95
<式(5)の説明>
本発明の位相差フィルムは、コア層を形成する材料、及びスキン層を形成する材料を、各々同一の溶媒に固形分が20質量%になるように溶解した時の粘度が下記式を満足することが必要である。
式(5) NDS/NDC<0.96 (式中、NDC及びNDSは、前記コア層及びスキン層を構成する材料を同一の溶媒に対して固形分として20質量%のドープとした場合における各ドープの粘度を表す)
上記式(5)は、0.6<NDS/NDC<0.96であることが好ましく、0.96以下であるとフィルムの機械的強度が低下し、0.96以上であるとヘイズ、コントラストが低下する。
上記NDS、NDCの測定は、以下の方法で行うことができる。
(粘度測定法)
コア層、及びスキン層に用いられるセルロースアシレートと添加剤を、実際の各層の構成比率になるように混合物とし、該混合物を溶剤(混合比率は、メチレンクロライド85%、エタノール15%)に固形分として20質量%になるように溶解させてドープを調製する。次いで、35℃恒温水槽中に2時間静置後、回転式粘度計を用いて正確に1分後の粘度を測定して求める。
回転式粘度計:芝浦システム株式会社 ビスメトロン粘度計VSA
ローター:No.4
回転数:3rpm
測定温度:35℃
本発明では芝浦システム株式会社のビスメトロン粘度計VSAにより35℃にて測定した。粘度の単位はパスカル秒(Pa・s)であるが、通常はミリパスカル秒(mPa・s)を用いる。
本発明では上記式(5)を満たすには、セルロースアシレートに対する可塑剤の含有量を調整することで達成できる。
<内部ヘイズ>
本発明の位相差フィルムは内部ヘイズが0.05以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。
本発明でいう内部ヘイズとは、フィルム内部の散乱因子により発生するヘイズであり、主にスキン層の延伸処理によって発生する内部的なヘイズの指標となるものであり、この内部ヘイズの発生を防ぐことで、十分な延伸処理が施され、本発明の効果を得ることができる。
内部ヘイズは、フィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面に滴下して、フィルム表面のヘイズをできるだけ無視できる状態にして、ヘイズメーターにより測定される。
〈内部ヘイズ測定装置〉
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)
光源は、5V9Wハロゲン球、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いている。
本発明においては、この装置にてフィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面に滴下した場合のフィルムのヘイズ測定において、その値が0.05以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。測定はJIS K−7136に準じて測定した。
内部ヘイズ測定は以下のように行う。図1〜4を持って説明する。
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する。図1参照
2.その上にカバーガラスを載せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
ついで、試料を含めたヘイズ2を測定する。
4.スライドガラス上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図1参照
5.その上に測定する試料フィルムを載せる。 図2参照
6.試料フィルム上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図3参照
7.その上にカバーガラスを載せる。 図4参照
8.ヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(内部ヘイズ)を算出する。
上記測定にて使用したガラス、グリセリンは以下の通りである。
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級
<セルロースアシレート>
本発明の位相差フィルムは、下記式(1)を満たすセルロースアシレートを含むコア層と、下記式(2)を満たすセルロースアシレートを含み、前記コア層よりも膜厚が薄いスキン層を該コア層の両面に有する延伸処理された位相差フィルムである。
式(1)2.0<Z1<2.5 (式(1)中、Z1はコア層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
式(2)2.7<Z2<3.0 (式(2)中、Z2はスキン層のセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
コア層に用いられるセルロースアシレートは、安価で製造可能であり、位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、高い位相差を発現させても延伸倍率を低く抑えることができ破断等の故障を回避できる観点から、総アシル置換度Z1が、2.0<Z1<2.5であるセルロースアセテートであることが好ましく、2.14<Z1<2.46であるセルロースアセテートであることがより好ましい。
上記セルロースアセテートの総アシル置換度(すなわち、アセチル置換度)が2.00以下の場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、総アシル置換度が2.5以上の場合は、必要な位相差が得られ難い。アシル置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲が得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に50000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
セルロースアセテートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースアセテートはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
セルロースのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
本発明に係るセルロースアセテートは、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804、特開2009−161701号などに記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
一方、スキン層のセルロースアシレートの総アシル置換度Z2は、2.7<Z2<3.0であり、外側の層(スキン層)にアルカリ溶液への耐性の高い高アシル置換度のセルロースアシレートを配することにより、鹸化処理においてもリタデーション値のばらつきやフィルムの平面性が損なわれることのない位相差フィルムが得られる。より好ましい総アシル置換度Z2は、2.74<Z2<2.96のトリアセチルセルロースである。
<可塑剤>
本発明の位相差フィルムのスキン層、コア層は可塑剤を含み、該スキン層のセルロースアシレートに対する可塑剤含有質量%(Ks)と、前記コア層のセルロースアシレートに対する可塑剤含有質量%(Kc)の関係が、Ks/Kc=1.3〜1.5であることが、スキン層、コア層の柔軟性バランスを調整する上で好ましい。
本発明でいう可塑剤とは以下説明する化合物であり、特に後述する一般式(I)、一般式(II)で表される化合物をコア層に配分することが好ましい。
(高分子量可塑剤、低分子量可塑剤)
本発明の位相差フィルムには、更に下記高分子量添加剤、低分子量可塑剤を用いることも好ましい。
(高分子量可塑剤)
本発明に用いられる高分子量可塑剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が700〜10000のものが好ましい。高分子量可塑剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速めたり、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
ここで、本発明に用いられる高分子量可塑剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量700〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。
以下、本発明に用いられる高分子量可塑剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる高分子量可塑剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
高分子系可塑剤としては、ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
前記ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明に係るポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
本発明で好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸である。
高分子量可塑剤に利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものである。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量可塑剤であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
本発明に用いられるポリエステル可塑剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
かかる本発明に用いられる高分子量可塑剤の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系可塑剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
前記スチレン系ポリマーは、好ましくは、一般式(1)で表される、芳香族ビニル系単量体から得られる構造単位である。
式中、R101〜R104は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表し、R104は全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であっても、互いに結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、4−ブロモスチレンなどのハロゲン置換スチレン類;p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレンなどのアルコキシ置換スチレン類;3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸などのビニル安息香酸類;メチル−4−ビニルベンゾエート、エチル−4−ビニルベンゾエートなどのビニル安息香酸エステル類;4−ビニルベンジルアセテート;4−アセトキシスチレン;2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレンなどのアミドスチレン類;3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミンなどのアミノスチレン類;3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレンなどのニトロスチレン類;3−シアノスチレン、4−シアノスチレンなどのシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレンなどのアリールスチレン類、インデン類などが挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記アクリル系ポリマーは、好ましくは、一般式(2)で表される、アクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位である。
式中、R105〜R108は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表す。
当該アクリル酸エステル系単量体の例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、tert−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、2種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、tert−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが好ましい。
前記共重合体は、一般式(1)で表される芳香族ビニル系単量体および一般式(2)で表されるアクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位を少なくとも1種含むものが好ましい。
式中、R101〜R104は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表し、R104は全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であっても、互いに結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
式中R105〜R108は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表す。また、共重合組成を構成する上記以外の構造として、前記単量体と共重合性に優れたものであることが好ましく、例として、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、3−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、4−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸等の酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類をあげることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。この中で特に、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体が特に好ましい。
(低分子量可塑剤)
低分子量可塑剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
低分子量可塑剤としては、特に限定されないが、以下に述べる一般式(3)〜(7)で表される化合物が挙げられる。
(式中、R1はアルキル基またはアリール基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R1、R2およびR3の炭素原子数の総和は10以上である。)
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。R4およびR5の炭素原子数の総和は10以上である。)
一般式(3)において、R1はアルキル基またはアリール基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R1、R2およびR3の炭素数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、一般式(4)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、R4およびR5の炭素数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ビシクロオクチル基、ノニル基、アダマンチル基、デシル基、tert−オクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、ジデシル基)が特に好ましい。アリール基としては炭素数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、トリフェニルフェニル基)が特に好ましい。一般式(3)または一般式(4)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(3)または一般式(4)で表される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
一般式(3)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。また、一般式(4)の化合物は、スルフィドの酸化反応もしくは芳香族化合物とスルホン酸クロリドのFriedel−Crafts反応により得ることができる。
次に、一般式(5)で表される化合物に関して詳細に説明する。
上記一般式(5)において、R11はアリール基を表す。R12およびR13は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表し、少なくとも一方はアリール基である。R12がアリール基であるとき、R13はアルキル基でもアリール基でもよいが、アルキル基であることがより好ましい。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。アリール基は炭素数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
次に、一般式(6)で表される化合物に関して詳細に説明する。
上記一般式(6)において、R21、R22およびR23は、それぞれ独立にアルキル基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。R21は環状のアルキル基であることが好ましく、R22およびR23の少なくとも一方が環状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は炭素数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。
上記一般式(5)および(6)におけるアルキル基およびアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
次に、一般式(5)および(6)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
次に、前記一般式(7)で表される化合物について説明する。
上記一般式(7)において、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。
X31、X32、X33およびX34は、それぞれ、単結合、−CO−およびNR35−(R35は置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X31、X32、X33およびX34の組み合わせは、特に限定されないが、−CO−、−NR35−から選ばれるのがより好ましい。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、0または1であることが好ましく、a+b+c+dは2以上であり、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Z31は(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Z31の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2または3が最も好ましい。有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
また、上記一般式(7)としては、好ましくは下記一般式(7−1)で表される化合物である。
一般式(7−1)
R311−X311−Z311−X312−R312
上記一般式(7−1)において、R311およびR312は、それぞれ、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X311およびX312は、それぞれ独立に、−CONR313−またはNR314CO−を表し、R313およびR314は、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。Z311は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR315−(R315は置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい)、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる、1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。Z311の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR315−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(7−1)としては、好ましくは下記一般式(7−2)〜(7−4)で表される化合物である。
上記一般式(7−2)〜(7−4)において、R321、R322、R323およびR324は、それぞれ置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Z321は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR325−(R325は置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Z321の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR325−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
以下に、上記の置換もしくは無置換の脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基などが挙げられる。
以下に、上記の芳香族基について説明する。
芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例な環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
また、以下に前記の置換基Tに関して詳細に説明する。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基など)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基など)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基など)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基など)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基など)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基など)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基など)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基など)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基など)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基など)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基など)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなど)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基など)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(7)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(5)および一般式(6)、一般式(7)の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
これらの可塑剤は、セルロースアシレートに対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
上記添加量を30質量%以下とすることにより、セルロースアシレートとの相溶性を向上させることができ、ヘイズを抑制させることができる。2種類以上の上記可塑剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
<一般式(I)で表される化合物>
本発明の位相差フィルムのコア層には下記一般式(I)で表される、総平均置換度が3.0〜6.0である化合物を含有することが好ましい。
本発明に係る一般式(I)で表される化合物(本発明では糖エステル化合物ともいう。)、及び参考化合物を、以下に記載するが本発明はこれらに限定されない。
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の平均置換度は3.0〜6.0であることが、スキン層との柔軟性バランスを保つ上で有効である。
本発明において、一般式(I)で表される化合物の置換度とは、一般式(I)に含まれる8つの水酸基のうち、水素以外の置換基で置換されている数を表し、すなわち、一般式(I)のR1〜R8のうち、水素以外の基を含む数を表す。したがって、R1〜R8がすべて水素以外の置換基により置換された場合に、置換度は最大値の8.0となり、R1〜R8がすべて水素原子である場合には、0.0となる。
一般式(I)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数、OR基の数が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中の水酸基の数、OR基の異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られているため、本発明における一般式(I)の置換度としては、平均置換度を用いることが適当であり、常法により高速液体クロマトグラフィによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定することができる。
一般式(I)において、R1〜R8は、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換のアリルカルボニル基を表し、R1〜R8は、同じであっても、異なっていてもよい。
本発明に係る糖エステル化合物の合成原料の糖の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
本発明に係る糖エステル化合物の合成時に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1〜5個のアルキル基もしくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
本発明に係る具体例の一部を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(合成例:本発明に係る化合物の合成)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
その後、常法により高速液体クロマトグラフィによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定したところ、A−1〜A−5までそれぞれ1.3%、13.4%、13.1%、31.7%、40.5%の質量比となり平均置換度は5.5となった。
本発明で位相差フィルムに添加される、一般式(1)で示される化合物の平均置換度は4.5〜6.0であることが好ましく、当該置換度の分布範囲は4.0〜8.0であることが好ましい。更に置換度が8.0である成分の含有質量比率が2%以下であることが好ましい。
置換度の分布は、エステル化反応時間の調節によって成されるが、置換度違いの化合物を混合することにより目的の平均置換度に調整してもよい。
<一般式(II)で表されるエステル化合物>
本発明の位相差フィルムは、前記コア層に下記一般式(II)で表されるエステル化合物を含有することが好ましい。
一般式(II) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
一般式(2)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
以下に、本発明に用いられる一般式(II)で表されるエステル化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
<その他の添加剤>
(その他の可塑剤)
本発明の位相差フィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて上記説明した可塑剤以外の可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
一般式(a) R11−(OH)n
但し、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、および/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
一般式(b) R12(COOH)m1(OH)n1
式中、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リタデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本発明の位相差フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
本発明に係わる偏光板保護フィルムは紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれ、例えば、フィルム中の残留溶媒のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(微粒子)
本発明の位相差フィルムには、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などの微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成して位相差フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて攪拌する。
《調製方法B》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースアシレートに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部が更に好ましく、0.1質量部〜0.5質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。
更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
また、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた後、ハードコート層や反射防止層等の機能性薄膜が設けられる。加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。
この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
<位相差フィルムの製造方法>
次に、本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。
本発明の位相差フィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても、溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
本発明の位相差フィルムの溶液流延法での製造は、セルロースアシレートおよび添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
(ドープ調製)
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースアシレートの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明に係るドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、セルロースアシレートの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースアシレートのアセチル置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースの酢酸エステル(アセチル置換度2.4)では良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースアシレートを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースアシレートフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
(積層位相差フィルム)
本発明の位相差フィルムは、コア層と前記コア層よりも膜厚が薄いスキン層を該コア層の両面に有する位相差フィルムであり、コア層及びスキン層に調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法により多層構造を有する積層位相差フィルムを製造することができる。
〈共流延〉
本発明では調製されたセルロースアシレート溶液(ドープ)は、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に前記2種以上の複数のセルロースアシレート溶液を流延して製膜することが好ましい。
上記2種以上のドープを同時に支持体上に流延してもよいし、別々に支持体上に流延してもよい。別々に流延する逐次流延法の場合は、支持体側のドープを先に流延して支持体上である程度乾燥させた後に、その上に重ねて流延することが出来る。また、3種以上のドープを使用する場合、同時流延(共流延ともいう)と逐次流延を適宜組み合せて流延し、積層構造のフィルムを作製することも出来る。共流延若しくは逐次流延によって製膜されるこれらの方法は、乾燥されたフィルム上に塗布する方法とは異なり、積層構造の各層の境界が不明確になり、断面の観察で積層構造が明確には分かれないことがあるという特徴があり、各層間の密着性を向上させる効果がある。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、生産性の観点からは共流延で行うことが好ましく、公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。
図5は共流延ダイ及び流延して多層構造ウェブ(流延直後はウェブをドープ膜ともいうことがある)を形成したところを表した模式図である。共流延は図5に示すように、共流延ダイ10の口金部分11に複数(図2では三つ)のスキン層用スリット13と15、コア層用スリット14を有しており、金属支持体16の上に同時にそれぞれのスリットからスキン層用ドープ17、コア層用ドープ18、及びスキン層用ドープ19を流延することにより、スキン層21/コア層22/スキン層23の多層構造のウェブ20を形成する。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよいが、前記密着改良剤に分布を持たせるには異なるセルロースアシレート溶液が好ましい。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに本発明に係るセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。本発明のフィルムを製造する方法としては、製膜が同時または逐次での多層流延製膜であることが好ましい。
以上から、共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤、その他添加剤等の添加物濃度、添加物種類が異なるセルロースアシレート溶液(ドープ)を共流延して、所望の積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させて支持体から剥離する。
ドープは、ドラムまたは金属支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたは金属支持体の表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたは金属支持体上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたは金属支持体から剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたは金属支持体の表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。また、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースアシレートフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量が0.5質量%以下となるまで乾燥される。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
前記金属支持体から剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸する為、本発明においては流延支持体からウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力をできるだけ下げた状態で行うことが好ましい。具体的には、例えば50〜170N/m以下にすることが効果的である。その際、20℃以下の冷風を当て、ウェブを急速に固定化することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、更に延伸処理により屈折率(面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny及び厚さ方向の屈折率nz)を調整することができる。
(延伸工程)
延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、さらに両方向に延伸する場合は同時延伸であっても、逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
本発明においては特に、延伸はフィルム搬送ロールの周速差を利用して搬送方向に行うか、若しくは搬送方向と直交方向(幅手方向又はTD方向ともいう)にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で行うことが好ましく、更に左右把持手段によってウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いることも好ましい。
本発明で目標とするリタデーション値Ro、Rthを得るには、位相差フィルムが本発明の構成をとり、更に搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
例えば、長手方向の張力を低くまたは高くすることでリタデーション値を変動させることが可能となる。
また、フィルムの長手方向(製膜方向)およびそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に2軸延伸もしくは1軸延伸することができる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.0倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
フィルム中の残留溶媒は20〜0%が好ましく、さらに好ましくは15〜0%で延伸するのが好ましい。
具体的には155℃で残留溶媒が11%で延伸する、あるいは155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、あるいは160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
結果として、本発明の位相差フィルムは、前記式(4)で定義される面内方向のリタデーションRoが30〜90nmであり、下記式(7)で定義される厚み方向のリタデーションRthが70〜400nmであることが、後述するVA型(MVA,PVA)の液晶表示装置の視野角を拡大する上で好ましい位相差である。
式(7) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nx、ny、nz、dは上記式(3)、式(4)と同義である。)
なお、上記リタデーションRo、Rthは、例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下、測定波長590nmで求めることができる。
更に、本発明の位相差フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
(乾燥)
流延後、もしくは延伸後のウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下、100℃以上で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃、更に好ましくは110〜160℃で乾燥が行われる。
所定の熱処理の後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することができる。エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明の位相差フィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
〈位相差フィルムの物性〉
本発明の位相差フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m2・24hが好ましく、更に400〜1500g/m2・24hが好ましく、40〜1300g/m2・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明の位相差フィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明の位相差フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明の位相差フィルムは、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平均含水率を4%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
(膜厚)
本発明の位相差フィルムは、前記コア層の平均膜厚が10〜80μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。10μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作成する際のハンドリング性が向上し、好ましい。
また、前記スキン層の膜厚は、前記コア層の膜厚の25%より大きく50%以内であることが好ましい。スキン層の膜厚が、コア層の膜厚の25%より大きいと、コア層に含まれる添加剤のブリードアウトをスキン層で十分に防ぐことができ好ましい。
(フィルム長、幅)
本発明の位相差フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明の位相差フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
<偏光板>
本発明の位相差フィルムは、偏光板、それを用いた液晶表示装置に使用することができる。
本発明の偏光板は、前記本発明の位相差フィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板であることが特徴である。本発明の液晶表示装置は、少なくとも一方の液晶セル面に、本発明に係る偏光板が、粘着層等を介して貼り合わされたものであることが特徴である。
本発明の偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の位相差フィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には該位相差フィルムを用いてもよく、また他のフィルムを貼合することも好ましい。
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
表示装置の表面側に用いられる偏光板は、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、鹸化化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
<液晶表示装置>
本発明の偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明の位相差フィルムはSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。
好ましくはVA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、光漏れが低減された、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れ液晶表示装置を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<セルロースアシレートの調製>
セルロース100質量部に、硫酸16質量部、無水酢酸260質量部、酢酸420質量部をそれぞれ添加し、攪拌しながら室温から60℃まで60分かけて昇温し、15分間その温度を保持しながら酢化反応を行った。次に、酢酸マグネシウムの酢酸−水混合溶液を添加して硫酸を中和した後、反応系内に水蒸気を導入して、60℃で120分間維持して鹸化熟成処理を行った。その後、多量の水により酢酸臭がなくなるまで洗浄を行い、更に乾燥した後、アセチル基の置換度2.30のセルロースアシレートを得た。
次いで酸の量を調整した以外は同様にして、表1記載のアセチル置換度を有するセルロースアシレートを各々調製した。
<実施例1で使用する化合物>
可塑剤として下記化合物を使用した。
化合物D:トリフェニルホスフェート/ビフェニルジフェニルホスフェート共重合体
(共重合体比1:1)
化合物E:メチルメタクリレート 分子量1200
化合物F:コハク酸/アジピン酸/エチレングリコール共重合体(共重合比3:2:5、分子量2000)
<位相差フィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにアセチル置換度2.30のセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
下記2種のドープを作製し、共流延によってスキン層/コア層/スキン層の構成である積層位相差フィルム101を作製した。
(コア層用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.30) 100質量部
化合物D 10質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(スキン層用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.80) 100質量部
化合物D 13質量部
微粒子添加液1 2質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
上記の組成物を各々ミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、各セルロースアシレートドープを調製した。ドープをバンド流延機にてスキン層/コア層/スキン層の3層構成になるように共流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することによりコア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚がコア層15μm、スキン層10μm、計35μmとなるように同時多層流延を行った。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより160℃の熱風を当てて、延伸率32%まで拡幅した後、延伸倍率が30%となるように140℃で60秒間緩和させた。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から150℃で乾燥し巻き取った。
<位相差フィルム102〜132の作製>
位相差フィルム101の作製において、セルロースアシレートの種類、化合物の種類と添加量、延伸温度、延伸倍率を表1のように変えた以外は同様にして位相差フィルム102〜132を作製した。
《評価》
<NDS、NDCの測定、及びNDS/NDCの算出>
コア層、及びスキン層に用いられるセルロースアシレートと添加剤を、実際の各層の構成比率になるように混合物とし、該混合物を溶剤(混合比率は、ジクロロメタン85%、メタノール15%)に固形分として20質量%になるように溶解させてドープを調製した。次いで、35℃恒温水槽中に2時間静置後、回転式粘度計を用いて正確に1分後の粘度を測定して、NDS、NDC及びNDS/NDCを求めた。
回転式粘度計:芝浦システム株式会社 ビスメトロン粘度計VSA
ローター:No.4
回転数:3rpm
測定温度:35℃
<Sthの測定>
得られた位相差フィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、アッベの屈折率計を用いて下記nx、ny、nzを測定し、式(3)に代入してSthを算出した。
式(3)Sth=(nx+ny)/2−nz (式中、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内方向であり、x方向に直行するy方向における屈折率、nzはフィルムの膜厚方向であるz方向における平均屈折率を表す)
<波長分散性>
得られた位相差フィルムから試料35mm×35mmを切り出し、25℃,55%RHで2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRAWR、王子計測(株))で、450、550、630nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したリタデーション値の外挿値から以下の式より算出した。
式(4) Ro=(nx−ny)×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
なお、リタデーション値Ro(λ)は、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で測定した。
<内部ヘイズ>
上記作製した位相差フィルムについて、内部ヘイズ値を測定した。測定はフィルム試料1枚で、日本電色工業株式会社製NDH2000を用いJIS−K7136に従って測定した。
内部ヘイズ測定は以下のように行う。図1〜4を持って説明する。
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する。図1参照
2.その上にカバーガラスを載せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
ついで、試料を含めたヘイズ2を測定する。
4.スライドガラス上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図1参照
5.その上に測定する試料フィルムを載せる。 図2参照
6.試料フィルム上にグリセリンを滴下する。(0.05ml) 図3参照
7.その上にカバーガラスを載せる。 図4参照
8.ヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(内部ヘイズ)を算出する。
上記測定にて使用したガラス、グリセリンは以下の通りである。
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級
内部ヘイズは以下の尺度で評価した。
◎:0.00〜0.03
○:0.04〜0.07
△:0.08〜0.11
×:0.12〜
上表から本発明の位相差フィルムは、位相差フィルムとして望ましいリタデーション並びに逆波長分散性を有し、内部ヘイズも小さいことから、優れた位相差フィルムであることが分かる。
実施例2
<偏光板101〜132の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と実施例1で作製した位相差フィルム101〜132と、裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板101〜130を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した位相差フィルム101〜132とコニカミノルタタックKC4UYを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した位相差フィルム101〜132の上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルム101〜132と偏光子と裏面側コニカミノルタタックKC4UYを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と位相差フィルム101〜132とコニカミノルタタックKC4UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ、位相差フィルム101〜132に対応する偏光板101〜132を作製した。
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
SONY製40型ディスプレイBRAVIA X1の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板101〜132をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、位相差フィルム101〜132の面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれ、偏光板101〜132に対応する液晶表示装置101〜132を各々作製した。
《評価》
(視野角の評価)
上記作製した各液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて極角が60°における上下左右方向で、コントラスト比(白透過率/黒透過率)の平均値求めた。
◎:40〜50
○:20〜40未満
×:10〜20未満
(液晶表示装置の正面コントラスト)
液晶表示装置について、それぞれの正面コントラストを測定した。正面コントラストの測定は、ELDIM社製の正面コントラスト測定装置(EZ−contrast)により行い、白表示時と黒表示時の光量を測定した。測定結果を、正面コントラストの値によって、下記のように優劣を付けてランク付けを行った。
◎:正面コントラスト比=3000:1以上
○:正面コントラスト比=2999:1〜2000:1
△:正面コントラスト比=1999:1〜1000:1
×:正面コントラスト比=999:1以下
表3から本発明の位相差フィルムおよびそれを用いた偏光板、液晶表示装置は比較例に比べて視野角、正面コントラストに優れていることが分かる。
実施例3
<一般式(I)で表される糖エステル化合物の調製>
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.6モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させた。
その後、常法により高速液体クロマトグラフィによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定したところ、前記A−1〜A−5までそれぞれ1.3%、13.4%、13.1%、31.7%、40.5%の質量比となり平均置換度は3.0となった。
無水安息香酸の量を調整する以外は同様にして表4に記載の平均置換度の糖エステル化合物を各々調製した。
<位相差フィルム201の作製>
〈主ドープ液の組成〉
下記2種のドープを作製し、共流延によってスキン層/コア層/スキン層の構成である積層位相差フィルム201を作製した。
(コア層用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.30) 100質量部
表3記載の糖エステル化合物 10質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(スキン層用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.80) 100質量部
化合物D 13質量部
微粒子添加液1 2質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
上記の組成物を各々ミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、各セルロースアシレートドープを調製した。ドープをバンド流延機にてスキン層/コア層/スキン層の3層構成になるように共流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することによりコア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚が80μmとなるように同時多層流延を行った。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより160℃の熱風を当てて、延伸率32%まで拡幅した後、延伸倍率が30%となるように140℃で60秒間緩和させた。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から150℃で乾燥し巻き取った。
<位相差フィルム202〜205の作製>
位相差フィルム201の作製において、糖エステル化合物の種類を表3のように変えた以外は同様にして位相差フィルム202〜205を作製した。
次いで、実施例1と同様にして、偏光板201〜205、液晶表示装置201〜205を作製し、実施例1と同様な評価を行った。
上表から、糖エステル化合物の平均置換度が3.0〜6.0である化合物を用いると、より優れた特性を有する位相差フィルムであることが分かる。
実施例4
<位相差フィルム301の作製>
〈主ドープ液の組成〉
下記2種のドープを作製し、共流延によってスキン層/コア層/スキン層の構成である積層位相差フィルム301を作製した。
(コア層用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.30) 100質量部
表6記載の糖エステル化合物 10質量部
一般式(II)で表されるエステル化合物2−15 2.5質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(スキン層用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.80) 100質量部
化合物D 13質量部
微粒子添加液1 2質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
上記の組成物を各々ミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、各セルロースアシレートドープを調製した。ドープをバンド流延機にてスキン層/コア層/スキン層の3層構成になるように共流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することによりコア層を最も厚くし、結果的に延伸後のフィルムの膜厚が80μmとなるように同時多層流延を行った。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより160℃の熱風を当てて、延伸率32%まで拡幅した後、延伸倍率が30%となるように140℃で60秒間緩和させた。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から150℃で乾燥し巻き取った。
次いで、実施例1と同様にして、偏光板301、液晶表示装置301を作製し、実施例1と同様な評価を行った。
上表から、一般式(I)で表される糖エステル化合物と、一般式(II)で表されるエステル化合物をコア層に含有させることで、更に優れた特性を有する位相差フィルムであることが分かる。