JP4980817B2 - 多点プローブの零点誤差関連値記録装置 - Google Patents

多点プローブの零点誤差関連値記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、多点プローブの零点誤差関連値記録装置に関する。
3つの変位センサを用いて、逐次3点法で測定対象の表面形状を測定する表面形状測定装置では、各変位センサ間に生じる測定誤差要因として零点誤差がある。零点誤差は、図1に示すように複数の変位センサA〜Cのうち、いずれかを基準とした場合、基準の変位センサ(図1では変位センサB)の零点と他の変位センサA,Cの零点のずれのことである。通常、複数の変位センサの零点を合わせるためには、何かの基準となる直線状の基準面となる平面に当ててみることにより、その読みがゼロになるように調整する。
或いは、反転法等を使用して、零点誤差を算出して、その零点誤差を補償するようにしている(特許文献1参照)
しかし、一旦、零点誤差を解消したり、或いは、反転法等を使用して零点誤差を補償しても、時間が経過した場合、変位センサの取付け位置がドリフトなどによって、3つの変位センサ間の零点誤差が変動していることがある。
特開2006−337112号公報
従来は、このように時間が経過したことによって多点プローブのセンサ間の零点誤差が変動した場合、改めて、零点誤差を調整したり、或いは、反転法等を行って零点誤差の補償を行うようにしているため、零点誤差を解消するための作業が繁雑である問題があった。
本発明の目的は、上記課題を解決して、多点プローブにおいて、複数のセンサのドリフトが生じた後の零点誤差の補償を容易に行うことができる多点プローブの零点誤差関連値記録装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、測定面を有する測定対象物と、前記測定対象物を回転させる回転手段と、複数のセンサを含む真直形状測定用の多点プローブを前記測定対象物の測定面に相対するように支持する多点プローブ支持手段と、少なくとも前記測定対象物が1回転する間において、前記測定対象物が所定回転角度回転する毎に前記複数のセンサから、前記測定対象物の測定面における同心円に沿う形状値及びプローブの零点誤差に基づく誤差を含む測定値を読取る読取り手段と、前記読取り手段が読取りした前記測定値を読出し可能に記憶する記憶手段とを備え、前記記憶手段には、同一の前記測定対象物に関して測定されて記憶された新しい測定値(以下、第1測定値という)と、第1測定値の取得時期よりも取得時期が古い測定値(以下、第2測定値という)とが記憶され、さらに、第1測定値と第2測定値に基づいて、零点誤差の変動量を算出する算出手段を備え前記測定値は、前記測定対象物を前記回転手段にて少なくとも1回転以上回転させた際に得られた値の平均値であることを特徴とする多点プローブの零点誤差関連値記録装置を要旨とするものである。ここで零点誤差関連値とは、零点誤差を算出するための値や、零点誤差変動量や零点誤差を含む趣旨である。
請求項1の発明によれば、記憶手段に測定対象物の測定面における同心円に沿う形状値及び零点誤差を含む測定値が記憶される。このため、同一の測定対象物に関して記憶した古い測定値と新しい測定値とを読み出しすれば、両測定値に基づいて多点プローブにおける零点誤差の変動量を算出することができる。
また、請求項の発明によれば、測定値がそれぞれ平均値としているため、円周方向の測定開始位置がずれても、測定面の形状値が不変となる。これは、例えば、3点プローブや2点プローブにより測定される変位であっても、同じ位置で再度その変位が測定できるのであれば、零点誤差の記憶、補償は可能である。しかし、例えば、1回目と2回目の円周方向の測定開始位置を同じ位置で測定できなければ、それは記憶・補償の誤差となる。しかし、請求項2の発明では、円周方向の測定開始位置がずれても、測定値が平均値であるため、測定面の形状値が不変となる。この結果、零点誤差の記憶・補償ができ、古い測定値(平均値)と新しい測定値(平均値)に基づいて零点誤差の変動量を算出することができる。
また、請求項の発明によれば、算出手段により、第1測定値と第2測定値とに基づいて零点誤差の変動量が算出されるため、容易に零点誤差の変動が検出される。
請求項の発明は、請求項において、前記多点プローブ支持手段が、前記回転手段の径方向に移動可能に設けられ、前記測定値には、多点プローブ支持手段が前記径方向において複数の位置に移動されて、それぞれの位置において、前記測定対象物を前記回転手段にて少なくとも1回転以上回転させた際に得られた値の平均値を含むことを特徴とする。
請求項の発明によれば、径方向に移動して複数の位置で多点プローブにより測定面が測定され、その測定値の平均が取られると、測定値に含まれる偶然誤差が少なくなる。
請求項の発明は、請求項又は請求項において、前記多点プローブ支持手段が支持する複数のセンサが前記多点プローブ支持手段の移動方向に離れて設置した3つの変位センサであることを特徴とする。
請求項の発明によれば、多点プローブが3つの変位センサにおける零点誤差の変動量が容易に求められる。
請求項の発明は、請求項又は請求項において、前記多点プローブ支持手段が支持する複数のセンサが前記多点プローブ支持手段の移動方向に離れて設置した2つの2次元角度センサであることを特徴とする。
請求項の発明によれば、多点プローブが2つの2次元角度センサにおける零点誤差の変動量が容易に求められる。
請求項1の発明によれば、多点プローブの零点誤差の変動量を容易に求めることができ、その結果、その変動量に基づいて複数のセンサのドリフトが生じた後の零点誤差の補償を容易に行うことができる。
請求項の発明によれば、測定値が平均値であるため、測定面の形状値を不変とすることができる。すなわち、円周方向の測定開始位置がずれても、測定値が平均値であるため、測定面の形状値が不変となる。この結果、零点誤差の記憶・補償ができ、古い測定値(平均値)と新しい測定値(平均値)に基づいて零点誤差の変動量を算出することができる。
請求項の発明によれば、算出手段によって、第1測定値と第2測定値とに基づいて零点誤差の変動量が算出されるため、容易に零点誤差の変動を検出できる。
請求項の発明によれば、半径の異なる複数の位置で多点プローブが測定面を測定する行い、その測定値の平均が取られると、測定値に含まれる偶然誤差が少なくなるため、その結果、零点誤差の変動量の算出において、該変動量に含まれる偶然誤差を少なくすることができる。
請求項の発明によれば、多点プローブが3つの変位センサにおける零点誤差の変動量を容易に求めることができる。
請求項の発明によれば、多点プローブが2つの2次元角度センサにおける零点誤差の変動量を容易に求めることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の多点プローブの零点誤差関連値記録装置(以下、単に零点誤差関連値記録装置という)を具体化した第1実施形態を図1及び図2を参照して説明する。
図2に示すように、測定対象物としての試料200は、スピンドル210上に搭載されて、スピンドル210の回転軸(すなわち、z軸)の周りで回転自在となっている。本実施形態では試料200の上面が測定面202となっている。試料200は測定面202の形状が変化しないような十分な厚さを有していることが好ましく、測定面202は、平面であることが好ましい。又、試料200は、本実施形態では、円板状に形成されているが、四角板状であってもよく、形状は限定されるものではない。要は、試料200がスピンドル210により回転された際に、真直形状測定用の多点プローブで測定できる領域を備えていればよい。
真直形状測定用の多点プローブとしてのセンサユニット220は、リニアセンサキャリッジ(以下、センサキャリッジ230という)によりx方向、すなわち、スピンドル210の径方向に移動可能にされ、試料200が回転手段としてのスピンドル210により回転しているときに、試料表面を走査する。センサキャリッジ230は多点プローブ支持手段に相当する。
センサユニット220中には3つの変位センサA,B,Cが、x方向に沿うように、すなわち、センサキャリッジ230の移動方向に沿うように間隔d,dを介して設置されている。
なお、d=rF−r0、d=r0−rRである(図2参照)。
本実施形態では、前記変位センサA,B,Cは、非接触式のセンサであって、静電容量型センサからなる。なお、変位センサは、非接触式の静電容量型センサに限定されるものではなく、接触式でもよく、或いは、非接触式の場合、静電容量型センサに代えて、例えば、光学センサとしてもよい。
零点誤差関連値記録装置においては、各変位センサA,B,Cからの出力は図示しないA/D変換等でデジタル値に変換され、パソコン等のコンピュータシステム300に入力される。又、コンピュータシステム300は、CPU310、RAM320、ROM330を備えている。CPU310は、読取り手段及び算出手段に相当する。コンピュータシステム300には、ハードディスク等からなる記憶装置340が接続され、前記変位センサA,B,Cからの測定値が読出し可能に記憶される。
(第1実施形態の作用)
さて、試料200における測定面202の半径rF,r0,rRの円周上の形状をf(rF,θ),f(r0,θ),f(rR,θ)、各変位センサA,B,Cの出力(すなわち、測定値)をSF,S0,SRとする。又、ez(θ),Φy(θ)をそれぞれ試料200のz軸方向の運動誤差、スピンドル210の回転軸のy軸周りの傾きによって生ずる運動誤差とすると、変位センサA,B,Cの出力(すなわち、測定値)はSF,S0,SRは、式(1)〜式(3)で表わすことができる。ここで、式(1)中のαは、変位センサBを基準とした、変位センサAの零点誤差である。又、式(3)中のαは、変位センサBを基準とした、変位センサCの零点誤差である。又、式(1)〜式(3)中のf(rF,θ),f(r0,θ),f(rR,θ)は測定対象物の測定面における同心円に沿う形状値に相当する。
Figure 0004980817
変位センサA,B,Cがy軸上において、半径rF,r0,rRにそれぞれ位置するときに、スピンドル210により試料200を回転中心(すなわち、z軸)の周りで1回転させた場合、この1回転中において、零点誤差関連値記録装置は所定回転角度経過する毎に、変位センサA,B,Cの出力SF,S0,SR(すなわちデータ)を入力する。そして、CPU310はこの測定値を記憶装置340に格納する。なお、所定回転角度は、例えば1度であってよく、0.5度でもよく、限定されるものではない。θは、原点位置からの回転角度である。
なお、これらの回転角度θや、センサキャリッジ230のx軸上の位置は、図示しないリニアエンコーダやロータリエンコーダ等の位置センサで検出可能である。
例えば、変位センサBのx軸上の位置は前記リニアエンコーダで検出され、変位センサA,Cの位置は、変位センサBの検出された位置とd,dに基づいてCPU310により算出される。
(1回目の測定及び記録)
1回目の記録では、試料200を1回転させ、各変位センサA,B,Cからの変位出力に添字「1」を付して、変位センサA,B,Cの出力(すなわち、測定値)を表わすと、SF,S0,SRは、式(4)〜式(6)で表わすことができる。
なお、ここでは、最初に1回目の零点誤差が公知の方法で求められていて補償されており、試料200の表面形状が測定できる変位センサA〜Cの零点誤差は、αF1,αR1は既知とする。
Figure 0004980817
試料200が1回転された後、コンピュータシステム300のCPU310は、1回転している際に入力された変位センサA,B,Cから得られた各測定値の平均値を算出する。
すなわち、所定回転角度が1度であれば、変位センサAの各データを合計して360で割ることにより、変位センサAで得られた表面形状の平均値が得られる。変位センサBについても同様に変位センサBで得られた表面形状の平均値が得られる。
f(rF,θ),f(r0,θ),f(rR,θ)の平均値FF1,F01,FR1は、試料200の形状が変わらない限り、それぞれ不変である。運動誤差ez(θ),Φy(θ)の平均値をそれぞれEZ1,ΦY1とし、SF1(θ),S01(θ),SR1(θ)の平均値をそれぞれSF1,S01,SR1とすると、式(4)〜(6)は、式(7)〜(9)となる。
Figure 0004980817
次に、CPU310は式(7)−式(8)を演算すると、z方向の運動誤差が消去されて式(10)となる。
Figure 0004980817
次に、CPU310は式(8)−式(9)を演算すると、同じくz方向の運動誤差が消去されて式(11)となる。
Figure 0004980817
又、CPU310は、式(10)×(r0−rR)/( rF−r0)を演算すると、式(12)が得られる。
Figure 0004980817
次に、CPU310は式(12)−式(11)を演算すると、運動誤差解消値を表わす式(13)を得る。
Figure 0004980817
ここで、式(13)では、回転軸のy軸周りの傾きによる運動誤差も消去されている。又、式(13)において、左辺は表面形状の2回差分に関するものであり、右辺は「測定して得られた値+零点誤差」に関するものとなる。
このようにして、CPU310は、1回目の測定値を記憶装置340に行うとともに、前述した測定のための演算を行い、この演算結果を記憶装置340に記憶する。
この1回目の測定値は第2測定値に相当する。
(2回目の測定及び記録)
1回目の測定後においては、温度ドリフト等によって変位センサA,B,Cの零点誤差が変動する。そこで、1回目の測定及び記録がされた後、新たにワークの表面形状を測定する場合、2回目の測定においては、コンピュータシステム300のCPU310は、試料200が1回転中に入力された変位センサA,B,Cから得られた各測定値の平均値等を「1回目の測定及び記録」と同様に算出する。そして、CPU310はその算出結果等を記憶装置340に記憶する。この2回目の測定値は第1測定値に相当する。
ここでは、説明の便宜上、詳細な説明を省略するが、式(7)〜式(12)中、1回目の測定で説明した各変数に添字「1」の代わりに添字「2」を付けて表わせば、「2回目の測定」の結果が同様に得られる。又、「1回目の測定」の欄で得られた式(13)は、2回目の測定での運動誤差解消値は、式(14)で表わされる。
Figure 0004980817
1回目の運動誤差解消値を表わす式(13)と2回目の運動誤差解消値を表わす式(14)を比較すると、同一の試料200を測定しているため、その表面形状は変化しないとしてもよいから、FF2=FF1,F02=F01,FR2=FR1であり、右辺第1項は同じになる。従って、CPU310は、式(14)−式(13)をCPU310は演算することにより、零点誤差の変動量を算出する。式(15)は式(14)−式(13)で演算された零点誤差の変動量を求めるための式である。
なお、d=r−r、d=r−rRである。
Figure 0004980817
ここで、式(15)中、rF,r0,rRは、前述したように図示しないリニアエンコーダの検出値及び、d,dに基づいて得られる既知の値であり、演算結果として記憶装置340に格納されている。又、SF1,SF2,S01,S02,SR1,SR2は第1回目と第2回目の算出値であり、演算結果として記憶装置340に格納されている。
このようにして零点誤差の変動量が求められると、1回目の零点誤差が既知となっているため、この零点誤差の変動量を既知の値である1回目の零点誤差に加算又は減算するだけで、センサのドリフトが生じた後における新たな零点誤差の補償量が得られる。このようにして、この零点誤差の変動量に基づいて、零点誤差の補償することが可能となる。
なお、間隔d,dが同じ、すなわち、変位センサA,B,Cが等距離に離間している場合は、式(15)は、簡単になって式(16)で表わされる。
Figure 0004980817
このように、変位センサA,B,Cが等距離に離間している場合は、零点誤差の変動量を容易に求めることができる。
以上のようにして、ドリフトによって変位センサの零点誤差の変動があった場合、上記の零点誤差関連値記録装置によって、零点誤差の変動量が求められ、精度の高い零点補償を行うことができる。
従って、例えば、形状測定装置に隣接して零点誤差関連値記録装置を設けておいて、形状測定装置によりワークの形状測定ができる領域と、スピンドル210上の試料200の測定面202の形状測定ができる領域をセンサキャリッジ230によって、センサユニット220を移動できるようにするしておくことが好ましい。
第1実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 零点誤差関連値記録装置は、測定面202を有する試料200(測定対象物)と、試料200を回転させるスピンドル210(回転手段)と、複数の変位センサA,B,Cを含む真直形状測定用のセンサユニット220(多点プローブ)を試料200の測定面202に相対するように支持するセンサキャリッジ230(多点プローブ支持手段)を備える。又、零点誤差関連値記録装置は、試料200が1回転する間において、試料200が所定回転角度回転する毎に変位センサA,B,Cから、試料200の測定面202における同心円に沿う形状値f(rF,θ),f(r0,θ),f(rR,θ)及び零点誤差を含む測定値を読取るCPU310(読取り手段)を備えるようにした。そして、零点誤差関連値記録装置は、読取りした形状値及び零点誤差を含む測定値を読出し可能に記憶する記憶装置340(記憶手段)を備えるようにした。
この零点誤差関連値記録装置によれば、記憶装置340に試料200の測定面202における同心円に沿う形状値及び零点誤差を含む測定値が記憶される。このため、同一の試料200に関して記憶した古い測定値と新しい測定値とを読み出しすれば、両測定値に基づいてセンサユニット220(多点プローブ)における変位センサA,B,Cの零点誤差の変動量を算出することができる。この結果、センサユニット220(多点プローブ)の変位センサA,B,Cの零点誤差の変動量を容易に求めることができ、その変動量に基づいて複数のセンサのドリフトが生じた後の零点誤差の補償を容易に行うことができる。
(2) 本実施形態の零点誤差関連値記録装置では、記憶装置340には、同一の試料200に関して測定されて記憶された新しい測定値と、第1測定値の取得時期よりも取得時期が古い測定値とが記憶され、さらに、第1測定値と第2測定値に基づいて、零点誤差の変動量を算出するCPU310を備えるようにした。
この結果、CPU310により、第1測定値と第2測定値とに基づいて零点誤差の変動量が算出されるため、容易に零点誤差の変動が検出できる。
(3) 本実施形態の零点誤差関連値記録装置は、第1測定値、及び第2測定値には、試料200をスピンドル210(回転手段)にて1回転回転させた際に得られた値の平均値を含むようにした。この結果、本実施形態の零点誤差関連値記録装置は、同一の試料200を測定して得られた第1測定値と第2測定値がそれぞれ平均値であるため、測定面202の形状値を不変となる。これは、測定面202は、円周方向の測定開始位置(すなわち、測定開始点)がずれても、その測定開始点から1周分したときに得られた測定値の平均値である測定面の形状値が不変となることを利用している。この結果、零点誤差の変動量の算出の際に形状値の影響を受けることがない。
(4) 本実施形態の零点誤差関連値記録装置は、センサキャリッジ230(多点プローブ支持手段)が支持する複数の変位センサA,B,Cがセンサキャリッジ230の移動方向に離れて設置されている。この結果、センサユニット220(多点プローブ)が3つの変位センサにおける零点誤差の変動量を容易に求めることができ、既知のドリフトが生ずる前の零点誤差に対する変動量が求まるため、容易に複数のセンサのドリフトが生じた後の零点誤差を算出できるとともに零点誤差の補償を容易に行うことができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の零点誤差関連値記録装置を図3〜7を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付す。第2実施形態は多点プローブであるセンサユニット220に2つの角度センサP,Qを備えていることが第1実施形態と異なっている。
図4に示すように、試料200は、スピンドル210上に搭載されて、回転中心(すなわち、z軸)の周りで回転自在となっている。センサユニット220は、センサキャリッジ230によりx方向に移動可能にされ、試料200がスピンドル210により回転しているときに、試料200の測定面202を走査する。
センサユニット220中には2つの2次元角度センサ(以下、角度センサという)P,Qが、x方向に沿うように、すなわち、センサキャリッジ230の移動方向に沿うように間隔dを介して設置されている。このセンサユニット220の構成等については、後で詳しく説明する。なお、図3においては円形の試料200を例としているが、試料200の形状は、円形に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
零点誤差関連値記録装置においては、各角度センサP,Qからの出力は図示しないA/D変換等でデジタル値に変換され、パソコン等のコンピュータシステム300に入力される。
角度センサP,Qは同一構成のため、角度センサQについて説明する。角度センサQは、レーザ光源231と、ビームスプリッタ232と、PSD(2次元半導体位置検出素子)233とを有する。PSD233の出力は、コンピュータシステム300のCPU310に出力され処理される。角度センサQにおいて、レーザ光源231から射出されたレーザ光束は、ビームスプリッタ232で反射され、対物レンズ234を介して試料200のサンプリング点に向かう。サンプリング点で反射したレーザ光は、対物レンズ234、ビームスプリッタ232を通過して、PSD233に至る。
ここで、サンプリング点が入射レーザ光に直交している場合には、その反射光は、PSD233の中心に入射する。ところが、サンプリング点に傾斜があると、サンプリング点で反射したレーザ光は、PSD233の中心からずれた位置に入射するので、その差に応じた電気信号を測定値としてCPU310に出力することにより、サンプリング点における傾斜角度、すなわち局所2次元傾斜角度の測定ができる。
さらに、2次元角度センサの測定原理の詳細について説明する。図6には、2次元角度センサの原理図が図示されている。
2次元角度センサは基本的に試料200や図示しないワークの面の2次元傾斜を検出するためのものである。入射ビームを細くすることにより、表面の2次元局部スロープの検出に用いることができる。2次元傾斜を検出するには、図6に示す光てこと呼ばれる方法が一番簡便な方法として知られている。
図6において、Z軸方向に沿ってレーザービーム250を試料200の面に入射する。試料200の面が傾斜している場合には、PSD233上の反射光線の光点の位置が傾斜角に応じて変化する。光点の座標変化量Δx,Δyを検出することにより、次式よりx,y軸回りの傾斜角変化Δα,Δβを求めることができる。
Figure 0004980817
なお、Lは試料200の面からPSD233までの距離である。
この方法は、試料200の面からPSD233までの距離Lが変化した場合に測定結果に誤差が生ずる問題がある。
このため、図7に示すように試料200とPSD233の間にコリメートレンズ(すなわち、対物レンズ234)を入れ、オートコリメーションの原理によって角度検出を行う。図7に示すように、対物レンズ234を試料200とPSD233の間に置くと、試料面傾斜とPSD233上の光点座標との関係は対物レンズ234の焦点距離Fのみに依存することになり、傾斜検出精度は向上できる。この場合の傾斜角は次式のように表される。
Figure 0004980817
本実施形態の零点誤差関連値記録装置に使用する2次元角度センサでは、このオートコリメーション方式が採用されている。
ここで、前記角度センサP,Qを使用してワークの表面の高さ形状の測定の仕方を以下に説明する。なお、ここでの説明は、説明の便宜上、試料200をワークとして扱う。
図4に示すように試料200は、スピンドル210上に搭載されて回転可能にされている。センサユニット220は、図5に示すようにセンサキャリッジ230によりx方向に移動可能であり、試料200がスピンドル210により回転しているときに、試料200の表面を走査する。センサユニット220中には2つの角度センサP,Qという)がx方向に沿うように間隔dを介して設置されている。
表面形状を測定する場合、各角度センサP,Qからの出力はコンピュータ・システムに入力されて、以下に説明する演算が行われる。
図5は、センサユニット220で測定する試料面のデータのサンプリング点を示す図である。図5に示すように、x方向の走査は、試料200の回転中心から始まっており、各サンプリング点(すなわち、サンプリング位置)はx(i=1,2,…,M)とする。2つの角度センサP,Qの間隔dとサンプリング間隔sは径方向において同じとする。サンプリング点xにおいて、試料200上の二つの同心円がセンサユニット220内の2つの角度センサP,Qによって走査される。円周上のサンプリング位置をθ(j=1,2,…,N)とする。センサユニット220のx方向出力(y軸回りの局部スロープに対応)μPy(x,θ),μQy(x,θ)はそれぞれ次のように表される。なお、サンプリング位置(x,θ)は、図示しないリニアエンコーダやロータリエンコーダ等の位置センサで検出可能である。
Figure 0004980817
なお、i=1,2,…,M−1,j=1,2,…,Nである。又、ecX(x)は、センサキャリッジ230のロール誤差、eSX(x,θ)はスピンドル210のx軸回りのアンギュラ誤差であり、ともに運動誤差である。αとαは角度センサP,Qのオフセットであり、真平らな平面を測定したときに角度センサP,Qに現れる出力である。f'y(x,θ)は試料表面のy軸局部スロープであり、次のように定義される。
Figure 0004980817
そして、センサキャリッジ230及びスピンドル210の運動誤差を取り除いた差動出力Δμy(x,θ)は式(22)から式(21)を引くことにより次のようになる。
Figure 0004980817
ここで、i=2,3,…,M−1,j=1,2,…,Nである。
そして、固定したθj(j=1,2,…,N)において、f'(x,θ)はΔμ(x,θ)の積分から次のように求められる。
Figure 0004980817
ただし、i=2,3,…,M−1,j=1である。
固定したx(i=2,3,…,M)において、試料200のi番目の同心円上の高さ形状f(x,θ)は、f'(x,θ)の積分から求めることができる。なお、f'(x,θ)の積分の求め方は公知であるので、ここでは説明を省略する。
(第2実施形態の作用)
さて、上記のように構成された零点誤差関連値記録装置の作用を説明する。
(1回目の測定及び記録)
まず、センサユニット220の角度センサP,Qがサンプリング点x,xi+1にそれぞれ位置するときにおいて、スピンドル210により試料200を回転中心(すなわち、z軸)の周りで1回転させる。この1回転中において、露点記録装置は所定回転角度経過する毎に、角度センサP,Qの測定値を入力し、記憶手段としての記憶装置340に格納する。なお、所定回転角度は、例えば1度であってよく、0.5度でもよく、限定されるものではない。
これらの角度や、サンプリング位置は、第1実施例と同様に、図示しないリニア・エンコーダやロータリエンコーダ等の位置センサで検出可能である。
1回転された後、コンピュータシステム300のCPU310は、1回転している際に入力された角度センサP、Qから得られた各測定値の平均値を算出する。
すなわち、所定回転角度が1度であれば、角度センサPの各データを合計して360で割ることにより、角度センサPで得られた表面形状の平均値が得られる。角度センサQについても同様に角度センサQで得られた表面形状に関する測定値の平均値が得られる。このときの測定値は第2測定値としてCPU310は記憶装置340に記憶する。
この平均値の算出によって、式(21)、式(22)については、下記のように変形することができる。
Figure 0004980817
なお、式(26)、式(27)は、下記のように、式(21)、式(22)中で記載されたものを平均化することにより得られたものである。「数18」で示されている各式の右辺は平均化された値である。
Figure 0004980817
そして、CPU310は式(27)−式(26)の算出を行うことにより、零点誤差αの算出ができる。
Figure 0004980817
そして、このようにして得られた零点誤差αは、他のワークの表面形状を測定して算出する際、零点誤差補償に使用される。又、このときの零点誤差αはCPU310により記憶装置340に記憶される。
(2回目の測定及び記録)
1回目の測定後においては、温度ドリフト等によって角度センサP,Qの零点誤差が変動する。そこで、1回目の測定及び記録がされた後、新たにワークの表面形状を測定する場合、2回目の測定においては、コンピュータシステム300のCPU310は、試料200が1回転中に入力された角度センサP,Qから得られた各測定値の平均値等を「1回目の測定及び記録」と同様に算出する。そして、CPU310はその算出結果等を記憶装置340に記憶する。この2回目の測定値は第1測定値に相当する。
又、CPU310は、「1回目の測定及び記録」の欄で説明した内容と同様に零点誤差α1を算出する。そして、α1−αを算出することにより、零点誤差の変動量を得る。
以上のようにして、温度ドリフト等によって角度センサP,Qの零点誤差の変動があった場合、上記の零点誤差関連値記録装置によって、零点誤差の変動量が求められ、精度の高い零点補償を行うことができる。
第2実施形態においても、例えば、NC加工装置に隣接して零点誤差関連値記録装置を設けておいて、NC加工装置の加工ワークの形状測定ができる領域と、スピンドル210上の試料200の測定面202の形状測定ができる領域をセンサキャリッジ230によって、センサユニット220を移動できるようにするしておくことが好ましい。
第2実施形態では、第1実施形態の作用効果(1)〜(3)と同様の作用効果を奏する他、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態の零点誤差関連値記録装置は、センサキャリッジ230(多点プローブ支持手段)が支持する複数の角度センサP,Qがセンサキャリッジ230の移動方向に離れて設置されている。この結果、センサユニット220(多点プローブ)が2つの角度センサP,Qにおける零点誤差の変動量を容易に求めることができ、この変動量に基づいて、容易に複数のセンサのドリフトが生じた後の零点誤差の補償を容易に行うことができる。
なお、本発明の実施形態は前記各実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更してもよい。
○ 第1実施形態では、試料200を1回転したときの、各変位センサA,B,Cの出力の平均値を算出したが、2回転、或いは3回転以上を回転させてその各変位センサの出力の平均値を算出するようにしてもよい。なお、本明細書において、1回転以上とは整数回転させることを意味している。
○ 第1実施形態では、x方向(すなわち、径方向)の位置において変位センサA,B,Cを特定の位置に固定した状態で試料200の1回転の回転をインターバルをおいて、2回行い、各回の変位センサA,B,Cの出力に基づいて、各変位センサの測定値の平均値を算出した。そして、各回における各変位センサA〜Cの平均値に基づいて、測定時の運動誤差を消去して、各回における運動誤差解消値を演算し、両運動誤差解消値の差分を演算して、前記インターバル間の零点誤差の変動量を得るようにした。
変位センサA,B,Cを特定の位置に固定する代わりに、センサキャリッジ230を径方向において複数の位置に移動させて、それぞれの位置で、試料200をスピンドル210にて1回転、或いは2回転以上させた際に得られた変位センサA,B,Cの各出力に基づき各変位センサA,B,Cの測定値の平均値を演算するようにしてもよい。この場合、各測定値は、記憶装置340に記憶されるものとする。
このようにすると、各変位センサA〜Cの総ての測定位置における測定値が得られて、その平均値が算出されるため、偶然誤差が少なくなり、精度の高い零点誤差の変動量を算出でき、その結果、精度の高い零点誤差の補償を行うことができる。
○ 第2実施形態では、x方向(すなわち、径方向)の位置において角度センサP,Qを特定のサンプリング点xi,xi+1に固定した状態で試料200を1回転させ、角度センサP,Qの測定値を得て、零点誤差を算出するようにした。
この代わりに、センサキャリッジ230を径方向(すなわち、x方向)において複数の位置に移動させて、それぞれの位置において、試料200をスピンドル210にて1回転させた際に得られた角度センサP,Qの各出力の平均値を演算するようにしてもよい。この演算は、前記第2実施形態と同様に行われる。
そして、それぞれの位置における角度センサP,Qの各出力の平均値をそれぞれ各出力毎に全部加算した後、その加算値を、加算した個数で割って各角度センサP,Qの出力の総平均値を演算し、両者の総平均値の差を零点誤差として得るようにしてもよい。
この場合、センサユニット220を角度センサP,Qの間隔dとサンプリング間隔sを径方向(すなわち、x方向)において同じにして移動させることが好ましいが、限定されるものではない。
このようにすると、それぞれの位置における各出力の平均値に基づいて各出力の総平均値を演算し、両者の総平均値の差を零点誤差として得るため、偶然誤差を少なくすることができる。そして、精度が高い零点誤差を得ることができることから、算出される零点誤差の変動量も高い精度となり、その結果、高精度の零点誤差の補償を行うことができる。
○ 又、第1実施形態及び第2実施形態では説明はしていないが、スピンドルを回転自在に支持する軸受を静圧軸受とすれば、試料200の形状に含まれる偶然誤差を小さくしてもよい。このようにすれば、零点誤差の変動量の算出も高精度のものとなり、補償精度も高めることができる。
○ さらに、試料200の円周上の形状を測定する際に、スピンドルを最初駆動した後、惰性で回転させるようにすれば、偶然誤差をさらに減少させることができる。
○ 第2実施形態においては、2次元角度センサを使用したが、2次元である必要はない。2つのセンサを結ぶ線を図4のX軸としたとき、Y軸周りの角度を測定できるものであればよい。又、角度センサの方式、構造も第2実施形態で説明した2次元角度センサに限定されるものではなく、他の構造に変更してもよい。
本発明を具体化した第1実施形態の零点誤差関連値記録装置の概略図。 試料、スピンドル、センサユニットの配置関係を示す説明図。 本発明を具体化した第2実施形態の零点誤差関連値記録装置における零点誤差演算装置の概略図。 試料、スピンドル、センサユニットの配置関係を示す説明図。 センサユニットの走査におけるサンプリング位置を示す説明図。 角度センサの原理を示す説明図。 角度センサの原理の改良を示す説明図。
符号の説明
200…試料(測定対象物)、
210…スピンドル(回転手段)、
220…センサユニット(多点プローブ)、
230…センサキャリッジ(多点プローブ支持手段)、
300…コンピュータシステム、
310…CPU(読取り手段、算出手段)、
340…記憶装置(記憶手段)、
A,B,C…変位センサ、
P,Q…角度センサ。

Claims (4)

  1. 測定面を有する測定対象物と、
    前記測定対象物を回転させる回転手段と、
    複数のセンサを含む真直形状測定用の多点プローブを前記測定対象物の測定面に相対するように支持する多点プローブ支持手段と、
    少なくとも前記測定対象物が1回転する間において、前記測定対象物が所定回転角度回転する毎に前記複数のセンサから、前記測定対象物の測定面における同心円に沿う形状値及びプローブの零点誤差に基づく誤差を含む測定値を読取る読取り手段と、
    前記読取り手段が読取りした測定値を読出し可能に記憶する記憶手段とを備え
    前記記憶手段には、同一の前記測定対象物に関して測定されて記憶された新しい測定値(以下、第1測定値という)と、第1測定値の取得時期よりも取得時期が古い測定値(以下、第2測定値という)とが記憶され、
    さらに、第1測定値と第2測定値に基づいて、零点誤差の変動量を算出する算出手段を備え
    前記測定値は、前記測定対象物を前記回転手段にて少なくとも1回転以上回転させた際に得られた値の平均値であることを特徴とする多点プローブの零点誤差関連値記録装置。
  2. 前記多点プローブ支持手段が、前記回転手段の径方向に移動可能に設けられ、
    前記測定値には、多点プローブ支持手段が前記径方向において複数の位置に移動されて、それぞれの位置において、前記測定対象物を前記回転手段にて少なくとも1回転以上回転させた際に得られた値を含むことを特徴とする請求項1に記載の多点プローブの零点誤差関連値記録装置。
  3. 前記多点プローブ支持手段が支持する複数のセンサが前記多点プローブ支持手段の移動方向に離れて設置した3つの変位センサであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の多点プローブの零点誤差関連値記録装置。
  4. 前記多点プローブ支持手段が支持する複数のセンサが前記多点プローブ支持手段の移動方向に離れて設置した2つの2次元角度センサであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の多点プローブの零点誤差関連値記録装置。
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