JP4980154B2 - 濾材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの中で、膜濾材は均一な微小孔径を持ち、精密なろ過が可能であるが、ダストによる圧力損失が急激に上昇するため、フィルター交換を頻繁に行う必要がある。
一方、繊維系濾材はシート内空間が多いため、捕捉されたダストによる圧力損失の上昇が緩やかであり、フィルター寿命が長いというメリットがあるが、その繊維径や繊維の分布状態から均一で微小孔径のシートを容易には得難いという問題がある。
しかしながら、メルトブローン不織布は、通常2μm程度の繊維径の繊維から構成されているため、より微小なダストを捕捉するためには、カレンダー加工などにより密度調整を行い、捕集率を高める工夫がされている。そのため、高密度化により通液性が阻害されるといった問題がある。
一方、ガラス繊維では、1μm以下の直径からなる繊維径から構成する濾材を得ることが可能であり、高効率な捕集性能を示すが、シートにはバインダー成分が含まれるため、フィルターの使用条件によっては溶出物が発生するといった問題がある。また、繊維の脱落が発生し易いという問題もある。このような背景のもと、溶出成分や繊維脱落物が無く、高効率かつ高寿命な濾材が望まれている。
しかしながら、これらの不織布では、極細長繊維を得るためにPVAをわざわざ抽出除去する必要があるばかりでなく、PVAの一部が不織布内に残存するよう抽出除去条件を設定しており、環境負荷的にもコスト的にも、また性能制御面でも問題がある。
(1)平均ポアサイズが0.1〜10μmであること、
(2)JIS11種ダストの捕集効率が90%以上であること、
(3)シートの縦方向および横方向の平均引張強力B(kgf/15mm)が目付A(g/m2)に対して下式を満足すること。
(100×B)/A≧1.0
そして本発明は好適には上記の濾材を少なくとも一部に用いた液体用フィルターである。
本発明の濾材は、平均繊維径が10〜1000nmのナノファイバーと、平均繊維径が5μmより大きい繊維で構成された不織布または織物である基材とが積層されたシートでなければならない。ナノファイバーの平均繊維径が1000nmよりも大きい場合には、極細化が十分でなく、繊維表面積が低下し、フィルターとしての捕集効率が著しく低下する。また、ナノファイバーの平均繊維径が10nmよりも小さい場合には、加工性が低下し、安定な生産が困難な場合がある。捕集効率と生産性双方を考慮した場合、好ましくは、平均繊維径は40〜800nmであることが好ましく、更に好ましくは、100〜600nmであることが好ましい。一方、不織布または織物を構成する基材の平均繊維径は5μmより大きい繊維である必要がある。不織布または織物を構成する基材の平均繊維径が5μm以下であると、後述するようにシートの引張強力が低く、フィルターとして加工する際の加工性が悪くなるばかりか、フィルターとしての耐久性も悪くなる。フィルターとしての捕集性能はナノファイバー層で確保し、フィルターの加工性や耐久性は基材で確保するようにするのがよい。基材の平均繊維径として、好ましくは6μm以上200μm以下、更に好ましくは7μm以上180μm以下である。
上記ポリアミド系繊維を構成するポリマーにおいて、芳香族ジカルボン酸としては耐熱性、耐薬品性の点でテレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を1種または2種以上を併用して使用することができる。かかる芳香族ジカルボン酸の含有量はジカルボン酸成分の60モル%以上が必要であり、75モル%以上であることが好ましい。上記芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としてはマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を挙げることができ、これらの酸は1種類のみならず2種類以上用いることができる。中でも、耐熱性、耐薬品性の点でジカルボン酸成分が100%芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。さらにトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を繊維化が容易な範囲で含有させることもできる。
また、ジアミン成分の60モル%以上は炭素数が6〜12のアルキレンジアミンで構成され、かかる脂肪族アルキレンジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、等の直鎖または側鎖を有する脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。中でも、耐薬品性の点で、1,9−ノナンジアミン、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとの併用が好ましい。この脂肪族アルキレンジアミンの含有量はジアミン成分の60モル%以上であることが必要であり、75モル%以上、特に90モル%以上であることが、耐薬品性の点で好ましい。
更に本発明のポリアミドはその分子鎖の末端基の10%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましく、末端の40%以上、更には末端の70%以上が封止されていることが好ましい。分子鎖の末端を封止することにより、得られる繊維の耐熱性、耐薬品性が優れたものとなる。
まず、ナノファイバーの原液を調製する。この原液は、ポリマーを溶解させることのできる溶媒に溶解させた溶解液でも、ポリマーを溶融させた融解液、いずれでも用いることができる。溶媒としては、水、有機溶剤等、問題なく使用可能である。この溶媒にポリマーを溶解し、均一に粒状ゲル物を無くして溶解したものを紡糸原液とする。ポリマーを溶融させる場合は、押し出し機で加熱溶融させてから原液として使用すればよい。
次に、上記紡糸原液を用いて、静電紡糸法によりポリマーを不織布または織物である基材に積層乃至は複合する。静電紡糸の方法としては特に制限はなく、紡糸原液を供給できる導電性部材に高電圧を印加することで、接地した対極側にナノファイバーを堆積させる方法をとる。これにより、原液供給部から吐出された紡糸原液が帯電分裂され、ついで電場により液滴の一点からファイバーが連続的に引き出され、分割された繊維が多数拡散する。ポリマーの濃度が10%以下であっても、溶媒は繊維形成と細化の段階で乾燥しやすく、原液供給部より数cm〜数十cm離れた設置された捕集ベルトあるいはシートに堆積する。堆積と共に半乾燥繊維は微膠着し、繊維間の移動を防止し、新たな微細繊維が逐次堆積し、緻密なシートが得られる。
なお、このとき製造されるナノファイバーの繊維径はポリマーの原液濃度、口金4と形成シート引取り装置7との間の距離(極間距離)、口金4に印加される電圧等の条件により所定の繊維径に制御することができる。
顕微鏡(走査型電子顕微鏡;日立製作所社製「S−510」)により倍率5000倍で撮影した不織布構成繊維の断面の拡大写真から、無作為に20本の繊維を選び、それらの繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
JIS−L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準拠して測定した。引張強度は、タテ方向とヨコ方向の引張強度から平均値を算出し、採用した。
JIS−L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
コールターエレクトロニクス社製「colter POROMETERII」により測定した。測定前にサンプルを蒸留水に浸漬し、浸漬後の湿潤サンプルを測定に用いた。またポアサイズとしては、平均径を採用した。
JIS11種ダストを水に0.02%の割合で混合し、超音波攪拌機中で十分に均一分散させた後、0.05MPaの圧力で通過させ、吸光度法により通過前後の液の濃度を測定し、粒子の捕集効率を算出した。
(1)まず不織布基材を製造する。ジカルボン酸成分がテレフタル酸100モル%、ジアミン成分が1,9−ノナンジアミン50モル%、2−メチル−1,8−オクタンジアミン50モル%であるポリアミド(以降PA9T、極限粘度0.8dl/g、末端封止率91%、融点265℃)を製造した。該PA9Tを300℃で溶融紡糸し、2.9dtexのバインダー繊維を得た。また、この繊維をホットプレート温度200℃で延伸し、0.7dtex(平均繊維径7.3μm)の主体繊維を得た。得られた主体繊維70質量%、及びバインダー繊維30質量%を加えて混合して原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して目付28.5g/m2、厚さ0.13mmの湿式不織布基材を得た。
(2)次にナノファイバー層を形成する。まずPA9Tを5質量%となるようにヘキサフルオロイソプロパノール(以降、HFIPと称す)溶媒に投入後、25℃で静置溶解し、紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を用い、図1の紡糸装置にて静電紡糸を行った。口金4として内径が0.9mmのニードルを使用した。また、口金4と形成シート引取り装置7との間の距離は8cmとした。さらに、形成シート引取り装置7に前記(1)で得られた湿式不織布基材を巻き付けた。次いでコンベア速度0.1m/分、原液を所定の供給量で口金から押し出し、口金に20kV印加電圧を与えてシリンダー上の不織布上に繊維径が611nmのナノファイバーを密度で1.0g/m2になるよう積層させた。
(3)次に、上記(2)で得られたナノファイバー積層体と、上記(1)で得られた基材とを、ナノファイバーを挟む形でカレンダー処理(カレンダー条件;温度160℃、接圧0.1MPa、処理速度5m/分)にて貼り合わせ、図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。
ナノファイバーの積層量を3.0g/m2とする以外は実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。
基材をポリエステルのスパンボンド不織布〔東洋紡(株)製「エクーレ」〕とする以外は実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。
基材をポリプロピレン製スパンボンド不織布〔出光ユニテック(株)製「ストラテックPP」〕とする以外は実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。
基材をポリエステル繊維のスパンボンド不織布とし、更にナノファイバーを同じポリエステルとする以外は実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。
ナノファイバーの製造としては、ポリエステル樹脂〔(株)クラレ製「クラペットKS760K」〕を10質量%となるようにHFIP中30℃で静置溶解し、完全溶解したものを紡糸原液とした。得られた紡糸原液を用い、図1の紡糸装置にて静電紡糸を行った。口金4として内径が0.9mmのニードルを使用した。また、口金4と形成シート引取り装置7との間の距離は10cmとした。さらに、形成シート引取り装置7に前記ポリエステル樹脂〔(株)クラレ製「クラペットKS760K」〕からなるスパンボンド不織布を巻き付けた。次いでコンベア速度0.1m/分、原液を所定の供給量で口金から押し出し、口金に19kV印加電圧を与えてシリンダー上の不織布上に繊維径が297nmのナノファイバーを密度で1.0g/m2になるよう積層させた。積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。
(1)基材として目付30.0g/m2のポリプロピレン製スパンボンド不織布〔出光ユニテック(株)製「ストラテックPP」〕を用いた。
(2)次にポリプロピレン樹脂を二軸押出機にて300℃で溶融混練して紡糸原液とし、図1の紡糸装置にて静電紡糸を行った。口金4として内径が0.3mmのニードルを使用した。また、口金4と形成シート引取り装置7との間の距離は6cmとした。さらに、形成シート引取り装置7に上記(1)の基材を巻き付けた。次いでコンベア速度0.1m/分、原液を所定の供給量で口金から押し出し、口金に40kV印加電圧を与えてシリンダー上の基材上に繊維径が883nmのナノファイバーを5.0g/m2になるよう積層させた。
(3)その後、カレンダー温度を140℃とする以外は実施例1と同様の方法で上記(2)で得られた積層体と上記(1)の基材とを貼り合わせ、図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。
ナノファイバーを積層しない以外は実施例1と同様の方法でシートを作成した。得られたシートの構成・性能を表1、表2に示す。ナノファイバー層がないため、捕集性能は非常に悪いものであった。
実施例のナノファイバー層に相当する層の繊維径が1488nmと太いこと以外は、実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの性能を表1、表2に示す。得られた積層シートは実施例のナノファイバー層に相当する層の繊維径が太いため、捕集性能は低いものであった。
ナノファイバーの積層量が0.05g/m2と少ないこと以外は、実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。得られた積層シートはナノファイバー層が非常に少ないため、捕集性能は悪いものであった。
基材を構成する繊維の平均繊維径が2.8μmである以外は、実施例1と同様の方法で図2に示す構造の積層シートを作成した。得られた積層シートの構成・性能を表1、表2に示す。得られた積層シートは基材を構成する繊維の繊維径が細いため、シートの引張強力が低く、液体用フィルターとして使用するには加工性が非常に悪いものであった。
2 分配整流ブロック
3 口金部
4 口金
5 電気絶縁部
6 直流高電圧発生電源
7 形成シート引取装置
8 導電性部材
Claims (9)
- 静電紡糸法により製造された、平均繊維径が10〜1000nmであるナノファイバーと、平均繊維径が5μmより大きい繊維で構成された不織布または織布からなる基材とが積層されたシートであり、以下(1)〜(3)の条件を全て満足することを特徴とする液体フィルター用濾材。
(1)平均ポアサイズが0.1〜10μmであること、
(2)JIS11種ダストの捕集効率が90%以上であること、
(3)シートの縦方向および横方向の平均引張強力B(kgf/15mm)が目付A(g/m2)に対して下式を満足すること。
(100×B)/A≧1.0 - 前記積層シートにおける基材および/またはナノファイバーがポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維からなる群から選ばれる請求項1記載の液体フィルター用濾材。
- 前記積層シートにおける基材および/またはナノファイバーがポリアミド系繊維である請求項1または2記載の液体フィルター用濾材。
- ポリアミド系繊維が、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸であるジカルボン酸成分とジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンである請求項3記載の液体フィルター用濾材。
- 通気度が0.1〜20cc/cm2/secである請求項1〜4のいずれかに記載の液体フィルター用濾材。
- 積層一体化されたナノファイバーの積層量が0.1〜10g/m2である請求項1〜5のいずれかに記載の液体フィルター用濾材。
- (I)ポリマーを溶解させることのできる溶媒にポリマーを溶解させた溶解液を調製する工程、(II)前記溶解液を用いて静電紡糸法によりナノファイバーを基材に積層する工程、を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体フィルター用濾材の製造方法。
- (III)ポリマーを溶融させる工程、(IV)前記溶融液を用いて静電紡糸法によりナノファイバーを基材に積層する工程、を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体フィルター用濾材の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の濾材を少なくとも一部に用いた液体用フィルター。
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