本発明は、(a)一分子中に少なくとも1つのアダマンチル基、(b)少なくとも2つの重付加性官能基、(c)少なくとも1つの硫黄原子を含有する含硫黄重合性アダマンタン化合物)に基づく重合単位を含む重合体からなることを特徴とする光学材料である。
上記本発明の光学材料とする重合体の構成単位となる含硫黄重合性アダマンタン化合物(以下、含硫黄重合性アダマンタン化合物)としては、一分子中に(a)少なくとも1つのアダマンチル基、(b)少なくとも2つの重付加性官能基、及び(c)少なくとも1つの硫黄原子のすべてを有する化合物であれば特に制限なく用いることが出来る。
含硫黄重合性アダマンタン化合物は、その分子中に(a)少なくとも1つのアダマンチル基(アダマンタン環に由来する環状の基;以下では、アダマンタン骨格と称す場合がある)を有する。このような化合物に基づく重合単位が重合体の構成要素となることにより、該重合体は耐熱性にすぐれ、また研削時等の悪臭の極めて少ない重合体とすることができる。
また、含硫黄重合性アダマンタン化合物は、その分子中に(b)少なくとも2つの重付加性官能基を有す。
当該重付加性官能基とは、他の重付加性官能基と付加反応を生じ、重付加による高分子生成反応を起こし得る官能基である。このような付加反応の多くは、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロシリル基等のヘテロ原子と該へテロ原子に結合した活性な水素原子とからなる原子団からなる官能基(以下、付加する側の官能基)が、ヘテロ原子を含む環状の基や二重結合を含む基(以下、付加される側の官能基)へ付加することにより起こる。なお、該付加される側の官能基がヘテロ原子を含む環状の基の場合には、通常は付加反応をうけることにより開環して付加する側の官能基へと変化する(例えば、エポキシ基が付加を受けることにより開環して、水酸基を有する基へと変化する)。
本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物の有する重付加性官能基としては、付加する側の官能基でも付加される側の官能基でもよい。当該重付加性官能基を具体的に例示すると、付加する側の官能基としては、メルカプト基、水酸基、アミノ基、シリル基、ジチオカルボキシル基、チオカルボキシル基、カルボキシル基、カルボキシアミド基、ジチオカルボキシアミド基等が挙げられ、付加される側の官能基としてはエピスルフィド基、エポキシ基、アジリジン基等のヘテロ原子を含む環状の基や、イソシアナート基、チオイソシアナート基(以下、これらをまとめて(チオ)イソシアナート基と称す場合がある)、ケテン基、エテニル基等の二重結合を含む基等が挙げられる。本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物が有する重付加性官能基としては、これらのうち、反応性が良く、また優れた光学物性の重合体が容易に得られるという点から、メルカプト基、水酸基、エピスルフィド基または(チオ)イソシアナート基が特に好ましい。
本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物の有す重付加性官能基の数は少なくとも2つである。またこのような化合物の合成のしやすさの点から、該重付加性官能基は4つ以下であることが好ましい。
また、当該重付加性官能基は、各々同一でも異なっていても良いが、含硫黄重合性アダマンタン化合物の合成のし易さや、安定性の点から、付加する側の官能基か、付加される側の官能基かのいずれか一方のみであることが好ましく、さらにはすべての重付加性官能基が同一であることが最も好ましい。
これらの重付加性官能基はアダマンタン環に直接結合していても良いし、アダマンチル基とヘテロ原子や各種の有機残基を介して結合していてもよく(以下では、当該ヘテロ原子と有機残基とを併せて「有機残基等」と称す場合がある。また該有機残基等と、それへ結合している重付加性官能基とをひとつの基として、「重付加性官能基を有す基」と称す場合がある。)、さらには、これらの結合形態が混在していても良い。
また、アダマンチル基に重付加性官能基を有す基が複数結合している場合には、各々の重付加性官能基を有す基ごとに異なるものであっても良いし、同一でもよい。さらには、1つの重付加性官能基を有す基が、複数の重付加性官能基を有していても良い。
このような有機残基等としては、[該有機残基に結合する重付加性官能基の数+1]価の有機残基であれば特に制限されず、公知のヘテロ原子及び有機残基がなんら制限なく適用できる。ヘテロ原子としては、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等が例示される。また有機残基としては、好ましくは炭素数1〜60の2価の有機残基であり、より好ましくは炭素数1〜20の2価の有機残基である。なお、当該有機残基は、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、カーボネート結合、エーテル結合、チオエーテル結合(スルフィド結合)、ジチオエーテル結合(ジスルフィド結合)、アミノ結合、スルホニル結合等の炭素−炭素結合以外の結合を含んでいても良い。このような有機残基等を有す中付加性官能基を有す基としての好ましい具体例は、後述する一般式(2)で示される基として詳細に説明する。
また本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物は、重付加性官能基を有す基が1つだけアダマンチル基に結合しているものでも良いが、好ましくは、重付加性官能基及び/又は重付加性官能基を有す基がアダマンチル基に複数結合している化合物であることが好ましい。このような化合物を用いることにより、得られる重合体が主鎖中にアダマンタン骨格(アダマンチル基)を有すことになり、耐熱性、光学物性等をより優れたものとすることができる。
また、アダマンチル基に重付加性官能基及び/又は重付加性官能基を有する基が結合する位置としては、アダマンチル基のいずれの位置でもよく、例えばアダマンタン骨格の1位、3位、5位、7位等の橋頭位の炭素原子上でも、2位、4位、6位、8位等のメチレン炭素上でも良い。メチレン炭素上である場合には、同一炭素上に2つ結合(置換)していても良い。
さらに、当該アダマンチル基は重付加性官能基又は重付加性官能基を有す基以外に、重付加性官能基を有さない置換基(以下、他の置換基)を有していても構わない。当該他の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アラルキル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、ハロゲン原子等が例示され、これらはさらに各種の公知の置換基で置換されていても良い。これらのなかでも、合成の容易さの点で、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜6のアシルオキシ基;アセチルチオ基、プロピオニルチオ基等の炭素数2〜6のアシルチオ基が特に好ましい。
このような他の置換基もアダマンチル基のいずれの位置に結合していても良く、アダマンタン骨格の2位、4位、6位、8位等である場合には、当該炭素原子上に上記の重付加性官能基及び/又は重付加性官能基を有する基と他の置換基が各々1つずつ結合していても良いし、該他の置換基が2つ結合していても良い。
本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物は、分子中に(c)少なくとも1つの硫黄原子を有している。硫黄原子を有することにより得られる重合体を高屈折率のものとすることが可能となり、該重合体をメガネレンズ等各種の光学用途に好適に使用できる。
当該含硫黄重合性アダマンタン化合物の有する硫黄原子の数は、上記の通り少なくとも1つあれば特に制限されることはないが、好ましくは高屈折率の光学材料が得られやすいという点から、硫黄原子含有量〔(32×含有する硫黄原子の数)/含硫黄重合性アダマンタン化合物の分子量〕が0.15以上、好ましくは0.18以上となるような数(一般には2つ以上)であることが好ましい。
また、含硫黄重合性アダマンタン化合物の有する硫黄原子はいかなる存在形態でも良く、重付加性官能基を構成する原子として存在していても良いし、前記重付加性官能基を有す基における、有機残基等を構成する原子として存在していても良いし、他の置換基中に存在していても良い。
重付加性官能基として存在する場合には、メルカプト基、チオイソシアナート基、エピスルフィド基、ジチオカルボキシル基、チオカルボキシル基等として存在する形態が例示され、有機残基等を構成する原子として存在する場合や他の置換基中に存在する場合には、スルフィド結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、ジチオエステル結合、チオアミド結合、スルフィニル結合、スルホニル結合のような形態が例示される。
また、研削等の加工時に臭気が低く、作業性に優れるという点で、含硫黄重合性アダマンタン化合物の有する硫黄原子は、その半数以上がアダマンチル基に直接結合していることが好ましく、すべての硫黄原子がアダマンチル基に直接結合していることがより好ましい。具体的には、例えば含硫黄重合性アダマンタン化合物の有する硫黄原子の数が2つである場合には、少なくとも1つがアダマンチル基に直接結合していることが好ましく、2つともアダマンチル基に直接結合していることがより好ましい。また、同じく硫黄原子の数が3つである場合には、少なくとも2つがアダマンチル基に直接結合している方が好ましく、3つすべてがアダマンチル基に直接結合していることがより好ましい。これにより、高屈折率と、低臭気性を両立することが極めて容易となる。
上述のような含硫黄重合性アダマンタン化合物としては、合成の容易さ、屈折率、耐熱性、低臭気等の点で優れているため、下記一般式(1)
〔式中、Zは下記一般式(2)
(式中、R2は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し、R3はメルカプト基、水酸基、エピスルフィド基、エポキシ基、チオイソシアナート基またはイソシアナート基から選ばれる重付加性官能基を示し、sは1、tは0〜3の整数であって、tが2又は3の場合には、(−[S]s−R2−)で示される基は各々同一でも異なっていても良い。)で示される基を示し、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基または炭素数2〜6のアシルチオ基を示し、aは2〜6の整数を、bは0〜6の整数を示し、Z及びR1はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていてもよく、かつ、分子中に少なくとも1つの硫黄原子が存在する。〕で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物である。
上記一般式(1)におけるZは下記一般式(2)
(式中、R2は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示し、R3は重付加性官能基を示し、sは1、tは0〜3の整数であって、tが2又は3の場合には、(−[S]s−R2−)で示される基は各々同一でも異なっていても良い。)で示される基であり、上記の通り重付加性官能基を有す基である。
当該重付加性官能基は、前述した通り、メルカプト基、水酸基、エピスルフィド基、チオイソシアナート基またはイソシアナート基である。
上記一般式(1)のZにおいて、重付加性官能基は、tが1〜3の場合にはアダマンチル基に対して(−[S]s−R2−)で示される基を介して結合している。
当該(−[S]s−R2−)で示される基において、sは1であるのでスルフィド結合であることを示す。
また、R2は置換基を有していても良い2価の炭化水素基であり、特に制限されるものではないが、構成炭素数が1〜20の炭化水素基が好ましい。当該該炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等の主鎖の炭素数が1〜10(好ましくは1〜4)のアルキレン基類;シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基等の環を構成する炭素数が5〜10のシクロアルキレン基類;フェニレン基、ナフチレン基等の環を構成する炭素数が6〜12のアリーレン基類を挙げることができる。
また、R2における置換基としては重合体を得るための重付加反応に影響のない基であれば特に制限されず、公知の各種の置換基を有していて良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜11のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;アセチル基等の炭素数2〜4のアシルオキシ基;フェニル基、トルイル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基;チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基等の炭素数4〜10の芳香族複素環基等を例示することができる。
また置換基としてハロゲン原子を有す場合には、該ハロゲン原子としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、得られる硬化体の屈折率や耐光性の観点からフッ素原子以外であることが好ましく、臭素原子が特に好ましい。
R2で示される炭化水素基は、含硫黄重合性アダマンタン化合物の合成のし易さ、得られる重合体の屈折率、耐熱性の観点から炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
上記一般式(2)において、tは0〜3の整数であり、tが0の場合には重付加性官能基がアダマンチル基に直接結合していることを示す。また、tが2又は3の場合には、(−[S]s−R2−)で示される基が、{−([S]s−R2)−([S]s−R2)−}、{−([S]s−R2)−([S]s−R2)−([S]s−R2)−}のように繰り返されていても良いことを示す。またこの場合には、当該(−[S]s−R2−)で示される基(単位)は各々同一でも良いし、異なっていても良く、要求される光学材料の物性や含硫黄重合性アダマンタン化合物の合成の難易によって、適宜選択すれば良い。
一般式(2)で表される基Zとして好ましいものを具体的に例示すると以下の通りである。
(i)tが0のもの:前述した重付加性官能基と同じ。
(ii)tが1のもの:メルカプトメチルチオ基、2−メルカプトエチルチオ基等のメルカプト基を重付加性官能基として有す基;ヒドロキシメチルチオ基、2−ヒドロキシエチルチオ基等の水酸基を重付加性官能基として有す基;イソシアナートメチルチオ基、2−イソシアナートエチルチオ基等のイソシアナート基を重付加性官能基として有す基;チオイソシアナートメチルチオ基、2−チオイソシアナートエチルチオ基等のチオイソシアナート基を重付加性官能基として有す基;β−エピチオプロピルチオ基、γ−エピチオブチルチオ基等のエピスルフィド基を重付加性官能基として有す基;カルボキシメチルチオ基、3−カルボキシプロピルチオ基等のカルボキシル基を重付加性官能基として有す基、アミノメチルチオ基等のアミノ基を重付加性官能基として有す基等。
(iii)tが2以上のもの:2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ基等のメルカプト基を重付加性官能基として有す基;2−(ヒドロキシメチルチオ)エチルチオ基等の水酸基を重付加性官能基として有す基等。
これらの基のなかでも、重合させた重合体の耐熱性が優れ、屈折率が高いことから、tが0である基か、tが1又は2、sが1であり、かつR2が炭素数1〜2の炭化水素基である基が特に好ましい。
特に好ましい基を具体的に例示すると、tが0である基としてメルカプト基、水酸基、エピスルフィド基、チオイソシアナート基またはイソシアナート基等が;tが1、sが1であり、かつR2が炭素数1〜2の炭化水素基である基として、メルカプトメチルチオ基、2−メルカプトエチルチオ基等のメルカプト基を重付加性官能基として有す基;ヒドロキシメチルチオ基、2−ヒドロキシエチルチオ基等の水酸基を重付加性官能基として有す基;イソシアナートメチルチオ基、2−イソシアナートエチルチオ基等のイソシアナート基を重付加性官能基として有す基;チオイソシアナートメチルチオ基、2−チオイソシアナートエチルチオ基等のチオイソシアナート基を重付加性官能基として有す基;β−エピチオプロピルチオ基等のエピスルフィド基を重付加性官能基として有す基等が;tが2、sが1であり、かつR2が炭素数1〜2の炭化水素基である基として、2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ基等のメルカプト基を重付加性官能基として有す基;2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチルチオ基等の水酸基を重付加性官能基として有す基等が挙げられる。
上記一般式(1)中、aは2〜6の整数であり、即ちZで示される基はアダマンチル基に2〜6つ結合している。合成の容易さの点からaは2〜4であることが好ましい。また、これらZで示される基は各々同一でも良いし、異なっていてもよい。異なる基である場合には、前述したような付加する側の基又は付加される側の基のいずれか一方の種類のみの重付加性官能基を有していることが好ましい。
上記本発明の一般式(1)で示される化合物には、上記重付加性官能基及び/又は重付加性官能基を有する基以外に、R1として示す、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基及び/又は炭素数2〜6のアシルチオ基がアダマンタン環に1〜6つ結合していても良い。
当該炭素数1〜6のアルキル基としては、公知のいかなるアルキル基でも良いが、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基等の直鎖状又は分岐状のものである。また、炭素数2〜6のアシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等が、炭素数2〜6のアシルチオ基としては、アセチルチオ基、プロピオニルチオ基等が好適なものとして具体的に例示される。
また当該R1が複数ある場合(bが2〜6である場合)には、それらは各々同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(1)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物は少なくとも1つの硫黄原子を含有する。当該硫黄原子は、前記したようにメルカプト基やチオイソシアナート基、エピスルフィド基等の形態で重付加性官能基を構成する原子として存在していても良いし、(−S−R2−)、(−S−R2−S−R2−)等の形態で(−[S]s−R2−)tを構成する原子として存在していても良いし、アシルチオ基等の形態でR1を構成する原子として存在していても良く、これらの存在形態が混在していてもよい。
上記一般式(1)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物のなかでも、合成の容易さや得られる光学物性の点で特に好ましい化合物を下記に示す。
(A)下記一般式(3)で示される化合物。
[上記式中、R1は前記一般式(1)におけるR1と同義であり、R4はメルカプト基又はチオイソシアナート基を、aは1〜6の整数を、bは0〜6の整数を、cは0〜4の整数を示し、a+cは2〜6であり、cが1〜4の場合にはR4はメルカプト基である。]
上記一般式(3)においては、含硫黄重合性アダマンタン化合物は、重付加性官能基として、メルカプト基(及び水酸基)又はチオイソシアナート基を2〜6つ有す。また硫黄原子はメルカプト基又はチオイソシアナート基を構成する原子団中に少なくとも2つ存在する。
上記一般式(3)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物の具体的な例としては、R4がメルカプト基である化合物として、1,3−アダマンタンジチオール、2,4−ジメチルアダマンタン−1,3−ジチオール、1,3,5−アダマンタントリチオール、1,3,6−アダマンタントリチオール、1,3,5,7−アダマンタンテトラチオール、1,2,3,5,7−アダマンタンペンタチオール、5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオール、5,7−ジメルカプトアダマンタン−1,3−ジオール、1−アセチルオキシアダマンタン−3,5−ジチオール、1−アセチルチオアダマンタン−3,5−ジチオール、1−アセチルチオアダマンタン−3,5,7−トリチオール等が、R4がチオイソシアナート基である化合物として、1,3−アダマンタンジチオイソシアナート、1,3,5−アダマンタントリチオイソシアナート、2,4−ジプロピルアダマンタン−1,3−ジチオイソシアナート等が挙げられる。
上記一般式(3)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物がメルカプト基を有する化合物である場合には、一般的には以下の製造方法により得ることができる。
当該化合物は、例えば、アダマンタン骨格に直接塩素、臭素等のハロゲン原子が結合した化合物とチオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルフォスフィンスルフィド、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン等のチア化剤とを反応させる方法、あるいは、アダマンチル基が直接水酸基と結合した化合物とチオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルフォスフィンスルフィド、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン等のチア化剤とを反応させる方法により得ることができる。
このような製造方法をより具体的に示すと以下の通りである。
(i)ハロゲン原子を有する化合物からの製造方法(製造方法A)
一般式(3)で示される重付加性官能基としてメルカプト基を有する化合物を得る方法として、アダマンチル基が直接ハロゲン原子と結合した化合物(以下、単にハロゲン化アダマンタン化合物と称す)とチア化剤とを反応させる場合の反応条件は、特に限定されず公知の条件を適宜選択して採用すればよいが、一般的な反応条件は次のとおりである。すなわち、ハロゲン化アダマンタン化合物と、該ハロゲン化アダマンタン化合物の有する、メルカプト基に変換させようとするハロゲン原子に対して1当量以上のチア化剤を反応させる。当該チア化剤は上記した通りである。
これらの反応では、反応の進行に伴いハロゲン化水素が生成するので、これを捕捉する塩基性化合物の存在下で行うのが一般的である。該塩基性化合物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコール類のアルカリ金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機塩基を挙げることができる。
上記反応では、ハロゲン化アダマンタン化合物およびチア化剤が通常は固体であるため、溶媒を用いることが好ましい。該溶媒として好適に使用されるものを例示すれば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は反応に用いるハロゲン化合物や塩基性化合物の種類によって適宜選択してゆけばよいが、一般には反応時間の短縮のために、高誘電率を示す溶媒を用いることが好ましい。
前記反応における温度は原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には50〜350℃であり、好ましくは100〜300℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から200時間、好ましくは1時間から60時間の範囲である。なお、反応を溶媒の沸点以上の温度で行う場合には、オートクレーブ等の加圧反応装置を用いることが好ましい。
(ii)水酸基を有する化合物からの製造方法(製造方法B)
一般式(3)で示される重付加性官能基としてメルカプト基を有する化合物を得る他の方法としては、アダマンチル基が直接水酸基と結合した化合物(以下、単にアダマンタチルアルコールと称す)とチア化剤とを反応させる方法が挙げられる。これらの反応条件は特に限定されないが、一般的な反応条件は次のとおりである。
即ち、アダマンチルアルコールと、該アダマンチルアルコールの有する、メルカプト基に変換させようとする水酸基に対して1当量以上のチア化剤を反応させる。この場合のチア化剤は上記した通りである。これらの反応は、中間体であるカルボカチオンの発生を促進するため、酸性化合物の存在下行うのが一般的である。該酸性化合物としては硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸等を挙げることができる。
上記反応において、アダマンチルアルコールまたはチア化剤が固体であり、かつ用いる酸性化合物もまた固体である場合、または酸性化合物が液体であっても、これらアダマンチルアルコールまたはチア化剤の酸性化合物に対する溶解性が低い場合には、溶媒を用いることが好ましい。該溶媒として好適に使用されるものを例示すれば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は反応に用いるアルコール化合物や酸性化合物の種類によって適宜選択してゆけばよい。
前記反応における温度は原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には20〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から24時間の範囲である。また、反応を溶媒の沸点以上の温度で行う場合には、オートクレーブ等の加圧反応装置を用いることが好ましい。また使用原料によっては反応中に生じる水を除くことによって反応が促進されることがあり、その際にはディーンスターク等の水分留去装置により共沸脱水することが出来る。
上記反応を行うことにより、アダマンチルアルコールとチア化剤が塩を形成するので、続いて塩基性化合物の存在下、反応混合物を加熱攪拌することにより、該塩を分解し、目的の含硫黄重合性アダマンタン化合物とする。ここで用いる該塩基性化合物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコール類のアルカリ金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機塩基を挙げることができる。該塩基性化合物は、単体または水等の可溶な溶媒に溶解して添加することが出来る。この反応における温度は原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には20〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から24時間の範囲である。
また反応に用いるチア化剤や触媒となる酸性化合物の量、反応時間、反応温度を制御することにより、水酸基の一部を未反応とさせることにより、メルカプト基/水酸基を両方含む化合物を得ることが出来る。
また、前記一般式(3)で示される化合物がR1としてアルキル基を有す場合には、原料となるハロゲン化アダマンタン化合物又はアダマンチルアルコールとして当該アルキル基を有す化合物を用いればよい。また、アシルオキシ基やアシルチオ基を有す場合には、上記方法により得られたメルカプト基や水酸基を有す化合物の当該メルカプト基や水酸基を、公知の各種アシル化剤でアシル化すればよい。この場合の反応条件は公知のアシル化の条件を適宜選択して採用すればよい。
(iii)チオイソシアナート基を有する化合物の製造方法(製造方法C)
一般式(3)で示される重付加性官能基としてチオイソシアナート基を有す化合物は、例えば、アダマンチル基が直接アミノ基と結合したアミン化合物を原料として、塩基存在下、二硫化炭素を反応させてジチオカルバミン酸塩を得、次いでホスゲン又はアルキルクロロホルメート等を反応させ熱分解する方法により得ることが出来る。
原料となるアダマンチル基を有するアミン化合物(以下、アミノ化アダマンタン化合物)は、公知の化合物を用いるか、または前記のごときハロゲン化アダマンタン化合物、またはアダマンチルアルコールを原料とし、該化合物の有する塩素、臭素等のハロゲン原子あるいは水酸基を、アンモニアと反応させることによりアミノ基へ変換することにより得ることができる。当該アミノ化の条件は公知の条件を適宜採用すればよい。
アミノ化アダマンタン化合物と二硫化炭素とを反応させることにより、ジチオカルバミン酸塩を得る反応は、特に限定されず公知の条件を適宜選択すればよいが、一般的な反応条件は次のとおりである。すなわち、アミノ化アダマンタン化合物と、アミノ基に1つに対して1当量以上の二硫化炭素を反応させる。これらの反応では、塩基性化合物の存在下で行うのが一般的である。該塩基性化合物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア水;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコール類のアルカリ金属塩を挙げることができる。
上記反応では、塩基性化合物の溶解性を増すため一般的には溶媒を用いることが好ましい。該溶媒として好適に使用されるものを例示すれば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は反応に用いるアミノ化アダマンタン化合物や塩基性化合物の種類によって適宜選択してゆけばよい。
前記反応における温度は原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には−10〜150℃であり、好ましくは20℃から還流温度下まで行なうことが好ましい。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から8時間の範囲である。
得られたジチオカルバミン酸塩は、一般的には精製した後/または未精製のまま次の反応に用いることが出来るが、操作の簡便性の点から未精製のまま用いることが好ましい。
ジチオカルバミン酸塩を、イソシアネート基を有するアダマンタン化合物へと変換するためには、上記方法で得られた粗ジチオカルバミン酸塩を含む反応液に、アルキルクロロホルメートまたはホスゲンを加えて反応させた後に熱分解するか、または反応させながら熱分解する。この際添加するアルキルクロロホルメートまたはホスゲンは、粗ジチオカルバミン酸塩に対して1当量以上用いる。アルキルクロロホルメートとしては、例えばメチルクロロホルメート、エチルクロロホルメート、プロピルクロロホルメート、イソプロピルクロロホルメート、ブチルクロロホルメート等が挙げられる。上記反応では、粗ジチオカルバミン酸塩を未精製のまま反応させる場合には特に溶媒を追加する必要はないが、粗ジチオカルバミン酸塩を精製後反応する場合には溶媒を用いることが好ましい。該溶媒として好適に使用されるものを例示すれば、水;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。
ジチオカルバミン酸塩と、アルキルクロロホルメートまたはホスゲンとを反応させた後に熱分解する方法においては、まず、該反応を20〜70℃で、10分から48時間、好ましくは1時間から8時間の範囲で行う。ついで、得られる中間体を含む反応混合物に水を添加し、有機相を分離し、続いて乾燥した後に、溶媒を含んだままあるいは溶媒留去後に70〜120℃に加熱することにより目的物を得ることが出来る。
また、反応させながら熱分解する方法を採用する際には、該反応を70〜120℃の温度で行なえばよい。
また該チオイソシアナート基を有す含硫黄重合性アダマンタン化合物が置換基としてR1を有する場合には、その導入方法はメルカプト基を有す化合物と同様である。
(B)下記一般式(4)で示される化合物。
[上記式中、R1、R2及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、R2及びbと同義であり、dは1〜6の整数を、cは0〜4の整数を示し、d+cは2〜6の整数であり、uは1を、vは1又は2を示す。また、vが2の場合には、(−[S]u−R2−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び{(−[S]u−R2−)v−SH}で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
上記一般式(4)においては、含硫黄重合性アダマンタン化合物は、重付加性官能基として、1〜6つのメルカプト基と1〜4つの水酸基を有すか、又は水酸基を有さず、2〜6つのメルカプト基を有す。該メルカプト基と水酸基は合計で2〜6つである。また硫黄原子はメルカプト基を構成する原子団中及び当該メルカプト基とアダマンチル基をつなぐ有機残基中に、各々少なくとも1つずつ存在する。
上記一般式(4)で示される化合物の中でも、合成の容易さの点で、vが1である化合物がより好ましい。
当該上記一般式(4)で示される本発明の含硫黄重合性アダマンタン化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン、1,3,5−トリス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン、1,3、5、7−テトラキス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]アダマンタン、1,3,5−トリス[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]アダマンタン、1,3,5−トリス[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]アダマンタン、3−(2−メルカプトエチルチオ)−2,2−ジメチルアダマンタン−1−オール、3,5−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン−1−オール等の化合物が挙げられる。
上記一般式(4)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物の製造は、一般的には、アダマンチルアルコールを出発原料とした前記一般式(3)の製造法で示した製造方法Bに準じて、(i)チア化剤に代えてジメルカプト化合物を用い、(ii)塩の分解のために塩基性化合物の存在下、反応混合物を加熱攪拌する工程の代わりに、反応に用いた酸を中和する工程を行う点を変更し、他の条件は同じ条件で行なうことにより可能である。ここでジメルカプト化合物とは、分子内に2個のメルカプト基を有する化合物のことを示し、例えばエタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、プロパンジチオール等が挙げられる。当該ジメルカプト化合物は、アダマンチルアルコールの有する水酸基1つに対し5当量以上用いることが好ましい。また、使用するジメルカプト基含有化合物や触媒となる酸性化合物の量、反応時間、反応温度等を制御することにより、水酸基の一部を未反応とさせて残すことができる。
また酸の中和は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を、反応により得られた溶液のpHが5〜9程度になるまで加えればよい。
この場合にもR1を有する場合には、その導入方法は一般式(3)で示した化合物と同様である。
また原料として、アダマンチルアルコールに代えて、前記一般式(3)として示される化合物を用い、上記と同様の方法で製造することもできる。
さらに他の製造方法としては、後述する一般式(5)で示される化合物のうちR5の重付加性官能基として、水酸基を有す化合物を用い、該水酸基を前記の製造方法Bに準じてメルカプト基に変換する方法が挙げられる。
(C)下記一般式(5)で示される化合物。
[上記式中、R1、R2及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、R2及びbと同義であり、R5は水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を示し、dは1〜6の整数を、cは0〜4の整数を示し、d+cは2〜6の整数であり、uは1を、vは1又は2を示し、かつdとuとvとの積は2以上(d×u×v≧2)である。また、vが2の場合には、(−[S]u−R2−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び{(−[S]u−R2−)v−R5}で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
上記一般式(5)で示される化合物においては、重付加性官能基として、水酸基、カルボキシル基及び/又はアミノ基を2〜6つ有す。また硫黄原子は、(−[S]u−R2−)vで示される基中に少なくとも1つ存在し、該基中に存在する硫黄原子が1つである場合には、{(−[S]u−R2−)v−R5}で示される基がすくなくとも2つ存在する。
上記一般式(5)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物を具体的に例示すると、1,3−ビス(ヒドロキシメチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチルチオ]アダマンタン、5,7−ビス(ヒドロキシメチルチオ)アダマンタン−1、3−ジオール等の重付加性官能基として水酸基のみを有す化合物;1,3−ビス(カルボキシメチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(3−カルボキシプロピルチオ)アダマンタン等の重付加性官能基としてカルボキシル基を有す化合物;1,3−ビス(アミノメチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−アミノエチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−アミノエチルチオ)−5、7−ジメチルアダマンタン等の重付加性官能基としてアミノ基を有す化合物が例示される。これらのなかでも上記一般式(5)において、dが2〜4である化合物がより好ましい。また、光学材料としての物性や合成の容易さから重付加性官能基として水酸基のみを有す化合物が好ましい。
当該一般式(5)で示される化合物のなかでアミノ基を有する化合物を合成する方法としては、一般的には、前記一般式(3)で示される化合物に関して説明した製造方法Bにおいて、(i)チア化剤に代えてメルカプト基と、アミノ基または保護されたアミノ基を有する化合物(以下、メルカプト基含有アミノ化合物と称す)を用い、(ii)塩の分解のために塩基性化合物の存在下、反応混合物を加熱攪拌する工程の代わりに、(a)アミノ基を有する化合物を用いる場合には塩基性化合物を用いて反応に用いた酸性化合物の中和を行なうこと、(b)保護されたアミノ基を有する化合物を用いる場合には酸や塩基性化合物等の脱保護剤を用いてアミノ基を生成させること以外は、アダマンチルアルコールを原料として用いて同様な方法を用いることが出来る。
当該メルカプト基含有アミノ化合物としては、具体的には、2−アミノエチルメルカプタン、2−アミノプロピルメルカプタン、4−アミノシクロヘキシルメルカプタン、4−アミノフェニルメルカプタン等、及びこれらの化合物が有するアミノ基が、アセトアミド基、N−トルエンスルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フタルイミド基、トリフルオロアセチル基等のアミド基、およびフタルイミド基等のイミド基等の形で保護された化合物が例示される。
当該メルカプト基含有アミノ化合物は通常、アダマンチルアルコールの有する水酸基1つに対し、1当量以上、好ましくは5当量以上使用する。
前記一般式(5)で示される化合物のなかでカルボキシル基を有する化合物を合成する方法としては、一般的には、上述した上記一般式(5)で示される化合物のうちアミノ基を有す化合物の製造方法において、メルカプト基含有アミノ化合物に代えて、カルボキシル基または保護されたカルボキシル基と、メルカプト基とを有する化合物(以下、メルカプト基含有カルボキシル化合物と称す)を使用する方法を採用すればよい。
当該メルカプト基含有カルボキシル化合物としては、2−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトバレリル酸、4−メルカプトシクロヘキサンカルボン酸、4−メルカプト安息香酸等、及びこれらの化合物が有するカルボキシル基が、メチルエステル基、ベンジルエステル基、t−ブチルエステル基等のエステルの形で保護された化合物が例示される。
また水酸基を有する化合物の場合は、上述した上記一般式(5)で示される化合物のうちアミノ基を有す化合物の製造方法において、メルカプト基含有アミノ化合物に代えて、水酸基または保護された水酸基と、メルカプト基とを有する化合物(以下、メルカプト基含有アルコールと称す)を使用する方法を採用すればよい。
当該メルカプト基含有アルコールとしては、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、4−メルカプトシクロヘキサノール、4−メルカプトフェノール等、及びこれらの化合物が有する水酸基が、メチルエーテル基、ベンジルエーテル基、2−メトキシエトキシメチルエーテル基、アリルエーテル基、t−ブチルジメチルシリルエーテル基等のエーテルの形で保護された化合物が例示される。
上記いずれの方法においても、(a)酸性化合物の中和を行なう場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を、反応により得られた溶液のpHが5〜9程度になるまで加えればよく、また (b)保護された基を有する化合物の脱保護を行う場合には、公知の脱保護方法を適宜採用すればよい。
(D)下記一般式(6)で示される化合物
[上記式中、R1、R2、a及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、R2、a及びbと同義であり、R6はエポキシ基、イソシアナート基、チオイソシアナート基又はエピスルフィド基を示し、uは1を、vは1又は2を示す。また、vが2の場合には、(−[S]u−R2−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び{(−[S]u−R2−)v−R6}で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
上記一般式(6)においては、含硫黄重合性アダマンタン化合物は、重付加性官能基として、エポキシ基、イソシアナート基、チオイソシアナート基及び/又はエピスルフィド基を2〜6つ有す。また硫黄原子は重付加性官能基とアダマンチル基とをつなぐ基の1つにつき少なくとも1つずつ存在することになる。
上記一般式(6)で示される化合物を具体的に例示すると1,3−ビス(グリシジルチオ)アダマンタン、1,3,5−トリス(グリシジルチオ)アダマンタン等の重付加性官能基としてエポキシ基を有す化合物;1,3−ビス(イソシアナートメチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−イソシアナートエチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−イソシアナートプロピルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−イソシアナートプロピルチオ)−5−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(イソシアナートメチルチオ)アダマンタン、1,3、5−トリス(2−イソシアナートエチルチオ)アダマンタン等の重付加性官能基としてイソシアナート基を有す化合物;1,3−ビス(チオイソシアナートメチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−チオイソシアナートエチルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−チオイソシアナートプロピルチオ)アダマンタン、1,3−ビス(2−チオイソシアナートプロピルチオ)−5−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(チオイソシアナートメチルチオ)アダマンタン、1,3,5−トリス(2−チオイソシアナートエチルチオ)アダマンタン等の重付加性官能基としてチオイソシアナート基を有す化合物、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)アダマンタン、1,3,5−トリス(β−エピチオプロピルチオ)アダマンタン等のエピスルフィド化合物が例示される。
上記一般式(6)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物は、一般には以下の通りの方法で製造が可能である。
重付加性官能基としてエポキシ基を有す化合物の場合は、例えば、前記一般式(3)又は(4)で示されるようなメルカプト基を有するアダマンタン化合物とエピクロロヒドリンに代表されるエピハロヒドリンをアルカリ存在下で反応させることにより得られる。
当該方法において、エピハロヒドリン化合物として好ましいものは、エピクロロヒドリンである。また、エピハロヒドリン化合物はメルカプト基を有するアダマンタン化合物の有するメルカプト基の1つに対し1当量以上、好ましくは2〜30当量使用することが好ましい。反応は、無溶媒で行っても溶媒を用いてもかまわないが、溶媒を使用するときは、原料となるメルカプト基を有するアダマンタン化合物又はエピハロヒドリンいずれかが可溶のものを使用することが望ましい。当該溶媒の具体例としては、水、アミド類、アルコール類、スルホキシド類、エーテル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等があげられる。反応は量論以上の塩基の存在下において容易に進行する。即ち、使用するエピハロヒドリン化合物1モルに対して1モル以上の塩基を使用すれば良い。該塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の三級アミン、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物等があげられるが、好ましいものは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物であり、より好ましいものは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等である。反応温度は通常−10〜100℃で実施されるが、好ましくは−10〜60℃である。反応時間は上記の各種条件下で反応が完結する時間であればかまわないが、通常10時間以下が適当である。
また、エポキシ化合物を製造する別の方法として、目的とするエポキシ化合物に対応する不飽和化合物を、有機過酸、アルキルヒドロペルオキサイド、過酸化水素等による酸化により製造する方法も採用できる。当該酸化によりエポキシ化合物を製造する際の各種条件は、公知の条件から適宜選択して採用すればよい。
また、重付加性官能基としてエピスルフィド基を有す化合物の場合は、上記ごとき方法で製造したエポキシ基を有す化合物のエポキシ基を、チオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルフォスフィンスルフィド、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン等のチア化剤と反応させてエピスルフィド基へ変換する方法により得ることが出来る。
上記エポキシ基を有す化合物よりエピスルフィド化合物を製造する方法において、チア化剤としてチオシアン酸塩を使用する場合、好ましいチオシアン酸塩は、アミン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩であり、より好ましいものは、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウムである。また、チオシアン酸塩は量論的にはエポキシ化合物の1倍モルを使用するが、好ましくは1〜10倍モル使用し反応する。より好ましくは1〜5倍モル使用し反応する。反応は、無溶媒あるいは溶媒中のいずれでもかまわないが、溶媒を使用するときは、チオシアン酸塩あるいはチオ尿素さらにはエポキシ化合物いずれかが可溶のものを使用することが望ましい。
当該溶媒の具体例としては、水、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル等のアルコール類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ−テル類;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のヒドロキシエ−テル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等があげられる。また、反応液中に酸および酸無水物等を重合抑制剤として添加することが、収率を上げる面から有効な手段である。酸および酸無水物の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸、発煙硫酸、ホウ酸、ヒ酸、燐酸、青酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、シュウ酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、無水硝酸、無水硫酸、酸化ホウ素、五酸化ヒ素、五酸化燐、無水クロム酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、シリカゲル、シリカアルミナ、塩化アルミニウム等があげられ、これらのいくつかを併用することも可能である。添加量は通常反応液総量に対して、0.001〜10wt%である。反応温度は通常0〜100℃で実施されるが、好ましくは20〜70℃である。反応時間は上記の各種条件下で反応が完結する時間であればかまわないが、通常20時間以下が適当である。反応生成物は酸性水溶液を用いた洗浄によって、得られる化合物の安定性を向上せしめることが可能である。酸性水溶液に用いる酸の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、ヒ酸、燐酸、青酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸等があげられる。また、これらは単独でも2種類以上を混合して用いても良い。これらの酸の水溶液は通常pH6以下で効果を現すが、より効果的にはpH3以下である。
またイソシアナート基を有す化合物を合成する方法としては、例えば、前記一般式(5)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物のうち、重付加性官能基がカルボキシル基であり、かつdが2以上のものを、酸触媒下、低級アルコールと加熱還流下に反応して得られるアルキルエステル誘導体を得、該アルキルエステル誘導体を氷冷下ヒドラジン水和物と反応させることによりヒドラジノカルボニル基を導入し、さらに希塩酸中で亜硝酸ナトリウムと反応後、熱ベンゼン中でのCurtius転位により得ることが出来る。
まず、アダマンチル基を有するカルボン酸化合物を、適当な酸触媒共存下、低級アルコールと反応させ、アルキルエステル誘導体に変換する。酸触媒としては、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸等を用いることができ、低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等を挙げることが出来る。用いる低級アルコールの使用量は、カルボキシル基1つに対して1当量以上であれば特に制限はなく、また、用いる低級アルコールを溶媒として用いても良い。さらには、トルエン、ベンゼン等の溶媒を使用しても良い。反応で生じる水は、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブの様な脱水剤、またはトルエンなどを溶媒としディーンスターク装置を用いて共沸脱水しても良い。反応は、室温以上、溶媒の沸点以下で実施可能だが、一般には還流下で行うのが好ましい。
次いで、得られたエステル誘導体を、ヒドラジン水和物と反応させることによりヒドラジノカルボニル誘導体とする。このとき用いるヒドラジン水和物の使用量は、エステル基1つに対して1当量以上であれば制限はないが、一般には1〜10当量の範囲が好ましい。この時、反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、THF、ジオキサン、水等の極性溶媒を用いることができるが、原料のエステル誘導体が溶解し、生成物が析出する低級アルコールを用いるのが望ましい。また、反応温度は、0℃以上、溶媒の沸点以下で実施できるが、室温以下に冷却して実施するのが望ましい。
次いで、得られたヒドラジノカルボニル誘導体を、希酸中で亜硝酸塩と反応させた後、加熱条件下で、Curtius転移させて、目的のイソシアナート化合物を得ることができる。希酸としては、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液などを用いることができ、また必要に応じて反応を妨げない各種有機溶媒を併用することもできる。亜硝酸塩との反応温度としては、その次に行うCurtius転移反応を起こさない反応温度で有れば特に制限はないが、0〜10℃の範囲が望ましい。得られた反応物は、通常析出してくるので、それをろ別により回収する。次いで該ろ過物を加熱によりCurtius転移させて目的とするイソシアナート基を有す化合物へと変換する。当該Curtius転移の際の溶媒は、生成物と反応しない溶媒なら特に制限はないが、ベンゼン、トルエン等が望ましい。反応温度は用いる原料、溶媒に応じて適宜選択実施すれば良く、一般には30〜120℃である。
また、重付加性官能基としてチオイソシアナート基を有す化合物の場合には、前記一般式(4)で示される化合物において説明したのと同様の方法でチオイソシアナート基を導入することにより製造することができる。この場合、原料となるアミノ基を有す化合物は、前記一般式(5)で示される化合物の製造方法で示した方法により合成することが可能である。
上記一般式(6)で示される化合物のなかでも、得られる光学材料の物性の点や、重付加反応の起こり易さの点で、重付加性官能基としてイソシアナート基、チオイソシアナート基及び/またはエピスルフィド基を有す化合物が好ましい。さらに、合成の容易さ等を考慮すると、dが2〜4である化合物がより好ましい。
[上記式中、R1、a及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、a及bと同義であり、R7及びR8は各々独立に、前記一般式(1)におけるR2と同義であり、uは1又は2を、wは0〜2の整数を示す。また、wが2の場合には、(−[S]u−R8−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び〔−R7−(−[S]u−R8−)w−SH〕で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
[上記式中、R1、a及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、a及bと同義であり、R7及びR8は各々独立に、前記一般式(1)におけるR2と同義であり、R9はチオイソシアナート基又はエピスルフィド基から選ばれるいずれかの基であり、uは1又は2を、wは0〜2の整数を示す。また、wが2の場合には、(−[S]u−R8−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び〔−R7−(−[S]u−R8−)w−R9〕で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
上記一般式(7)又は(8)で示される化合物は、メルカプト基、チオイソシアナート基又はエピスルフィド基を重付加性官能基として少なくとも2つ有している。また硫黄原子はこれら重付加性官能基を構成する原子団中に各1つ存在するため、該分子が有する硫黄原子の数は少なくとも2つ以上となる。
上記一般式(7)で示される化合物を具体的に例示すると、1,3−ビス(メルカプトメチル)アダマンタン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)アダマンタン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(2−メルカプトエチルチオフェニル)アダマンタン等が例示される。
また一般式(8)で示される化合物としては、1,3−ビス[(2−チオイソシアナートメチルチオ)エチル]アダマンタン、1,3−ビス(2−チオイソシアナートエチルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス(2−チオイソシアナートプロピルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス(2−チオイソシアナートプロピルチオメチル)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス[4−(チオイソシアナートメチルチオ)フェニル)]アダマンタン、1,3−ビス[4−(2−チオイソシアナートエチルチオ)フェニル]アダマンタン、2,2−ビス[4−(2−チオイソシアナートエチルチオ)フェニル]アダマンタン等の重付加性官能基としてチオイソシアナート基を有す化合物;1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)アダマンタン、1,3,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス[2−(β−エピチオプロピルジチオ)エチル]アダマンタン等の重付加性官能基としてエピスルフィド基を有す化合物が具体的に例示される。
上記一般式(7)で示される化合物は、水酸基が炭素原子等を介してアダマンチル基と結合した化合物を原料として用い、他は一般式(4)に記載の方法で製造できる。ここで、水酸基が炭素原子等を介してアダマンチル基と結合した化合物は、例えば、アダマンチル基とカルボキシル基を有する化合物を原料として製造することができる。例えば、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタンおよび1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)アダマンタンは、それぞれアダマンタン−1,3−ジカルボン酸、またはアダマンタン−1,3−ジ酢酸を酸触媒下、低級アルコールを用いてエステル化し、つづいてリチウムアルミニウムハイドライド等の還元剤で処理することにより得ることができる。
また、一般式(8)で示される化合物のうち、重付加性官能基としてチオイソシアナート基を有す化合物は、後述する一般式(10)で示される化合物等のアミノ基を有する化合物から、前記一般式(6)で示される化合物に関して述べたのと同様の方法でアミノ基をチオイソシアナート基へと変換することにより製造することができる。
さらに、一般式(8)で示される化合物のうち、重付加性官能基としてエピスルフィドを有す化合物は、例えば、一般式(7)で示されるメルカプト基を有す化合物を原料とし、前記一般式(6)で示される化合物の製造方法と同様にして、該化合物とエピハロヒドリンとを反応させてエポキシ化合物とし、ついで該エポキシ化合物のエポキシ基をチオ化剤によりエピスルフィド基へと変換する方法により製造が可能である。
上記一般式(7)又は(8)で示される化合物のなかでも光学材料とした際の物性や、合成の容易さの点から、uが1である化合物が好ましく、そのなかでも、wが0又は1、aが2〜4の化合物がより好ましい。
(F)下記一般式(9)又は(10)で示される化合物
[上記式中、R1、a及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、a及bと同義であり、R7及びR8は各々独立に、前記一般式(1)におけるR2と同義であり、R10はエポキシ基又はイソシアナート基を、uは1又は2を、xは1又は2を示す。また、xが2の場合には、(−[S]u−R8−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び{−R7−(−[S]u−R8−)x−R10}で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
[上記式中、R1、a及びbはいずれも、前記一般式(1)におけるR1、a及bと同義であり、R7及びR8は各々独立に、前記一般式(1)におけるR2と同義であり、R11は水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を、uは1又は2を、xは1又は2を示す。また、xが2の場合には、(−[S]u−R8−)で示される基は各々同一でも異なっていても良く、さらに、R1で示される基及び{−R7−(−[S]u−R8−)x−R11}で示される基はいずれも、複数ある場合には各々同一でも異なっていても良い。]
上記一般式(9)又は(10)で示される化合物は、少なくとも2つ存在する{−R7−(−[S]u−R8−)x−}で示される基のなかに各々1つ以上あり、したがって分子中には少なくとも2つの硫黄原子が存在する。
上記一般式(9)で示される化合物を具体的に例示すると、1,3−ビス(グリシジルチオメチル)アダマンタン、1,3,5−トリス(グリシジルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス{2−[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジチオ]エチル}アダマンタン等の重付加性官能基としてエポキシ基を有す化合物;1,3−ビス[2−(イソシアナートメチルチオ)エチル]アダマンタン、1,3−ビス(2−イソシアナートエチルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス(2−イソシアナートプロピルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス(2−イソシアナートプロピルチオメチル)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス[4−(イソシアナートメチルチオ)フェニル]アダマンタン、1,3,5−トリス[4−(イソシアナートメチルチオ)フェニル]アダマンタン、2,2−ビス[4−(2−イソシアナートエチルチオ)フェニル]アダマンタン等の重付加性官能基としてイソシアナート基を有す化合物等が例示される。
また、一般式(10)で示される化合物としては、1,3−ビス(アミノメチルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス[2−(2−アミノエチルチオ)エチル]アダマンタン、1,3−ビス(2−アミノエチルチオメチル)−5、7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス(2−アミノエチルジチオメチル)アダマンタン等の重付加性官能基としてアミノ基を有す化合物;1,3−ビス(ヒドロキシメチルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]アダマンタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオメチル)−5、7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルジチオメチル)アダマンタン等の重付加性官能基として水酸基を有す化合物;1,3−ビス(カルボキシルメチルチオメチル)アダマンタン、1,3−ビス[2−(2−カルボキシルエチルチオ)エチル]アダマンタン、1,3−ビス(2−カルボキシルエチルチオメチル)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス(2−カルボキシルエチルジチオメチル)アダマンタン等の重付加性官能基としてカルボキシル基を有す化合物等が例示される。
上記一般式(9)で示される化合物の合成方法としては、一般式(6)で示される化合物の製法と同様な方法を用いることが出来る。この場合には、エポキシ基を有する化合物の場合には、原料化合物として一般式(7)で示される化合物を用いることができ、イソシアナート基を有する化合物の場合には、原料化合物として一般式(10)で示されるカルボキシル基を有する化合物を用いることができる。
上記一般式(10)で示される化合物の合成方法としては、一般式(5)で示される化合物の製法と同様な方法を用いることが出来る。この場合には、原料化合物として一般式(7)の製造方法で示した水酸基が炭素原子を介してアダマンチル基と結合した化合物を用いることが出来る。
また、上記一般式(3)〜(10)で示される化合物は、上述したような方法に限定されることなく、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、エポキシ基、エピスルフィド基、カルボキシル基、アミノ基等を各種公知の方法で変換していくことにより製造することも可能である。
このような各種製造法で製造された含硫黄重合性アダマンタン化合物は、必要に応じて単離された後、使用に供される。このときの単離方法としては公知の方法を何ら制限無く用いることができる。例えば、反応収率が高いため特に精製操作や脱色操作などを行わなくても良いときは、生成した塩化水素と塩基性化合物の塩等の水溶性の副生成物を濾過や水洗等の方法で除去した後、溶媒を留去しただけでも構わない。また、反応収率が低い場合や、着色が問題となる場合には、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製操作、及び活性炭処理、シリカ処理などの吸着剤処理、或いは水、塩酸水や水酸化ナトリウム水溶液での洗浄等の公知の脱色操作から適宜選択した操作を行えばよい。
また製造された含硫黄重合性アダマンタン化合物は、例えば次のような手段によってその構造を同定、確認することができる。
(i)1H−核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定することにより、化合物中に存在する水素原子の結合様式を知ることができる。
(ii)赤外吸収スペクトル(IR)を測定することにより、各化合物の特性吸収を観察することが出来る。例えば一般に、水酸基を有する化合物の場合には、3500〜3650cm−1付近にOH伸縮振動に基づく吸収、メルカプト基を有する化合物の場合には2550〜2600cm−1にSH伸縮振動に基づく弱い吸収、チオイソシアナート基を有する化合物の場合には2040〜2130cm−1付近にNCS伸縮振動に基づく強い吸収を、アシルチオ基またはアシルオキシ基を有する場合には1700〜1750cm−1付近にC=O伸縮振動に基づく強い吸収、エポキシ基を有する場合には2990〜3050cm−1付近にC=O伸縮振動に基づく強い吸収が、スルフィド基を有する場合には570〜710cm−1付近にCSの伸縮振動に基づく強い吸収が観察される。
(iii)元素分析により、炭素、水素、硫黄、その他の元素(窒素、ハロゲン)の各重量%を求めることができ、該単量体の組成式を決定することができる。
(iv)マススペクトル分析(MASS,EI法)により、化合物の分子量を知ることができる。
上記一般式(3)〜(10)で示される含硫黄重合性アダマンタン化合物のなかでも、合成が容易で、かつ高い重付加反応性を得られる点で、一般式(3)、(4)又は(6)で示される化合物が特に好ましい。
上述のような方法で得られた含硫黄重合性アダマンタン化合物は、重付加反応によって重合体とされる。当該重付加反応は、前述した通り、付加する側の官能基と、付加される側の官能基とが一組となって反応するものである。従って、重付加性官能基がヘテロ原子を含む環状の基の場合を除き、重合体を得るためには、付加する側の官能基を少なくとも2つ有す化合物と、付加される側の官能基を少なくとも2つ有す化合物との双方が必要である。他方、重付加性官能基がエポキシ基、エピスルフィド基等のヘテロ原子を含む環状の基の場合には、該環状の基が付加を受けることにより開環し、これによって付加する側の基(水酸基、メルカプト基等)が生成し、この新たに生成した付加する側の基が引き続きヘテロ原子を含む環状の基に付加するため、これらへテロ原子を含む環状の基を重付加性官能基として有す化合物のみで重合させることが可能である。
まず、重付加性官能基がヘテロ原子を含む環状の基以外の基である場合について説明する。
この場合には、付加する側の官能基を有す化合物と、付加される側の官能基を有す化合物が、双方とも本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物でも良いが、重合体原料となる化合物のコストや、得られる光学材料のアッベ数や屈折率等の各種光学的物性、耐衝撃性等の機械的物性を考慮すると、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物と、重付加性官能基を有すそれ以外の化合物(以下、コモノマーと称す)とを反応させることにより重合体とすることが好ましい。なお、これらコモノマーが有する重付加性官能基としては、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物が有す重付加性官能基と同様の基が例示される。
当該コモノマーとしては、上記のような重付加性官能基を有する公知の化合物を制限なく用いることが出来る。
得られる光学材料のアッベ数や屈折率等の各種光学的物性、耐衝撃性等の機械的物性を考慮すると総炭素数が1〜30であり、2〜6つの重付加性官能基を有すコモノマーが好ましい。
このようなコモノマーを具体的に例示すると、付加する側の官能基を有すコモノマーとしては、トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン等の多価アルコール化合物類;メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕ペプタ−exo−cis−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール等の脂肪族ポリチオール類;1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール類;2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオベンゼンオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン等の複素環を含有したポリチオール類;1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール類;ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン等、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル;ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール類;3,4−チオフェンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物類;マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類;1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン等の第1級ポリアミン類;N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−あるいは2,6−ジメチルピペラジン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)ブタン、テトラメチルグアニジン等の第2級ポリアミン類等が具体的に挙げられる。これらコモノマーは、それぞれ単独で用いることも、また二種類以上を混合して用いてもよい。
上記コモノマーのなかでも複数のメルカプト基を有す化合物(各ポリチオール類)が好ましく、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の特に好ましい化合物として挙げられる。
また、付加される側の官能基を有すコモノマーとしては、(チオ)イソシアナート基を重付加性官能基として有す化合物として、o−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、m−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、p−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、α,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、1,3,5−トリス[(チオ)イソシアナートメチル]ベンゼン等の芳香族(チオ)イソシアナート類;4−クロル−m−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、4,5−ジクロル−m−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、2,3,5,6−テトラブロム−p−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、4−メチル−m−キシリレンジ(チオ)イソシアナート、4−エチル−m−キシリレンジ(チオ)イソシアナート等の塩素、臭素又は低級アルキル基置換の芳香族(チオ)イソシアナート類;イソホロンジ(チオ)イソシアナート、ノルボルネンジ(チオ)イソシアナート、ビス[(チオ)イソシアナートメチル]ノルボルネン、メチレンビス[シクロヘキシル(チオ)イソシアナート]、ビス[(チオ)イソシアナートメチル]シクロヘキサン等の単環または多環式(チオ)イソシアナート;1,3−ジチオラン−4,5−ジ(チオ)イソシアナート等の硫黄原子を含んだ環からなる(チオ)イソシアナート類;4,5−ビス[(チオ)イソシアナートメチル]−1,3−ジチオラン、トリス[(チオ)イソシアナートメチルチオ]メタン、ヘキサメチレンジ(チオ)イソシアナート等の脂肪族(チオ)イソシアナート類等が具体的に挙げられる。さらに、これら(チオ)イソシアナート体のビュレット体、アフロート体などのオリゴマーが挙げられる。
また、エテニル基を重付加性官能基として有する化合物として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、一分子内に少なくとも二つ以上の(メタ)アクリロキシ基を含むウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート及びポリエステル変性(メタ)アクリレート等が挙げられ、エテニル基と(チオ)イソシアナート基の双方を有す化合物として、2−(メタ)アクリロキシエチル(チオ)イソシアナート、(メタ)アクリロイル(チオ)イソシアナート等が挙げられる。これらコモノマーも、それぞれ単独で用いても、また二種類以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも、(チオ)イソシアナート基を重付加性官能基として有す化合物が特に好ましい。
上記のようなコモノマーと、本発明の含硫黄重合性アダマンタン化合物とから重合体を得るためには、通常は、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物が有す重付加性官能基が付加する側の基である場合には、コモノマーの有す重付加性官能基は付加される側の基、逆に含硫黄重合性アダマンタン化合物が有す重付加性官能基が付加される側の基である場合には、コモノマーの有す重付加性官能基は付加する側の基である化合物を適宜選択し、これらを後述するような方法で重合させればよい。
上述のように、これらコモノマーとしては、その有する該重付加性官能基が付加する側の基であっても、付加される側の基であっても少なくとも2つ以上の重付加性官能基を有すコモノマーが含まれている必要がある。得られる重合体の各種物性を考慮すると、架橋型の重合体となるよう、含硫黄重合性アダマンタン化合物又はコモノマーの少なくともいずれか一方として、重付加性官能基を3つ以上有す化合物を配合することがより好ましい。また必要に応じて、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物が有する重付加性官能基と同種の基を有すコモノマーをさらに配合しても良いし、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物として、付加する側の基を有す化合物と付加される側の基を有す化合物とを併用し、コモノマーとしていずれかの重付加性官能基を有す化合物を用いることも可能である。さらに、重付加性官能基を1つだけ有す化合物を配合してもかまわない。
これら含硫黄重付加性アダマンタン化合物及びコモノマーは、(付加される側の官能基/付加する側の官能基)が、0.5〜3(好ましくは0.5〜1.5)の範囲となるよう適宜選択して用いることが、得られる重合体の光学的物性や機械的物性が良好なものとなるため好ましい。具体的には、例えば((チオ)イソシアナート基の数)/(水酸基+メルカプト基の数)が0.5〜3.0(好ましくは0.5〜1.5)となるように、使用する含硫黄重付加性アダマンタン化合物及びコモノマーを配合すると良い。
また、特に重合性に優れている点で、重付加性官能基として(チオ)イソシアナート基を有す化合物と、メルカプト基又は水酸基を有す化合物との組み合わせになるように、本発明における含硫黄重付加性アダマンタン化合物及びコモノマーを選択することが好ましい。
さらに、耐熱性と耐衝撃性とのバランスが優れた重合体とするために、最終的に得られる重合体における、アダマンタン環に由来する質量(136−アダマンタン環の有す置換基の数;以下AD比率と称す)が、得られる重合体の質量中の15〜60%を占めるように、含硫黄重合性アダマンタン化合物とコモノマーの比を調整することが好ましい。一般にAD比率が高いほど耐熱性に優れ、逆にAD比率の低いほど耐衝撃性に優れた重合体とすることができる。
このような範囲とするために、コモノマーとしては分子量50〜500の化合物を用い、含硫黄重付加性アダマンタン化合物とコモノマーとのモル比を0.5〜3の範囲で重合させることが好ましい。
さらに、得られる重合体の硫黄原子含有量が0.15以上となるように、適宜含硫黄重付加性アダマンタン化合物とコモノマーとを選択することにより高い屈折率を得ることが容易となる。
また、上記含硫黄重付加性アダマンタン化合物及びコモノマーに加え、他の重合方式で重合する各種モノマーも適宜配合しても構わない。
さらに必要に応じて、耐候性改良のための紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光染料、光安定剤、油溶染料、内部離型剤などの添加剤を適宜加えてもよい。また、重合反応性向上のための触媒を適宜使用してもよく、例えばメルカプト基とエテニル基との反応性向上のためには有機過酸化物、アゾ化合物や塩基性触媒が有効であり、メルカプト基や水酸基と、(チオ)イソシアナート基との反応性向上のためには有機スズ化合物、アミン化合物などを配合することが効果的である。これら触媒の配合量は公知の範囲で加えればよく、一般には含硫黄重付加性アダマンタン化合物及びコモノマーの有する重付加性官能基1モルに対して通常0.0001モル〜0.1モル程度使用すれば良い。
上述のような含硫黄重付加性アダマンタン化合物及びコモノマー、ならびに必要に応じて配合される他の成分から、重合体を製造する方法は特に制限されず、公知の重付加型の重合体を製造する方法を適宜採用すればよい。
一例として重合体がメガネレンズ等の光学材料である場合の製造方法について述べる。含硫黄重付加性アダマンタン化合物、コモノマー及び必要に応じて配合される添加剤や触媒を混合、十分に脱泡して均一な原料混合物を得る。ついで該原料混合物を公知の注型重合法、すなわちガラス製または金属製のモールドと樹脂製のガスケットを組合せた型の中に注入し、加熱して硬化させる。この時、成形後の樹脂の取り出しを容易にするために、あらかじめモールドを離型処理したり、上記原料混合物中に離型剤を混合してもよい。重合温度は、使用する化合物により異なるが、一般には−20〜+150℃で、重合時間は0.5〜72時間である。重合温度、重合時間は、モノマーの組成、添加剤の種類や量によっても異なるが、一般的には、5〜20℃から昇温を開始し、100℃〜130℃程度まで8〜30時間で昇温し、さらに1〜10時間程度保持すればよい。
続いて、重付加性官能基がヘテロ原子を含む環状の基である場合について説明する。
前述したように、重付加性官能基がヘテロ原子を含む環状の基である場合には、該ヘテロ原子を含む環状の基が付加される側の基であると同時に、付加されることにより開環して付加する側の基を生じる。従って、当該ヘテロ原子を含む環状の基のみを含む化合物のみで重合させることが可能である。
このようなヘテロ原子を含む環状の基は、加熱することにより単独で重合させることが可能であるが、硬化触媒を用いて加熱する方が好ましい。当該硬化触媒としては、エポキシ基及び/又はエピスルフィド基の開環重合触媒として公知の化合物、例えば、アミン類、ホスフィン類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸等を使用することができる。具体例としては、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ベンジルアミン、ジヘキシルアミン等のアミン類;該アミン類とハロゲン、鉱酸、ルイス酸、有機酸、ケイ酸、四フッ化ホウ酸等とのアンモニウム塩;アミン類とボランおよび三フッ化ホウ素との錯体:トリメチルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸等の鉱酸類およびこれらの半エステル類;三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素のエーテラート等に代表されるルイス酸類;カルボン酸に代表される有機酸類およびこれらの半エステル類;ケイ酸、四フッ化ホウ酸等である。これら触媒は単独でも2種類以上を混合して用いても良い。
以上の硬化触媒は、エポキシ基及び/又はエピスルフィド基等のヘテロ原子を有する環状の基1モルに対して通常0.0001モルから0.1モル程度使用すれば良い。
また前記コモノマーとして例示した第1級又は第2級のポリアミン類やポリカルボン酸類も硬化の触媒として作用する。この場合には、当該ポリアミン類やポリカルボン酸類は重合体中に取り込まれ、該重合体を構成する単位にもなる。このような場合には、その配合量は上記硬化触媒として使用する範囲よりさらに多量に使用しても良い。
また、ヘテロ原子を有する環状の基を有す化合物としては、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物を単独で使用すれば良いが、必要に応じて、ヘテロ原子を有する環状の基を有す他の化合物を併用しても良い。このような化合物としては公知の各種エポキシ化合物、エピスルフィド化合物を用いればよい。
さらに、前述したような、ヘテロ原子を有する環状の基以外の重付加性官能基を有す、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物やコモノマーを併用することも可能である。
これらの場合にも、得られる重合体におけるアダマンタン環に由来する質量(136−アダマンタン環の有す置換基の数)が、得られる重合体の質量中の15〜60%を占め、また、硫黄原子含有量が15%以上となるように、各成分の配合比を調製することが好ましい。
さらにこの場合にも必要に応じて、耐候性改良のための紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光染料、光安定剤、油溶染料、内部離型剤などの添加剤を適宜加えてもよい。
上述のようなヘテロ原子を有する環状の基を重付加性官能基として有す、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物、及び必要に応じて配合される他の成分から重合体を製造する方法は特に制限されず、公知の重付加型の重合体を製造する方法を適宜採用すればよい。
一例としては、ヘテロ原子を有する環状の基を重付加性官能基として有す本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物、前記各種硬化触媒、及び必要に応じて配合される他の成分を混合、十分に脱泡して均一な原料混合物を得、その後、該原料混合物を用いて、前記したのと同様の方法により、メガネレンズ等の光学材料を製造することができる。
上記のような方法で得られた重合体からなる光学材料は、必要に応じて、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、ファッション性付与等の改良を行なうため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。また、本発明で得られる光学材料は、通常の分散染料を用い、水または溶媒中で容易に染色が可能である。染色の際、更に染色を容易にするために染色浴に染色助剤であるキャリヤーを加えてもよい。
このようにして得られる本発明の重合体からなる光学材料は、極めて低分散で、高屈折率、耐熱性に優れ、かつ、無色透明であり、軽量で、耐候性、耐衝撃性に優れ、更に、低吸水性で、表面硬度に優れた特徴を有しており、眼鏡レンズ、カメラレンズ、LCD基板等の光学素子材料のみでなく、グレージング材料、塗料、接着剤の材料としても好適である。さらには、成型加工時に臭気が少ないという特徴も併せもち、加工性に優れた材料である。
また、光学材料に限らず、高い耐熱性と加工時の低臭気性を要する他の用途に使用することもむろん可能である。
以下、本発明を説明するために、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
得られたレンズの性能試験は以下の試験法により評価した。
・屈折率及びアッベ数:アタゴ(株)製アッベ屈折率計を用いて、20℃における屈折率(nd)及びアッベ数を測定した。接触液にはブロモナフタレンまたはヨウ化メチレンを使用した。屈折率及びアッベ数は共に高い方が好ましい。
・外観:目視により着色、透明性を観察した。
・耐熱性:TMA(セイコーエプソン製)を用いて、試験片に5g加重し、5℃/分で加熱して、その熱変形開始温度を測定した。
・耐候性:スガ試験機(株)製ロングライフキセノンフェードメーター中に試料を設置し、100時間キセノン光を露光した後、試験前のプラスチックレンズと色相を比較評価した。
(○):色相の変化がほとんど見られなかった。
(×):色相が黄変した。
・臭気:ダイヤモンドカッターでの切断時、もしくは玉擦り機での研磨時における臭気を以下のような基準で評価した。
(◎):臭気が感じられないもの。
(○):臭気をかすかに感じるが、長時間でも気にならないもの。
(△):臭気があるが、短時間では気にならないもの。
(▲):臭気に少し不快感があるもの。
(×):臭気がひどいもの。気分を害するもの。
・耐衝撃性耐衝撃性は、厚さ2mmの平板の試験片に、重さ16.3gの剛球を127cmの高さより落下させることにより評価した。
また、原料とした含硫黄重合性アダマンタン化合物は以下の方法により合成した。
製造例1:
1,3−アダマンタンジオール17g(0.1mol)とチオ尿素152g(2.0mol、アダマンタン化合物に対して20モル当量)に濃塩酸500g(アダマンタン化合物0.1molあたり500g)を加えた後、100℃にて10時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、50%水酸化ナトリウム水溶液を600g添加し、110℃で2時間加熱攪拌を行なった。室温まで放冷したのち、析出した白色固体を12.1g単離した。得られた白色固体の、元素分析、MASS、1H−NMR及びIRスペクトルを表1に示す。これら分析結果より単離化合物は3−メルカプトアダマンタン−1−オール(化合物A)であることを確認した。
製造例2:
3−メルカプトアダマンタン−1−オール10g(0.054mol)とチオ尿素76g(1.0mol)に濃塩酸250gを加えた後、100℃にて15時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、50%水酸化ナトリウム水溶液を300g添加し、次いで10℃で2時間加熱攪拌を行なった。室温まで放冷して析出した白色固体を水/メタノール(重量比1:8)から再結晶を行ない、白色固体を8.2g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表1に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−アダマンタンジチオール(化合物B)であることを確認した。
製造例3:
1,3,5−アダマンタントリオール9.2g(0.05mol)を用いて製造例1と同様な仕込み比および反応条件で、メルカプト化、続いて後処理を行なうことにより、白色固体を4.7g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表1に示す。これらの分析結果より単離化合物は5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオール(化合物C)であることを確認した。
製造例4:
5−メルカプトアダマンタン−1,3−ジオール8.0g(0.04mol)を用いて製造例2と同様な仕込み比および反応条件で、メルカプト化、続いて後処理を行なうことにより、白色固体を5.4g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表1に示す。これらの分析結果より単離化合物は3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オール(化合物D)であることを確認した。
製造例5:
3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オール10.8g(0.04mol)を用いて製造例2と同様な仕込み比および反応条件で、メルカプト化、続いて後処理を行なうことにより、白色固体を5.5g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表1に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3,5−アダマンタントリチオール(化合物E)であることを確認した。
製造例6:
1,3,5,7−アダマンタンテトラオール10g(0.05mol)とチオ尿素380g(5mol)に濃塩酸410gを加えた後、加圧装置を用いて120℃にて60時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、50%水酸化ナトリウム水溶液を500g添加したのち、110℃で2時間加熱攪拌を行なった。室温まで放冷したのち、析出した白色固体を0.7g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表1に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3,5,7−アダマンタンテトラチオール(化合物F)であることを確認した。
製造例7:
1,3−アダマンタンジオール25g(0.15mol)と1,2−エタンジチオール280g(3.0mol)にp−トルエンスルホン酸6g(0.03mol)を加えた後、140℃にて12時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、析出したp−トルエンスルホン酸をろ別したのち、5%炭酸水素ナトリウム溶液200ml、次いで水200mlで洗浄し、さらに1,2−エタンジチオールを減圧留去した後、減圧蒸留(沸点280℃/0.5mmHg)して、16gの無色油状物を得た。得られた無色油状物の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表2に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン(化合物G)であることを確認した。
製造例8:
1,3,5−アダマンタントリオール25g(0.15mol)とビス(2−メルカプトエチル)スルフィド280g(3.0mol)にp−トルエンスルホン酸6g(0.03mol)を加えた後、140℃にて15時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、析出したp−トルエンスルホン酸をろ別したのち、5%炭酸水素ナトリウム溶液200ml、次いで水200mlで洗浄し、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを減圧留去した後、減圧蒸留(沸点320℃/0.5mmHg)し、無色油状物として目的物を24g得た。得られた無色油状物の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表2に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3,5−トリス[2−(2−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]アダマンタン(化合物H)であることを確認した。
製造例9:
1,3−アダマンタンジオール17g(0.1mol)と1,2−エタンジチオール280g(3.0mol)にp−トルエンスルホン酸2g(0.01mol)を加えた後、120℃にて2時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却後、析出したp−トルエンスルホン酸をろ別したのち、5%炭酸水素ナトリウム溶液150ml、次いで水150mlで洗浄し、ついで1,2−エタンジチオールを減圧留去後、減圧蒸留(沸点220℃/0.5mmHg)し、13gの無色油状物を得た。得られた無色油状物の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表2に示す。これらの分析結果より単離化合物は3−(2−メルカプトエチルチオ)アダマンタン−1−オール(化合物I)であることを確認した。
製造例10:
1,3−アダマンタンジカルボン酸22.4g(0.10mol)、p−トルエンスルホン酸6g(0.03mol)にエタノール200gを加えた後、ディーンスターク脱水装置を用いて水分を留去しながら10時間加熱還流を行なった。室温にまで冷却後、溶媒を留去し、クロロホルム、水を加え1N炭酸水素ナトリウム水溶液で中和を行なった。有機層を乾燥濃縮後、残さを24.4g得た。1H−NMRより主生成物は、1,3−アダマンタンジカルボン酸エチルであることを確認した。得られたエステル体19.6gを乾燥テトラヒドロフラン300mlに溶解し、氷冷下リチウムアルミニウムハイドライド2.7gを徐々に加えた。3時間攪拌後、反応液を氷冷した1N塩酸500mlにゆっくり加えた。反応液にクロロホルム500mlを加えたのち、有機相を分離し、続いて濃縮、乾燥を行ない白色固体を13.6g得た。1H−NMRより主生成物は、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタンであることを確認した。得られたアルコール体9.8gを用いて製造例2と同様な仕込み比および反応条件で、メルカプト化、続いて後処理を行なうことにより、白色固体を7.8g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表2に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−ビス(メルカプトメチル)アダマンタン(化合物J)であることを確認した。
製造例11:
1,3,5−アダマンタントリチオール23.2g(0.10mol)およびピリジン9.0gをトルエン200mlに加えた後0℃に冷却し、塩化アセチル7.9g(0.10mol)を徐々に滴下したのち、2時間70℃で加熱攪拌した。放冷しクロロホルム、水を加え有機層を希塩酸で中和後、有機層を分離濃縮した。カラムクロマトグラフィーにて精製を行い、白色固体を7.2g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表2に示す。これらの分析結果より単離化合物は5−アセチルチオ−1,3−ジメルカプトアダマンタン(化合物K)であることを確認した。
製造例12:
3,5−ジメルカプトアダマンタン−1−オール21.6g(0.10mol)と酢酸23g(0.20mol)をトルエン200mlに加え、さらにp−トルエンスルホン酸・1水和物を1g加え、ディーンスターク脱水装置を用いて水分を留去しながら加熱攪拌した。4時間後、放冷しクロロホルム、水を加え有機層を炭酸ナトリウムで中和後、有機層を分離濃縮した。カラムクロマトグラフィにて精製を行い、白色固体を9.4g単離した。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表3に示す。これらの分析結果より単離化合物は5−アセチルオキシ−1,3−ジメルカプトアダマンタン(化合物L)であることを確認した。
製造例13:
1,3−アダマンタンジオール42g(0.24mol)とチオグリコール酸エチル100g(0.8mol)にp−トルエンスルホン酸8g(0.04mol)を加えた後、130℃にて6時間加熱攪拌を行なった。室温にまで冷却、析出したp−トルエンスルホン酸をろ別したのち、5%炭酸水素ナトリウム溶液200ml、次いで水200mlで洗浄し、さらにチオグリコール酸エチルを減圧留去した後、減圧蒸留(沸点280℃/0.5mmHg)し、無色油状物を44g得た。1H−NMRから、1,3−ビス(エトキシカルボニルメチルチオ)アダマンタンであることを確認した。
続いてこの1,3−ビス(エトキシカルボニルメチルチオ)アダマンタン37gをエタノール100mlに溶解し、5℃に保ちつつ、ヒドラジン・一水和物12.4gを滴下した。2時間後、生じた1,3−ビス(ヒドラジノカルボニルメチルチオ)アダマンタンの固体を濾過回収した。これを冷エタノール20mlで2回洗浄した。乾燥後、水約30mlに溶解し、5℃に冷却して濃塩酸7gを滴下した。さらに、亜硝酸ナトリウム4.4gを水12mlに溶解した溶液を滴下した。1時間後、ベンゼン60mlを加え撹拌しながら室温まで昇温した。有機相を分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、該有機相を60℃のベンゼン200ml中に、ゆっくり滴下した。そのまま2時間反応後、室温にまで冷却し、ベンゼンを減圧留去した。得られた淡黄色油状物を減圧蒸留(沸点270℃/0.5mmHg)し、無色油状物として目的物を27g得た。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表3に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−ビス(イソシアナートメチルチオ)アダマンタン(化合物M)であることを確認した。
製造例14:
製造例13において、チオグリコール酸エチルの代わりにチオプロピオン酸エチルを用いること以外は同様な方法で反応を行ない白色固体を得た。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表3に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−ビス(2−イソシアナートエチルチオ)アダマンタン(化合物N)であることを確認した。
製造例15:
二硫化炭素76g(1.0モル)、水52g、50%NaOH水溶液81.8g(1.0モル)の混合液に、1,3−アダマンタンジアミン83g(0.5モル)を20〜30℃で2時間かけて滴下し、さらに滴下終了後70〜80℃で1時間加熱した。この反応液に、水100mlとトルエン200mlを加えた後に、メチルクロロホルメート100g(1.05モル)を40〜50℃で1時間かけて滴下し、滴下終了後さらに40〜50℃で1時間保持した。下層の水層を分液廃棄し、得られた有機層を乾燥後、90〜100℃で3時間保持し分解を完結させた。得られた反応液を、減圧下で脱溶媒し、減圧蒸留(230℃/0.5mmHg)を行ない、白色固体を42g得た。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表3に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−アダマンタンジチオイソシアナート(化合物O)であることを確認した。
製造例16:
1,3−アダマンタンジチオール100g(0.5mol)とエピクロルヒドリン93g(1.0mol)を10℃まで冷却し、水酸化ナトリウム5mmol(0.2g)を水5mlに溶かした水溶液を加え、この温度で1時間攪拌した。その後、液温を40〜45℃前後に保ちながら3時間攪拌した。室温に戻し、水酸化ナトリウム40g(1mol)を水60mlに溶かした水溶液を、液温を40〜45℃前後に保ちながら滴下しその後、液温をそのままに保ちながら2時間攪拌した。反応混合物に水100mlを加え、トルエン200mlで抽出した後、水洗した。トルエン層を乾燥後、溶媒を留去し、白色固体を95.0g得た。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表3に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−ビス(グリジジルチオ)アダマンタン(化合物P)であることを確認した。
製造例17:
1,3−ビス(グリシジルチオ)アダマンタン93.6(0.3mol)とエタノール40mlをチオシアン酸カリウム87.5g(0.9mol)を水60mlに溶解させた水溶液に加え、1時間かけて液温を45℃まで上昇させ、この温度で5時間反応させた。反応混合物に水500mlを加え、トルエン500mlで抽出し、トルエン層を水500mlで3回洗浄した。トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、白色固体を得た。得られた白色固体の元素分析、MASS、1H−NMR、IRスペクトルを表3に示す。これらの分析結果より単離化合物は1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)アダマンタン(化合物Q)であることを確認した。
製造例1〜17で製造した本発明の化合物は、いずれもアダマンチル基の1〜7位の少なくとも2箇所に、重付加性官能基及び/又は重付加性官能基を有す基、を有する化合物である。表4にこれら製造した化合物の置換基をまとめて記す。
また、実施例、比較例で用いた、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物以外の重合性化合物(コモノマー)の略号を以下に示す。
PETP:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
DDOL:1,10−デカンジオールXDI:m−キシリレンジイソシアナート
H6−XDI:1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンNBDI:ノルボルナンジイソシアナート(注:2,5−および2,6−ノルボルナンジイソシアナートの混合物)
XDTI:m−キシリレンジチオイソシアナート
MEI:2−メタクリロキシエチルイソシアナート
DMMD:2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン
METM:1,2−ビス(2−メルカプトエチル−1−チオ)−3−メルカプトプロパン
DDTL:1,10−デカンジチオール
ADSH:1−アダマンタンチオール
ADDL:1,3−アダマンタンジオール
実施例1〜20
前記製造例1〜17で製造した本発明の重合性メルカプト化合物、重合性イソシアナート化合物、重合性チオイソシアナート化合物のいずれか、または2種類以上を用い、コモノマーを添加して、表5、6に示すモノマー組成の硬化性組成物を調製した。
重合は次のようにして行った。即ち、本発明の含硫黄重合性アダマンタン化合物、コモノマー、および重合触媒としてジブチルスズジラウレート(DBTDL)1×10−5molを混合して均一液とし、十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとガスケットよりなるレンズ用のモールド型に注入した。50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させレンズ形状の重合体を得た。重合終了後、徐々に冷却し、レンズをモールドより取り出した。得られた重合体の諸物性を表5、6に示す。また表中に重合体のAD比率を併せて記した。
表5、6に示されているように、本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物を重合単位として含む、本実施例1〜20の重合体は無色透明であり、屈折率(nd)が非常に高く、アッベ数(ν)も高く、メガネレンズ等の用途に好適な光学物性を有していることがわかる。また耐熱性に優れ、臭気が非常に少なく、耐候性も良好であった。特に臭気については、重合体中の硫黄原子がアダマンチル基に直接結合している割合の多いほど優れており、全ての硫黄原子がアダマンチル基に直接結合している場合には、作業時に臭気が全く感じられなかった。
また実施例2、7、10の比較から、用いたコモノマー及び含硫黄重合性アダマンタン化合物の有す重付加性官能基の数が同じ場合には、AD比率が高い方がより耐熱性に優れていることがわかる。
比較例1〜5:
本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物を配合せず、表7に示した各化合物を用いて、実施例と同様の方法で重合して重合体を得た。得られた重合体の物性は表7に記した。
比較例1は、得られる重合体中にアダマンタン環が存在しない場合の結果である。これらの場合には、アッベ数が低く、また耐熱性にも劣るものであった。また比較例2、3に示されるように、高い屈折率を得るために硫黄の含有率を上げると著しく不快な臭気を生じ、加工性に問題があった。
比較例4における重合体は実施例20と同等のAD比率及び硫黄原子含有率の重合体である。この場合、硫黄原子がアダマンタン環に直接結合している実施例20に対し、逆に全ての硫黄原子がアダマンタン環と直接結合していない比較例4では、臭気が著しく、重合体の有する硫黄原子が含硫黄重合性アダマンタン化合物に由来するものであるのが重要であることが理解できる。
また、比較例5は重付加性官能基を1つしか有さないアダマンタン化合物を用いた場合の例であるが、この場合には、硬化体が得られなかった。
実施例21
エポキシ系の含硫黄重合性アダマンタン化合物である化合物Pを100重量部に対してトリプロピルアミンを1重量部配合し、これを2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、90℃で8時間重合硬化し重合体を得た。得られた材料の屈折率は1.60、アッベ数38であり、耐熱性は155℃、耐候性は良好であった。また、研摩時の臭気はほとんどなく、(◎)レベルであった。
実施例22
エピスルフィド系の含硫黄重合性アダマンタン化合物である化合物Qを100重量部に対し、トリプロピルアミンを1重量部配合し、これを2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、90℃で8時間重合硬化し重合体を得た。得られた材料の屈折率は1.64、アッベ数34であり、耐熱性は150℃、耐候性は良好であった。また、研摩時の臭気はほとんどなく、(◎)レベルであった。
比較例6
1,3−ビス(グリシジルオキシ)アダマンタン100重量部にトリプロピルアミンを1重量部配合し、これを2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、90℃で8時間重合硬化し重合体を得た。得られた材料の屈折率は1.54、アッベ数46であり、耐熱性は129℃であった。前記実施例21、22における本発明における含硫黄重合性アダマンタン化合物から得た重合体と比較して、屈折率が大幅に低かった。
実施例23
実施例7、および実施例14の化合物Gを用いて成形した光学材料の耐衝撃性試験を行なったところ、何れの場合も割れは見られなかった。