本発明の実施の形態による固体電解コンデンサ及び固体電解コンデンサの製造方法について図1乃至図3に基づき説明する。図1に示されるように固体電解コンデンサ1は、積層された4つのコンデンサ素子10〜40と、プリント基板50と、接続部材60と、4つのコンデンサ素子10〜40を覆うようにしてモールドする樹脂モールド80とを備えている。
4つのコンデンサ素子10〜40は、それぞれ同一形状且つ同一の構成であり、図1に示されるように陽極部11〜41と、陰極部12〜42とを備えている。なお、図2を参照して説明する以下の説明では、4つのコンデンサ素子10〜40の構成は同一であることから、コンデンサ素子10のみについて図示し、他のコンデンサ素子20〜40については説明を省略する。
陽極部11は略長方形状をした板状をなしており、図1及び図2に示される左右方向に長辺が指向し、図1に示される左側の端部11Bには、図3に示されるように外方へ略長方形状に突出する凸部11Cが設けられている。陽極部11は弁作用金属であるアルミニウムにより構成されており、図2に示されるように、その表面には、表面積を増やすためにエッチングが施されることにより粗面化(拡面化)されてポーラス状になっている。このポーラス状の表面全体は化成処理(陽極酸化)によって絶縁性の酸化膜層(誘電体層)11Aが形成されている。陽極部11の寸法は、長手方向の長さが10mm、幅が5mm程度であり、厚さ、即ち、図2に示される上下方向の幅は100μm程度である。
陽極部11の表面の所定の領域、即ち、図2に示される陽極部11の右側の端部から左側の端部11Bに向って陽極部11の左右方向の長さの略2/3の位置に至るまでの領域全体には、導電性のポリマーにより構成される固体電解質層12Aが形成されている。固体電解質層12Aは酸化膜層11Aの上に積層して設けられており、酸化膜層11Aに対向する固体電解質層12Aの部分は、エッチングにより陽極部11の表面に形成されたポーラスの中に入り込んでいる。
固体電解質層12A上には、カーボンペースト層12Bと、銀ペースト層12Cとがこの順で積層されており、固体電解質層12A、カーボンペースト層12B、及び銀ペースト層12Cは陰極部12を構成する。カーボンペースト層12B及び銀ペースト層12Cは、固体電解質層12Aが形成されている陽極部11及び酸化膜層(誘電体層)11Aの領域を覆うようにして固体電解質層12A上に形成されている。
陽極部11の図2に示される左側の端部11Bであって陰極部12が設けられていない領域と陰極部12との境界位置には、絶縁性を有するエポキシ系樹脂等からなるレジスト13が設けられている。レジスト13は、固体電解質層12Aを陽極部11上に形成するために陽極部11となる化成箔を溶液に浸漬させているときに、ポーラス状になっている陽極部11の表面において毛細管現象により溶液が所定の領域よりも図2の左側の方へ上がってくることを防止し、固体電解質層12Aが形成されていない陽極部11の図2に示される左側の端部11Bを確保するために設けられている。
4つのコンデンサ素子10〜40は、図1に示されるように、陰極部12〜42同士が互いに積層配置されて素子積層体をなしている。陰極部12〜42は、板状の陽極部11〜41上に形成されているため、陽極部11〜41の厚さ方向に対して略垂直な上面10A〜40Aと下面10B〜40Bとを有している。図1に示されるように、積層される4つのコンデンサ素子10〜40の第1層をなす第1コンデンサ素子10の上面10Aと第2コンデンサ素子20の下面20Bとが接着剤71によって接着され、第2コンデンサ素子20の上面20Aと第3コンデンサ素子30の下面30Bとが接着剤71によって接着され、第3コンデンサ素子30の上面30Aと第4コンデンサ素子40の下面40Bとが接着剤71によって接着されている。
従って、4つのコンデンサ素子10〜40の陰極部12〜42は電気的に接続されており、後述のように4つのコンデンサ素子10〜40の陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41B同士が電気的に接続されることと相まって、4つのコンデンサ素子10〜40は電気的に並列接続されている。接着剤71は、炭酸カルシウム−エポキシ系接着剤、即ち、エポキシ樹脂と炭酸カルシウムとを主成分とし、炭酸カルシウムがエポキシ樹脂中に混合されて構成されている。炭酸カルシウムは接着剤71中のフィラーをなし、接着剤71のフィラー含有量は20vol%以下である。
4つのコンデンサ素子10〜40の陰極部12〜42が設けられていない陽極部11〜41の端部11B〜41Bの部分は、陰極部12〜42が設けられている部分と比較して銀ペースト層12C等が形成されていないことから薄くなっている。このため、図1に示されるように、コンデンサ素子10〜40の積層方向において、陽極部11〜41の図の左側の端部11B〜41B同士が互いに所定の間隔で離間して隣接して積層配置されている。
また、4つのコンデンサ素子10〜40の陰極部12〜42の図1に示される右端部には、陰極部12〜42に跨って覆うようにして導電性材料部72が設けられている。導電性材料部72は、銀−エポキシ系接着剤、即ち、エポキシ樹脂と銀とを主成分とし、銀がエポキシ樹脂中に混合されてなる導電性接着剤により構成されている。銀は導電性材料部72中のフィラーをなし、導電性材料部72のフィラー含有量は35vol%以上である。
積層された4つのコンデンサ素子10〜40は、陽極部11〜41と略同一形状をしたプリント基板50上に載置されている。プリント基板50は、例えば、エポキシ樹脂製のプリント基板50である。4つのコンデンサ素子10〜40は、プリント基板50に対して形状が一致して重なるようにプリント基板50上に載置されている。プリント基板50は、積層された4つのコンデンサ素子10〜40のうちの第1コンデンサ素子10の陰極部12及び陽極部11の下面に対向している。
プリント基板50の表面50A及び裏面50Bには、第1の導電パターン51A、51Bと第2の導電パターン52A、52Bとがそれぞれ設けられている。表面50Aの第1導電パターン51A、第2の導電パターン52Aは、それぞれ裏面50Bの第1の導電パターン51B、第2の導電パターン52Bと、スルーホール50a、50bを介して電気的に接続されている。第1の導電パターン51Aは、第1コンデンサ素子10の陽極部11の図1に示される左側の端部11Bに対向する位置に配置されており、第2の導電パターン52Aは、第1コンデンサ素子10の陰極部12に対向する位置に配置されている。
プリント基板50の裏面の第1の導電パターン51B、第2の導電パターン52Bは、それぞれ図示せぬ電子回路等に実装されるいわゆるユーザ端子であり、プリント基板50の表面の第1の導電パターン51A、第2の導電パターン52Aと同様の金属材料により構成されている。陽極部11の図1に示される左側の端部11Bは、プリント基板50の表面の第1の導電パターン51Aに電気的に後述の接続部材60及び導電性接着剤73を介して接続されている。また、陰極部12は導電性接着剤73によって第2の導電パターン52Aに電気的に接続されている。導電性接着剤73としては、例えば導電性材料部72と同一の銀−エポキシ系接着剤が用いられる。
4つのコンデンサ素子10〜40の陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41Bの位置には、接続部材60が設けられている。接続部材60は、図3に示されるように、それぞれ略長方形状の板状をなす接続部本体61と底部62と上壁部63とを有している。
接続部本体61は、図1に示されるように、コンデンサ素子10〜40の積層方向に沿って延出し、陽極部11〜41の各端部11B〜41Bにそれぞれ跨って当接して固定されている。接続部本体61は、すべての陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41Bの凸部11C〜41Cに対向した状態で、コンデンサ素子10〜40の積層方向に交差する方向であって、且つ陽極部11〜41の端部の凸部11C〜41Cが当接している側とは反対の側である接続部材60の外側から、即ち、図1の左側から右側へ向けてレーザの照射を受けることにより、陽極部11〜41の各端部11B〜41Bにそれぞれ電気的に接続される。接続部材60はNiにより構成されている。
接続部本体61は、図1に示されるように、積層されたコンデンサ素子10〜40よりも積層方向上方に突出する上方余肉部60Aと積層方向下方に突出する下方余肉部60Bとを備えている。上方余肉部60A、下方余肉部60Bは、それぞれ接続部本体61と同一の材料で接続部本体61と一体に設けられている。
上壁部63は、接続部本体61と同一の材料で接続部本体61と一体に設けられており、接続部本体61に関してコンデンサ素子10〜40側の方向、即ち、図1の右方向へ上方余肉部60Aから延出し、接続部本体61と略垂直の角度をなして接続されている。上壁部63は、積層された複数のコンデンサ素子10〜40の最上層のコンデンサ素子40の上方に位置しており、図1に示される最上層のコンデンサ素子40の上面と所定の隙間を介して対向している。上壁部63の延出方向に垂直の方向であって図3における左右方向に相当する上壁部63の長さは、同方向における接続部本体61の長さよりも短い。
接続部材60の底部62は、接続部本体61と同一の材料で接続部本体61と一体に設けられており、接続部本体61に関してコンデンサ素子10〜40側の方向、即ち、図1の右方向へ下方余肉部60Bから延出し、接続部本体61と略垂直の角度をなして接続されている。従って、接続部材60は、図1に示されるように、底部62と接続部本体61と上壁部63とで略コの字状をなしている。底部62の長手方向の幅、即ち、図3における左右方向の長さは、同方向における接続部本体61の長さに等しい。
底部62は、第1コンデンサ素子10の陽極部11の図1に示される左側の端部11Bと、プリント基板50の第1の導電パターン51Aとの間に配置されており、図1に示される最下層のコンデンサ素子10の陽極部11の端部11Bの下面と所定の隙間を介して対向し、導電性接着剤73を介してプリント基板50の第1の導電パターン51Aと対向している。
前述のように、陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41Bには凸部11C〜41Cが設けられているため、図3に示されるように、端部11B〜41Bはあたかも長方形状の一の短辺を挟む2つの角部を、それぞれ切欠いて取除いたたような形状をなしている。これに対して、図3に示されるように底部62は長方形状をしている。底部62は、コンデンサ素子10〜40の積層方向において、陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41Bの凸部11C〜41Cと重なるように配置されるのであるが、底部62の長手方向の幅、即ち、図3における左右方向の長さは、陽極部11〜41の幅方向における凸部11C〜41Cの幅、即ち図3における凸部11C〜41Cの左右方向の長さよりも大きい。また、底部62の長手方向の幅、即ち、図3における左右方向の長さは、図3における上壁部63の左右方向の長さよりも大きい。このため、底部62は、結果的にコンデンサ素子10〜40の積層方向においていずれのコンデンサ素子10〜40の陽極部11〜41とも重ならず、また、上壁部63とも重ならない非重畳部62Aを有する。
固体電解コンデンサの製造方法では、先ず、コンデンサ素子製造工程を行う。実際に行われるコンデンサ素子製造工程では、複数のコンデンサ素子が同時に製造されるが、ここでは、説明の便宜上1つのコンデンサ素子10が製造される工程を一回のコンデンサ素子製造工程とする。先ず、表面に酸化膜層11Aが形成され陽極部11となるアルミニウム板、即ち化成箔を打抜いて一端を略陰極部12の形状とする。このとき、後述のように陽極部となる化成箔の部分は、複数同時に製造される他のコンデンサ素子の陽極部が形成される化成箔の部分と、製品にならない余分な化成箔の部分を介して接続された状態となっている。後述の積層工程を行う直前に行う切断の工程において、この余分な化成箔の部分は切断され除去される。
次に、スクリーン印刷法を用いて、陽極部11の所定の位置であって陰極部12と陽極部11との境界となる位置にレジスト13を形成する。次に、前述のように化成箔を打抜いたときに、打抜いた断面には酸化膜層11Aが形成されていない部分が生ずるが、この部分に酸化膜層11Aを生成するために再度酸化させる再化成を行う。
次に、レジスト13を境とする所定の領域、即ち図1に示される陽極部11のレジスト13よりも右側の部分に相当する化成箔の部分を、固体電解質層12Aを形成するための反応溶液中に浸漬し、化学酸化重合を行うことにより固体電解質層12A、即ち、導電性ポリマー層を形成する。陽極部11の表面はエッチングによりポーラス状になっているので、直接銀ペースト層12Cを形成することができないため、銀ペースト層12Cを形成する準備のために固体電解質層12Aを形成するのである。
次に、何らかの原因により、化成箔の表面に形成されている酸化膜層11Aに破損が生じることがある。この部分を修正するために再度酸化させる修復工程を行う。次に、導電性高分子層の上にカーボンペースト層12Bと、銀ペースト層12Cとをこの順で積層して形成する。カーボンペースト層12B、銀ペースト層12Cの形成は、ディップ法やスクリーン印刷法やスプレー塗布法等が用いられる。以上がコンデンサ素子製造工程である。このコンデンサ素子製造工程を4回行うことによって、4つのコンデンサ素子10〜40を製造する。
次に、陽極部となる化成箔の部分から前述の余分な化成箔の部分を切断し除去し、複数のコンデンサ素子が余分な化成箔の部分によって繋がれている状態から、ばらばらにされた4つのコンデンサ素子10〜40の状態とする。
次に、積層工程を行う。積層工程では、4つのコンデンサ素子10〜40を、陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41B同士が互いに隣接するように積層配置するとともに、陰極部12〜42同士を互いに積層配置して素子積層体を製造する。陰極部12〜42間には、フィラー含有量が20vol%以下の接着剤71が塗布される。
より具体的には、先ず、コンデンサ素子10の陰極部12の上面に接着剤71を塗布し、コンデンサ素子20の陰極部22の下面を、接着剤71を介してコンデンサ素子10の陰極部12に固定する。また、コンデンサ素子20の陰極部22の上面に接着剤71を塗布し、コンデンサ素子30の陰極部32の下面を、接着剤71を介してコンデンサ素子20の陰極部22に固定する。また、コンデンサ素子30の陰極部32の上面に接着剤71を塗布し、コンデンサ素子40の陰極部42の下面を、接着剤71を介してコンデンサ素子30の陰極部32に固定する。
次に端部処理工程を行う。端部処理工程では、導電性接着剤72となるフィラー含有量35vol%以上の銀−エポキシ系接着剤材料が貯留されている貯留漕に浸漬させた図示せぬへら、若しくは導電性材料部72となる材料を吐出可能なディスペンサーを用いて、陰極部12〜42の図1に示される右端部に当該導電性材料部72となる材料を供給することにより、導電性材料部72を設ける端部処理を行うか、又は、陰極部12〜42の図1に示される右端部を、導電性材料部72となる材料が貯留されている貯留漕中に直接浸漬させることにより、導電性材料部72を設ける端部処理を行う。
次に、接続工程を行う。接続工程では、図3に示されるように、4つの積層されたコンデンサ素子10〜40とは別体として用意された接続部材60を、積層した複数のコンデンサ素子10〜40の陽極部11〜41の図1に示される左側の端部11B〜41Bに、電気的に接続することにより、4つのコンデンサ素子10〜40を互いに電気的に並列接続する接続部材固定工程を行う。
具体的には、先ず、積層された4つのコンデンサ素子10〜40の第1層をなす第1コンデンサ素子10の陽極部11の図1に示される左側の端部11Bの凸部11Cと平行に底部62を対向配置させた状態で、接続部材60の接続部本体61をすべての陽極部11〜41の当該端部11B〜41Bの凸部11C〜41Cに跨って当接させる。このことにより、コンデンサ素子10〜40の積層方向においていずれのコンデンサ素子10〜40の陽極部11〜41とも重ならない非重畳部62Aを底部62に規定する。
なお、図3において二点鎖線で示される矢印は、単に積層された4つのコンデンサ素子10〜40と、接続部材60と、プリント基板50との位置関係を示しているだけであって、必ずしもこの方向に移動させることによりこれら3つを接続するという意味ではない。
次に、陽極部11〜41の端部11B〜41Bに当接する接続部本体61の側に対する反対の側、即ち、図1に示される左側から、コンデンサ素子10〜40の積層方向に交差する方向、具体的には、積層方向に垂直の方向に向けて接続部本体61に対してレーザを照射する。レーザはYAGレーザ溶接が用いられ、レーザの照射は、陽極部11〜41の端部11B〜41Bの凸部11C〜41Cに当接する接続部本体61の位置にのみにスポットで間欠的に照射する。例えば、光ファイバとしてφ0.4mmのSIファイバを用いた場合には、1回の照射エネルギーは3Jから15J程度である。このことにより接続部本体61を陽極部11〜41の各端部11B〜41Bに電気的に接続する。以上が接続部材固定工程である。
次に、プリント基板接続工程を行う。プリント基板接続工程では、4つの積層されたコンデンサ素子10〜40とは別体として用意されたプリント基板50上に、当該4つの積層されたコンデンサ素子10〜40を載置し電気的に接続する。具体的には、先ず、導電性接着剤73を、図4に示されるように第1の導電パターン51A上へ塗布し、また、第2の導電パターン52A上へ円形状及び長方形状に塗布する。そして、導電性接着剤73をそれぞれ塗布したプリント基板50の第1の導電パターン51A、第2の導電パターン52A上に、底部62、陰極部12をそれぞれ当接させる。このことにより、底部62をプリント基板50の第1の導電パターン51Aに電気的に接続すると共に、陰極部12〜42を第2の導電パターン52Aに電気的に接続する。
その後、固体電解コンデンサ1を保護するために樹脂モールド工程を行い、4つのコンデンサ素子10〜40が互いに積層配置されてなる素子積層体の周囲に樹脂モールド80を設ける。より具体的には、図示せぬ金型のキャビティに、プリント基板50が接続された状態の素子積層体をセットし、当該図示せぬキャビティに液状の樹脂を充填して素子積層体を鋳ぐるむことにより、素子積層体の周囲に樹脂モールド80を設ける。次に、絶縁破壊が生じている部分を修復するためのエージング処理をするエージング工程を行う。エージング工程では、樹脂モールドされた素子積層体を125℃〜150℃程度に保持した状態で電圧を0Vから除々に少しずつ上げながら印加する。その後、漏れ電流等の測定を行う特性検査や、外観検査を経て固体電解コンデンサの製造方法の全工程を終了する。
次に、本発明の効果を試す試験を行った。試験では、本発明による固体電解コンデンサを本発明品として3種類製造し、漏れ電流の値を測定した。また、固体電解コンデンサの製造方法において、接着剤71を構成するフィラー含有量20vol%以下の炭酸カルシウム−エポキシ系導電性接着剤に代えて、フィラー含有量20vol%を越える接着剤を用いて製造した固体電解コンデンサを比較品として3種類製造し、漏れ電流の値を測定した。
より具体的には本発明品を、上述した接着剤71に相当する接着剤として、フィラー含有量が0%のものと、10%のものと、20%のものとを用いて3種類構成した。また比較品を、上述した接着剤71に代えて陰極部12間に設けられる接着剤のフィラー含有量が25%のものと、30%のものと、35%のものとを用いて3種類から構成した。そして、これらの本発明品、比較品を製造する工程中の樹脂モールド工程において、図示せぬキャビティに液状の樹脂を充填する際の樹脂の成型圧を、6kgf/cm2、12kgf/cm2、24kgf/cm2、36kgf/cm2と変えて、それぞれ本発明品、比較品を製造した。本発明品、比較品の静電容量は220μF、定格電圧は2.5Vである。
そして、本発明品、比較品を製造する工程中のエージング工程を経た後に、定格電圧の1〜1.5倍程度の電圧を所定時間(例えば2分間)印加した後の特性検査における漏れ電流値の測定で、漏れ電流の値が2分間の測定で0.05CV程度で30μA以上の場合に当該検査の対象となった固体電解コンデンサを不良と判断し、30μA未満の場合に当該検査の対象となった固体電解コンデンサを良品と判断して歩留りを求めた。試験結果は、図5に示されるとおりである。
図5に示されるように、フィラー含有量が20%以下である本発明品の場合には、成型圧が6kgf/cm2で樹脂モールドしたものについては歩留まりが略80%と高い値になっており、また、成型圧が12kgf/cm2〜36kgf/cm2で樹脂モールドしたものについても歩留まりが略70%と高い値になっている。これに対して、フィラー含有量が20%を超える比較品の場合には、成型圧が6kgf/cm2で樹脂モールドしたものについては歩留まりが略75〜70%と低下しており、成型圧が12kgf/cm2で樹脂モールドしたものについては歩留まりが略70〜60%と低下している。更に、成型圧が24kgf/cm2で樹脂モールドしたものについては歩留まりが略60〜0%と低い値となっており、成型圧が36kgf/cm2で樹脂モールドしたものについては歩留まりが略40〜0%と極めて低い値となっている。
また、80℃、90%RH、500時間の高温・高湿の条件下において上述の試験と同様の試験を行った場合においても、フィラー含有量が35vol%の場合には歩留まりが20%であったが、これに対し、フィラー含有量が20vol%以下の場合には歩留まりが100%となり、フィラー含有量が20vol%以下としたときに良好な結果を得ることができた。
以上より、フィラー含有量が20%以下である本発明品の場合には、本発明品を製造する工程中の樹脂モールド工程において、図示せぬキャビティに液状の樹脂を充填する際の樹脂の成型圧を、6kgf/cm2、12kgf/cm2、24kgf/cm2、36kgf/cm2のいずれの値とした場合であっても、歩留まりを安定して70%〜80%と高い値とすることができることが分かる。これに対して、フィラー含有量が20%を越える比較品の場合には、比較品を製造する工程中の樹脂モールド工程において、図示せぬキャビティに液状の樹脂を充填する際の樹脂の成型圧を、6kgf/cm2、12kgf/cm2、24kgf/cm2、36kgf/cm2と高くするにつれて、フィラー含有量の値が大きいほど歩留まりが大きく落込むことが分かる。
成型圧を上げると、成型時に樹脂モールド80中に含まれる気泡の含有量を少なくすることができる。このため、成型圧をできるだけ高くしたいが、成型圧を高くすると、樹脂モールド工程及びエージング工程を行った後の特性検査で測定される漏れ電流の値が高くなるものが多くなることがあり、歩留まりの低下に繋がっていた。
しかし、接着剤71のフィラー含有量を20%以下としたため、成型圧を36kgf/cm2と高い値として素子積層体の周囲を樹脂モールドした場合であっても、漏れ電流発生による歩留まり低下を低減することができる。また、接着剤71のフィラー含有量が20vol%以下であるため、陰極部12〜42同士を接着させるために一般的に使用されている導電性接着剤よりも安価な接着剤を用いることができる。このような安価な接着剤を用いても、陰極部12〜42の端部において全ての端部に跨って覆うようにして導電性材料部72が設けられて陰極部12〜42同士が電気的に接続されているので、電気的特性において、一般的に使用されている導電性接着剤を用いた場合と同等の特性を得ることができる。
また、接着剤71のフィラー含有量が20vol%以下と少ないため、接着剤71の粘性を下げることができ、コンデンサ素子10〜40を積層する際に圧着させて、少量の接着剤71を均一に広げることができる。このため、接着剤71の使用量を低減することができ、素子積層体全体の積層方向における低背化を図ることができる。
また、導電性材料部72のフィラー含有量と接着剤71のフィラー含有量とを異なる値とすることで、導電性材料部72には高い導電性を持たせることができ、また、接着剤71には高い接着性を持たせることができる。
また、基板50の表面の第2の導電パターン52Aは最下層のコンデンサ素子10の陰極部12に導電性接着剤73を介して電気的に接続されているため、第2の導電パターン52Aと陰極部12の端部との間をESRを低減させた状態で電気的に接続された固体電解コンデンサ1とすることができる。また、樹脂モールド工程の後にエージング処理を行うため、漏れ電流の値を改善した固体電解コンデンサ1とすることができる。
本発明による固体電解コンデンサ及び固体電解コンデンサの製造方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、プリント基板接続工程では、導電性接着剤73を第2の導電パターン52A上へ円形状及び長方形状に塗布したが、この塗布パターンに限定されない。例えば、図6に示されるように、第2の導電パターン52A上へX字状及び長方形状に塗布してもよいし、図7に示されるように、第2の導電パターン52A上へ大きな円形状及び長方形状に塗布してもよいし、図8に示されるように、第2の導電パターン52A上へ複数のドット状及び長方形状に塗布してもよい。
また、図7、図8に示される変形例では、導電性接着剤73が第2の導電パターン52A上において大きな円形状、複数のドット状に塗布されたが、導電性接着剤73に代えて非導電性の接着剤173が、例えば図9に示されるように、これらの形状で塗布されてもよい。
また、本実施の形態では、樹脂モールド工程の後にエージング処理を行ったが、これに限定されず、樹脂モールド工程の前であって端部処理工程の後にエージング処理を行ってもよい。このようにすることにより、漏れ電流の値を改善した固体電解コンデンサとすることができる。
また、積層されたコンデンサ素子10〜40からなる素子積層体はプリント基板50上に配置されたが、これに限定されない。例えば、プリント基板50に代えてリードフレーム上に載置されるようにしてもよい。
また、接着剤71は、エポキシ樹脂と炭酸カルシウムとを主成分とし炭酸カルシウムがエポキシ樹脂中に混合されて構成され、導電性材料部72、導電性接着剤73は、エポキシ樹脂と銀とを主成分とし銀がエポキシ樹脂中に混合されて構成されていたが、これに限定されない。例えば、エポキシ樹脂に代えてポリイミド、シリコーン、アクリル、フェノキシ、ポリエステル等の樹脂を用いてもよい。また、陰極部12〜42間に設けられた接着剤71は、炭酸カルシウム−エポキシ系接着剤が用いられたが、これに代えて、エポキシ樹脂と銀とを主成分とし銀がエポキシ樹脂中に混合されて構成される銀−エポキシ系導電性接着剤を用いてもよい。また、接着剤71は炭酸カルシウムからなるフィラーを含有していたが、炭酸カルシウムに代えて、酸化珪素、酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、テトロン粉末等の無機材料からなる非導電性フィラーを含有していてもよい。また、導電性材料部72、導電性接着剤72は銀からなるフィラーを含有していたが、銀に代えて、銅、ニッケルなどの金属材料からなる導電性フィラーを含有していてもよい。
また、プリント基板接続工程では、導電性接着剤73を用いて、底部62をプリント基板50の第1の導電パターン51Aに電気的に接続したが、導電性接着剤73を用いて接続することに限定されない。例えば非重畳部62Aに対してレーザ照射することにより、底部62をプリント基板50の第1の導電パターン51Aに電気的に接続してもよい。
また、接続部材のレーザ照射を受ける表面は粗面化されていてもよい。粗面化されていることにより、レーザ光の反射を低減することができる。このため、接続部材におけるレーザ光の吸収を増加させることができる。
また、接続部材60はNiにより構成されていたが、これに限定されない。例えば、SUS、鉄、アルミニウム、銅、リン青銅、Mo、Cr等の導電性の金属、又は、Fe―Ni合金に代表されるようなこれらを含む合金であればよい。また、表面に導電性材料がメッキされたものを用いてもよい。この場合メッキとしては、例えば、Snメッキ、Znメッキ、半田メッキ、Niメッキ等が用いられる。これらは、レーザを反射する等のレーザ照射に対する悪影響の少ないものであるため用いられる。また、例えば、日立電線株式会社により製造されている商品名「日立ハイクラッド」のような、異種金属を金属学的に接合させたいわゆるクラッド材等を用いてもよい。
また、接続部本体61と底部62と上壁部63とは一体に接続されていたが、これに限定されず、予め別体として用意された接続部本体と底部とを溶接等により接続して構成してもよい。
また、レーザの照射は、陽極部11〜41の端部11B〜41Bの凸部11C〜41Cに当接する接続部本体61の位置にのみにスポットで間欠的に照射したが、これに限定されない。例えば、接続部本体61の長手方向の一端から他端へ向って波を描くようにして照射してもよく、接続部本体61の幅方向の一端から他端へ向って波を描くようにして照射してもよい。また、レーザの強度は略一定であってもよく、また、照射する位置によって強度を変えてもよい。
また、レーザはYAGレーザ溶接が用いられたが、これに限定されず、例えば、第二高調波レーザや、LD(半導体)レーザ、エキシマレーザ等を用いてもよい。
また、接続部本体61は、すべての陽極部11〜41の端部11B〜41Bの凸部11C〜41Cに当接した状態でレーザ照射されたが、当接せずに接続部本体61と凸部11C〜41Cとの間に僅かな隙間を介して近接対向した状態でレーザ照射されてもよい。この場合には、接続部本体61と凸部11C〜41Cとの間の距離は50μm以下であることが好ましく、更に、30μm以下であることがより好ましい。このように近接対向した状態でレーザ照射された場合であっても、レーザ照射によって接続部本体61が溶融して陽極部11〜41の凸部11C〜41Cに当接した状態となると考えられ、凸部11C〜41Cと接続部本体61とは電気的に接続されると考えられる。
また、コンデンサ素子10〜40は4つ設けられていたが、個数は4つに限定されない。また、陽極部11〜41を構成する弁作用金属はアルミニウムにより構成されたが、これに限定されない。例えばタンタルやニオブ等であってもよい。
また、接続部材は、本実施の形態による接続部材60の形状に限定されない。また、接続部材が固定されるコンデンサ素子10〜40の陽極部11〜41の端部11B〜41Bの位置は、本実施の形態による位置に限られない。