JP4978270B2 - トナーの製造方法およびトナー - Google Patents
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Description
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である。このような粉砕法は、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、粉砕可能な樹脂に限られ、破断面に内添材料が露出しやすい。また、その各粒子間での形状のばらつきが大きく、その粒径分布も広くなり易いという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での特性が大きく異なる結果となり、トナー全体としての転写効率が低下したり、帯電特性が低下する等の問題があった。また、近年、より解像度の高い画像を得るために、トナー粒子の小粒径化が求められているが、粉砕法では、この要求に十分に応えるのが困難である。すなわち、粉砕法では、一般に、粉砕物の粒径が比較的小さくなると、急激に粉砕の効率が低下し、また、粉砕とともに微粉の凝集が進行する。このため、粉砕法では、比較的粒径の小さいトナー粒子を製造する場合、粉砕に要するエネルギーが非常に大きなものとなり、省エネルギーの観点等からも好ましくない。また、粉砕のために大きなエネルギーを与えると、混練物の構成材料が熱等により変性し易くなる。このため、目的とする特性のトナーを得るのが困難となり、トナーの信頼性が低下する。特に、低温定着性を得るため低軟化点樹脂を採用した場合ではこの凝集、変性が顕著になる。
また、ケミカルトナーでは、凝集粒子からなる芯粒子(コア領域)と、芯粒子とは異なる材料で構成され、芯粒子を被覆する層(シェル領域、被膜)とを有する「カプセル型」の構造とすることができる。これにより、芯粒子と被覆する層とでの機能分離を図ることができる。例えば、芯粒子の構成材料としてガラス転移温度が比較的低い材料を用いるとともに、被覆する層の構成材料として芯粒子よりもガラス転移温度の高い材料を用いることにより、低温領域での定着性(低温定着性)の向上を図るとともに、保存時におけるトナー粒子の凝集等を防止し、トナーの保存性を向上させることが考えられる。
しかしながら、近年、トナー画像の解像度を向上させるため、トナー粒子の平均粒径を小さくすることが望まれている。上記のようなカプセル型のトナーでは、比較的小粒径のトナー粒子を製造する場合(例えば、トナー粒子の平均粒径が4μm以下のトナーを製造する場合)、粗大粒子が大量に発生し、これを減らすことが難しかった。このため、得られるトナーの粒度分布を十分に狭くすることができない問題があった。また、上述したようなトナーの製造方法でトナーを製造した場合、トナー粒子の粒度分布が広いため、画像形成装置のハウジング内において、トナー粒子同士が接触した際に、摩擦がおきて帯電量が低下する問題があった。また、保存時において、トナー粒子同士が凝集してしまう問題があった。
本発明のトナーの製造方法は、樹脂Aおよび有機溶剤を含む分散質が、水系分散媒中に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を形成する合一工程と、
前記合一粒子の表面を前記樹脂Aとは異なる組成の樹脂Bを含む材料で構成された被膜で被覆する被覆工程と、
前記被膜が形成された合一粒子に含まれる有機溶剤を除去する脱溶剤工程とを有し、
前記合一工程において、前記分散液を撹拌しつつ、前記分散液に電解質を添加する第1の処理と、前記第1の処理での撹拌翼の平均周速度よりも小さい速度で前記分散液を撹拌しつつ、合一粒子を成長させる第2の処理とを行い、
前記被覆工程において、前記分散液を撹拌しつつ、前記合一粒子が含まれる前記分散液に被膜形成用液を加える第3の処理と、前記第3の処理での撹拌翼の平均周速度よりも小さい速度で前記分散液を撹拌しつつ、前記合一粒子の表面に被膜を形成させる第4の処理とを行い、
100gの前記合一粒子の固形分を水系分散媒中に分散させた分散体aと、100gの前記被膜の固形分を前記分散体aと同濃度で水系分散媒中に分散させた分散体bとを調製し、前記分散体aおよび前記分散体bにそれぞれ等量ずつ電解質を添加していき、前記分散体aのゼータ電位と、前記分散体bのゼータ電位とが等しくなるときに加えた電解質量をX[g]としたとき、
前記第1の処理において前記分散質の固形分100gに対して添加する前記電解質の量をY[g]としたとき、0.8X≦Y≦X[g]の関係を満足することを特徴とする。
これにより、トナー粒子の平均粒径が十分に小さく、かつ、粒度分布が狭く、耐久性、保存性に優れたトナーを生産性よく製造できるトナーの製造方法を提供できる。
これにより、得られるトナー粒子を所望の粒径で、粒度分布の狭いものとすることができ、保存性、耐久性が特に優れたトナーとなる。
これにより、粗大粒子の発生を確実に防止しつつ、所望の粒径のトナー粒子を効率よく得ることができる。また、得られたトナー粒子は、粒度分布が狭いものとなり、耐久性および保存性が特に優れたものとなる。
これにより、得られるトナーにおいて、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとすることができる。また、トナーは、画像形成時において、高温領域でのオフセットを確実に防止することができ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
これにより、合一粒子の粒径をより確実に制御できるとともに、不本意な合一粒子の合一、軟凝集の発生を確実に防止することができる。
本発明のトナーは、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、樹脂Aおよび樹脂Bの特性が効果的に発揮されたトナーの製造方法を提供することができる。
<トナーの製造方法>
まず、本発明のトナーの製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、樹脂Aと着色剤と有機溶剤とを含む材料で構成された分散質が分散(乳化および/または懸濁)した分散液(乳化懸濁液)を調製する工程(分散液調製工程)と、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る工程(合一工程)と、合一粒子の表面を、樹脂Aとは異なる組成の樹脂Bを含む材料で構成された被膜で被覆する工程(被覆工程)と、被膜が形成された合一粒子に含まれる有機溶剤を除去する工程(脱溶剤工程)とを有する。また、合一工程は、分散液を攪拌しつつ、分散液に電解質を添加する第1の処理と、第1の処理での攪拌翼の平均周速度よりも小さい速度で分散液を攪拌しつつ、合一粒子を成長させる第2の処理とを有し、被覆工程は、分散液を攪拌しつつ、合一粒子が含まれる分散液に、含まれる固形分が主として樹脂Bである被膜形成用液を加える第3の処理と、第3の処理での攪拌翼の平均周速度よりも小さい速度で分散液を攪拌しつつ、合一粒子の表面に被膜を形成する第4の処理とを有する。これにより、図1に示すような、樹脂Aを含むコア領域(芯部、核)11と、コア領域11の外周を被覆し、樹脂Bを含むシェル領域(外殻)12とを有するトナー粒子(トナー母粒子)1を生産性良く得ることができる。また、後述するような樹脂Aおよび樹脂Bを用いることにより、トナー粒子1は、低温定着性、保存性に優れたものとなる。
このような合一工程の第1の処理における分散液に添加する電解質量は以下の条件を満足するものである。
[乳化懸濁液調製工程(分散液調製工程)]
まず、乳化懸濁液調製工程について説明する。
本工程で調製する乳化懸濁液は、トナー粒子1のコア領域11の形成に用いるものである。
着色樹脂液は、例えば、樹脂Aと着色剤と有機溶剤とを含む材料を、高速攪拌機等の攪拌機により混合することにより得ることができる。また、着色樹脂液は、例えば、樹脂成分(樹脂A)と着色剤とを含む組成物を予め混練しておき、混練により得られた混練物と、有機溶剤とを混合することにより、調製してもよい。着色樹脂液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)等が挙げられる。
得られる着色樹脂液中において、樹脂A、着色剤は、有機溶剤に溶解または分散している。
着色樹脂液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、40〜75wt%であるのが好ましく、50〜73wt%であるのがより好ましく、50〜70wt%であるのがさらに好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、後述する乳化懸濁液を構成する分散質を、より球形度の高いもの(真球に近い形状のもの)とすることができ、最終的に得られるトナー粒子の形状を、より確実に好適なものとすることができる。
また、着色樹脂液は、乳化剤(分散剤)を含むものであってもよい。これにより、後に詳述する乳化懸濁液中における分散質の分散性を、容易に、特に優れたものとすることができる。
例えば、着色剤と樹脂成分(樹脂A)とを混練し、混練物としての着色剤マスターを得た後、着色剤マスターと、追加樹脂としての樹脂成分(樹脂A)と、有機溶剤とを、混合することにより、着色樹脂液を調製してもよい。これにより、各成分が均一に混ざり合った着色樹脂液を、より確実に得ることができる。
また、着色樹脂液の構成成分としてワックスを用いる場合、例えば、ワックスと、樹脂成分(樹脂A)と、有機溶剤とを含む材料を混合し、ワックスマスターを得、このワックスマスターを、着色剤マスター、追加樹脂としての樹脂成分(樹脂A)および有機溶剤と混合することにより、着色樹脂液を調製してもよい。また、ワックスマスターの調製においては、ワックスの粒子が水性分散媒中に分散したワックス分散液(いわゆる、ワックスエマルジョン)を用いてもよい。
水性媒体としては、主として水で構成されたものを用いることができる。
水性媒体中には、例えば、水との相溶性に優れる溶媒(例えば、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、50重量部以上である溶媒)を含むものであってもよい。
また、水性媒体は、乳化剤(分散剤)を含むものであってもよい。
また、中和剤は、乳化懸濁液の調製において、複数回に分けて添加されるものであってもよい。例えば、前述したように調製された着色樹脂液に対して中和剤を添加した後に、当該着色樹脂液(中和剤が添加された着色樹脂液)と水性媒体とを混合し、さらにその後、混合液中に中和剤を添加してもよい。これにより、着色樹脂液と水性媒体との混合時における液体の粘度上昇を効果的に抑制しつつ、分散質が均一かつ微細に分散した乳化懸濁液を容易に得ることができる。
攪拌機を用いた混合時における翼先端速度は、例えば、4〜30m/秒であるのが好ましく、10〜25m/秒であるのがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、乳化懸濁液を効率良く得ることができるとともに、乳化懸濁液中における分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができ、分散質の均一分散性を特に優れたものとすることができる。これに対し、翼先端速度が前記下限値未満であると、乳化懸濁液中における分散質の微分散を十分に達成することが困難になる可能性がある。一方、翼先端速度が前記上限値を超えると、攪拌時に、着色樹脂液と水性媒体との混合液の飛散が激しくなり、不溶解物が混在する可能性がある。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
(樹脂A)
本発明に用いることのできる樹脂Aとしては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリエステル樹脂は、低温定着性(低温領域での定着性のし易さ)の向上に有利であり、また、透明性が高くかつ高グロスの画像を形成する上でも有利である。また、トナー粒子がポリエステル樹脂で構成されたものであると、容易かつ確実に所望の特性を有するトナーを製造することができる。
また、樹脂Aとして、前述したような第1の樹脂成分、第2の樹脂成分、および、第3の樹脂成分を含むものを用いる場合、それぞれの樹脂の混合体全体として前述の重量平均分子量の範囲に入ることが好ましく、各樹脂成分の重量平均分子量は、以下のような条件を満足するものであるのがより好ましい。すなわち、第1の樹脂成分の重量平均分子量は、5,500〜100,000であるのが好ましく、7,000〜80,000であるのがより好ましい。また、第2の樹脂成分の重量平均分子量は、100,000〜300,000であるのが好ましく、120,000〜280,000であるのがより好ましい。また、第3の樹脂成分の重量平均分子量は、1,000〜5,500であるのが好ましく、1,500〜5,000であるのがより好ましい。これらの条件を満足することにより、乳化懸濁液中において、樹脂成分を含む材料で構成された分散質中に着色剤をより確実に内包させることができ、定着性に特に優れ、所望の着色濃度のトナー粒子をより確実に製造することができる。
着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機溶剤(有機溶媒)としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、四塩化炭素等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
また、有機溶剤の沸点(常圧(1気圧)での沸点。以下、同様。)は、水の沸点よりも低いのが好ましい。これにより、有機溶剤の回収を効率良く行うことができる。
上記のような条件を満足する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒等が挙げられる。
また、分散液(特に、分散液の調製に用いられる着色樹脂液)には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、樹脂A以外の樹脂成分、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
樹脂A以外の樹脂成分としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、分散液の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
次に、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る(合一工程)。得られる合一粒子(着色樹脂微粒子)は、製造すべきトナー粒子のコア領域に対応するものである。分散質の合一は、通常、有機溶剤を含む分散質が衝突することにより、これらが融着して進行する。
複数個の分散質の合一は、分散液を撹拌しながら、分散液に上述した関係式を満足する量の電解質を添加する第1の処理と、第1の処理での攪拌翼の平均周速度よりも小さい速度で分散液を攪拌しつつ、合一粒子を成長させる第2の処理とを順次行うことにより行う。このようにして得られた合一粒子は、平均粒径が十分に小さくなるとともに、粒度分布の狭いものとなる。また、本工程の第1の処理で、分散液に上述した関係式を満足する量の電解質を添加することにより、後述する被覆工程において、合一粒子の表面に均一に被膜を形成することができ、結果として、得られるトナー粒子は平均粒径が十分に小さいものとなるとともに、粒径分布が狭いものとなる。
なお、本発明において、周速度S[m/s]は、撹拌翼を軸方向から平面視した際において、撹拌翼の翼径をd[m]、撹拌翼の回転数をR[min−1]としたとき、下記式(I)にて求めることができる。
S[m/s]=d・R・π/60 ・・・・(I)
(第1の処理)
まず、第1の処理では、分散液を撹拌しつつ、電解質を添加する。
本処理で添加される電解質の量は、上述した条件を満足するものであるが、電解質が添加される分散液に含まれる固形分に対し、3.4〜4.5wt%であるのが好ましい。添加される電解質の量が前記範囲内であると、容易かつ確実に合一粒子の粒径を制御できるとともに、粗大粒子の発生を確実に防止することができる。また、後述する被覆工程において、合一粒子の表面に均一に被膜を形成することができる。
また、電解質を水溶液の状態で添加する場合、水溶液中における電解質の濃度は、2.5〜6.0wt%であることが好ましく、2.5〜4.5wt%であることがより好ましい。これにより、特に速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができ、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。また、このような水溶液を加えることにより、電解質を加え終えた際における分散液中の水の含有量が、好適なものとなる。このため、電解質添加後における合一粒子の成長速度を、生産性が落ちない程度に、適度に遅いものとすることができる。結果として、合一粒子の粒径をより確実に制御できるとともに、不本意な合一粒子の合一、軟凝集の発生を確実に防止することができる。
また、上述した中でも、電解質は、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)または炭酸塩であることが好ましく、硫酸塩であることが特に好ましい。これにより、特に容易に合一粒子の粒径を制御できる。
上述したように、本処理における撹拌翼の平均周速度は、第2の処理における撹拌翼の平均周速度よりも高いものである。このように、電解質の添加時において、比較的高い周速度で撹拌を行うことにより、添加された電解質をよりすばやく、分散液中に拡散でき、分散液中の電解質の濃度むらを防ぐことができる。また、分散質の急激な合一を防止することができるため、粗大粒子および分散質の軟凝集体が発生することを防止することができる。
次に、分散液の撹拌を行いながら、合一粒子の粒成長を行う。上述したように、本処理における撹拌翼の平均周速度は、第1の処理における撹拌翼の平均周速度よりも低いものである。このように、第1の処理を経た後に、比較的低い周速度で撹拌を行うことにより、粗大粒子の発生を防止しつつ、合一の発生頻度を高いものとでき、効率よく合一粒子の粒径を大きくすることができる。これにより、合一粒子の粒成長を容易に制御することができるとともに、得られる合一粒子の粒度分布を得に狭いものとすることができる。
合一粒子が所望の粒径に達したら、合一を停止させる。これにより、所望の粒径の合一粒子を確実に得ることができる。
また、水性媒体の添加は、分散液を撹拌しながら行うことが好ましい。これにより、すばやく合一を停止することができ、合一粒子の粒成長を確実に止めることができる。
次に、上記のような合一粒子(着色樹脂微粒子)の表面に、当該合一粒子を構成する樹脂成分とは異なる樹脂成分(樹脂B)で構成された被膜を形成する(被覆工程)。本工程で形成する被膜は、図1において、形成すべきトナー粒子1のシェル領域12に対応するものである。このような工程を有することにより、高温領域でのオフセットを確実に防止し、得られるトナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を十分に優れたものとしつつ、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を特に優れたものとすることができる。
また、本工程における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
(第3の処理)
まず、第3の処理では、合一工程で得られた合一粒子が分散した分散液を撹拌しつつ、被膜を構成する樹脂成分(樹脂B)と、有機溶剤とを含む液体である被膜形成用液を添加する。
また、分散液に対する前記被膜形成用液の添加は、前記分散液中に含まれる前記樹脂A:100重量部に対し、添加する前記被膜形成用液中に含まれる前記樹脂Bの量が、5〜150重量部となるように行うことが好ましい。これにより、後述する第4の処理において、特に容易に被膜を形成でき、被膜の厚さを特に容易に制御できる。また、被膜形成終了後において、分散液中に樹脂Bのみで構成された微粒子が発生するのをより確実に抑制することができる。
また、被膜形成用液を構成する樹脂成分(樹脂B)は、中和剤により中和されたものであってもよい。これにより、例えば、被膜が形成された状態での合一粒子(分散質)の分散性を特に優れたものとすることができる。
中和剤の種類、添加量、添加方法等の各種条件は、例えば、前述した乳化懸濁液調製工程で説明したのと同様とすることができる。これにより、上述したのと同様の効果が得られる。
上述したように、本処理における撹拌翼の平均周速度は、第4の処理における撹拌翼の平均周速度よりも高いものである。このように、被膜形成用液の添加時において、比較的高い周速度で撹拌を行うことにより、添加された被膜形成用液をよりすばやく、分散液中に拡散でき、後述する第4の処理において、合一粒子の表面に均一に被膜を形成することができる。
また、本処理では、撹拌は、分散液に対し、平均所要動力を、0.52〜2.00kW/m3与えるように行うことが好ましい。これにより、上述したような効果はより顕著なものとなる。
(樹脂B)
本発明に用いることのできる樹脂Bとしては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリエステル樹脂は、低温定着性(低温領域での定着性のし易さ)の向上に有利であり、また、透明性が高くかつ高グロスの画像を形成する上でも有利である。また、トナー粒子がポリエステル樹脂で構成されたものであると、容易かつ確実に所望の特性を有するトナーを製造することができる。
樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)は、上述の関係を満たすものであればよいが、具体的には、40〜85℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましく、55〜75℃であるのがさらに好ましくい。樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)が前記範囲内の値であると、得られるトナーにおいて、優れた定着性を保持できる温度領域(オフセットの発生を十分に防止できる温度領域)である定着良好域を十分に広いものとしつつ、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を特に優れたものとすることができる。
樹脂Bの重量平均分子量Mw(B)は、具体的には、15万〜45万であるのが好ましく、18万〜30万であるのがより好ましい。樹脂Bの重量平均分子量Mw(B)が前記範囲内の値であると、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止するとともに、揮発性有機化合物量を特に少ないものとすることができる。
被膜形成用液を構成する有機溶剤としては、例えば、前述した着色樹脂液の構成材料として例示したものを用いることができる。
被膜形成用液を構成する有機溶剤と、前述した着色樹脂液を構成する有機溶剤とは、実質的に同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよいが、少なくとも、共通の成分を含むものであるのが好ましい。これにより、合一粒子の表面に、効率良く被膜を形成することができる。
また、シェル領域12には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、樹脂Bの前駆体、樹脂B以外の樹脂またはその前駆体、着色剤、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。また、シェル領域12の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、シェル領域12の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
次に、分散液の撹拌を行いながら、合一粒子の表面に被膜を形成する。上述したように、本処理における撹拌翼の平均周速度は、第3の処理における撹拌翼の平均周速度よりも低いものである。このように、第3の処理を経た後に、比較的低い周速度で撹拌を行うことにより、合一粒子の表面に均一な膜厚の被膜形成用液を確実に形成することができる。結果として、得られるトナー粒子1は、平均粒径が十分小さいものとなるとともに、粒度分布を狭いものとすることができる。
被膜を形成した合一粒子が所望の粒径に達したら、被膜の形成を停止させる。これにより、被膜を形成した所望の粒径の合一粒子を確実に得ることができる。
また、分散液中に水を添加することにより被膜の形成を停止させる場合、水の添加後(被膜の形成の停止後)に、固形分の含有率が18〜25wt%となるように、水を加えるのが好ましい。これにより、トナー製造時における有機溶剤、水の使用量を十分に抑制しつつ、大きさ、形状のばらつきの小さい好適なトナーを製造することができる。
その後、分散液中に含まれる有機溶剤を除去する(脱溶剤工程)。これにより、トナー粒子が得られる。
有機溶剤の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、例えば、減圧により行うことができる。これにより、樹脂成分等の構成材料の変性等を十分に防止しつつ、効率良く有機溶剤を除去することができる。
また、本工程での処理温度は、被膜を構成する樹脂成分(樹脂B)のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
また、本工程は、分散液に、消泡剤を添加した状態で行ってもよい。これにより、効率良く有機溶剤を除去することができる。
消泡剤の使用量は、特に限定されないが、分散液中に含まれる固形分に対して、重量比で、20〜300ppmであるのが好ましく、30〜100ppmであるのがより好ましい。
また、本工程においては、有機溶剤とともに、分散液中に含まれる未反応原料(モノマー等)を除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーにおける、揮発性有機化合物(VOC)量を特に少ないものとすることができる。
なお、本工程においては、必ずしも全ての有機溶剤(分散液中に含まれる有機溶剤の全量)が除去されなくてもよい。このような場合であっても、後述する洗浄工程、乾燥工程において残存する有機溶剤を十分に除去することができる。
次に、トナー粒子の洗浄を行う(洗浄工程)。
本工程を行うことにより、不純物として、有機溶剤、未反応原料(モノマー等)等が含まれる場合であっても、これらを効率良く除去することができる。その結果、最終的に得られるトナーにおける、揮発性有機化合物(VOC)量を特に少ないものとすることができる。
本工程は、例えば、固液分離(水性媒体からの分離)によりトナー粒子を分離し、さらにその後、固形分(トナー)の水中への再分散および固液分離(水性媒体からのトナー粒子の分離)をすることにより行うことにより、行うことができる。固形分(トナー)の水中への再分散および固液分離は、複数回、繰り返し行ってもよい。
その後、乾燥処理を施すことにより、最終的なトナーを得ることができる(乾燥工程)。
乾燥工程は、例えば、真空乾燥機(例えば、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウター(ホソカワミクロン社製)等)、流動層乾燥機(大川原製作所社製)等を用いて行うことができる。
また、本工程での処理温度は、シェル領域を構成する樹脂成分(樹脂B)のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
また、本発明のトナーの製造方法においては、必要に応じて、外添剤を付与する外添工程を有していてもよい。
次に、上記のような方法により製造される本発明のトナーについて説明する。
トナーは、多数個のトナー粒子(トナー母粒子)で構成されている。
《トナー粒子の構造》
図1は、本発明のトナーを構成するトナー粒子の好適な実施形態を示す模式的な断面図である。
まず、コア領域11について説明し、その後、シェル領域12について説明する。
コア領域11は、樹脂Aと着色剤とを含む材料で構成されたものである。これにより、トナー全体としての定着良好域を特に広いものとすることができる。
トナー粒子1中においてコア領域11の占める割合は、50〜99.5vol%であるのが好ましく、60〜95vol%であるのがより好ましい。コア領域11の占める割合が前記範囲内の値であると、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)等を十分に優れたものとしつつ、コア領域11の構成材料の特性をより効果的に発揮させることができる。
シェル領域12は、コア領域11の外周を被覆するように設けられたものであり、樹脂Bを含む材料で構成されたものである。これにより、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を優れたものとすることができる。特に、シェル領域12とともに、樹脂Aを含む材料で構成されたコア領域11を有することにより、トナー粒子1の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を優れたものとしつつ、低温定着性にも優れたものとすることができ、優れた定着性を保持できる温度領域(オフセットの発生を十分に防止できる温度領域)である定着良好域を十分に広いものとすることができ、高温領域でのオフセットを確実に防止し、低温領域での定着性のし易さ(低温定着性)を優れたものとすることができる。
トナー粒子1は、コア領域11、シェル領域12以外の構成を有するものであってもよい。例えば、上記のような構成のトナー母粒子(コア領域11およびシェル領域12を有するトナー母粒子)の表面付近に、外添剤が付与されたものであってもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
トナーを構成するトナー粒子1は、均一な形状を有し、粒度分布のシャープな(幅の小さい)ものであるのが好ましい。
本発明のトナーにおいて、下記式(I)で表されるトナー粒子1についての円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.92以上であるのが好ましく、0.95〜0.99であるのがより好ましい。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子1の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子1の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
また、トナー粒子1の平均粒径は、特に限定されないが、2〜4μmであるのが好ましい。トナー粒子1の平均粒径が前記範囲内の値であると、高解像度の画像形成に好適に適用することができるとともに、低温定着性の向上に有利であり、また、コア領域11の構成材料の特性およびシェル領域12の構成材料の特性を、より確実に発揮させることができる。上述したような製造方法において、トナー粒子を特に効率よく得ることができる。
なお、Dv(50)、Dn(50)の値は、例えば、コールター社製マルチサイザーII型(アパーチャーチューブ径:100μm)を用いた測定により求めることができる。
本発明のトナーは、一成分系現像剤として用いられるものであってもよいし、二成分型現像剤として用いられるものであってもよい。また、本発明のトナーは、乾式トナーとして用いられるものであってもよいし、液体現像剤に用いられるものであってもよい。
図3は、本発明のトナーが適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図、図4は、図3の画像形成装置が有する現像装置の断面図、図5は、図3の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図、図6は、図5の定着装置の要部断面図である。
現像装置60Y、60C、60M、60Kは、いずれも同一の構造を有している。したがって、ここではイエロー用現像装置60Yの構造について説明するが、現像装置60C、60M、60Kについても、構造、機能は同様である。
上記構成からなる画像形成装置の作用について説明する。図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体30、ロータリー現像装置60の現像ローラ604および中間転写ベルト110が回転駆動し、先ず、像担持体30の外周面が帯電装置40によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体30の外周面に、露光装置50によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
図3において、本発明に係わる定着装置190は、熱源を有する定着ローラ210とこれに圧接される加圧ローラ220とから構成され、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸を結び線は水平線からθの角度を有するように配置されている。なお、0°≦θ≦30°である。
図5において、ハウジング240内には定着ローラ210が回動自在に装着されている。そして、定着ローラ210に対向して加圧ローラ220が回動自在に装着されている。加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられて、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。軸受250には加圧レバー260が回動可能に設けられ、加圧レバー260の一端とハウジング240間には加圧スプリング270が配設され、これにより加圧ローラ220と定着ローラ210が加圧されるように構成されている。
例えば、トナー粒子は、コア領域およびシェル領域以外の構成を有するものであってもよい。例えば、本発明のトナーは、単一のトナー粒子内に、複数のコア領域を有し、隣接するコア領域間にシェル領域と同一の材料で構成された隔壁を有するものであってもよい。これにより、例えば、トナーの耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができる。また、このような構成であると、シェル領域の厚さが比較的薄い場合であっても、トナー粒子の耐久性、保存性(耐熱保存性、長期保存性等)を特に優れたものとすることができるため、トナー粒子中に占めるコア領域の割合を高めることができる。その結果、コア領域の構成材料の特性をより効果的に発揮させることができ、例えば、低温定着性や発色性等を特に優れたものとすることができる。
また、上記の説明では、合一工程の第1の処理において、分散液に電解質を添加するものとして説明したが、第2の処理、被覆工程の第3の処理、第4の処理において、適宜、分散質に電解質を添加してもよい。
トナーの製造に先立ち、樹脂の合成を行い、さらに、合成された樹脂を用いて、ワックスマスター、着色剤マスター、ミルベースの調製を行った。
<樹脂H1(架橋型ポリエステル系樹脂)の合成>
精留塔、攪拌装置、窒素ガス導入口、温度計を備え付けた50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が160℃に達した時点で反応を終了した。
イソフタル酸 95重量部
エチレングリコール 62重量部
ネオペンチルグリコール 104重量部
テトラブチルチタネート 2.5重量部
エピクロン830 7重量部
(大日本インキ化学工業製ビスフェノールF型エポキシ樹脂エポキシ当量170(g/eq)
カージュラE 3重量部
(シェルジャパン製アルキルグリシジルエステル)エポキシ当量250(g/eq)
精留塔、攪拌装置、窒素ガス導入口、温度計を備え付けた50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が100℃に達した時点で反応を終了した。
エチレングリコール 12重量部
ネオペンチルグリコール 21重量部
プロピレングリコール 122重量部
テトラブチルチタネート 2.5重量部
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0、ガラス転移温度(Tg)57℃、軟化点(T1/2)が102℃であった。また、重量平均分子量は6,000であった。
上記のようにして合成した各樹脂についての構成材料の使用量、物性等を表1にまとめて示す。
高速乳化機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の3L円筒容器に、水:1300重量部、アニオン性乳化剤「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬社製、固形分含有量:68wt%):25.7重量部を添加して、温度を95℃に調整し、翼先端速度:16.7m/sの攪拌下に、さらに、予め融解しておいたカルナバワックス:700重量部を添加して、ワックスの乳化物を得た。冷却後、固形分の含有率が35wt%となるように、水を加え、ワックス分散液を得た。
シアン顔料(大日本インキ化学工業社製、KET BLUE 111):2000重量部と、樹脂L1:2000重量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、翼先端速度:10m/sで2分間攪拌し、混合物を得た。該混合物をオープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山社製、ニーデックス MOS140−800)を用いて溶融混練し、着色剤マスターP−1Cを得た。着色剤マスターP−1Cの組成は、重量比で、着色剤:樹脂=50:50であった。また、得られた着色剤マスターP−1Cを樹脂L1およびメチルエチルケトンを用いて希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子は認められず、均一に微分散している様子が認められた。
高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の2L円筒容器(ディスパー翼の翼径40mm)に、メチルエチルケトン(希釈メチルエチルケトン):225.0重量部を仕込み、さらに、樹脂H1(希釈樹脂):98.4重量部を加えた。この状態で、翼先端速度:7.5m/sで攪拌した。攪拌した状態で、着色剤マスターP−1C:90重量部、樹脂L1(希釈樹脂):81.6重量部、ワックスマスターW−1:67.2重量部、および、乳化剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC−F):1.09重量部を、この順序で、前記円筒容器内に投入することにより、各成分の溶解・分散を行った。さらに、その後、固形分含有量が55wt%となるように、メチルエチルケトンを追加投入し、ミルベースMB−1を得た。なお、攪拌時における材料温度は、30〜40℃に保持されるようにした。また、作製したミルベースMB−1の配合順序、配合量、攪拌条件を表2に示す。得られたミルベースMB−1の固形分の組成は、重量比で、樹脂H1:樹脂L1:顔料:ワックス=32.8:49.2:15:3であった。なお、表中、メチルエチルケトンを「MEK」、乳化剤(ネオゲンSC−F)を「SC−F」で示した。
高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)付属の2L円筒容器(ディスパー翼の翼径40mm)に、メチルエチルケトン(希釈メチルエチルケトン):367重量部を仕込み、攪拌下に、樹脂H1:300重量部を徐々に添加した。その後、翼先端速度:7.6m/s、材料温度:30〜50℃に設定し、この条件で60分間攪拌を行うことにより、各成分の溶解・分散を行った。その後、材料温度を40℃にし、1Nのアンモニア水:75重量部を添加し、翼先端速度を16.5m/sまで上昇させ、この攪拌条件下、水:707重量部を、20重量部/分の速度で滴下することにより、無着色樹脂分散液(被膜形成用液)R−1を得た。得られた無着色樹脂分散液R−1の固形分含有量は20.72wt%、メチルエチルケトン含有量は31.95wt%であった。
《乳化懸濁液調製工程》
ミルベースMB−1を調製した同一容器に引き続き、1Nアンモニア水:50重量部を加え、周速度:7.5m/sにて攪拌した後、温度が30℃以下となるように調整した。
その後、周速度:14.65m/sに変更し、この状態で、350重量部の水(脱イオン水)を20重量部/分の速度で滴下し、分散液を調製した。脱イオン水を添加するにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ、攪拌混合は均一であった。脱イオン水を210重量部添加した段階で粘度の低下が観察された(転相点)。さらに残りの脱イオン水を所定量滴下した後(350重量部の脱イオン水を滴下した後)、希釈水として143.5重量部の水を一括で添加した。この段階での分散液中におけるメチルエチルケトン(有機溶剤)の含有率は、29.0wt%であった。また、この分散液中において、分散性の悪い粗大粒子の存在は認められなかった。
このように、ミルベースMB−1の固形分が分散した水溶液、および無着色樹脂分散液R−1の固形分(樹脂H1)が分散した水溶液、それぞれにおける、電解質(硫酸ナトリウム)量とゼータ電位とをプロットして得られたグラフから、ミルベースMB−1の固形分が分散した水溶液のゼータ電位と無着色樹脂分散液R−1の固形分(樹脂H1)が分散した水溶液のゼータ電位とが等電位になる電解質量(X)を求めたところ、ミルベースMB−1の固形分(または無着色樹脂分散液R−1の固形分(樹脂H1))に対して4.33wt%であった。
次に、マックスブレンド翼(翼径:63mm)およびコンデンサー付属の2L円筒容器に、上記分散液を移送した後、撹拌翼の周速度を1.09m/sに保持した状態で、温度を25℃に調整した。この時の平均撹拌所要動力は0.43kW/m3であった。
<第1の処理>
次に、マックスブレンド翼の平均周速度1.65m/s、撹拌所要動力1.5kW/m3に調整し、撹拌を行いつつ、2.5wt%の硫酸ナトリウム水溶液:400重量部を10重量部/分で滴下した。滴下終了後、同条件にて撹拌を10分間行った。この処理では、撹拌翼の平均周速度は、1.65m/s、平均撹拌所要動力は、1.11kW/m3であった。
引き続き、同様の撹拌装置を用いて、マックスブレンド翼の周速度を1.65m/sから0.92m/sまで、30分かけて段階的に減速し、攪拌を行った。5分おきに、分散質(着色樹脂微粒子)の粒径の測定を行ない、50%体積粒径をDv(50)[μm]としたときの、Dv(50)が、2.7μmを超えるまで同条件で撹拌を行った。この処理における平均周速度は、0.92m/sであった。また、本処理における撹拌による平均所要動力は、0.19kWであった。なお、粒径、粒度分布の測定は、マイクロトラックMT3000(日機装社製)により行った。また、以下に説明する他の粒子についても同様にして、粒径、粒度分布の測定を行った。
<第3の処理>
上記合一工程を行った2L円筒容器内において、マックスブレンド翼の周速度を1.65m/sに調整した状態で、無着色樹脂分散液R−1:278重量部を5重量部/分の速度で滴下した。
滴下終了後に、15分かけてマックスブレンド翼の翼先端速度を周速度を1.65m/sから1.15m/sまで減速し、翼先端速度を保持した状態で、50%体積粒径をDv(50)[μm]が3.0μmを超えるまで同条件で撹拌を行った。目標粒径に到達した時点で、水:400重量部を添加し、被膜の被覆を終了させた。これにより、合一粒子の表面に、被膜が形成された。また、被膜を有する分散質(合一粒子)について、その粒径の測定を行った。その結果、50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、3.0μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.05であった。
その後、シリコーン系消泡剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、BY22−517):0.068重量部を添加し、減圧により、固形分含有量が23wt%以上となるまで、メチルエチルケトンおよび水の一部を留去し、スラリー(着色樹脂微粒子スラリー)を得た。
上記のようにして得られたスラリーに対し、固液分離を行い、さらに、水中への再分散、固液分離を繰り返し行うことによる洗浄処理を施した。その後、吸引ろ過法により、着色樹脂微粒子のウェットケーキ(着色樹脂微粒子ケーキ)を得た。なお、ウェットケーキの含水率は35wt%であった。
その後、真空乾燥機を用いて、ウェットケーキを乾燥することにより、トナー母粒子を得た。また、トナー母粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、3.0μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.05であった。また、トナー母粒子の平均円形度Rは0.985であった。
トナー母粒子:100重量部に対して、外添剤として大粒径のシリカ(日本アエロジル(株)製RX50):1.0重量部、小粒径のシリカ(日本アエロジル(株)製RX200):1.0重量部、酸化チタン(チタン工業(株)製STT30S):0.5重量部を添加した。このトナー母粒子を10Lヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入して羽先端周速30m/sで2分間混合し、トナーを得た。
使用した電解質の量、電解質の濃度、撹拌条件を表3のようにした以外は前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例1〜2)
使用したミルベース、電解質量、電解質の濃度、撹拌条件を表3のようにした以外は前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
表3には、トナーの構成成分、撹拌条件、電解質の添加条件等のトナーの製造条件、および得られたトナー母粒子の平均粒径を示した。
[2.1]粒度分布
前記各実施例および各比較例で得られたトナー母粒子の粒度分布について、マイクロトラックMT3000(日機装社製)により測定を行った。粒度分布は、50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)/Dn(50)を粒度分布の指標とし、下記の4段階の基準に従い、評価した。
◎:Dv(50)/Dn(50)が、1.07未満。
○:Dv(50)/Dn(50)が、1.07以上1.10未満。
△:Dv(50)/Dn(50)が、1.10以上1.15未満。
×:Dv(50)/Dn(50)が、1.15以上。
各実施例および各比較例で得られたトナー粒子に関して、四酸化オスミウムを用いてトナー粒子断面の染色を行い、透過型電子顕微鏡にてトナー粒子断面の観察を行った。
◎:コア領域とシェル領域の境界がコア領域の全周にわたって、はっきりと確認でき た。
○:コア領域とシェル領域の境界がコア領域の全周にわたって確認できた。
△:コア領域とシェル領域の境界がコア領域周囲の一部に確認できない部分があった 。
×:コア領域とシェル領域の境界が確認できなかった。
また、この観察から、シェル領域の平均厚さを求めた。
前記各実施例、および各比較例のトナーを、図3〜図6に示すような画像形成装置の現像装置(図4参照)に充填し、画像形成装置にセットした。次に、印字前の初期動作終了後の画像形成装置を取り出し、画像形成装置内の像担持体より、トナーを吸引し、帯電量Q[μC]を測定した。この帯電量Q[μC]と吸引量m[g]から、単位重量当たりの帯電量(初期帯電量)Q/m[μC/g]を算出した。また、画像形成装置に各トナーを充填し、上記画像形成装置において、記録媒体(セイコーエプソン社製、A4上質普通紙)に所定のパターンの印字(5%印字)を連続で5000枚行った後、上記した方法と同様に、耐久後の各トナーの単位重量当たりの帯電量(耐久後帯電量)Q/m(μC/g)を算出した。このようにして算出した、初期帯電量と耐久後帯電量との比率から、印字後における帯電量(単位重量当たりの帯電量)の絶対値の低下率を求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:帯電量の絶対値の低下率が7%未満。
○:帯電量の絶対値の低下率が7%以上12%未満。
△:帯電量の絶対値の低下率が12%以上18%未満。
×:帯電量の絶対値の低下率が18%以上。
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、温度:20〜28℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、トナーの様子を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー母粒子の凝集がまったく認められない。
○:トナー母粒子の凝集がほとんど認められない。
△:トナー母粒子の凝集がわずかに認められる。
×:トナー母粒子の凝集がはっきりと認められる。
前記各実施例および前記各比較例での合一工程にかかる時間を、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:実施例1と比較して、合一工程にかかる時間が120%未満であった。
○:実施例1と比較して、合一工程にかかる時間が120%以上、150%未満であった。
△:実施例1と比較して、合一工程にかかる時間が150%以上、200%未満であった。
×:実施例1と比較して、合一工程にかかる時間が200%以上であった。
これらの結果を表4に示した。
また、各実施例で得られたトナーは、各比較例で得られたトナーに比べて、低温での定着性に優れるものであった。
Claims (6)
- 樹脂Aおよび有機溶剤を含む分散質が、水系分散媒中に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を形成する合一工程と、
前記合一粒子の表面を前記樹脂Aとは異なる組成の樹脂Bを含む材料で構成された被膜で被覆する被覆工程と、
前記被膜が形成された合一粒子に含まれる有機溶剤を除去する脱溶剤工程とを有し、
前記合一工程において、前記分散液を撹拌しつつ、前記分散液に電解質を添加する第1の処理と、前記第1の処理での撹拌翼の平均周速度よりも小さい速度で前記分散液を撹拌しつつ、合一粒子を成長させる第2の処理とを行い、
前記被覆工程において、前記分散液を撹拌しつつ、前記合一粒子が含まれる前記分散液に被膜形成用液を加える第3の処理と、前記第3の処理での撹拌翼の平均周速度よりも小さい速度で前記分散液を撹拌しつつ、前記合一粒子の表面に被膜を形成させる第4の処理とを行い、
100gの前記合一粒子の固形分を水系分散媒中に分散させた分散体aと、100gの前記被膜の固形分を前記分散体aと同濃度で水系分散媒中に分散させた分散体bとを調製し、前記分散体aおよび前記分散体bにそれぞれ等量ずつ電解質を添加していき、前記分散体aのゼータ電位と、前記分散体bのゼータ電位とが等しくなるときに加えた電解質量をX[g]としたとき、
前記第1の処理において前記分散質の固形分100gに対して添加する前記電解質の量をY[g]としたとき、0.8X≦Y≦X[g]の関係を満足することを特徴とするトナーの製造方法。 - 前記第1の処理で前記分散質に添加する前記電解質は、水に溶解させた電解質水溶液として添加するものであり、前記電解質水溶液は、電解質濃度が2.5〜6.0wt%のものであり、かつ、前記第1の処理で前記分散質に添加する前記電解質の量は、前記分散質を構成する全固形分に対し、3.4〜4.5wt%である請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記第1の処理での前記攪拌翼の平均周速度をS1[m/s]、前記第2の処理での前記攪拌翼の平均周速度をS2[m/s]としたとき、1.1≦S1/S2≦2.5の関係を満足する請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
- 前記樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)[℃]と、前記樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)[℃]との関係がTg(B)>Tg(A)である請求項1ないし3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記樹脂Aおよび前記樹脂Bは、いずれもポリエステル樹脂を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするトナー。
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