JP4967864B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

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本発明は有機電界発光素子に関し、特に湿式成膜法で発光層が形成された有機電界発光素子に関する。
1987年に、コダック社のTangらによる真空蒸着法を用いた積層型の有機電界発光(electroluminescence:以下「EL」と略称する場合がある。)素子が報告されて以来(非特許文献1参照)、有機ELディスプレイの開発が盛んに行なわれている。現在では有機EL素子を表示ディスプレイとして使用したカーオーディオやデジタルカメラ、携帯電話などが次々に製品化されている。
このような積層型有機EL素子では、通常、陽極と陰極との間に発光層及び複数の有機層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層等)が積層して設けられる。これらの発光層や有機層の形成は、多くの場合、低分子量色素等、発光層や有機層の材料を真空蒸着することにより行なわれていた。しかしながら、蒸着法では均質で欠陥がない薄膜を得ることは困難であり、且つ、複数層を形成するには長時間を要するため、素子の製造効率の面でも課題があった。
これに対して、積層型有機EL素子の発光層や有機層を、湿式成膜法によって形成する技術が報告されている。例えば、特許文献1には、高分子正孔輸送性化合物を含有するインクを塗布することにより正孔注入層を形成した後、上記正孔注入層上に低分子発光材料を含有するインクを塗布し、発光層を形成した有機EL素子等が記載されている。
Applied Physics Letters 第51巻 913ページ 国際公開第2006/095539号パンフレット
しかしながら、いずれの文献においても、発光層や有機層を湿式成膜法で形成した素子は、その寿命を長くできないという課題があった。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光層が湿式成膜法で形成された有機電界発光素子であって、長寿命の有機電界発光素子を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、発光層が湿式成膜法により形成される有機電界発光素子であって、静電容量測定を測定した際、静電容量の電圧の一次微分曲線における、発光層の発光開始電圧よりも低い電圧にピークが観測される有機電界発光素子では長寿命を実現可能であることが分かり、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、陽極と、該陽極と対向するように形成された陰極と、該陽極及び該陰極の間に形成され、かつ湿式成膜法により形成された発光層と、該発光層に密接するように形成された少なくとも一層の有機層とを少なくとも有する有機電界発光素子であって、該有機電界発光素子の静電容量を測定した際、該静電容量の電圧の一次微分曲線の、該発光層の発光開始電圧より低い電圧にピークが観測されることに存する(請求項1)。
また、該発光層は、低分子化合物からなることが好ましい(請求項2)。
また該有機層の少なくとも一層が、湿式成膜法により形成された正孔注入層であることが好ましく(請求項3)、該正孔注入層が、高分子化合物及び電子受容性化合物を含有することが好ましい(請求項4)。
また、該有機層上に該発光層を形成する際、又は、該発光層上に該有機層を形成する際、該有機層及び該発光層は、上層の形成において、下層中の成分の該上層への拡散を抑制する処理を施すことが好ましい(請求項5)。
また、該有機層上に該発光層を形成する際、又は、該発光層上に該有機層を形成する際、該有機層及び該発光層は、上層の形成に用いられる塗布液を塗布後、該上層だけを選択加熱するような波長の赤外線を用いて加熱処理を施す又は熱源を該上層側に設置して該上層から先に温度が上昇するように加熱処理を施すことが好ましい(請求項6)。
また、該有機層上に該発光層を形成する際、又は、該発光層上に該有機層を形成する際、下層に対して、250℃以上で焼成処理を施すことが好ましい(請求項7)。
湿式成膜法により形成された発光層を有する有機電界発光素子において、寿命の長い素子を提供することが出来る。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
本発明は、陽極と、該陽極と対向するように形成された陰極と、該陽極及び該陰極の間に形成され、かつ湿式成膜法により形成された発光層と、該発光層に密接するように形成された少なくとも一層の有機層とを少なくとも有する有機電界発光素子に関する。また該有機電界発光素子においては、静電容量を測定した際、該静電容量の電圧の一次微分曲線の、該発光層の発光開始電圧より低い電圧にピークが観測される。
以下、本発明の一次微分曲線におけるピークの観測について説明し、その後、本発明の有機EL素子について説明する。
[1.ピークの観測]
<1−1.基本概念>
本発明の有機EL素子は、静電容量を測定した際、静電容量の電圧の一次微分曲線の、発光層の発光開始電圧より低い電圧にピークが観測されることを特徴としている。なお本発明では、特に断りがない限り、「静電容量の電圧の一次微分曲線」とは、「静電容量の直流電圧の一次微分曲線」をいうこととする。
上記ピークが観測される有機電界発光素子が長寿命である理由は以下の通りであると推測される。
有機電界発光素子の静電容量は、電荷の注入により変化する。例えば、陽極/有機層/発光層/陰極からなる有機電界発光素子において、電荷が注入される前の素子の誘電体膜厚は有機層と発光層との膜厚の和となる。ところが、この有機電界発光素子に電圧を印加し、ホールが陽極から有機層に注入されると、有機層はもはや誘電体層とは見なされず、誘電体膜厚は発光層の膜厚となる。このように有機電界発光素子においては、電荷注入が起こると素子の誘電体として機能する層の膜厚が減少し、静電容量の増加が生じる傾向がある。
ここで、有機層と発光層との間に急峻できれいな界面が形成されている場合、有機電界発光素子に電圧を印加すると、ある明確な閾値電圧以上で電荷注入が生じる。したがって、静電容量はその閾値電圧で急激に変化することとなり、静電容量の電圧の一次微分をとると、この閾値電圧にピークが現れる。すなわち静電容量の電圧に対する変化の傾きが増加から減少に変化する点が観測される。これに対し、有機層と発光層の界面が曖昧であったり、乱れている場合等には、各層に印加される電場に分布が生じるため、電荷は広い電圧範囲にわたって徐々に注入される。その結果、静電容量は明瞭な閾値電圧を持たず、広い電圧範囲に渡って徐々に増加し、静電容量の電圧の一次微分は明瞭なピークを示さない。なお、本発明でいう「界面が急峻である」とは、隣接する層どうしが界面で混合しておらず、また隣接する層の成分が混入していない状態のことをいう。
本発明の有機電界発光素子では、静電容量の電圧による一次微分曲線にピークが観測されることから、電荷注入界面(例えば発光層と有機層との界面等)が急峻に形成されているといえ、これにより、素子の寿命を長いものとすることができると推測される。
なお、有機電界発光素子が既に発光している状態では、ホール及び電子の両方が素子の中を流れている状態であり、このような状態では素子の容量・静電容量を定義することができず、静電容量の電圧依存性曲線は異常な挙動を示す。したがって、発光開始電圧より高い電圧領域では、静電容量の一次微分から素子寿命の良否を判断することは困難である。
<1−2.静電容量の測定方法>
本発明における有機電界発光素子の静電容量の測定は、周波数応答アナライザ等、市販のインピーダンス測定装置を用いて行う。本発明においては低周波数で測定を行うため、10Hz以下の低周波測定が可能な装置を用いることが好ましい。また、注入に伴った容量変化は非常に小さい場合もあり、この小さい容量変化を数値微分で評価するため、インピーダンス測定装置は非常に小さい容量変化を高い精度で検出できるものであることが要求される。具体的な数値としては、素子に電荷注入が起きない負電圧での静電容量値の、1万分の1の容量変化が測定できるものを用いる。
また、測定のS/N比も数値微分結果に影響するため、できる限り高いS/N比での測定が望ましい。具体的には、素子の静電容量がほとんど変化しないような、電荷注入が起きない負電圧領域において、容量測定値のばらつきの標準偏差が、静電容量値の1万分の3以下であるものを用いる。このような装置として、例えば、ソーラトロン社製の1260型周波数応答アナライザに、同じく同社製の1296型誘電率測定インターフェースを組み合わせた誘電体インピーダンス測定ユニット等が挙げられる。
静電容量の測定方法としては、有機電界発光素子をインピーダンス測定装置に接続し、交流電圧に直流電圧を重畳して印加しながら、直流電圧をある電圧範囲、一定電圧間隔で走印し、各直流電圧における複素インピーダンスZ(V)を測定する。交流電圧の振幅は100mVとし、周波数は10Hzとする。直流電圧の走査は、順バイアスの高電圧側から開始して、一定間隔で電圧を減らしていき、逆バイアスへ至る方向で行う。走査電圧間隔は0.1V程度が望ましい。走印範囲は、順バイアス側は発光開始電圧よりも高い電圧から開始し、逆バイアス側は測定される容量が十分変化しない電圧まで走印する。
各直流電圧における静電容量C(V)は、以下の式1で計算することができる。ここで、複素インピーダンスの実部をZ’(V)、虚部をZ”(V)、交流電圧の周波数をf、πを円周率とする。
Figure 0004967864
<1−3.静電容量の電圧に対する一次微分>
本発明における静電容量の直流電圧に対する一次微分dC(V)/dVは、近似的に中心差分を用いて計算する。中心差分は、ある点と次の点との間で差分を取る前進差分と、ある点とその前の点との間で差分をとる後進差分の平均で表される。中心差分を用いると、ある電圧V0における静電容量の電圧に対する一次微分(dC(V)/dV)V0は式2のように書ける。ここで、ΔVは、直流電圧を走印する際の走印電圧間隔である。
Figure 0004967864
中心差分はノイズの影響を受けやすいため、中心差分計算を施す前に、スムージング処理を行っておくことが望ましい。スムージング処理には、隣接平均法、Savitzky−Golay法などの手法を使うことができる。スムージングに用いるポイント数が多すぎるとデータがなまってしまうため、5点程度にとどめておくことが望ましい。
<1−4.ピークの有無の判断>
上述した静電容量の直流電圧の一次微分曲線にピークが有るか否かの判断は、静電容量の一次微分値を素子のコンデンサ容量の値で割ることで規格化した静電容量(以下、適宜、相対静電容量という。)を用いて行う。ピークの大きさは素子固有のコンデンサ容量に依存するからである。素子のコンデンサ容量とは、素子に電荷注入が起きていない状態での静電容量を意味する。十分大きい逆バイアス下では素子への電荷注入が起きないため、静電容量は電圧に依存せず、ほぼ一定の値をとる。本発明においては、1Vの電圧変化に対する静電容量変化が0.1%以下となる逆バイアス領域における静電量の平均値を用いて、素子のコンデンサ容量を算出する。
ここで、本発明でいう「ピークがある」とは、以下のように定義する。これにより、ピークとノイズとを区別することが可能である。まず、ピークの高さや半値幅を定義するのに必要な「ベースライン」を、以下のように決定する。図1(a),(b)に示すようなコンデンサ容量により規格化された相対静電容量の電圧の一次微分曲線において、コンデンサ容量を決定した電圧領域の最も低い電圧V0から発光開始電圧Vthまでの領域の中で、1V以上離れた任意の2点A,Bを選び、この2点の間に直線を結び、これを「仮のベースライン」とする。また、上記点A−Bの範囲内にある一次微分曲線上の各点から、「仮のベースライン」へ下ろした各垂線(直流電圧軸に対して垂直な線)の長さの最大値を「仮のピーク高さ」とする。この時、「仮のピーク高さ」を与える点から「仮のベースライン」に下ろした垂線を二分する点を通り、「仮のベースライン」に平行な線を引く。この線が一次微分曲線と交わる二点(C及びD)間の距離を「仮のピーク半値幅」とする。図1(a)は「仮のベースライン」を引いたときの説明図である。続いて上記点A,BをV0からVthの間で走査する。
上記点A,BをV0からVthの間で走査したときに、「仮のピーク高さ」が最大となるような「仮のベースライン」を「ベースライン」として決定する。また、この「ベースライン」に対する「仮のピーク高さ」を「ピーク高さ」、「仮のピーク半値幅」を「ピーク半値幅」とする。図1の場合、「ベースライン」は図1(b)のように与えられる。この時、(1)「ベースライン」を与える2点A,Bの間で、一次微分曲線の全ての点が「ベースライン」よりも上にあること、(2)「ピーク高さ」がノイズレベルの標準偏差の3倍よりも大きいこと、(3)「ピーク半値幅」が0.8V以上あること、以上3点を全て満たすように「ベースライン」を引くことができるとき、「ピークがある」と定義する。また、この時のピークの位置は、ピーク高さを与える電圧値をいうこととし、本発明の有機EL素子は、上記ピーク高さを与える電圧値が発光開始電圧Vth未満であるものとされる。なお、上記「ノイズレベルの標準偏差」は、素子のコンデンサ容量を決定した電圧領域における静電容量の電圧の一次微分値のばらつきの標準偏差とする。また、「発光開始電圧」は、発光層が0.1cd/m2の輝度で発光するのに必要な電圧とする。
[2.有機電界発光素子の構成]
次に、本発明の有機電界発光素子の構成について説明する。本発明の有機電界発光素子は、陽極と、該陽極と対向するように形成された陰極と、該陽極及び該陰極の間に形成され、かつ湿式成膜法により形成された発光層と、該発光層に密接するように形成された少なくとも一層の有機層とを少なくとも有するものである。本発明に係る有機電界発光素子は、上記発光層に隣接する有機層を一層のみ有する、すなわち上記発光層の片側にのみ有機層を有するものであってもよく、また上記有機層を二層有する、すなわち上記発光層の両側に有機層を有するものや、発光層の片側または両側に二層以上が積層されているものであってもよい。
上記有機層の例としては、例えば正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層等の層が挙げられ、有機層のうち、少なくとも一層が正孔注入層であることが好ましい。これらの層は湿式成膜法や、蒸着法等のその他の方法でも形成することができるが、本発明においては、上述したような静電容量の電圧の一次微分曲線にピークを有する有機EL素子を得るため、有機層と発光層との界面は急峻とされていることが好ましい。そこで、このような良好な界面を得る方法として、下記の方法が挙げられる。例えば有機層上に発光層を湿式成膜法により形成する際、及び/または発光層上に有機層を湿式成膜法により形成する際に、上層の形成に用いられる塗布液の溶媒として下層を溶解しない溶媒を選択する方法が挙げられる。また例えば有機層上に発光層を湿式成膜法により形成する際、及び/または発光層上に有機層を湿式成膜法により形成する際に、下層に対して、上層の形成に用いられる塗布液の溶媒への耐性を高めるための不溶化処理を施す方法も挙げられる。不溶化処理として具体的には、焼成処理等が挙げられる。
焼成処理は、加熱雰囲気の温度を昇温させることにより行う。下層を、上層を成膜する際に用いる有機層用溶剤に対して不溶化することにより、有機層用溶剤の浸透により下層が膨潤すること、及び、下層に含有される材料が有機層用溶剤に溶出することを抑制できる。なお、以下加熱温度とは雰囲気の温度のことをいい、例えば、オーブン内の温度やホットプレートの温度をいう。
加熱温度は、通常100℃以上、好ましくは200℃以上、さらに好ましくは230℃以上、より好ましくは250℃以上である。加熱温度が低すぎると、溶剤に対する不溶化が不十分となる可能性がある。なお、加熱温度の上限に特に制限は無いが、通常は350℃以下、好ましくは280℃以下である。加熱温度があまりに高温であると、例えば正孔注入層の材料の一部が分解する可能性がある。
前記の加熱温度で加熱する時間は、任意であるが、通常30分以上、中でも1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、また、通常5時間以下、中でも4時間以下が好ましい。焼成処理における雰囲気は任意であるが、下層を確実に不溶化する観点からは、当該雰囲気中に酸素が存在していることが好ましい。具体的には、酸素濃度を、通常1%以上、中でも10%以上、更には15%以上とすることが好ましく、また、通常99%以下、中でも50%以下、更には30%以下の範囲とすることが好ましい。よって、雰囲気は大気中、又は、乾燥空気中であることが好ましい。
また、加熱は連続的に行なってもよく、断続的に行なってもよい。加熱手段に特に制限は無い。加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
また例えば発光層や有機層等を湿式成膜法により形成する際、下層中の成分(例えば酸化剤等)が塗布層(上層)へ拡散することも界面乱れの一種と考えることができ、このような拡散を抑制する各種方法も、本発明の有機EL素子を得るのに有効である。上記拡散を抑制する方法としては、例えば上層の形成に用いられる塗布液を塗布後、上層だけを選択加熱するような波長の赤外線を用いて加熱処理する方法や、熱源を上層側に設置して、上層から先に温度が上昇するように加熱処理する方法等が挙げられる。
ここで熱源を上層側に設置して、上層から先に温度が上昇するように加熱処理する方法として具体的には、上層の表面と、該上層を加熱する加熱手段との距離(以下、適宜「加熱距離」ということがある)をなるべく小さくして、該上層の表面側のみから加熱することが好ましい。例えば、上層の表面側をホットプレートに接する向きで上層が成膜された基板を置くなどの方法が挙げられる。好ましくは、上層界面の任意の一点が、何れも、加熱手段界面から5cm以下とすることである。加熱距離をできるだけ狭くすることによって、均質に乾燥し、上層が下層からの影響を受けにくくなる効果が得られると推定される。
加熱手段は制限されず、任意に変更して実施することができる。加熱手段の具体的な方式としては、例えば、プレート(ホットプレート)上に基材を搭載しそのプレートを介して塗布膜を加熱させるホットプレート方式、前記基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線)を照射して、薄膜を加熱する方式等が挙げられる。中でも、プレート(ホットプレート)方式が好ましい。膜中の溶剤を均一に揮発させることができるためである。加熱手段は1つでもよく、また2つ以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、上層の乾燥を均一に行なうことが好ましく、従って、上層を均一に加熱することが好ましい。そのためには、上層の全ての部分の加熱距離を、等しくすることが好ましい。また、上層と加熱手段とを対向して備えることが好ましい。さらに、加熱手段は、大きな加熱手段を用いることが好ましい。具体的には、上層よりも大きい加熱手段を用いることが好ましい。
加熱温度は、加熱処理を行なう場合、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。温度が高すぎると他の層に悪影響を及ぼす可能性があり、また、低すぎると特定有機層中に溶剤が残る可能性がある。
加熱時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは2分以上、また、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。乾燥時間が長すぎると下層の成分が拡散する傾向があり、また、短すぎると上層が不均質になる傾向がある。
加熱処理における相対湿度は限定されないが、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、また、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下である。相対湿度が高すぎると上層中に水分が残存する傾向がある。
加熱処理における真空度は限定されないが、減圧処理を行なう場合には、好ましくは1×10-2Pa以下、より好ましくは1×10-3Pa以下、さらに好ましくは5×10-4Pa以下、また、下限値に制限はないが、通常1×10-5Pa以上である。真空度が高すぎると、真空度を高くするために時間を要し、その間の環境制御が困難になる傾向があり、また、低すぎると上層中に溶剤が残存しやすくなる傾向がある。
なお、上記では発光層及び有機層の界面を急峻とするための方法についてのみ説明したが、本発明の有機EL素子が、有機層上にさらに一層以上の他の有機物を含有する有機層を有する場合等には、有機層とこれらの他の有機層の界面、及び/または他の有機層どうしの界面も急峻に形成されていることが好ましい。
ここで、本発明の有機EL素子は、通常、基板を備え、当該基板上に第1の電極が形成され、その上に上述の各層が積層された積層型の構成を有するものである。ここで、第1の電極及び第2の電極は、何れかが陽極であり、他方が陰極である。以下、第1の電極が陽極、第2の電極が陰極である場合について、基板側から積層される順に説明する。
図2は、本発明の有機EL素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。図2に示す有機EL素子10aは、基板1の上に、陽極2、正孔注入層3、発光層4、電子輸送層5、及び陰極6を、この順に積層して構成される。図2では、正孔注入層3及び電子輸送層5が本発明でいう有機層とされる。
<2−1.基板>
基板1は有機EL素子10aの支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板等、汎用材料からなる透明基板を用いることが好ましい。
基板1の材料の例としては、BK7、SF11、LaSFN9、BaK1、F2などの各種ショットガラス、合成フェーズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、サファイヤガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなどのガラス、TFTが形成されたガラス、高分子材料としては、ポリメチルメタクリレートや架橋アクリレートなどのアクリル樹脂、ピスフェノールAポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィンなどの非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンなどのスチレン樹脂、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの合成樹脂、等が挙げられる。また、これらのうち2種以上の積層体であってもよい。目的と用途に応じて、これらの基板の上に反射防止フィルム、円偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムを形成、若しくは張り合わせてもよい。
ただし、合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが好ましい。基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機EL素子10aが劣化する可能性があるからである。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
<2−2.陽極>
基板1上には、例えば陽極2が設けられる。陽極2は、発光層4側の層(正孔注入層3または発光層4等)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/またはスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。なお、陽極2の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陽極2の形成方法に制限は無いが、通常、スパッタリング法、蒸着法等により行われる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダ樹脂溶液にそれらを分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
また、陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、中でも80%以上とすることが好ましく、この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常1000nm以下、中でも500nm以下が好ましい。一方、陽極2が不透明でよい場合、陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。さらに、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
また、陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極2の表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
さらに、正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔注入層3と陽極2との間に公知の陽極バッファ層を挿入してもよい。
<2−3.正孔注入層>
正孔注入層3は、陽極2から発光層4へ正孔を輸送する層である。以下、まず正孔注入層3に含有される成分を説明し、次に正孔注入層3の形成方法について説明する。
〔2−3−1.正孔注入層の材料〕
正孔注入層の材料は、正孔注入層3に含有されるものである。また、正孔注入層3を湿式成膜法で形成する場合は、正孔注入層用の塗布用組成物(以下、適宜「正孔注入層用組成物」ということがある)にも、正孔注入層の材料が含有される。この正孔注入層の材料は、正孔注入層3を形成しうるものであれば特に制限は無い。ただし、通常は、正孔注入層の材料として、高分子化合物(以下、適宜ポリマーともいう)及び電子受容性化合物を用いる。さらに、正孔注入層の材料として、それ以外の成分を用いてもよい。以下、これらの正孔注入層の材料について説明する。
(2−3−1−1.ポリマー)
正孔注入層の材料として用いられるポリマーの種類は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、その中でも、正孔輸送性を有するポリマー(高分子量の正孔輸送性化合物(以下適宜、「正孔輸送性ポリマー」という。)が好ましく、この観点から、4.5eV〜5.5eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物であることが好ましい。なお、イオン化ポテンシャルは物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、光電子分光法で直接測定されるか、電気化学的に測定した参加電位を基準電極に対して補正して求められる。後者の方法の場合は、例えば、飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、下記式で表される(“Molecular Semiconductors”, Springer
−Verlag, 1985年, pp.98)。
イオン化ポテンシャル = 酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
前記正孔輸送性ポリマーの例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも、非晶質性、溶剤への溶解度、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
芳香族アミン化合物の中でも、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。なお、ここでいう芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、100万以下の高分子化合物が更に好ましい。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 0004967864
(式(I)中、Ar1及びAr2は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ar3〜Ar5は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表わす。Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連結基を表わす。)
・連結基群X1:
Figure 0004967864
(式中、Ar11〜Ar28は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。R1及びR2は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
前記式(I)において、Ar1〜Ar5及びAr11〜Ar28としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の、1価又は2価の基が適用可能である。即ち、Ar1、Ar2、Ar16、Ar21及びAr26は、それぞれ1価の基が適用可能であり、Ar3〜Ar5、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27及びAr28は、それぞれ2価の基が適用可能である。これらは各々同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、任意の置換基を有していてもよい。
前記の芳香族炭化水素環としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
前記の芳香族複素環としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
また、Ar3〜Ar5、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27、Ar28としては、上に例示した1種類又は2種類以上の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の2価の基を2つ以上連結して用いることもできる。
さらに、Ar1〜Ar5及びAr11〜Ar28の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なお、置換基は、1個が単独で置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
[置換基群W]
メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上、通常20以下、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上、通常30以下、好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常25以下、好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上、通常8以下、好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下の芳香族炭化水素環基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常28以下、好ましくは17以下の芳香族複素環基。
上述したものの中でも、Ar1及びAr2としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
また、上述したものの中でも、Ar3〜Ar5としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ましい。
前記式(I)において、R1及びR2としては、水素原子又は任意の置換基が適用可能である。これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されないが、適用可能な置換基を例示するならば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。これらの具体例としては、先に置換基群Wにおいて例示した各基が挙げられる。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性ポリマーの重量平均分子量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、また、通常50万以下、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下である。
正孔注入層3中のポリマーの割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、正孔注入層3全体に対する重量比の値で、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、また、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。なお、2種以上のポリマーを併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにすることが好ましい。
(2−3−1−2.電子受容性化合物)
正孔注入層の材料として用いられる電子受容性化合物の種類は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩;塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素等が挙げられる。上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。さらに、強い酸化力と高い溶解性とを両立する点から、有機基の置換したオニウム塩が最も好ましく、下記式(II−1)〜(II−3)で表わされる化合物であることが特に好ましい。
Figure 0004967864
(上記式(II−1)〜(II−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の基を表わす。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。A1〜A3は何れも長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第3周期以降の元素であって、A1は周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は周期表の第16族に属する元素を表わし、A3は周期表の第15族に属する元素を表わす。Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。n1〜n3は、各々独立に、対アニオンのイオン価を表わす。)
上記式(II−1)〜(II−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。したがって、R11、R21及びR31としては、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の趣旨に反しない限り、その種類は特に制限されない。
11、R21及びR31の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
11、R21及びR31の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
上記式(II−1)〜(II−3)中、R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の置換基を表わす。したがって、R12、R22、R23及びR32〜R34の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。
12、R22、R23及びR32〜R34の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
12、R22、R23及びR32〜R34の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。中でも、R11、R21及びR31と同様、電子受容性が大きい点から、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、R11、R21及びR31について先に説明したものと同様のものが挙げられる。
以上、R11、R21、R31、R12、R22、R23、及びR32〜R34として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R11、R21、R31、R12、R22、R23、及びR32〜R34としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。なお、前記の更に置換する置換基は、1個のみで置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、上記式(II−1)〜(II−3)中、R11〜R34のうち隣接する2以上の基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(II−1)〜(II−3)中、A1〜A3は、何れも周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素であって、A1は、長周期型周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は、第16族に属する元素を表わし、A3は、第15族に属する元素を表わす。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましく、A2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく、A3としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子のうち何れかが好ましい。
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(II−1)におけるA1が臭素原子又はヨウ素原子である化合物、又は、式(II−2)におけるA2がセレン原子又は硫黄原子である化合物が好ましく、中でも、式(II−1)におけるA1がヨウ素原子である化合物が特に好ましい。
式(II−1)〜(II−3)中、Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
式(II−1)〜(II−3)中、n1〜n3は、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。
1 n1-〜Z3 n3-の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられる。
特に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-としては、化合物の安定性、溶剤への溶解性の点で、下記式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンが好ましく、サイズが大きいという点で、負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、下記式(II−6)で表わされる錯イオンが更に好ましい。
Figure 0004967864
式(II−4)及び(II−6)中、E1及びE3は、各々独立に、長周期型周期表の第13族に属する元素を表わす。中でもホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(II−5)中、E2は、長周期型周期表の第15族に属する元素を表わす。中でもリン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子が好ましい。
式(II−4)及び(II−5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表わし、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点からフッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
式(II−6)中、Ar61〜Ar64は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、R11、R21及びR31について先に例示したものと同様の、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
Ar61〜Ar64として例示した芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
Ar61〜Ar64が有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が置換したハロアルキル基、などが挙げられる。
中でも、Ar61〜Ar64のうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、負電荷を効率よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を有する点から、Ar61〜Ar64の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが特に好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
なお、前記の置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンの式量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上、好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下の範囲である。該錯イオンの式量が小さ過ぎると、正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なため、電子受容能が低下する場合があり、また、該錯イオンの式量が大き過ぎると、該化合物自体が電荷輸送の妨げとなる場合がある。
正孔注入層の材料としては、上に説明した各種の電子受容性化合物のうち、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。2種以上の電子受容性化合物を用いる場合には、上記式(II−1)〜(II−3)のうち何れか1つの式に該当する電子受容性化合物を2種以上組み合わせてもよく、それぞれ異なる式に該当する2種以上の電子受容性化合物を組み合わせてもよい。
正孔注入層3及び正孔注入層用組成物中における電子受容性化合物の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ポリマー及び後述の正孔輸送性化合物に対する値で、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。電子受容性化合物の量は多い方が不溶化しやすいため好ましく、加熱時間が短時間で不溶化することができる。なお、2種以上の電子受容性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
なお、正孔注入層3の形成時或いは形成後に、上記の正孔輸送性を有するポリマー或いは下記の正孔輸送性化合物が、この電子受容性化合物と反応することにより、形成後の正孔注入層3中では、正孔輸送性ポリマー或いは正孔輸送性化合物のカチオンラジカル及びイオン化合物が生成している場合がある。
(2−3−1−3.低分子量の正孔輸送性化合物)
正孔注入層の材料としては、必要に応じて低分子量の正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。
低分子量の正孔輸送性化合物は、従来、有機EL素子における正孔注入・輸送性の薄膜精製材料として利用されてきた各種の化合物の中から、適宜選択することが可能である。中でも、溶剤溶解性の高いものが好ましい。
低分子量の正孔輸送性化合物の好ましい例としては、芳香族アミン化合物が挙げられる。中でも、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。
なお、低分子量の正孔輸送性化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常200以上、好ましくは400以上、より好ましくは600以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1700以下、特に好ましくは1400以下の範囲である。分子量が小さ過ぎると耐熱性が低くなる傾向がある一方で、低分子量の正孔輸送性化合物の分子量が大き過ぎると合成及び精製が困難となる傾向がある。
なお、低分子量の正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(2−3−1−4.その他の成分)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述したポリマー、電子受容性化合物及び正孔輸送性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させても良い。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダ樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔2−3−2.正孔注入層の形成〕
正孔注入層の形成方法は特に限定されるものではなく、上述の材料に応じて適宜選択することができる。例えば湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合は、上述の材料を適切な溶剤に溶解させて塗布用組成物を調製し、それを塗布及び乾燥することにより形成することができる。以下、特に湿式成膜法により正孔注入層3を形成する方法について説明する。
正孔注入層用組成物に含有させる正孔注入層用溶剤としては、正孔注入層3の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。ただし、前述のポリマー、電子受容性化合物及び低分子量の正孔輸送性化合物のうち、少なくとも1種、中でも2種以上、特には3種全てを、溶解することが可能なものが好ましい。具体的な溶解性としては、常温・常圧下で、ポリマーを通常0.005重量%以上、中でも0.5重量%以上、特には1重量%以上溶解することが好ましく、電子受容性化合物を通常0.001重量%以上、中でも0.1重量%以上、特には0.2重量%以上溶解することが好ましい。
また、正孔注入層用溶剤としては、ポリマー、電子受容性化合物、低分子量の正孔輸送性化合物及びそれらの混合から生じるフリーキャリア(カチオンラジカル)を失活させる可能性のある失活物質又は失活物質を発生させるものを含まない溶剤が好ましい。
正孔注入層用溶剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤、等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
ただし、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤は、酸化剤とポリマーを溶解する能力が低いため、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤と混合して用いることが好ましい。
正孔注入層用組成物に対する正孔注入層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上、また、通常99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、更に好ましくは99.9重量%以下の範囲である。なお、正孔注入層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
正孔注入層用組成物の塗布・成膜後、得られた塗膜を乾燥し、正孔注入層用溶剤を除去することにより、正孔注入層が形成される。成膜の方式は、パターニングが可能な方法であれば、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はない。例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、等が挙げられる。
これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。正孔注入層用組成物に特有の液性に合うためである。
なお、乾燥の手法は例えば、プレート(ホットプレート)上に基材を搭載しそのプレートを介して塗布膜を加熱させるホットプレート方式、前記基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線)を照射して、薄膜を加熱する方式、等を用いることができる。加熱手段は1つでもよく、また2つ以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、正孔注入層3の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
<2−4.発光層>
正孔注入層3の上には本発明に係る有機層として発光層4が設けられる。発光層4は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極6から電子輸送層5を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
〔2−4−1.発光層の材料〕
発光層4は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光物質については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。また、電荷輸送性化合物を2成分以上含有していることが好ましい。更に、発光層4は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、本発明においては、何れも低分子化合物を使用することが好ましい。なお、低分子化合物とは、重量平均分子量が、通常6000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは1500以下の化合物をいう。
(2−4−1−1.発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
次に、発光材料のうち、燐光発光材料について説明する。燐光発光材料としては、例えば、周期表第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
燐光性有機金属錯体に含まれる、周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましいもの例を挙げると、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記式(V)又は式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 0004967864
{式(V)中、Mは金属を表わし、qは上記金属の価数を表わす。また、L及びL’は二座配位子を表わす。jは0、1又は2の数を表わす。}
Figure 0004967864
{式(VI)中、M7は金属を表わし、Tは炭素原子又は窒素原子を表わす。R92〜R95は、それぞれ独立に置換基を表わす。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。}
以下、まず、式(V)で表わされる化合物について説明する。
式(V)中、Mは任意の金属を表わし、好ましいものの具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
また、式(V)中、二座配位子Lは、以下の部分構造を有する配位子を示す。
Figure 0004967864
上記Lの部分構造において、環A1”は、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。
環A1”を構成する芳香族炭化水素基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環由来の1価の基などが挙げられる。
環A1”を構成する芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環由来の1価の基などが挙げられる。
また、上記Lの部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表わす。
環A2を構成する含窒素芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環由来の1価の基などが挙げられる。
環A1”又は環A2がそれぞれ有していてもよい置換基の例としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
なお、前記置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(V)中、二座配位子L’は、以下の部分構造のうちの少なくともいずれかを有する配位子を示す。但し、以下の式において、「Ph」はフェニル基を表わす。
Figure 0004967864
中でも、L’としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
Figure 0004967864
式(V)で表わされる化合物として、更に好ましくは、下記式(Va)、(Vb)及び(Vc)の少なくともいずれかで表わされる化合物が挙げられる。
Figure 0004967864
{式(Va)中、M4は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1”は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
Figure 0004967864
{式(Vb)中、M5は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1”は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
Figure 0004967864
{式(Vc)中、M6は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、jは、0、1又は2を表わし、環A1”及び環A1’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2及び環A2’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)において、環A1”及び環A1’の好ましい例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)において、環A2及び環A2’の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)のいずれかで表わされる化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
また、前記置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、置換基がアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアルケニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシ基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアリールオキシ基である場合は、その炭素数は通常6以上14以下である。また、置換基がジアルキルアミノ基である場合は、その炭素数は通常2以上24以下である。また、置換基がジアリールアミノ基である場合、その炭素数は通常12以上28以下である。また、置換基がアシル基である場合は、その炭素数は通常1以上14以下である。また、置換基がハロアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上12以下である。
なお、前記の置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1”が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基とが結合するかして、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、例えば7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
上述した置換基の中でも、環A1”、環A1’、環A2及び環A2’の置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。なお、環A1”、環A1’、環A2及び環A2’の置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(Va)、(Vb)及び(Vc)におけるM4〜M6の好ましい例としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。
上記式(V)、(Va)、(Vb)及び(Vc)のいずれかで示される有機金属錯体の具体例を以下に示す。但し、下記の化合物に限定されるものではない。
Figure 0004967864
Figure 0004967864
さらに、上記式(V)で表わされる有機金属錯体の中でも、特に、配位子L及び/又はL’として2−アリールピリジン系配位子(即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、及び、これに任意の基が縮合してなるもの)を有する化合物が好ましい。
また、国際特許公開第2005/019373号明細書に記載の化合物も、発光材料として使用することが可能である。
次に、式(VI)で表わされる化合物について説明する。
式(VI)中、M7は金属を表わす。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(VI)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表わす。なお、各R92及びR93はそれぞれ同じでもよく異なっていても良い。
更に、式(VI)においてTが炭素原子である場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表わされる置換基を表わす。また、式(VI)においてTが窒素原子である場合は、R94及びR95は無い。なお、各Tは同じでもよく異なっていても良い。
また、式(VI)においてR92〜R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、その種類に特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。また、その置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
さらに、式(VI)においてR92〜R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
式(VI)で表わされる有機金属錯体の具体例(T−1〜T−7)を以下に示す。但し、下記の例示物に限定されるものではない。また、以下の化学式において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
Figure 0004967864
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、層を形成した際の層の質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機EL素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層4における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(2−4−1−2.正孔輸送性化合物)
また、発光層4には、構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の〔2−3−1−3.低分子量の正孔輸送性化合物〕の欄で例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91, pp.209)等が挙げられる。なお、発光層4において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層4における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(2−4−1−3.電子輸送性化合物)
発光層4には、構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層4において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層4における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
〔2−4−2.発光層の形成〕
上記発光層は湿式成膜法により形成される。以下発光層の形成方法について説明する。発光層を製造するための塗布用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。ただし、前述の発光材料、正孔輸送性化合物、及び、電子輸送性化合物を溶解することが可能なものが好ましい。具体的な溶解性としては、常温・常圧下で、発光材料、正孔輸送性化合物、あるいは電子輸送性化合物を、通常0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上、特には0.1重量%以上溶解することが好ましい。発光層用溶剤の好適な例は、上述した〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した溶剤と同様である。
発光層を製造するための塗布用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下の範囲である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
発光層を製造するための塗布用組成物の塗布・成膜後、得られた塗膜を乾燥し、発光層用溶剤を除去することにより、発光層が形成される。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、例えば上記〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した、いかなる方式も用いることができる。
なお、乾燥の手法についても、〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した手法と同様とすることができ、他に制限はない。
発光層4の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層4の膜厚が、薄すぎると発光層に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると有機EL素子の駆動電圧が上昇する可能性がある。
<2−5.電子輸送層>
電子輸送層5は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層5に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極6又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。なお、電子輸送層5の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層5の形成方法に制限はなく、例えば湿式成膜法により形成してもよいが、真空蒸着法により形成することが特に好ましい。
電子輸送層5の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
<2−6.陰極>
陰極6は、発光層4側の層(電子輸送層5又は発光層4など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極6の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。なお、陰極6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極6の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極6を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<2−7.その他の層>
以上、図2に示す層構成の有機EL素子を中心に説明してきたが、本発明に係る有機EL素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、上記図2においては正孔注入層3及び正孔注入層5が有機層として用いられているが、有機層の種類に制限はなく、後述するいずれの層を有機層として用いてもよい。またさらにその性能を損なわない限り、陽極2と陰極6との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
〔2−7−1.正孔輸送層〕
図3は、本発明の有機EL素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。なお、図3において、図2と同様の構成要素については同一の符号を付して表わし、その説明は省略する。
図3に示す有機EL素子10bは、図2の有機EL素子10aと同様の構成に加えて、正孔注入層3と発光層4との間に正孔輸送層7を有している。この構成の場合、この正孔輸送層7が本発明でいう有機層に該当することになる。
正孔輸送層7を形成する材料としては、上記正孔注入層3に混合して用いてもよい正孔輸送化合物として例示した化合物と同様なものが挙げられる。また、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン等の高分子材料も用いることができる。なお、正孔輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
湿式成膜法により正孔輸送層7を形成する場合は、上述の材料を適切な溶剤に溶解させて塗布用組成物を調製し、それを用いて成膜工程、乾燥工程を経ることにより形成する。これらの詳細は、先の〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した内容と同様である。以下、特に湿式成膜法について説明する。
正孔輸送層を製造するための塗布用組成物に含有させる正孔輸送層用溶剤としては、正孔注入層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。ただし、前述の正孔輸送性化合物や高分子材料を溶解することが可能なものが好ましい。
また、正孔輸送層用溶剤としては、ポリマー、電子受容性化合物、正孔輸送性化合物及びそれらの混合から生じるフリーキャリア(カチオンラジカル)を失活させる可能性のある失活物質又は失活物質を発生させるものを含まない溶剤が好ましい。
正孔輸送層を製造するための塗布用組成物の塗布・成膜後、得られた塗膜を乾燥し、正孔輸送層用溶剤を除去することにより、正孔輸送層が形成される。湿式成膜の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した、いかなる方式も用いることができる。
なお、乾燥の手法は、〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した手法と同様であれば、他に制限はない。
なお、正孔輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
〔2−7−2.電子阻止層〕
図4は、本発明の有機EL素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。なお、図4においても、図2と同様の構成要素については同一の符号を付して表わし、その説明は省略する。図4に示す有機EL素子10cは、図2の有機EL素子10aと同様の構成に加えて、正孔注入層3と発光層4との間に電子阻止層8を有している。この構成の場合、この電子阻止層8が、本発明でいう有機層に該当することになる。
電子阻止層8は、発光層4から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層4内で正孔と電子との再結合確率を上げ、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層4の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は効果的である。
電子阻止層8に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明において、発光層4を湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層8にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層8に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号公報記載)等が挙げられる。なお、電子阻止層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層8の形成方法に制限はない。従って、上述の材料を上述の〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した方法や、その他の方法で正孔注入層3上に積層することにより形成することができる。
〔2−7−3.電子注入層>
図5は、本発明の有機EL素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。なお、図5においても、図2と同様の構成要素については同一の符号を付して表わし、その説明は省略する。図5に示す有機EL素子10dは、図2の有機EL素子10aと同様の構成に加えて、電子輸送層5上に電子注入層9aおよび後述する正孔阻止層9bを有している。電子注入層9aは、陰極6から注入された電子を効率良く発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層9aを形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、上述の材料を上述の〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した湿式成膜法や、その他の方法で発光層4上に積層することにより形成することができる。
〔2−7−4.正孔阻止層〕
また、例えば、発光層4と電子輸送層5との間に、正孔阻止層9bを設けてもよい。正孔阻止層9bは、発光層4の上に、発光層4の陰極6側の界面に接するように積層される層である。この正孔阻止層9bは、陽極2から移動してくる正孔を陰極6に到達するのを阻止する役割と、陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層9bを構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層9bの材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層9bの材料として好ましい。なお、正孔阻止層9bの材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層9bの形成方法に制限はない。従って、上述の材料を上述の〔2−3−2.正孔注入層の形成〕の欄で説明した湿式成膜法や真空蒸着法等で形成できるが、真空蒸着法で形成することが好ましい。
正孔阻止層9bの膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
〔2−8.その他〕
陰極6と発光層4又は電子輸送層5との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向
上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年, Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図2の層構成であれば、基板1上に陰極6、電子輸送層5、発光層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けることになる。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明の有機EL素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明の有機EL素子は、単一の有機EL素子として構成してもよく、複数の有機EL素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていても良い。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下
の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない
限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図6に示す構造を有する有機EL素子10eを以下の方法で作製した。なお、図6において、図2〜5と同様の構成要素については同一の符号を付して表わしている。
(ITO基板の形成)
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
(正孔注入層の成膜)
続いて、下記構造式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子2重量%と、構造式(B1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を、溶媒としての安息香酸エチルに溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。この塗布組成物を上記ガラス基板上にスピンコートした。スピンコートは気温23℃、相対湿度58%の大気中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。スピンコート後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブンにて常圧大気雰囲気中、230℃で180分間加熱した。このようにして、膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。
Figure 0004967864
(発光層の成膜)
次に、下記構造式(C1)で表される化合物30mg、下記構造式(C2)で表される化合物30mg、及び、下記構造式(C3)で表される化合物3mgを、キシレン2.0gに溶解させ、発光層溶液を調製した。この発光層溶液を、先の正孔注入層3の上にスピンコートにて60nmの厚さに塗布し、発光層4を形成した。スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中で行い、スピナ回転数は1300rpm、スピナ時間は30秒とした。その後、内部を減圧することのできるチャンバー内にあるホットプレート上に、発光層4が塗布された面がホットプレートに接するような向きで基板を置き、チャンバーを真空度0.01MPaに減圧して、130℃で1時間加熱乾燥した。
Figure 0004967864
(正孔阻止層の成膜)
次に、正孔注入層3と発光層4を塗布成膜した基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が4.3×10-4Paになるまでクライオポンプを用いて排気し、下記構造式(C4)で表される化合物を真空蒸着法によって積層した。蒸着時の真空度は2.1×10-5〜3.6×10-5Pa、蒸着速度は0.8〜1.2Å/秒の範囲で制御し、膜厚5nmの膜を発光層4の上に積層して正孔阻止層9bを形成した。
Figure 0004967864
(電子輸送層の成膜)
次いで同装置内に配置されたセラミック製ルツボに入れた、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度は2.7×10-5〜3.4×10-5Pa、蒸着速度は0.8〜1.2Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層9bの上に積層して電子輸送層9aを形成した。
(陰極層の形成)
ここで、電子輸送層9aまでの蒸着を行った素子を蒸着装置から取り出し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が6.3×10-5Pa以下になるまで排気した。
陰極6として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.09〜0.15Å/秒、真空度4.1×10-5〜7.8×10-5Paで制御して、0.5nmの膜厚で電子輸送層9aの上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜7.0Å/秒、真空度2.4×10-5〜12×10-5Paで制御して、膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を形成した。以上の2層型陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
(封止処理)
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。得られた有機電界発光素子の発光特性、及び2,500cd/m2で直流駆動した寿命試験の結果を表1に示す。
<駆動条件>
温度 室温
駆動方式 直流駆動(DC駆動)
初期輝度 2,500cd/m2
(測定例1)
(有機電界発光素子の静電容量の直流電圧依存性の測定)
実施例1で作製した有機電界発光素子をインピーダンスアナライザ(ソーラトロン社製1260)、及び誘電率測定インターフェイス(ソーラトロン社製1296)に接続し、直流電圧を走印したときの各電圧での複素インピーダンスを測定した。測定条件は以下の通りとした。
<複素インピーダンス測定条件>
直流電圧走印範囲 8V→−5V
電圧走印間隔 0.1V
モジュレーション電圧 100mV
モジュレーション周波数 10Hz
各直流電圧において測定された複素インピーダンスの実部Z’(Ω)、虚部Z”(Ω)、及びモジュレーション周波数f(Hz)から、各直流電圧における静電容量Cを式1にしたがって計算した。−3〜−4Vの電圧範囲の静電容量を平均することで、電荷注入のない電圧での素子の静電容量を計算し、この値で各直流電圧における静電容量測定値を除する事により、素子の相対静電容量−直流電圧曲線を計算した。さらに、2次のSavitzky−Golay法により5点平均でスムージング処理を行った。スムージング処理された相対静電容量−直流電圧依存性曲線を、中心差分法により数値微分することで、相対静電容量の電圧の一次微分曲線を計算した。
実施例1で作製した素子の相対静電容量の直流電圧依存性を図7に示す。また、相対静電容量の電圧の一次微分を直流電圧に対してプロットしたものを図8に示す。発光開始電圧6.052Vよりも低い電圧である2Vに、明瞭なピークを確認することができる。また発光特性の評価と駆動寿命試験を行った結果を表1に示す。
(比較例1)
発光層4を塗布した後の真空乾燥の際に、発光層4が塗布されていない基板面をホットプレートに接するような向きで置き、0.01MPaの減圧下で130℃、1時間乾燥した他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、同様に発光特性の評価と駆動寿命試験を行った結果を表1に示す。
比較例1で作製した素子の静電容量の直流電圧依存性を図9に示す。また、静電容量の電圧の一次微分を直流電圧に対してプロットしたものを図10に示す。この素子では、発光開始電圧6.090Vよりも低い電圧領域に、明瞭なピークを確認することができない。
(実施例2)
正孔注入層3を塗布した後、260℃で180分乾燥した他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、同様に発光特性の評価と駆動寿命試験を行った結果を表1に示す。
実施例2で作製した素子の静電容量の直流電圧依存性を図11に示す。また、静電容量の電圧の一次微分を直流電圧に対してプロットしたものを図12に示す。発光開始電圧6.265Vよりも低い電圧である1.7Vに、明瞭なピークを確認することができる。
Figure 0004967864
以上の結果からわかるように、静電容量測定において、発光開始電圧よりも低い電圧領域に、静電容量の電圧の一次微分曲線にピークが観測される実施例1、及び2の素子の輝度半減寿命は、静電容量の電圧の一次微分曲線にピークが観測されない比較例1の素子の輝度半減寿命よりも長くなっていることがわかる。
本発明は、有機EL光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
本発明の有機EL素子の静電容量の電圧の一次微分曲線におけるピークの有無の判断を説明するための説明図である。 本発明の有機EL素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の有機EL素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。 本発明の有機EL素子の構造の更に別の例を模式的に示す断面図である。 本発明の有機EL素子の構造の更に別の例を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例に係る有機EL素子の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例1に係る有機EL素子の相対静電容量の直流電圧依存性を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る有機EL素子の相対静電容量の電圧の一次微分を直流電圧に対してプロットしたグラフである。 比較例1に係る有機EL素子の相対静電容量の直流電圧依存性を示すグラフである。 比較例1に係る有機EL素子の相対静電容量の電圧の一次微分を直流電圧に対してプロットしたグラフである。 本発明の実施例2に係る有機EL素子の相対静電容量の直流電圧依存性を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る有機EL素子の相対静電容量の電圧の一次微分を直流電圧に対してプロットしたグラフである。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極
7 正孔輸送層
8 電子阻止層
9a 電子注入層
9b 正孔阻止層
10,10a〜10e 有機EL素子

Claims (7)

  1. 陽極と、該陽極と対向するように形成された陰極と、該陽極及び該陰極の間に形成され、かつ湿式成膜法により形成された発光層と、該発光層に密接するように形成された少なくとも一層の有機層とを少なくとも有する有機電界発光素子であって、
    該有機電界発光素子の静電容量を測定した際、該静電容量の電圧の一次微分曲線の、該発光層の発光開始電圧より低い電圧にピークが観測される
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 該発光層が、低分子化合物からなる
    ことを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 該有機層の少なくとも一層が、湿式成膜法により形成された正孔注入層である
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
  4. 該正孔注入層が、高分子化合物および電子受容性化合物を含有する
    ことを特徴とする、請求項3に記載の有機電界発光素子。
  5. 該有機層上に該発光層を形成する際、又は、該発光層上に該有機層を形成する際、該有機層及び該発光層は、上層の形成において、下層中の成分の該上層への拡散を抑制する処理を施す
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  6. 該有機層上に該発光層を形成する際、又は、該発光層上に該有機層を形成する際、該有機層及び該発光層は、上層の形成に用いられる塗布液を塗布後、該上層だけを選択加熱するような波長の赤外線を用いて加熱処理を施す又は熱源を該上層側に設置して該上層から先に温度が上昇するように加熱処理を施す
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  7. 該有機層上に該発光層を形成する際、又は、該発光層上に該有機層を形成する際、下層に対して、250℃以上で焼成処理を施す
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
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