JP2009146691A - 有機電界発光素子の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ - Google Patents

有機電界発光素子の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】発光層と、上記発光層に隣接して形成される有機層を湿式成膜法で形成する有機電界発光素子の製造方法であって、発光層が安定して高い内部量子収率を示すことが可能な有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】陽極及び陰極の間に、有機層と、前記有機層に隣接して形成された発光層とを有する有機電界発光素子の製造方法であって、
湿式成膜法により成膜した後、温度T1(℃)で時間t(分)加熱して前記有機層を形成する有機層形成工程と、
前記有機層上に、発光材料および沸点T2(℃)の溶剤を含有する組成物を用いて湿式成膜法により成膜し、前記発光層を形成する発光層形成工程とを有し、
前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(1)を満たす。
80 ≦ (T1×t)/T2 ・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は湿式成膜法により発光層を形成する有機電界発光素子の製造方法、及び前記方法により製造された有機電界発光素子を有する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに関する。
有機電界発光素子(以下、適宜「有機EL素子」ともいう。)は、陽極と陰極との間に複数の有機層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層等)が積層して設けられる。これらの有機層の形成は、多くの場合、低分子量色素等の有機層の材料を真空蒸着することにより行なわれていた。しかしながら、蒸着法では均質で欠陥がない薄膜を得ることが困難な場合があり、かつ、数層もの有機層を形成するには長時間を要するため、素子の製造効率の面でも改良が望まれていた。
これに対して、特許文献1や特許文献2では、積層型有機電界発光素子の複数の有機層を湿式成膜法によって形成する技術が報告されている。しかしながら湿式成膜法で有機層を積層した素子は、十分な素子特性が得られないことがあった。
特開2005−78896号公報 特開2007−123257号公報
湿式成膜法で有機層を形成すると、蒸着法のように、素子作製における再現性や、安定した素子特性が得られず、工業的には歩留まりが上がらないことがあるという面があった。安定した素子特性が得られない原因の一つとして、発光層を湿式成膜法により形成した場合、発光層が安定して高い内部量子収率を示す有機電界発光素子とすることが難しいという点が挙げられる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発光層と、上記発光層に隣接して形成される有機層を湿式成膜法で形成する有機電界発光素子の製造方法であって、発光層が安定して高い内部量子収率を示すことが可能な有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、有機層を形成する際の加熱時間及び加熱温度の積と、この有機層に隣接して形成する発光層の形成に用いる溶剤の沸点との比を所定の範囲内とすることにより、発光層が安定して高い内部量子収率を示す有機電界発光素子を製造可能であることを見出した。
本発明の要旨は、陽極及び陰極の間に、有機層と、前記有機層に隣接して形成された発光層とを有する有機電界発光素子の製造方法であって、湿式成膜法により成膜した後、温度T1(℃)で時間t(分)加熱して前記有機層を形成する有機層形成工程と、前記有機層上に、発光材料および沸点T2(℃)の溶剤を含有する組成物を用いて湿式成膜法により成膜し、前記発光層を形成する発光層形成工程とを有し、前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法に存する(請求項1)。
80 ≦ (T1×t)/T2 ・・・(1)
またこの際、前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(2)を満たすことが好ましい(請求項2)。
(T1×t)/T2 ≦ 300 ・・・(2)
また、前記沸点T2(℃)が140℃以上であることが好ましく(請求項3)、前記有機層が正孔注入層であることが好ましい(請求項4)。
さらに、前記有機層が気化温度150℃〜250℃の材料を5重量%以上含有することが好ましく(請求項5)、前記発光層が低分子化合物からなることが好ましい(請求項6)。
本発明の別の要旨は、上述した有機電界発光素子の製造方法により製造された有機電界発光素子を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに存する(請求項7)。
本発明によれば、発光層が安定して高い内部量子収率を示す有機電界発光素子を製造することができる。また、再現性よく安定した素子特性が得られるため、工業的に歩留まりを向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
本発明は、陽極及び陰極の間に、有機層と、前記有機層に隣接して形成された発光層とを有する有機電界発光素子の製造方法に関する。本発明でいう有機層とは、発光層に隣接して形成される層であれば、その種類は特に限定されず、例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などが挙げられる。本発明において、有機層は上記いずれの層であってもよいが、中でも電子に対して耐久性が低い傾向がある正孔注入層または正孔輸送層が好ましく、特に正孔注入層であることが好ましい。一般的に、正孔注入層や正孔輸送層を湿式成膜法で形成することが多いが、本発明によれば、これらの層と発光層との間での混合を制御することができ、発光層が安定して高い内部量子収率を示すことが可能となる。
本発明においては、湿式成膜法により成膜した後、温度T1(℃)で時間t(分)加熱して前記有機層を形成する有機層形成工程と、前記有機層上に、発光材料および沸点T2(℃)の溶剤を含有する組成物を用いて湿式成膜法により成膜し、前記発光層を形成する発光層形成工程とを有し、前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
80 ≦ (T1×t)/T2 ・・・(1)
以下、適宜(T1×t)/T2で表される時間を効率向上有効時間ともいう。
本発明により製造された有機電界発光素子における発光層が、安定して高い内部量子収率を示すことの理由は、下記のように推察される。本発明の製造方法によれば、上記有機層は、湿式成膜法により成膜された後、温度T1(℃)、時間t(分)加熱して得られるが、この時の温度T1(℃)が高いほど、また時間t(分)が長いほど、有機層中に残存する溶剤の量が少なくなると考えられる。したがって、有機層の加熱温度T1(℃)が高く、時間t(分)が十分長ければ、有機層中に残存する溶剤もより少なくなり、さらにそれら溶剤に混入している水も少なくなるため、より緻密な有機層を形成することができる。
また発光層は有機層上に、沸点T2(℃)の溶剤を含有する組成物を用いて成膜されるが、この時の溶剤の沸点T2(℃)が高いほど塗布膜の乾燥速度は遅くなり、成膜工程において、膜中に溶剤が存在する時間が長くなるため、発光層中の分子拡散により、発光層と有機層とが混合し易くなると考えられる。そこで、発光層を形成するための組成物中の溶剤の沸点T2(℃)が高い場合には、第1の有機層の加熱温度T1(℃)をより高く、時間t(分)をより長くすることで、第1の有機層と発光層との混合を制御できると考えられる。
以上のことから本発明においては、効率向上有効時間を特定の範囲とし、緻密な有機層を形成すること等により、安定して高い内部量子収率を示す発光層が得られるものと推定できる。
ここで本発明においては、前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(2)も満たすことが好ましい。
(T1×t)/T2 ≦ 300 ・・・(2)
上記有機層は、湿式成膜法にて成膜された後、温度T1(℃)、時間t(分)加熱して得られるが、この時の温度T1(℃)が高すぎる、または時間t(分)が長すぎると、有機層を形成する材料が熱分解を起こすことが考えられる。有機層の熱分解が生じると、層内に欠陥が生じるため、発光層を形成するための組成物を湿式成膜法により塗布した際に、有機層の欠陥に上記組成物中の溶剤が浸透しやすくなり、2層の間で混合が生じてしまう。これに対して、有機層の加熱温度T1(℃)が極端に高くなく、時間t(分)が長すぎなければ、有機層を形成する材料が熱分解することがなく、発光層を形成するための組成物を湿式成膜法により塗布した際に、有機層と発光層とが混合し難くなる。したがって、効率向上有効時間を上記式(2)を満たすように設定することによって、熱分解を起こした有機層と発光層とが混合しすぎることなく、安定して高い内部量子収率を示す発光層が得られるものと推定される。
以下、本発明における有機層形成工程及び発光層形成工程について説明し、その後、本発明により製造される有機電界発光素子について説明する。
1.有機層形成工程
本発明における有機層形成工程は、湿式成膜法により成膜した後、温度T1(℃)で時間t(分)加熱して有機層を形成する工程である。湿式成膜法とは、有機層を形成するための有機層形成用材料を、適宜溶剤に分散または溶解させて成膜する方法であって、(以下、有機層形成用材料を溶剤に分散または溶解させたものを、「有機層形成用組成物」ともいう。)例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、等が挙げられる。
また湿式成膜法による成膜時の温度としては、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また通常50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。下限を下回ると、成膜時に有機層形成用組成物中に含まれる溶質が析出する可能性があり、また上限を上回ると、有機層形成用組成物中に含まれる溶剤の揮発によって、塗布ムラが生じる可能性がある。
またさらに、湿式成膜法による成膜時の相対湿度としては、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上である。また通常60%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下である。
また、上記湿式成膜法により成膜された膜の加熱温度T1(℃)は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。また通常350℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下である。下限値以上とすることにより、上述した式(1)を容易に満たすことが可能となり、上限値以下とすることにより、式(2)を容易に満たすことができる。
上記湿式成膜法により成膜された膜の加熱時間t(分)は、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上である。また通常480分以下、好ましくは360分以下である。下限値以上とすることにより、上述した式(1)を容易に満たすことが可能となる。また上限値以下とすることにより、式(2)を容易に満たすことができる。
本工程により形成される有機層の膜厚としては、有機層の種類等に応じて適宜選択されるが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また通常1000nm以下、より好ましくは500nm以下である。これにより有機層が形成されていない空隙の欠陥が発生することを防ぐことができ、また乾燥工程において溶剤の除去を容易に行なうことができる。
また本工程により有機層を形成するために用いられる有機層形成用材料は、有機層の種類に応じて適宜選択され、具体的な材料については、後述する有機電界発光素子の各部材の項で説明する。なお、本工程により形成された有機層は、気化温度150℃以上、250℃以下である材料を含有することが好ましい。上記材料の含有量は通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。また通常60重量%以下、好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記材料を、上記範囲内含有することにより、キャリア移動度のバランスが向上したり、キャリア移動度が高まり、効率のよい有機電界発光素子が得られる。上記気化温度を有する材料としては、例えば正孔注入層の形成に用いられる電子受容性化合物等が挙げられる。
2.発光層形成工程
また発光層形成工程は、上記有機層上に、発光材料および沸点T2(℃)の溶剤を含有する組成物(以下、「発光層形成用組成物」ともいう。)を用いて湿式成膜法により成膜し、発光層を形成する工程である。上記組成物中に含有される溶剤の沸点T2(℃)は、通常140℃以上、好ましくは180℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは260℃以下である。なお、上記発光層形成用組成物中には、1種類の溶剤のみが含有されていてもよく、また2種類以上の溶剤が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。2種類以上の溶剤が含有されている場合には、少なくとも1種類が上記範囲を満たしていることが好ましく、溶剤全体の一割以上を占める溶剤が上記範囲を満たしていることがより好ましく、全ての溶剤が上記範囲を満たしていることが特に好ましい。
上記下限を下回ると、溶剤の揮発性が高くなり、発光層形成用組成物の濃度変化による塗工ムラが生じる可能性があり、また上限を上回ると、溶剤を除去するための乾燥温度が高くなり、乾燥時に溶質材料の性能の低下を招く可能性がある。
上記発光層形成用組成物中における上記溶剤の含有量は、通常60重量%以上であり、好ましくは80重量%以上である。また通常99重量%以下であり、好ましくは97重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下である。発光層形成用組成物中に2種類以上の溶剤が含有されている場合には、各溶剤量の総和が、上記範囲内とされる。上限を上回ると発光層の膜厚を制御することが困難となる場合がある。下限を下回ると、溶質が析出する場合があり、保存安定性が低下する場合がある。
また、上記発光層形成用組成物を成膜する方法としては、湿式成膜法であればよく、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、等が挙げられる。
また湿式成膜法による成膜時の温度としては、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また通常50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。下限を下回ると、成膜時に発光層形成用組成物中の溶質が析出する可能性があり、また上限を上回ると、溶剤の揮発による塗布ムラが発生する可能性がある。
またさらに、湿式成膜法による成膜時の相対湿度としては、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上である。また通常60%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下である。上限を超えると成膜中の溶剤気化により、膜表面に水滴ができる可能性があり、下限を下回ると、成膜中に静電気が発生しやすくなる傾向がある。
また、上記湿式成膜法により成膜された膜の加熱温度は、通常60℃以上、好ましくは80℃以上である。また通常300℃以下、好ましくは200℃以下である。上記下限値以上とすることにより、溶剤の揮発性が高くなり、発光層からの溶剤の除去が容易となる。また上限値以下とすることにより、材料の熱による変化等を防ぐことができる。
上記湿式成膜法により成膜された膜の加熱時間は、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上である。また通常110分以下、好ましくは50分以下である。上記下限値以上とすることにより、溶剤の揮発性が高くなり、発光層からの溶剤の除去が容易となる。また上限値以下とすることにより、材料の熱による変化等を防ぐことができる。
本工程により形成される発光層の膜厚としては、発光材料の種類等に応じて適宜選択されるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また通常200nm以下、より好ましくは100nm以下である。下限値以上とすることにより、発光層が形成されていない空隙の欠陥が発生することを防ぐことができ、また上限値以下とすることにより、塗布膜の乾燥工程における溶剤の除去を容易に行なうことができる。
なお、発光材料、溶剤、その他発光層形成用組成物に含まれていてもよい具体的な材料としては、下記の「発光層」の欄で詳しく説明する。
3.その他の工程
なお、本発明の有機電界発光素子の製造方法では、上記有機層形成工程、及び発光層形成工程の他に、必要に応じて適宜他の工程を有していてもよく、他の工程は、上記各工程の前後、または上記工程間に行われてもよい。
4.有機電界発光素子の各部材
本発明により製造される有機電界発光素子は、通常、基板を備え、当該基板上に陽極または陰極が形成され、その上に有機層、及び該有機層に隣接して発光層が積層された積層型の構成を有する。
図1は、本発明により製造される有機電界発光素子の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す有機電界発光素子10aは、基板1の上に、陽極2、正孔注入層3(有機層)、発光層4、及び陰極5をこの順に積層して構成される。図1の構成では、正孔注入層3が本発明でいう有機層とされる。
以下、上記図1に示される有機電界発光素子を例に、本発明の有機電界発光素子の製造方法により製造される有機電界発光素子の各部材について説明する。
4−1.基板
基板1は有機電界発光素子10aの支持体となるものであり、例えば石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板等、汎用材料からなる透明基板を用いることが好ましい。
基板1の材料の例としては、BK7、SF11、LaSFN9、BaK1、F2などの各種ショットガラス、合成フェーズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、サファイヤガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなどのガラス、TFTが形成されたガラス、高分子材料としては、ポリメチルメタクリレートや架橋アクリレートなどのアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィンなどの非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンなどのスチレン樹脂、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの合成樹脂、等が挙げられる。また、これらのうち2種以上の積層体であってもよい。目的と用途に応じて、これらの基板の上に例えば反射防止フィルム、円偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムを形成、若しくは張り合わせてもよい。
ただし、合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが好ましい。基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機電界発光素子10aの性能が低下する可能性があるからである。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
4−2.陽極
基板1上には、例えば陽極2が設けられる。陽極2は、発光層4側の層(正孔注入層3または発光層4等)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、例えばアルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/またはスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。なお、陽極2の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陽極2の形成方法に制限は無いが、通常、スパッタリング法、蒸着法等により行われる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダ樹脂溶液にそれらを分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
また、陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視
光の透過率を、通常60%以上、中でも80%以上とすることが好ましく、この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常1000nm以下、中でも500nm以下が好ましい。一方、陽極2が不透明でよい場合、陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。さらに、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
また、陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極2の表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
さらに、正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、正孔注入層3の陽極への付着力を改善させる目的で、例えば正孔注入層3と陽極2との間に公知の陽極バッファ層を挿入してもよい。
4−3.正孔注入層
正孔注入層3は、陽極2から発光層4へ正孔を輸送する層である。本実施形態においては、正孔注入層3が有機層とされ、上述した有機層形成工程により形成されるものとされるが、例えば正孔輸送層や電子注入層等、他の層を発光層4と隣接する有機層として構成する場合には、正孔注入層3の形成方法は上記方法に限定されず、本発明の目的及び効果を損なわない限り、いかなる方法も用いることができる。
以下、正孔注入層の形成に用いられる正孔注入層形成用組成物に含まれる材料について説明する。
正孔注入層3を上述した有機層形成工程により形成する場合における正孔注入層形成用組成物には、通常、正孔注入用材料、及び溶剤が含有される。さらに、必要に応じて、例えば電荷のトラップになりにくいバインダー樹脂や、塗布性改良剤、各種発光材料等を含んでいてもよい。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
4−3−1.正孔注入用材料
正孔注入用材料としては、正孔注入層が陽極から発光層へ正孔を輸送する層であるため、正孔注入層には正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、加えて電子受容性化合物を含むことがより好ましい。
(正孔輸送性化合物)
正孔輸送性化合物の例としては、正孔輸送性を有するポリマー(以下適宜、「正孔輸送性ポリマー」という。)が挙げられ、これらは4.5eV〜5.5eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物であることが好ましい。なお、イオン化ポテンシャルは物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、光電子分光法で直接測定されるか、電気化学的に測定した酸化電位を基準電極に対して補正して求められる。後者の方法の場合は、例えば、飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、下記式で表される(”Molecular Semiconductors”, Springer−Verlag, 1985年, pp.98)。
イオン化ポテンシャル = 酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
前記正孔輸送性ポリマーの例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。これらは1種類単独で、または2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも、非晶質性、溶剤への溶解度、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
芳香族アミン化合物の中でも、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。なお、ここでいう芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、100万以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型有機化合物)が好ましい。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 2009146691
(式(I)中、Ar1及びAr2は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ar3〜Ar5は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表わす。Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連結基を表わす。)
・連結基群X1:
Figure 2009146691
(式中、Ar11〜Ar28は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。R1及びR2は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
前記式(I)において、Ar1〜Ar5及びAr11〜Ar28としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の、1価又は2価の基が適用可能である。即ち、Ar1、Ar2、Ar16、Ar21及びAr26は、それぞれ1価の基が適用可能であり、Ar3〜Ar5、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27及びAr28は、それぞれ2価の基が適用可能である。これらは各々同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、任意の置換基を有していてもよい。
前記の芳香族炭化水素環としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
前記の芳香族複素環としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
また、Ar3〜Ar5、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27、及びAr28としては、上に例示した1種類又は2種類以上の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の2価の基を2つ以上連結して用いることもできる。
さらに、Ar1〜Ar5及びAr11〜Ar28の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下が好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なお、置換基は、1個が単独で置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
[置換基群W]
メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上、通常20以下、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上、通常30以下、好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常25以下、好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上、通常8以下、好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下の芳香族炭化水素環基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常28以下、好ましくは17以下の芳香族複素環基。
上述したものの中でも、Ar1及びAr2としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
また、上述したものの中でも、Ar3〜Ar5としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ましい。
前記式(I)において、R1及びR2としては、水素原子又は任意の置換基が適用可能である。これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されないが、適用可能な置換基を例示するならば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。これらの具体例としては、先に置換基群Wにおいて例示した各基が挙げられる。
正孔注入層3中のポリマーの割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、正孔注入層3全体に対する重量比の値で、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、また、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。なお、2種以上のポリマーを併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにすることが好ましい。
また低分子量の正孔輸送性化合物を用いてもよく、低分子量の正孔輸送性化合物の好ましい例としては、芳香族アミン化合物が挙げられる。中でも、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。
なお、低分子量の正孔輸送性化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常200以上、好ましくは400以上、より好ましくは600以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1700以下、特に好ましくは1400以下の範囲である。分子量が小さ過ぎると耐熱性が低くなる傾向がある一方で、低分子量の正孔輸送性化合物の分子量が大き過ぎると合成及び精製が困難となる傾向がある。
なお、低分子量の正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(電子受容性化合物)
また、電子受容性化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩;塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素等が挙げられる。上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。さらに、強い酸化力と高い溶解性とを両立する点から、有機基の置換したオニウム塩が特に好ましい。下記式(II−1)〜(II−3)で表わされる化合物であることがさらに好ましい。
Figure 2009146691
(上記式(II−1)〜(II−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の基を表わす。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。A1〜A3は何れも長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第3周期以降の元素であって、A1は周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は周期表の第16族に属する元素を表わし、A3は周期表の第15族に属する元素を表わす。Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。n1〜n3は、各々独立に、対アニオンのイオン価を表わす。)
上記式(II−1)〜(II−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。したがって、R11、R21及びR31としては、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の趣旨に反しない限り、その種類は特に制限されない。
11、R21及びR31の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
11、R21及びR31の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等に由来の一価の基が挙げられる。
上記式(II−1)〜(II−3)中、R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の置換基を表わす。したがって、R12、R22、R23及びR32〜R34の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。
12、R22、R23及びR32〜R34の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
12、R22、R23及びR32〜R34の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。中でも、R11、R21及びR31と同様、電子受容性が大きい点から、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、R11、R21及びR31について先に説明したものと同様のものが挙げられる。
以上、R11、R21、R31、R12、R22、R23、及びR32〜R34として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R11、R21、R31、R12、R22、R23、及びR32〜R34としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。なお、前記の更に置換する置換基は、1個のみで置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、上記式(II−1)〜(II−3)中、R11〜R34のうち隣接する2以上の基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(II−1)〜(II−3)中、A1〜A3は、何れも周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素であって、A1は、長周期型周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は、第16族に属する元素を表わし、A3は、第15族に属する元素を表わす。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましく、A2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく、A3としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子のうち何れかが好ましい。
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(II−1)におけるA1が臭素原子又はヨウ素原子である化合物、又は、式(II−2)におけるA2がセレン原子又は硫黄原子である化合物が好ましく、中でも、式(II−1)におけるA1がヨウ素原子である化合物が特に好ましい。
式(II−1)〜(II−3)中、Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
式(II−1)〜(II−3)中、n1〜n3は、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。
1 n1-〜Z3 n3-の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられる。
特に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-としては、化合物の安定性、溶剤への溶解性の点で、下記式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンが好ましく、サイズが大きいという点で、負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、下記式(II−6)で表わされる錯イオンが更に好ましい。
Figure 2009146691
式(II−4)及び(II−6)中、E1及びE3は、各々独立に、長周期型周期表の第13族に属する元素を表わす。中でもホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(II−5)中、E2は、長周期型周期表の第15族に属する元素を表わす。中でもリン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子が好ましい。
式(II−4)及び(II−5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表わし、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点からフッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
式(II−6)中、Ar61〜Ar64は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、R11、R21及びR31について先に例示したものと同様の、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
Ar61〜Ar64として例示した芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
Ar61〜Ar64が有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が置換したハロアルキル基、などが挙げられる。
中でも、Ar61〜Ar64のうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、負電荷を効率よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を有する点から、Ar61〜Ar64の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが特に好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
なお、前記の置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンの式量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上、好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下の範囲である。該錯イオンの式量が小さ過ぎると、正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なため、電子受容能が低下する場合があり、また、該錯イオンの式量が大き過ぎると、該化合物自体が電荷輸送の妨げとなる場合がある。
正孔注入層3の材料としては、上に説明した各種の電子受容性化合物のうち、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。2種以上の電子受容性化合物を用いる場合には、上記式(II−1)〜(II−3)のうち何れか1つの式に該当する電子受容性化合物を2種以上組み合わせてもよく、それぞれ異なる式に該当する2種以上の電子受容性化合物を組み合わせてもよい。
正孔注入層3における電子受容性化合物の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、上記高分子及び低分子の正孔輸送性化合物に対する値で、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。なお、2種以上の電子受容性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
また、上記電子受容性化合物の気化温度は通常150℃以上であることが好ましく、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。また通常250℃以下であることが好ましく、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下である。下限を下回ると、成膜工程において、凝集等による不均質化が生じる可能性があり、また上限を超えると、正孔注入層形成用組成物中における他の物質との熱的安定性の差が大きくなり、結果として膜の不均質化を生じる可能性がある。
なお、正孔注入層3の形成時或いは形成後に、上記の正孔輸送性を有するポリマー或いは下記の正孔輸送性化合物が、この電子受容性化合物と反応することにより、形成後の正孔注入層3中では、正孔輸送性ポリマー或いは正孔輸送性化合物のカチオンラジカル及びイオン化合物が生成している場合がある。
4−3−2.溶剤
溶剤としては、例えばエーテル系溶剤およびエステル系溶剤が挙げられる。具体的には、エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
また、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド等も挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
正孔注入層形成用組成物中における正孔注入用材料に対する溶剤の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、また、通常99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、更に好ましくは99.9重量%以下の範囲である。なお、溶剤として二種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。上限を超えると、膜厚のコントロールが困難となる可能性があり、下限を下回ると、膜のレベリング効果が得られ難く、膜厚ムラが発生する可能性がある。
4−4.発光層
本実施形態においては、正孔注入層3の上に発光層4が設けられる。発光層4は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極5から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層4は、上述した発光層形成工程により、上記正孔注入層3上に、湿式成膜法により形成される。
なお本発明においては、発光層4が低分子化合物からなることが好ましい。これにより高純度の材料からなる発光層4を得ることができる。湿式成膜法を用いる場合、通常材料としては高分子化合物が使用されるが、高分子化合物は重合度や分子量分布を制御することが困難である場合があり、連続駆動時に高分子化合物の末端残基による変化が生じた場合には、高分子化合物自体の高純度化が困難で不純物によるクエンチャーの発生、さらには分子量分布の多分散性による色素の低下等が生じることがある。これに対して、本発明では発光層4が分子量10000以下の低分子化合物からなることが好ましく、分子量は9000以下がより好ましく、8000以下が特に好ましい。また分子量は250以上であることが好ましく、1000以上がより好ましい。
発光層形成用組成物中に含有される材料としては、以下の発光材料及び溶剤が挙げられる。
4−4−1.発光材料
発光材料としては、本発明の目的及び効果を損なわない限り、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子収率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも可能である。
青色発光を与える蛍光色素としては、例えばペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。また緑色発光を与える緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。また黄色発光を与える黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM(4- (dicyanomethylene) -2-methyl -6- (p- dimethylaminostyryl)- 4H-pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
また燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
燐光性有機金属錯体に含まれる、周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましいもの例を挙げると、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記式(V)又は式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2009146691
{式(V)中、Mは金属を表わし、qは上記金属の価数を表わす。また、L及びL’は二座配位子を表わす。jは0、1又は2の数を表わす。}
Figure 2009146691
{式(VI)中、M7は金属を表わし、Tは炭素原子又は窒素原子を表わす。R92〜R95は、それぞれ独立に置換基を表わす。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。}
以下、まず、式(V)で表わされる化合物について説明する。
式(V)中、Mは任意の金属を表わし、好ましいものの具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
また、式(V)中、二座配位子Lは、以下の部分構造を有する配位子を示す。
Figure 2009146691
上記Lの部分構造において、環A1”は、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。
環A1”を構成する芳香族炭化水素基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環由来の1価の基などが挙げられる。
環A1”を構成する芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環由来の1価の基などが挙げられる。
また、上記Lの部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表わす。
環A2を構成する含窒素芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環由来の1価の基などが挙げられる。
環A1”又は環A2がそれぞれ有していてもよい置換基の例としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
なお、前記置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(V)中、二座配位子L’は、以下の部分構造のうちの少なくともいずれかを有する配位子を示す。但し、以下の式において、「Ph」はフェニル基を表わす。
Figure 2009146691
中でも、L’としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
Figure 2009146691
式(V)で表わされる化合物として、更に好ましくは、下記式(Va)、(Vb)及び(Vc)の少なくともいずれかで表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2009146691
{式(Va)中、M4は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1”は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
Figure 2009146691
{式(Vb)中、M5は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1”は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
Figure 2009146691
{式(Vc)中、M6は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、jは、0、1又は2を表わし、環A1”及び環A1’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2及び環A2’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)において、環A1”及び環A1’の好ましい例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)において、環A2及び環A2’の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)のいずれかで表わされる化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
また、前記置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、置換基がアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアルケニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシ基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアリールオキシ基である場合は、その炭素数は通常6以上14以下である。また、置換基がジアルキルアミノ基である場合は、その炭素数は通常2以上24以下である。また、置換基がジアリールアミノ基である場合、その炭素数は通常12以上28以下である。また、置換基がアシル基である場合は、その炭素数は通常1以上14以下である。また、置換基がハロアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上12以下である。
なお、前記の置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1”が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基とが結合するかして、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、例えば7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
上述した置換基の中でも、環A1”、環A1’、環A2及び環A2’の置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。なお、環A1”、環A1’、環A2及び環A2’の置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(Va)、(Vb)及び(Vc)におけるM4〜M6の好ましい例としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。
上記式(V)、(Va)、(Vb)及び(Vc)のいずれかで示される有機金属錯体の具体例を以下に示す。但し、下記の化合物に限定されるものではない。
Figure 2009146691
Figure 2009146691
さらに、上記式(V)で表わされる有機金属錯体の中でも、特に、配位子L及び/又はL’として2−アリールピリジン系配位子(即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、及び、これに任意の基が縮合してなるもの)を有する化合物が好ましい。
また、国際特許公開第2005/019373号明細書に記載の化合物も、発光材料として使用することが可能である。
次に、式(VI)で表わされる化合物について説明する。
式(VI)中、M7は金属を表わす。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(VI)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表わす。なお、各R92及びR93はそれぞれ同じでもよく異なっていても良い。
更に、式(VI)においてTが炭素原子である場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表わされる置換基を表わす。また、式(VI)においてTが窒素原子である場合は、R94及びR95は無い。なお、各Tは同じでもよく異なっていても良い。
また、式(VI)においてR92〜R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、その種類に特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。また、その置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
さらに、式(VI)においてR92〜R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
式(VI)で表わされる有機金属錯体の具体例(T−1〜T−7)を以下に示す。但し、下記の例示物に限定されるものではない。また、以下の化学式において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
Figure 2009146691
発光材料として用いる化合物の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。分子量が下限を下回ると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化をきたすことがある。また分子量が上限を超えると、有機化合物の精製が困難となったり、溶剤に溶解させる際に時間を要する可能性がある。なお、発光層は、上に説明した各種の発光材料のうち、何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせおよび比率で併有していてもよい。
4−4−2.溶剤
溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル等のエーテル、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸イソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸シクロヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル等のエステル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、アミルベンゼン、ジアミルベンゼン、トリアミルベンゼン、テトラアミルベンゼン、ドデシルベンゼン、ジドデシルベンゼン、アミルトルエン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらを1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。上記溶剤の使用量については、上述した「2.発光層形成工程」で説明した量とすることができる。
4−4−3.その他
また、上記発光層形成用組成物は、さらに正孔輸送性化合物、或いは、電子輸送性化合物を含有していてもよい。正孔輸送性化合物の例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物等が挙げられる。
電子輸送性化合物の例としては2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。
4−5.陰極
陰極5は、発光層4側の層に電子を注入する役割を果たすものである。陰極5の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。なお、陰極5の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極5の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極5を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
4−6.その他の層
以上、図1に示す層構成の有機電界発光素子を中心に説明してきたが、本発明の製造方法により製造される有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよく、後述するいずれの層を有機層として用いてもよい。またさらにその性能を損なわない限り、陽極2と陰極5との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
例えば、有機電界発光素子として、正孔注入層3と発光層4との間に、正孔輸送層を有する構成等とすることもできる。この場合、正孔輸送層が、本発明でいう有機層とされる。また例えば、有機電界発光素子として、陰極5と発光層4との間に、電子輸送層を有する構成等とすることもできる。
また、本発明の有機電界発光素子の製造方法では、例えば基板1上に陰極5を形成し、電子輸送層、発光層4、正孔注入層3、及び陽極2を順に積層してもよく、この場合、電子輸送層が、上述した有機層とされ、有機層形成工程で説明した方法により形成されることとなる。
4−6−1.正孔輸送層
正孔輸送層は、発光層4に正孔を輸送する機能を有する層であり、通常、正孔注入層3が有機電界発光素子に形成される場合には、正孔注入層3上に形成され、正孔注入層3が形成されない場合には、陽極2上に形成される。正孔輸送層によって、発光層4に正孔を輸送し効率よく注入することができる。本発明により製造される有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成とすることもできる。
正孔輸送層に利用できる材料としては、正孔輸送性が高く、かつ注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいものであることが好ましい。
また、多くの場合発光層4に接するため、発光層4からの発光を消光したり、発光層4との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないものであることが好ましい。
このような正孔輸送材料としては、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物に加えて、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4"−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
更には、加熱や光や磁気等の電磁波照射などによって重合する化合物や、任意の複数化合物が予め重合した高分子を利用することも可能である。加熱や光や磁気等の電磁波照射などによって重合する化合物としては、架橋基を有するトリアリールアミン誘導体、フルオレン誘導体などが挙げられる。該架橋基としては、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基が好ましい。
このような高分子としては、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また上述したように、正孔輸送層が本発明でいう有機層とされる場合には、正孔輸送層が、上述した有機層形成工程で説明した方法により形成される。またそれ以外の場合には、本発明の目的及び効果を損なわない限り、その形成方法は限定されず、真空蒸着法などの乾式成膜法で形成することもできる。
湿式成膜法で形成する場合には、上記材料の1種又は2種以上に、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を混合し、適切な溶剤に溶解して正孔輸送層形成用組成物を調製し、上述した「1.有機層形成工程」で説明した方法等により形成することができる。
正孔輸送層形成用組成物に用いられるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は混合量が多いと正孔移動度を低下させることがあるため少ない方が望ましく、通常、正孔輸送層の固形分中における含有量が50重量%以下であることが好ましい。
また正孔輸送層を製造するための正孔輸送層形成用組成物に含有させる溶剤としては、正孔注入層3の形成に用いられるものと同様のものとすることができ、中でも前述の正孔輸送性化合物や高分子材料を溶解することが可能なものが好ましい。またさらに、ポリマー、電子受容性化合物、正孔輸送性化合物及びそれらの混合から生じるフリーキャリア(カチオンラジカル)を失活させる可能性のある失活物質又は失活物質を発生させるものを含まない溶剤が好ましい。
また、真空蒸着法を用いて正孔輸送層を形成する場合には、例えば正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで減圧した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向かい合って置かれた、陽極2あるいは正孔注入層3上に正孔輸送層を形成することができる。
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般にスピンコート法や真空蒸着法が多く用いられる。
4−6−2.電子輸送層
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極5から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極5又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限はなく、例えば電子輸送層が本発明でいう有機層とされる場合には、電子輸送層が、上述した有機層形成工程で説明した方法により形成される。それ以外の場合、本発明の目的及び効果を損なわない限り、電子輸送層の形成方法に制限はなく、例えば乾式成膜法により成膜してもよい。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
4−6−3.電子阻止層
本発明により製造される有機電界発光素子には、例えば正孔注入層3と発光層4との間に電子阻止層を有していてもよい。この構成の場合、電子阻止層が本発明でいう有機層に該当することになる。
電子阻止層は、発光層4から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層4内で正孔と電子との再結合確率を上げ、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層4の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。本発明において、発光層4を湿式成膜法で作製することから、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号公報記載)等が挙げられる。なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はないが、例えば電子阻止層が本発明でいう有機層とされる場合には、電子阻止層が、上述した有機層形成工程で説明した方法により形成される。
4−6−4.電子注入層
また本発明により製造される有機電界発光素子は、電子輸送層や陰極層5等と発光層4との間に電子注入層を有していてもよい。電子注入層は、陰極5から注入された電子を効率良く発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、上述の材料を上述の有機層形成工程で説明した湿式成膜法や、その他の方法で発光層4上に積層すること等により形成することができる。
4−6−5.正孔阻止層
また、例えば、発光層4と電子輸送層との間等に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層4の上に、発光層4の陰極6側の界面に接するように積層される層である。この正孔阻止層は、陽極2から移動してくる正孔が陰極5に到達するのを阻止する役割と、陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、上述の材料を湿式成膜法や真空蒸着法等で形成できるが、真空蒸着法で形成することが好ましい。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
4−6−6.その他
また、陰極5と発光層4又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年, Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
また、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明により製造される有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、本発明により製造される有機電界発光素子は、ボトムエミッション型にも、トップエミッション型にも使用可能である。図2(a)にボトムエミッション型の構造の一例を示し、図2(b)にトップエミッション型の構造の一例を示す。図2(a)に示されるボトムエミッション型の有機電界発光素子においては、例えば透光体(透明基板)21と、TFT部22と、透明電極23と、有機EL層24と、電極25とが、この順に積層された構造等とすることができる。なお、透明電極23及び電極25は、一方が陽極、他方が陰極とされ、いずれが陽極であってもよく、また陰極であってもよい。また図中における矢印は、光の取り出し方向を示す。
また図2(b)に示されるトップエミッション型の有機電界発光素子においては、例えば基材31と、TFT部22と、電極25と、有機EL層24と、透明電極23と、保護層26と、透光体(透明基板)21とが、この順に積層された構造等とすることができる。なお、透明電極23及び電極25は、一方が陽極、他方が陰極とされ、いずれが陽極であってもよく、また陰極であってもよい。また図中における矢印は、光の取り出し方向を示す。
なお、図2では、TFT部が含まれている構造としているが、TFT部は含まれていなくてもよい。また上記透明電極23及び電極25が、本発明では上述した陽極または陰極のいずれかとされ、有機EL層24には上記有機層や発光層、その他の層等が含まれる。その他の各部材については、一般的な有機電界発光素子に用いられるものと同様とすることができる。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の製造方法により得られた有機電界発光素子は、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイにおける有機電界発光素子として使用できる。有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、少なくとも透明支持基板と透明支持基板上に積層された有機電界発光素子とを有するものである。本発明により得られる有機電界発光素子は、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを形成することができる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下
の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない
限り以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1及び比較例1>
実施例1−1〜1−4、及び比較例1−1〜1−4は、各々以下の手順に従って行った。
(正孔注入層の形成)
石英基板(10×15×1mm)を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
続いて、下記構造式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子材料2重量%と、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.4重量%とを、溶剤としての安息香酸エチルに溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、正孔注入層形成用組成物を作製した。この正孔注入層形成用組成物を陽極が形成された上記石英基板上にスピンコートした。スピンコートは気温23℃、相対湿度40%の大気中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。スピンコート後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブンにて常圧大気雰囲気中、T1℃(ここで、T1は、表1にそれぞれ示す。)でt分間(ここで、tは、表1にそれぞれ示す。)加熱した。このようにして、膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。
Figure 2009146691
Figure 2009146691
(発光層の形成)
次に、下記構造式(C1)で表される化合物1.50重量%、下記構造式(C2)で表される化合物1.50重量%、および、下記構造式(C3)で表される化合物0.15重量%をシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、発光層形成用組成物を調製した(ここでシクロヘキシルベンゼンの沸点T2は240.12℃である)。この発光層形成用組成物を、先の正孔注入層の上にスピンコートにて塗布し、発光層を形成した。スピンコートは大気中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。塗布後、100℃で1分間加熱乾燥した。
Figure 2009146691
(評価)
得られた有機電界発光素子の発光特性を表1に示す。また測定は有機EL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス株式会社製)にて室温、大気中で行い、励起波長312nmとした。表1に示すが如く、(T1×t)/T2の値が大きくなるほど量子収率の値も大きくなった。(T1×t)/T2が80以下では量子収率の値は低かった。本発明の製造方法が80 ≦ (T1×t)/T2を満たす範囲で、安定して高い内部量子収率を示す素子が得られていることが明らかである。
Figure 2009146691
<実施例2及び比較例2>
実施例2−1〜2−2、及び比較例2−1〜2−4は、各々以下の手順に従って行った。
4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを0.8重量%にしたこと以外は、実施例1と同様にして、図1に示す有機電界発光素子を作製した。
得られた有機電界発光素子の量子収率を表2に示す。また測定は有機EL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス株式会社製)にて室温、大気中で行い、励起波長312nmとした。表2に示すが如く、(T1×t)/T2の値が大きくなるほど量子収率の値も大きくなった。(T1×t)/T2が80以下では量子収率の値は低い。本発明の製造方法が80 ≦ (T1×t)/T2を満たす範囲で、安定して高い内部量子収率を示す素子が得られていることが明らかである。
Figure 2009146691
<実施例3>
実施例3は、各々以下の手順に従って行い、図3に示す有機電界発光素子10bを作製した。
(陽極2の形成)
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
(正孔注入層3の形成)
続いて、下の構造式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子材料2重量%と、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を、溶剤としての安息香酸エチルに溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、正孔注入層形成用組成物を作製した。この正孔注入層形成用組成物を陽極2が形成された上記ガラス基板1上にスピンコートした。スピンコートは気温23℃、相対湿度40%の大気中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。スピンコート後、ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥した後、オーブンにて常圧大気雰囲気中、T1℃(表1に示す。)でt分間(表1に示す。)加熱した。このようにして、膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。
Figure 2009146691
Figure 2009146691
(発光層4の形成)
次に、下記構造式(C1)で表される化合物1.50重量%、下記構造式(C2)で表される化合物1.50重量%、および、下記構造式(C3)で表される化合物0.15重量%をシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、発光層形成用組成物を調製した(ここでシクロヘキシルベンゼンの沸点T2は240.12℃である)。この発光層形成用組成物を、先の正孔注入層3の上にスピンコートにて塗布し、発光層4を形成した。スピンコートは窒素雰囲気グローブボックス中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。塗布後、真空度0.01MPa、130℃で1時間加熱乾燥した。
Figure 2009146691
(正孔阻止層8の形成)
次に、正孔注入層3と発光層4を湿式成膜法により成膜した基板を真空蒸着装置内に搬入し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が5.0×10-6Torr以下になるまでクライオポンプを用いて排気し、下記構造式(C4)で表される化合物を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層8を得た。蒸着時の真空度は1.2〜2.0×10-6Torr、蒸着速度は0.8〜0.9Å/秒の範囲で制御し、膜厚5nmの膜を発光層の上に積層して正孔阻止層8を形成した。
Figure 2009146691
(電子輸送層7の形成)
次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。蒸着時の真空度は1.0〜1.5×10-6Torr、蒸着速度は0.8〜1.3Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層8の上に積層して電子輸送層7を形成した。
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を、一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が1.0×10-4Pa以下になるまで排気した。
(電子注入層9及び陰極5の形成)
電子注入層9として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.1〜0.15Å/秒、真空度2.3〜6.7×10-5Paで制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。次に、陰極5としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.9〜5.0Å/秒、真空度2.5〜15×10-5Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。以上の2層型陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
(封止処理)
引き続き、有機電界発光素子10bが保管中に大気中の水分等で性能が低下することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
(評価)
得られた有機電界発光素子の発光特性を表3に示す。
表3に示すが如く、本発明の製造方法が80 ≦ (T1×t)/T2を満たす範囲で、安定して高い発光効率を示す素子が得られていることが明らかである。
Figure 2009146691
本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。 (a)及び(b)はいずれも本発明を適用可能な有機電界発光素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例に係る有機電界発光素子の構造を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 発光層
5 陰極
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 正孔阻止層
9 電子注入層
10a、10b 有機電界発光素子
21 透光体
22 TFT部
23 透明電極
24 有機EL層
25 電極
26 保護層
31 基材

Claims (7)

  1. 陽極及び陰極の間に、有機層と、前記有機層に隣接して形成された発光層とを有する有機電界発光素子の製造方法であって、
    湿式成膜法により成膜した後、温度T1(℃)で時間t(分)加熱して前記有機層を形成する有機層形成工程と、
    前記有機層上に、発光材料および沸点T2(℃)の溶剤を含有する組成物を用いて湿式成膜法により成膜し、前記発光層を形成する発光層形成工程とを有し、
    前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(1)を満たす
    ことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
    80 ≦ (T1×t)/T2 ・・・(1)
  2. 前記温度T1(℃)、前記沸点T2(℃)、及び前記時間t(分)が、下記式(2)を満たす
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
    (T1×t)/T2 ≦ 300 ・・・(2)
  3. 前記沸点T2(℃)が140℃以上である
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  4. 前記有機層が正孔注入層である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  5. 前記有機層が気化温度150℃〜250℃の材料を5重量%以上含有する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  6. 前記発光層が低分子化合物からなる
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法により製造された有機電界発光素子を有する
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。
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