JP3986829B2 - 発光装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、陽極と、陰極と、電界を加えることで発光が得られる有機化合物を含む膜(以下、「有機化合物膜」と記す)と、を有する有機発光素子を用いた発光装置に関する。本発明では特に、有機化合物膜が高分子化合物を含み、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ素子の寿命が長い有機発光素子を用いた発光装置、およびその製造方法に関する。なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子として有機発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発光デバイスを指す。また、有機発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム(FPC:Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または有機発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
有機発光素子は、電界を加えることにより発光する素子である。その発光機構は、電極間に有機化合物膜を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機化合物膜中の発光中心で再結合して励起状態の分子(以下、「分子励起子」と記す)を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光すると言われている。
【0003】
なお、有機化合物が形成する分子励起子の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であるが、本明細書中ではどちらの励起状態が発光に寄与する場合も含むこととする。
【0004】
このような有機発光素子において、通常、有機化合物膜は1μmを下回るほどの薄膜で形成される。また、有機発光素子は、有機化合物膜そのものが光を放出する自発光型の素子であるため、従来の液晶ディスプレイに用いられているようなバックライトも必要ない。したがって、有機発光素子は極めて薄型軽量に作製できることが大きな利点である。
【0005】
また、例えば100〜200nm程度の有機化合物膜において、キャリアを注入してから再結合に至るまでの時間は、有機化合物膜のキャリア移動度を考えると数十ナノ秒程度であり、キャリアの再結合から発光までの過程を含めてもマイクロ秒以内のオーダーで発光に至る。したがって、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。
【0006】
さらに、有機発光素子はキャリア注入型の発光素子であるため、直流電圧での駆動が可能であり、ノイズが生じにくい。駆動電圧に関しては、まず有機化合物膜の厚みを100nm程度の均一な超薄膜とし、また、有機化合物膜に対するキャリア注入障壁を小さくするような電極材料を選択し、さらにはヘテロ構造(二層構造)を導入することによって、5.5Vで100cd/m2の十分な輝度が達成された(文献1:C. W. Tang and S. A. VanSlyke, "Organic electroluminescent diodes", Applied Physics Letters, vol. 51, No.12, 913-915 (1987))。
【0007】
こういった薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、有機発光素子は次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、自発光型であり視野角が広いことから、視認性も比較的良好であり、携帯機器の表示画面に用いる素子として有効と考えられている。
【0008】
ところで、文献1において示された有機発光素子の構成であるが、まず、キャリア注入障壁を小さくする方法として、仕事関数が低い上に比較的安定なMg:Ag合金を陰極に用い、電子の注入性を高めている。このことにより、有機化合物膜に大量のキャリアを注入することを可能としている。
【0009】
さらに有機化合物膜として、ジアミン化合物からなる正孔輸送層とトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、「Alq3」と記す)からなる電子輸送性発光層とを積層するという、シングルヘテロ構造を適用することにより、キャリアの再結合効率を飛躍的に向上させている。このことは、以下のように説明される。
【0010】
例えば、Alq3単層のみを有する有機発光素子の場合では、Alq3が電子輸送性であるため、陰極から注入された電子のほとんどは正孔と再結合せずに陽極に達してしまい、発光の効率は極めて悪い。すなわち、単層の有機発光素子を効率よく発光させる(あるいは低電圧で駆動する)ためには、電子および正孔の両方をバランスよく輸送できる材料(以下、「バイポーラー材料」と記す)を用いる必要があり、Alq3はその条件を満たしていない。
【0011】
しかし、文献1のようなシングルへテロ構造を適用すれば、陰極から注入された電子は正孔輸送層と電子輸送性発光層との界面でブロックされ、電子輸送性発光層中へ閉じこめられる。したがって、キャリアの再結合が効率よく電子輸送性発光層で行われ、効率のよい発光に至るのである。
【0012】
このようなキャリアのブロッキング機能の概念を発展させると、キャリアの再結合領域を制御することも可能となる。その例として、正孔をブロックできる層(正孔ブロッキング層)を正孔輸送層と電子輸送層との間に挿入することにより、正孔を正孔輸送層内に閉じこめ、正孔輸送層の方を発光させることに成功した報告がある。(文献2:Yasunori KIJIMA, Nobutoshi ASAI and Shin-ichiro TAMURA, "A Blue Organic Light Emitting Diode", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 38, 5274-5277(1999))。
【0013】
また、文献1における有機発光素子は、いわば正孔の輸送は正孔輸送層が行い、電子の輸送および発光は電子輸送性発光層が行うという、機能分離の発想であるとも言える。この機能分離の概念はさらに、正孔輸送層と電子輸送層の間に発光層を挟むというダブルへテロ構造(三層構造)の構想へと発展した(文献3:Chihaya ADACHI, Shizuo TOKITO, Tetsuo TSUTSUI and Shogo SAITO, "Electroluminescence in Organic Films with Three-Layered Structure", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 27, No. 2, L269-L271(1988))。
【0014】
こういった機能分離の利点としては、機能分離することによって一種類の有機材料に様々な機能(発光性、キャリア輸送性、電極からのキャリア注入性など)を同時に持たせる必要がなくなり、分子設計等に幅広い自由度を持たせることができる点にある(例えば、無理にバイポーラー材料を探索する必要がなくなる)。つまり、発光特性のいい材料、キャリア輸送性が優れる材料などを、各々組み合わせることで、容易に高発光効率が達成できるということである。
【0015】
これらの利点から、文献1で述べられた積層構造の概念(キャリアブロッキング機能あるいは機能分離)自体は、現在に至るまで広く利用されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上で述べたような積層構造は異種物質間の接合であるため、その界面には必ずエネルギー障壁が生じることになる。エネルギー障壁が存在すれば、その界面においてキャリアの移動は妨げられるため、以下に述べるような二つの問題点が提起される。
【0017】
まず一つは、駆動電圧のさらなる低減へ向けての障害になるという点である。実際、現在の有機発光素子において、駆動電圧に関しては共役ポリマーを用いた単層構造の素子の方が優れており、パワー効率(単位:[lm/W])でのトップデータ(ただし、一重項励起状態からの発光を比較)を保持していると報告されている(文献4:筒井哲夫、「応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌」、Vol. 11、No. 1、P.8(2000))。
【0018】
なお、文献4で述べられている共役ポリマーはバイポーラー材料であり、キャリアの再結合効率に関しては積層構造と同等なレベルが達成できる。したがって、バイポーラー材料を用いるなどの方法で、積層構造を用いることなくキャリアの再結合効率さえ同等にできるのであれば、界面の少ない単層構造の方が実際は駆動電圧が低くなることを示している。
【0019】
例えば電極との界面においては、エネルギー障壁を緩和するような材料を挿入し、キャリアの注入性を高めて駆動電圧を低減する方法がある(文献5:Takeo Wakimoto, Yoshinori Fukuda, Kenichi Nagayama, Akira Yokoi, Hitoshi Nakada, and Masami Tsuchida, "Organic EL Cells Using Alkaline Metal Compounds as Electron Injection Materials", IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 44, NO. 8, 1245-1248(1997))。文献5では、電子注入層としてLi2Oを用いることにより、駆動電圧の低減に成功している。
【0020】
しかしながら、有機材料間(例えば正孔輸送層と発光層との間のことであり、以下、「有機界面」と記す)のキャリア移動性に関してはいまだ未解決の分野であり、単層構造の低駆動電圧に追いつくための重要なポイントであると考えられる。
【0021】
さらに、エネルギー障壁に起因するもう一つの問題点として、有機発光素子の素子寿命に対する影響が考えられる。すなわち、キャリアの移動が妨げられ、チャージが蓄積することによる輝度の低下である。
【0022】
この劣化機構に関してははっきりした理論は確立されていないが、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を挿入し、さらにdc駆動ではなく矩形波のac駆動にすることによって、輝度の低下を抑えることができるという報告がある(文献6:S. A. VanSlyke, C. H. Chen, and C. W. Tang, "Organic electroluminescent devices with improved stability", Applied Physics Letters, Vol. 69, No. 15, 2160-2162(1996))。このことは、正孔注入層の挿入およびac駆動によって、チャージの蓄積を排除することにより、輝度の低下を抑えることができたという実験的な裏付けと言える。
【0023】
以上のことから、積層構造は容易にキャリアの再結合効率を高めることができ、なおかつ機能分離の観点から材料の選択幅を広くできるというメリットを持つ一方で、有機界面を多数作り出すことによってキャリアの移動を妨げ、駆動電圧や輝度の低下に影響を及ぼしていると言える。
【0024】
そこで本発明では、従来用いられている積層構造とは異なる概念の素子を作製することにより、有機化合物膜中に存在するエネルギー障壁を緩和してキャリアの移動性を高めると同時に、なおかつ積層構造の機能分離と同様に各種複数の材料の機能を発現させる(以下、「機能発現」と記す)ことを課題とする。それにより、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を提供することを課題とする。
【0025】
また、このような有機発光素子を用いることにより、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ寿命の長い発光装置を提供することを課題とする。さらに、前記発光装置を用いて電気器具を作製することにより、従来よりも低消費電力で、なおかつ長保ちする電気器具を提供することを課題とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
積層構造におけるエネルギー障壁の緩和に関しては、文献5に見られるようなキャリア注入層の挿入という技術に顕著に見られる。正孔注入層を例として、エネルギーバンドダイアグラムを用いた説明を図1に示す。
【0027】
図1(a)では陽極101と正孔輸送層102を直接接合しているが、この場合、陽極101と正孔輸送層102のエネルギー障壁104は大きい。しかしながら、陽極のイオン化ポテンシャルと正孔輸送層の最高被占分子軌道(以下、「HOMO」と記す)準位との中間に位置するHOMO準位を有する材料を、正孔注入層103として挿入することにより、エネルギー障壁を階段状に設計することができる(図1(b))。
【0028】
図1(b)のような階段状のエネルギー障壁を設計することにより、電極からのキャリア注入性を高め、確かに駆動電圧をある程度までは下げることができる。しかしながら問題点は、層の数を増やすことによって、有機界面の数は逆に増加することである。このことが、文献4で示されているように、単層構造の方が駆動電圧・パワー効率のトップデータを保持している原因であると考えられる。
【0029】
逆に言えば、この点を克服することにより、積層構造のメリット(様々な材料を組み合わせることができ、複雑な分子設計が必要ない)を活かしつつ、なおかつ単層構造の駆動電圧・パワー効率に追いつくことができる。
【0030】
そこで本発明者は、2種類以上(そのうち1種類以上は高分子化合物)の有機化合物を含む有機化合物膜において、実質上有機化合物膜中の界面をなくし、有機化合物膜中のエネルギー障壁を緩和する手法を考案した。
【0031】
すなわち、有機化合物膜が、前記陽極から正孔を受け取る正孔注入性化合物、前記陰極から電子を受け取る電子注入性化合物、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、正孔または電子の移動を阻止しうるブロッキング性化合物、発光を呈する発光性化合物、の一群から選ばれる少なくとも二つの化合物を含有する場合、その少なくとも二つの化合物が混合している領域(以下、「混合領域」と記す)を設けることにより、実質上有機化合物膜中の界面をなくす手法である。以下ではこの手法を、混合接合と記す。
【0032】
なお、本発明において高分子化合物を用いる理由は、高分子化合物の方が一般的にキャリア移動度が大きく、低い電圧で駆動できるためである。つまり、高分子化合物を用いた系において、混合接合を実施することが本発明の特徴となる。
【0033】
この場合、正孔注入性化合物、電子注入性化合物、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物は、発光を呈する機能を兼ね備えていてもよい。また、発光性化合物は、キャリア輸送性・キャリア注入性を兼ね備えていてもよいし、キャリア輸送性の乏しい材料であってもよい。
【0034】
また、混合領域は陽極および陰極から離れた位置に形成することが好ましい。一つの理由として、キャリア注入、キャリア輸送、発光などの各機能を発現できる領域は保持したまま、有機化合物膜中の界面を混合領域とすることで、障壁を緩和させるためである。
【0035】
特に、混合領域が発光の機能を有する場合、混合領域を電極から遠ざけ、電極による消光(以下、「クエンチ」と記す)を防止するため、電極から離す必要がある。その場合、分子励起子の拡散を考慮し、混合領域を電極から20nm以上は離すことが好ましい。離す距離の程度は、キャリアバランスを考慮して最も効率の良い距離を選択すればよい。
【0036】
ところで、このような混合接合を形成する場合において、混合領域に対してゲストをドープする手法も考えられる。混合領域においては、キャリアの移動が潤滑であると考えられるため、ゲストとして発光を呈する発光性化合物を用いることが好ましい。
【0037】
以上で述べたような混合接合を実施することにより、明瞭な積層構造を示すことなく(すなわち、明確な有機界面がなく)、かつ、機能発現が可能な有機発光素子を作製できる。
【0038】
また、第一の有機化合物と、前記第一の有機化合物とは異なる第二の有機化合物と、を含有している有機化合物膜中において、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物が混合している混合領域を設ける場合、第一の有機化合物および第二の有機化合物が共に高分子化合物である場合と、一方が低分子化合物である場合がある。さらに、混合領域において連続的な濃度変化を付与する手法が、なお好ましい。以下ではこれらの手法を、「連続接合」と記すことにする。また、その場合の混合領域を特に、「連続接合領域」と記す。
【0039】
従来の積層構造および本発明の連続接合の概念図を図2に示す。図2(a)は従来の積層構造(シングルへテロ構造)である。すなわち、第一の有機化合物201および第二の有機化合物202からなる有機化合物膜203aを有し、かつ、第一の有機化合物層201aおよび第二の有機化合物層202aから形成される積層構造(あるいは、明確な有機界面と言ってもよい)が存在している。この場合、第一の有機化合物201の濃度および第二の有機化合物202の濃度が徐々に変化する領域は存在せず、不連続になっていることがわかる(すなわち、有機界面において、濃度が0%から100%に変化、あるいは100%から0%に変化している)。
【0040】
しかしながら本発明の連続接合(図2(b))の場合、有機化合物膜203b内に、第一の有機化合物201の濃度および第二の有機化合物202の濃度が徐々に変化している領域(すなわち連続接合領域204b)が存在するため、明確な有機界面は存在しない。しかしながら、第一の有機化合物が機能を発現できる領域(第一機能領域201b)および第二の有機化合物が機能を発現できる領域(第二機能領域202b)は存在するため、各材料の機能は発現できる。
【0041】
以上で述べたような連続接合を実施することにより、明瞭な積層構造を示すことなく(すなわち、明確な有機界面がなく)、かつ、機能発現が可能な有機発光素子を作製できる。
【0042】
ところで、第一の有機化合物および第二の有機化合物は、本発明の概念(すなわち、積層構造を用いずに、各種複数の材料の機能を発現する)の観点から、異なる機能を有することが好ましい。
【0043】
この場合、第一の有機化合物および第二の有機化合物が共に高分子化合物であれば、一方が発光を呈し、もう一方がキャリア輸送機能を発現する構成が考えられる。また、第二の有機化合物が低分子化合物である場合には、低分子化合物が発光を呈し、高分子化合物がキャリア輸送機能を発現する構成と、高分子化合物が発光を呈し、低分子化合物がキャリア輸送機能を発現する構成が考えられる。
【0044】
さらに、高分子化合物がキャリア輸送機能を発現する場合、前記高分子化合物がπ電子を含む高分子化合物(すなわち、導電性高分子化合物)であり、さらに前記高分子化合物に化学ドーピングを施すことにより、導電性を向上させることが好ましい。
【0045】
なお、正孔輸送性化合物として用いる高分子化合物としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体などが好ましく、また、発光性化合物として用いる高分子化合物としては、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などが好ましい。
【0046】
また、以上で述べたような混合接合(連続接合を含む)を実施する際、混合領域において、第三の有機化合物をゲストとして添加することで、前記ゲストの機能を付与する手法が考えられる。機能発現の観点からは、発光を呈する発光性化合物をゲストとすることが好ましい。なぜならば、混合領域を形成する第一の有機化合物および第二の有機化合物にはキャリアの輸送性ないしはブロッキング性を持たせ、その混合領域に発光性化合物を添加することで、キャリアの再結合率を高め、発光効率が高くなると考えられるためである。
【0047】
その概念図を図3(a)に示す。図3(a)では、基板301上において、陽極302と陰極304との間に、第一の有機化合物および第二の有機化合物を含む有機化合物膜303を設け、その混合領域305に発光を呈する化合物306を添加して、発光領域とした。
【0048】
ところで近年、発光効率の観点で言えば、三重項励起状態から基底状態に戻る際に放出されるエネルギー(以下、「三重項励起エネルギー」と記す)を発光に変換できる有機発光素子が、その高い発光効率ゆえに注目されている(文献7:D. F. O'Brien, M. A. Baldo, M. E. Thompson and S. R. Forrest, "Improved energy transfer in electrophosphorescent devices", Applied Physics Letters, vol. 74, No. 3, 442-444 (1999))(文献8:Tetsuo TSUTSUI, Moon-Jae YANG, Masayuki YAHIRO, Kenji NAKAMURA, Teruichi WATANABE, Taishi TSUJI, Yoshinori FUKUDA, Takeo WAKIMOTO and Satoshi MIYAGUCHI, "High Quantum Efficiency in Organic Light-Emitting Devices with Iridium-Complex as a Triplet Emissive Center", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 38, L1502-L1504 (1999))。
【0049】
文献7では白金を中心金属とする金属錯体を、文献8ではイリジウムを中心金属とする金属錯体を用いている。これらの三重項励起エネルギーを発光に変換できる有機発光素子(以下、「三重項発光素子」と記す)は、従来よりも高輝度発光・高発光効率を達成することができる。
【0050】
しかしながら、文献8の報告例によると、初期輝度を500cd/m2に設定した場合の輝度の半減期は170時間程度であり、素子寿命に問題がある。そこで、本発明を三重項発光素子に適用することにより、三重項励起状態からの発光による高輝度発光・高発光効率に加え、素子の寿命も長いという非常に高機能な発光素子が可能となる。
【0051】
したがって、ゲストである第三の有機化合物として、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料を選択し、混合領域に添加した場合も本発明に含めることとする。
【0052】
第三の有機化合物として考えられるものは、発光を呈する発光性化合物に限る必要はない。特に、第一の有機化合物ないしは第二の有機化合物が発光を呈する場合には、第三の有機化合物として、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物に比べて、最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)とのエネルギー差が大きい化合物(すなわち、キャリアおよび分子励起子をブロッキングできる化合物)を用いることが好ましい。この手法により、第一の有機化合物および第二の有機化合物により形成された混合領域において、キャリアの再結合率を高め、発光効率を高めることが可能となる。
【0053】
その概念図を図3(b)に示す。図3(b)では、基板301上において、陽極302と陰極304との間に、第一の有機化合物および第二の有機化合物を含む有機化合物膜303を設け、その濃度変化領域305にキャリアおよび分子励起子をブロッキングできる化合物(ブロッキング性化合物)307を添加した。
【0054】
なお、図3(b)では、混合領域305に対し、さらに発光を呈する発光性化合物306を添加した発光領域も設けてある。すなわち、第三の有機化合物として発光を呈する発光性化合物を用いる手法(図3(a))と、ブロッキング性化合物の添加とを併合した形態である。ここでは、キャリアおよび分子励起子をブロッキングできる化合物307の方が発光を呈する発光性化合物306よりも陰極側にあるため、キャリアおよび分子励起子をブロッキングできる化合物307は正孔ブロッキング性のものを用いればよい。
【0055】
キャリアおよび分子励起子をブロッキングできる化合物としては、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体などが考えられる。
【0056】
ところで、以上で述べたような混合領域を特定する場合に、SIMSによる元素分析が重要な技術になると考えられる。特に、連続接合の場合は、図2で示した概念図からもわかるように、従来の積層構造と比べて顕著な差が現れると考えられる。
【0057】
したがって、第一の有機化合物または第二の有機化合物を構成する元素のうち、SIMSにより検知できる前記元素の検出量が、前記陽極から前記陰極への方向に対して、連続的に変化する領域を有する発光装置を、本発明に含めるものとする。
【0058】
また、第15族元素ないしは第16族元素を含む高分子化合物は一般に有機発光素子によく用いられ、また、高分子化合物の導電性を向上させるために第17族元素を含む化合物が化学ドーピングされることがある。そこで、第15族元素乃至第17族元素を含む材料と、含まない材料と、から連続接合領域を形成することにより、より顕著に濃度変化を観察することができる。第15族元素乃至第17族元素としては、窒素、燐、酸素、硫黄、弗素、塩素、臭素、沃素などが主流である。
【0059】
さらに、混合領域に対して第三の有機化合物をゲストとして添加する場合、そのゲストとなる化合物、特に発光を呈する発光性化合物として、金属錯体が用いられることがある。
【0060】
したがって、第三の有機化合物は金属元素を有する金属錯体であり、SIMSにより検知できる前記金属元素の検出領域は、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物の両方を含む領域(すなわち混合領域)である発光装置も、本発明に含めるものとする。金属元素としては、アルミニウム、または亜鉛、またはベリリウムが主流である。また、第三の有機化合物が三重項励起状態からの発光を呈する発光性化合物である場合、イリジウムや白金を中心金属とする金属錯体が主流であるため、イリジウムや白金を検出できる。
【0061】
以上のような本発明を実施することにより、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ寿命の長い発光装置を提供することができる。さらに、前記発光装置を用いて電気器具を作製することにより、従来よりも低消費電力で、なおかつ長保ちする電気器具を提供することができる。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明を実施する際の形態について述べる。なお、有機発光素子は、発光を取り出すために少なくとも陽極または陰極の一方が透明であればよいが、本実施の形態では、基板上に透明な陽極を形成し、陽極から光を取り出す素子構造で記述する。実際は、陰極から光を取り出す構造や、基板とは逆側から光を取り出す構造も本発明に適用可能である。
【0063】
本発明を実施するに当たり、混合領域ないしは連続接合領域を形成する製造工程が重要になる。本発明者は、高分子化合物を含む有機化合物膜において、混合領域ないしは連続接合領域を形成する工程を考案した。そこで、ここでは本発明で開示した有機発光素子の製造方法について述べる。
【0064】
従来の工程(湿式塗布にて積層構造を構成する場合)では、例えば第一の有機化合物が溶解した第一の溶液を塗布し、加熱等により前記第一の溶液に含まれる溶媒を完全に除去した後に、第一の有機化合物が溶出しない溶液に溶解した第二の有機化合物を成膜するため、明確な有機界面を生じることになる。
【0065】
例えば、ポリスチレンスルホン酸(以下、「PSS」と記す)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、「PEDOT」と記す)の水溶液をスピンコーティングにより成膜し、大気圧下において100℃以上で加熱処理して水を完全に除去した後、アルコキシル基を有するポリパラフェニレンビニレン(以下、「PPV」と記す)のトルエン溶液をスピンコーティングにより成膜して再び加熱乾燥した有機化合物膜の、断面TEM写真を図4に示す。図4から明らかであるように、従来の工程では、明確な有機界面を生じる積層構造となる。
【0066】
このことを解決し、混合領域または濃度変化領域を形成する工程として、五つの製造方法を本発明者は考案した。以下ではその実施の形態について、最も簡単な例である、二種類の有機化合物を含む有機化合物膜の場合について記す。
【0067】
第一の製造方法を、図5に示す。まず、電極502を設けた基板501(図5(a))上に、第一の有機化合物(高分子化合物)が溶解した第一の溶液503aを湿式塗布する(図5(b))。次に、混合領域ないしは連続接合領域を形成する工程511として、第一の溶液に含まれる溶媒の蒸気圧が作業雰囲気の気圧以下になる温度にて加熱し(図5(c))、第一の溶液に含まれる溶媒が残存した状態503bにて、第二の有機化合物が溶解した第二の溶液504を湿式塗布する(図5(d))。最後に、加熱512により溶媒を全て除去し、混合領域ないしは連続接合領域505を有する本発明の有機化合物膜を得る。
【0068】
次に、第二の製造方法を図6に示す。まず、電極602を設けた基板601上に、第一の有機化合物(高分子化合物)が溶解した第一の溶液603aを湿式塗布する(図6(a))。次に、加熱611により第一の溶液603aに含まれる溶媒を完全に除去することで、第一の有機化合物膜603bを形成する(図6(b))。さらに、混合領域ないしは連続接合領域を形成する工程612として、第一の溶液に含まれる溶媒が作業雰囲気に含まれる状態に置くことで溶出領域603cを形成し(図6(c))、その後第二の有機化合物が溶解した第二の溶液604を湿式塗布する(図6(d))。最後に、加熱613により溶媒を全て除去し、混合領域ないしは連続接合領域605を有する本発明の有機化合物膜を得る。
【0069】
また、第三の製造方法として、第一の有機化合物として乾式成膜できる低分子化合物を用い、混合領域ないしは連続接合領域を形成することができる。すなわち、真空蒸着法などにより第一の有機化合物膜603bを成膜した(つまり、図6(b)の状態)あと、第一の有機化合物をわずかに溶解できる溶媒に溶かした第二の有機化合物(高分子化合物)を湿式塗布し、図6(d)の状態を形成する手法である。
【0070】
さらに、第四の製造方法であるが、図6において、第一の有機化合物として低分子化合物を用いることもできる。すなわち、まず真空蒸着法などにより第一の有機化合物膜603bを成膜して図6(b)の状態を形成し、第一の有機化合物を溶解できる溶媒が作業雰囲気に含まれる状態に置くことで、溶出領域603cを形成する(図6(c))手法である。
【0071】
ところで、上で述べた第一の製法〜第四の製法は全て、第二の有機化合物が湿式塗布する高分子材料で構成されている。それとは逆に、第五の製造法として、先に第一の有機化合物として高分子材料を湿式塗布し、第二の有機化合物として低分子化合物を真空蒸着してから混合領域ないしは連続接合領域を形成する手法も、本発明者は考案した。
【0072】
その第五の手法は、電極を有する基板に対し、第一の有機化合物(高分子化合物)を溶解した溶液を湿式塗布した後、真空槽内に搬送し、次いで第二の有機化合物(低分子化合物)を真空蒸着により成膜し、その後加熱することにより第二の有機化合物(低分子化合物)を拡散させ、混合領域ないしは濃度変化領域を形成する手法である。加熱温度は、前記第一の有機化合物が溶解している溶媒が完全に除去できる温度であればよい。
【0073】
第五の手法において、加熱を10-4パスカルの減圧下において行う手法は、さらに好ましい。この場合、加熱温度は60℃〜100℃程度が好ましい。
【0074】
以上で述べたような湿式塗布法に関しては、様々な手法が可能であり、一般に用いられるスピンコーティング、ディップコーティング等の湿式成膜法の他、交互吸着法やインクジェット方式が考えられる。特にインクジェット方式は、有機化合物を高精度にパターニングすることが可能であり、また広い範囲に渡ってパターニングすることも可能であるため、高精細、大面積な発光装置を作成する際に有効な手法であると考えられている。
【0075】
前記第一の製造方法を、インクジェット方式により実現する概念図を図7に示す。まず、電極702を有する基板701(図7(a))上に、フォトリソグラフィー技術により、土手構造706を形成する(図7(b))。次に、第一の有機化合物(高分子化合物)が溶解した第一の溶液703aを、インクジェットプリンタヘッド721aにより湿式塗布する(図7(c))。さらに、混合領域ないしは連続接合領域を形成する工程711として、第一の溶液703aに含まれる溶媒の蒸気圧が作業雰囲気の気圧になる温度よりも低い温度にて加熱し(図7(d))、第一の溶液に含まれる溶媒が残存した状態703bにて、第二の有機化合物が溶解した第二の溶液704をインクジェットプリンタヘッド721bにより湿式塗布する(図7(e))。最後に、加熱により溶媒を全て除去し、混合領域ないしは連続接合領域を有する本発明の有機化合物膜を得る。
【0076】
例えば、第二の有機化合物として発光を呈する化合物を用いる場合、赤、緑、青それぞれの色を呈する化合物を、インクジェットプリンタヘッド721bを用いて各画素707a〜707cを塗り分けることによって、フルカラーの発光装置を作製することができる。
【0077】
以上で述べたような製造方法により、本発明で開示した混合領域または連続接合領域を形成することができる。
【0078】
【実施例】
[実施例1]
本実施例では、発明の実施の形態において図5に示した手法を適用することにより作製する有機発光素子を、具体的に例示する。
【0079】
まず、ガラス基板上にインジウム錫酸化物(以下、「ITO」と記す)をスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極とする。次に、正孔輸送性の材料としてPSSをドープしたPEDOTの水溶液を、スピンコーティングによって前記陽極上に成膜する。
【0080】
ここで、図5で示したように、水の蒸気圧が大気圧になる温度(100℃)よりも低い温度にて前記基板を加熱し、PEDOT水溶液の水分がわずかに残存した状態とする。さらに、トルエンを溶媒とするアルコキシル基置換PPV(以下、「MEH−PPV」と記す)をスピンコーティングにより成膜し、100℃以上に加熱することにより溶媒を完全に除去する。
【0081】
最後に、陰極としてイッテルビウムを真空蒸着により400nm蒸着し、MEH−PPVに由来する緑色の発光を呈する本発明の有機発光素子を得る。
【0082】
[実施例2]
本実施例では、発明の実施の形態において図6で示した手法を適用することにより作製する有機発光素子を、具体的に例示する。
【0083】
まず、ガラス基板601上にITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極602とする。次に、正孔輸送性の材料としてPSSをドープしたPEDOTの水溶液を、スピンコーティングによって前記陽極上に成膜し、150℃で10分間加熱することにより溶媒(水分)を完全に除去する。
【0084】
ここで、図6で示したように、水蒸気を含む雰囲気下において、キシレンを溶媒とするポリジオクチルフルオレン(以下、「PDOF」と記す)をスピンコーティングにより成膜し、その後100℃以上に加熱することにより、水およびキシレンを完全に除去する。
【0085】
最後に、陰極としてカルシウムを真空蒸着により100nm、次いでアルミニウムを150nm蒸着し、PDOFに由来する青色の発光を呈する本発明の有機発光素子を得る。
【0086】
[実施例3]
本実施例では、低分子化合物を真空蒸着により成膜したあと、その低分子化合物がわずかに溶解する溶媒に溶かした高分子化合物を塗布する手法を適用することにより作製する有機発光素子を、具体的に例示する。
【0087】
まず、ガラス基板上にインジウム錫酸化物(以下、「ITO」と記す)をスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極とする。次に、正孔輸送性の材料として、4, 4', 4"−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、「MTDATA」と記す)を、前記陽極上に真空蒸着により成膜する。
【0088】
ここで、極性溶媒に可溶なPPV前駆体をエタノールに溶解した溶液を、スピンコーティングにより成膜する。その後80℃以上に加熱することにより、溶媒を完全に除去すると同時にPPVを重合させる。
【0089】
最後に、陰極としてイッテルビウムを真空蒸着により400nm蒸着し、PPVに由来する緑色の発光を呈する本発明の有機発光素子を得る。
【0090】
[実施例4]
本実施例では、インクジェット方式の手法を適用することにより作製する有機発光素子を、具体的に例示する。
【0091】
まず、ガラス基板701上にITO702をスパッタリングによって100nm程度成膜し、さらにフォトリソグラフィー技術により土手構造706を形成する(図7(b))。次に、正孔輸送性の材料としてPSSをドープしたPEDOTの水溶液703aをインクジェットプリンタヘッド721aによって前記陽極上に成膜し、150℃で10分間加熱することにより溶媒(水分)を完全に除去する。このように成膜されたPEDOT703aは、水に溶けにくくなり、わずかに溶出する程度となる。
【0092】
ここでさらに、水溶性のPPV前駆体を溶解した水溶液704を用いたインクを、インクジェットプリンタヘッド721bにより成膜し、その後100℃以上に加熱することにより、水およびキシレンを完全に除去する。
【0093】
最後に、陰極としてカルシウムを真空蒸着により100nm、次いでアルミニウムを150nm蒸着し、PPVに由来する緑色の発光を呈する本発明の有機発光素子を得る。
【0094】
[実施例5]
本実施例では、電極を有する基板に対し、第1の有機化合物(高分子化合物)を溶解した溶液を湿式塗布した後、真空槽内に搬送し、次いで第2の有機化合物(低分子化合物)を真空蒸着により成膜し、その後加熱することにより第2の有機化合物(低分子化合物)を拡散させ、混合領域ないしは連続接合領域を形成することにより、その混合領域ないしは連続接合領域に発光を呈する化合物(ここでは三重項励起状態からの発光を呈する化合物)がドープされた有機発光素子を作製する例を、具体的に例示する。この時、加熱温度は、前記第1の有機化合物が溶解している溶媒が完全に除去できる温度であればよい。更に、加熱を10-4パスカル程度の減圧下において行うと、より好ましい。
【0095】
まず、ガラス基板上にインジウム錫酸化物(以下、「ITO」と記す)をスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極とする。次に、正孔輸送性の材料として、ポリビニルカルバゾール(以下、「PVK」と記す)を用いるため、PVKのクロロホルム溶液をスピンコーティングにより成膜し、加熱により溶媒を除去する。このあと、同じ溶媒(クロロホルム)を用いた溶液をコーティングするので、この成膜は、ある程度膜厚を大きくするために数回行うことが望ましい。
【0096】
次に、PVKのクロロホルム溶液に、三重項発光材料であるビス(2−フェニルピリジン)−アセチルアセトナトイリジウム(以下、「Ir(ppy)2(acac)」と記す)錯体を5wt%添加した溶液を用意し、先に成膜したPVK膜上にスピンコーティングで成膜する。
【0097】
ここで、基板を加熱することなく、電子輸送材料であるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、「Alq3」と記す)を10-3パスカルの減圧下において真空蒸着する。その後、10-4パスカルの減圧下において、80℃でベークすることにより、PVKおよびAlq3をホストとしてIr(ppy)2(acac)をゲストとした領域(PVKとAlq3との混合領域にIr(ppy)2(acac)をドープした領域)を形成することができる。
【0098】
最後に、陰極としてAl:Li合金を真空蒸着により150nm蒸着し、Ir(ppy)2(acac)に由来する緑色の発光を呈する本発明の有機発光素子を得る。
【0099】
[実施例6]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置について説明する。図8は本発明の有機発光素子を用いたアクティブマトリクス型発光装置の断面図である。なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。
【0100】
また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0101】
図8において、801は基板であり、ここでは可視光を透過する基板を用いる。具体的には、ガラス基板、石英基板、結晶化ガラス基板もしくはプラスチック基板(プラスチックフィルムを含む)を用いればよい。なお、基板801とは、表面に設けた絶縁膜も含めるものとする。
【0102】
基板801の上には画素部811および駆動回路812が設けられている。まず、画素部811について説明する。
【0103】
画素部811は画像表示を行う領域である。基板上には複数の画素が存在し、各画素には有機発光素子に流れる電流を制御するためのTFT(以下、「電流制御TFT」と記す)802、画素電極(陽極)803、有機化合物膜804および陰極805が設けられている。なお、図8では電流制御TFTしか図示していないが、電流制御TFTのゲートに加わる電圧を制御するためのTFT(以下、「スイッチングTFT」と記す)を設けている。
【0104】
電流制御TFT802は、ここではpチャネル型TFTを用いることが好ましい。nチャネル型TFTとすることも可能であるが、図8のように有機発光素子の陽極に電流制御TFTを接続する場合は、pチャネル型TFTの方が消費電力を押さえることができる。ただし、スイッチングTFTはnチャネル型TFTでもpチャネル型TFTでもよい。
【0105】
また、電流制御TFT802のドレインには画素電極803が電気的に接続されている。本実施例では、画素電極803の材料として仕事関数が4.5〜5.5eVの導電性材料を用いるため、画素電極803は有機発光素子の陽極として機能する。画素電極803として代表的には、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛もしくはこれらの化合物(ITOなど)を用いればよい。画素電極803の上には有機化合物層804が設けられている。
【0106】
さらに、有機化合物層804の上には陰極805が設けられている。陰極805の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。陰極805として代表的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい。
【0107】
また、画素電極803、有機化合物層804、および陰極805からなる層は、保護膜806で覆われている。保護膜806は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられている。保護膜806の材料としては、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、もしくは炭素(具体的にはダイヤモンドライクカーボン)を用いる。
【0108】
次に、駆動回路812について説明する。駆動回路812は画素部811に伝送される信号(ゲート信号およびデータ信号)のタイミングを制御する領域であり、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタが設けられている。図8では、これらの回路の基本単位としてnチャネル型TFT807およびpチャネル型TFT808からなるCMOS回路を示している。
【0109】
なお、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタの回路構成は、公知のものでよい。また図8では、同一の基板上に画素部811および駆動回路812を設けているが、駆動回路812を設けずにICやLSIを電気的に接続することもできる。
【0110】
また、図8では電流制御TFT802に画素電極(陽極)803が電気的に接続されているが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、画素電極を陰極805と同様の材料で形成し、陰極を画素電極(陽極)803と同様の材料で形成すればよい。その場合、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0111】
ところで、図8に示した発光装置は、画素電極803を形成した後に配線809を形成する工程で作製されたものを示してあるが、この場合、画素電極803が表面荒れを起こす可能性がある。有機発光素子は電流駆動型の素子であるため、画素電極803の表面荒れにより、特性が悪くなることも考えられる。
【0112】
そこで、図9に示すように、配線909を形成した後に画素電極903を形成する発光装置も考えられる。この場合、図8の構造に比べて、画素電極903からの電流の注入性が向上すると考えられる。
【0113】
また、図8および図9においては、正テーパー型の土手状構造810または910によって、画素部811または911に設置されている各画素を分離している。この土手状構造を、例えば逆テーパー型のような構造にすることにより、土手状構造が画素電極に接しない構造をとることもできる。その一例を図10に示す。
【0114】
図10では、配線を利用して分離部を兼ねた、配線および分離部1010を設けた。図10で示されるような配線および分離部1010の形状(ひさしのある構造)は、配線を構成する金属と、前記金属よりもエッチレートの低い材料(例えば金属窒化物)とを積層し、エッチングすることにより形成することができる。この形状により、画素電極1003や配線と、陰極1005とが、ショートすることを防ぐことができる。なお、図10においては、通常のアクティブマトリクス型の発光装置と異なり、画素上の陰極1005をストライプ状(パッシブマトリクスの陰極と同様)にする構造になる。
【0115】
ここで、図9に示したアクティブマトリクス型発光装置の外観を図11に示す。なお、図11(a)には上面図を示し、図11(b)には図11(a)をP−P'で切断した時の断面図を示す。また、図9の符号を引用する。
【0116】
図11(a)において、1101は画素部、1102はゲート信号側駆動回路、1103はデータ信号側駆動回路である。また、ゲート信号側駆動回路1102およびデータ信号側駆動回路1103に伝送される信号は、入力配線1104を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ1105から入力される。なお、図示しないが、TABテープ1105の代わりに、TABテープにIC(集積回路)を設けたTCP(Tape Carrier Package)を接続してもよい。
【0117】
このとき、1106は図9に示した有機発光素子の上方に設けられるカバー材であり、樹脂からなるシール材1107により接着されている。カバー材1106は酸素および水を透過しない材質であれば、いかなるものを用いてもよい。本実施例では、カバー材1106は図11(b)に示すように、プラスチック材1106aと、前記プラスチック材1106aの表面および裏面に設けられた炭素膜(具体的にはダイヤモンドライクカーボン膜)1106b、1106cからなる。
【0118】
さらに、図11(b)に示すように、シール材1107は樹脂からなる封止材1108で覆われ、有機発光素子を完全に密閉空間1109に封入するようになっている。密閉空間1109は不活性ガス(代表的には窒素ガスや希ガス)、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアルカンに代表される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素剤を設けることも有効である。
【0119】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0120】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【0121】
[実施例7]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、アクティブマトリクス型発光装置を例示するが、実施例6とは異なり、能動素子が形成されている基板とは反対側から光を取り出す構造(以下、「上方出射」と記す)の発光装置を示す。図19にその断面図を示す。
【0122】
なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0123】
本実施例において、基板1901、画素部に形成された電流制御TFT1902、および駆動回路1912に関しては、実施例6と同様の構成でよい。
【0124】
電流制御TFT1902のドレインに接続されている第一電極1903であるが、本実施例では陽極として用いるため、仕事関数がより大きい導電性材料を用いることが好ましい。その代表例として、ニッケル、パラジウム、タングステン、金、銀などの金属が挙げられる。本実施例では、第一電極1903は光を透過しないことが好ましいが、それに加えて、光の反射性の高い材料を用いることがさらに好ましい。
【0125】
第一電極1903の上には有機化合物層1904が設けられている。さらに、有機化合物層1904の上には第二電極1905が設けられており、本実施例では陰極とする。その場合、第二電極1905の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。代表的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい。ただし、本実施例は上方出射であるため、第二電極1905が光透過性であることが大前提である。したがって、これらの金属を用いる場合は、20nm程度の超薄膜であることが好ましい。
【0126】
また、第一電極1903、有機化合物層1904、および第二電極1905からなる層は、保護膜1906で覆われている。保護膜1906は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられている。本実施例では、光を透過するものであればいかなるものを用いてもよい。
【0127】
なお、図19では電流制御TFT1902に第一電極(陽極)1903が電気的に接続されているが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、第一電極を陰極の材料で形成し、第二電極を陽極の材料で形成すればよい。このとき、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0128】
さらに、1907はカバー材であり、樹脂からなるシール材1908により接着されている。カバー材1907は酸素および水を透過しない材質で、かつ、光を透過する材質であればいかなるものを用いてもよい。本実施例ではガラスを用いる。密閉空間1909は不活性ガス(代表的には窒素ガスや希ガス)、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアルカンに代表される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素剤を設けることも有効である。
【0129】
なお、ゲート信号側駆動回路およびデータ信号側駆動回路に伝送される信号は、入力配線1913を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ1914から入力される。なお、図示しないが、TABテープ1414の代わりに、TABテープにIC(集積回路)を設けたTCP(Tape Carrier Package)を接続してもよい。
【0130】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0131】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【0132】
[実施例8]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、パッシブマトリクス型発光装置を例示する。図12(a)にはその上面図を示し、図12(b)には図12(a)をP−P'で切断した時の断面図を示す。
【0133】
図12(a)において、1201は基板であり、ここではプラスチック材を用いる。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、PES(ポリエーテルスルホン)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)もしくはPEN(ポリエーテルニトリル)を板状、もしくはフィルム上にしたものが使用できる。
【0134】
1202は酸化導電膜からなる走査線(陽極)であり、本実施例では酸化亜鉛に酸化ガリウムを添加した酸化物導電膜を用いる。また、1203は金属膜からなるデータ線(陰極)であり、本実施例ではビスマス膜を用いる。また、1204はアクリル樹脂からなるバンクであり、データ線1203を分断するための隔壁として機能する。走査線1202とデータ線1203は両方とも、ストライプ状に複数形成されており、互いに直交するように設けられている。なお、図12(a)では図示していないが、走査線1202とデータ線1203の間には有機化合物層が挟まれており、交差部1205が画素となる。
【0135】
そして、走査線1202およびデータ線1203はTABテープ1207を介して外部の駆動回路に接続される。なお、1208は走査線1202が集合してなる配線群を表しており、1209はデータ線1203に接続された接続配線1206の集合からなる配線群を表す。また、図示していないが、TABテープ1207の代わりに、TABテープにICを設けたTCPを接続してもよい。
【0136】
また、図12(b)において、1210はシール材、1211はシール材1210によりプラスチック材1201に貼り合わされたカバー材である。シール材1210としては光硬化樹脂を用いていればよく、脱ガスが少なく、吸湿性の低い材料が望ましい。カバー材としては基板1201と同一の材料が好ましく、ガラス(石英ガラスを含む)もしくはプラスチックを用いることができる。ここではプラスチック材を用いる。
【0137】
次に、画素領域の構造の拡大図を図12(c)に示す。1213は有機化合物層である。なお、図12(c)に示すように、バンク1204は下層の幅が上層の幅よりも狭い形状になっており、データ線1203を物理的に分断できる。また、シール材1210で囲まれた画素部1214は、樹脂からなる封止材1215により外気から遮断され、有機化合物層の劣化を防ぐ構造となっている。
【0138】
以上のような構成からなる本発明の発光装置は、画素部1214が走査線1202、データ線1203、バンク1204および有機化合物層1213で形成されるため、非常に簡単なプロセスで作製することができる。
【0139】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0140】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【0141】
[実施例9]
本実施例では、実施例8で示した発光装置にプリント配線板を設けてモジュール化した例を示す。
【0142】
図13(a)に示すモジュールは、基板1301(ここでは、画素部1302、配線1303a、 1303bを含む)にTABテープ1304が取り付けられ、前記TABテープ1304を介してプリント配線板1305が取り付けられている。
【0143】
ここで、プリント配線板1305の機能ブロック図を図13(b)に示す。プリント配線板1305の内部には少なくともI/Oポート(入力もしくは出力部)1306、 1309、データ信号側駆動回路1307およびゲート信号側回路1308として機能するICが設けられている。
【0144】
このように、基板面に画素部が形成された基板にTABテープが取り付けられ、そのTABテープを介して駆動回路としての機能を有するプリント配線版が取り付けられた構成のモジュールを、本明細書では特に駆動回路外付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0145】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【0146】
[実施例10]
本実施例では、実施例6もしくは実施例7もしくは実施例8に示した発光装置にプリント配線板を設けてモジュール化した例を示す。
【0147】
図14(a)に示すモジュールは、基板1401(ここでは、画素部1402、データ信号側駆動回路1403、ゲート信号側駆動回路1404、配線1403a、 1404aを含む)にTABテープ1405が取り付けられ、そのTABテープ1405を介してプリント配線板1406が取り付けられている。プリント配線板1406の機能ブロック図を図14(b)に示す。
【0148】
図14(b)に示すように、プリント配線板1406の内部には少なくともI/Oポート1407、 1410、コントロール部1408として機能するICが設けられている。なお、ここではメモリ部1409を設けてあるが、必ずしも必要ではない。またコントロール部1408は、駆動回路の制御、映像データの補正などをコントロールするための機能を有した部位である。
【0149】
このように、有機発光素子の形成された基板にコントローラーとしての機能を有するプリント配線板が取り付けられた構成のモジュールを、本明細書では特にコントローラー外付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0150】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【0151】
[実施例11]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を、デジタル時間階調表示により定電圧にて駆動する発光装置の例を示す。
【0152】
有機発光素子を用いた画素の、回路構成を図17(a)に示す。Trはトランジスタ、Csはストレージキャパシタを表す。図17(a)中の回路構成では、ソース線はトランジスタTr1のソース側に、ゲート線はトランジスタTr1のゲートに接続されている。また、電源供給線はストレージキャパシタCs、およびトランジスタTr2のソース側に接続されている。トランジスタTr2のドレイン側には本発明の有機発光素子の陽極が接続されているため、有機発光素子を挟んでトランジスタTr2の反対側は、陰極となっている。
【0153】
この回路においては、ゲート線が選択されると、電流がソース線からTr1に流れ、その信号に対応する電圧がCsに蓄積される。そして、Tr2のゲートおよびソース間の電圧(Vgs)により制御される電流が、Tr2および有機発光素子に流れることになる。
【0154】
Tr1が選択されたあとは、Tr1はオフ状態となり、Csの電圧(Vgs)が保持される。したがって、Vgsに依存するだけの電流を流し続けることができる。
【0155】
このような回路を、デジタル時間階調表示により駆動するチャートを図17(b)に示す。すなわち、1フレームを複数のサブフレームに分割するわけだが、図17(b)では、1フレームを6つのサブフレーム(SF1〜SF6)に分割する6ビット階調とした。TAは書き込み時間である。この場合、それぞれのサブフレーム発光期間の割合は、図に示したように32:16:8:4:2:1となる。
【0156】
本実施例におけるTFT基板の駆動回路の概要を図17(c)に示す。図17(c)中の基板構成では、本発明の有機発光素子を各画素とした画素部に対し、図17(a)で示したような電源供給線および陰極が接続されている。また、シフトレジスタは、シフトレジスタ→ラッチ1→ラッチ2→画素部の順で、画素部に接続されている。ラッチ1にはデジタル信号が入力され、ラッチ2に入力されるラッチパルスによって画像データを画素部に送り込むことができる。
【0157】
ゲートドライバおよびソースドライバは同じ基板上に設けられており、画素回路およびドライバは、デジタル駆動するように設計されているため、TFT特性のばらつきの影響を受けることなく、均一な像を得ることができる。
【0158】
[実施例12]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子に一定の電流を流すことにより駆動する、アクティブマトリクス型の定電流駆動回路の例を示す。その回路構成を図18に示す。
【0159】
図18に示す画素1810は、信号線Si、第1走査線Gj、第2走査線Pj及び電源線Viを有している。また画素1810は、Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、混合接合型の有機発光素子1811及び保持容量1812を有している。
【0160】
Tr3とTr4のゲートは、共に第1走査線Gjに接続されている。Tr3のソースとドレインは、一方は信号線Siに、もう一方はTr2のソースに接続されている。またTr4のソースとドレインは、一方はTr2のソースに、もう一方はTr1のゲートに接続されている。つまり、Tr3のソースとドレインのいずれか一方と、Tr4のソースとドレインのいずれか一方とは、接続されている。
【0161】
Tr1のソースは電源線Viに、ドレインはTr2のソースに接続されている。Tr2のゲートは第2走査線Pjに接続されている。そしてTr2のドレインは有機発光素子1811が有する画素電極に接続されている。有機発光素子1811は、画素電極と、対向電極と、画素電極と対向電極の間に設けられた有機発光層とを有している。有機発光素子1811の対向電極は発光パネルの外部に設けられた電源によって一定の電圧が与えられている。
【0162】
なお、Tr3とTr4は、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い。ただし、Tr3とTr4の極性は同じである。また、Tr1はnチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い。Tr2は、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い。発光素子の画素電極と対向電極は、一方が陽極であり、他方が陰極である。Tr2がpチャネル型TFTの場合、陽極を画素電極として用い、陰極を対向電極として用いるのが望ましい。逆に、Tr2がnチャネル型TFTの場合、陰極を画素電極として用い、陽極を対向電極として用いるのが望ましい。
【0163】
保持容量1812はTr1のゲートとソースとの間に形成されている。保持容量1812はTr1のゲートとソースの間の電圧(VGS)をより確実に維持するために設けられているが、必ずしも設ける必要はない。
【0164】
図18に示した画素では、信号線Siに供給される電流を信号線駆動回路が有する電流源において制御されている。
【0165】
以上のような回路構成を適用することにより、有機発光素子に一定の電流を流して輝度を一定に保とうとする定電流駆動が可能となる。本発明で開示した混合領域を有する有機発光素子は従来の有機発光素子に比べて寿命が長いが、上記のような定電流駆動を実施することでさらに長寿命化を図ることができるため、有効である。
【0166】
[実施例13]
上記実施例で述べた本発明の発光装置は、低消費電力で寿命が長いという利点を有する。したがって、前記発光装置が表示部等として含まれる電気器具は、従来よりも低い消費電力で動作可能であり、なおかつ長保ちする電気器具となる。特に電源としてバッテリーを使用する携帯機器のような電気器具に関しては、低消費電力化が便利さに直結する(電池切れが起こりにくい)ため、極めて有用である。
【0167】
また、前記発光装置は、自発光型であることから液晶表示装置のようなバックライトは必要なく、有機化合物層の厚みも1μmに満たないため、薄型軽量化が可能である。したがって、前記発光装置が表示部等として含まれる電気器具は、従来よりも薄型軽量な電気器具となる。このことも、特に携帯機器のような電気器具に関して、便利さ(持ち運びの際の軽さやコンパクトさ)に直結するため、極めて有用である。さらに、電気器具全般においても、薄型である(かさばらない)ことは運送面(大量輸送が可能)、設置面(部屋などのスペース確保)からみても有用であることは疑いない。
【0168】
なお、前記発光装置は自発光型であるために、液晶表示装置に比べて明るい場所での視認性に優れ、しかも視野角が広いという特徴を持つ。したがって、前記発光装置を表示部として有する電気器具は、表示の見やすさの点でも大きなメリットがある。
【0169】
すなわち、本発明の発光装置を用いた電気器具は、薄型軽量・高視認性といった従来の有機発光素子の長所に加え、低消費電力・長寿命という特長も保有しており、極めて有用である。
【0170】
本実施例では、本発明の発光装置を表示部として含む電気器具を例示する。その具体例を図15および図16に示す。なお、本実施例の電気器具に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した素子のいずれを用いてもよい。また、本実施例の電気器具に含まれる発光装置の形態は、図8〜図14のいずれの形態を用いても良い。
【0171】
図15(a)は有機発光素子を用いたディスプレイであり、筐体1501a、支持台1502a、表示部1503aを含む。本発明の発光装置を表示部1503aとして用いたディスプレイを作製することにより、薄く軽量で、長保ちするディスプレイを実現できる。よって、輸送が簡便になり、設置の際の省スペースが可能となる上に、寿命も長い。
【0172】
図15(b)はビデオカメラであり、本体1501b、表示部1502b、音声入力部1503b、操作スイッチ1504b、バッテリー1505b、受像部1506bを含む。本発明の発光装置を表示部1502bとして用いたビデオカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なビデオカメラを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0173】
図15(c)はデジタルカメラであり、本体1501c、表示部1502c、接眼部1503c、操作スイッチ1504cを含む。本発明の発光装置を表示部1502cとして用いたデジタルカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なデジタルカメラを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0174】
図15(d)は記録媒体を備えた画像再生装置であり、本体1501d、記録媒体(CD、LD、またはDVDなど)1502d、操作スイッチ1503d、表示部(A)1504d、表示部(B)1505dを含む。表示部(A)1504dは主として画像情報を表示し、表示部(B)1505dは主として文字情報を表示する。本発明の発光装置をこれら表示部(A)1504dや表示部(B)1505dとして用いた前記画像再生装置を作製することにより、消費電力が少なく軽量な上に、長保ちする前記画像再生装置を実現できる。なお、この記録媒体を備えた画像再生装置には、CD再生装置、ゲーム機器なども含む。
【0175】
図15(e)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体1501e、表示部1502e、受像部1503e、操作スイッチ1504e、メモリスロット1505eを含む。本発明の発光装置を表示部1502eとして用いた携帯型コンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯型コンピュータを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。なお、この携帯型コンピュータはフラッシュメモリや不揮発性メモリを集積化した記録媒体に情報を記録したり、それを再生したりすることができる。
【0176】
図15(f)はパーソナルコンピュータであり、本体1501f、筐体1502f、表示部1503f、キーボード1504fを含む。本発明の発光装置を表示部1503fとして用いたパーソナルコンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量なパーソナルコンピュータを実現できる。特に、ノートパソコンのように持ち歩く用途が必要な場合、電池の消費量や軽さの点で大きなメリットとなる。
【0177】
なお、上記電気器具はインターネットなどの電子通信回線や電波などの無線通信を通じて配信される情報を表示することが多くなってきており、特に動画情報を表示する機会が増えている。有機発光素子の応答速度は非常に速く、そのような動画表示に好適である。
【0178】
次に、図16(a)は携帯電話であり、本体1601a、音声出力部1602a、音声入力部1603a、表示部1604a、操作スイッチ1605a、アンテナ1606aを含む。本発明の発光装置を表示部1604aとして用いた携帯電話を作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯電話を実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも楽になる上にコンパクトな本体にできる。
【0179】
図16(b)は音響機器(具体的には車載用オーディオ)であり、本体1601b、表示部1602b、操作スイッチ1603b、1604bを含む。本発明の発光装置を表示部1602bとして用いた音響機器を作製することにより、消費電力が少なく、軽量な音響機器を実現できる。また、本実施例では車載用オーディオを例として示すが、家庭用オーディオに用いても良い。
【0180】
なお、図15〜図16で示したような電気器具において、さらに光センサを内蔵させ、使用環境の明るさを検知する手段を設けることで、使用環境の明るさに応じて発光輝度を変調させるような機能を持たせることは有効である。使用者は、使用環境の明るさに比べてコントラスト比で100〜150の明るさを確保できれば、問題なく画像もしくは文字情報を認識できる。すなわち、使用環境が明るい場合は画像の輝度を上げて見やすくし、使用環境が暗い場合は画像の輝度を抑えて消費電力を抑えるといったことが可能となる。
【0181】
また、本発明の発光装置を光源として用いた様々な電気器具も、低消費電力での動作や薄型軽量化が可能であるため、非常に有用と言える。代表的には、液晶表示装置のバックライトもしくはフロントライトといった光源、または照明機器の光源として本発明の発光装置を含む電気器具は、低消費電力の実現や薄型軽量化が可能である。
【0182】
したがって、本実施例に示した図15〜図16の電気器具の表示部を、全て液晶ディスプレイにする場合においても、その液晶ディスプレイのバックライトもしくはフロントライトとして本発明の発光装置を用いた電気器具を作製することにより、消費電力が少なく、薄くて軽量な電気器具が達成できる。
【0183】
【発明の効果】
本発明を実施することで、消費電力が少ない上に、寿命も優れた発光装置を得ることができる。さらに、そのような発光装置を光源もしくは表示部に用いることで、明るく消費電力が少ない上に、長保ちする電気器具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】正孔注入層の役割を示す図。
【図2】有機発光素子の構成を示す図。
【図3】有機発光素子の構成を示す図。
【図4】有機化合物膜の断面TEM写真を示す図。
【図5】有機化合物膜の作製方法を示す図。
【図6】有機化合物膜の作製方法を示す図。
【図7】有機化合物膜の作製方法を示す図。
【図8】発光装置の断面構造を示す図。
【図9】発光装置の断面構造を示す図。
【図10】発光装置の断面構造を示す図。
【図11】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図12】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図13】発光装置の構成を示す図。
【図14】発光装置の構成を示す図。
【図15】電気器具の具体例を示す図。
【図16】電気器具の具体例を示す図。
【図17】発光装置の回路構成を示す図。
【図18】発光装置の回路構成を示す図。
【図19】発光装置の断面構造を示す図。

Claims (18)

  1. 陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に挟まれた有機化合物膜と、を有する発光素子を含む発光装置において、
    前記有機化合物膜は、高分子化合物である第一の有機化合物からなる領域と、真空蒸着可能な低分子化合物である第二の有機化合物からなる領域と、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物が混合している混合領域と、を有し、
    前記第一の有機化合物は電子輸送性の化合物であり
    前記第二の有機化合物は発光を呈する発光性の化合物であり、
    前記混合領域は前記陽極および前記陰極とは接していないことを特徴とする発光装置。
  2. 陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に挟まれた有機化合物膜と、を有する発光素子を含む発光装置において、
    前記有機化合物膜は、高分子化合物である第一の有機化合物からなる領域と、真空蒸着可能な低分子化合物である第二の有機化合物からなる領域と、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物が混合している混合領域と、を有し、
    前記第一の有機化合物は発光を呈する発光性の化合物であり
    前記第二の有機化合物は正孔輸送性の化合物であり、
    前記混合領域は前記陽極および前記陰極とは接していないことを特徴とする発光装置。
  3. 請求項に記載の発光装置において、
    前記第一の有機化合物は、π電子を含む高分子化合物であり、かつ、化学ドーピングを施されていることを特徴とする発光装置。
  4. 請求項に記載の発光装置において、
    前記第一の有機化合物は、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、またはポリフェニレン誘導体であることを特徴とする発光装置。
  5. 請求項乃至請求項のいずれか一に記載の発光装置において、
    前記有機化合物膜は、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物とは異なる第三の有機化合物を含有し、かつ、前記第三の有機化合物が、前記混合領域にゲストとして添加されていることを特徴とする発光装置。
  6. 請求項に記載の発光装置において
    記第三の有機化合物は、発光を呈する発光性化合物であることを特徴とする発光装置。
  7. 請求項または請求項に記載の発光装置において、
    前記第三の有機化合物は、三重項励起状態からの発光を呈する発光性化合物であることを特徴とする発光装置。
  8. 請求項5乃至請求項7のいずれか一に記載の発光装置において、
    前記第三の有機化合物は、白金を中心金属とする金属錯体、またはイリジウムを中心金属とする金属錯体であることを特徴とする発光装置。
  9. 請求項または請求項に記載の発光装置において、
    前記第三の有機化合物は金属元素を有する金属錯体であり、
    SIMSにより検知できる前記金属元素の検出領域は、前記混合領域であることを特徴とする発光装置。
  10. 請求項に記載の発光装置において、
    前記金属元素は、アルミニウム、亜鉛、またはベリリウムであることを特徴とする発光装置。
  11. 請求項に記載の発光装置において、
    前記金属元素は、イリジウムまたは白金であることを特徴とする発光装置。
  12. 請求項に記載の発光装置において、
    前記第三の有機化合物は、前記第一の有機化合物および前記第二の有機化合物に比べて、最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差が大きいことを特徴とする発光装置。
  13. 請求項5または請求項12に記載の発光装置において、
    前記第三の有機化合物は、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、またはトリアゾール誘導体であることを特徴とする発光装置。
  14. 請求項1乃至請求項13のいずれか一に記載の発光装置を用いたことを特徴とする電気器具。
  15. 請求項14に記載の電気器具において、
    前記電気器具はディスプレイ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、画像再生装置、携帯型コンピュータ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、音響機器のいずれかであることを特徴とする電気器具。
  16. 電極を有する基板上に、の有機化合物および第の溶媒で構成される第の溶液を湿式塗布し、
    前記第の溶液を、前記第の溶媒の蒸気圧が作業雰囲気の圧力以下になる温度にて加熱し、
    第二の有機化合物および第の溶媒で構成される第の溶液を塗布することを特徴とする発光装置の製造方法。
  17. 電極を有する基板上に、の有機化合物および第の溶媒で構成される第の溶液を湿式塗布して加熱乾燥し、
    前記第の溶液に含まれる溶媒が作業雰囲気に含まれる状態にて、第二の有機化合物および第の溶媒で構成される第の溶液を塗布することを特徴とする発光装置の製造方法。
  18. 電極を有する基板上に、の有機化合物を成膜
    前記第の有機化合物を溶解できる溶媒が作業雰囲気に含まれる状態にて、第二の有機化合物および第の溶媒で構成される第の溶液を湿式塗布することを特徴とする発光装置の製造方法。
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