以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100を分解した状態を示す分解斜視図である。図1に基づいて、液滴吐出ヘッド100の構成について説明する。この液滴吐出ヘッド100は、静電気力により駆動される静電駆動方式の静電アクチュエータの代表として、ノズル基板の表面側に設けられたノズル孔から液滴を吐出するフェイスイジェクトタイプの液滴吐出ヘッドを表している。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図の上側を上とし、下側を下として説明するものとする。
図1に示すように、この液滴吐出ヘッド100は、ノズルプレート10、キャビティプレート20及び電極ガラス基板30の3つの基板が順に積層されるように接合された3層構造を特徴としている。このキャビティプレート20の一方の面(上面)にはノズルプレート10が接合されており、他方の面(下面)には電極ガラス基板30が接合されている。すなわち、キャビティプレート20を電極ガラス基板30とノズルプレート10とが上下から挟む構造となっている。
この実施の形態1では、電極ガラス基板30とキャビティプレート20とは陽極接合により接合するものとし、キャビティプレート20とノズルプレート10とはエポキシ樹脂等の接着剤を用いて接合するものとして説明する。また、液滴吐出ヘッド100の電極ガラス基板30に形成する個別電極31は、図示省略のドライバIC等の電力供給手段によって駆動信号(パルス電圧)が供給されるようになっている。
[電極ガラス基板30]
電極ガラス基板30は、たとえば、厚さ1mmのホウ珪酸ガラス等のガラスを主要な材料として形成するとよい。ここでは、電極ガラス基板30がホウ珪酸ガラスで形成されている場合を例に示すが、たとえば、電極ガラス基板30を単結晶シリコンで形成してもよい。この電極ガラス基板30の表面には、後述するキャビティプレート20の圧力室21の形状に合わせた凹部(ガラス溝)32が形成されている。この凹部32は、たとえばエッチングにより深さ0.3μmで形成するとよい。
また、この凹部32の内部(特に底部)には、固定電極となる個別電極31が、一定の間隔を有して後述のキャビティプレート20の各圧力室21(可動電極である振動板22)と対向するように作製されている。そして、この凹部32は、その一部が個別電極31を装着できるように、これらの形状に類似したやや大きめの形状にパターン形成されている。この個別電極31は、たとえばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を0.1μmの厚さでスパッタして作製するとよい。このようにITOで個別電極31作製すると、透明なので放電したかどうかの確認が行いやすいという利点がある。
また、個別電極31は、リード部33及び端子部34が一体となって作製されている。そして、個別電極31の一端(端子部34)が電力供給手段である図示省略のドライバICと接続されており、そのドライバICから個別電極31に駆動信号が供給されるようになっている。なお、特に区別する必要がない限り、個別電極31は、リード部33と端子部34とを含んだものとして説明するものとする。なお、ドライバICは、液滴吐出ヘッド100の内部に搭載してもよく、外部に設けられていてもよい。また、液滴吐出ヘッド100には、ドライバICに電力を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)を搭載してもよい。
この凹部32の底面には、凹部32(または、個別電極31)の長手方向(長辺方向)に4段の階段状の浅い方から順に段面部32a、32b、32c及び32dが設けられている。ここで説明する段面とは、所定の高さの段差を有する面のことをいうものとする。そして、これらの段面部32a、32b、32c及び32d上に個別電極31が形成されている。つまり、液滴吐出ヘッド100は、多段ギャップ構成を特徴としているのである(図2で詳細に説明する)。
電極ガラス基板30とキャビティプレート20とを接合して積層体を形成すると、振動板22と個別電極31との間には、振動板22を撓ませる(変位させる)ことができる一定のギャップ(空隙)Gが、電極ガラス基板30の凹部32により形成されるようになっている。この凹部32は、上述したように、階段状の段面部が設けられているので、ギャップGは、その段面部に応じたギャップの深さ(すなわち、図2で示すようなギャップG1、G2、G3及びG4)を有するようになっている。
また、このギャップGは、凹部32の深さ、個別電極31及び振動板22の厚さにより決まることになる。このギャップGは、液滴吐出ヘッド100の吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が要求される。つまり、ギャップGは、各振動板22に対向する位置に細長く所定の深さを有するように形成されている。なお、ギャップGは、電極ガラス基板30に凹部32を形成する他に、キャビティプレート20となるシリコン基板に凹部を形成したり、スペーサを挟むことによって設けたりすることも可能である。
この液滴吐出ヘッド100は、複数の個別電極31が長辺及び短辺を有する長方形状に形成されており、この個別電極31が、互いの長辺が平行になるように配置されている。そして、図1では、個別電極31の短辺方向に伸びる1つの電極列を示している。なお、個別電極31の短辺が長辺に対して斜めに形成されており、個別電極31が細長い平行四辺形状になっている場合には、長辺方向に直角方向に伸びる電極列を形成するようにすればよい。
なお、電極ガラス基板30には、図示省略の外部のインクタンクから供給される液体を取り入れる流路となるインク供給孔25が設けられている。このインク供給孔25は、電極ガラス基板30を貫通するように形成されている。また、個別電極31をITOで作製した場合を例に示したが、これに限定するものではなく、クロム等の金属等で作製してもよい。さらに、ここで示した凹部32の深さやギャップGの長辺方向の長さ、個別電極31の厚さは一例であり、ここで示す値に限定するものではない。
[キャビティプレート20]
キャビティプレート20は、たとえば厚さ約50μm(マイクロメートル)の(110)面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板という)を主要な材料として構成されている。このシリコン基板にドライエッチングまたは異方性ウエットエッチングのいずれかあるいは双方を行い、底壁が可撓性を有する振動板22となる圧力室(または、吐出室)21が複数形成されている。この圧力室21は、個別電極31の電極列に対応して形成されており、インク等の液滴が保持されて吐出圧が加えられるようになっている。また、圧力室21は、紙面手前側から奥側にかけて平行に並んで形成されているものとする。
また、キャビティプレート20には、各圧力室21にインク等の液滴を供給するための共通インク室であるリザーバ23が形成されている。このリザーバ23の底面には、リザーバ23の底面を貫通するインク供給孔25が形成されている。さらに、キャビティ20とノズルプレート10とを接合すると、リザーバ23から各圧力室21に液滴を移送するために、リザーバ23と各圧力室21とを連通させるオリフィス24(図2参照)が、キャビティプレート20とノズルプレート10との間に形成されるようになっている。
なお、キャビティプレート20の下面(電極ガラス基板30と対向する面)には、振動板22と個別電極31との間を電気的に絶縁するためのTEOS膜(ここでは、Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン(珪酸エチル)を用いてできるSiO2 膜をいう)である絶縁膜(図示省略)をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:TEOS−pCVDともいう)法を用いて、0.1μm成膜している。これは、振動板22の駆動時における絶縁破壊及びショートを防止するためと、インク等の液滴によるキャビティプレート20のエッチングを防止するためのものである。
ここでは、絶縁膜がTEOS膜である場合を例に説明するが、これに限定するものではなく、絶縁性能が向上する物質であればよい。たとえば、Al2O3(酸化アルミニウム(アルミナ))を用いてもよい。また、キャビティプレート20の上面にも、図示省略の液体保護膜となるSiO2 膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタリング法により成膜するとよい。このような液体保護膜を成膜することによって、インク滴で流路が腐食されるのを防止できるからである。この液体保護膜の応力と絶縁膜の応力とを相殺させ、振動板22の反りを小さくできるという効果もある。
なお、振動板22は、高濃度のボロンドープ層で形成するようにしてもよい。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液による単結晶シリコンのエッチングにおけるエッチングレートは、ドーパントがボロンの場合、約5×1019atoms/cm3 以上の高濃度の領域において、非常に小さくなる。このため、振動板22の部分を高濃度のボロンドープ層とし、アルカリ溶液による異方性エッチングによって圧力室21を形成する際に、ボロンドープ層が露出してエッチングレートが極端に小さくなる、いわゆるエッチングストップ技術を用いることにより、振動板22を所望の厚さに形成することができる。
また、キャビティプレート20にも、インク供給孔25が設けられている(電極ガラス基板30に設けられたインク供給孔25と連通するようになっている)。さらに、キャビティプレート20には、外部電極端子としての共通電極端子27が形成されている。この共通電極端子16は、図示省略の外部の発振回路等から振動板22に個別電極31と反対の極性の電荷が供給する際の端子となるものである。
[ノズルプレート10]
ノズルプレート10は、たとえば厚さ約100μmのシリコン基板を主要な材料として構成されている。そして、キャビティプレート20の上面(電極ガラス基板30を接合する面の反対面)と接合している。ノズルプレート10の上面には、圧力室21と連通するノズル孔11が複数形成されている。各ノズル孔11は、圧力室21から移送された液滴を外部に吐出するようになっている。なお、ノズル孔11を複数段(たとえば、2段)で形成すると、液滴を吐出する際の直進性の向上が期待できる。
ここでは、ノズルプレート10を上面とし、電極ガラス基板30を下面として説明しているが、実際に用いられる場合には、ノズルプレート10の方が電極ガラス基板30よりも下面となることが多い。なお、実施の形態1では、キャビティプレート20にオリフィス24を形成した場合を例に示したが、ノズルプレート10にオリフィス24を形成するようにしてもよい。また、ノズルプレート10には、振動板22によりリザーバ23側の液体に加わる圧力を緩衝するためのダイヤフラム13を設けるとよい。
なお、電極ガラス基板30、キャビティプレート20及びノズルプレート10を接合するときに、シリコンからなる基板とホウ珪酸ガラスからなる基板を接合する場合(電極ガラス基板30とキャビティプレート20とを接合する場合)は陽極接合により、シリコンからなる基板同士を接合する場合(キャビティプレート20とノズルプレート10)は直接接合によって接合することができる。また、シリコンからなる基板同士は、接着剤を用いて接合することもできる。
図2は、液滴吐出ヘッド100の断面構成を示す縦断面図である。この図は、液滴吐出ヘッド100が組み立てられた状態のA−A断面(図1参照)を示す縦断面図である。図2に基づいて、液滴吐出ヘッド100の組み立てられた状態の構成及び動作について説明する。この図2に示すように、液滴吐出ヘッド100の電極ガラス基板30の凹部32は、多段に、つまり中央部が深くなるような階段状に形成されている。また、個別電極31も凹部32の階段状に合わせて形成されている。
したがって、電極ガラス基板30とキャビティプレート20とが接合された状態において形成されるギャップGは、深さの相違する、つまり個別電極31の段差に対応するギャップG1、G2、G3及びG4で構成されるようになっている。つまり、ギャップG1、G2、G3及びG4は、振動板22の下面に形成された図示省略の絶縁膜の表面(下面)と階段状に形成された個別電極31の表面との距離が相違するということを示しているのである。ここでは、最浅部をギャップG1、最深部をギャップG4とし、ギャップの深さが短い方からギャップG2、ギャップG3としている。また、階段状に形成された個別電極31は、ギャップGの浅い方から順に個別電極31a、個別電極31b、個別電極31c、個別電極31dとして説明するものとする。
なお、ギャップGの相違する深さを図2で示す4つに限定するものではない。たとえば、ギャップGを3つの深さで構成してもよく、5つの深さ以上で構成してもよい。また、このギャップGは、内部に湿気や埃等が侵入しないようエポキシ樹脂等の封止部40で気密に封止されている。この封止部40に使用する材料を特に限定するものではなく、ギャップGを気密封止できる材料であればよい。たとえば、水分透過性の低い酸化シリコン(SiO2 )や、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、ポリパラキシリレン等で封止部40を形成するとよい。
ここで、液滴吐出ヘッド100の動作について説明する。キャビティプレート20のリザーバ23には、インク供給孔25を介して外部からインク等の液滴が供給されている。また、キャビティプレート20の圧力室21には、オリフィス24を介してリザーバ23から液滴が供給されている。そして、図示省略のドライバIC等の電力供給手段によって選択された個別電極31には0V〜40V程度のパルス電圧が印加され、その個別電極31を正に帯電させる。
このとき、共通電極端子27を介してキャビティプレート20には負の極性を有する電荷が供給され、正に帯電された個別電極31に対応する振動板22を相対的に負に帯電させる。そのため、選択された個別電極31と振動板22との間では静電気力が発生することになる。そうすると、振動板22は、静電気力によって個別電極31側に引き寄せられて撓むことになる。これによって圧力室21の容積が増大する。つまり、個別電極31は前述のように長手方向の中央部が最も低くなるように複数段の階段状に形成されており、それに対応してギャップGの深さも相違(ギャップG1〜G4)しているので、振動板22がギャップG1からギャップG4まで順送りで変位していき、個別電極31に引き寄せられて当接することになる。これによって圧力室21の容積が増大する。
その後、個別電極31への電荷の供給を止めると、振動板22と個別電極31との間の静電気力がなくなり、振動板22はその弾性力により元の状態に復元する。このとき、圧力室21の容積が急激に減少するため、圧力室21内部の圧力が急激に上昇する。これにより、圧力室21内のインクの一部がインク滴12としてノズル孔11より吐出されることになる。このインク滴が12、たとえば記録紙に着弾することによって印刷等が行われるようになっている。その後、液滴がリザーバ23から供給口32を通じて圧力室21内に補給され、初期状態に戻る。つまり、このように振動板22が駆動することによって、静電アクチュエータを構成しているのである。このような方法は、引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
ここで、吐出するインク滴12の液滴の量を制御する駆動方法について説明する。この実施の形態1にかかる液滴吐出ヘッド100は、静電駆動方式を採用している。したがって、インク孔11のメニスカスを一旦引き込んでインク滴12を押し出して吐出させ、その後、メニスカスを再度引き込ませて、メニスカスを静定させるようになっている。つまり、振動板22をPull−Push−Pull駆動させてメニスカス制御を行なうようになっているのである。このような駆動方法を採用することによって、吐出するインク滴12の量を制御するようになっているのである。
インク滴12の吐出量の制御について更に詳しく説明する。静電駆動方式では、振動板22をPullする力(個別電極31側に引き寄せられる力)が、Pushする力(振動板22の復元力)に勝る。そのために、中間電位(ギャップGの中間位置に対応する個別電極31、つまり個別電極31bや個別電極31cに振動板22が当接するときの電位:第1電位)にて、一部当接させている振動板22を一旦解除して振動板22をPushし、圧力室21内のインクに振動を与え、この振動にタイミングを合わせて(つまり、同位相となるように)Pullすることでインク滴12の吐出量を制御している。
こうすることにより、インク滴12の吐出前のメニスカス引き込みを行うと同時に、静電エネルギーを振動エネルギーとしてインク内に蓄えることができる。すなわち、このメニスカス引き込み後に、圧力室21内のインクの振幅にタイミングを合わせて振動板22を解除してインク滴12を押し出し、ノズル孔11からインク滴12を吐出させるのである。そして、インク吐出後、振動板22の一部を(逆位相となるように)吸引して、メニスカスを再度引き込ませて、速やかにメニスカスを静定させる(待機状態に戻す)ようにしている。
最大量のインク滴12を吐出させる場合、振動板22のPullを大きく急激に行ない、メニスカスを急激に圧力室21側に後退させて、振幅を最大にしてから振動板22をPushする(図5参照)。また、中程度の量のインク滴12を吐出させる場合、振動板22のPullを小さく緩やかに行い、メニスカスを圧力室21側に比較的緩やかに少し後退させて、振幅を中程度にしてから振動板22をPushする(図6参照)。さらに、最小量のインク滴12を吐出させる場合、メニスカスを急激に圧力室21側に後退させて、小さい振幅の状態で振動板22を急激に小さくPushする(図7参照)。このようにインク量を制御することが、この実施の形態1にかかる液滴吐出ヘッドの特徴となっている。
図3は、液滴吐出ヘッド100が搭載された液滴吐出装置の制御系を示す概略ブロック図である。なお、この液滴吐出装置が一般的なインクジェットプリンタである場合を例に示す。図に基づいて、液滴吐出ヘッド100が搭載された液滴吐出装置の制御系について説明する。ただし、液滴吐出ヘッド100が搭載された液滴吐出装置の制御系を、ここで示した場合に限定するものではない。
インクジェットプリンタは、液滴吐出ヘッド100を駆動制御するための駆動制御装置41を備えている。この駆動制御装置41は、CPU(中央処理装置)42aを中心に構成された制御部42を備えている。CPU42aは、パーソナルコンピュータや遠隔制御装置(リモコン)等の外部装置43から印刷情報が入力されるようになっている。この印刷情報は、バス52を介して入力されたり、赤外線信号等の無線信号で入力されたりするようになっている。また、CPU42aには、内部バス53を介してROM44a、RAM44b及びキャラクタジェネレータ44cが接続されている。
制御部42では、RAM44b内の記憶領域を作業領域として用いて、ROM44a内に格納されている制御プログラムを実行し、キャラクタジェネレータ44cから発生するキャラクタ情報に基づき、液滴吐出ヘッド100を駆動するための制御信号を生成する。制御信号は、論理ゲートアレイ45及び駆動パルス発生回路46を介して、印刷情報に対応した駆動制御信号となって、コネクタ47を経由して液滴吐出ヘッド100に内蔵されたドライバIC15に供給されるほか、COM発生回路46aに供給される。また、ドライバIC15には、印字用の駆動パルス信号V3、制御信号LP、極性反転制御信号REV等(図4参照)も供給されるようになっている。なお、COM発生回路46aは、たとえば駆動パルスを発生するための図示省略の共通電極ICで構成するとよい。
COM発生回路46aでは、供給された上記の各信号に基づき、液滴吐出ヘッド100の共通電極端子16、すなわち各振動板22に印加すべき駆動信号(駆動電圧パルス)をその図示省略の共通出力端子COMから出力するようになっている。また、ドライバIC15では、供給された上記の各信号及び電源回路70から供給される駆動電圧Vpに基づき、各個別電極31に印加すべき駆動信号(駆動電圧パルス)を、各個別電極31に対応した個数の個別出力端子SEGから出力するようになっている。そして、共通出力端子COMの出力と個別出力端子SEGの出力との電位差が、各振動板22とそれに対向する個別電極31との間に印加される。振動板22の駆動時(液滴の吐出時)には指定された向きの駆動電位差波形を与え、非駆動時には駆動電位差を与えないようになっている。
図4は、ドライバIC15及びCOM発生回路46aの内部構成の一例を示す概略ブロック図である。なお、ドライバIC15及びCOM発生回路46aは、1組で64個の個別電極31及び振動板22に駆動信号を供給するものとする。また、ドライバIC15が、電源回路70から高電圧系の駆動電圧Vp及び論理回路系の駆動電圧Vccが供給されて動作するCMOSの64ビット出力の高耐圧ドライバである場合を例に示している。
ドライバIC15は、供給された駆動制御信号に応じて、駆動電圧パルスとGND電位の一方を、個別電極31に印加する。ドライバIC15は、64ビットのシフトレジスタ61を有し、シフトレジスタ61はシリアルデータとして論理ゲートアレイ45より送信された64ビット長のDI信号入力を、DI信号に同期する基本クロックパルスであるXSCLパルス信号入力によりデータをシフトアップし、シフトレジスタ81内のレジスタに格納するスタティクシフトレジスタとなっている。DI信号は、64個の個別電極31のそれぞれを選択するための選択情報をオン/オフにより示す制御信号であり、この信号がシリアルデータとして送信される。
また、ドライバIC15は、64ビットのラッチ回路62を有し、ラッチ回路62はシフトレジスタ61内に格納された64ビットデータを制御信号(ラッチパルス)LPによりラッチしてデータを格納し、格納されたデータを64ビット反転回路63に信号出力するスタティクラッチである。ラッチ回路62では、シリアルデータのDI信号が各振動板22の駆動を行うための64セグメント出力を行うための64ビットのパラレル信号へと変換される。
反転回路63では、ラッチ回路62から入力される信号と、REV信号との排他的論理和をレベルシフタ64へ出力する。レベルシフタ64は、反転回路63からの信号の電圧レベルをロジック系の電圧レベル(5Vレベル又は3.3Vレベル)からヘッド駆動系の電圧レベル(0〜45Vレベル)に変換するレベルインターフェイス回路である。SEGドライバ65は、64チャンネルのトランスミッションゲート出力となっていて、レベルシフタ64の入力によりSEG1〜SEG64のセグメント出力に対して、駆動電圧パルス入力か又はGND入力のいずれかを出力する。COM発生回路46aに内蔵されたCOMドライバ66は、REV入力に対して駆動電圧パルスか又はGND入力のいずれかをCOMへ出力する。
XSCL、DI、LP及びREVの各信号は、ロジック系の電圧レベルの信号であり、論理ゲートアレイ45よりドライバIC15に送信される信号である。このように、ドライバIC15及びCOM発生回路46aを構成することにより、駆動するセグメント数(振動板22の数)が増加した場合においても容易に液滴吐出ヘッド100の振動板22の駆動する駆動電圧パルスとGNDとを切り替えることが可能となる。
図5は、最大量のインクを吐出させる場合の駆動波形を示すグラフである。図6は、中程度の量のインクを吐出させる場合の駆動波形を示すグラフである。図7は、最小量のインクを吐出させる場合の駆動波形を示すグラフである。図5〜図7に基づいて、この実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド100の特徴である駆動方法について説明する。図5〜図7では、縦軸が個別電極31(seg)に印加する電圧を、横軸が時間(t)をそれぞれ示している。なお、この実施の形態1では、共通電極端子27(COM)の電圧は、GNDとして示している。
また、個別電極31への印加電圧は、振動板22が個別電極31aに当接する電圧をV1、個別電極31bに当接する電圧をV2、個別電極31cに当接する電圧をV3、個別電極31dに当接する電圧をV4として示している。つまり、振動板22を階段状の個別電極31に当接させるために必要な印加電圧は、個別電極31と振動板22との距離が離れる(電極間空隙距離、つまりギャップGの深さが大きくなる)に従い、高いものとなっている。
まず、図5に基づいて最大量のインクを吐出させる場合における個別電極31への印加電圧の駆動波形について説明する。液滴吐出ヘッド100が印刷動作を開始するまでは、個別電極31には、GNDからV2までの電圧が印加されている(t0〜t1)。このようにして、静電アクチュエータに充電し、振動板22を2段目の個別電極31bに当接させる。つまり、振動板22を多段ギャップGの中間(個別電極31bや個別電極31b)で保持させて、待機するのである。なお、この図5では、印加電圧がV2のときを中間電位(第1電位)としている。
そして、液滴吐出ヘッド100が印刷動作を開始すると、個別電極31への印加電圧をV2からGNDに降下させて、振動板22を一旦離脱、解放して、圧力室21内のインクに自由振動を与える(t2〜t3)。この時、ノズル孔11の先端では、インクが若干盛り上がった状態となる。なお、中間電位は、個別電極31bに当接していた振動板22の全部を一旦離脱した際に、インク滴12が吐出しない程度の範囲で設定するとよい。また、中間電位は、液滴吐出ヘッド100の用途及び目的に応じて変更可能にしておくとよい。
このインクの自由振動に合わせて、個別電極31への印加電圧をGNDから最大電位(第3電位)のV4にする(t4〜t5)。こうすることにより、最浅部にある、つまり個別電極31に当接していない振動板22を急激に最深部の個別電極31dに当接させる。つまり、圧力室21内に最大の負圧を発生させるのである。そして、ノズル孔11の先端のメニスカスを急激に大きく圧力室21側に引き込んで、待機させる(t5〜t6)。このとき、圧力室21内では、インクが振動板22当接時の固有振動数により振動している。つまり、この振動による圧力が負圧から正圧に変化するまでの間、振動板22を保持するのである。なお、第3電位が最大電位である場合を例に説明したが、第2電位が最大電位であってもよい。
この振動による圧力が負圧から正圧に変化すると(t6〜t7)、最大圧力になるタイミングで、個別電極31への印加電圧をV4からGNDとして、振動板22と個別電極31とを離脱させる。そうすると、圧力室21内のインクを押すとともに、ノズル孔11から最大量のインク滴12を吐出させることができる。つまり、圧力室21内のインクに与える自由振動の振幅が最大となったところで、個別電極31に最大電位V4を印加し、圧力室21内の負圧を最大にした後、最大圧力となるタイミングで個別電極31への印加電圧をGNDにすることによって最大量のインク滴12を吐出するのである。
インク滴12の吐出後(t7〜t8)では、振動板22及び圧力室21内のインクは、自由振動している。すなわち、インク滴12を吐出し、メニスカスが大きく圧力室21側に引き込んだ後、再度メニスカスはノズル孔11から盛り上がろうとして、待機位置まで戻り始めるのである。そこで、メニスカスがオーバーシュートしてインク孔11から吐出しないように圧力室21の自由振動に対して、逆位相の圧力を与える(t8〜t9)。つまり、再度、個別電極31に中間電位V2を印加して、個別電極31の2段目に振動板22を当接、保持させて、メニスカスを速やかに待機位置に減衰させて戻すのである。そして、印刷の終了とともに、個別電極31への印加電圧をGNDにする(t10〜t11)。このとき、インク滴12がノズル孔11から吐出したりすることのないように、緩やかに、ゆっくりと放電させるとよい。
次に、図6に基づいて中程度の量のインクを吐出させる場合における個別電極31への印加電圧の駆動波形について説明する。液滴吐出ヘッド100が印刷動作を開始するまでは、個別電極31には、GNDからV2までの電圧が印加されている(t0〜t1)。このようにして、静電アクチュエータに充電し、振動板22を2段目の個別電極31bに当接させる。つまり、振動板22を多段ギャップGの中間(個別電極31bや個別電極31b)で保持させて、待機するのである。なお、この図6では、図5と同様に印加電圧がV2のときを中間電位(第1電位)としている。
そして、液滴吐出ヘッド100が印刷動作を開始すると、個別電極31への印加電圧をV2からV1に降下させて、一部のアクチュエータの電荷を放電させる。つまり、振動板22を1段目の個別電極31aに当接、保持させた状態のままで2段目の個別電極31bの部分を離脱、解放して、圧力室21内のインクに自由振動を与える(t2〜t3)。この時、ノズル孔11の先端では、インクが若干盛り上がった状態となる。なお、中間電位は、個別電極31bに当接していた振動板22の一部を一旦離脱した際に、インク滴12が吐出しない程度の範囲で設定するとよい。また、中間電位は、図5の場合と同様に液滴吐出ヘッド100の用途及び目的に応じて変更可能にしておくとよい。
このインクの自由振動に合わせて、個別電極31への印加電圧をV1から最大電位(第3電位)のV4にする(t4〜t6)。こうすることにより、個別電極31aに当接している振動板22を急激に最深部の個別電極31dに当接させる。つまり、圧力室21内に中程度の負圧を発生させるのである。そして、ノズル孔11の先端のメニスカスを比較的緩やかに圧力室21側に引き込んで、待機させる(t6〜t7)。このとき、圧力室21内では、インクが振動板22当接時の固有振動数により振動している。つまり、この振動による圧力が負圧から正圧に変化するまでの間、振動板22を保持するのである。なお、第3電位が最大電位である場合を例に説明したが、第2電位が最大電位であってもよい。
なお、t2〜t5で印加電圧をV2に保持したまま、t5〜t6にかけて印加電圧をV4に変化させることにより、圧力室21内に発生する負圧をより小さくして、ノズル孔11の先端のメニスカスを更に緩やかに圧力室21側に引き込んでもよい。そして、圧力室21内のインクの振動による圧力が負圧から正圧に変化すると(t7〜t8)、最大圧力になるタイミングで、個別電極31への印加電圧をV4からV1として、振動板22を個別電極31aに当接させた状態で、個別電極31dから離脱させる。そうすると、圧力室21内のインクを押すとともに、ノズル孔11から中程度の量のインク滴12を吐出させることができる。
インク滴12の吐出後(t8〜t9)では、振動板22及び圧力室21内のインクは、自由振動している。すなわち、インク滴12を吐出し、メニスカスが大きく圧力室21側に引き込んだ後、再度メニスカスはノズル孔11から盛り上がろうとして、待機位置まで戻り始めるのである。そこで、メニスカスがオーバーシュートしてインク孔11から吐出しないように圧力室21の自由振動に対して、逆位相の圧力を与える(t9〜t10)。つまり、再度、個別電極31に中間電位V2を印加して、個別電極31bに振動板22を当接、保持させて、メニスカスを速やかに待機位置に減衰させて戻すのである。そして、印刷の終了とともに、個別電極31への印加電圧をGNDにする(t11〜t12)。このとき、インク滴12がノズル孔11から吐出したりすることのないように、緩やかに、ゆっくりと放電させるとよい。
最後に、図7に基づいて最小量のインクを吐出させる場合における個別電極31への印加電圧の駆動波形について説明する。液滴吐出ヘッド100が印刷動作を開始するまでは、個別電極31には、GNDからV2までの電圧が印加されている(t0〜t1)。このようにして、静電アクチュエータに充電し、振動板22を2段目の個別電極31bに当接させる。つまり、振動板22を多段ギャップGの中間(個別電極31bや個別電極31b)で保持させて、待機するのである。なお、この図7では、図5及び図6と同様に印加電圧がV2のときを中間電位(第1電位)としている。
そして、液滴吐出ヘッド100が印刷動作を開始すると、個別電極31への印加電圧をV2からGNDに降下させて、振動板22を一旦離脱、解放して、圧力室21内のインクに自由振動を与える(t2〜t3)。この時、ノズル孔11の先端では、インクが若干盛り上がった状態となる。なお、中間電位は、個別電極31bに当接していた振動板22の全部を一旦離脱した際に、インク滴12が吐出しない程度の範囲で設定するとよい。また、中間電位は、図5及び図6の場合と同様に液滴吐出ヘッド100の用途及び目的に応じて変更可能にしておくとよい。
このインクの自由振動に合わせて、個別電極31への印加電圧をGNDから最大電位(第3電位)のV4にする(t4〜t5)。こうすることにより、最浅部にある、つまり個別電極31に当接していない振動板22を急激に最深部の個別電極31dに当接させる。つまり、圧力室21内に最大の負圧を発生させるのである。そして、ノズル孔11の先端のメニスカスを急激に大きく圧力室21側に引き込んで、待機させる(t5〜t6)。このとき、圧力室21内では、インクが振動板22当接時の固有振動数により振動している。つまり、この振動による圧力が負圧から正圧に変化するまでの間、振動板22を保持するのである。なお、第3電位が最大電位である場合を例に説明したが、第2電位が最大電位であってもよい。
この振動による圧力が負圧から正圧に変化すると(t6〜t7)、最大圧力になるタイミングで、個別電極31への印加電圧をV4からV2として、振動板22を個別電極31bに当接させた状態で、個別電極31dとを離脱させる。そうすると、圧力室21内のインクを押すとともに、ノズル孔11から最小量のインク滴12を吐出させることができる。つまり、t4〜t7では、ノズル孔11からインク滴12を押し出そうとする圧力が小さいために、主にインクの圧縮力を解放する圧力の増大によって、インク滴12を吐出することができるのである。このため、インク滴12の吐出量は少なく、吐出速度は速くなる。結果として、微小なインク滴12が安定してノズル孔11から吐出されることになる。
インク滴12の吐出後(t7〜t8)では、振動板22及び圧力室21内のインクは、自由振動している。すなわち、インク滴12を吐出し、メニスカスが大きく圧力室21側に引き込んだ後、再度メニスカスはノズル孔11から盛り上がろうとして、待機位置まで戻り始めるのである。ただし、ノズル孔11から吐出したインク滴12の量が比較的少ないので、メニスカスが待機位置まで戻る時間は比較的小さい。そこで、メニスカスがオーバーシュートしてインク孔11から吐出しないように圧力室21の自由振動に対して、逆位相の圧力を与える(t8〜t9)。
そのために、図4の破線(t8〜t11)で示したように、個別電極31への印加電位をV3にして、3段目の個別電極31cに振動板22を当接、保持させて、メニスカスをノズル孔11の内部の待機位置に減衰させて戻しても良い。つまり、残留振動が大きく、ノズル孔11からのインク滴12の吐出量が少ないため、オーバーシュート量が大きくなる場合、インクの粘度や流路抵抗が小さい高温の場合に用いると効果的にノズル孔11の内部のメニスカスの振動を速やかに抑制することが可能なのである。そして、印刷の終了とともに、個別電極31への印加電圧をGNDにする(t12〜t13)。このとき、インク滴12がノズル孔11から吐出したりすることのないように、緩やかに、ゆっくりと放電させるとよい。
以上より、インク滴12の一滴の吐出量を調整することで、画素の階調数を増加させることができ、プリントの表現力を向上させることが可能なのである。また、高駆動周波数化を図り、インクジェットプリンタの高画質化及び高速化を同時に実現することが可能となる。さらに、静電駆動方式を採用しているので、高密度化及び低消費電力化を実現することができるとともに、小型で安価なインクジェットプリンタを提供できる。
実施形態2.
図8は、上述した液滴吐出ヘッド100を搭載した液滴吐出装置150の一例を示した斜視図である。図8に示す液滴吐出装置150は、一般的なインクジェットプリンタである。なお、この液滴吐出装置150は、周知の製造方法によって製造することができる。上述した液滴吐出ヘッド100は、インクを吐出するときの駆動方法に特徴を有するものである。
なお、液滴吐出ヘッド100は、図8に示す液滴吐出装置150の他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。また、液滴吐出ヘッド100は、圧電駆動方式の液滴吐出装置や、バブルジェット(登録商標)方式の液滴吐出装置にも使用できる。
たとえば、液滴吐出ヘッド100をディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る光スイッチ200の構成を示す斜視図である。図10は、光スイッチ200の断面構成を示す縦断面図である。図9及び図10に基づいて、光スイッチ200の特徴である駆動方法について説明する。上述の実施の形態は、静電アクチュエータを用いた液滴吐出ヘッド及びその液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置を例として説明したが、この実施の形態3では、静電アクチュエータを用いた光スイッチを例に説明する。なお、本発明をそれだけに限定させるものではなく、ミラーデバイスやレーザプリンタのレーザ操作ミラーの駆動部、他の微細加工の素子(デバイス)、装置にも適用することができる。
たとえば、光通信や光演算、光記憶装置、光プリンタ、映像表示装置等に用いられている光スイッチ200は、マイクロミラー201の傾斜角度を変化させ、選択した方向に光を反射させ、光によるスイッチング素子を利用したものとしての役割を果たすものである。マイクロミラー201の傾斜角度を制御するため、マイクロミラー201を支える支軸202を中心として、たとえば線対称の位置に被駆動部である可動電極203を設け、電極ガラス基板204に形成した、駆動部である固定電極である個別電極205と所定の間隔(ギャップ)で対向配置させている。
この光スイッチ200は、静電アクチュエータの特性である静電気力を利用して、支軸202を回転させることで、マイクロミラー201の傾斜角度を制御するようになっている。その際、実施の形態1のように、電極ガラス基板204の凹部206を階段状に、つまり個別電極205を階段状に形成しておくことで(図10参照)、従来に比べて、駆動電圧に対して可動電極203の変位を大きくすることができ、マイクロミラー201の傾斜角度を所望の角度に変化させることができる。
また、同様にモータやセンサ、SAWフィルタのような振動素子(レゾネータ)、波長可変光フィルタや他のミラーデバイス等、他の種類の微細加工の静電アクチュエータにも上述の可動電極、固定電極の組み合わせを適用することができる。特に、液滴吐出ヘッドでは、可動電極となる振動板については、長辺においてその両端が支持されているが、片端を支持する構造のアクチュエータ等にも利用することができる。
図10に示すように、光スイッチ200の電極ガラス基板204に形成されている凹部206は、多段に、つまり中央部が深くなるような階段状に形成されている。また、個別電極205も凹部206の階段状に合わせて形成されている。したがって、個別電極205と可動電極203、個別電極205とマイクロミラー201との間に形成されるギャップG’は、深さの相違するギャップG1’、G2’及びG3’で構成されるようになっている。
つまり、ギャップG1’、G2’及びG3’は、可動電極203と個別電極205との距離、マイクロミラー201と個別電極205との距離が相違するということを示しているのである。ここでは、最浅部をギャップG1’、最深部をギャップG3’とし、中間部をギャップG2’としている。また、階段状に形成された個別電極205は、ギャップG’の浅い方から順に個別電極205a、個別電極205b、個別電極205cとして説明するものとする。なお、ギャップG’の相違する深さを図10で示す3つに限定するものではない。たとえば、ギャップG’を2つの深さで構成してもよく、4つの深さ以上で構成してもよい。
このように構成された光スイッチ200に、図5〜図7で説明したような駆動方法を採用すれば、駆動電圧に対して可動電極203の変位を大きくすることができ、マイクロミラー201の傾斜角度を所望の角度に変化させることができるとともに、マイクロミラー201の角度調整を正確かつ緻密に行なうことができる。つまり、可動電極203を多段ギャップG’の中間で保持させて、待機することで、マイクロミラー201の角度の大きさを緻密に調整可能なのである。
なお、本発明の実施の形態に係る静電アクチュエータの駆動方法、液滴吐出ヘッドの駆動方法及び液滴吐出装置の駆動方法は、上述の実施の形態で説明した内容に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において変更することができる。また、液滴吐出ヘッド100が電極ガラス基板、キャビティ基板及びノズル基板からなる3層構造を例に説明するが、これに限定するものではなく、電極ガラス基板、キャビティ基板、リザーバ基板及びノズル基板からなる4層構造であってもよい。
10 ノズルプレート、11 ノズル孔、12 インク滴、13 ダイヤフラム、20 キャビティプレート、21 圧力室、22 振動板、23 リザーバ、24 オリフィス、25 インク供給孔、27 共通電極端子、30 電極ガラス基板、31 個別電極、31a 個別電極、31b 個別電極、31c 個別電極、31d 個別電極、32 凹部、32a 断面部、32b 断面部、32c 断面部、32d 断面部、33 リード部、34 端子部、40 封止部、41 駆動制御装置、42 制御部、42a CPU、43 外部装置、44a ROM、44b RAM、44c キャラクタジェネレータ、45 論理ゲートアレイ、46 駆動パルス発生回路、46a COM発生回路、47 コネクタ、52 バス、53 内部バス、61 シフトレジスタ、62 ラッチ回路、63 反転回路、64 レベルシフタ、65 SEGドライバ、66 COMドライバ、70 電源回路、150 液滴吐出装置、200 光スイッチ、201 マイクロミラー、202 支軸、203 可動電極、204 電極ガラス基板、205 個別電極、206 凹部。