JP4075262B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録を必要とする時にのみインク滴を吐出して記録紙上に付着させるインクジェットヘッドに関し、更に詳しくは、対向電極を複数の電極から構成したインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にインクジェットヘッドは、インクを加圧してインク滴を吐出するための圧力発生室を備えている。そして、圧力発生室の一端はインク供給路を経てインクタンクに連通し、その他端にはインク滴を吐出させるインクノズルが設けられている。そして、圧力発生室の底部を変形しやすく形成してダイヤフラムとして用い、これを電気機械変換手段によって弾性変位させることによってインクノズルからインク滴を吐出するための圧力を発生させている。
【0003】
このようなインクジェットヘッドを用いたプリンタは低騒音、低消費電力等の優れた特徴を有し、情報処理装置用の出力装置として広く普及している。その反面、インクジェットにおいては、圧力発生室に発生した残留振動により、インクノズル内のメニスカスが不安定な形状でノズル外へ押し出されるため、インク滴の吐出直後に印字を構成しない不要なインク滴が吐出される場合がある。印字を構成しない不要なインク滴は、吐出速度が遅いためノズル面に付着し、インクノズルの目詰まりやドット抜けという現象を引き起こしてしまい、印字に対する信頼性を低下させていた。
【0004】
さらに、インクジェットヘッドを駆動しない状態でプリンタを長時間放置した場合には、インクの溶媒である水分等がインクノズルより蒸発してしまい、インクノズル内のインクの粘度が上昇してインクノズルの目詰まり状態となる。さらにまた、インクの粘度が上昇することにより、インクノズルに対するインクのリフィル速度が遅くなり、インク吐出量に対してリフィル量が追いつかず、インクの中に気泡が混入することでインク滴が吐出されなくなる不吐出状態となり、前述と同様に、印字に対する信頼性を低下させていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人は、上記の問題点を解決するために、次のようなインクジェットヘッドを既に提案している。すなわち、インクを吐出する複数のインクノズルと、このインクノズルの各々に連通している複数のインク室と、この各インク室にインクを供給するインク供給路と、インク室を形成している周壁に形成され、弾性変位可能な振動板と、振動板に対して隙間を設けて配置された対向電極とを備え、対向電極と振動板との間で充放電を行うことにより、インクノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、対向電極を主電極と補助電極とから構成し、主電極は振動板との間で充放電を行うことによりインクノズルからインク滴を吐出させ、補助電極は振動板との間で充放電を行うことにより例えば次のような動作を得ている。
▲1▼吐出不良を防止するためにインクノズルのメニスカスを振動させる。
▲2▼主電極と同時に駆動させて吐出量を変える。
▲3▼インク吐出後のインク柱の後端を積極的に切って、余剰インク滴(サテライト)の生成を防止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように対向電極を主電極と補助電極とから構成した場合には、主電極の形状と補助電極の形状とが異なり、主電極と共通電極とで構成される回路の時定数と、補助電極と共通電極とで構成される回路の時定数とが異なっている。このため、主電極による駆動と補助電極による駆動とで、動作に時間差が生じるため、特に、上記の▲2▼,▲3▼で狙う作用・効果が不充分となる場合があった。この点について更に詳細に説明する。
【0007】
図33は上記にて提案されているインクジェットヘッドの対向電極の平面図であり、図34はその充電割合(時定数)を示した特性図である。共通の補助電極の数が多くなると、補助電極の抵抗が増加し、その結果、時定数が主電極と大きく異なってくる。ヘッド駆動(充放電)時の時定数τは、インクジェットヘッドに搭載された静電アクチュエータの静電容量Cと、対向電極の主としてリード部の抵抗Rとの積によって決まる。即ち、τ=C×Rで表される。この時定数τの意味するところは、充放電時の静電アクチュエータへの電荷の充電の様子(カーブ)を代表する特性値である。また、この時定数τは静電アクチュエータの動作時間の遅れを代表する特性値でもある。更に、図33に示されるように、静電アクチュエータが主電極10と第1の補助電極101とから構成される場合のそれぞれのアクチュエータの時定数は次のとおりとなる。
【0008】
主電極に係る回路の時定数 τ1=R1×C1
補助電極に係る回路の時定数 τ2=R2×C2
ここで、R1,R2はそれぞれ主電極10,第1の補助電極101のリード部10b,101bの抵抗値であり、C1,C2は同様にそれぞれ主電極10、第1の補助電極101の静電容量を示している。更に、第1の補助電極101の静電容量C2は補助アクチュエータ部の静電容量の総和であり、図33の例では次のようになる。
C2=C21+C22+……+C264
【0009】
このため、主電極10に係る回路の時定数と第1の補助電極101に係る回路の時定数は必然的に異なったものとなり、また、補助アクチュエータ間においても充電割合(即ち時定数)が異なったものとなる。図34の例においては、主電極10によるメインアクチュエータの充電割合と、第1の補助電極101による補助アクチュエータ1#,64#の充電割合を示しているが、この3者間において充電割合(時定数)が大きく異なっていることが分かる。
【0010】
静電アクチュエータの吸引力(圧力)は、アクチュエータ(コンデンサ)に蓄えられた(充電された)電荷により決まるので、主電極10と第1の補助電極101との間で充電の遅れがあると、それぞれのアクチュエータ間で吸引力に差が生じてしまう。このため、上述のように上記▲2▼,▲3▼の制御を適切に行うことができなかった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、対向電極を複数の電極から構成したとき電極間の動作遅れによる影響をなくして高精度な印字制御を可能にしたインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明に係るインクジェットヘッドは、インクを吐出する複数のインクノズルと、このインクノズルの各々に連通している複数のインク室と、この各インク室にインクを供給するインク供給路と、前記インク室を形成している周壁に形成され、弾性変位可能な振動板と、振動板に対して隙間を設けて配置された対向電極とを備え、振動板を共通電極として構成し、対向電極と振動板との間で充放電を行うことにより、インクノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、対向電極は、印字パターンに応じて選択的に充放電される主電極と、該主電極の長さ方向に隣接して配置された1又は複数の補助電極とからなり、前記対向電極は複数並列に配置されており、各対向電極の補助電極は他の対向電極の対応する補助電極と電気的に接続されており、そして、前記対向電極の各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数は、インク流路の固有振動周期に対して十分小さいものである。したがって、各回路の時定数の差も小さなものとなり、適切な制御タイミングが容易に得られ、また、補助電極によって形成される補助アクチュエータ間の動作遅れも小さくなり、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなる。例えば主電極と補助電極とを同時に駆動して、主電極のみの駆動による場合に比べて吐出されるインク滴量を多くする制御(印字濃度の多段階制御)を行う場合、或いは、主電極を駆動した所定時間後に補助電極を駆動して、吐出されたインク柱の後端を切って余剰インク滴の生成を防止する制御を行う場合には、回路時定数の差が小さいから、その制御タイミングが適切なものとなり、高精度な印字制御を行うことができる。このため、ノズル目詰まり状態や異常吐出による印字の不具合が避けられる。
【0013】
(2)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、上記の各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数が、インク流路の固有振動周期に対して1/25以下である。このように、各回路の時定数をインク流路の固有振動周期に対して規定したことにより、両電極による時定数の差が確実に所定の範囲に収まり、適切な制御タイミングが容易に得られ、高精度な印字制御を行うことができる。
【0014】
(3)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、上記の各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数の差は、インク流路の固有振動周期に対して十分小さい。このため、適切な制御タイミングが容易に得られ、高精度な印字制御を行うことができる。
【0015】
(4)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、上記の各電極と前記共通電極とで構成される回路の各時定数の差は、インク流路の固有振動周期の1/75以下である。各時定数の差をインク流路の固有振動周期の1/75以下に規定したことにより、その差が厳格に管理され、適切な制御タイミングが容易に得られ、高精度な印字制御を行うことができる。
【0016】
(5)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、インクを吐出する複数のインクノズルと、このインクノズルの各々に連通している複数のインク室と、この各インク室にインクを供給するインク供給路と、インク室を形成している周壁に形成され、弾性変位可能な振動板と、振動板に対して隙間を設けて配置された対向電極とを備え、振動板を共通電極として構成し、対向電極と振動板との間で充放電を行うことにより、インクノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、対向電極は、印字パターンに応じて選択的に充放電される主電極と、該主電極の長さ方向に隣接して配置された1又は複数の補助電極とからなり、前記対向電極は複数並列に配置されており、各対向電極の補助電極は他の対向電極の対応する補助電極と電気的に接続されており、そして、前記対向電極の各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数は、最適駆動パルス幅に対して1/10以下である。各回路の時定数を最適駆動パルス幅に対して1/10以下と規定したことにより、その時定数の差もまた小さくなる。
【0017】
(6)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、上記の各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数の差は、最適駆動パルス幅に対して1/30以下である。各回路の時定数の差を最適駆動パルス幅に対して1/30以下と規定したことにより、その時定数の差を確実に管理することができる。
【0018】
(7)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、上記の各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数の差が0.4μsec以下である。各回路の時定数の差を0.4μsec以下と定量的に規定するようにしたので、時定数の差を確実に管理することができる。
【0019】
(8)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、補助電極は前記インクノズル側に所定数の振動板に共通して対向するように設けられ、所定数の主電極と補助電極とをユニットとし、ユニットを並列配置したものである。補助電極を並列に分割してその容量を小さくすることにより補助電極の時定数が大きくならないようにし、主電極に係る回路の時定数と補助電極に係る回路の時定数の差が小さくなるようにしている。また、補助電極が振動板に共通して設けられているので、インクノズルの個数の増加してもそれに伴って補助電極への配線が増加するという事態が避けられ、インクジェットヘッドの配線数の増加や回路とインクジェットヘッドとを結線する配線数の増加を伴わずして上述の動作が得られる。
【0020】
(9)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、補助電極は、インクノズル側に振動板に共通して対向するように設けられた第1の補助電極と、主電極と第1の補助電極との間に振動板に共通して設けられた1又は複数の第2の補助電極とを備えたものである。補助電極を直列に分割してその静電容量を小さくすることにより補助電極の時定数が大きくならないようにし、主電極に係る回路の時定数と補助電極に係る回路の時定数との差が小さくなるようにしている。
【0021】
(10)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、補助電極は、インクノズル側に所定数の振動板に共通して対向するように設けられた第1の補助電極と、主電極と第1の補助電極との間に所定数の振動板に共通して設けられた1又は複数の第2の補助電極とを備え、主電極及び補助電極をユニットとし、このユニットを並列配置したものである。補助電極を並列に且つ直列に分割して、その静電容量を小さくすることにより補助電極に係る回路の時定数が大きくならないようにし、主電極に係る回路の時定数と補助電極に係る回路の時定数との差が小さくなるようにしている。
【0022】
(11)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、前記のユニットが隣接する2組のユニットがその境界線を基準として対称となるように配置されてなるものである。このように2組のユニットを対称に並設したことにより、2組のユニットの主電極間に補助電極が介在しないことから、製造の際には同一ピッチの主電極のパターン群を生成すれば良いので製造が容易なものとなる。
【0023】
(12)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、少なくとも補助電極のリード部は金属から構成され、補助電極に係る回路の時定数が小さくなるようにしている。
(13)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、主電極及び補助電極のリード部は金属から構成され、主電極に係る回路の時定数及び補助電極の係る回路の時定数の双方が小さくなるようにしている。
(14)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、金属がクロム又はチタンの膜の上に形成された金である。金が基板に安定して取り付けられ、剥がれるおそれがなく長期間の使用に耐えられる。
(15)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、金属がアルミニウムである。アルミニウムが基板に安定して取り付けられ、剥がれるおそれがなく長期間の使用に耐えられる。
(16)また、本発明に係るインクジェットヘッドは、主電極及び補助電極において振動板と対向する部分がITOから構成されおり、このため、絶縁破壊や振動板との貼り付きが生じにくくなっている。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
本発明においては、上述のように、主電極に係る回路の時定数τ1及び補助電極に係る回路の時定数τ2とその差Δτとを、インク流路の固有振動数の周期又は最適駆動パルス幅との関連でそれぞれ定義しているが、ここで、その詳細を実施形態1として説明する。
【0025】
(a)インク流路の固有振動周期(固有振動数)と振動板の駆動速度の関係について:
まず、アクチュエータが主電極からなる基本的な構成の静電アクチュエータ(補助電極がない)を利用したインクジェットヘッドの駆動に必要な標記の条件について説明する。インクジェットヘッドのインク流路は、流路を構成するインク室内のインクのイナータンス(質量成分)と、振動板及び流路壁とインクの圧縮によるコンプライアンス(バネ成分)によって振動系を構成している。また、静電アクチュエータは、振動板と、この振動板に対向する対向電極とから構成されている。
【0026】
上記の構成のインクジェットヘッドは、このインク流路の中のインクを静電アクチュエータにより振動させ、タイミング良く振動板を駆動して、インク滴を吐出させるが、振動板の駆動は、静電アクチュエータへ駆動パルスを印加して充電と放電を行うことにより行われる。これらの駆動の過程は、更に詳細には、次のとおりである。
【0027】
静電アクチュエータの充電により振動板が対向電極側にへ吸引されると、インク流路の振動系が応答する。そして、インク流路の振動系の固有振動数に対応した速度でインク室内のインクが振動を開始する。インク室内の圧力が最大となった時に、静電アクチュエータに充電された電荷を放電すると、静電アクチュエータの放電により振動板は対向電極から離脱可能となる。振動板の対向電極からの離脱とそれに続くインク滴の吐出は、吸引時と同じくインク流路の振動系の固有振動数に対応した応答速度で行われる。
【0028】
このようにして振動板の駆動に際して、振動板の駆動(振動)速度は、インク流路の振動系の固有振動数に対応した応答速度によって決まる。従って、振動板の駆動をインク流路の振動系に応答させて駆動させるためには、静電アクチュエータへの充電と放電の速度(即ち、時定数τ)は、これらインク流路の振動系の固有振動数によって決まる応答速度(即ち、固有振動周期T0)よりも十分に速く行われる(小さい値である)必要がある。実際に、実験で確認した例では、インク流路の固有振動周期T0は30μsec(固有振動数で33kHz)で、充電の速度を代表する時定数τは、中心値で0.6μsec、抵抗値のばらつきにより出現する最大値で1.2μsecであった。この時のインク吐出時のインクの吐出量やインクの射出速度は、十分な値が確保されていて、時定数τの変動の影響は現れていなかった。これらの場合では、時定数τはインク流路の固有振動周期T0の1/25以下となっていて、上記のインク流路の固有振動周期T0よりも静電アクチュエータへの充放電の時定数τが十分小さくなくてはいけないという条件を満たしている。
【0029】
上記より、インク流路の固有振動周期(振動数)と振動板の駆動速度の関係として必要な条件を更に具体的に記述すると次のとおりである。
▲1▼インク流路の固有振動周期(振動数)T0に対して、静電アクチュエータの時定数τは十分に小さい。
T0 ≫ τ
▲2▼また、少なくとも静電アクチュエータの時定数τはインクの固有振動周期T0の1/25以下。
1/25 T0 ≧ τ
【0030】
(b)最適駆動パルス幅とインク流路の固有振動周期(振動数)との関係:
静電アクチュエータを駆動し、インク滴をインクノズルから吐出する形態のインクジェットヘッドにおける駆動パルス幅と、インク流路の固有振動周期(振動数)との関係について以下に説明する。
【0031】
インクジェットヘッドを駆動してインク滴を吐出するために静電アクチュエータへ印加する駆動パルスの波形は前述したインクジェットヘッドの駆動の過程に従って構成されている。即ち、駆動波形は、
▲1▼充電して振動板を対向電極側に吸引する過程と、
▲2▼インク流路内のインクの圧力がインク流路の応答により最大となる直前まで電荷を保持する過程と、
▲3▼放電して振動板が対向電極から離脱可能とする過程と
から構成されている。
【0032】
駆動パルスとして駆動波形を捕らえた場合には、最適駆動パルス幅Pwsは上述の駆動波形の構成の内、▲1▼と▲2▼の過程の時間に相当する。ここで、最適駆動パルス幅Pwsは、駆動パルス幅Pwの内最もインク滴の吐出量が増えるPwを言う。次に更に詳細に説明する。
【0033】
上述のインクジェットヘッド駆動の過程で説明したように、最適駆動パルス幅Pwsは振動板を吸引して対向電極に当接するまでの時間に、振動板当接時のインク流路の固有振動周期の1/4の時間を加算した時間以下の時間となる。振動板が対向電極に当接するまでの時間はインク流路の固有振動周期の1/4以下の時間である。ここで、振動板待機時のインク流路の固有振動周期は、振動板当接時のインク流路の固有振動数とは異なる。つまり、前者は振動板を含めたインク流路の振動系であるのに対して、後者は振動板をコンプライアンス(バネ成分)として含まない別の振動系の固有振動周期となる。実施した例では、振動板当接時のインク流路の固有振動数は133kHz(固有周期で7.5μsec)であった。振動板当接時の固有振動周期は振動板待機時の振動周期に比較して大変短い時間となる。従って、最適駆動パルス幅Pwsはその殆どが振動板を吸引して当接するまでの時間になる。これは、インク流路の応答時間即ちインク流路の固有振動周期に関係した時間であることが分かる。
【0034】
適正駆動パルス幅Pwsは実施した例では12μsecであった。目安として、固有振動周期と比較すると、これは、インク流路の固有振動周期T0の約1/2.5の時間になる。これより、静電アクチュエータの時定数τが、(比較する基準としての)最適駆動パルスPwsの1/30以下でなくてはいけないとする場合には、(比較する対象をインク流路の固有振動周期とすると、)同じく、その時定数τは固有振動周期の1/75以下でなくてはいけないことになる。同様にして、静電アクチュエータの時定数τが、固有振動周期(振動数の)1/25以下でなくてはいけないとすると、同じく、τは最適駆動パルス幅Pwsの1/10以下でなくてはいけないことになる。このように時定数τは、固有振動周期(振動数)又は最適駆動パルス幅Pwsとの関連で定義付けられる。そして、上述のように、固有振動周期T0(振動数)及び最適駆動パルス幅Pwsはいずれもインクジェットヘッドのインク流路に固有のものである。
【0035】
(c)静電アクチュエータの時定数について:
1つの流路を駆動する静電アクチュエータの対向電極を主電極と補助電極とに分割した本発明においては、上記に説明した、静電アクチュエータの時定数τとインク流路の固有振動周期T0と最適駆動パルス幅Pwsとの関係について必要となる条件を整理すると次のとおりである。
(1)主電極及び補助電極の各電極の時定数τ1及びτ2は、インク流路の固有振動周期T0に対して共に十分小さい。
(2)主電極及び補助電極の各電極の時定数τ1及びτ2は、インク流路の固有振動周期T0に対して共に1/25以下。
(3)主電極及び補助電極の各電極の時定数τ1及びτ2は、適正駆動パルス幅Pwsに対してともに1/10以下。
(4)主電極と補助電極の各時定数の差Δτは、インク流路の固有振動周期 T0に対して、十分小さい。
(5)主電極と補助電極の各時定数の差Δτは、インク流路の固有振動周期の1/75以下。
(6)主電極と補助電極の各時定数の差Δτは、インク流路の最適駆動パルス幅Pwsの1/30以下。
(7)主電極と補助電極の各時定数の差Δτは、0.4μsec以下。
なお、上記(1)〜(3)においては主電極及び補助電極の各電極の時定数τ1,τ2それ自体について着目しているが、時定数を小さくすることで、結果的に両者の時定数の差Δτも所定の範囲内に収まる。また、上記(7)の0.4μsec以下の根拠については後述の表1に示される。
【0036】
次の表1は時定数の差異と計算結果とその影響の調査結果を示したものである。
【0037】
【表1】
【0038】
上記の構成No.において、▲1▼は対向電極はITOのみ(図33に相当)、▲2▼は補助電極のリード部を金の薄膜で構成した例、▲3▼は主電極及び補助電極のリード部を金の薄膜で構成した例である。また、このとき使用したインクジェットヘッドの対向電極の平面形状は後述の図1に示されるとおりであり、固有振動周期T0:30μsec(固有振動数:33KHz)、最適駆動パルス幅Pws:12μsecである。
【0039】
また、表2に表1の調査結果を各時定数と上記インクジェットヘッドの固有振動周期T0と最適駆動パルスPwsとを比較した結果を示す。Δτと影響の有無の関係について調査した結果を示している。
【0040】
【表2】
【0041】
次に、上記(1)〜(7)の時定数τ1,τ2又は差Δτを得るための対向電極の構成について説明する。
【0042】
(a)主極及び補助電極に係る回路の時定数τ1,τ2を小さくする。
両電極のリード部を金属材料で構成する。リード部を例えば金の薄膜/クロム(若しくはチタン)の薄膜、又はアルミニウムの薄膜により構成することで、リード部の抵抗値を小さくする。また、リード部の厚みを厚くしたり、その幅を広くすることで抵抗値を小さくする。
(b)補助電極の時定数τ2を小さくする。
この場合には、抵抗値R及び静電容量Cをいずれか又は双方を小さくすることで対応する。抵抗値Rを小さくするには、補助電極のリード部を上記(a)の場合と同様にして小さくする。また、静電容量Cを小さくするには、補助電極を並列に分割したり、補助電極を直列に分割したり、或いはその双方を併用したりすることで対応する。
【0043】
図1(A)(B)は対向電極(その1)の平面図及びそのB−B断面図である。この例では、主電極10の端子部10a及びリード部10bについては金属材料例えばクロム(又はチタン)をスパッタリングしてクロム(又はチタン)の薄膜105を形成し、その上に金(Au)をスパッタリングして金の薄膜106を形成することにより作製される。主電極10の対向電極部10cについては、ITOをスパッタリングしてITOの薄膜107を形成することにより作製される。そして、補助電極101についても、その端子部101a及びリード部101bをクロム(又はチタン)をスパッタリングしてクロム(チタン)の薄膜105を形成し(例えば0.03μm程度)、その上に金(Au)をスパッタリングして金の薄膜106を形成する(例えば0.1μm程度)ことで作製される。そして、補助電極101の対向電極部101cについてはITOをスパッタリングしてITOの薄膜107を形成することにより作製される。
【0044】
このように主電極10の端子部10a及びリード部10bとその端子部101a及びリード部101bとが金属材料から形成されることで、それらの抵抗値Rが小さくなる。このことにより、主電極10及び補助電極101に係る回路の各時定数τ1,τ2が小さくなる。その結果、差Δτも小さくなっている。
【0045】
なお、上記のクロム(チタン)及び金の薄膜に代えてアルミニウムの薄膜を設けても良い(この点は後述の例においても同様である。)。また、上記の例においては、ガラス基板4と金の薄膜106との間にクロム(又はチタン)の薄膜105を介在させているが、これにより、金の薄膜106がガラス基板4から剥がれ難くなっている。また、対向電極部10c,101cがITOの薄膜107から構成されているので、絶縁破壊や振動板51との貼り付きが生じ難くなっている。また、抵抗値Rが小さくなっているので、主電極10及び補助電極101の配線ピッチを微細化することが可能になっている。また、上記の例においては、補助電極101のリード部101bをインク室(図6参照)の長さ方向の部位及びそれに直交する方向の部位を金属の薄膜で形成したが、どちらか一方のみであっても構わない(このことは後述の図2〜図5の例においても同様である)。但し、リード部101bを全て金属の薄膜で形成することは、その分だけ抵抗値Rが小さくなり、配線ピッチの微細化によってより多くの補助電極101を形成することができる、或いは、透明度が増加すると抵抗値Rが増加する特性をもっているITOの透明度を更に増加させることができる、という利点につながる。また、補助電極101に係る回路の時定数を小さくするという観点から、リード部101bについてのみ金属膜から構成して、リード部10bについてはITOにより構成してもよい。
【0046】
図2は対向電極(その2)の平面図である。この例では、第1の補助電極101を並列に分割して、第1の補助電極101の面積を小さくすることにより静電容量Cを小さくしている。更に、それに加えて主電極10の端子部10a及びリード部10bと第1の補助電極101の端子部101a及びリード部101bをクロムの薄膜105及びその上に形成された金の薄膜106により形成して抵抗値Rを小さくすることで、主電極10及び第1の補助電極101に係る回路の各時定数τ1,τ2を小さくしている。その結果、差Δτも小さくなっている。
【0047】
図3は対向電極(その3)の平面図である。この例では、補助電極を直列に分割して、第1の補助電極101及び第2の補助電極102を形成して、各補助電極101,102の面積を小さくすることにより静電容量Cを小さくしている。更に、上記と同様にして抵抗値Rを小さくしている。その結果、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極の各電極に係る回路の時定数τ1,τ2,τ3がそれぞれ小さくなり、その差Δτも小さくなっている。
【0048】
図4は対向電極(その4)の平面図である。この例では、補助電極を並列に、且つ直列に分割して、第1の補助電極101及び第2の補助電極102の面積を小さくすることにより静電容量Cを小さくしている。更に、上記と同様にして抵抗値を小さくしている。その結果、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102の各電極に係に係る回路の各時定数τ1,τ2,τ3が小さくなり、その差Δτも小さくなっている。
【0049】
図5は対向電極(その5)の平面図である。この例では、図2の対向電極を配置する際に、隣接するユニットの境界線108を中心として線対称になるように配置した例である。この図5の配置は上述の図4にも同様に適用される。対向電極をこのように配置することで、2組のユニットの主電極10群がが並設されるとその間に第1の補助電極101が介在せず、同一のピッチのパターンが並ぶことになるので製造し易いという利点がある。この図5の対向電極のパターンは後述の実施形態2〜5においても同様に適用されるものとする。
【0050】
次に、上述の対向電極(主電極10,第1の補助電極101,第2の補助電極102)を適用したインクジェッドについて説明するが、いずれの実施形態においても、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102は上記の本発明の時定数τ1,τ2,τ3,Δτに関する要件を満たしたものである。
【0051】
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。図7はその内のガラス基板の平面図である。図8は図6のインクジェットヘッドの部分断面図である。
【0052】
インクジェッドヘッド1は、これらの図に示されるように、3枚の基板2,3,4を重ねて接合した積層構造になっており、中間のシリコン基板2を挟んで、その上側に同じくシリコン製のノズルプレート3、下側にシリコンと熱膨張率が近いホウ珪酸ガラス基板4が積層されている。シリコン基板2には、その表面からエッチングを施すことにより、独立した例えば4個のインク室(圧力発生室)5を構成することとなる凹部5a、1つの共通インク室(リザーバ)6を構成することとなる凹部6aと、この共通インク室6から各インク室5にインクを供給するインク供給路(オリフィス)7を構成することとなる凹部7aが形成されている。これらの凹部5a,6a及び7aがノズルプレート3によって塞がれることにより、インク室5、共通インク室6及びインク供給路7がそれぞれ区画形成される。
【0053】
ノズルプレート3には、各インク室5の先端側の部分に対応する位置に、インクノズル11が形成されており、これらが各インク室5に連通している。また、ガラス基板4の内、共通インク室6が位置している部分には、これに連通するインク供給口12が形成されている。インクは、外部の図示しないインクタンクから、インク供給口12を通って共通インク室6に供給される。共通インク室6に供給されたインクは、各インク供給路7を通って、独立した各インク室5にそれぞれ供給される。
【0054】
各インク室5は、その底壁51が薄肉に構成されており、底壁51の面に直交する方向、すなわち図6において上下方向に弾性変位可能な振動板として機能するように設定されている。したがって、この底壁51の部分を以後の説明においては都合上、振動板と称して説明することもある。
【0055】
シリコン基板2の下側に位置しているガラス基板4においては、その上面であるシリコン基板2との接合面には、シリコン基板2の各インク室5に対応した位置に、浅く(例えば0.3μm程度)エッチングされた凹部9が形成されている。したがって、各インク室5の底壁51は、非常に僅かの隙間Gを隔ててガラス基板4の凹部表面91と対向している。そして、ガラス基板4の凹部表面91には、各インク室5の底壁51に対向するように、主電極10及び第1の補助電極101からなる対向電極が形成されている。
【0056】
この第1の補助電極101は、インクノズル11側に主電極10が対向する振動板51の部分とは独立して充放電が可能なように形成され、且つ、独立した4個の振動板51に亘って対向した1つの電極から形成されている。第1の補助電極101を複数の振動板51に亘って1つの電極により形成した場合には、電極の個数がノズル数の増加に伴って増加することが無く、電極の配線のために必要となるインクジェットヘッド1の面積を増やさなくて良いため、インクジェットヘッド1を大型化せずに済む。また、補助電極101が複数の振動板51に亘って電気的に接続されていることになるから、後述の補助的な動作(例えばメニスカスの振動)をさせる場合には、各インク室5に対して共通に制御でき、その制御が簡単なものとなる。
【0057】
また、主電極10及び第1の補助電極101は、上述ように示されるように、その各部に対応した電極材料が用いられる。この例では、図1の例と同様に、主電極10の端子部10a及びリード部10bについてはクロム(又はチタン)の薄膜105を形成して、その上に金の薄膜106を形成することにより作製される。主電極10の対向電極部10cについてはITOの薄膜107を形成することにより作製される。また、補助電極101の端子部101a及びリード部101bについてはクロム(チタン)の薄膜105を形成し、その上に金の薄膜106を形成することで作製される。そして、補助電極101の対向電極部101cについてはITOの薄膜107を形成することにより作製される。
【0058】
このように主電極10の端子部10a及びリード部10bとその端子部101a及びリード部101bとが金属材料から形成されることで、それらの抵抗値Rが小さくなる。このことにより、主電極10及び補助電極101に係る回路の各時定数τ1,τ2が小さくなる。その結果、差Δτも小さくなっている。
【0059】
なお、第1の補助電極101は複数の振動板51に共通して形成されるが、回路時定数を小さくするという観点からその個数は自ずと制限されることとなる。このため、例えば図7の主電極10及び第1の補助電極101のパターンが複数組配置されることになり、上述の図2又は図5に示されるパターンになる。このことは後述の実施形態3,4においても同様である。
【0060】
シリコン基板2とガラス基板4との接合については、インクノズル11側については両者が直接接合され、その反対側においては、両者が例えば接着剤等の熱硬化性の樹脂を介して接合される。シリコン基板2の端部は主電極10及び第1の補助電極101のリード部10b,101b上に位置しており、両者が上記の樹脂を介して接合されることで、その樹脂は、シリコン基板2の裏面側とガラス基板4の凹部表面91とで形成される空間を封止することになり、気密封止部23を形成することとなる。このように気密封止部23に樹脂が用いられた場合には未硬化時の粘度を低くし易いので、封止時には狭いギャップ内へ毛細管現象で浸入させ、硬化することにより気密封止が確保されるという利点がある。なお、気密封止部23には低融点のガラス等の無機材料を用いても良い。
【0061】
ここで、各インク室5の底壁(振動板)51は、シリコン基板2は導電性があるので各インク室側の共通電極として機能する。このため、底壁を共通電極と称することもある。また、各インク室5の底壁51のガラス基板4に対向した表面はシリコンの酸化膜からなる絶縁層15により覆われている。このように、インク室5の底壁51の表面に形成された絶縁層15と隙間Gとを挟んで、各インク室5の底壁51すなわち振動板(共通電極)と、各主電極10及び第1の補助電極101とが対向している。
【0062】
これらの主電極10,第1の補助電極101と振動板51との間に駆動電圧を印加するための電圧制御回路部21は、図8に示されるように、図示していない外部からの印字信号に応じて、これらの主電極10,補助電極110と振動板51との間に駆動電圧を印加して充放電を行わせる。電圧制御回路部21の一方の出力は個々の主電極10及び第1の補助電極101に接続され、他方の出力はシリコン基板2に形成された共通電極端子22に接続されている。また、より低い電気抵抗で振動板(共通電極)51に駆動電圧を供給する必要がある場合には、例えば、シリコン基板2の一方の面に金等の導電性材料の薄膜を蒸着やスパッタリングで形成すればよい。本実施形態では、シリコン基板2の流路の形成面側に導電膜を形成することにより共通電極端子22を形成している。
【0063】
図9は本実施形態のインクジェットヘッド1の部分断面図(後述の図13のインク吐出1参照)である。図9は主電極10と振動板(共通電極)51との間に駆動電圧を印加したときの振動板51の動作を示している。上述のように構成されたインクジェットヘッド1においては、電圧制御回路部21からの駆動電圧が主電極10と振動板(共通電極)51との間に印加されると、両電極10,51間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板51は主電極10側へ撓み、インク室5の容積が拡大する。次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極10,51間の電荷を放電すると、振動板51はその弾性復帰力によって復帰して、インク室5の容積が急激に収縮する。この時に発生するインク圧力により、インク室5を満たしていたインクの一部が、このインク室5に連通しているインクノズル11からインク滴として吐出する。
【0064】
図10は本実施形態のインクジェットヘッド1の部分断面図(後述の図13のメニスカス振動参照)である。図10は第1の補助電極101と振動板(共通電極)51の間に駆動電圧を印加した時の振動板51の動作を示している。電圧制御回路部21からの駆動電圧が第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に印加されると、両電極101,51間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板51は第1の補助電極101側へ撓み、インク室5の容積が拡大すると共に、インクノズル11のインクと空気の境目であるメニスカスはインク室5側に引き込まれる。次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極101,51間の電荷を放電すると、振動板51はその弾性復帰力によって復帰して、インク室5の容積が急激に収縮する。この時発生するインク圧力は前述の主電極10の充放電により発生した圧力より小さいため(第1の補助電極101の面積は主電極10に比して小さい)、インク滴を吐出するには至らず、メニスカスは振動して減衰し復元する。第1の補助電極101と振動板51との間で上記の充放電を繰り返すことによって、メニスカスを継続的に振動させ、インクノズル11の近傍のインクとインク室5を満たすインクを撹拌させることができる。
【0065】
図11は本実施形態のインクジェットヘッド1の部分断面図(後述の図13のインク吐出量2参照)である。図11は第1の補助電極101及び主電極10の両方の対向電極と振動板51との間に駆動電圧を印加した時の振動板51の動作を示している。第1の補助電極101及び主電極10の両方の対向電極と振動板51との間に電圧制御回路部21からの駆動電圧が同時に印加されると、主電極10,第1の補助電極101と振動板51との間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板51は第1の補助電極101及び主電極10側へ撓み、インク室5の容積が拡大する。すなわち、振動板51の全面が撓んでインク室5の容積は最も拡大した状態になる。次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極10,101,51間の電荷を放電すると、振動板51の全面がその弾性復帰力によって復帰し、インク室5の容積が急激に収縮する。この時発生するインク圧力により、インク室5を満たすインクの一部が、このインク室5に連通しているインクノズル11からインク滴として吐出する。このときのインク圧力は最も大きな圧力を発生することが可能となるため、主電極10のみで振動板51を駆動してインク滴を吐出する場合より多い量のインク滴を吐出することが可能となる。すなわち、ここでは、主電極10と第1の補助電極101とが一体化された状態での動作が得られ、上記のように、相対的に多い量のインク滴が吐出される。
【0066】
図12は図8の電圧制御回路部21の詳細を示したブロック図である。インクジェットヘッドの電圧制御回路部21はインクジェットヘッド制御部200を有する。このインクジェットヘッド制御部200はCPU201を中心に構成されている。すなわち、CPU201には外部装置203からバスを介して印刷情報が供給される。CPU201には、内部バスを介してROM202a、RAM202b及びキャラクタジェネレータ204が接続されており、RAM202b内の記憶領域を作業領域として用いて、ROM202a内に格納されている制御プログラムを実行して、キャラクタージェネレータ204から発生するキャラクター情報に基づいてインクジェットヘッド1の駆動用の制御信号を生成する。制御信号は論理ゲートアレイ205及び駆動パルス発生回路206を介して、印刷情報に対応した駆動制御信号となって、コネクタ207を経由して、ヘッド基板208に形成されたヘッドドライバIC209に供給される。このヘッドドライバIC209は、主電極10を駆動するための主電極駆動制御部209aと、第1の補助電極101を駆動するための補助電極駆動制御部209bとから構成される。
【0067】
ヘッドドライバIC209では、供給された駆動制御信号及び電源回路210から供給される駆動電圧Vp及び論理ゲートアレー205から伝送された信号に基づいて、インクジェットヘッド1の内、駆動すべきインクノズル11に対応するインク室5の振動板(共通電極)51と、駆動すべき主電極10,第1の補助電極101とに駆動パルスPwを所定のタイミングで印加する。すなわち、ヘッドドライバIC209では駆動パルス発生回路206で出力された駆動パルスPw又はグランドレベルを適時選択して何れかを電極10,101,51に低インピーダンスで出力する。この結果、例えば共通電極端子22か主電極10かのどちらかに駆動パルスPwが印加されると、主電極10と振動板(共通電極)51との間に電位差を生じ、対応するインクノズル11からインク滴が吐出される。また、同様にして、共通電極端子22か第1の補助電極101かのどちらかに駆動パルスPwが印加されると、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に電位差を生じ、その第1の補助電極101に対応したインクノズル11ではメニスカスの振動又はメニスカスのインク室5への引き込みが行われる。
【0068】
ここで、主電極10に印加する駆動パルス幅Pwと第1の補助電極101に印加する駆動パルス幅Pwは同じ駆動パルス幅でも良いし、異なる電圧と通電時間からなる駆動波形であっても良い。主電極10に印加する駆動パルスと第1の補助電極101に印加する駆動パルスが異なる場合には、駆動パルス発生回路206にてそれぞれ異なる波形を形成し、何れの波形をどの対向電極(主電極10,第1の補助電極101)に印加するかは、論理ゲートアレイ205にて出力される信号に従ってヘッドドライバIC209にて選択する。
【0069】
また、この電圧制御回路部21は、例えば、長時間不使用状態であったインクノズル11が存在することを駆動制御装置にて監視し、そのようなものが存在した場合には、インクジェットヘッド1の補助電極101を駆動してメニスカスの振動を行うことにより、インク吐出を正常に行わせるようにすることが可能となる。
【0070】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド1の電圧制御回路部21においては、インクジェットヘッド1の駆動状況に基づき、インクジェットヘッド1の主電極10及び第1の補助電極101への駆動パルスPwを選択して印加するので、長時間不使用状態にあったノズルに対しても確実にインクノズル11でのインクの物性の変化に起因したインク吐出特性の変動を補償して、常に安定したインク吐出特性を得ることができる。
【0071】
ところで、図12の電圧制御回路部21において、ヘッド基板208に設けられたサーミスター(温度検出回路)25の出力はコネクタ207を介して温度検出回路(A/D変換)214に供給され、インクジェットヘッド1の温度補償のために用いられる。また、同様にヘッド基板208に設けられたヘッドランク識別回路(ショートランド3bits)212の出力はコネクタ207を介してランク検出回路213に供給されてヘッドランクが検出されてヘッドランクに対応した制御がなされる。ヘッドランク識別回路212は、インクジェットヘッド1に固有の最適駆動パルス幅Pwsの常温での値に対応する情報が記録されており、インクジェットヘッド1を最適駆動パルス幅Pwsで駆動するために用いられる。
【0072】
最適駆動パルス幅Pwsは更に、温度や、非印刷時間の経過時間等の駆動状況により異なるため、この電圧制御回路部21では、インクジェットヘッド1のばらつきによる最適駆動パルス幅Pwsに対して、温度による補正と加えて経過時間による補正を行い、ヘッド駆動状況に合った最適駆動パルス幅Pws’を設定している。これらヘッド基板上208上に設けられたインクジェットヘッド1の駆動状況に関する情報をヘッドランク検出回路213及び温度検出回路214で検出して、情報をI/Oを介して、CPU201に送信する。CPU201では、ROM201bに予め格納された情報を読み出すと同時のCPU201で計時された経過時間に関する情報をRAM202aから読み出し、前述の各駆動状況に関する情報と比較し、制御条件、即ち各温度と、経過時間における、インクジェットヘッド1の駆動状況に応じた最適駆動パルス幅Pws’を決定する。論路ゲートアレイ205では、最適駆動パルス幅Pws’に関する情報をCPU201から受けて、駆動パルス発生回路206に、最適駆動パルス幅Pwsを発生させるための論理パルスを送信する。駆動パルス発生回路では、最適駆動パルス幅Pws’に相当する駆動電圧波形を生成し、ヘッドドライバIC209へ最適駆動パルス幅Pws’の電圧波形を通電する。
【0073】
次に、本実施形態のインクジェットヘッド1の駆動方法について説明する。図13はインクジェットヘッド1に印加される駆動パルスの例を示すタイミングチャートである。ここでは、主電極10及び第1の補助電極101と振動板51との間に印加される電位は交互に反転するように構成さている。これは静電駆動されるインクジェットヘッドの特性を安定化させるためのものである。但し、本発明においては本実施形態に示した、これらの交互に反転させる駆動波形の組み合わせに制限されるものではなく、電位を交互に反転させなくとも同様な動作が得られる。
【0074】
図13のタイミングチャートにおいては、インクジェットヘッド1の駆動方法を大別して4つの駆動パターンに分けて示している。図13(a)のメニスカスの駆動パターンでは、第1の補助電極101と振動板51との充放電によりインクノズル11のメニスカスを振動させる(図10参照)。同図の波形によればメニスカスは4回振動する。図13(b)のインク吐出1の駆動パターンでは、主電極10と振動板51との充放電によりインク滴を吐出させる(図9参照)。同図の波形ではインク吐出が2回なされる(2個のインク滴で1ドットを形成している)。図13(c)のインク吐出2の駆動パターンでは、主電極10及び第1の補助電極101と振動板51との充放電によりインク滴を吐出させる(図11参照)。振動板51の全面が撓んで駆動されるので、吐出されるインク滴の量がインク吐出1よりも多くなり濃い印刷が可能になっている。また、図13(d)の非駆動のパターンは、主電極10、第1の補助電極101及び振動板51が常に同電位となるようにそれぞれ通電されている(図8の状態参照)。このときインク滴の吐出及びメニスカスの振動は行われない。
【0075】
以上のように本実施形態においては、対向電極を主電極10及び第1の補助電極101から構成し、主電極10と振動板(共通電極)51とで構成される回路の時定数τ1と、第1の補助電極101と(共通電極)51とで構成される回路の時定数τ2とをそれぞれ小さくしてその差Δτが所定の範囲になるように構成したので、上記の吐出モード1及び2、特に主電極10と第1の補助電極101とを同時に駆動する吐出モード2において主電極10による動作と第1の補助電極101による動作とに遅れがなく、同時に駆動されるので適切な印字動作が得られる。また、インク吐出1及び2のように吐出されるインク滴の量を多段階に調整することが可能になっており、印刷濃度を調整することができる。
【0076】
実施形態3.
図14は本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッド1の部分断面図であり(その構成は上記の実施形態2によるものと同一である)、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に駆動電圧を印加した時の振動板51とメニスカスの動作を示している。本実施形態においては、インク滴の吐出後のインク柱の後端を積極的に切って余剰インク滴(サテライト)の生成を防止している。
【0077】
主電極10と振動板51との間に電圧制御回路部21からの駆動電圧が印加されて(図9参照)インク滴の吐出がなされた後に、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に電圧制御回路部21からの駆動電圧が印加されると、上述の場合と同様に、両電極101,51間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板51は第1の補助電極101側へ撓み、インク室5の容積が拡大すると共に、インクノズル11部のインクと空気の境目であるメニスカスはインクノズル11のインク室5側に引き込まれる。次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極101,51間の電荷を放電すると、振動板51はその弾性復帰力によって復帰し、インク室5の容積が急激に収縮する。この時発生するインク圧力は前述の主電極10の充放電により発生した圧力より小さいため、インク滴を吐出するには至らず、メニスカスはインク室5に引き込まれた後、振動して減衰し復元する。
【0078】
以上のように、本実施形態では、主電極10と振動板51との間の充放電によりインク滴を吐出させる主たる動作に続いて、上記のように第1の補助電極101と振動板51との間で充放電を行い、メニスカスをインク室5に引き込むという補助的な動作を行っている。これらの主たる動作と補助的な動作により、主たる動作によりインクノズル11から吐出するインク柱の尾部(後端)を上記の補助的な動作により確実に分離し、インク滴の形成を安定的に行うことができる。これにより、不要なインク滴の形成や、インク滴の飛び散りをなくすることが可能となる。更にこれらの動作により、ノズル面への不要なインク滴の付着による吐出不良とそれによる印刷装置の汚れや印刷不良を無くすることができる。
【0079】
インク吐出の主たる動作と、それに続くインク滴を分離させる補助的動作は、所定の時間の間隔をもって行われる。この主たる動作と補助的な動作の間の時間間隔はそれぞれの電極を駆動する電圧パルスの位相差として予め設定される。この位相差は、インクノズル11及びインク室5(振動板51)からなるインク流路のインクの振動系の固有周期T0に、主電極10に印加する駆動パルス幅Pwsを加えた時間にほぼ等しく設定されるのが好ましい。すなわち、駆動パルスの位相差をT0+Pwsの時間間隔に予め設定してそれぞれ駆動させて動作させることが好ましい。主たる動作を行わせるための駆動パルスを解除してから、1/2固有周期分の時間の後にインクの吐出が行われ、更に1/2固有周期分の時間で、第1の補助電極101と振動板51との距離は吐出時のインク流路内の自由振動によって最も小さくなるため、第1の補助電極101を効率的に静電吸引させて動作させることができる。
【0080】
更に、主たる動作のための駆動パルスを解除してから固有振動周期に相当する時間後には、インクノズル11からメニスカスが最も飛び出す時間に相当するため、この位相差にてメニスカスをインク室5へ引き込ませることが最も重要である。インクノズル11の寸法諸元や振動板の厚みの違いにより、厳密な固有周期がヘッド毎に異なる場合でも、これら駆動パルスの位相差を凡そT0+Pwsに予め一致させておくことにより、補助的な動作では自ずと、厳密なT0+Pwsに一致した時間にて目的とするメニスカスのインク室5への引き込みが実現する。結果として、確実にインクノズル11から吐出するインク柱の尾部(後端)を分離し、安定的なインク滴の形成を行うことができる。
【0081】
なお、図11に示されるように、主電極10及び第1の補助電極101の両方に駆動電圧を同時に印加して両電極を1つの電極として動作させてインク滴を吐出させた場合においても、その主たる動作に続いて前述した補助的な動作を続いて行えば、前述したインクノズル11から吐出するインク柱を分離して安定的にインク滴を形成することができる。そして、その場合には、先の図9にて説明した動作にて吐出するインクの量とは異なる量のインク滴を形成することが可能であり、インク滴の量を駆動パターンにより変えることが可能となる。その結果、形成されるドットの大きさを駆動パターンにより変えて印刷結果の濃さを変えたり、表現力が豊かな印刷を行うことが可能となる。
【0082】
次に、本実施形態のインクジェットヘッド1の駆動方法について説明する。図15は本実施形態に係るインクジェットヘッド1の駆動モードの例を示したタイミングチャートである。図15の駆動パルスは上述の図12の電圧制御回路部21により生成されるものとする。
【0083】
ここで、駆動パルスは上述の形態と同様にして生成されるが、第1の補助電極101を駆動させる駆動波形の放電時間をより長く設定して(パルスの立ち下がり時間が長くなるように設定)、主電極10を駆動させる駆動波形と異ならせており、メニスカス引き込み後のメニスカスの振動を速やかに減衰させてメニスカスを待機位置に復元させて、次の主電極駆動に備えるようにしている。このようにすることで、インクジェットヘッド1を高い駆動周波数で駆動させることができ、印字スピードの高速化を図ることができる。
【0084】
図15のタイミングチャートにおいては、駆動モードにはインク滴吐出とインク滴非吐出の2種類の駆動モードの例が示されている。図15(a)のインク滴吐出の駆動モードでは、主電極10及び第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の充放電による2回のインクの吐出動作と、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の充放電による、2回目の吐出インクの分離動作の連続した動作とによりインク滴が形成されて吐出されて、1つの画素が印刷面に印刷される(図11、図14参照)。なお、この例においては、1画素を2個のインク滴により生成するものとしており、そして、2回目のインク吐出のタイミング(1回目のインク液の吐出動作から2回目のインク液の吐出動作までの時間)を、補助電極に101による分離動作のタイミング(2回目のインク液の吐出動作から分離動作までの時間)と同一にしている。このため、1回目に吐出されたインク柱の後端は、2回目に吐出される際の動作により、第1の補助電極101による場合と同様に切られてインク滴が分離される。このことは後述の実施形態においても同様である。
【0085】
また、図15(b)のインク滴非吐出の駆動モードにおいては、主電極10、第1の補助電極101及び振動板(共通電極)51を同電位にしたインク非吐出モードと、インク滴を吐出しない状態で、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の充放電によりメニスカスの振動のみを行うメニスカス振動とがある(図11参照)。このメニスカス振動では、画素は印刷面に印刷されない。しかし、第1の補助電極101の電位が反転されるため、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51の電荷の蓄積を防止することになる。また、非吐出によって粘度が増加したインクノズル11のインクをメニスカスの振動によりインク室5へ拡散し、非吐出による次の吐出不良を防止する。インク滴非吐出の駆動モードをこのような駆動パターンで構成することにより、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51の電荷のリフレッシュとインクノズル11のインクのリフレッシュを行うことができる。図15に示される駆動モードを採用することにより、簡単な回路構成にて、インクジェットヘッドの制御が可能となる。
【0086】
以上のように本実施形態においては、対向電極を主電極10及び第1の補助電極101から構成し、主電極10と振動板(共通電極)51とで構成される回路の時定数τ1と、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51とで構成される回路の時定数τ2とが小さく、その差Δτも小さくなるように構成したので、上記のインク滴吐出の駆動モードのように、主電極10を駆動してインク滴を吐出した後所定時間に、第1の補助電極101を駆動してインク柱の後端を切って余剰インク(サテライト)の生成を防止しようとしたときには、両電極10,101による動作時間の差異が小さいから、その制御のタイミングが容易に得られ、高精度な印字制御が可能になっている。
【0087】
実施形態4.
図16は本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッドの内のガラス基板の平面図であり、図17は同じくインクジェットヘッドの部分断面図である。
【0088】
本実施形態のインクジェッドヘッド1は、上述の図6〜図8のインクジェットヘッドとその基本構成は同じであるが、主電極10と振動板51との間隙Gと第1の補助電極101と振動板51との間隙G2とが異なるように構成されている。このような構成を実現するために、ガラス基板4の凹部9を異なった深さで浅くエッチングし、特に、第1の補助電極101が配置される箇所92のエッチングを浅くしている。
【0089】
図18はインクジェットヘッド1の部分断面図(後述の図21のインク吐出1参照)である。図18は主電極10と振動板51との間に駆動電圧を印加したときの振動板51とメニスカスの動作を示している。このように構成したインクジェットヘッド1においては、電圧制御回路部21からの駆動電圧が主電極10と振動板(共通電極)51との間に印加されると、上述の実施形態2の場合と同様に、両電極10,51間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板51は主電極10の側へ撓み、インク室5の容積が拡大する。次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極10,51間の電荷を放電すると、振動板51はその弾性復帰力によって復帰し、インク室5の容積が急激に収縮する。この時に発生するインク圧力により、インク室5を満たすインクの一部が、このインク室に連通しているインクノズル11からインクがインク柱となって吐出する。吐出後、インクは自らの表面張力によりインク液滴を形成し印刷面へ着弾する。
【0090】
図19はインクジェットヘッド1の部分断面図(後述の図21のメニスカス振動参照)である。図19は第1の補助電極101と振動板51の間に駆動電圧を印加した時の振動板51とメニスカスの動作を示している。第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に電圧制御回路部21からの駆動電圧が両電極101,51間に印加されると、両電極101,51間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板51は第1の補助電極101の側へ撓み、インク室5の容積が拡大すると共に、インクノズル11部のインクと空気の境目であるメニスカスはインクノズル11のインク室5側に引き込まれる。次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極101,51間の電荷を放電すると、振動板51はその弾性復帰力によって復帰し、インク室5の容積が急激に収縮する。この時に発生するインク圧力は前述の主電極10の充放電により発生した圧力より小さいため、インク滴を吐出するには至らず、メニスカスはインク室5に引き込まれた後、振動して減衰し復元する。
【0091】
主電極10と振動板51との間の充放電によりインクを吐出させる主たる動作に続いて、第1の補助電極101と振動板51との間の充放電を行うと、メニスカスをインク室5に引き込む補助的な動作が行なわれる。これらの主たる動作と補助的な動作により、上述の実施形態3の場合と同様に、主たる動作によってインクノズル11から吐出するインク柱を補助的な動作により確実に分離し、インク滴の形成を安定的に行うことができる。これにより、不要なインク滴の形成や、インク滴の飛び散りをなくすことが可能となる。
【0092】
さらに、隙間G2が隙間Gより狭く設定してあるので、主たる動作の駆動電圧と同等の駆動電圧を補助的な動作の際にも印加すると、主たる動作の際に発生するクーロン力に比べて、補助的な動作の際に発生するクーロン力は大きく、補助的な動作の振動板51の撓む速度は主たる動作に対して早くなる。これにより、インクノズル11内のメニスカスをインク室5に引き込む動作を早めることができ、吐出したインク柱を補助的な動作で更に確実に分離し、インク滴の形成を安定的に行うことが可能となる。また、補助的な動作により振動板51の撓む速度を、主たる動作の振動板51の撓む速度と同程度にしたい場合は、第1の補助電極101へ印加する駆動電圧を下げることが可能であり(後述の図21及び図23の例では駆動パルスの電圧値を小さくしている)、低消費電力化が可能となる。これらの作用によりノズル面への不要なインク液滴の付着による吐出不良とそれによる印刷装置の汚れや印刷不良を無くすことができる。
【0093】
なお、インク吐出の主たる動作とそれに続くインク液滴を分離させる補助的動作は、所定の時間の間隔をもって行われるが、その時間については既に説明したとおりであるから省略する。このことは後述の実施形態においても同様である。
【0094】
図20は本実施形態のインクジェットヘッド1の部分断面図(後述の図21のインク吐出2参照)である。図20は主電極10及び第1の補助電極101の両方の対向電極と振動板51との間に駆動電圧を印加した時の振動板51の動作を示している。主電極10及び第1の補助電極101の両方の対向電極と振動板(共通電極)51との間に電圧制御回路部21からの駆動電圧が印加されると、両電極10,101、51間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、前述の図19に示すとおりクーロン力の大きい第1の補助電極101側の振動板51から撓み始め、次いで、図20に示すとおり主電極10側の振動板51が撓み、インク室5の容積が拡大する。主電極10側の振動板51が撓む前に第1の補助電極101側の振動板51が予め撓んでいるため、図18に示した前述の主電極10のみを駆動した場合に比べて、主電極10側の振動板51の撓み始めるタイミングが早くなり、すなわち振動板51の撓む速度が速くなると共に、振動板51全体が撓むことにより、インク室5の容積は最も拡大する。
【0095】
次に、電圧制御回路部21からの駆動電圧を解除して両電極10,101、51間の電荷を放電すると、振動板51全体はその弾性復帰力によって復帰し、インク室5の容積が急激に収縮する。この時に発生するインク圧力により、インク室5を満たすインクの一部が、このインク室5に連通しているインクノズル11からインク滴として吐出する。このときのインク圧力は最も大きな圧力を発生することが可能となるため、主電極10のみにて振動板51を駆動してインク滴を吐出する場合に比べてその量が多いインク滴を吐出することができる。
【0096】
ところで、本実施形態はG>G2に設定されているが、G2>Gの構成を採用することができる。その場合には、通常のインク吐出時は主電極10のみを駆動し、大きなインク吐出量が必要な場合には第1の補助電極101を主電極10とを同時に駆動するような制御をする。
【0097】
図20に示した方法によりインクの吐出を行う場合でも、これを主たる動作として前述した補助的な動作を続いて行えば、前述したインクノズル11から吐出するインク柱を分離して安定的にインク滴を形成する作用とその効果は同等である。さらに、この場合には、先の図18にて説明した動作にて吐出するインク滴より多い量のインク滴を形成することが可能であり、インク滴の量を駆動パターンにより変えることが可能となる。この結果、形成されるドットの大きさを駆動パターンにより変えて印刷結果の濃さを変えたり、表現力が豊かな印刷を行うことが可能となる。また、振動板51の撓む速度が速くなることにより、同程度のインク滴吐出量を得るためには、駆動電圧を下げることが可能で、低消費電力化にも繋がる。
【0098】
図21は本実施形態のインクジェットヘッドの駆動パルスの例を示したタイミングチャートである。この駆動パルスは上述の図12の電圧制御回路部21により生成される。この駆動パルスは上述の実施形態と同様にして生成されるが、ここではメニスカス振動をさせるときの第1の補助電極101の駆動電圧を大きさを若干小さくしている。
【0099】
図21のタイミングチャートにおいて、インクジェットヘッド1の駆動方法を大別して4つの駆動パターンに分けて示している。図21(a)のインク吐出の駆動パターンでは、主電極10と振動板(共通電極)51との間の充放電により駆動してインク滴を吐出している(図18参照)。図示の波形ではインク滴の吐出動作が2回なされる。図21(b)のインク吐出2の駆動パターンでは、主電極10及び第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の充放電を同時に行って、振動板51の全面を撓まして駆動する(図20参照)。図示の波形ではインク滴の吐出動作が2回なされる。
【0100】
図21(c)のメニスカス振動の駆動パターンは、インク滴を吐出しないで、インクノズル11のメニスカスを振動させるパターンであり、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の充放電により駆動するものである(図19参照)。図中の波形によりメニスカスは2回振動する。図21(d)の非駆動の駆動パターンでは、振動板(共通電極)51、主電極10及び第1の補助電極101が常に同電位となるようにそれぞれ通電されている(図17の状態参照)。この時は、インク滴の吐出及びメニスカスの振動は行われない。
【0101】
図22は駆動モードとそれらに対するインクの動作を示したタイミングチャートである。これらは、図21の駆動パターンが組み合わされた例である。ここで、駆動モードはインク吐出とインク非吐出の2種類の駆動モードの例が示されている。図22(a)のインク吐出の駆動モードでは、2回のインク吐出動作と、2回目のインク吐出後の吐出インク柱の分離動作の連続した動作によりインク液滴が形成されて吐出し、1つの画素が印刷面に印刷される。
【0102】
また、図22(b)インク非吐出の駆動モードでは、第1の補助電極101のみを駆動して、インク滴を吐出すること無しにメニスカス振動のみを行わせている。このとき、画素は印刷面に印刷されない。しかし、第1の補助電極101の電位が反転されるため、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の電荷の蓄積を防止することになる。また、長時間インク吐出が無い事による、粘度が増加したインクをメニスカス振動によりインク室5へ拡散し、インク吐出の際の吐出不良を防止することもできる。インク非吐出の駆動モードをこのような駆動パターンで構成することにより、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間の電荷のリフレッシュとインクノズル11内のインクのリフレッシュを行うことができる。
【0103】
ところで、第1の補助電極101を駆動させる駆動パルスを放電時間がより長くなるように設定して、主電極10を駆動させる駆動パルスの波形と異ならせれば、メニスカス引き込み後のメニスカスの振動を速やかに減衰させてメニスカスを待機位置に復元させ、次の主電極駆動に備えることが可能となり、インクジェットヘッドを高い駆動周波数で駆動させることを可能とする更なる効果を有することになる。この点について図23及び図24に基づいて更に詳細に説明する。
【0104】
本発明の他のインクジェットヘッドの駆動方法を図23及び図24に基づいて説明する。図23は第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に印加される電圧波形の例を示している。図24はインクジェットヘッド1の部分断面図である。図23(A)は既出の電圧波形を示し、この電圧波形では主電極10側の振動板51と第1の補助電極101側の振動板51とは略同時に放電して振動板51は復帰動作をする。図23(B)、(C)における電圧波形を第1の補助電極101に適用すると、図中の時間帯215、216では、図24に示されるように、第1の補助電極101側の振動板51が当接状態のまま、主電極10側の振動板51は復帰動作するため、メニスカス引き込み後のメニスカス振動を速やかに減衰させてメニスカスを待機位置に復元させ、次の主電極10の駆動に備えることが可能となり、インクジェットヘッド1を高い駆動周波数で駆動させることができる。このことは、上述の実施形態2,3及び後述の実施形態5においても同様に適用される。
【0105】
なお、本実施形態においては、主電極10と振動板(共通電極)51との間隙Gと、補助電極10と振動板(共通電極)51との間隙G2とを異ならせているが、主電極10に係る回路の時定数と第1の補助電極101に係る回路の時定数との差は、本発明における差Δτの範囲内になるように設定されている。
【0106】
実施形態5.
図25は本発明の実施形態5に係るインクジェットヘッドの内のガラス基板の平面図であり、図26はその部分断面図である。本実施形態においては、対向電極が、主電極10及び第1の補助電極101の他に、第3の電極としての第2の補助電極102が形成されている。この第2の補助電極102の端子部102a及びリード部102bは、第1の補助電極101と同様に、クロムの薄膜105及び金の薄膜106を積層した構成となっており、対向電極部102cはITOの薄膜107から構成されている。そして、この第2の補助電極102と振動板(共通電極)51とから構成される回路の時定数τ3と、主電極10と振動板(共通電極)51とから構成される回路の時定数τ1と、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51とから構成される回路の時定数τ2とはそれぞれ小さく、その差Δτも小さな値になるように構成されている。
【0107】
図27はインクジェットヘッドの部分断面図(後述の図31のメニスカス振動参照)である。ここでは、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51との間に駆動電圧を印加して、両電極101,51間の充放電により第1の補助電極101に対応した振動板51に振動を与えることによりインクノズル11のメニスカスを振動させる。
【0108】
図28はインクジェットヘッドの部分断面図(後述の図31のインク吐出1参照)である。ここでは、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102が全体として1つの対向電極として機能するように、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102と振動板(共通電極)51との間に同時に駆動電圧を印加して、両電極10,101,102、51間の充放電により振動板51の全面を撓ませて振動板51の変位容量が最大になるようにして、インク吐出量が最大になるようにしている。
【0109】
図29はインクジェットヘッドの部分断面図(後述の図31インク吐出2参照)である。ここでは、主電極10及び第2の補助電極102が全体として1つの対向電極として機能するように、主電極10及び第2の補助電極102と振動板(共通電極)51との間に駆動電圧を同時に印加して、両電極10,102、51間の充放電により、主電極10及び第2の補助電極102に対応した振動板51を撓ませて振動板51の変位容量が中程度になるようにして、インク吐出量が中程度になるようにしている。
【0110】
図30はインクジェットヘッドの部分断面図(後述の図31インク吐出3参照)である。ここでは、主電極10のみが対向電極として機能するように、主電極10と振動板(共通電極)51との間に駆動電圧を印加して、両電極10、51間の充放電により、主電極10に対応した振動板51を撓まして振動板51による変位容量が最小になるようにして、インク吐出量が最小になるようにしている。
【0111】
図31は本実施形態に係るインクジェットヘッドの駆動パルスの例を示したタイミングチャートである。ここでは、その駆動方法を大別して5つの駆動パターンに分けている。図31(a)のメニスカス振動の駆動パターンでは、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51電極との間に駆動パルスを印加して、第1の補助電極101に対応した振動板51に振動を与えて、メニスカスを振動させる(図27参照)。
【0112】
図31(b)のインク吐出1では、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102が全体として1つの対向電極として機能するように、各電極10,101,102に駆動パルスを同時に印加することで、振動板51による変位容量が最大になるようにして、インク吐出量が最大になるようにしている(図28参照)。
【0113】
図31(c)のインク吐出2では、主電極10及び第2の補助電極102がインク吐出時に1つの電極の対向電極して機能するように、各電極10,102に駆動パルスを同時に印加することで、振動板51による変位容量が中程度になるようにして、インク吐出量が中程度になるようにしている(図29参照)。
【0114】
図31(d)のインク吐出3では、主電極10だけがインク吐出時に対向電極として機能するように、主電極10に駆動パルスを印加することで、振動板51による変位容量が最少になるようにして、インク吐出量が最少になるようにしている。
【0115】
図31(e)の非駆動では、主電極10、第1の補助電極101及び第2の主電極102及び振動板(共通電極)51が同一の電位となるように駆動パルスを印加することで、振動板51が変位しないようにして、非駆動状態を得ている。
【0116】
図32は駆動モードの例を示したタイミングチャートである。これらは、図31の駆動パターンが組み合わされた例である。ここでは特に、図15に示された実施形態と同様にインク柱の尾部(後端)を切るようにした場合の駆動パルスの波形が示されている。
【0117】
図32(a)の駆動モード1(インク吐出量多)では、図289に示されるようにインクジェットヘッドの主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102とが1つの対向電極として機能するように、これらの主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102を同時に駆動して振動板51の全面を撓ませてその変位容量が最大になるようにしてインク滴を吐出し、その所定時間後に、振動板51を駆動して第1の補助電極101に対応した振動板51を撓ませてインク柱の後端を切っている。
【0118】
図32(b)のは駆動モード2(インク吐出量少)では、図28に示されるようにインクジェットヘッドの主電極10、第1の第1の補助電極101及び第2の補助電極102を駆動して、主電極10、第1の補助電極101及び第2の補助電極102に対応した振動板51の全面を変位させてインク滴を吐した後(この例では2回吐出後に)に、所定時間後に、第1の補助電極101及び第2の補助電極102を駆動して第1の補助電極101及び第2の補助電極102に対応した振動板51の部分を撓ませてインク柱を切っている。この場合、インク吐出動作を行う時の振動板51の変位容量は前述の駆動モード1と同じである。しかし、インク柱の後端を切る際の振動板51の変位容量は前述の駆動モード1よりも大きくなり、切られるインク柱の容量が多くなる。結果として駆動モード2によるインク滴の重量(インク吐出量)は駆動モード1に比較すると少なくなる。
【0119】
図32(c)の非駆動時(インク非吐出)の場合では、主電極10、第1の補助電極101、第2の主電極102及び振動板(共通電極)51が同一の電位となるようにして非駆動状態を得ている。
【0120】
以上のように本実施形態においては、対向電極に第2の補助電極を形成し、主電極10と振動板(共通電極)51とから構成される回路の時定数τ1と、第1の補助電極101と振動板(共通電極)51とから構成される回路の時定数τ2と、第2の補助電極102と振動板(共通電極)51とから構成される回路の時定数τ3とをそれぞれ小さくし、その差Δτが小さくなるようにしてあることから、各電極10,101,102による充電とそれによる動作の時間遅れが解消されており、各電極を適宜組み合わせて制御するときにその制御タイミング容易に得られ、振動板の安定的な制御が可能になっている。このため、インクジェヘッドの余剰インク滴の発生を効果的に防止し、プリンタの信頼性の確保が可能になっている。
【0121】
また、対向電極として主電極10及び第1の補助電極101の他に第2の補助電極102を設けたことにより、インク吐出量を更に多段階に制御できるようになっており、多段階の印刷濃度調整が容易に可能になっている。このため、印刷する媒体(シート/紙/再生紙)や印刷モード(バーコード/文字/グラフィック/写真/インクセーブ)に合わせた印刷を行うことが可能になっており、印刷品位を容易に向上させることが可能になっている。
【0122】
なお、上述の実施形態においては、補助電極を2個の補助電極101,102で構成した例について説明したが、更に多数の補助電極から構成しても良い。その場合にはより多段階の印刷濃度調整が容易に可能になる。
【0123】
実施形態5.
ところで、本発明のインクジェットヘッドは、対向電極と振動板(共通電極)との間の充放電にて駆動される構成としているので、インクジェットヘッドの駆動にて消費される電力はごく僅かであり、多ノズルにてインクジェットヘッドを構成した場合でも、ヘッド全体で消費する電力は僅かであり、低消費電力が実現できるといった更なる効果を有する。
【0124】
例えば、インクジェットヘッドを構成するノズル数が1000ノズルとなる場合には、1000のノズルを列状に配置し、インクノズルと同数のインク室もまた同様に1列にそれぞれ区画形成する。前述の補助電極もまた、同数を同様に1列に配置する。このように構成することにより、ライン状のインクジェットヘッドを得ることが可能となる。但し、その場合には時定数τを小さくするために、図2又は図4に示されるように補助電極を分割する必要がある。本発明によれば、このようなライン状のインクジェットヘッドを構成した場合でも、補助電極を複数の振動板に共通して設けることで、補助電極を駆動するための配線数は少なくて済み、前述の実施形態にて示した効果に加えて、更に、低消費電力で、小型のライン状のインクジェットヘッドを実現することができる。
【0125】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、対向電極はそれぞれ独立して振動板との間で充放電可能な主電極と補助電極とから構成されており、そして、各電極と振動板(共通電極)とで構成される各回路の時定数は、インク流路の固有振動周期に対して十分小さくしたので、各回路の時定数の差も小さなものとなり、適切な制御タイミングが容易に得られ、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0126】
また、本発明によれば、各電極と共通電極とで構成される各回路の時定数がインク流路の固有振動周期に対して1/25以下に規定されており、このため、両電極による時定数の差も確実に所定の範囲に収まり、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0127】
また、本発明によれば、各電極と振動板(共通電極)とで構成される各回路の時定数の差がインク流路の固有振動周期に対して十分小さくなるように規定したので、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0128】
また、本発明によれば、各電極と共通電極とで構成される回路の各時定数の差がインク流路の固有振動周期の1/75以下になるように規定したので、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0129】
また、本発明によれば、各電極と振動板(共通電極)とで構成される各回路の時定数が最適駆動パルス幅に対して1/10以下になるように規定したので、両電極による時定数の差も確実に所定の範囲に収まり、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0130】
また、本発明によれば、各電極と振動板共通電極とで構成される各回路の時定数の差が最適駆動パルス幅に対して1/30以下となるように規定したので、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0131】
また、本発明によれば、各電極と振動板(共通電極)とで構成される各回路の時定数の差が0.4μsec以下になるように規定したので、時定数の差が十分小さく、主電極による動作と補助電極による動作とが適切なものとなり、高精度な印字制御が可能になっている。
【0132】
また、本発明によれば、各主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、補助電極はインクノズル側に所定数の振動板に共通して対向するように設けられ、所定数の主電極と前記補助電極とをユニットとし、ユニットを並列配置したので、補助電極を並列に分割されてその容量が小さくなるようにしており、主電極に係る回路の時定数と補助電極に係る回路の時定数との差が上記の条件を満たすことが可能になっている。
【0133】
また、本発明によれば、主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、補助電極は、インクノズル側に振動板に共通して対向するように設けられた第1の補助電極と、主電極と第1の補助電極との間に振動板に共通して設けられた1又は複数の第2の補助電極とを備え、補助電極を直列に分割してその容量を小さくしたので、主電極に係る回路の時定数と補助電極に係る回路の時定数との差も小さくなる。
【0134】
また、本発明によれば、主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、補助電極は、インクノズル側に所定数の振動板に共通して対向するように設けられた第1の補助電極と、主電極と第1の補助電極との間に所定数の振動板に共通して設けられた1又は複数の第2の補助電極とを備え、主電極及び補助電極をユニットとしユニットを並列配置したので、補助電極が直列に分割されてその容量が小さくなり、主電極に係る回路の時定数と補助電極に係る回路の時定数の差もまた小さくなる。
【0135】
また、本発明によれば、前記のユニットが隣接する2組のユニットがその境界線を基準として対称となるように配置されたので、2組のユニットの主電極に補助電極が介在しない。このため、製造の際には同一ピッチの主電極のパターン群を生成すれば良いので製造が容易なものとなる。
【0136】
また、本発明によれば、補助電極のリード部、又は主電極及び補助電極のリード部は金属から構成されるので、補助電極に係る回路の時定数、又は主電極及び補助電極の双方の回路の時定数を小さくすることができる。
【0137】
また、本発明によれば、金属は、クロム若しくはチタンの上に形成された金、又はアルミニウムから構成されるので、基板に安定して取り付けられ剥がれるおそれがなく長期間の使用に耐えられる。
【0138】
また、本発明によれば、主電極及び補助電極振動板と対向する部分がITOから構成されるので、上記の効果に加えて、絶縁破壊や振動板との貼り付きが生じにくくなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の対向電極(その1)の平面図である。
【図2】本発明の実施形態1の対向電極(その2)の平面図ある。
【図3】本発明の実施形態1の対向電極(その3)の平面図である。
【図4】本発明の実施形態1の対向電極(その4)の平面図である。
【図5】本発明の実施形態1の対向電極(その5)の平面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るインクジェットの分解斜視図である。
【図7】図6の実施形態2に係るインクジェットヘッドのガラス基板の平面図及びそのB−B断面図である。
【図8】上記の実施形態2に係るインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図9】上記の実施形態2に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出1)である。
【図10】上記の実施形態2に係るインクジェットヘッドの部分断面図(メニスカス振動)である。
【図11】上記の実施形態2に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出2)である。
【図12】図8の電圧印加手段の詳細を示したブロック図である。
【図13】上記の実施形態2に係るインクジェットヘッドに印加される駆動パルスの例を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図15】上記の実施形態3に係るインクジェットヘッドの駆動モードの例を示したタイミングチャートである。
【図16】本発明の実施形態4に係るインクジェットヘッドのガラス基板の平面図である。
【図17】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図18】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出1)である。
【図19】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの部分断面図(メニスカス振動)である。
【図20】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出2)である。
【図21】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの駆動パルスの例を示したタイミングチャートである。
【図22】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの駆動モードの例を示したタイミングチャートである。
【図23】上記の実施形態4に係るインクジェットヘッドの駆動パルスの他の例を示したタイミングチャートである。
【図24】図23の駆動パルスが印加されたときのインクジェットヘッドの動作を示したインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図25】本発明の実施形態5に係るインクジェットヘッドのガラス基板の平面図である。
【図26】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図27】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの部分断面図(メニスカス振動)である。
【図28】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出1)である。
【図29】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出2)である。
【図30】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの部分断面図(インク吐出3)である。
【図31】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの駆動パルスの波形を示したタイミングチャートである。
【図32】上記の実施形態5に係るインクジェットヘッドの駆動モードの例を示したタイミングチャートである。
【図33】先に提案されているインクジェットヘッド対向電極の平面図である。
【図34】図33の対向電極の充電割合(時定数)を示した特性図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 シリコン基板
3 ノズルプレート
4 ガラス基板
5 インク室
6 共通インク室
7 インク供給路
9 凹部
10 主電極
11 インクノズル
12 インク供給ロ
21 電圧印加手段
22 共通電極端子
51 振動板(インク室の底壁/共通電極)
101 第1の補助電極
102 第2の補助電極
Claims (16)
- インクを吐出する複数のインクノズルと、
このインクノズルの各々に連通している複数のインク室と、
この各インク室にインクを供給するインク供給路と、
前記インク室を形成している周壁に形成され、弾性変位可能な振動板と、
前記振動板に対して隙間を設けて配置された対向電極とを備え、
前記振動板を共通電極として構成し、前記対向電極と前記振動板との間で充放電を行うことにより、前記インクノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、
前記対向電極は、印字パターンに応じて選択的に充放電される主電極と、該主電極の長さ方向に隣接して配置された1又は複数の補助電極とからなり、
前記対向電極は複数並列に配置されており、各対向電極の補助電極は他の対向電極の対応する補助電極と電気的に接続されており、そして、
前記対向電極の各電極と前記共通電極とで構成される各回路の時定数は、インク流路の固有振動周期に対して十分小さいことを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記各電極と前記共通電極とで構成される各回路の時定数は、インク流路の固有振動周期に対して1/25以下であることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 前記各電極と前記共通電極とで構成される各回路の時定数の差は、インク流路の固有振動周期に対して十分小さいことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
- 前記各電極と前記共通電極とで構成される回路の各時定数の差は、インク流路の固有振動周期の1/75以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- インクを吐出する複数のインクノズルと、このインクノズルの各々に連通している複数のインク室と、この各インク室にインクを供給するインク供給路と、前記インク室を形成している周壁に形成され、弾性変位可能な振動板と、前記振動板に対して隙間を設けて配置された対向電極とを備え、前記振動板を共通電極として構成し、前記対向電極と前記振動板との間で充放電を行うことにより、前記インクノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドにおいて、
前記対向電極は、印字パターンに応じて選択的に充放電される主電極と、該主電極の長さ方向に隣接して配置された1又は複数の補助電極とからなり、
前記対向電極は複数並列に配置されており、各対向電極の補助電極は他の対向電極の対応する補助電極と電気的に接続されており、そして、
前記対向電極の各電極と前記共通電極とで構成される各回路の時定数は、最適駆動パルス幅に対して1/10以下であることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記各電極と前記共通電極とで構成される各回路の時定数の差は、最適駆動パルス幅に対して1/30以下であることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。インク。
- 前記各電極と前記共通電極とで構成される各回路の時定数の差は、0.4μsec以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、前記補助電極は前記インクノズル側に所定数の振動板に共通して対向するように設けられ、所定数の主電極と前記補助電極とをユニットとし、該ユニットを並列配置したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、前記補助電極は、インクノズル側に前記振動板に共通して対向するように設けられた第1の補助電極と、前記主電極と前記第1の補助電極との間に前記振動板に共通して設けられた1又は複数の第2の補助電極とを備えたことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記主電極は振動板に対応してそれぞれ設けられ、前記補助電極は、インクノズル側に所定数の振動板に共通して対向するように設けられた第1の補助電極と、前記主電極と前記第1の補助電極との間に所定数の前記振動板に共通して設けられた1又は複数の第2の補助電極とを備え、前記主電極及び前記補助電極をユニットとし、該ユニットを並列配置したことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記ユニットは、隣接する2組のユニットがその境界線を基準として対称となるように配置されることを特徴とする請求項8又は9記載のインクジェットヘッド。
- 少なくとも前記補助電極のリード部は金属から構成されることを特徴とする請求項1〜11記載のインクジェットヘッド。
- 前記主電極及び前記補助電極のリード部は金属から構成されることを特徴とする請求項1〜11記載のインクジェットヘッド。
- 前記金属は、クロム又はチタンの上に形成された金から構成されることを特徴とする請求項11又は12記載のインクジェットヘッド。
- 前記金属は、アルミニウムであることを特徴とする請求項12又は13記載のインクジェットヘッド。
- 前記主電極及び前記補助電極において、前記振動板と対向する部分がITOから構成されることを特徴とする請求項12〜15の何れかに記載のインクジェットヘッド。
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