JP3252628B2 - 印刷装置及びその駆動方法 - Google Patents

印刷装置及びその駆動方法

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JP3252628B2
JP3252628B2 JP29843394A JP29843394A JP3252628B2 JP 3252628 B2 JP3252628 B2 JP 3252628B2 JP 29843394 A JP29843394 A JP 29843394A JP 29843394 A JP29843394 A JP 29843394A JP 3252628 B2 JP3252628 B2 JP 3252628B2
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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14314Structure of ink jet print heads with electrostatically actuated membrane

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクチュエータに静電気
を用いたインクジェットヘッドの駆動方法及びその装
置、特にそのアクチュエータを構成する振動板に残留す
る残留電荷の影響を排除することに関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェットプリンタは、記録時の騒
音が極めて小さいこと、高速印字が可能であること、イ
ンクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど
多くの利点を有する。この中でも記録の必要な時にのみ
インク液滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマン
ド方式が、記録に不要なインク液滴の回収を必要としな
いため、現在主流となっている。
【0003】従来のインク・オン・デマンド方式の駆動
方法には例えば特公平2−24218号公報に開示され
ている駆動方法がある。この駆動方法においては、イン
ク噴射圧力を発生する圧力室の容積を変化させる圧電素
子を備え、圧電素子には待機状態で圧電素子の分極電圧
と同方向の電気的パルスが印加され、圧電素子を充電し
て圧力室の容積を減少させておき、インク噴射時には圧
電素子を徐々に放電させて圧力室の容積を増大させた後
に、再び圧電素子に電気的パルスを印加して圧電素子を
急速に充電させ、圧力室の容積を減少させることにより
ノズルからインクを噴射させている。そして、この駆動
方法においては、インク液滴を低電圧で最も効率良く噴
射させるために、圧力室へのインクの吸入時に起きるイ
ンク系の減衰振動の極大値近傍で圧電素子に再び電圧を
印加し急速に圧力室の容積を減少させている。
【0004】一方、アクチュエータの駆動に静電気力を
用いたインクジェットヘッドには、例えばUSP4,5
20,375号に開示されている構造が知られている。
【0005】USP4,520,375号には、主に絶
縁手段により間隔をあけて対向する2枚のキャパシター
プレートからなるとキャパシターと、インクを収容する
リザーバとからなり、キャパシタープレートの内一枚が
例えばシリコンの半導体製の薄い振動板を形成し、キャ
パシターに時間的に変化する電圧を印加することによ
り、振動板に機械的振動を生じさせ、振動板の動きに応
答して、例えばインクの様な液体をノズルより吐出させ
る液体噴射装置が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来のインクジ
ェットヘッドの駆動方法はアクチュエータに圧電素子を
用いたインク・オン・デマンド方式のものには最適な方
法の一つである。
【0007】しかし、USP4,520,375号に示
されるアクチュエータの駆動に静電気力を用いたインク
ジェットヘッドをインク・オン・デマンド方式で駆動さ
せる場合、上述の圧電素子によるものの駆動方法を単純
に適用したのでは、以下に述べるような問題を生じ、実
用化が困難であった。
【0008】アクチュエータに静電気を用いたインクジ
ェットヘッドは、圧電素子を用いたものと異なり、振動
板と個別電極間にパルス電圧を印加した後に、振動板及
び電極間の誘電体に電荷が残留し、この残留電荷が作り
出す電界により振動板と個別電極との相対変位量が低下
する。この相対変位量が低下は、インク液滴の吐出量や
インクスピードの低下等の吐出不良の原因となり、例え
ば印字濃度や画素ずれ等の印刷品質不良や画素抜け等の
信頼性の低下を招くという問題点があった。
【0009】そして更に、残留電荷は後述するように、
過去の印加電圧の履歴によってその大きさが異なるとい
う性質を示すため、振動板と個別電極との相対変位量は
一義的に定まらず不安定になり、その結果として、イン
ク液滴の吐出量や吐出速度等が不安定になり、いずれに
しても、印字濃度や画素ずれ等の印刷品質不良や画素抜
け等、信頼性が低下する要因となっていた。
【0010】本発明は、このような問題点を解決するた
めになされたものであり、その目的は、下記の2点にあ
る。
【0011】 振動板−電極間に蓄積される残留電荷
がインクジェットヘッドの駆動に与える悪影響を排除
し、振動板と個別電極との相対変位量を安定なものにす
るインクジェットヘッドの駆動方法及びその装置を提供
し、良好な印字品質を得るようにした印刷装置を提供す
ること。
【0012】 振動板−電極間に蓄積される残留電荷
がインクジェットヘッドの駆動に与える悪影響を排除す
る回復手段の実行中に、ノズルよりインク液滴が吐出す
ることなく、インクジェットヘッドがどの位置にあって
も、回復処理が、確実に行うことができ、高速度で印刷
可能な印刷装置を提供すること。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の印刷装置は、ノ
ズルと、該ノズルに連通するインク流路と、該流路の一
部に設けられた振動板と、該振動板に対向して設けられ
た電極とからなるアクチュエータと、前記振動板を静電
気力により変形させ、前記ノズルから記録のためのイン
ク液滴を吐出させる駆動手段とを有し、前記駆動手段
が、記録時に、前記アクチュエータに、前記振動板を
電気力により撓ませるための第1の電気パルスを印加す
る電圧印加手段と、前記第1の電気パルスとは、極性が
異なり、かつパルスの後端部が、前記ノズルからインク
液滴が吐出しない程度に、前記振動板の変位速度を抑制
する所定の傾きを持つ第2の電気パルスを、前記アクチ
ュエータに印加する残留電荷除去手段とを有することを
特徴とする。
【0014】また、本発明の印刷装置の駆動方法は、ノ
ズルと、該ノズルに連通するインク流路と、該流路の一
部に設けられた振動板と、該振動板に対向して設けられ
た電極とからなるアクチュエータとを有し、前記振動板
静電気力により変形させ、前記ノズルからインク液滴
を吐出し、記録を行う印刷装置の駆動方法において、通
常の記録時には、前記振動板を静電気力により変形させ
る第1の電気パルスを印加し、所定時に、前記振動板の
変位量を安定させるために、前記第1の電気パルスと
は、極性が異なる第2の電気パルスを印加する駆動方法
であって、前記第2の電気パルスの後端部が、前記ノズ
ルからインク液滴が吐出しない程度に、前記振動板の変
位速度を抑制する所定の傾きを持つことを特徴とする。
【0015】本発明の好ましい形態においては、前記第
2の電気パルスは、1ドット若しくは1行印字する毎
等、前記ノズルが、目詰まりを回復するために吐出され
たインク液滴を回収する予備吐出位置にある時以外に、
適宜印加される。
【0016】
【作用】本発明においては、インクジェットヘッドの振
動板と個別電極間に順方向の電気パルス(以下印字パル
スと呼ぶ)を印加することにより、振動板とこれに対向
して配置された個別電極との間に静電気力による引力が
働き、この静電気力によって振動板を変形させる。次に
その印字パルスを解除することにより、振動板の復元力
によりインク液滴をノズル孔より吐出させる。
【0017】ところが、印字パルスを解除しても振動板
と個別電極との間の電荷が残留し、その残留電荷が作り
出す電界のため、振動板が完全に復元せずに撓みを含む
ことになる。それでは、振動板と個別電極との相対変位
量が低下し、駆動時間とともに、インク液滴の吐出量や
吐出速度等も低下し、印字濃度や画素ずれ等の印刷品質
不良や画素抜け等の不具合が生じることになる。
【0018】本発明においては、印字パルスの駆動電圧
とは極性の異なる電圧の電気パルス(以下リフレッシュ
パルスと呼ぶ)を、例えば、1ライン印字動作を行った
後に、印加することにより、印字パルスを印加すること
により蓄積された残留電荷を消滅させている。(以下こ
れを振動板の回復処理と呼ぶ)このため、振動板と個別
電極との相対変位量は低下しない。
【0019】更に、特に振動板の材質が、抵抗率の低い
半導体である時は、リフレッシュパルスを印加し、残留
電荷を消滅させる際にも振動板が撓むが、リフレッシュ
パルスが、単純な方形波ではなく、特にパルスの後端部
に傾きを持たせた台形波または積分波であるため、振動
板は徐々に復元し、その変形速度が遅いため、振動板の
回復処理によりインク液滴がノズルより吐出されること
はない。
【0020】このため、振動板の回復処理が、インクジ
ェットヘッドがどの位置にあっても、回復処理が、確実
に行うことができる。これにより、例えば、ノズルの目
詰まりを回復するために、記録に寄与しないインク液滴
の吐出が行われる予備吐出位置まで、インクジェットヘ
ッドを移動させる必要がなく、振動板の回復処理を行う
ことができ、回復処理のために多くの時間を費やされる
ことがなく、高速度で印刷可能な印刷装置を提供でき
る。
【0021】
【実施例】図2は本発明の一実施例におけるインクジェ
ットヘッドの分解斜視図である。本実施例はインク液滴
を基板の端部に設けたノズル孔から吐出させるエッジイ
ジェクトタイプの例を示すものであるが、基板の上面部
に設けたノズル孔からインク液滴を吐出させるフェイス
イジュクトタイプでもよい。図3は組み立てられたイン
クジェットヘッド全体の断面側面図、図4は図3のA−
A線矢視図である。本実施例のインクジェットヘッド1
0は次に詳述する構造を持つ3枚の基板1、2、3を重
ねて接合した積層構造となっている。
【0022】中間の第1の基板1は、シリコン基板であ
り、複数のノズル孔4を構成するように、基板1の表面
に一端より平行に等間隔で形成された複数のノズル溝1
1と、各々のノズル溝11に連通し、底壁を振動板5と
する吐出室6を構成することになる凹部12と、凹部1
2の後部に設けられたオリフィス7を構成することにな
るインク流入口のための細溝13と、各々の吐出室6に
インクを供給するための共通のインクキャビティ8を構
成することになる凹部14とを有する。また、振動板5
の下部には後述する電極を装着するため振動室9を構成
することになる凹部15が設けられている。本実施例で
は、各オリフィス7は、主に流路抵抗を増加させるた
め、また、細溝の一つが詰まったとしてもインクジェッ
トヘッドの正常な動作を保つために、3つの平行な細溝
13から形成されてる。
【0023】本実施例においては、振動板5とこれに対
向して配置される電極との対向間隔、即ちギャップ部1
6の長さG(図3参照、以下「ギャップ長」と記す。)
が、凹部15の深さと電極の厚さとの差になるように、
間隔保持手段を第1の基板1の下面に形成した振動室用
の凹部15により構成している。また、別の例として凹
部の形成は第2の基板2の上面でもよい。ここでは、凹
部15の深さをエッチングにより0.6μmとしてい
る。なお、ノズル溝11のピッチは0.72mmであ
り、その幅は70μmである。
【0024】また、第1の基板1への共通電極17の付
与については、半導体及び電極である金属の材料による
仕事関数の大小が重要であり、本実施例では共通電極材
料にはチタンを下付けとし白金、またはクロムを下付け
とし金を使用しているが、本実施例に限定されるもので
はなく、半導体及び電極材料の特性により別の組合わせ
でもよい。また、本実施例で用いられる半導体材料の抵
抗率は8〜12Ωcmである。
【0025】第1の基板1の下面に接合される下側の第
2の基板2にはホウ珪酸系ガラスを使用し、この第2の
基板2の接合によって振動室9を構成するとともに、第
2の基板2上の振動板5に対応する各々の位置に、金を
0.1μmスパッタし、振動板5とほぼ同じ形状に金パ
ターンを形成して個別電極21としている。個別電極2
1はリード部22及び端子部23を持つ。更に、電極端
子部23を除きパイレックススパッタ膜を全面に0.2
μm被覆して絶縁層24を形成し、インクジェットヘッ
ド駆動時の絶縁破壊、ショートを防止するための膜を形
成している。
【0026】第1の基板1の上面に接合される上側の第
3の基板3は、第2の基板2と同じくホウ珪酸系ガラス
を用いている。この第3の基板3の接合によって、ノズ
ル孔4、吐出室6、オリフィス7及びインクキャビティ
8が構成される。そして、第3の基板3にはインクキャ
ビティ8に連通するインク供給口31が設けられる。イ
ンク供給口31は接続パイプ32及びチューブ33を介
して図示しないインクタンクに接続される。
【0027】次に、第1の基板1と第2の基板2を温度
300〜500℃、電圧500〜800Vの印加で陽極
接合し、また同条件で第1の基板1と第3の基板3を接
合し、図3のようにインクジェットヘッドを組み立て
る。陽極の接合後に、振動板5と第2の基板2上の個別
電極21との間に形成されるギャップ長さGは、凹部1
5の深さと個別電極21の厚さとの差であり、本実施例
では0.5μmとしてある。また、振動板5と個別電極
21上の絶縁層24との空隙間隔G1は0.3μmとな
っている。
【0028】上記のようにインクジェットヘッドを組み
立てた後は、共通電極17と個別電極21の端子部23
間にそれぞれ配線101により駆動回路102を接続
し、インクジェットプリンタを構成する。インク103
は、図示しないインクタンクよりインク供給口31を経
て第1の基板1の内部に供給され、インクキャビティ
8、吐出室6等を満たしている。そして、吐出室6のイ
ンクは、図3に示されるように、インクジェットヘッド
10の駆動時にノズル孔4よりインク液滴104となっ
て吐出され、記録紙105に印字される。
【0029】次に上記のように構成された本実施例の電
気的接続について説明する。
【0030】金属−絶縁層−半導体層からなる構造、い
わゆるMIS構造において、印加電圧の極性により、電
流の値に大きな差がある場合と差のない場合が生ずるこ
とが、空間電荷層(空乏層ともいう)の影響から現象と
して知られている。基板材質である半導体がP形シリコ
ンの場合は、基板電極側にプラス電圧をかけた時は導体
とみなせるが、マイナス電圧をかけた時は空間電荷層の
存在により導体とはみなせずに容量を持つことがわかっ
ている。
【0031】図5は本実施例における振動板と個別電極
の部分拡大詳細図であり、電荷の様子を模式化して示し
たものである。第1の基板1にP形シリコンを用い、第
1の基板1(振動板5)側、すなわち共通電極17をプ
ラス極性、個別電極21側をマイナス極性になるように
駆動回路102に接続し、共通電極17と個別電極21
に駆動回路102によりパルス電圧を印加した場合であ
る。
【0032】P形シリコンはボロンをドープしており、
電子がドープされたボロンの数だけ不足するので、ドー
プ量と等しい正孔を持っていることが知られている。P
形シリコン中の正孔19は共通電極17のプラス電荷に
より、絶縁層26側へ反発させられる。この正孔19の
移動により、アクセプター(イオン化したボロン)は、
基板電極17から電荷の供給を受けるので、第1の基板
1内には正孔の流れが生じ、空間電荷層を発生せず導体
とみなすことができる。また個別電極21側はマイナス
電荷が帯電され、この結果、印加したパルス電圧が振動
板5を撓ませるに充分な静電気による吸引力を発生す
る。したがって、振動板5は個別電極21側へ撓むこと
になる。
【0033】図6及び図7は図5の振動板と個別電極と
の間にある誘電体の残留電荷に着目した模式図であり、
図6は図5と同様に電圧を印加したときの状態を示して
おり、図7はその電界を取り去ったときの状態を示して
いる。次に、残留電荷の発生を図6及び図7を参照しな
がら説明する。図6及び図7において、前述したように
振動板5は半導体であり、共通電極17は金属で形成さ
れ、それらは、オーミック接続されている。
【0034】この振動板5は絶縁層26で覆われてい
る。そして、個別電極21に形成された絶縁層24はギ
ャップ16を介して絶縁層26と対向しており、これら
の絶縁層26、ギャップ16及び絶縁層24は全体とし
て絶縁層27を形成している。従って、ここでは振動板
5と個別電極21とによって構成される平行平板コンデ
ンサ内に誘電体が介在したモデルとしてとらえることが
できる。誘電体は保護膜絶縁層24,26に相当する。
平行平板に電圧を印加すると、誘電体は図6に示すよう
に印加電界を打ち消すような方向(電界とは逆方向に)
の分極28を発生する。この分極28のほとんどは印加
電圧を切り、コンデンサに蓄えられた電荷を抵抗46を
介して放電すると短い時間で消滅する。放電後から分極
が消滅するまでの遅れ時間を緩和時間といい、分極の種
類によって大きく異なる。
【0035】本実施例の振動板5と個別電極21の内部
の誘電体(絶縁層)の分極の場合には、緩和時間の短い
原子分極や電子分極以外に、イオン分極や界面分極と呼
ばれる比較的分極緩和時間の長い分極成分を含んでい
る。イオン分極は絶縁層内部のNa+,K+,B+等が
印加電界に沿って移動することによって発生するもので
あり、界面分極は、誘電体が不均質構造である場合、誘
電率の異なる媒質が接触する境界面に発生する分極であ
り、酸化シリコンと純シリコンの境界面に生ずるもので
ある。このため、本実施例の振動板5と個別電極21の
内部の誘電体(24,26)は、図7に示すように、電
界の繰返し印加もしくは長時間の連続印加により分極の
一部が完全に消失せず分極が長時間にわたって残る。こ
れにより誘電体は残留分極29を有するようになり、振
動板5−電極21間に残留する電荷分極が作り出す残留
電界Pが振動板5と個別電極21との相対変位量の低下
を招く。
【0036】図8は振動板と個別電極の撓みを経時的に
示した図である。図8(a)は振動板5と個別電極21
間に電圧を印加していない状態であり、図示のように振
動板5と個別電極21とは平行になっている。図8
(b)は振動板5と個別電極17に電圧を印加したとき
の状態であり、図示のように振動板5は撓む。ここでは
その撓みの量をΔV1とする。次に、図8(c)は振動
板5と個別電極17に蓄えられた電荷を放電した後の状
態であり、放電後も、残留電荷が作り出す残留電界によ
り振動板5が撓んでおり、例えばその撓みの量をΔV2
とする。従って、振動板5と個別電極21との相対変位
量はΔV1−ΔV2となり、相対変位量が低下すること
が分かる。
【0037】このような振動板5と個別電極21との相
対変位量の低下は、上述のように、インク液滴の吐出量
やインクスピード低下等の吐出不良の原因となり、イン
クジェットプリンタの信頼性や印刷品質に悪影響を及ぼ
してしまう。そこで、本実施例においては後述するよう
に振動板5と個別電極21との間に図6とは逆方向の電
界を印加することにより、上述の残留電荷を消滅させて
いる。
【0038】図1は本発明の一実施例のインクジェット
プリンタの概念図である。図において、202はインク
ジェットヘッドを移動させたり、紙等の印刷媒体を移動
させたりする駆動モータ、203はインクジェットヘッ
ド10及び駆動モータ202を主な構成要素としたプリ
ンタである。このプリンタ203はインクジェットヘッ
ド10や印刷媒体を駆動モータ202により移動しなが
ら、インクジェットヘッド10よりインクを吐出して印
刷媒体に到達せしめることにより文字や画像を印刷す
る。204は計時手段であり、時間の計測を行う。20
6はノズルの目詰りの回復処理を制御するノズルの目詰
り回復処理手段である。207は入力手段であり、21
0は印刷の制御や入力手段207からの入力信号を受け
て各種の演算制御を行う印刷演算制御手段210であ
る。この印刷演算制御手段210は計時手段204を起
動するための初期化信号や、プリンタ203を制御する
ための印刷制御信号を出力したり、各種の制御を行う。
211は記憶手段であり、印刷演算制御手段210の演
算処理の際に用いられる各種のデータが格納される。2
12は振動板の残留電荷除去手段であり、後述するよう
に振動板の残留電荷に対する回復処理を行うために、振
動板回復処理制御信号を出力する。
【0039】213はインクジェットヘット10の駆動
制御回路であり、図9の回路構成からなっている。この
駆動制御回路213にはノズル回復処理制御信号、印刷
制御信号及び振動板回復処理制御信号が入力され、これ
らの制御信号に基いてインクジェットヘット10の駆動
を制御する。214は駆動モータ202の駆動制御回路
であり、ノズル回復処理制御信号、印刷制御信号及び振
動板回復処理制御信号が入力され、これらの制御信号に
基いて駆動モータ202の駆動を制御する。
【0040】図9はインクジェットヘッド10の駆動制
御回路の構成を示した図である。この駆動制御回路21
3は、図示のように、制御回路215及び駆動回路10
2aから構成されている。駆動回路102aはトランジ
スタ106〜109及び増幅器110〜113から構成
されている。制御回路215はノズル回復処理制御信
号、印刷制御信号及び振動板回復処理制御信号が入力さ
れ、それらの制御信号に基いてパルス電圧P1〜P4を
増幅器110〜113に適宜出力し、増幅器110〜1
13の出力によりにトランジスタ106〜109が駆動
され、その結果、振動板5と個別電極21によって構成
されるコンデンサ114に電荷がチャージされ又はデス
チャージすることにより、インク液滴104がノズル孔
4から吐出される。ここで、抵抗115は放電速度を決
める抵抗で、抵抗116は充電速度を決める抵抗であっ
て、各々の抵抗値及びコンデンサ114の容量で充放電
の時定数が定まる。
【0041】図10は上述のインクジェットヘッド10
を搭載したプリンタの概要図である。300は記録紙1
05を搬送するプラテン、301は内部にインクを貯蔵
するインクタンクであり、インク供給チューブ306を
介してインクジェットヘッド10にインクを供給する。
302はキャリッジであり、インクジェットヘッド10
を記録紙105の搬送方向と直行する方向に移動させ
る。303はポンプであり、インクジェットヘッド10
のインク吐出不良等の場合、キャップ304、廃インク
回収チューブ308を介してインクを吸引し、排インク
溜305に回収する機能を果たしている。
【0042】図11は図1の実施例のインクジェットプ
リンタの制御方法を示したフローチャートであり、図1
2はそのサブルーチンを示したフローチャートである。
図12において、(a)はノズル回復動作のサブルーチ
ンを示し、(b)は印刷動作のサブルーチンを示してい
る。まず、ステップS0において印刷演算制御手段21
0の指示に基いてプリンタ機構部等のイニシャライズが
実行される。このとき、計時手段204のリセットも同
時に行われ計時がスタートする。次のステップS1にお
いて、電源投入直後のノズル回復動作を行う。このノズ
ル回復動作は、図12(a)のノズル回復動作のサブル
ーチンのステップSS1〜SS3に示される一連の処理
によりなされる。
【0043】まず、ステップSS1において駆動モータ
202を駆動することによりインクジェットヘッド10
を搭載したキャリッジ302を待機位置からキャップ3
04の位置へ移動する。次に、ステップSS2において
ノズルの回復動作、即ちリフレッシュを行う。このノズ
ルのリフレッシュとは、インクジェットヘッド10のノ
ズル部の増粘したインク等のインク吐出不良の原因とな
る不良インクを排出するために、全ノズルに対応する振
動板5を駆動することにより、全てのノズルからインク
を所定回数吐出させることである。通常、各ノズルにつ
いて10発〜200発の吐出を行い、増粘した不良イン
クをノズル外に排出する。このリフレッシュの吐出回数
は計時手段204の設定時間によって予め決められる。
このノズルのリフレシュ終了後、ステップSS3におい
て再び待機位置へキャリッジ302を復帰させて、一連
のリフレッシュ動作を終了する。なお、電源投入時は、
一般的に長時間ヘッドが使用されていない可能性が高い
ので160発〜200発のインク吐出が実行される。
【0044】ノズルのリフレッシュ動作の終了後、計時
手段204は所定時間を計測し始める。ステップS2に
おいて、計時手段204が所定の時間を計測したかどう
かを判断するために、タイマーアップ信号の有無を判断
する。ここで、タイマーアップ信号が発生していた場合
には、ステップS8のノズル回復動作に進み、図12
(a)のノズル回復動作のサブルーチンに示されるリフ
レッシュ動作を行って次のステップS3に進む。タイマ
ーアップ信号が発生していない場合にはそのままステッ
プS3に進む。このステップS3においては印刷を行う
か否かの判断を行う。印刷を行わない場合にはステップ
S2に戻る。印刷を行う場合には、ステップS4におい
て計時手段204をリセットした後に、ステップS5に
おいて印刷動作を実行する。
【0045】この印刷動作は、図12(b)の印刷動作
のサブルーチンのステップSS10〜SS16で示され
る一連の動作によりなされる。ステップSS10におい
て計数値n=1と設定し、ステップSS11においてキ
ャリッジ302を1ドット分移動する。そして、ステッ
プSS12,SS13において印字データに基づいた指
定ドットインクを吸引して吐出する。そして、ステップ
SS14において、ステップSS12、SS13で駆動
された特定の振動板5のみについて、リフレシュ(残留
電荷の消滅)を行う。次のステップSS15において計
数値n=n+1としてインクリメントし、ステップSS
16においてnが最終ドットであるかどうかを判断し、
最終ドットでない場合にはステップSS11に戻って上
述の処理が繰り返される。最終ドットであった場合には
印刷動作を終了し、ステップS6においてキャリッジ3
02を再び待機位置へ復帰させて、ステップS7におい
て所定量だけ紙送りをする。そして、ステップS9にお
いて処理を続行するかどうかを判断し、続行する場合に
はステップS2に戻って上述の処理を繰り返す。続行し
ない場合には全ての処理を終了する。
【0046】図13は図1、図9及び図12の実施例の
動作を示したタイミングチャートである。ここでは待機
状態において、抵抗Rを介してコンデンサ114を放電
状態に保持するため、パルス電圧P4が印加されてトラ
ンジスタ108がオンになっているものとする。まず、
aの区間において、パルス電圧P1,P4が供給されて
トランジスタ108,107がオン状態になり、振動板
5に正の電圧が印加され、電極21に負の電圧が印加さ
れる。これによりコンデサ114に順方向の電荷がチャ
ージされ、振動板5が静電気による吸引力により個別電
極21側に撓んだ状態になり、吐出室6の圧力が減少
し、インク103がインクキャビテイ8からオリフイス
7を通じて吐出室6内に補給される。
【0047】その後、bのホ−ルド区間を経過すると、
区間cにおいて、パルス電圧P2,P4が供給されてト
ランジスタ106,108がオン状態になり、コンデン
サ104に蓄積された電荷が急速にデスチャージされ
る。その結果、振動板5と個別電極21との間に働いて
いた静電気による吸引力がなくなり、振動板5は自己の
持つ剛性により復元する。この振動板5の復元により、
吐出室6内の圧力が急速に上昇し、ノズル孔4からイン
ク液滴104を記録紙105に向けて吐出する。この
後、dの区間において示すように、振動板5のリフレッ
シュがなされる。ここでは、パルス電圧P2,P3が供
給されてトランジスタ106,109がオン状態にな
り、振動板5に負の電圧、個別電極21に正の電圧が印
加される。振動板5と個別電極21によって構成される
コンデンサ114には電荷がチャージされる。しかし、
これは通常の印刷動作の場合の逆電圧であり、充電の方
向は逆になっている。これにより、図7の残留電荷が消
滅することになる。その後、e区間において、再び電荷
を放電すると、残留電荷は消滅し残っていないので、振
動板5は図8(c)のように撓んでおらず完全に復元す
る。故に次の区間a2,b2,c2を経て再び吐出され
るインク吐出量は前回吐出されたインク吐出量とほぼ一
致する。本実施例においては、このように1ドット毎に
振動板5と個別電極21との間に生成する残留電荷を消
滅させながら、インク液滴104を吐出させている。
【0048】なお、本実施例においてはP形半導体基板
を基板として用いたが、N形半導体基板を基板として用
いた場合には、駆動回路102aとインクジェットヘッ
ド10との接続配線はP形半導体の場合とは逆とする必
要がある。
【0049】図14は図1の実施例のインクジェットプ
リンタの他の制御方法を示したフローチャートであり、
図15はそのサブルーチンを示したフローチャートであ
る。図15において、(a)はノズル回復動作のサブル
ーチンを示し、(b)は印刷動作のサブルーチンを示し
ている。本実施例においては、1行毎に振動板の回復動
作を行なわせるようにしている。図14のステップS4
とステップ5との間に振動板をリフレッシュさせるため
のステップSS12が挿入されており、このステップに
おいて上述の実施例の振動板のリフレッシュがなされ
る。このため、図15の印刷動作のサブルーチンは図1
2のステップSS12が削除されており、その他の処理
は同じである。
【0050】図16は図14及び図15の実施例の動作
を示したタイミングチャートである。本実施例において
はキャリッジ302がリターンする毎にa区間において
パルス電圧P2及びP4が供給されてトランジスタ10
6,109がオン状態になり、振動板5及び個別電極2
1に逆電圧が印加され、上述の残留電荷を消滅させてい
る。
【0051】図17は図1の実施例のインクジェットプ
リンタの更に他の制御方法を示したフローチャートであ
り、図18はそのサブルーチンを示したフローチャート
である。図18において、(a)はノズル/振動板回復
動作のサブルーチンを示し、(b)は印刷動作のサブル
ーチンを示している。本実施例においては、ヘッドノズ
ルの回復動作時に振動板の回復動作も行なわせるように
している。図11のステップS1及びS8は、図17の
ステップS1a及びS8aに対応しており、このステッ
プS1a及びS8aではノズル回復動作だけでなく、振
動板の回復処理も行うようにしている。従って、図18
(a)のノズル/振動板回復動作のサブルーチンでは、
ステップSS1においてキャリッジ302を待機位置に
移動させた後に、次のステップであるステップSS12
において振動板5のリフレッシュを行うようにしてい
る。このため、図18(b)の印刷動作のサブルーチン
は図12のステップSS12が削除されている。
【0052】以上に上述した実施例によれば、例えば1
ドットおきに、もしくは1ライン印刷する毎に、また
は、計時に基づいて、周期的に残留電荷を除去すること
により、残留電荷が及ぼす悪影響が避けられるものであ
る。本実施例のこれら各態様は、組み合わせて用いられ
てもよい。この方法で残留電荷を除去することによっ
て、好ましくは、完全に振動板の残留撓みが除かれるこ
とが望ましいが、静電アクチュエータを定められたある
状態にリセットすることによって、完全に振動板の残留
撓みが除かれなくても、すくなくともその残留撓みは一
定となり、振動板の相対変位量も一定となる。残留撓み
が一定であれば、残留撓みに応じて、駆動電圧を増加す
ることによって、インク吐出量、及びインク吐出速度を
簡単に補正することができるという効果を有する。
【0053】なお、上述した実施例においては、残留電
荷を消滅させるために逆電圧(リフレッシュ電圧)を印
加して振動板の回復処理を行っているが、逆電圧によっ
ても振動板5は撓むので、図17に示す例の様に、ヘッ
ドノズルの回復動作時に振動板の回復処理も行なう場合
以外には、インク液滴が吐出しないようにしなければな
らない。振動板5に抵抗率の比較的高い半導体を使用し
た場合には、逆電圧の大きさを順方向の電圧と同じ大き
さにしても撓みの量が少なく、インク液滴の吐出のおそ
れはないが、一方、振動板5に比較的抵抗率の低い半導
体を使用した場合には、逆電圧の大きさを順方向の電圧
と同じ大きさにすると、振動板が大きく撓むので、イン
ク液滴の吐出を防止する工夫が必要である。
【0054】以下に、図19〜図25を用いて、インク
液滴の吐出が行われない振動板の回復処理について、説
明する。
【0055】図19(a)は過渡部に傾きを持たない方
形波状の逆方向パルスを印加した場合の共通電極と個別
電極間の波形である。P10が印字パルス、P11が振
動板の回復処理動作を行うリフレッシュパルスを示して
いる。図示したように印字パルスP10と逆方向のリフ
レッシュパルスP11を印加することにより残留電荷が
消滅することになる。印字パルスP10とリフレッシュ
パルスP11の時間間隔Taが小さいとインク吐出動作
が不安定になるため、Taは、100μsec以上にす
ることが好ましく、それにより安定したインク吐出を行
うことができる。
【0056】リフレッシュパルスP11を方形波にした
場合、振動板の回復処理動作によって撓んだ振動板の形
状復帰スピードが速いため、インクが吐出してしまう場
合がある。特に、半導体内に拡散されたボロン等の不純
物の量が多い場合には、振動板の抵抗値が下がりこの傾
向が強くなる。それを防ぐためには、P11のかわりに
図19(b)に示したリフレッシュパルスP12を印加
すればよい。リフレッシュパルスP12はパルスの後端
部に傾きを持っているため、撓んでいる振動板は振動板
は徐々に元の形状に復元する。このように、振動板の形
状復帰速度が遅いため、振動板の回復処理によりインク
液滴がノズルより吐出されることを防ぐことができる。
本実施例の場合、リフレッシュパルスP12の後端部に
おける傾き時間Tbを150μsec以上にすることに
よりインク吐出防止効果が期待できる。
【0057】このように形成された2種類のリフレッシ
ュパルスは、以下のように、振動板の回復手段を実行す
る状況に応じて、切り換えてインクジェットヘッドに印
加しても良い。例えば、図17、図18(a)に示すフ
ローチャートに基づいて振動板の回復動作SS12をヘ
ッドノズルの回復動作SS2と同時に行う場合、インク
ジェットヘッド10を搭載したキャリッジ502がキャ
ップ504の位置にあるので、ノズルからインク液滴が
吐出されても問題ないため、図19(a)のように方形
波状のリフレッシュパルスP11を印加し、ノズルのリ
フレッシュとともに振動板から残留電荷を取り除く。一
方、図14、図15、図16に示すフローチャートまた
は、タイミングチャートに基づいて、振動板の回復動作
が1行毎に行われる場合、リフレッシュパルスを印加し
て、ノズルからインク液滴が吐出されると、記録紙また
はプリンタをインクで汚すおそれがあるため、図19
(b)のようにパルスの後端部に傾きを持つリフレッシ
ュパルスP12を印加すればよい。
【0058】以上説明したインク吐出防止手段を含む振
動板の回復処理動作の詳細を、図20、図21に基づき
説明する。図20(b)の動作論理図におけるH、Lの
記号は、Hがパルスを印加した状態、Lが印加していな
い状態を示している。本実施例は、回路構成を簡略化
し、振動板の回復処理動作時のインク吐出防止回路を付
加して実施した例である。
【0059】待機時には、制御パルスP11が印加さ
れ、トランジスタ501がON状態となって、振動板5
は電源VHと短絡状態になる(状態A)。印字する際に
は、印字パルスP10を印加する。P10が印加されて
いる間トランジスタ500がON状態になって個別電極
21が0Vになり、振動板5の形状は状態Bのように撓
み、インクが吐出室に補給される。P10の印加を停止
すると、振動板5と個別電極21が同電位となり、状態
Aのように振動板5の形状が復元され、インクが吐出す
る。
【0060】振動板の回復処理動作時には、制御パルス
P11の印加を停止すると共に制御パルスP12を印加
し、トランジスタ501をOFF状態にすると同時にト
ランジスタ502をON状態にする(状態C)。この状
態にすることにより、容量値がCであるコンデンサ50
3に充電された電荷が抵抗値R1の抵抗504を通して
放電される。Cは振動板5と個別電極21によって構成
されるコンデンサの容量C0を無視できる程度の大きさ
に設定する。その結果、振動板5の電位は印字パルス印
加時よりもはるかに大きな時定数C・R1のカーブで減
少し0Vになる。振動板の回復処理動作時には、制御パ
ルスP10は印加しないため、トランジスタ500はO
FF状態になり、個別電極21には、電圧VHが印加さ
れる。その結果、通常印字時と逆の電圧が、ヘッドに印
加されることになり、振動板の回復処理動作が行われ
る。
【0061】残留電荷を排除するのに充分な時間逆電圧
を印加した後、制御パルスP12の印加を停止し、トラ
ンジスタ502をOFF状態にし、抵抗値R2の抵抗5
05、抵抗値R1抵抗504を通してコンデンサ503
を充電すると同時に振動板5に蓄えられた電荷を放電す
る。その時、コンデンサ503の端子電圧は、時定数C
・(R1+R2)のカーブで上昇しVHと同電位にな
る。振動板5がVHまで上昇してから制御パルスP11
を印加してトランジスタ501をON状態にし、印字待
機状態(状態A)にする。これにより、印刷の為の吐出
を制御する際、抵抗504,505の影響をなくしてロ
ーインピーダンス制御が可能となる。
【0062】具体的なタイミング図を図21に示す。制
御パルスP11が印加されていない時が振動板の回復処
理動作を行っている時である。逆電圧を印加する時間T
cは30msec程度、コンデンサ503を充電する時
間Tdは10msec程度に設定して本発明を実施し
た。Tc,Tdは、振動板の回復処理動作を行う時間を
多くとれない場合は、図19を用いて説明したように短
縮することも可能である。
【0063】このようにして、電位を充分な時間をかけ
て変化させる積分波を振動板5に印加することにより、
振動板5の変形スピードが遅くなり、振動板の回復処理
動作終了時におけるインクの吐出を防ぐことができる。
【0064】トランジスタ501における出力インピー
ダンスが充分に小さい場合、コンデンサ503の削除が
可能である。その場合は、振動板5の電位変化がコンデ
ンサ114の容量C0と充放電用の抵抗504,505
との組み合わせによる時定数となる。本実施例では、コ
ンデンサ503の容量を1μFとしたが、コンデンサ1
14の容量は300pF程度である。そのため、抵抗5
04,505は数百kΩ程度の大きさが必要になる。
【0065】印字時に共通電極に流れる電流をすべて供
給するのに充分な大きさの容量を持ったコンデンサを5
03に使用することが可能ならば、図22で示した構成
で、本発明を実施できる。振動板の回復処理動作時に
は、制御パルスP12を印加することにより、トランジ
スタ502がON状態になり、時定数C・R1のカーブ
で電位が低下し0Vとなり、振動板5と個別電極21の
間に逆電圧が印加される。制御パルスP12の印加を停
止することによって、振動板5の電位が時定数C・(R
1+R2)のカーブで電位が上昇してVHになり、通常
印字動作が可能になる。本構成では、振動板の回復処理
動作制御信号が1本で実施できる。振動板5とVHの間
に抵抗R1,R2が存在するが、印字時に共通電極に流
れる電流をすべて供給するのに充分に大きい容量を持っ
たコンデンサ503を使用することにより、実使用上は
問題ない。
【0066】図22の回路構成で実施した場合の、タイ
ミング図を図23に示す。制御パルスP12の印加停止
から最初の印字までの時間Teは、振動板5の電位が印
字動作に影響しないレベルまで上昇するのに十分な時間
を確保する必要がある。
【0067】D/Aコンバータを用いた実施例を図24
に示す。D/Aコンバータ506は、入力するデータが
カウントアップされるときに出力が大きくなり、カウン
トダウンするときに出力が小さくなるものを用いる。D
/Aコンバータ506の出力をロー出力インピーダンス
アンプ507を通して振動板5に供給する。印字状態の
時には、データをすべて1にして、VHを出力する。振
動板の回復処理動作時には、D/Aコンバータ506の
入力データを徐々にカウントダウンし振動板5の電位を
0Vにする。振動板の回復処理動作終了後には、入力デ
ータを徐々にカウントアップし振動板5の電位をVHに
戻す。この構成により、等時間間隔でカウントアップま
たはカウントダウンした場合、タイミング図である図2
5に示したように、振動板の回復処理動作時に振動板5
に台形波が印加されるが、上述した積分波を用いた実施
例と同様の効果が認められる。D/Aコンバータの入出
力論理は、システム構成により反転したものでも使用可
能である。また、D/Aコンバータがアクチュエータ1
14の駆動に充分なドライブ能力がある時は、ロー出力
インピーダンスアンプ507は必要ない。
【0068】以上、印字1行毎に、リフレッシュパルス
を印加して、インク液滴の吐出を伴わない振動板の回復
処理を行う例に基づいて、本発明の説明を行ったが、1
行毎に限定されることなく、例えば、1ドット印刷する
毎に、印刷動作を行った振動板に対して、リフレッシュ
パルスを印加する等、印刷中であっても適宜リフレッシ
ュパルスを印加してもよい。
【0069】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、振動
板と個別電極間にパルス状の駆動電圧を印加することに
より、個別電極とこれに対向して配置された振動板との
間に静電引力を働かせてインク吐出を行うインクジェッ
トヘッドの駆動方法において、上記のパルス電圧とは逆
方向で、かつパルスの後端部に、振動板の変位速度をノ
ズルからインク液滴が吐出しない程度に抑制する傾きを
設けたリフレッシュパルスを、振動板と個別電極間に適
宜印加することにより、 振動板と個別電極との相対変位量が低下せず、従っ
て、インク液滴の吐出不良の原因がなくなっているの
で、高い印刷品質や信頼性が得られる。
【0070】 振動板−電極間に蓄積される残留電荷
がインクジェットヘッドの駆動に与える悪影響を排除す
る回復手段の実行中に、ノズルよりインク液滴が吐出す
ることなく、インクジェットヘッドがどの位置にあって
も、回復処理が、確実に行うことができ、振動板の回復
処理動作時にインク吐出位置にヘッドを移動させる必要
がなくなるため、振動板の回復処理に多くの手順を要さ
ず、制御を簡略化でき、高速度で印刷可能な印刷装置が
提供できる。また、インクによるプリンタ及び記録紙の
汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るインクジェットプリン
タの概念図である。
【図2】前記実施例のインクジェットヘッドの分解斜視
図である。
【図3】前記実施例のインクジェットヘッドの断面側面
図である。
【図4】図3のA−A線矢視図である。
【図5】前記実施例の振動板と個別電極の部分詳細模式
図である。
【図6】図5の振動板及び個別電極の分極に着目した模
式図である。
【図7】図5の振動板及び個別電極の残留分極に着目し
た模式図である。
【図8】前記実施例における振動板の撓みを経時的に示
した模式図である。
【図9】前記実施例のインクジェットヘッドの駆動制御
回路の構成を示した図である。
【図10】前記実施例のジェットヘッドを搭載したプリ
ンタの概要図である。
【図11】図1の実施例のインクジェットプリンタの制
御方法を示したフローチャートである。
【図12】図11のサブルーチンを示したフローチャー
トである。
【図13】図11の実施例の動作を示すタイミングチャ
ートである。
【図14】図1の実施例のインクジェットプリンタの他
の制御方法を示したフローチャートである。
【図15】図14のサブルーチンを示したフローチャー
トである。
【図16】図14の実施例の動作を示したタイミングチ
ャートである。
【図17】図1の実施例のインクジェットプリンタの他
の制御方法を示したフローチャートである。
【図18】図17のサブルーチンを示したフローチャー
トである。
【図19】振動板の回復処理に用いられるリフレッシュ
パルスの印加方法を示す図である。
【図20】振動板の回復処理動作時におけるインク吐出
防止回路を付加したインクジェットヘッドの駆動回路図
及び動作論理図。
【図21】図20の動作を示すタイミングチャート。
【図22】図20に示した回路を簡略化したインクジェ
ットヘッドの駆動回路図及び動作論理図。
【図23】図22に示した回路の動作を示すタイミング
チャート。
【図24】振動板の回復処理動作時に振動板に印加する
逆電圧パルスをD/Aコンバータで発生させるインクジ
ェットヘッドの駆動回路図。
【図25】図24に示した回路の動作を示すタイミング
チャート。
【符号の説明】
1,第1の基板 2,第2の基板 3,第3の基板 4,ノズル孔 5,振動板 6,吐出室 10,インクジェットヘッド 17,共通電極 21,個別電極 27,絶縁層 28,分極 29,残留分極 102,駆動回路 212,振動板の分極回復処理手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−344250(JP,A) 特開 平2−162049(JP,A) 特開 平3−159748(JP,A) 特開 平4−344253(JP,A) 特開 平5−50601(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/01 B41J 2/045 B41J 2/055 B41J 2/06

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ノズルと、該ノズルに連通するインク流
    路と、該流路の一部に設けられた振動板と、該振動板に
    対向して設けられた電極とからなるアクチュエータとを
    有し、前記振動板を静電気力により変形させ、前記ノズ
    ルからインク液滴を吐出し、記録を行う印刷装置の駆動
    方法において、 通常の記録時には、前記振動板を静電気力により変形さ
    せる第1の電気パルスを印加し、 所定時に、前記振動板の変位量を安定させるために、前
    記第1の電気パルスとは、極性が異なる第2の電気パル
    スを印加する駆動方法であって、 前記第2の電気パルスの後端部が、前記ノズルからイン
    ク液滴が吐出しない程度に、前記振動板の変位速度を抑
    制する所定の傾きを持つことを特徴とする印刷装置の駆
    動方法。
  2. 【請求項2】 前記第2の電気パルスを、1ドット若
    しくは1行印字する毎に、印加することを特徴とする請
    求項1記載の印刷装置の駆動方法。
  3. 【請求項3】 ノズルと、該ノズルに連通するインク流
    路と、該流路の一部に設けられた振動板と、該振動板に
    対向して設けられた電極とからなるアクチュエータと、
    前記振動板を静電気力により変形させ、前記ノズルから
    記録のためのインク液滴を吐出させる駆動手段とを有
    し、 前記駆動手段が、記録時に、前記アクチュエータに、前
    記振動板を静電気力により撓ませるための第1の電気パ
    ルスを印加する電圧印加手段と、 前記第1の電気パルスとは、極性が異なり、かつパルス
    の後端部が、前記ノズルからインク液滴が吐出しない程
    度に、前記振動板の変位速度を抑制する所定の傾きを持
    つ第2の電気パルスを、前記アクチュエータに印加する
    残留電荷除去手段とを有することを特徴とする印刷装
    置。
  4. 【請求項4】 前記ノズルが、目詰まりを回復するため
    に吐出されたインク液滴を回収する予備吐出位置にある
    時以外に、前記第2の電気パルスを、印加する残留電荷
    除去手段を有することを特徴とする請求項3記載の印刷
    装置。
  5. 【請求項5】 前記残留電荷除去手段は、前記第2の電
    気パルスを、1ドット若しくは1行印字する毎に、印加
    することを特徴とする請求項記載の印刷装置。
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