本明細書は本発明の特徴を組み入れた1つまたは複数の実施形態を開示する。開示された実施形態は本発明の例示にすぎない。本発明の範囲は開示された実施形態には限定されない。本発明は添付の請求項により定義される。
以下で「一実施形態」、「一実施例」等の表現を用いる場合には、実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含んでもよいことを示すにすぎないものであり、当該特徴、構造または特性がすべての実施形態に含まれなければならないことを意味するのではない。またこれらの表現は同一の実施形態を必ずしも指し示すものでもない。さらに、一実施形態に関連して特定の特徴、構造、または特性が説明される場合には、明示的に説明されているか否かによらず当業者の知識により他の実施形態においても当該特徴、構造または特性が有効であるものと理解されたい。
本発明の実施形態は、ハードウエア、ファームウエア、ソフトウエア、またはこれらの組合せの形式で具現化されてもよい。本発明の実施形態は、1つまたは複数のプロセッサにより読取かつ実行可能である機械読取可能媒体に記憶された命令として具現化されてもよい。機械読取可能媒体は、機械(例えばコンピュータ)により読取可能な形式で情報を記憶または伝送するいかなる機構も含んでもよい。例えば、機械読取可能媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記録媒体、光記録媒体、フラッシュメモリ装置、電気的または光学的または音響的またはその他の信号伝送形式(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、またはその他を含んでもよい。また以下では、ファームウエア、ソフトウエア、ルーチン、命令はある動作を実行するためのものとして記述されていてもよい。しかしこれらの記述は単に簡便化のためであり、これらの動作はそのファームウエア、ソフトウエア、ルーチン、命令等を実行する演算装置、プロセッサ、コントローラ、または他の装置により実際に得られるものと理解されたい。
図1は本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置1を模式的に示す図である。この装置は、照明系IL、パターニングデバイスPD、基板テーブルWT、及び投影系PSを備える。照明系(イルミネータ)ILは放射ビームB(例えば紫外放射)を調整するよう構成されている。
本明細書ではリソグラフィを取りあげて説明しているが、本発明の範囲から逸脱することなくパターニングデバイスPDはディスプレイシステム(例えばLCDテレビジョンまたはプロジェクタ)により構成することもできる。この場合、パターン付与ビームは、例えば基板やディスプレイデバイス等の様々な対象物に投影することができる。
基板テーブルWTは、基板(例えばレジストが塗布された基板)Wを支持するよう構成されており、あるパラメタに従って基板を正確に位置決めする位置決め装置PWに接続されている。
投影系(例えば屈折投影レンズ光学系)PSは、個別制御可能素子アレイにより変調された放射ビームを基板Wの(例えば1つ又は複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている。本明細書では投影系という用語は、使用される露光光、あるいは液浸露光用液体や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には例えば屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である投影系という用語と同義に用いられ得る。
照明系は、屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、あるいは他の種類の光学素子などの各種の光学素子、またはこれらの組合せを含み得るものであり、放射ビームの向きや形状、あるいは他の特性を制御するためのものである。
パターニングデバイスPD(例えばレチクル、マスク、または個別制御可能素子アレイ)はビームを変調する。普通は個別制御可能素子アレイは投影系PSに対して位置が固定されるが、あるパラメタに従って該アレイを正確に位置決めする位置決め装置に接続されていてもよい。
本明細書において「パターニングデバイス」または「コントラストデバイス」なる用語は、例えば基板の目標部分にパターンを生成する等、放射ビーム断面を変調するのに用い得るいかなるデバイスをも示すよう広く解釈されるべきである。パターニングデバイスは、静的なパターニングデバイス(例えばマスクまたはレチクル)であってもよいし、動的なパターニングデバイス(例えばプログラム可能素子アレイ)であってもよい。簡単のため本明細書では動的パターニングデバイスを例に挙げて説明しているが、本発明の範囲から逸脱することなく静的パターニングデバイスを使用することも可能であるものと理解されたい。
放射ビームに付与されるパターンは、パターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを例えば含む場合には基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に一致していなくてもよい。また、基板に最終的に形成されるパターンは、個別制御可能素子アレイ上に形成されるパターンにどの時点においても一致しないようになっていてもよい。このような事態は、基板の各部に形成される最終的なパターンが所定時間または所定回数の露光の重ね合わせにより形成され、かつこの所定の露光中に個別制御可能素子アレイ上のパターン及び/またはアレイと基板との相対位置が変化する場合に起こりうる。
通常、基板の目標部分に生成されるパターンは、その目標部分に生成されるデバイス例えば集積回路やフラットパネルディスプレイの特定の機能層に対応する(例えばフラットパネルディスプレイのカラーフィルタ層や薄膜トランジスタ層)。パターニングデバイスの例としては、レチクル、プログラマブルミラーアレイ、レーザダイオードアレイ、LEDアレイ、グレーティングライトバルブ、及びLCDアレイなどがある。
パターニングデバイスは電子的手段(例えばコンピュータ)でパターンをプログラム可能である。パターニングデバイスは、複数のプログラム可能素子を含んでもよく、例えば前の文で言及したレチクル以外のデバイスはすべて該当する。以下ではこれらを集合的に「コントラストデバイス」と称する。パターニングデバイスは少なくとも10個のプログラム可能素子を備えてもよく、または少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個、のプログラム可能素子を備えてもよい。
プログラマブルミラーアレイの一実施例は、粘弾性制御層と反射表面とを有するマトリックス状のアドレス指定可能な表面を備えてもよい。この装置の基本的な原理は例えば、反射表面のうちアドレス指定されている区域が入射光を回折光として反射する一方、アドレス指定されていない区域が入射光を非回折光として反射するというものである。適当な空間フィルタを用いることにより、反射光ビームから非回折光を取り除いて回折光だけを基板に到達させるようにすることができる。このようにして、マトリックス状のアドレス指定可能表面にアドレス指定により形成されるパターンに従ってビームにパターンが付与される。
なお代替例として、回折光をフィルタにより取り除いて非回折光を基板に到達させるようにしてもよい。
他の実施例として、回折光学MEMS(微小電気機械システム)デバイスを同様に用いることもできる。一実施例では、回折光学MEMSデバイスは、入射光を回折光として反射する格子を形成するよう変形される複数の反射性のリボン状部位を備える。
プログラマブルミラーアレイの他の例においては、マトリックス状の微小ミラーの配列が用いられる。各微小ミラーは局所的に電界を適宜付与されることによりまたは圧電駆動手段を使用することにより各々が独立に軸周りに傾斜されうる。繰り返しになるがミラーはマトリックス状にアドレス指定可能に構成されており、アドレス指定されたミラーは入射する放射ビームをアドレス指定されていないミラーとは異なる方向に反射する。このようにしてマトリックス状のアドレス指定可能なミラーにより形成されるパターンに従って反射ビームにパターンが付与されうる。必要とされるマトリックス状アドレス指定は、適宜の電子的手段を使用して実行することができる。
パターニングデバイスの他の例は、プログラマブルLCDアレイである。
リソグラフィ装置は1つ以上のコントラストデバイスを備えてもよい。例えば、リソグラフィ装置は、複数の個別制御可能素子アレイを有し、それぞれのアレイが互いに独立に制御されるものであってもよい。この構成においては、個別制御可能素子アレイのうちのいくつかのアレイまたはすべてのアレイが少なくとも1つの照明系(または照明系の一部)を共有していてもよい。斯かるアレイは当該アレイ用の支持構造及び/または投影系(または投影系の一部)を共有していてもよい。
一実施例例えば図1に示される実施例では、基板Wは実質的に円形状であってもよい。基板Wは周縁部にノッチ及び/または平坦部を有していてもよい。他の実施例では基板は例えば長方形などの多角形形状でもよい。
基板の形状が実質的に円形の場合、基板の直径は少なくとも25mmであってもよく、または例えば少なくとも50mm、少なくとも75mm、少なくとも100mm、少なくとも125mm、少なくとも150mm、少なくとも175mm、少なくとも200mm、少なくとも250mm、または少なくとも300mmであってもよい。一実施例では、基板の直径は長くても500mm、長くても400mm、長くても350mm、長くても300mm、長くても250mm、長くても200mm、長くても150mm、長くても100mm、または長くても75mmである。
基板が例えば長方形などの多角形の場合、基板の少なくとも1辺の長さ、または例えば少なくとも2辺または少なくとも3辺の長さが、少なくとも5cmであってもよく、または例えば少なくとも25cm、少なくとも50cm、少なくとも100cm、少なくとも150cm、少なくとも200cm、または少なくとも250cmであってもよい。
基板の少なくとも1辺の長さは、長くても1000cm、または例えば長くても750cm、長くても500cm、長くても350cm、長くても250cm、長くても150cm、または長くても75cmである。
一実施例においては、基板Wはウェーハであり、例えば半導体ウェーハである。一実施例ではウェーハの材料は、Si(ケイ素)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、SiGeC(シリコンゲルマニウムカーボン)、SiC(炭化ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、InP(インジウムリン)、InAs(インジウムヒ素)から成るグループから選択される。ウェーハは、III−V族化合物半導体ウェーハ、シリコンウェーハ、セラミック基板、ガラス基板、またはプラスチック基板である。基板は(人の裸眼で見たときに)透明であってもよいし、有色であってもよいし、無色であってもよい。
この基板の厚さは例えば基板材料及び/または基板寸法に応じてある程度変更される。基板の厚さは、少なくとも50μmであり、または例えば少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、または少なくとも600μmである。また、基板の厚さは、厚くても5000μm、例えば厚くても3500μm、厚くても2500μm、厚くても1750μm、厚くても1250μm、厚くても1000μm、厚くても800μm、厚くても600μm、厚くても500μm、厚くても400μm、または厚くても300μmである。
基板は露光前または露光後において例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。一実施例ではレジスト層が基板に設けられる。
投影系は、個別制御可能素子アレイにおけるパターンが基板上にコヒーレントに形成されるように当該パターンの像を形成する。これに代えて投影系は二次光源の像を形成してもよく、この場合個別制御可能素子アレイの各素子はシャッタとして動作してもよい。この場合には投影系は、例えば二次光源を形成し基板上にスポット状に像形成するために、例えばマイクロレンズアレイ(micro lens array、MLAとして知られている)やフレネルレンズアレイなどのフォーカス素子のアレイを含んでもよい。フォーカス素子のアレイ(例えばMLA)は少なくとも10個のフォーカス素子を備え、または例えば少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、または少なくとも1,000,000個のフォーカス素子を備えてもよい。
パターニングデバイスにおける個別制御可能素子の数とフォーカス素子のアレイにおけるフォーカス素子の数とは等しいか、あるいは、パターニングデバイスにおける個別制御可能素子の数がフォーカス素子のアレイにおけるフォーカス素子の数よりも多い。フォーカス素子のアレイにおける1つ以上(例えばたいていは1000以上、またはすべての)のフォーカス素子は、個別制御可能素子アレイにおける1つ以上(例えば2つ以上、または3つ以上、5つ以上、10以上、20以上、25以上、35以上、または50以上)の個別制御可能素子に光学的に連関していてもよい。
MLAは、少なくとも基板に近づく方向及び遠ざかる方向に例えば1以上のアクチュエータを用いて移動可能であってもよい。基板に近づく方向及び遠ざかる方向にMLAを移動させることができる場合には、基板を動かすことなく例えば焦点合わせをすることが可能となる。
図1及び図2に示されるように本装置は反射型(例えば反射型の個別制御可能素子アレイを用いる)である。透過型(例えば透過型の個別制御可能素子アレイを用いる)の装置を代替的に用いてもよい。
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブルを備えてもよい。このような多重ステージ型の装置においては、追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に1以上の他のテーブルで準備工程が実行されるようにしてもよい。
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が「液浸露光用の液体」で覆われるものであってもよい。この液体は比較的高い屈折率を有する例えば水などの液体であり、投影系と基板との間の空隙を満たす。液浸露光用の液体は、例えばパターニングデバイスと投影系との間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用されるものであってもよい。液浸技術は投影系の開口数を増大させる技術として周知である。本明細書では「液浸」という用語は、基板等の構造体が液体に完全に浸されているということを意味するのではなく、露光の際に投影系と基板との間に液体が存在するということを意味するに過ぎない。
図1に示されるようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。放射源により、少なくとも5nm、または例えば少なくとも10nm、少なくとも11乃至13nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも175nm、少なくとも200nm、少なくとも250nm、少なくとも275nm、少なくとも300nm、少なくとも325nm、少なくとも350nm、または少なくとも360nmの波長を有する放射が供される。また、放射源SOにより供される放射は、長くても450nm、または例えば長くても425nm、長くても375nm、長くても360nm、長くても325nm、長くても275nm、長くても250nm、長くても225nm、長くても200nm、または長くても175nmの波長を有する。この放射は、436nm、405nm、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、及び/または126nmの波長を含んでもよい。
例えば光源がエキシマレーザである場合には、光源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用ミラー及び/またはビームエキスパンダを含んで構成される。あるいは光源が水銀ランプである場合には、光源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系または放射システムと総称される。
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般にはアジャスタADにより、イルミネータの瞳面における照度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の値(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性及び照度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。イルミネータIL及び追加の関連構成要素は放射ビームを複数の分割ビームに分割するように構成されていてもよい。例えば各分割ビームが個別制御可能素子アレイにおける1つまたは複数の個別制御可能素子に対応するように構成してもよい。放射ビームを分割ビームに分割するのに例えば二次元の回折格子を用いてもよい。本明細書においては「放射ビーム」という用語は、放射ビームがこれらの複数の分割ビームを含むという状況も包含するが、これに限定されないものとする。
放射ビームBは、パターニングデバイスPD(例えば、個別制御可能素子アレイ)に入射して、当該パターニングデバイスにより変調される。放射ビームはパターニングデバイスPDにより反射され、投影系PSを通過する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる。位置決め装置PWと位置センサIF2(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTは正確に移動され、例えば放射ビームBの経路に異なる複数の目標部分Cをそれぞれ位置決めするように移動される。また、個別制御可能素子アレイ用の位置決め手段が設けられ、例えば走査中にビームBの経路に対してパターニングデバイスPDの位置を正確に補正するために用いられてもよい。
一実施例では、基板テーブルWTの移動は、ロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールは図1には明示されていない。一実施例ではショートストロークモジュールを省略してもよい。個別制御可能素子アレイを位置決めするためにも同様のシステムを用いることができる。必要な相対運動を実現するために、対象物テーブル及び/または個別制御可能素子アレイの位置を固定する一方、放射ビームBを代替的にまたは追加的に移動可能としてもよいということも理解されよう。この構成は装置の大きさを小さくするのに役立ち得る。例えばフラットパネルディスプレイの製造に適用可能な更なる代替例として、基板テーブルWT及び投影系PSを固定し、基板Wを基板テーブルWTに対して移動させるように構成してもよい。例えば基板テーブルWTは、実質的に一定の速度で基板Wを走査させるための機構を備えてもよい。
図1に示されるように放射ビームBはビームスプリッタBSによりパターニングデバイスPDに向けられるようにしてもよい。このビームスプリッタBSは、放射ビームがまずビームスプリッタBSにより反射されてパターニングデバイスPDに入射するように構成される。ビームスプリッタを使わずに放射ビームをパターニングデバイスに入射させるようにすることもできる。放射ビームは0度から90度の間の角度でパターニングデバイスに入射する。または例えば5度から85度の間、15度から75度の間、25度から65度の間、または35度から55度の間の角度であってもよい(図1には90度の例が示されている)。パターニングデバイスPDは放射ビームBを変調し、再度ビームスプリッタBSに向かって戻るように放射ビームBを反射する。ビームスプリッタBSは変調されたビームを投影系PSへと透過させる。しかしながら放射ビームBをパターニングデバイスPDに入射させ、そのまま更に投影系PSに入射させるという代替的な構成も可能であることも理解されよう。特に透過型のパターニングデバイスが用いられる場合には図1に示される構成は必要とはされない。
図示の装置はいくつかのモードで使用することができる。
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射で目標部分Cに投影される間、個別制御可能素子アレイ及び基板は実質的に静止状態とされる(すなわち1回の静的な露光)。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズによって、1回の静的露光で結像される目標部分Cの寸法が制限されることになる。
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、個別制御可能素子アレイ及び基板は同期して走査される(すなわち1回の動的な露光)。個別制御可能素子アレイに対する基板の速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが1回の動的露光での目標部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.パルスモードにおいては、個別制御可能素子アレイは実質的に静止状態とされ、パルス放射源により基板Wの目標部分Cにパターンの全体が投影される。基板テーブルWTが実質的に一定の速度で移動して、ビームBは基板上を線状に走査させられる。個別制御可能素子アレイ上のパターンは放射系からのパルス間に必要に応じて更新される。パルス照射のタイミングは、基板上の複数の目標部分Cが連続して露光されるように調整される。その結果、基板上の1つの短冊状領域にパターンが完全に露光されるようビームBにより基板Wが走査されることになる。この短冊状領域の露光を順次繰り返すことにより基板Wは完全に露光される。
4.連続スキャンモードは基本的にパルスモードと同様である。異なるのは、変調された放射ビームBに対して基板Wが実質的に等速で走査され、ビームBが基板W上を走査し露光しているときに個別制御可能素子アレイ上のパターンが更新されることである。個別制御可能素子アレイのパターンの更新に同期させるようにした、実質的に一定の放射源またはパルス放射源を用いることができる。
5.ピクセルグリッド結像モードでは、基板Wに形成されるパターンはスポット状の露光を連続的に行うことにより実現される。このモードは図2のリソグラフィ装置を使用して実現することができる。このスポット状の露光はスポット発生器により形成され、パターニングデバイスPDへと向けられる。スポット状の露光はそれぞれ実質的に同形状である。基板W上には露光スポットが実質的に格子状(グリッド状)に転写される。このスポットの寸法は転写されるピクセルグリッドのピッチよりも大きいが、毎回の露光時に露光スポットが形成する格子の大きさよりはかなり小さい。転写されるスポットの強度を変化させることによりパターンが形成される。露光照射の合間に各スポットの強度分布が変更される。
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、モードに変更を加えて動作させてもよく、さらに全く別のモードで使用してもよい。
リソグラフィでは基板上のレジスト層にパターンが露光される。そしてレジストが現像される。続いて追加の処理工程が基板に施される。基板の各部分へのこれらの追加の処理工程の作用は、レジストへの露光の程度によって異なる。特にこの処理は、所与のドーズ閾値を超える放射ドーズ量を受けた基板の部位が示す反応と、その閾値以下の放射ドーズ量を受けた部位が示す反応とが異なるように調整されている。例えば、エッチング工程においては上記の閾値を超える放射ドーズ量を受けた基板上の区域は、レジスト層が現像されることによりエッチングから保護される。一方、この閾値以下の放射ドーズ量を受けたレジストは露光後の現像工程で除去され、基板のその区域はエッチングから保護されない。このため、所望のパターンにエッチングがなされる。特に、パターニングデバイス内の個別制御可能素子は、パターン図形内部となる基板上の区域での露光中の放射ドーズ量がドーズ閾値を超えるように実質的に高強度であるように設定される。基板の他の領域は、ゼロまたはかなり低い放射強度を受けるように対応の個別制御可能素子が設定されることにより、ドーズ閾値以下の放射を受ける。
実際には、パターン図形端部での放射ドーズ量は所与の最大ドーズ量からゼロへと急激に変化するわけではない。この放射ドーズ量は、たとえ図形の境界部分の一方の側への放射強度が最大となり、かつその図形境界部分の他方の側への放射強度が最小となるように個別制御可能素子が設定されていたとしても急激には変化しない。回折の影響により、放射ドーズ量の大きさは移行領域を介して低下するからである。パターン図形の境界位置は最終的にレジストの現像により形成される。その境界位置は、照射されたドーズ量が閾値を下回る位置によって定められる。この移行領域でのドーズ量低下のプロファイル、ひいてはパターン図形の境界の正確な位置は、当該図形境界上または近傍に位置する基板上の各点に放射を与える個別制御可能素子の設定により、より正確に制御できるであろう。これは、照度レベルの最大値または最小値を制御するだけではなく、当該最大値及び最小値の間の照度レベルにも制御することによっても可能となるであろう。これは通常「グレイスケーリング」と呼ばれる。
グレイスケーリングによれば、個別制御可能素子により基板に2値の放射強度(つまり最大値と最小値)だけが与えられるリソグラフィシステムよりも、パターン図形の境界位置の制御性を向上させることができる。少なくとも3種類の放射強度が基板に投影されてもよく、または例えば少なくとも4種類の放射強度でも、少なくとも8種類の放射強度でも、少なくとも16種類の放射強度でも、少なくとも32種類の放射強度でも、少なくとも64種類の放射強度でも、少なくとも128種類の放射強度でも、少なくとも256種類の放射強度でもよい。
グレイスケーリングは上述の目的に加えてまたは上述の目的に代えて使用されてもよい。例えば、照射されたドーズ量レベルに応じて基板の各領域が2種以上の反応を可能とするように、露光後の基板への処理が調整されていてもよい。例えば、第1のドーズ閾値以下の放射を受けた基板の部位では第1の種類の反応が生じ、第1のドーズ閾値以上で第2のドーズ閾値以下の放射を受けた基板の部位では第2の種類の反応が生じ、第2のドーズ閾値以上の放射を受けた基板の部位では第3の種類の反応が生じるようにしてもよい。したがって、グレイスケーリングは、基板上での放射ドーズ量プロファイルが2以上の望ましいドーズ量レベルを有するようにするのに用いることができる。一実施例では、このドーズ量プロファイルは少なくとも2つの所望のドーズ量レベルを有し、または例えば少なくとも3つの所望のドーズ量レベル、少なくとも4つの所望のドーズ量レベル、少なくとも6つの所望のドーズ量レベル、または少なくとも8つの所望のドーズ量レベルを有してもよい。
放射ドーズ量プロファイルの制御は、上述のように基板上の各点が受ける放射強度を単に制御するという方法以外の方法によっても可能である。例えば、基板上の各点が受ける放射ドーズ量は、各点への露光時間を代替的にまたは追加的に制御することによっても制御することができる。他の例として、基板上の各点は、連続的な複数回の露光により放射を受けてもよい。このような連続的複数露光から一部の露光を選択して照射することにより代替的にまたは追加的に各点が受ける放射ドーズ量を制御することが可能となる。
図2は、本発明に係る露光装置の一例を示す図である。この実施例は例えばフラットパネルディスプレイの製造に用いることができる。図1に示される構成要素に対応するものには図2においても同じ参照符号を付している。また、基板やコントラストデバイス、MLA、放射ビームなどについてのさまざまな構成例などを含む上述のさまざまな変形例は同様に適用可能である。
図2に示されるように、投影系PSは、2つのレンズL1、L2を備えるビームエキスパンダを含む。第1のレンズL1は、変調された放射ビームBを受け、開口絞りASの開口部で合焦させる。開口部には他のレンズALを設けてもよい。そして放射ビームBは発散し、第2のレンズL2(例えばフィールドレンズ)により合焦させられる。
投影系PSは、拡大された変調放射ビームBを受けるように構成されているレンズアレイMLAをさらに備える。変調放射ビームBの異なる部分はそれぞれレンズアレイMLAの異なる部分を通過する。この変調放射ビームBの異なる部分はそれぞれ、パターニングデバイスPDの1つ以上の個別制御可能素子に対応している。各レンズは変調放射ビームBの各部分を基板W上の点に合焦させる。このようにして基板W上に照射スポットSの配列が露光される。図示されているレンズアレイには8つのレンズ14が示されているだけであるが、レンズアレイは数千のレンズを含んでもよい(パターニングデバイスPDとして用いられる個別制御可能素子アレイについても同様である)。
図3は、本発明の一実施形態に係り、図2のシステムを用いて基板W上にどのようにパターンが生成されるのかを模式的に示す図である。図中の黒丸は、投影系PSのレンズアレイMLAによって基板に投影されるスポットSの配列を示す。基板は、基板上での露光が進むにつれて投影系に対してY方向に移動する。図中の白丸は、基板上で既に露光されている露光スポットSEを示す。図示されるように投影系PSのレンズアレイMLAによって基板に投影された各スポットは基板上に露光スポット列Rを形成する。各スポットSの露光により形成される露光スポット列Rがすべて合わさって、基板にパターンが完全に形成される。上述のようにこのような方式はよく「ピクセルグリッド結像」と称される。
照射スポットSの配列が基板Wに対して角度θをなして配置されている様子が示されている(基板Wの端部はそれぞれX方向及びY方向に平行である)。これは、基板が走査方向(Y方向)に移動するときに、各照射スポットが基板の異なる領域を通過するようにするためである。これにより、照射スポット15の配列により基板の全領域がカバーされることになる。角度θは大きくても20°または10°であり、または例えば大きくても5°、大きくても3°、大きくても1°、大きくても0.5°、大きくても0.25°、大きくても0.10°、大きくても0.05°、または大きくても0.01°である。角度θは小さくても0.001°である。
図4は、本発明の一実施形態において、どのようにしてフラットパネルディスプレイ基板W全体が複数の光学エンジンを用いて1回の走査で露光されるのかを模式的に示す図である。この例では照射スポットSの配列SAが8つの光学エンジン(図示せず)により形成される。光学エンジンはチェス盤のような配列で2つの列R1、R2に配置されている。照射スポットの配列の端部が隣接の照射スポット(例えば図3のスポットS)の配列の端部に(走査方向であるY方向において)少し重なるように形成される。一実施例では光学エンジンは少なくとも3列、例えば4列または5列に配列される。このようにして、照射の帯が基板Wの幅を横切って延び、1回の走査で基板全体の露光が実現されることとなる。光学エンジンの数は適宜変更してもよい。一実施例では、光学エンジンの数は少なくとも1個であり、または例えば少なくとも2個、少なくとも4個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、または少なくとも17個である。一実施例では、光学エンジンの数は40個未満であり、または例えば30個未満または20個未満である。
各光学エンジンは、上述の照明系IL、パターニングデバイスPD、及び投影系PSを別個に備えてもよい。あるいは2個以上の光学エンジンが1以上の照明系、パターニングデバイス、及び投影系の少なくとも一部を共有してもよい。
図5は、本発明の一実施形態に使用されうる較正ユニット10を示す。図示されるように、較正ユニット10は、光学素子の第1セット11(以下では「選択光学系」と称する)を含んでもよい。選択光学系11は、個別制御可能素子アレイPDにより変調された放射ビーム12の一部を選択するよう形成されている。特に、選択光学系11は、個別制御可能素子アレイPDと投影系PSへの入口との間に設けられてもよい。光学素子の第2セット13が設けられており、変調放射ビームの選択部分を放射ビーム検査装置14へと向ける。放射ビーム検査装置14は適宜の使いやすい構成であってよく、例えばカメラ、CCD、CMOSセンサ、シングルポイントのフォトダイオード、またはこれらからなる一群であってもよい。放射ビーム検査装置14の表面にシンチレータ層14aが形成されていてもよい。この層14aは放射ビーム検査装置の効率をよくするように使用されてもよいし、リソグラフィ装置で用いられる波長から放射ビーム検査装置14が感応する波長へと放射の波長を変換するために使用されてもよい。放射ビーム検査装置の特性及び使用される放射の波長によっては、シンチレータ層が必要とされない場合もある。
よって、図5に示される構成によれば、個別制御可能素子アレイPDにより変調された放射ビームの検査が可能となる。したがって、個別制御可能素子アレイの特性及び制御信号への応答を決定することが可能である。これは後述する。なお、アレイに供給される制御信号の空間像への影響を決定するのに、各個別制御可能素子のすべての特性を完全に決定しなくても十分である場合もある。
個別制御可能素子アレイPDをリソグラフィ装置から取り外す必要がないことが理解されよう。また、この構成によれば、デバイスを形成すべく基板に投影される放射ビームを個別制御可能素子アレイPDが変調する際に使用される照明系ILと同一の照明系が生成する放射により、個別制御可能素子アレイPDが照明される。これは有利である。露光処理と同様に較正処理においても放射の強度が比較的大きいことが重要だからである。そうすると、放射ビーム検査装置による測定結果を短時間で正確に取得し、較正の所要時間を短くすることができる。さらに、較正処理の実行のために個別制御可能素子アレイPDを照明する追加の構成要素が不要であるから、較正用の設備を設けるコストが低減される。また、較正処理において個別制御可能素子アレイPDの照明条件を露光処理と共通にすることが保証される。例えば放射の波長を同じにすることができる。
図示されるように、選択光学系11にはアクチュエータシステム20が設けられていてもよい。アクチュエータシステム20は、選択光学系11の1つまたは複数の光学素子の位置を制御する。よって、放射ビーム検査装置14により検査される変調放射ビームの一部分を選択するために、選択光学系11が移動されてもよい。なお図5には示されているが、選択光学系11は変調放射ビームの一部分を投影系PSとは別の方向に向ける1つまたは複数の反射器を備えてもよい。あるいはその他の構成が使用されてもよい。
図5に示されるように、光学素子のセット13は、変調放射ビーム12の一部分を放射ビーム検査装置14に向けるために使用される。光学素子セット13には1つまたは複数の光学素子が含まれており、例えば、放射ビーム検査装置14へ向ける変調放射ビーム12の一部分の焦点合わせを適切に行うよう適当なアクチュエータシステム21を使用して各光学素子を調整可能であってもよい。
変調放射ビームの一部分を放射ビーム検査装置14に向けるために使用される選択光学系11及び光学素子セット13は、変調放射ビーム12の検査されるべき一部分を選択し放射ビーム検査装置14にその一部分を投影するよう機能する投影ユニット16を構成する。なおその他の構成も可能である。特に、投影ユニットの1つまたは複数の光学素子が多数の機能を実現してもよい。あるいは例えば、投影ユニット16は変調放射ビーム12の全体をある像面に投影し、放射ビーム検査装置14が変調放射ビームの検査されるべき一部分を選択するよう移動可能であってもよい。なお、放射ビーム検査装置は個別制御可能素子アレイにより変調された放射ビームの実質的に全体を検査するよう構成されていてもよい。
一方、図5に示されるように、放射ビーム検査装置14の位置は、投影系PSの位置に対して実質的に固定されていてもよい。例えば図5に示されるように、投影系PS及び放射ビーム検査装置14の双方が共通の基準フレーム18に搭載されていてもよい。これに代えてまたはこれとともに、放射ビーム検査装置の位置は個別制御可能素子アレイに対して実質的に固定されていてもよい。この場合例えば、放射ビーム検査装置及び個別制御可能素子アレイの双方が共通の基準フレームに搭載されていてもよい。
なお、投影系PSまたは放射ビーム検査装置14と基準フレーム18との間で振動が伝わらないことを保証する低剛性の支持部により、投影系PS及び放射ビーム検査装置14の少なくとも一方が基準フレーム18に搭載されていてもよい。
基準フレームに対する投影系PS及び/または放射ビーム検査装置14の位置、または投影系PS及び/または放射ビーム検査装置14に対する基準フレームの位置をモニタする位置測定システム及び/または変位測定システムが設けられてもよい。
放射ビーム検査装置14をリソグラフィ装置に実質的に固定することは、放射ビーム検査装置14と制御システムとの間のデータ接続をより容易にするという点で有利である。制御システムは例えば、較正ユニット10を制御するために設けられている較正コントローラ30である。このことが重要であるのは、較正処理の所要時間を最小化するために放射ビーム検査装置14の出力に必要なデータ速度が比較的大きいからである。そうすると放射ビーム検査装置14の消費電力も比較的大きくなる。リソグラフィ装置内部の不要な熱負荷は避けることが望ましい。この熱負荷は例えば、放射ビーム検査装置が設けられているフレームへの熱負荷となり、アライメントのずれや測定精度の低下につながる。よって、放射ビーム検査装置の冷却を設けることが必要となる場合もある。また、放射ビーム検査装置の温度を冷やすことにより測定ノイズも低下しうる。放射ビーム検査装置14を実質的に固定することにより、個別制御可能素子アレイの冷却もより容易となる。
投影ユニット16の光学素子のうち、放射ビーム検査装置14の位置に対して固定されている光学素子があってもよい。しかし、上述のように、放射ビーム検査装置14により検査されるべき変調放射ビーム12の一部分を選択するために使用される投影ユニット16の光学素子は移動可能であってもよい。
較正ユニットの構成にかかわらず、較正ユニットは2つの状態に切り替わるように構成されている。第1の状態においては変調放射ビーム12は、較正ユニット10に妨げられることなく投影系PSへと入射する。第2の状態においては、変調放射ビーム12の少なくとも一部が、放射ビーム検査装置14による検査のために較正ユニット10へと入射する。例えば図5に示される構成においては、選択光学系11はアクチュエータシステム20により移動可能である。アクチュエータシステム20は、放射ビーム検査装置14に投影される変調放射ビーム12の一部分を選択するために、すなわち較正ユニット10を第2の状態で動作させるために選択光学系11を移動させるだけではなく、個別制御可能素子アレイPDから投影系PSへと進む変調放射ビーム12を何ら妨げることのないように選択光学系11を移動させてもよい。よって、較正ユニット10が第1の状態にあるときにリソグラフィ装置はデバイス形成のために放射ビームを変調して基板に露光する露光処理を実行し、第2の状態においてリソグラフィ装置は較正ユニット10を使用して較正処理を実行してもよい。この場合、露光処理と較正処理とでリソグラフィ装置を切り替えることは簡単であるから、その所要時間は少なくてすむ。よって、リソグラフィ装置の露光処理実行可能時間を増やすことができるので、リソグラフィ装置の動作コストを小さくすることができる。
図5に示されるように、リソグラフィ装置はアレイコントローラ25を備えてもよい。アレイコントローラ25は、個別制御可能素子アレイPDに制御信号を供給する。制御信号は各個別制御可能素子を要求状態に設定するために供給される。すなわち、放射ビームを所望のパターンに変調する状態に個別制御可能素子アレイを設定するということである。制御信号を生成するためにアレイコントローラ25は、要求パターンに対応するデータを、その要求パターンを形成するために個別制御可能素子アレイPDに供給される制御信号へと変換するために較正データを使用するよう構成されている。よって、較正処理において較正ユニット10は、アレイコントローラ25により露光処理中に使用される較正データを生成してもよい。これに代えてまたはこれとともに、較正処理において較正ユニット10は、以降の露光処理で使用するために既存の較正データを更新してもよい。
較正データを生成するために、較正コントローラ30は較正処理の際に、個別制御可能素子アレイPDにアレイコントローラ25が制御信号を供給するようアレイコントローラ25に指令を与えてもよい。較正コントローラ30は、放射ビーム検査装置14から検査データを受信する。この検査データは、アレイコントローラ25が個別制御可能素子アレイPDに供給した制御信号に対応する変調放射ビーム12の検査された部分に関する検査データである。較正コントローラ30は、較正処理の各段階で放射ビーム検査装置14に検査される変調放射ビーム12の部分を選択するように、選択光学系11に付随するアクチュエータ20を制御してもよい。較正コントローラ30は、放射ビーム検査装置14へと変調放射ビームの選択部分を向ける光学素子セット13を制御してもよい。そのために例えば、較正コントローラ30は、放射ビーム検査装置14に投影される変調放射ビームの選択部分の焦点を制御するよう光学素子セット13を制御してもよい。較正処理の例についてはさらに後述する。
変調放射ビーム12の一部分を放射ビーム検査装置14に投影する投影ユニット16の光学系の開口数NAは、変調放射ビーム12の放射の波長で個別制御可能素子アレイPDの各個別制御可能素子を放射ビーム検査装置14が解像する水準よりも小さくてもよい。そうすると、各素子を解像すべきシステムに要する光学素子よりも安価なもので投影ユニット16を形成することができるので好ましい。加えて、投影ユニット16の開口数NAが大きい場合に比べて、放射ビーム検査装置14に検査される変調放射ビームの一部を大きくすることができる。投影ユニット16の開口数NAを比較的小さくすることによる更なる利点は、個別制御可能素子アレイPDにより回折され放射ビーム検査装置14に結像される放射を少なくすることができるということである。投影ユニット16の開口数NAは比較的小さくてもよいが、変調放射ビームを基板に投影する投影系PSの開口数NAと少なくとも同程度に投影ユニット16の開口数NAが大きいことが好ましい場合もある。このようにすれば、投影系PSを通じて基板に伝達されるすべての情報を放射ビーム検査装置が受け取ることが保証されうる。
なお、投影ユニット16の開口数NAを比較的小さくすると、1回の検査では個別制御可能素子の特定の特性を決定することができない場合もある。しかし、複数回の検査で得られるデータを組み合わせることにより、制御信号の特定の組合せが与えられたときの個別制御可能素子アレイPDのすべての応答を較正することも可能となる。
特定の制御信号を与えたときの1つの個別制御素子の特性を決定することが必要ではないこともある。特に、露光処理においてアレイ内の複数の個別制御可能素子からの放射を基板上の特定位置が受けるようにリソグラフィ装置が構成されている場合には必要ではなくなる。このような構成は、いわゆるデッドピクセルの影響を軽減するために使用されることがある。デッドピクセルとは、欠陥状態にあるアレイ内部の個別制御可能素子であり、例えば制御信号が供給されても状態が変化しない個別制御可能素子や、制御信号に対する応答が想定される応答から外れている個別制御可能素子である。基板上の各点が受ける放射が複数の個別制御可能素子からの放射の合計である場合には、欠陥個別制御可能素子を補償するよう他の個別制御可能素子に与える制御信号を調整してもよい。よって上述のように、供給される制御信号に対する個別制御可能素子それぞれの応答を較正するよりも、個別制御可能素子アレイ全体の応答を較正するほうが有効である場合もある。
個別制御可能素子アレイPDにより変調される放射ビームを調整する照明系ILは、複数の設定で動作可能であってもよい。例えば、照明系ILは、露光処理中に基板に投影される放射ビームが互いに直交する方向の直線偏光とされている第1状態と第2状態とを切替可能に構成されていてもよい。したがって、適切な偏光方向を有する放射を使用することで、偏光方向に応じて異なるフィーチャを基板上に露光することができる。較正ユニット10は、照明系ILのそれぞれの設定において独立に較正データを生成及び/または更新するよう構成されていてもよい。例えば、較正処理において照明系ILは第1の設定に設定され、較正ユニット10は第1の設定に対応する較正データを生成及び/または更新してもよい。次いで照明系ILは第2の設定に設定され、較正ユニット10は第2の設定に対応する較正データを生成及び/または更新する第2の較正処理を実行してもよい。照明系ILの複数の照明設定のうち一部または全部に対して必要なだけこの処理を繰り返してもよい。
図5は、1つの個別制御可能素子アレイを有するリソグラフィ装置に使用される較正ユニット10の一例を示す。一般に、欠陥個別制御可能素子が十分に少ない個別制御可能素子アレイの製造は難しいため、個別制御可能素子アレイの大きさは制限される。そのため、1つの個別制御可能素子アレイで変調された放射ビームにより露光される基板上の面積も制限される。よって、基板の露光速度を適切に確保するために、複数の個別制御可能素子アレイをリソグラフィ装置に使用して、基板に露光される放射ビームを変調してもよい。個別制御可能素子アレイのそれぞれが放射ビーム断面の一区域を変調してもよい。各区域を基板に投影するために別々の投影系が設けられてもよい。あるいは、1つの投影系が変調放射ビームの全区域を基板に投影してもよい。
図6は、複数の個別制御可能素子アレイ41、42、43を有するリソグラフィ装置のための較正データを生成する較正ユニット40の一例を示す。図6には3つの個別制御可能素子アレイを有するリソグラフィ装置のための較正ユニット40が示されているが、図6の構成は必要に応じて任意の数の個別制御可能素子アレイに変更されてもよい。他の実施例においては、リソグラフィ装置は、図6に示されるアレイ41、42、43等の個別制御可能素子アレイを14個備えてもよい。
図6に示されるように、較正ユニット40は、図5を参照して説明したものと同様の構成要素を個別制御可能素子アレイ41、42、43のそれぞれについて備えてもよい。例えば、個別制御可能素子アレイ41、42、43のそれぞれにより変調された放射ビームの各区域から変調放射ビームの一部を選択する選択光学系51、52、53が設けられていてもよい。また、選択光学系51、52、53のそれぞれに付随して光学素子セット61、62、63が設けられていてもよい。光学素子セット61、62、63は、対応する放射ビーム検査装置71、72、73に変調放射ビームの選択された一部を向ける。よって、図6に示される構成においては、個別制御可能素子アレイ41、42、43のそれぞれに関して、投影系及び放射ビーム検査装置71、72、73が設けられている。したがって、較正ユニット40は、リソグラフィ装置の各個別制御可能素子アレイ41、42、43の較正データの生成及び/または更新を同時に行うことができる。よって、個別制御可能素子アレイの検査を別々に行う場合に比べて、リソグラフィ装置全体の較正処理の所要時間を相当短くすることができる。
他の実施例においては、図5を参照して説明した較正ユニット10の変形例が図6に示される較正ユニット40に同様にして適用されてもよい。
図6に示されるように、各放射ビーム検査装置71、72、73に検査される変調放射ビームの各区域の一部分を選択する選択光学系51、52、53の1つまたは複数の光学素子は、共通の基準フレーム55に搭載されていてもよい。この場合、共通基準フレーム55の位置を制御する単一のアクチュエータシステム56が設けられ、各放射ビーム検査装置71、72、73に検査される変調放射ビームの各部分を選択する光学素子の位置が制御されてもよい。よって、一実施形態においては、各放射ビーム検査装置71、72、73に検査される変調放射ビームの部分の選択を単一のアクチュエータシステムが制御してもよい。
同様に、各放射ビーム検査装置71、72、73が共通基準フレーム75に搭載され、各放射ビーム検査装置71、72、73の相対位置が実質的に固定されていてもよい。図5の較正ユニット10で説明したのと同様にして、放射ビーム検査装置71、72、73と同様に投影系PSも共通基準フレーム75に搭載されてもよい。
各放射ビーム検査装置71、72、73に変調放射ビームの一部を向けるために設けられている光学素子セット61、62、63の1つまたは複数の光学素子もまた、放射ビーム検査装置71、72、73が搭載されている共通基準フレーム75に搭載されていてもよい。しかし、図6の実施形態においては、光学素子セット61、62、63の少なくとも1つの光学素子が光学素子基準フレーム65に搭載され、それらの光学素子の相対位置が固定されていてもよい。放射ビーム検査装置71、72、73が搭載されている共通基準フレーム75と、光学素子基準フレーム65との相対位置を調整するアクチュエータシステム66が設けられていてもよい。この場合、アクチュエータ66は、放射ビーム検査装置71、72、73に対する各光学素子セット61、62、63の少なくとも1つの光学素子の相対位置を同時に調整するために使用されてもよい。各放射ビーム検査装置71、72、73に向けられる変調放射ビームの像の焦点が単一のアクチュエータシステム66を使用して調整されてもよい。
図6に示される較正ユニット40等の較正ユニットは、投影系PSに対する基準フレーム55、65、75のうち任意の2つの相対位置をモニタする位置センサ、及び/または、基準フレーム55、65、75のうちいずれかとリソグラフィ装置に設けられた他の基準フレームとの相対位置をモニタする位置センサを備えてもよい。
図5を参照して説明したのと同様にして、図6に示される較正ユニット40の選択光学系51、52、53は、第1状態においては対応する投影ユニットが投影系PSへの変調放射ビームの入射を何ら妨げずに、かつ第2状態においては個別制御可能素子アレイ41、42、43により変調された放射ビームの一区域の一部分を選択光学系51、52、53が検査のために選択するよう構成されていてもよい。一実施形態においては、アクチュエータシステム56は、個別制御可能素子アレイ41、42、43により変調された放射ビームから選択光学系51、52、53の構成要素が取り除かれるように基準フレーム55を移動させてもよい。
図7は、投影系PSにより基板に投影される像面の一例を示す。図7に示されるように、像面80の複数の部分81は個別制御可能素子アレイのそれぞれにより変調された放射ビームの区域に対応しており、像面80の比較的小さい部分を占める。加えて、像面80の部分81は、互いにオフセットされている列82、83に配列されていてもよい。図7の実施例では、像面において隣接する各部分は、列82、83の長手方向にある小さい距離だけ離れている。図7においてこのような配列が必要となるのは、各個別制御可能素子アレイの周囲に制御信号や例えば冷却等のための接続を収容する十分な空間を与えるためである。他の実施例ではこのような間隔が設けられていなくてもよい。この場合、個別制御可能素子アレイ自体の配置(例えば図6に示される個別制御可能素子アレイ)に対応する配列であってもよい。
図7に示されるように、選択光学系51、52、53は、(図7において実線で示される)第1状態と(図7において破線で示される)第2状態との間で切り替えるために比較的小さい距離だけ移動しなければならないように構成されていてもよい。第2状態において変調放射ビームの一部が検査される。
図8は、図5及び図6を参照して説明した較正ユニット等の較正ユニットを使用して変調放射ビームの一部を検査するために使用され得る光学系の一例を模式的に示す。図8に示される光学素子は単純化されており、一部の光学素子が図5及び図6を参照して説明した投影ユニットの少なくとも一部として設けられていてもよい。
図8に示されるように、放射源SOにより放射が生成され照明系ILにより個別制御可能素子アレイPDへと向けられる。そして、変調された放射ビームの一部の放射が投影ユニットにより放射ビーム検査装置90へと向けられる。図8においては投影ユニットは光学素子91、92で模式的に表されている。図8に示されるように、放射ビーム検査装置90は、個別制御可能素子アレイPDの空間像が放射ビーム検査装置90に結像するように光学素子91、92の像面に配置されていてもよい。しかし、放射ビーム検査装置90に対する光学素子91、92の少なくとも一方の距離を調整することにより、焦点の測定を行ってもよい。ある実施例においては、この調整はアクチュエータシステムにより行われてもよい。図6に示される較正ユニット40等の較正ユニットの場合、光学素子が搭載されている基準フレームの移動により、この調整が行われてもよい。好ましくは、少なくとも1つの光学素子を異なる複数の位置に切り替えて変調放射ビームの一部を検査することにより、個別制御可能素子アレイの個別制御可能素子の位相特性に関する情報を取得して更なる較正データを得られるようにしてもよい。
図8に示されるように、1つまたは複数のシャッタ93が関連するアクチュエータ94により制御されてもよい。シャッタ93は不要な迷光を取り除くよう位置決めされてもよい。一実施例においては、1つまたは複数のシャッタ93は、投影ユニット内部、及び/または投影ユニットと放射ビーム検査装置90との間の瞳面90に位置決めされてもよい。
図9は、変調放射ビームの一部を検査するために較正ユニットに組み込まれ得る光学系を模式的に示す。図9に示される光学系は図8に示されるものと同様であり、簡単のため、同様の構成要素についての説明は省略する。この実施例では、放射ビーム検査装置90が投影ユニットの瞳面に設けられるように投影ユニットが構成されている。一実施形態においては、このような構成は、投影ユニットの1つまたは複数の光学素子の相対位置を調整することにより、及び/または投影ユニットの1つまたは複数の光学素子を放射ビーム経路に追加及び/または放射ビーム経路から取り除くことにより、実現されてもよい。
上述のように投影ユニットが複数の投影ユニットを有する較正ユニット40の一部である場合には、投影ユニットの可動光学素子は、他の投影ユニットの光学素子も搭載されている基準フレームに搭載されてもよい。この場合、各投影ユニットの光学素子を制御する単一のアクチュエータシステムが設けられていてもよい。
単一の投影ユニットが図8に示される方式で像面を検査するよう構成されていてもよい。他の実施例では、単一の投影ユニットが、図9に示される方式で瞳の像を検査するよう構成されていてもよい。あるいは、これらの構成を切替可能に構成されていてもよい。
図9に示されるように瞳での測定結果を用いることにより、制御信号と個別制御可能素子応答とに関連する較正データの精度を高めることができる。例えば、個別制御可能素子が回転可能ミラーで形成されている個別制御可能素子アレイの場合、ある素子への制御信号が変化することによりそのミラーの回転角度が変化すると、放射ビーム検査装置90における像が移動することになる。よって、放射ビーム検査装置90に形成される像の位置を検出することにより、制御信号に対する個々の素子の応答を精度よく測定することができる。
しかし、上述の方法で個別制御可能素子のそれぞれについて較正データを取得するには比較的時間がかかる。このため、一実施例においては、図8に模式的に示される投影ユニットによる像面での測定と、図9に模式的に示される投影ユニットによる瞳面での測定とを組み合わせてもよい。
瞳面での測定をする較正処理をより迅速に完了するために、投影ユニットは、変調放射ビームの一部の瞳像を放射ビーム検査装置に直線上に形成するシリンドリカルレンズを含んでもよい。図10にこの構成例を模式的に示す。図10に示される構成例は図8及び図9に示されるものに類似しており、同様の点については説明を省略する。図10に示されるように、シリンドリカルレンズ100(図10には断面が示されている)は、変調放射ビームの一部を放射ビーム検査装置90の直線101(図10には一端が示されている)に投影する。よって、アレイPDの一列の個別制御可能素子の瞳測定を同時に実行することができる。各ミラーの回転角度変化は、放射ビーム検査装置に投影された直線像の移動量、すなわち直線101に実質的に垂直な方向の移動量に対応する。
上述の較正ユニットを使用してさまざまな較正処理を実行することができる。その較正処理の例を、1つのアレイコントローラに制御される1つの個別制御可能素子アレイの較正データを1つの放射ビーム検査装置で生成及び/または更新する場合について後述するが、説明する較正処理は、複数の個別制御可能素子アレイを有するリソグラフィ装置の較正データの生成用及び/または更新用の複数の放射ビーム検査装置を有する較正ユニットにも用いることができる。また、1つの較正コントローラが複数の較正処理を制御してもよい。1つの較正ユニットが複数の個別制御可能素子アレイの較正データを生成及び/または更新する場合に、1つの較正コントローラが設けられてもよい。代替的な実施例においては、複数の較正コントローラが設けられていてもよく、例えば各較正コントローラが対応する個別制御可能素子アレイの較正データを生成及び/または更新してもよい。また、1つのアレイコントローラが、リソグラフィ装置のすべての個別制御可能素子アレイを制御するよう設けられていてもよい。あるいは、複数のアレイコントローラが設けられていてもよく、例えば各アレイコントローラが対応する個別制御可能素子アレイを制御するよう設けられていてもよい。
1つの代表的な較正処理においては、アレイコントローラは、変調された放射ビームがその断面にわたって公称上最小の放射強度となるように各個別制御可能素子を設定する。例えば、前回の較正処理を既に終えている場合には、アレイコントローラは、前回生成された較正データを使用して各個別制御可能素子を設定してもよい。あるいは、例えば、較正データが前回生成されていない場合には、アレイコントローラは、個別制御可能素子アレイが設計仕様に沿って正確に動作するという前提に基づいて各個別制御可能素子に制御信号を与えてもよい。
そして、放射検査装置は変調された放射ビームの1つまたは複数の部分を検査する。一実施例においては、放射検査装置は、変調放射ビームのうちビーム全体を代表すると考えられる一部分を検査する。あるいは、例えば、変調放射ビームの実質的に全体を検査してもよい。最小の放射強度と測定強度との偏差に基づいて較正データが生成または修正され、アレイコントローラは新たな較正データを使用して、放射ビームがその断面にわたって最小の放射強度に変調されるように個別制御可能素子アレイを再設定してもよい。これらの工程は、検査された変調放射ビームの一部分のビーム断面にわたって測定放射強度が最小放射強度に十分近いとみなされるまで較正データを改善するように反復されてもよい。一実施例においては、上述の処理により有用なセットポイント較正データが与えられる。
変調放射ビームの強度をビーム断面にわたって実質的に最小とするのに必要な状態に各個別制御可能素子が設定されると、各個別制御可能素子には異なる複数レベルの制御信号が連続的に供給され、異なる制御信号レベルに対する各個別制御可能素子の応答が測定される。
一実施例においては、放射ビーム検査装置は、各個別制御可能素子に異なる複数の制御信号を与えたことによる空間像の変化を測定してもよい。各個別制御可能素子がこの方法で一度試験されると、特定の制御信号セットが個別制御可能素子アレイに与えられたときの空間像の各点での総放射強度を決定することができる。一実施例においては、空間像のある点での総放射強度は、各個別制御可能素子に制御信号が与えられたときのその点への寄与を合計することにより決定されてもよい。また、反対に、空間像の放射強度を所望のパターンとするために個別制御可能素子アレイの各素子に与えられるべき制御信号を決定してもよい。
各個別制御可能素子は、変調放射ビームの空間像の比較的小さい部分の放射強度にしか寄与しない。よって、一実施例においては、放射ビーム検査装置の各画素が複数の個別制御可能素子からの放射を同時に受けることなく多数の個別制御可能素子の応答が異なる複数の制御信号で試験されるように、同時に多数の個別制御可能素子に制御信号を連続的に与える。そうすると、個別制御可能素子アレイに制御信号を生成するための較正データの生成及び/または更新を、各個別制御可能素子の試験を完全に別々に行う場合に比べて迅速に行うことができる。
一実施例の較正処理においては、予め定められた複数パターンの制御信号が個別制御可能素子アレイに連続的に与えられ、その結果得られる空間像が放射ビーム検査装置により検査される。個別制御可能素子アレイへの異なる複数パターンの制御信号により得られる十分な数の空間像を検査することにより、各個別制御可能素子の応答の空間像への影響を決定することができる。例えば、較正コントローラは、制御信号に対する個別制御可能素子の応答をモデル化する処理ユニット30aを備えてもよい。予め定められた異なる複数パターンの制御信号から得られる複数の空間像を検査することにより、モデルのパラメタが更新され、それを用いて較正データが生成及び/または更新されてもよい。この場合、モデル化処理におけるパラメタは、モデル化処理により決定される予測放射強度レベルと測定放射強度レベルとの対応がより近くなるように修正される。
更なる一実施例においては、個別制御可能素子アレイに与えられる制御信号の予め設定されたパターンは例えば、ミラーの特定パラメタのモデルを改良しようとするときの信号対雑音特性を最大化するように選択されてもよい。これとともにまたはこれに代えて、個別制御可能素子アレイに与えられる制御信号の予め設定されたパターンは、ランダムまたは擬似ランダムであってもよい。これは、個別制御可能素子アレイの信号対雑音特性が未知である場合に有効である。また、個別制御可能素子アレイに与えられる制御信号の予め設定されたパターンは、以前の較正処理で得られたデータに基づいていてもよい。
上述の較正ユニット及び較正処理は較正データの生成及び/または更新に関して述べている。しかし、一実施例においては、較正ユニット及び較正処理は、以前に得られた較正データの有効性を判定するために使用されてもよい。例えば、較正コントローラは、個別制御可能素子アレイにある制御信号のセットが与えられたときに放射ビーム検査装置から得られる予測結果を、以前の較正データを用いて決定してもよい。予測結果は、放射ビーム検査装置での実際の測定結果と比較されてもよい。予測測定結果と実測定結果との偏差があるしきい値より小さい場合には、較正データは有効であるとみなされる。しかし、偏差がしきい値を超える場合には較正データは有効でないとみなされてもよい。
この構成が特に有効であるのは、上述の較正ユニット及び較正処理を使用したとしても較正データの生成及び/または更新をする完全な較正処理に比較的長い時間がかかることがあるからである。いずれにしても較正処理の所要時間は基板にパターンを露光しない時間を表しておりコストを表している。また、較正データがどの程度の期間有効であると予測されるかは未知である。よって、較正データの有効性を周期的に判定する工程を行わない場合には、リソグラフィ装置は完全な較正処理を不必要に頻繁に実行する必要が生じ得る。それは不必要なコストを発生させる。あるいは、較正データが有効ではなくなった後も露光を継続した場合には、基板上に露光されるパターンが基準に達しなくなってしまう。よって、上述のような較正データ有効性判定処理が実行されてもよい。較正データ有効性判定処理は、完全な較正処理よりも相当迅速に行うことができる。較正データ有効性判定処理は例えば、較正データが有効であるか否かを確認すべく較正データの一部を周期的に試験してもよい。
較正データ有効性判定処理を実行するたびに較正データの異なる部分(例えば、個別制御可能素子アレイの異なる部分に対応するデータ)の有効性を判定してもよい。このようにすれば、較正データ有効性判定処理をある回数実行することで較正データの全体の有効性を判定することができる。
一実施例においては、較正データ有効性判定処理は例えば毎日一度周期的に開始されてもよいがこれに限られない。これに代えてまたはこれとともに、較正データ有効性判定処理は特定のできごとが発生したときはいつでも開始されてよい。例えば較正データ有効性判定処理は、較正データ有効性判定処理に影響を与えない要因でリソグラフィ装置の動作が停止されたときに開始されてもよい。較正データ有効性判定処理に影響を与えない要因には例えば基板ハンドラに異常が発生した場合が挙げられるがこれに限られない。他の実施例では、較正データ有効性判定処理は、オペレータの指令、またはリソグラフィ装置を含む複数の装置を制御する制御システムからの指令により開始されてもよい。更なる他の実施例では、較正データ有効性判定処理は、リソグラフィ装置に露光されて基板に形成されるパターンの品質をモニタするモニタリングシステムにより開始されてもよい。例えば、モニタリングシステムは、基板に露光されたパターンの品質劣化に応答して較正データ有効性判定処理を開始してもよい。
較正データ有効性判定処理の更なる実施例においては、較正コントローラは、既存の較正データを使用してリソグラフィ装置が基板へのパターン露光を継続したときにその較正データを使用して得られる像を予測してもよい。この場合、個別制御可能素子アレイに制御信号の試験用パターンが与えられ変調放射ビームの一部が放射ビーム検査装置により検査されると直ちに予測パターンと実測パターンとが比較され、較正データが有効であるか否かを速やかに決定することができる。その結果較正データが有効である場合には、リソグラフィ装置は基板の露光をすぐに再開する。較正データ有効性判定処理が較正データは有効でないと判定した場合には、較正データを生成及び/または更新する完全較正処理が開始されてもよい。
予測パターンと実測パターンとの差が許容パターンしきい値より大きく第2しきい値より小さい場合には、リソグラフィ装置がその較正データを使用して露光処理を再開しかつ較正データを生成及び/または更新する完全較正処理を以降のある時点に予定するように、較正データ有効性判定処理が設定されていてもよい。よって、リソグラフィ装置のドリフトをモニタし、その結果に応じて較正処理の予定を設定するよう1つまたは複数の較正データ有効性判定処理が用いられてもよい。
放射ビーム検査装置の測定結果に基づく較正データの生成及び/または更新には大量の計算を要することがある。このため、リソグラフィ装置は、変調放射ビームの一部の検査に関係する較正処理の各工程を実行し、検査データから新たな較正データが決定されるまでは以前の較正データを使用して露光処理を継続するようにしてもよい。新たな較正データが決定された後は新たな較正データを使用して露光処理が継続されてもよい。このようにすれば、リソグラフィ装置が基板へのパターンの露光を停止する時間が最小化されるので、コストも低減される。この構成においては、較正処理の予定が設定される場合には、放射ビーム検査処理の完了から新たな較正データの決定完了までの遅れを考慮に入れて予定が設定されてもよい。
本説明においてはリソグラフィ装置の用途を特定のデバイス(例えば集積回路やフラットパネルディスプレイ)の製造としているが、ここでのリソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積回路や集積光学システム、磁気ドメインメモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド、微小電気機械デバイス(MEMS)などの製造に用いることが可能であり、これらに限られない。また、例えばフラットパネルディスプレイに関しては、本発明に係る装置は、例えば薄膜トランジスタ層及び/またはカラーフィルター層などのさまざまな層の製造に用いることができる。
ここでは特に光学的なリソグラフィを本発明に係る実施形態に適用したものを例として説明しているが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなど文脈が許す限り他にも適用可能であり、光学的なリソグラフィに限られるものではない。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィーが基板に生成されるパターンを決める。パターニングデバイスのトポグラフィーが基板に塗布されているレジスト層に押し付けられ、電磁放射や熱、圧力、あるいはこれらの組み合わせによってレジストが硬化される。レジストが硬化されてから、パターニングデバイスは、パターンが生成されたレジストから外されて外部に移動される。
[結語]
本発明の種々の実施例を上に記載したが、それらはあくまでも例示であって、それらに限定されるものではない。本発明の精神と範囲に反することなく種々に変更することができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。本発明の範囲と精神は上記で述べた例示に限定されるものではなく、請求項とその均等物によってのみ定義されるものである。
「課題を解決する手段」及び「要約書」の項ではなく「発明の詳細な説明」の項が請求項を解釈するのに使用されるように意図されている。「課題を解決する手段」及び「要約書」の欄は本発明者が考えた本発明の実施例の1つ以上を示すものであるが、すべてを説明するものではない。よって、本発明及び請求項をいかなる形にも限定するものではない。