JP4964394B2 - ブロック共重合体 - Google Patents
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Description
本発明は、アニオン重合により得られたブロック共重合体、その製造方法、該ブロック共重合体からなる成形体および該ブロック共重合体を含有してなる粘着剤組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、アニオン重合により得られた、相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックAと該重合体ブロックAとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックBを有する特定のブロック共重合体、アニオン重合によるその製造方法、該ブロック共重合体から得られた成形体および該ブロック共重合体を含有してなる粘着剤組成物に関する。
本発明のブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーないし軟質樹脂の特性を有していて、溶融粘度が低くて溶融流動性に優れており、そのため成形性に優れ、しかも強度が高いので、成形体などにした場合に、該成形体を強度などの力学特性に優れ、異方性が低減されたものとすることができる。そのため、本発明のブロック共重合体は、各種成形体を製造するためのポリマー素材として有用である。
また、本発明のブロック共重合体に粘着付与樹脂などを適宜添加して粘着剤組成物とした場合は、溶融粘度が低くて溶融流動性が良好であり、コーティング性などに優れることから、粘着テープなどの粘着製品を良好な工程性で製造することができる。そしてそれにより得られる粘着製品は、粘着特性に優れており、しかも異方性が少なく反りなどが発生しにくい。そのため、本発明のブロック共重合体は、粘着剤組成物を製造するためのポリマー素材としても有用である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は、「メタクリル酸エステル」と「アクリル酸エステル」との総称であり、また「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」と「アクリル」との総称である。
背景技術
アクリル酸エステル系重合体ブロックを中心ブロックとしその両側にメタクリル酸エステル系重合体などの他の重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体が従来から知られており(特公平7−25859号公報、対応米国特許5,264,527号明細書)、そこでは該トリブロック共重合体は、有機アルカリ金属化合物または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合を行うことによって製造されている。
しかし、この従来技術では、分子量の多分散度(Mw/Mn)が1.05〜2.0の範囲にある分子量分布の狭いトリブロック共重合体の提供が主に意図されているだけであり、トリブロック共重合体およびそれから得られる成形体における力学的特性や柔軟性の向上、等方性の付与などは特に意図されていない。
さらに、本発明者らは、アクリル酸エステル、および該アクリル酸エステルとは異なる他の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を、有機リチウム化合物および特定の有機アルミニウム化合物の存在下にアニオン重合すると、極性有機溶媒を使用しない場合にも、アクリル酸エステルよりなる重合体ブロックと他の(メタ)アクリル酸エステル系単量体よりなる重合体ブロックを有するブロック共重合体が、高いブロック化効率で、安全に且つ高純度で製造できることを見出して先に出願した(特開平11−335432号公報)。
本発明者らは、上記のような従来技術を踏まえて研究を重ねてきた。その結果、相互に相溶する少なくとも2つの重合体ブロックと、該重合体ブロックとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックを有するブロック共重合体[以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体」ということがある]に関して以下の(i)〜(v)に示す事実を見出した。
(i) (メタ)アクリル系ブロック共重合体では、ソフトセグメントとして機能する重合体ブロックの含有量に応じて柔軟性の程度が変動すること。
(ii) 柔軟性の高い(メタ)アクリル系ブロック共重合体を得たい場合には、一般に、ソフトセグメントとして機能する重合体ブロックの含有量を増加させればよいが、該重合体ブロックの増加に伴って(メタ)アクリル系ブロック共重合体およびそれから得られる物品などの表面膠着性(粘着性)が増加する傾向があり、それに伴って、柔軟性の高い(メタ)アクリル系ブロック共重合体をペレットなどの粒状物や粉体状で取得した場合には相互に膠着して取り扱い性が劣るようになったり、得られる成形体の表面のベタつき、埃などの付着による外観の悪化などの不都合が生じ易いこと。
(iii) 高強度、低膠着性の成形体などを得るためには、一般にハードセグメントとして機能する重合体ブロックの含有量を増加させて(ソフトセグメントとして機能する重合体ブロックの含有量を減少させて)柔軟性をやや低めに設定した(メタ)アクリル系ブロック共重合体とすればよいが、その場合には、ハードセグメントとして機能する重合体ブロックの増加(ソフトセグメントとして機能する重合体ブロックの減少)に伴って、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を溶融成形して得られる成形体に異方性を生じ、溶融成形時の重合体の流動方向に対する角度によって力学的特性などに顕著な差を生ずること。例えば、柔軟性をやや低めに設定した(メタ)アクリル系ブロック共重合体を溶融成形して得られる成形体では、溶融成形時の重合体の流動方向に対して直交する方向には柔軟性が発現して十分に伸びるが、流動方向に対して平行な方向では柔軟性が不足しあまり伸びないことがある。
(iv) 柔軟性をやや低めに設定した上記(iii)に記載したような(メタ)アクリル系ブロック共重合体を射出成形して得られる成形体では、成形収縮、反り、歪みなどの不都合が生じ易いこと。
(v) (メタ)アクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとし、これに粘着付与樹脂などを添加して粘着剤組成物とする場合に、凝集力(クリープ)の高い粘着剤組成物を得るためには、一般にハードセグメントとして機能する重合体ブロックの含有量を増加させて(ソフトセグメントとして機能する重合体ブロックの含有量を減少させて)、柔軟性をやや低めに設定した(メタ)アクリル系ブロック共重合体とすればよいが、その場合には、粘着力、タックなどの減少を伴い易く、また該粘着剤組成物を用いて得られる粘着テープなどの粘着製品では粘着剤層に異方性を生じ、反りなどが発生し易いこと。
さらに、本発明者らは、以下の(vi)および(vii)の問題点を把握している。
(vi) (メタ)アクリル系ブロック共重合体が良好なエラストマー特性を有するためには、ハードセグメントとして機能する重合体ブロックのガラス転移温度は室温以上である必要があり、より高温までエラストマーとして使用するためには、そのガラス転移温度はより高いことが好ましい。これまでハードセグメントを形成する重合体ブロックとしてはメタクリル酸エステル系重合体ブロックが知られているが、メタクリル酸エステルは重合が遅く(メタ)アクリル系ブロック共重合体を得るために長時間を要するなどという問題点があること。
(vii) アクリル酸エステルはメタクリル酸エステルと比較して重合が速く、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック共重合体を得るには適しているが、アクリル酸エステル重合体のガラス転移温度は一般に低いためアクリル酸エステル重合体ブロックをハードセグメントして機能させることは困難であり、またガラス転移温度の高いアクリル酸エステル重合体として知られるアクリル酸イソボルニル重合体などでは、製造中に不純物として混入するアルコールとの沸点差が小さいため蒸留などの一般的な精製方法による精製が困難であるため、このようなアクリル酸エステルはアニオン重合に適していないこと。
したがって、本発明の課題は、溶融粘度が低くて溶融流動性が良好で、成形性やコーティング性などに優れ、しかも柔軟性および力学的特性に優れる、アニオン重合により得られる、相互に相溶する少なくとも2つの重合体ブロックと該重合体ブロックとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックを有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を提供することである。
そして、本発明の課題は、成形体を製造したときに、成形時の重合体の溶融流動方向と他の方向とで、得られる成形体で力学的特性に大きな差のない、力学的異方性の低減した、等方性に優れる前記(メタ)アクリル系ブロック共重合体を提供することである。
また、本発明の課題は、成形収縮、反り、歪みなどの不都合を生じず、目的とする成形体を高い寸法精度で得ることのできる前記(メタ)アクリル系ブロック共重合体を提供することである。
さらに、本発明の課題は、少なくとも一つのアクリル酸エステル重合体ブロックをハードセグメントして有する新規な(メタ)アクリル系ブロック共重合体を提供することである。
また、本発明の他の課題は、該(メタ)アクリル系ブロック共重合体を簡便に製造し得る方法を提供することにある。
さらに、本発明の課題は、該(メタ)アクリル系ブロック共重合体からなる、異方性が低減され、しかも力学的特性および寸法精度に優れる成形体を提供することにある。
そして、本発明の他の課題は、該(メタ)アクリル系ブロック共重合体を含有してなり、溶融粘度が低くて粘着テープなどの粘着製品を製造する際のコーティング工程などでの工程性に優れ、しかも粘着特性に優れる粘着剤組成物を提供することである。
発明の開示
上記の課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討を行ってきた。
その結果、相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックと、該重合体ブロックとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックを有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体において、該相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックのうちで、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と最も数平均分子量の小さい重合体ブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]の値が2以上になるようにし、且つ該相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックの合計含有率を(メタ)アクリル系ブロック共重合体の全質量に対して20〜45質量%の範囲内にすると、溶融粘度が低くなって溶融流動性に優れていて、成形体やその他の製品(例えば粘着テープなどの粘着製品)を生産性良く製造できること、しかも柔軟性および力学的特性にも優れることを見出した。
そして、そのような(メタ)アクリル系ブロック共重合体から成形体を製造した場合は、力学的異方性が低減されていて、溶融成形時の重合体の流動方向とそれ以外の方向とで力学的特性に大きな差がなく、等方性に優れ、さらに成形収縮、反り、歪みなどがなく、寸法精度に優れる成形体が得られることを見出した。
また、上記した(メタ)アクリル系ブロック共重合体、そのうちでも特に互いに相溶する2つ以上の重合体ブロックのうち少なくとも一つがアクリル酸エステル重合体ブロックである(メタ)アクリル系ブロック共重合体は、エラストマー特性と共に粘着特性に優れていて、粘着剤におけるポリマー素材として有用であることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) (a)アニオン重合により得られたブロック共重合体であって;
(b)相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックAと、該重合体ブロックAとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックBを有し;
(c)該重合体ブロックAのうちの、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxの数平均分子量[Mn(Amax)]と、最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]の値が2以上であり;
(d)ブロック共重合体中に、下記の一般式(I);
(−)Amax−B−Amin(−) (I)
[式中、Amaxは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxを示し、Aminは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示し、「−」は各重合体ブロックを連結する化学結合を示し、(−)は化学結合手がある場合または化学結合手が無い場合のいずれかであることを意味する。]
で表されるブロック結合部を少なくとも1つ有し;且つ、
(e)ブロック共重合体の全質量に対して、重合体ブロックA全体の含有率が20〜45質量%の範囲内である;
ことを特徴とするブロック共重合体である。
そして、本発明は、
(2) ブロック共重合体が、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてなるアニオン重合により得られたブロック共重合体である前記(1)のブロック共重合体;
(3) 2つ以上の重合体ブロックAのうちの少なくとも1つが25℃を超えるガラス転移温度を有し、重合体ブロックBが25℃以下のガラス転移温度を有する前記(1)または(2)のブロック共重合体;
(4) 重合体ブロックAminの数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内である前記(1)〜(3)のいずれかのブロック共重合体;
(5) 重合体ブロックAが、重合体ブロックBとは相溶しない(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックである前記(1)〜(4)のいずれかのブロック共重合体;
(6) 溶融混練物において重合体ブロックAが球構造のミクロ相分離構造を形成し得る前記(1)〜(5)のいずれかのブロック共重合体;
(7) 下記の一般式(II):
Amax−B−Amin (II)
(式中、Amaxは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxを示し、Aminは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示し、「−」は各重合体ブロックを連結する化学結合を示す。)
で表されるブロック配列を有するトリブロック共重合体である前記(1)〜(6)のいずれかのブロック共重合体;
(8) Amax及びAminが相互に相溶するメタクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、BがAmaxおよびAminと相溶しないアクリル酸エステル系重合体ブロックからなるトリブロック共重合体である前記(7)のブロック共重合体;および、
(9) Amaxがメタクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、AminがAmaxと相溶するアクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、BがAmaxおよびAminと相溶しないアクリル酸エステル系重合体ブロックからなるトリブロック共重合体である前記(7)のブロック共重合体;である。
さらに、本発明は、
(10) (i)有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合を行うことによって、前記(1)のブロック共重合体を製造する方法であって;
(ii)ブロック共重合体の製造時に、ブロック共重合体を構成する相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックAとして、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxの数平均分子量[Mn(Amax)]と最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2以上である重合体ブロックを形成するために、重合体ブロックAmaxを形成するために使用する単量体の質量(Wmax)と重合体ブロックAminを形成するために使用する単量体の質量(Wmin)の比(Wmax/Wmin)を2以上に調整すると共に;
(iii)重合体ブロックAを形成させるための単量体の合計使用量を、ブロック共重合体を形成させるための全ての単量体の使用量に対して、20〜45質量%の範囲内に調整して重合を行う;
ことを特徴とするブロック共重合体の製造方法である。
そして、本発明は、
(11) (i)有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合を行うことによって、前記(7)のトリブロック共重合体を製造する方法であって;
(ii)ブロック共重合体の製造時に、重合体ブロックAmaxを形成するために使用する単量体の質量(Wmax)と重合体ブロックAminを形成するために使用する単量体の質量(Wmin)の比(Wmax/Wmin)を2以上に調整すると共に;
(iii)重合体ブロックAmaxおよび重合体ブロックAminを形成させるための単量体の合計使用量を、ブロック共重合体を形成させるための全ての単量体の使用量に対して20〜45質量%の範囲内に調整して重合を行う;
ことを特徴とするトリブロック共重合体の製造方法;および、
(12) 有機アルミニウム化合物を助触媒として更に用いる前記(10)または(11)の製造方法;
である。
さらに、本発明は、
(13) 前記(1)〜(9)のいずれかのブロック共重合体よりなる成形体;
および、
(14) 前記(1)〜(9)のいずれかのブロック共重合体を含有してなる粘着剤組成物;
である。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のブロック共重合体は、相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックAと、該重合体ブロックAとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックBを有する。
ここで、本発明のブロック共重合体における重合体ブロック同士についての「相溶する」および「相溶しない」(非相溶)とは、以下の内容を意味する。
すなわち、重合体ブロックXと重合体ブロックYを有するブロック共重合体を例にとって説明すると、該ブロック共重合体の溶融混練物(すなわち該ブロック共重合体の多数の分子の集合体)のミクロ相構造(ミクロ分散状態)を観察した際に、重合体ブロックXと重合体ブロックYとが、それぞれ別々のドメイン(領域)を形成しておらずに両者が混ざり合って同一のドメインを形成している場合には、重合体ブロックXと重合体ブロックYとは相互に「相溶」した状態にある。一方、重合体ブロックXと重合体ブロックYが、混ざり合っておらず、それぞれ別のドメインを形成している場合には、重合体ブロックXと重合体ブロックYとは「相溶していない」(非相溶)の状態にある。
ブロック共重合体に含まれる任意の2種の重合体ブロックが相互に相溶しているか否かは、例えば、該ブロック共重合体のDSC(示差走査熱量計)による測定で求められるガラス転移温度または動的粘弾性測定で求められる損失正接(tanδ)のピーク温度であるTα(α分散温度)で評価することが可能である。
ブロック共重合体において、任意の2つの重合体ブロックのそれぞれに対応するガラス転移温度またはTαが実質的に同一であれば、それらの2つの重合体ブロックは、相互に相溶した状態にある。一方、2つの重合体ブロックのそれぞれに対応するガラス転移温度またはTαが異なる場合は、それら2つの重合体ブロックは相互に相溶していない(非相溶)の状態にある。
また、ブロック共重合体について電子顕微鏡を用いて、そのミクロ相分散状態を観察して、2つの重合体ブロックが同一のドメインを形成しているか、または別々のドメインを形成しているか調べることによっても、ブロック共重合体における2つの重合体ブロック同士の相溶または非相溶を判定することも可能である。
そのうちでもDSC(示差走査熱量計)によるガラス転移温度の測定または動的粘弾性測定で求められるTαの測定による方法が、ブロック共重合体における重合体ブロック同士の相溶の有無(相分離の有無)をより精密に調査できるので、好ましく採用される。
本発明のブロック共重合体では、相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックAは、該2つ以上の重合体ブロックA同士が相互に相溶する限りは、互いに同じ分子構造を有していてもよいし(単量体の種類、複数種の単量体の場合における相対量および配列が実質上同一である単独重合体または共重合体からなる重合体ブロック同士)、または互いに異なった分子構造を有していてもよい(単量体の種類、量および/または配列が異なる単独重合体または共重合体からなる重合体ブロック同士)。
一般的には、2つ以上の重合体ブロックAが互いに同じ分子構造を有していることにより、該2つ以上の重合体ブロックAは互いに相溶するものとなるが、場合によっては分子構造が異なっても相溶することがある。
これら分子構造が異なっても互いに相溶する重合体ブロックの公知の組み合わせは、例えば「POLYMER HANDBOOK」FOURTH EDITION(JOHN WILEY & SONS,INC)VI/409−482頁などに記載されている。
本発明のブロック共重合体における重合体ブロックAを形成する重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリミルセン、ポリ1,3−ジメチルブタジエンなどの共役ジエン重合体またはその水素添加物;ポリカプロラクトンなどのラクトン重合体;ポリジメチルシロキサンなどのアルキルシロキサン重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのアルキレンオキシド重合体;ポリ2−ビニルピリジンなどのビニルピリジン重合体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどから選ばれる1種または2種以上のアクリル酸エステルからなるアクリル酸エステル系重合体またはその加水分解物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどから選ばれる1種または2種以上のメタクリル酸エステルからなるメタクリル酸エステル系重合体またはその加水分解物;N,N−ジエチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物からなるアクリルアミド系化合物重合体;N,N−ジエチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド系化合物からなるメタクリルアミド系化合物重合体;メタクロレイン、アクロレインなどの不飽和アルデヒドからなる不飽和アルデヒド重合体;メタクリロニトリル、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリルからなる不飽和ニトリル重合体などの重合体(ホモポリマーまたは共重合体)などを挙げることができる。
本発明のブロック共重合体を構成する2つ以上の重合体ブロックAのすべてを、上で挙げた重合体のうちの1種の同じ重合体から形成することによって、該2つ以上の重合体ブロックAは相互に相溶するものとなる。
また、本発明のブロック共重合体を構成する2つ以上の重合体ブロックAにおいて、例えば、そのうちの一方をポリスチレンブロックとし、他方をポリα−メチルスチレンブロックとしてもよく、その場合には、2つ以上の重合体ブロックAを構成する重合体の種類は互いに異なってはいるが、ポリスチレンブロックとポリα−メチルスチレンブロックとは相互に相溶性である。
そのうちでも、本発明では、ブロック共重合体の耐候性や熱安定性などが特に良好となる点から、2つ以上の重合体ブロックAを、相互に相溶するアクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系の重合体ブロックから形成することが好ましく、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの重合体ブロックから形成することがより好ましい。
本発明のブロック共重合体における重合体ブロックBは、上記の重合体ブロックAとは相溶しないアクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系の重合体ブロックである。重合体ブロックBを構成する単量体は、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を主体とし、かつ該単量体から形成された重合体ブロックが重合体ブロックAと相溶しない限りにおいて、各種のものから選択することができる。
重合体ブロックBを形成し得るアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどを挙げることができる。
また、重合体ブロックBを形成し得るメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどを挙げることができる。
重合体ブロックBは、上記したアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルのうちの1種または2種以上から形成されていることができる。
重合体ブロックBは、場合により、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに由来する構造単位と共に少量の他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。その場合の他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルピリジン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、メタクロレイン、アクロレイン等のアニオン重合性単量体を挙げることができる。また、重合体ブロックBは、上記したアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを重合した後、加水分解することにより形成される構造単位やその塩、例えば、アクリル酸単位、アクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸単位、メタクリル酸ナトリウム単位などを少量であれば有していてもよい。
本発明のブロック共重合体において、重合体ブロックAおよび重合体ブロックBのガラス転移温度は特には限定されないが、ブロック共重合体が熱可塑性エラストマーまたは軟質樹脂材料としての特性を効果的に発揮するためには、相溶した重合体ブロックAのセグメントが25℃よりも高いガラス転移温度を有し、且つ重合体ブロックBが25℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。
25℃を超えるガラス転移温度を有するセグメントを形成する重合体ブロックAは、重合体ブロックAを形成し得るとして上記で例示した各種重合体から適宜選択することができる。重合体ブロックAとしては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物重合体;ポリ2−ビニルピリジンなどのビニルピリジン重合体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸エステルの1種または2種以上を主体とするメタクリル酸エステル系重合体またはその加水分解物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−メトキシエチルなどのアクリル酸エステルの1種または2種以上を主体とするアクリル酸エステル系重合体またはその加水分解物;N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、メタクロレイン、アクロレイン、メタクリロニトリル、アクリロニトリルなどの1種または2種以上を主体とする重合体等が挙げられる。これらの重合体ブロックAのうちガラス転移温度が25℃以下のものを用いる場合には、25℃以下の重合体ブロックA以外の相溶する別の重合体ブロックAとしてガラス転移温度が25℃より高いものを用いることで、重合体ブロックAにより形成されるセグメントのガラス転移温度を25℃よりも高くすることができる。それらの中でも、ブロック共重合体の耐候性、熱安定性などが特に良好になる点から、重合体ブロックAを、芳香族ビニル化合物重合体、メタクリル酸エステル系重合体、アクリル酸エステル系重合体などから形成することが好ましく、メタクリル酸エステル系重合体またはアクリル酸エステル系重合体から形成することがより好ましく、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの重合体から形成することが特に好ましい。
また、25℃以下のガラス転移温度を有する重合体ブロックBは、重合体ブロックBを形成し得るものとして上記で例示した各種重合体から適宜選んで形成することができる。重合体ブロックBを、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−メトキシエチルなどのアクリル酸エステルの1種または2種以上を主体とするアクリル酸エステル系重合体;メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどの1種または2種以上のメタクリル酸エステルを主体とするメタクリル酸エステル系重合体などから形成することによって、重合体ブロックBのガラス転移温度を25℃以下にすることができる。それらの中でも、ブロック共重合体の耐候性、柔軟性などが特に良好となる点から、重合体ブロックBを、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−メトキシエチルなどのアクリル酸エステル;およびメタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を主体とするアクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系の重合体から形成することが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルの1種または2種以上を主体とするアクリル酸エステル系重合体から形成することがより好ましい。
本発明のブロック共重合体において、2つ以上の重合体ブロックAが25℃を超えるガラス転移温度を有するメタクリル酸エステル系重合体(特にポリメチルメタクリレート)から形成され、且つ重合体ブロックBが25℃以下のガラス転移温度を有する上記したアクリル酸エステル系重合体(特にアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルの1種または2種以上を主体とするアクリル酸エステル系重合体)から形成されていると、ブロック共重合体の耐候性、柔軟性、耐熱性などがより良好になるので、好ましい。
また、本発明のブロック共重合体において、2つ以上の重合体ブロックAの少なくとも一つがアクリル酸エステル系重合体(特にポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート)から形成されていると、粘着特性が良好になる。それと共に、メタクリル酸エステルよりもアクリル酸エステルの方がアニオン重合速度が速いことにより、ブロック共重合体の製造時に重合時間が短くてすむという長所がある。
なお、本発明における重合体ブロックAおよび重合体ブロックBのガラス転移温度とは、ブロック共重合体をDSC(示差走査熱量計)を用いる分析によって測定したときのガラス転移温度を言う。
本発明のブロック共重合体では、2つ以上の重合体ブロックAのうち、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxの数平均分子量[Mn(Amax)]と最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]の値が2以上であることが重要である。
Mn(Amax)/Mn(Amin)の値が2以上であることにより、ブロック共重合体におけるハードセグメントを構成する重合体ブロックAmaxおよび重合体ブロックAminの含有量を高くして、ブロック共重合体に高強度、高凝集力を付与できると共に、良好な溶融流動性と柔軟性が維持され、さらに成形体や粘着製品などにしたときに異方性の低減が可能である。
本発明のブロック共重合体を成形体の製造に用いる場合はMn(Amax)/Mn(Amin)の値は、3以上であることが異方性の低減効果が大きいことから好ましい。
本発明のブロック共重合体の相溶する2つ以上の重合体ブロックAが全てメタクリル酸エステル系重合体である場合、本発明のブロック共重合体は、Mn(Amax)/Mn(Amin)の値が2以上であることによって、溶融混練物(溶融混練によって製造したブロック共重合体分子の集合体)において、重合体ブロックAが球状構造(スフィアー構造)をなして、重合体ブロックBとミクロ相分離構造を形成することができる。
Mn(Amax)/Mn(Amin)の値が1程度であって、本発明の要件を満たさない通常のブロック共重合体では、その溶融混練物において、重合体ブロックAが一般にシリンダー状(または柱状、棒状)のミクロ相分離構造またはラメラ状のミクロ相分離構造を形成する。
必ずしも明らかではないが、本発明のブロック共重合体においては、溶融成形時に、重合体ブロックAが特異的に球状構造のミクロ相分離構造を形成することから、例えば、成形加工時のシェアなどの外力を受けても、重合体ブロックAは方向性のない球状のミクロ相分離構造を維持したまま固化し、その結果、得られた成形体において、従来の同種のブロック共重合体からなる成形体に比べて、溶融成形時のブロック共重合体の溶融流動方向とそれ以外の方向とで力学的特性の差が小さくなり、異方性が低減されるものと推定される。
上記の効果を有効に発現させるためには、重合体ブロックAminの数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内であることが、ブロック共重合体およびそれから形成される成形体等における異方性を良好に低減できることから好ましい。
特に、互いに相溶する2つ以上の重合体ブロックAの全てがメタクリル酸メチル系重合体である場合は、表面膠着性の低減および異方性の低減を特に高度に両立できることから、重合体ブロックAminの数平均分子量は3000〜7000の範囲内であることがより好ましい。
また、本発明のブロック共重合体の互いに相溶する2つ以上の重合体ブロックAのうち、重合体ブロックAmaxがメタクリル酸エステル系重合体からなり、重合体ブロックAminがアクリル酸エステル系重合体からなる場合は、重合体ブロックAmaxと重合体ブロックAminが相溶して形成されるハードセグメントのガラス転移温度の観点から、Mn(Amax)/Mn(Amin)の値が2未満であると、ブロック共重合体より得られる成形体などにおいて、使用温度領域が低くなる点から好ましくない。
Mn(Amax)/Mn(Amin)の上限値は、必ずしも限られるものではないが、成形体などにおける表面膠着性の低減の点から、さらに重合体ブロックAminにおいてもハードセグメントを形成するために十分な分子量が必要である点などから、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
重合体ブロックAおよび重合体ブロックBの数平均分子量は、必ずしも限定されないが、一般的には、重合体ブロックAの数平均分子量が1,000〜50,000の範囲内で、且つ重合体ブロックBの数平均分子量が5,000〜500,000の範囲内にあることが、ブロック共重合体の力学物性、成形性、耐熱性の点から好ましい。重合体ブロックAの中でも重合体ブロックAminは、その数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内であることが、ブロック共重合体およびそれから形成される成形体等における表面膠着性の低減および異方性の低減を特に高度に両立できることから好ましい。
本発明のブロック共重合体の全体の数平均分子量は、必ずしも限定されず、各々の用途、要求性能等に応じて適宜好適なものを選択し得るが、通常、8,000〜700,000の範囲内であることが好ましい。例えば、本発明のブロック共重合体を用いて溶融成形によって成形体を製造する場合は、実用的な力学特性を発揮させるために、ブロック共重合体の数平均分子量が10,000以上であることが好ましい。その際に、ブロック共重合体の数平均分子量があまり高すぎると溶融成形性が低下するので、溶融成形に適した溶融流動性を発揮させる点からは、ブロック共重合体の数平均分子量は500,000以下であることが好ましい。
本発明のブロック共重合体における重合体ブロックAおよび重合体ブロックBの数平均分子量は、ブロック共重合体の全体の数平均分子量と各重合体ブロックが占める質量分率との積として算出される。その際に、本発明のブロック共重合体の全体の数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー)等の分析手段によって求めることができる。
重合体ブロックAおよび重合体ブロックBの質量分率は、NMRなどの分析手段によって求めることができるが、本発明のブロック共重合体の分析のみでは算出できない場合には、その製造途中で形成される重合体についての分析値を併せて参酌してもよい。
ブロック共重合体における各ブロックの分子量は、例えば、ブロック共重合前の重合体の数平均分子量と、モノマー仕込み量、反応率、NMRなどの分析手段より求めたブロック共重合後の重合体の組成比、GPCのピーク比、液体クロマトグラフィー(LC)等から求めた各ブロック共重合前後のブロック効率(ブロック共重合体の含量)を求め、これらの比により求めることができる。
例えば、重合体ブロックAがポリスチレンやポリメタクリル酸メチルである式:Amax−B−Aminで表されるトリブロック共重合体(式中、Amaxは2つの重合体ブロックAのうちで数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxを示し、Aminは2つの重合体ブロックAのうちで数平均分子量の小さい重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示す)を、各重合体ブロックをAmax側から逐次に重合する方法で得た場合に、GPCにより求めたAmaxホモポリマーの数平均分子量がMn(Amax)であり、トリブロック共重合体のNMR分析により求めた重合体ブロックAmaxに対する重合体ブロックAminの質量比がXであり、さらにLCにより求めたトリブロック共重合体のモル含量がfの時、重合体ブロックAminの分子量Mn(Amin)は、式:Mn(Amin)=Mn(Amax)×X/fから求めることができる。
さらに、本発明のブロック共重合体は、ブロック共重合体中に、下記の一般式(I);
(−)Amax−B−Amin(−) (I)
[式中、Amaxは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxを示し、Aminは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示し、「−」は各重合体ブロックを連結する化学結合を示し、(−)は化学結合手がある場合または化学結合手が無い場合のいずれかであることを意味する。]
で表されるブロック結合部を少なくとも1つ有していることが必要である。
なお、上記の一般式(I)では、便宜上、AmaxをBの左側に、AminをBの右側に記載しているが、Bに対するAmaxとAminの左右の位置関係は特に限定されず、AmaxがBの右側に結合し、AminがBの左側に結合したものも一般式(I)で表されるブロック結合部に包含される。
重合体ブロックBのすべてが、重合体ブロックAmaxと重合体ブロックAminとの間に位置しない場合、すなわちブロック共重合体が上記の一般式(I)で表されるブロック結合部を1つも有していない場合は、ブロック共重合体およびそれから得られる成形体はエラストマー特性を失い、また異方性を低減することが困難となる。
本発明のブロック共重合体は、ブロック共重合体の全質量に対して、重合体ブロックA全体の含有率が20〜45質量%の範囲内であることが必要である。重合体ブロックAの含有率が20質量%未満であると、ブロック共重合体およびそれから得られる成形体等の取り扱い性に劣ったものとなる。一方、重合体ブロックAの含有率が45質量%を超えると、ブロック共重合体の柔軟性が不足する。ブロック共重合体およびそれから得られる成形体や粘着剤組成物の取り扱い性、柔軟性がより良好になる点から、重合体ブロックAの含有率は25〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明のブロック共重合体は、上記のとおり、重合体ブロックAmaxと重合体ブロックAminとの間に重合体ブロックBが結合している、上記の一般式(I)で表されるブロック結合部を分子中に少なくとも1つ有している限りは、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの配列および各重合体ブロックの数は特に制限されない。本発明のブロック共重合体は、例えば、重合体ブロックBの両端に2つの重合体ブロックAが結合したトリブロック共重合体、2つの重合体ブロックAと2つの重合体ブロックBが結合したテトラブロック共重合体、重合体ブロックAと重合体ブロックBが合計で5個以上結合したブロック共重合体などのいずれであってもよい。
また、本発明のブロック共重合体における各重合体ブロックの結合形態は、線型、多分岐型、スター型などのいずれであってもよい。
そのうちでも、本発明のブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーまたは軟質樹脂材料としての特性を特に効果的に発揮し得る点で、下記の一般式(II);
Amax−B−Amin (II)
[式中、Amaxは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の大きい(すなわち数平均分子量の大きい方の)重合体ブロックAmaxを示し、Aminは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の小さい(すなわち数平均分子量の小さい方の)重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示し、「−」は各重合体ブロックを連結する化学結合を示す。]
で表されるブロック配列を有するトリブロック共重合体であることが好ましい。
なお、上記の一般式(II)では、便宜上、AmaxをBの左側に、AminをBの右側に記載しているが、Bに対するAmaxとAminの左右の位置関係は特に限定されず、AmaxがBの右側に結合し、AminがBの左側に結合しているトリブロック共重合体も、一般式(II)で表されるトリブロック共重合体に包含される。
上記の一般式(II)で表されるトリブロック共重合体のうちでも、AmaxおよびAminが相互に相溶性のメタクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、且つBがAmaxおよびAminと相溶しないアクリル酸エステル系重合体ブロックからなるトリブロック共重合体は、溶融流動性、柔軟性、エラストマー特性、表面膠着性の低減効果、低異方性、寸法精度などに一層優れることから、成形体用途として特に好ましい。
また、上記の一般式(II)で表されるトリブロック共重合体のうちで、相互に相溶性のAmaxおよびAminのうち、Amaxがメタクリル酸エステル系重合体ブロック、特にポリメタクリル酸メチルブロックからなり、Aminがアクリル酸エステル重合体ブロックからなり、且つBがAmaxおよびAminと相溶しないアクリル酸エステル系重合体ブロックからなるトリブロック共重合体は、溶融流動性、柔軟性、エラストマー特性、粘着性などに優れることから、粘着剤組成物用のポリマー素材として特に好ましい。
本発明のブロック共重合体は、例えば、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合を行うことによって、工業的に有利に製造することができる。
本発明のブロック共重合体を得るためのアニオン重合は、基本的には、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を製造するための公知のアニオン重合方法、例えば、前記した特公平7−25859号公報、特開平11−335432号公報などに記載された方法などに準じて行うことができる。
重合開始剤として用いる有機アルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムなどのアルカリ金属の有機金属化合物であり、また有機アルカリ土類金属化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムなどのアルカリ土類金属の有機金属化合物である。本発明で重合開始剤として用いる有機アルカリ金属化合物の具体例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、フレオニルリチウム、トリフェニルメチルリチウム、α−リチウムエチルイソブチレート、オリゴスチリルリチウム、ポリスチリルリチウム、オリゴα−メチルスチリルリチウム、ポリα−メチルスチリルリチウム、オリゴブタジエニルリチウム、ポリブタジエニルリチウム、オリゴイソプレニルリチウム、ポリイソプレニルリチウムなどの1価の有機リチウム化合物;ジフェニルメチルカリウム、トリフェニルメチルカリウムなどの1価の有機カリウム化合物;ジフェニルメチルナトリウム、トリフェニルメチルナトリウムなどの1価の有機ナトリウム化合物などを挙げることができる。また、本発明で重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物の具体例としては、フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムクロリドなどの1価の有機マグネシウム化合物などを挙げることができる。
本発明では、前記した有機アルカリ金属化合物および有機アルカリ土類金属化合物の1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、有機アルカリ金属化合物が好ましく用いられ、1価の有機リチウム化合物が特に好ましく用いられる。
有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物からなる重合開始剤の使用量は、目的とするブロック共重合体の分子量などを考慮して適宜設定することができるが、通常は、使用する単量体の合計100モルに対して0.002〜20モルの割合で用いることが好ましく、0.005〜5モルの割合で用いることがより好ましい。
有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物からなる重合開始剤を使用してアニオン重合によって本発明のブロック共重合体を製造するに当たっては、リビング性を高めた条件下で重合を行うことが好ましい。それによって、個々の重合体ブロックの形成時における重合成長末端の失活を阻止し、そしてその重合成長末端を次の重合体ブロックの形成時に失活することなく該次の重合に利用できるようになり、各重合体ブロックの数平均分子量を所定のものに制御することが容易となる。しかも、副生物の生成(混入)を阻止しながら、目的とするブロック共重合体を再現性よく製造することができる。
アニオン重合時にリビング性を高めるためには、重合反応系への添加剤または助触媒の供給、重合時の温度条件の選択、重合初期および重合操作中における水分等の不純物の混入の阻止などに留意することが好ましい。
リビング性を高めるための添加剤または助触媒としては、ルイス酸、ルイス塩基、無機塩、有機塩などの中から適切なものを選択して使用することができる。
ルイス酸の例としては、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物;ジイソブチル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムなどのモノアリールオキシジアルキルアルミニウム化合物;メチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ヘキシルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ヘキシルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのビスアリールオキシモノアルキルアルミニウム化合物;トリエチルボラン、トリフェニルボランなどの有機ホウ素化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの有機チタン化合物などを挙げることができる。
ルイス塩基の例としては、ジエチルエーテル、アニソール、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、12−クラウン−4などのエーテル化合物;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン、スパルテインなどの3級アミン化合物などが挙げられる。
無機塩の例としては、塩化リチウム、フッ化セシウムなどが挙げられる。
有機塩の例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリドなどの有機4級塩;リチウムイソプロポキシド、カリウムt−ブトキシド、リチウムメトキシエトキシド、リチウムメトキシエトキシエトキシドなどのアルコキシド類などが挙げられる。
アニオン重合時のリビング性を高めるための上記した添加剤または助触媒の使用量は、必ずしも限定されないが、通常、重合開始剤100モルに対して10〜10000モルの割合で用いることが好ましい。
本発明のブロック共重合体の製造方法は特に制限されず、アニオン重合法であればいずれも採用できるが、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合する方法が好ましく採用される。
一般に、アニオン重合(特に、上記のようにリビング性を高めるように留意して行われたアニオン重合)においては、使用した単量体の大部分が所定の重合体ブロックの形成に消費されるので、単量体の使用量が各重合体ブロックの数平均分子量に反映される傾向が高い。そのため、本発明のブロック共重合体の製造に当たっては、以下の方法が好ましく採用される。
[本発明のブロック共重合体の好適な製造方法]
(i)有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いて、好ましくはリビング性を高めるための助触媒などの併用下に、アニオン重合を行うことによって、本発明のブロック共重合体を製造する方法であって;
(ii)ブロック共重合体の製造時に、ブロック共重合体を構成する相互に相溶する2つ以上の重合体ブロックAとして、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxの数平均分子量[Mn(Amax)]と最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2以上である重合体ブロックを形成するために、重合体ブロックAmaxを形成するために使用する単量体の質量(Wmax)と重合体ブロックAminを形成するために使用する単量体の質量(Wmin)の比(Wmax/Wmin)を2以上に調整すると共に;
(iii)重合体ブロックAを形成させるための単量体の合計使用量を、ブロック共重合体を形成させるための全ての単量体の使用量(総使用量)に対して20〜45質量%の範囲内に調整して重合を行う;
ことを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
特に、上記した方法によって上記の一般式(II)で表されるトリブロック共重合体(すなわち重合体ブロックAmax−重合体ブロックB−重合体ブロックAmin)を製造する場合は、
(i)有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いて、好ましくはリビング性を高めるための助触媒などの併用下に、アニオン重合を行うことによって、本発明のブロック共重合体を製造する方法であって;
(ii)ブロック共重合体の製造時に、重合体ブロックAmaxを形成するために使用する単量体の質量(Wmax)と重合体ブロックAminを形成するために使用する単量体の質量(Wmin)の比(Wmax/Wmin)を2以上に調整すると共に;
(iii)重合体ブロックAmaxおよび重合体ブロックAminを形成させるための単量体の合計使用量を、ブロック共重合体を形成させるための全ての単量体の使用量(総使用量)に対して20〜45質量%の範囲内に調整して重合を行う;
ことからなるブロック共重合体の製造方法が好ましく採用される。
本発明のブロック共重合体の製造に当たっては、2つ以上の重合体ブロックAを形成するために使用する単量体は、相互に相溶する重合体(2つ以上の重合体ブロックA)を形成することのできる単量体の組み合せの中から選択しなければならない。また、重合体ブロックAを形成するための単量体と、重合体ブロックBを形成するための(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、互いに相溶しない重合体ブロックAと重合体ブロックBを形成することのできる単量体の組み合わせの中から選択する必要がある。
本発明のブロック共重合体は、重合体ブロックAを形成させるための重合反応と、重合体ブロックBを形成させるための重合反応を逐次的に行なうことによって製造することができる。また場合によっては、そのような逐次的な重合体ブロックの形成操作の後に、カップリング剤(多官能性重合停止剤または多官能性単量体)と反応させることによって本発明のブロック共重合体を製造することもできる。
逐次的な重合体ブロックの形成操作は、重合体ブロックA(または重合体ブロックB)を形成するための単量体を、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物よりなる重合開始剤の存在下に重合系に供給して重合させることによって、末端にアニオン部分を有する重合体ブロックA(または重合体ブロックB)を形成させ、次いで、重合体ブロックB(または重合体ブロックA)を形成するための単量体を重合系に供給して前記末端アニオン部分を開始点とする重合を継続させることによって、該重合体ブロックB(または重合体ブロックA)を形成させ、以後、製造しようとするブロック共重合体の種類(各重合体ブロックの結合数など)に応じて、前記した重合操作を繰り返すことによって行うことができる。
限定されるものではないが、本発明のブロック共重合体を製造する方法についてより具体的に説明する。
例えば、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物よりなる重合開始剤の存在下でアニオン重合を行うに当たって、重合体ブロックAmaxの形成工程、重合体ブロックBの形成工程および重合体ブロックAminの形成工程をこの順序で経ることによって、重合体ブロックAmax−重合体ブロックB−重合体ブロックAminよりなるトリブロック共重合体を製造することができる。
また、前記方法とは逆の順序を採用して、重合体ブロックAminの形成工程、重合体ブロックBの形成工程および重合体ブロックAmaxの形成工程をこの順序で経ることによって、重合体ブロックAmin−重合体ブロックB−重合体ブロックAmaxよりなるトリブロック共重合体を製造してもよい。
さらに、例えば、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物よりなる重合開始剤の存在下でアニオン重合を行って末端にアニオン部分を有する重合体ブロックAmaxを製造し、またそれとは別に同様にアニオン重合を行って末端にアニオン部分を有する重合体ブロックAminを製造し、前記で得られた末端にアニオン部分を有する重合体ブロックAmaxと末端にアニオン部分を有する重合体ブロックAminを混合し、その混合物に対して重合体ブロックBを形成するための単量体を供給して重合を行って、末端にアニオン部分を有する重合体ブロックB−重合体ブロックAmaxよりなるジブロック共重合体と、末端にアニオン部分を有する重合体ブロックB−重合体ブロックAminよりなるジブロック共重合体の混合物を形成させ、次いでそれに2価のカップリング剤を反応させることによって、重合体ブロックAmax−重合体ブロックB−カップリング剤−重合体ブロックB−重合体ブロックAminよりなるブロック共重合体を製造する。これにより得られた前記ブロック共重合体において、重合体ブロックB−カップリング剤−重合体ブロックBよりなる結合部分は、全体として重合体ブロックBとして機能するので、結局この方法により、重合体ブロックAmax−重合体ブロックB−重合体ブロックAminよりなるトリブロック共重合体が得られる。
この方法による場合は、同時に、重合体ブロックAmax−重合体ブロックB−重合体ブロックAmax、重合体ブロックAmin−重合体ブロックB−重合体ブロックAminが生じ、重合後に生成したこれらのブロック共重合体を分離精製する操作が必要であるが、この手法を利用して本発明のブロック共重合体を製造することが可能である。
また、上記したようなアニオン重合操作の途中で形成された末端にアニオン部分を有する重合体のうちの所定割合について、その末端のアニオン部分を意図的に失活させることによって、重合体ブロックAmaxの数平均分子量と重合体ブロックAminの数平均分子量の相対値を制御することができる。この方法による場合は、副生成物が生じ、重合後に生成した副生物を分離精製する操作が必要ではあるが、この手法を利用して本発明のブロック共重合体を製造することも可能である。
本発明のブロック共重合体を製造するためのアニオン重合方法の種類は特に制限されず、例えば、溶液重合、塊状重合、沈殿重合などによって行うことができる。そのうちでも、不活性ガス雰囲気下に溶液重合する方法が、重合時にリビング性を高めることができることから好ましく採用される。その際の不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が使用される。不活性ガスは乾燥処理を施したものを使用することが好ましい。
溶液重合に用いる溶媒としては、使用する単量体の種類などに応じて適宜好適なものを選択すればよい。例えば、単量体としてアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを使用する場合は、溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物などを使用すると、良好な結果が得られることが多い。
溶媒の使用量は、必ずしも限られるものではないが、重合体ブロックAまたは重合体ブロックBを形成するのに使用する単量体および重合系に既に存在する重合体の総質量の1〜100倍の範囲内の量とすることが好ましい。
重合温度は、重合させる単量体の種類、達成されるリビング性、重合速度などを考慮して適宜好適なものを選択すればよい。例えば、アクリル酸エステルを重合する場合は、一般に、−100℃〜30℃の範囲内の重合温度を採用すると好結果が得られることが多い。また、例えば、メタクリル酸エステルを重合する場合は、一般に、−80℃〜50℃の範囲内の重合温度を採用すると好結果が得られることが多い。
所定の全ての重合体ブロックの形成操作が終了した後、通常のアニオン重合法に準じて、重合停止剤を加えて、重合反応を完了させることができる。重合停止剤の種類は必ずしも限られないが、メタノール、酢酸、塩酸などの1価のプロトン性化合物を使用することができる。
また、上記したように、所定の全ての重合体ブロックの形成操作が終了した後に、必要に応じて、通常のアニオン重合法に準じて、多官能性重合停止剤または多官能性単量体よりなるカップリング剤を反応させてもよい。
カップリング剤として多官能性重合停止剤を使用する場合には、上記のような重合停止剤を使用する必要はない。
また、カップリング剤として多官能性単量体を使用する場合は、カップリング反応を行った後に、上記のような重合停止剤を反応させることによって反応を停止させる。
カップリング剤として用い得る上記した多官能性重合停止剤の種類は特に限定されないが、例えば、α,α’−ジブロモ−p−キシレンなどの2価のハロゲン化アルキル基含有化合物;イソフタルアルデヒドなどの2価のアルデヒド化合物;イソフタル酸クロリドなどの2価のカルボン酸クロリド化合物;シアヌルクロリド等の3価のまたはそれ以上の価数のハロゲン化合物などを挙げることができる。
また、カップリング剤として用い得る上記した多官能性単量体の種類は特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートなどの2官能性のアクリル酸エステル;エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレートなどの2官能性のメタクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能性またはそれ以上の官能性のアクリル酸エステルなどを挙げることができる。
カップリング剤として、3価以上の多官能性重合停止剤または2官能以上の多官能性単量体を使用する場合は、多分岐型またはスター型のブロック共重合体を得ることができる。
本発明のブロック共重合体の使用用途については特に限定されないが、本発明のブロック共重合体は、熱可塑性で、加熱により軟化および/または溶融するので、熱可塑性重合体に対して従来から一般に採用されている各種の成形・加工を行うことができ、それによって各種の成形体、積層体、その他の製品を製造することができる。成形・加工方法は特に限定されるものではないが、本発明のブロック共重合体が有する作用効果を顕著に発揮させ得る点から、加熱溶融して所定の形状に賦形する溶融成形法が好ましく採用される。本発明のブロック共重合体を加熱溶融させる際の温度条件は、ブロック共重合体の構造、熱的特性などに応じて適宜好適な条件を選択することができるが、一般的には、100〜300℃の範囲内の温度が採用される。また、溶融後の賦形の際の冷却温度は、通常、0℃程度〜100℃程度の範囲内の温度が採用される。溶融成形法の具体例としては、熱圧縮成形法、射出成形法、押出し成形法、ブロー成形法、フィルム成形法(Tダイフィルム成形法、インフレーション成形法など)、溶融紡糸法、カレンダー成形法などを挙げることができる。
このような成形方法によって製造され得る成形体の形状としては、例えば、フィルム、シート、板、チューブ、繊維、三次元形状物などいずれの形状であってもよい。
また、本発明のブロック共重合体は、粘・接着剤の分野においても有用であり、粘着剤組成物におけるポリマー素材として用いることができる。本発明のブロック共重合体からなる粘着剤組成物を基材フィルム、テープなどに塗工して粘着フィルムなどを製造する方法としては、例えば溶液塗工、溶融押出し塗工、ホットメルト塗工などを挙げることができる。なかでも、本発明のブロック共重合体の溶融粘度が低い特徴を好適に活かす点で、溶融押出し塗工、ホットメルト塗工が好ましく用いられる。
成形体、積層体などの製品の製造に当たっては、本発明のブロック共重合体に、必要に応じて、フィラー、他の熱可塑性樹脂、滑剤、可塑剤などを配合してもよい。また、粘着剤組成物の製造に当たっては、本発明のブロック共重合体に、粘着剤組成物において一般に用いられている粘着付与樹脂、プロセスオイルなどの石油系軟化剤、安定剤、他の熱可塑性樹脂などの配合物が適宜添加される。
実施例
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例における各種物性は、以下の方法により求めた。
(1)重合体およびブロック共重合体の数平均分子量:
GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)(東ソー株式会社製「HLC−8020」;溶媒:テトラヒドロフラン)を使用し、示差屈折率(RI)に基づいて測定して、単分散ポリスチレンを標準とするポリスチレン換算で数平均分子量を求めた。
(2)重合体およびブロック共重合体の分子量分布:
上記(1)のようにして、GPC測定に基づいて数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求め、両者の比(Mw/Mn)を分子量分布の指標とした。
(3)ブロック共重合体における各重合体ブロックの構成割合:
1H−NMRでの分析結果に基づいて算出した。
(4)ブロック共重合体における各重合体ブロックのガラス転移温度:
DSC(示差走査熱量計)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(5)重合反応におけるブロック効率:
HPLC(高速液体クロマトグラフィー;溶媒:酢酸エチル/シクロヘキサン)での分析結果に基づいて算出した。
(6)ブロック共重合体の流動性(流れ):
JIS K−7210に規定された方法に準じて、ブロック共重合体のMFR(メルトフローレート:Melt Flow Rate)を、温度200℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
(7)硬度:
ブロック共重合体を用いて、加熱温度200℃、圧力1.0MPaの条件で熱圧縮成形を行って、1辺の長さが250mmで、厚さが1mmである正方形のシートを10枚作製した。該シートの中央部から1辺の長さが30mmである正方形の試験片(厚さ:1mm)を切り出し、これを10枚重ねたもの(厚さ:1.0cm)を用いて、JIS K−6253に規定された方法に従いデュロメーター硬さ(タイプA)を測定した。
(8)タック:
ブロック共重合体を用いて、加熱温度200℃、圧力1.0MPaの条件で熱圧縮成形を行って、1辺の長さが250mmで、厚さが1mmである正方形のシートを作製した。このシートの端部付近の領域から、半径が10mmである円型の試験片を切り出し、この試験片を用いて、JIS Z−0237に規定された方法に従ってプローブタック試験を行った。なお、タック値が小さいほど、表面膠着性が軽減されていると判定することができる。
(9)引張り破断強さおよび引張り破断伸度:
ブロック共重合体を用いて、加熱温度200℃、圧力1.0MPaの条件で熱圧縮成形を行って、1辺の長さが250mmで、厚さが1mmである正方形のシートを作製した。該シートの端部付近の領域から、熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向(シートの中央部から周辺に向かう放射方向)を長手方向とするダンベル3号型試験片を切り出した。このダンベル試験片を用いて、JIS K−6251に規定された方法に準じて引張り破断強さおよび引張り破断伸度をそれぞれ測定した。
(10)力学的異方性の程度(引張り弾性率に基づく評価):
(i) 粒状のブロック共重合体約30gを、寸法が、縦×横×深さ=150mm×150mm×1mmの金型キャビティの中央に置き、無荷重条件下に200℃で2分間加熱した後、熱圧縮成形法により1.0MPaの圧力条件下に200℃で3分間加熱し、次いでその圧力条件を維持しながら20℃まで冷却した。このようにして、1辺の長さが150mmであり、厚さが1mmである正方形のシートを作製した。
(ii) 前記(i)で作製したシートの端部付近の領域から、熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向(金型中央部から周辺に向かう放射方向)を長手方向とするダンベル3号型試験片を切り出し、JIS K−6251に規定された方法に従って引張り弾性率(EL)(MPa)を測定した。
(iii) 前記(i)で作製したシートの端部付近の領域から、熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向に対して直角の方向を長手方向とするダンベル3号型試験片を切り出し、JIS K−6251に規定された方法に従って引張り弾性率(ET)(MPa)を測定した。
(iv) 上記(ii)で測定された溶融流動方向の引張り弾性率(EL)の値と、上記(iii)で測定された溶融流動方向に対して直角の方向の引張り弾性率(ET)の値を比べたときに、両方の値が近似しているほど、ブロック共重合体から得られる成形体における力学的異方性が小さく、成形体全体でバランスの採れた力学的特性を有していると判定することができる。
(11)ブロック共重合体の溶融粘度:
フローテスタCFT−500形(島津製作所)キャピラリー型粘度計を用い、プランジャー断面積1cm2、ダイ(ノズル)寸法=直径1mm×長さ10mm、試験荷重10kg/cm2の条件で、180℃で測定した。
(12)粘着テープの接着力:
JIS Z−0237に準じて180°剥離試験により評価した。すなわち、作製した粘着テープから幅25mm×長さ100mmの試験片を切り取り、それをポリエチレン製の厚さ約1mmのシートおよびステンレス(SUS304)板のそれぞれに貼り付け、25℃において30cm/分の速度で180°の方向に剥離して接着力を測定した。
(13)粘着テープの保持力:
JIS Z−0237に準じて評価した。すなわち、作製した粘着テープをステンレス(SUS304)板に25mm×25mmで接着し、環境温度70℃で荷重1kgのおもりを吊り下げ、おもりが落下するまでの時間(保持時間)から求めた。240分間でおもりが落下しない場合は、240分後の粘着テープのずれ距離で評価した。
以下の実施例および比較例で用いたメタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルおよびトルエンは、いずれも、市販品を水素化カルシウムで脱水処理し蒸留した後、モレキュラーシーブスで乾燥し、さらに(使用直前に減圧下で蒸留したものである。
《実施例1》
(1) 窒素置換した内容積が200mlの三口フラスコ内に、トルエン92ml、濃度0.7mol/リットルのイソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液4.5mlおよび極性添加剤としての1,2−ジメトキシエタン2.4g(27mmol)を加え、溶液が均一になるまで撹拌した後、重合開始剤としてsec−ブチルリチウムの溶液(濃度1.3mol/リットルのシクロヘキサン溶液)0.15ml(0.20mmol)を加えた。
(2) 0℃で、第1番目の単量体としてメタクリル酸メチル(以下「MMA」という)を3.75g(37.5mmol)加え、0℃で2時間撹拌して重合させた。その後、重合系より溶液の一部(2ml)をサンプルとして抜き取って、1H−NMRで測定したところ、未反応のMMAは痕跡量しか認められず、MMAの転化率は99%以上であることが判明した。また、得られたサンプルをメタノール20ml中に注いで、析出した重合体(ポリメタクリル酸メチル)(以下「PMMA」という)を取り出し、減圧乾燥した後、テトラヒドロフラン(以下「THF」という)に溶かし、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下「GPC」という)により測定したところ、該重合体の数平均分子量は19,100であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であることが判明した。
(3) 上記(2)のMMAの重合後、溶液を−30℃まで冷却し、これに、第2番目の単量体としてアクリル酸n−ブチル(以下「n−BA」という)15.0g(117mmol)を約30分間かけて添加した。添加終了後、−30℃でさらに10分間撹拌を継続して重合を完了させた。その後、重合系より溶液の一部(2ml)をサンプルとして抜き取り、1H−NMRで測定したところ、未反応のn−BAは痕跡量しか認められず、n−BAの転化率は99%以上であることが判明した。また、得られたサンプルを上述と同様の方法でGPCで分析したところ、得られた重合体の数平均分子量は106,300であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であることが判明した。更に得られた重合体をNMRで分析した結果、該重合体はMMA単位およびn−BA単位をそれぞれ19.9質量%および80.1質量%を含み、1つのPMMAブロックと1つのポリn−BA(以下「PnBA」という)ブロックからなるジブロック共重合体(PMMA−PnBA)であることが判明した。
(4) 上記(3)のn−BAの重合後、この溶液に、−30℃で第3番目の単量体としてMMAを1.25g(12.5mmol)添加して溶液を撹拌した。溶液が均一になった後も−30℃で1時間撹拌し、0℃に昇温してさらに2時間撹拌を継続して重合を行った。その後、重合系より溶液の一部(2ml)を抜き取り、1H−NMRで測定したところ、未反応のMMAは10%であり、MMAの転化率は90%であることが判明した。
(5) 重合系にメタノールを10ml加え、室温で1時間撹拌下に反応させることによって、重合体の活性末端を失活させ、重合を停止させた。得られた溶液全量を2リットルのメタノール中に注ぎ、得られた析出物を回収し、減圧下に低沸点物を除去した。
その結果、重合体を19.2g得た(収率:97%)。
(6) (i) 上記(5)で最終的に得られた重合体を、上述と同様の方法でGPCで分析したところ、該重合体の数平均分子量は112,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.02であることが判明した。また、得られた重合体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した結果、PMMAおよびPMMA−PnBAの痕跡は認められず、上記一連の重合反応におけるブロック効率はほぼ100%であることが判明した。さらに、NMRでの分析結果により、得られた重合体はMMA単位およびn−BA単位をそれぞれ24.3質量%および75.7質量%含むことが判明した。
(ii) これらの分析結果と、上記(3)で得られたPMMA−PnBAの分析結果に基づいて、最終的に得られた重合体は、PnBAを中間ブロックとして、その両端にPMMAが1つずつ結合したトリブロック共重合体(PMMA−PnBA−PMMA)であり、一方の端部におけるPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部におけるPMMAブロックの質量割合は、それぞれ18.8質量%、75.7質量%および5.5質量%であることが判明した。
(iii) 上記のことから、最終的に得られたトリブロック共重合体における両端のPMMAブロックについて、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]は(19,100×5.5)/18.8=5,600であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)](19,100)と低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は、19,100/5,600=3.41であった。
(7) また、上記(5)で得られた重合体(トリブロック共重合体)についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度はいずれも112℃であり、PnBAブロックのガラス転移温度は−48℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(8) さらに、上記(5)で得られた重合体(トリブロック共重合体)について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(9) (i) さらに、上記(5)で得られたトリブロック共重合体について、切断加工して得た粒状の該トリブロック共重合体の約30gを、寸法が縦×横×深さ=150mm×150mm×1mmの金型キャビティの中央に置き、無荷重条件下に200℃で2分間加熱した後、熱圧縮成形法によって、1.0MPaの圧力条件下に200℃で3分間加熱し、次いでその圧力条件を維持しながら20℃まで冷却した。このようにして、1辺の長さが150mmであり、厚さが1mmである正方形のシートを作製した。
(ii) 上記(i)で作製したシートを、−50℃以下に冷却して切断し、熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向(金型中央から周辺に向かう放射方向)の軸に対して平行な面を切断面とする試験片(試験片1)と、前記軸に対して垂直な面を切断面とする試験片(試験片2)をそれぞれ切り出した。
(iii) 上記(ii)で切り出した試験片1と試験片2のそれぞれをリンタングステン酸で染色することによって、PMMAブロックの集合体からなるドメインを選択的に染色した。染色処理後の試験片の切断面をTEM(透過型電子顕微鏡)(日立製作所製「H−7100FA」;加速電圧:75kV;対物絞り:No4)で写真撮影したところ、試験片1の切断面(熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向の軸に対して平行な切断面)のTEM写真は第1図に示すとおりであり、また試験片2の切断面(溶融流動方向の軸に対して垂直な切断面)のTEM写真は第2図に示すとおりであった。
(iv) 上記試験片の断面のTEM写真である第1図および第2図から明らかなように、この実施例1で得られたトリブロック共重合体を用いて溶融成形した成形体では、PMMAブロックが、その溶融流動方向とは無関係にスフィアー構造(球構造)にミクロ相分離している。第1図および第2図に見るそのようなスフィアー構造(球構造)による相分離構造は、下記の表1に示した、EL(熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向の引張り弾性率)とET(熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向と直角の方向の引張り弾性率)とが近似していて、力学的異方性が低減されている結果と良く一致している。
《比較例1》
(1) 実施例1において、第1番目に供給した単量体(MMA)の量を2.50g(25.0mmol)に変更すると共にその重合時間を1.5時間に変更し、第3番目に供給した単量体(MMA)の量を2.50g(25.0mmol)に変更すると共にその重合条件を−30℃で1時間、次いで0℃で4時間という条件に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、第1番目のMMAの重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が12,800で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が114,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、得られた重合体は、MMA単位およびn−BA単位をそれぞれ25.7質量%および74.3質量%の割合で有し、PnBAを中間ブロックとし、その両端にPMMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(3) さらに、上記のトリブロック共重合体において、一方のPMMA末端ブロック、PnBA中間ブロックおよびもう一方のPMMA末端ブロックの質量割合はそれぞれ13.0質量%、74.3質量%および12.7質量%であることが判明した。そのことから、最終的に得られたトリブロック共重合体における2つのPMMA末端ブロックについて、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]は(12,800×12.7)/13.0=12,500であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)](12,800)と、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は12,800/12,500=1.02であった。
(4) また、上記で得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度は、いずれも113℃であり、PnBAのブロックのガラス転移温度は−46℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(5) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(6) (i) また、上記(5)で得られたトリブロック共重合体を用いて、実施例1の(9)におけるのと全く同様にして熱圧縮成形を行って、1辺の長さが150mmであり、厚さが1mmである正方形のシートを作製した。
(ii) 上記(i)で作製したシートを、−50℃以下に冷却して切断し、熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向(金型中央から周辺に向かう放射方向)の軸に対して平行な面を切断面とする試験片(試験片1)と、前記軸に対して垂直な面を切断面とする試験片(試験片2)をそれぞれ切り出した。
(iii) 上記(ii)で切り出した試験片1および試験片2のそれぞれをリンタングステン酸で染色することによって、PMMAブロックの集合体からなるドメインを選択的に染色した。染色処理後の試験片の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)(日立製作所製「H−7100FA」;加速電圧:75kV;対物絞り:No4)で写真撮影したところ、試験片1の切断面(熱圧縮成形時におけるブロック共重合体の溶融流動方向の軸に対して平行な切断面)のTEM写真は第3図に示す通りであり、また試験片2の切断面(溶融流動方向の軸に対して垂直な切断面)のTEM写真は第4図に示すとおりであった。
(iv) 上記試験片1および試験片2の切断面のTEM写真である第3図及び第4図から明らかなように、この比較例1で得られたトリブロック共重合体を用いて溶融成形して得た成形体では、PMMAブロックが溶融流動方向が軸となるようなシリンダー構造でミクロ相分離していて(図3)、ブロック共重合体の溶融流動方向とそれと垂直な方向とでPMMAブロックの相分離構造の形態に大きな違いを生じている。第3図および第4図に見るそのような相分離構造は、以下の表1に示す、成形体における力学的異方性の結果、すなわち成形体において、その溶融流動方向と平行な方向での引張り弾性率ELと溶融流動方向に直角な方向での引張り弾性率LTの値の間の大きな違いによる、大きな力学的異方性の結果と良く一致している。
《実施例2》
(1) 実施例1において、第1番目の単量体(MMA)の量を5.14g(51.4mmol)に変更すると共に、その重合時間を3時間に変更し、第2番目の単量体(n−BA)の量を14.0g(109mmol)に変更し、さらに第3番目の単量体(MMA)の量を0.86g(8.6mmol)に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、第1番目の単量体(MMA)の重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が27,800で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が112,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、得られた重合体は、MMA単位およびn−BA単位をそれぞれ29.3質量%および70.7質量%の割合で有し、PnBAを中間ブロックとし、その両端にPMMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(3) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体において、一方の端部のPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部のPMMAブロックの質量割合はそれぞれ25.1質量%、70.7質量%および4.2質量%であることが判明した。したがって、該トリブロック共重合体における2つのPMMA末端ブロックについて、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]は、(27,800×4.2)/25.1=4,700であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は27,800/4,700=5.91であった。
(4) また、上記で得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度は、いずれも115℃であり、PnBAブロックのガラス転移温度は−48℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(5) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《比較例2》
(1) 実施例1において、第1番目の単量体(MMA)の量を3.0g(30mmol)に変更し、第2番目の単量体(n−BA)の量を14.0g(109mmol)に変更し、第3番目の単量体(MMA)の量を3.0g(30mmol)に変更すると共に該第3番目の単量体(MMA)の重合条件を−30℃で1時間、次いで0℃で6時間という条件に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、第1番目の単量体(MMA)の重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が14,400で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が109,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、上記で得られた重合体は、MMA単位およびn−BA単位をそれぞれ30.0質量%および70.0質量%の割合で有し、PnBAを中間ブロックとし、その両端にPMMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(3) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体において、一方の端部のPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部のPMMAブロックの質量割合はそれぞれ15.0質量%、70.0質量%および15.0質量%であることが判明した。したがって、該トリブロック共重合体における2つのPMMA末端ブロックについて、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]は、(14,400×15.0)/15.0=14,400であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は14,400/14,400=1.00であった。
(4) また、上記で得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度は、いずれも109℃であり、PnBAブロックのガラス転移温度は−44℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(5) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《比較例3》
(1) 実施例1において、第1番目の単量体(MMA)の量を8.75g(87.5mmol)に変更すると共にその重合時間を4時間に変更し、第2番目の単量体(n−BA)の量を10.0g(78mmol)に変更し、第3番目の単量体(MMA)の量を2.63g(26.3mmol)に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、第1番目の単量体(MMA)の重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が51,000、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が114,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、上記で得られた重合体は、MMA単位およびn−BA単位をそれぞれ51.2質量%および48.8質量%の割合で有する、PnBAを中間ブロックとし、その両端にPMMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(3) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体において、一方の端部のPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部のPMMAブロックの質量割合はそれぞれ38.9質量%、48.8質量%および12.3質量%であることが判明した。したがって、該トリブロック共重合体における2つのPMMA末端ブロックについて、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]は、(51,000×12.3)/38.9=16,100であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は51,000/16,100=3.17であった。
(4) また、上記で得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度は、いずれも120℃であり、PnBAブロックのガラス転移温度は−45℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(5) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《比較例4》
(1) 実施例1において、第1番目の単量体(MMA)の量を2.80g(28.0mmol)に変更すると共にその重合時間を1時間に変更し、第2番目の単量体(n−BA)の量を18.0g(140mmol)に変更し、第3番目の単量体(MMA)の量を2.0g(20.0mmol)に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、第1番目の単量体(MMA)の重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が14,800で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が122,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、上記で得られた重合体は、MMA単位およびn−BA単位をそれぞれ21.1質量%および79.9質量%の割合で有する、PnBAを中間ブロックとし、その両端にPMMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(3) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体において、一方の端部のPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部のPMMAブロックの質量割合はそれぞれ12.4質量%、79.9質量%および8.7質量%であることが判明した。したがって、該トリブロック共重合体における2つのPMMA末端ブロックについて、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]は、(14,800×8.7)/12.4=10,400であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は14,800/10,400=1.42であった。
(4) また、上記で得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度は、いずれも117℃であり、PnBAブロックのガラス転移温度は−46℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(5) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《実施例3》
(1) 実施例1において、重合開始剤であるsec−ブチルリチウムの量を0.10mmol(濃度1.3mol/リットルのシクロヘキサン溶液において0.077ml)に変更し、第1番目の単量体(MMA)の量を4.50g(45.0mmol)に変更すると共にその重合時間を3.5時間に変更し、第3番目の単量体(MMA)の量を0.50g(5.0mmol)に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って、第1番目の単量体(MMA)の重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が45,000で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が201,000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(2) 上記(1)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、上記で得られた重合体は、MMA単位およびn−BA単位をそれぞれ24.7質量%および75.3質量%の割合で有する、PnBAを中間ブロックとし、その両端にPMMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(3) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体において、一方の端部のPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部のPMMAブロックの質量割合はそれぞれ22.5質量%、75.2質量%および2.2質量%であることが判明した。したがって、該トリブロック共重合体における2つのPMMA末端ブロックについて、低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]は、(45,000×2.2)/22.5=4400であり、高い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と低い数平均分子量のPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は45,000/4,400=10.23であった。
(4) また、上記で得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、2つのPMMAブロックのガラス転移温度は、いずれも116℃であり、PnBAブロックのガラス転移温度は−46℃であることが判明した。この結果から、2つのPMMAブロックは互いに相溶性であり、且つ該2つのPMMAブロックと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(5) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、そのMFR、硬度、タック、引張り破断強度、引張り破断伸度および力学的異方性を上記した方法に従って測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
上記の表1から明らかなように、アニオン重合により得られた実施例1〜3の本発明のブロック共重合体(トリブロック共重合体)は、いずれも、相互に相溶する2つの重合体ブロック(PMMAブロック)とその間にそれとは相溶しない1つの重合体ブロック(PnBA)を有していて、しかも両端の2つの重合体ブロック(PMMAブロック)において、数平均分子量の大きな重合体ブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と数平均分子量の小さな重合体ブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2以上であり、且つ該両端の2つの重合体ブロック(PMMAブロック)の含有率がブロック共重合体全体の質量に対して20〜45質量%の範囲内である。その結果、実施例1〜3で得られたブロック共重合体は、その硬度のデータが示すように適度な柔軟性を有している。
さらに、実施例1〜3のブロック共重合体は、MFRの値が大きく、成形性に優れている。
しかも、実施例1〜3のブロック共重合体から得られた成形体は、タック値が低く、表面膠着性が低減しており、その上、成形時の重合体の溶融流動方向とそれと直角の方向とで力学的特性の差が小さくて(力学的異方性が低減されており)、力学的等方性に優れている。
さらに、実施例1〜3のブロック共重合体は、引張り破断強さおよび引張り破断伸度のデータで示されるように力学的基本特性にも優れることが分かる。
それに対して、比較例1および比較例2で得られたブロック共重合体は、ブロック共重合体における2つのPMMAブロックの合計含有率が20〜45質量%の範囲内ではあるが、数平均分子量の大きなPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と数平均分子量の小さなPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2よりも小さく、本発明の要件を満たしていない。その結果、比較例1および比較例2のブロック共重合体は、いずれも硬度の値が大きく、柔軟性に欠けている。
しかも、比較例1および比較例2のブロック共重合体から得られた成形体では、成形時の重合体の溶融流動方向とそれと直角の方向とで力学的特性の差が極めて大きく、力学的異方性が著しい。
また、比較例3で得られたブロック共重合体は、数平均分子量の大きなPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と、数平均分子量の小さなPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2以上ではあるが、2つのPMMAブロックの合計含有率が51.2質量%であって20〜45質量%の範囲から外れている。その結果、比較例3のブロック共重合体は、硬度の値が極めて大きく、柔軟性に欠けている。
さらに、比較例4で得られたブロック共重合体は、2つのPMMAブロックの合計含有率が21.1質量%であり、柔軟性は実施例1および3と同程度であるが、数平均分子量の大きなPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]と数平均分子量の小さなPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2よりも小さくなっている。その結果、比較例4のブロック共重合体は、タックの値が大きく、該ブロック共重合体から得られる成形体の表面膠着性が著しいことがわかる。
《実施例4》
(1) 実施例1において、第1番目に供給した単量体(MMA)の量を4.0gに変更すると共にその重合時間を3.5時間に変更し、第2番目に供給した単量体(n−BA)の量を14.0gに変更し、第3番目に供給した単量体をMMAからアクリル酸メチル(MA)に変更しその量を1.8gとすると共にその重合条件を−30℃で2分という条件に変更し、それ以外は実施例1と同様の操作を行った。重合後、重合系内に未反応のMAは全く観測されず、MAの転化率は100%であることが判明した。
(2) 上記(1)の第1番目のMMAの重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が21,800で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が95,800で、分子量分布(Mw/Mn)が1.06である重合体を得た。
(3) 上記(2)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、得られた重合体は、MMA単位、n−BA単位およびMA単位をそれぞれ20.4質量%、71.2質量%および8.4質量%の割合で有し、PnBAを中間ブロックとし、その片端にPMMA、もう片端にPMAが結合した式:PMMA−PnBA−PMAで表されるトリブロック共重合体であった。
(4) このことから、PMAブロックの数平均分子量は(21,800×8.4)/20.4=9,000であった。
(5) 得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、PnBAに相当するガラス転移温度(−40℃)とPMMAブロックとPMAブロックが相溶して形成するドメインに由来するもう一つのガラス転移温度(90℃付近)が観測された。この結果から、PMMAブロックとPMAブロックは互いに相溶性であり、且つPMMAブロックとPMAブロックが相溶して形成するドメインと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(6) そのことから、最終的に得られたトリブロック共重合体におけるPMA末端ブロックは、互いに相溶する重合体ブロックAを構成する重合体ブロックのうち最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminであり、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxであるPMMA末端ブロックとの数平均分子量の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は21,800/9,000=2.4であった。
(7) さらに、上記で得られたトリブロック共重合体について、上記した方法に従って測定した硬度、引張り破断強度および引張り破断伸度は、それぞれ43、3.2MPa、270%であり、エラストマー特性を有することが明らかとなった。
《実施例5》
(1) 実施例4において、重合開始剤として供給したsec−ブチルリチウムの溶液の量を0.19ml(0.25mmol)に変更し、第3番目に供給した単量体をアクリル酸メチル(MA)からアクリル酸エチル(EA)に変更し、それ以外は実施例4と同様の操作を行った。重合後、重合系内に未反応のMAは全く観測されず、EAの転化率は100%であることが判明した。
(2) 上記(1)の第1番目のMMAの重合で得られたPMMAブロックの数平均分子量が17,100で、最終的に得られた重合体全体の数平均分子量が88,500で、分子量分布(Mw/Mn)が1.02である重合体を得た。
(3) 上記(2)で得られた重合体についてHPLC分析により求めたブロック効率は、ほぼ100%であった。また、得られた重合体は、MMA単位、n−BA単位およびEA単位をそれぞれ20.5質量%、70.9質量%および8.6質量%の割合で有し、PnBAを中間ブロックとし、その片端にPMMA、もう片端にPMAが結合した式:PMMA−PnBA−PEAで表されるトリブロック共重合体であった。
(4) このことから、PEAブロックの数平均分子量は(17,100×8.6)/20.5=7,200であった。
(5) 得られたトリブロック共重合体についてDSCで分析した結果、PnBAに相当するガラス転移温度(−42℃)と、PMMAブロックとPEAブロックが相溶して形成するドメインに由来するもう一つのガラス転移温度(60℃付近)が観測された。この結果から、PMMAブロックとPEAブロックは互いに相溶性であり、且つPMMAブロックとPEAブロックが相溶して形成するドメインと中間のPnBAブロックは互いに相溶しないことがわかる。
(6) そのことから、最終的に得られたトリブロック共重合体におけるPEA末端ブロックは、互いに相溶する重合体ブロックAを構成する重合体ブロックのうち最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminであり、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxであるPMMA末端ブロックとの数平均分子量の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]は17,100/7,200=2.4であった。
実施例4および5の結果から、互いに相溶する2つの重合体ブロックAのうちの少なくとも1つを、重合速度が速いアクリル酸エステル系単量体であるMAまたはEAを重合して得られる重合体ブロック(PMAまたはPEA)とすることにより、ブロック共重合体を製造するための重合時間を短縮できることがわかる。
また、上記したアクリル酸エステル系重合体ブロックを構成するPMAおよびPEAは、いずれも、単独ではガラス転移温度が室温よりも低いことが知られており、ハードセグメントして機能しないが、ブロック共重合体中のPMMAブロックと相溶し、且つ数平均分子量の比を2以上とすることで、ブロック共重合体中のPMAブロックまたはPEAブロックがPMMAブロックと相溶して形成するドメインのガラス転移温度が室温以上となり、ハードセグメントとして機能し、ブロック共重合体にエラストマー特性を発現させ、熱可塑性エラストマーにする。
《実施例6》[粘着性の評価]
(1) 実施例5で得られたブロック共重合体(上記した方法で測定した溶融粘度=13N・s/m2)をトルエンに溶解して濃度35質量%の溶液を調製し、その溶液をコーターを用いてポリエチレンテレフタレート製フィルム上に約250μmの厚さにコーティングし、160℃で、30分間乾燥して、粘着特性評価用の粘着テープを作製した。
(2) 上記(1)で作製した粘着テープの粘着特性(接着力および保持力)を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例5》
(1) 供給するモノマー量を変更して、実施例1と同様の方法を採用して、一方の端部におけるPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部におけるPMMAブロックの質量割合が、それぞれ12.5質量%、75.0質量%および12.5質量%、[Mn(Amax)/Mn(Amin)]=1.0、数平均分子量が66,700、分子量分布(Mw/Mn)が1.05、ブロック効率が99%のPMMA−PnBA−PMMAブロック共重合体を得た。このブロック共重合体における両端のPMMAブロックの数平均分子量は、いずれも7,200であり、同じであった。
(2) 上記(1)で得られたブロック共重合体の溶融粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られたブロック共重合体を用いて実施例6の(1)と同様にして粘着テープを作製し、上記した方法でその粘着特性(接着力及び保持力)を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例6》
(1) 供給するモノマー量を変更して、実施例1と同様の方法を採用して、一方の端部におけるPMMAブロック、中間のPnBAブロックおよびもう一方の端部におけるPMMAブロックの質量割合が、それぞれ10.0質量%、80.0質量%および10.0質量%、[Mn(Amax)/Mn(Amin)]=1.0、数平均分子量が75,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.13、ブロック効率が96%のPMMA−PnBA−PMMAブロック共重合体を得た。このブロック共重合体における両端のPMMAブロックの数平均分子量は、いずれも6,900であり、同じであった。
(2) 上記(1)で得られたブロック共重合体の溶融粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られたブロック共重合体を用いて実施例6の(1)と同様にして粘着テープを作製し、上記した方法でその粘着特性(接着力および保持力)を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
上記の表2から、実施例6で用いた実施例5のブロック共重合体は、ブロック共重合体の一方の端部にPMMAブロックを有し、もう一方の端部にそれと相溶するPEAブロックを有し、それらのブロックの間にそれらと相溶しないPnBAブロックを有していて且つPMMAブロックの数平均分子量[Mn(Amax)]とPEAブロックの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2.4であることにより、PMMA−PnBA−PMMAよりなり且つ両端のPMMブロックの数平均分子量が同じである比較例5および比較例6のブロック共重合体に比べて溶融粘度が低く、溶融流動性に優れていることがわかる。
また、実施例5のブロック共重合体を用いてなる実施例6の粘着テープは、ポリエチレンシートおよびステンレス板の両方に対して高い接着力を有し、粘着特性に優れている。この結果から、実施例5のブロック共重合体は、粘着剤として有用であることがわかる。
それに対して、比較例5のブロック共重合体は、溶融粘度が高く、溶融流動性に劣っている。しかも、比較例5のブロック共重合体を用いてなる粘着テープは、ポリエチレンシートおよびステンレス板のいずれに対しても接着力が低く、実施例6に比べて粘着特性に劣っている。
また、比較例6のブロック共重合体は、溶融粘度が高く溶融流動性に劣っている。しかも、比較例6のブロック共重合体を用いてなる粘着テープは、ステンレス板に対しては高い接着力を示すが、ポリエチレンシートに対する接着力が低く、実施例6の粘着テープに比べて粘着特性に劣っている。
産業上の利用可能性
本発明のブロック共重合体は、溶融粘度が低くて溶融流動性が良好であり、そのため、成形性、粘着テープなどを製造する際のコーティング性に優れており、しかも適度な柔軟性を有している。
また、本発明のブロック共重合体は、引張り破断強さ、引張り破断伸度などに代表される力学的基本特性にも優れている。
本発明のブロック共重合体を溶融成形して得られる成形体は、成形時の重合体の溶融流動方向とそれ以外の方向とで、力学的特性の差が小さくて力学的異方性が低減されており、力学的等方性に優れている。
本発明のブロック共重合体を用いて成形を行うと、成形収縮、反り、歪みなどの不都合を生じず、目的とする成形体を高い寸法精度で製造することができる。
そして、本発明のブロック共重合体のうちで、互いに相溶する2つ以上の重合体ブロックAがいずれもポリメタクリル酸メチルよりなる重合体ブロックであり、且つ重合体ブロックBが重合体ブロックAとは相溶しない(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックであるブロック共重合体、特に前記実施例1〜3に記載したような、ポリn−ブチルアクリレートを中間の重合体ブロックとし、その両端にMn(Amax)/Mn(Amin)の値が2以上である数平均分子量の異なるポリメタクリル酸メチルよりなる2つの重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体では、該ブロック共重合体を成形して得られる成形体のタック値が低く、表面膠着性が低減していて成形体同士の付着や膠着がなく、取り扱い性に優れている。
また、本発明のブロック共重合体のうちで、ハードセグメントを構成する互いに相溶する2つ以上の重合体ブロックAのうちの少なくとも1つがアクリル酸エステル重合体ブロックであるブロック共重合体は、良好な熱可塑性エラストマーとして利用できると共に、溶融粘度が低くて、溶融流動性に優れ、しかも粘着力に優れており、粘着剤用組成物におけるポリマー素材として利用することができる。
そして、本発明の製造方法による場合は、前記した優れた特性を備えた本発明のブロック共重合体を、簡便で工業的に有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で得られた本発明のブロック共重合体を熱圧縮成形して作製したシートを、熱圧縮成形時のブロック共重合体の溶融流動方向の軸に対して平行な面で切断して得た試験片の切断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で撮影した写真である。
第2図は、実施例1で得られた本発明のブロック共重合体を熱圧縮成形して作製したシートを、熱圧縮成形時のブロック共重合体の溶融流動方向の軸に対して垂直な面で切断して得た試験片の切断をTEMで撮影した写真である。
第3図は、比較例1で得られたブロック共重合体を熱圧縮成形して作製したシートを、熱圧縮成形時のブロック共重合体の溶融流動方向の軸に対して平行な面で切断して得た試験片の切断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で撮影した写真である。
第4図は、比較例1で得られたブロック共重合体を熱圧縮成形して作製したシートを、熱圧縮成形時のブロック共重合体の溶融流動方向の軸に対して垂直な面で切断して得た試験片の切断をTEMで撮影した写真である。
Claims (13)
- (a)アニオン重合により得られたブロック共重合体であって;
(b)相互に相溶する2つ以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックAと、該重合体ブロックAとは相溶しない少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックBを有し;
(c)該重合体ブロックAのうちの、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxの数平均分子量[Mn(Amax)]と、最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminの数平均分子量[Mn(Amin)]との比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]の値が2以上であり;
(d)ブロック共重合体中に、下記の一般式(I);
(−)Amax−B−Amin(−) (I)
[式中、Amaxは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxを示し、Aminは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示し、「−」は各重合体ブロックを連結する化学結合を示し、(−)は化学結合手がある場合または化学結合手が無い場合のいずれかであることを意味する。]
で表されるブロック結合部を少なくとも1つ有し;且つ、
(e)ブロック共重合体の全質量に対して、重合体ブロックA全体の含有率が20〜45質量%の範囲内である;
ことを特徴とするブロック共重合体。 - ブロック共重合体が、有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合して得られたブロック共重合体である請求項1に記載のブロック共重合体。
- 2つ以上の重合体ブロックAのうちの少なくとも1つが25℃を超えるガラス転移温度を有し、重合体ブロックBが25℃以下のガラス転移温度を有する請求項1または2に記載のブロック共重合体。
- 重合体ブロックAminの数平均分子量が1,000〜15,000の範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
- 溶融混練物において重合体ブロックAが球構造のミクロ相分離構造を形成し得る請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
- 下記の一般式(II):
Amax−B−Amin (II)
(式中、Amaxは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxを示し、Aminは重合体ブロックAのうちで最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminを示し、Bは重合体ブロックBを示し、「−」は各重合体ブロックを連結する化学結合を示す。)
で表されるブロック配列を有するトリブロック共重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロック共重合体。 - AmaxおよびAminが相互に相溶するメタクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、BがAmaxおよびAminと相溶しないアクリル酸エステル系重合体ブロックからなるトリブロック共重合体である請求項6に記載のブロック共重合体。
- Amaxがメタクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、AminがAmaxと相溶するアクリル酸エステル系重合体ブロックからなり、BがAmaxおよびAminと相溶しないアクリル酸エステル系重合体ブロックからなるトリブロック共重合体である請求項6に記載のブロック共重合体。
- (i)有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合を行うことによって、請求項1に記載のブロック共重合体を製造する方法であって;
(ii)ブロック共重合体の製造時に、ブロック共重合体を構成する相互に相溶する2つ以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合体ブロックAとして、最も数平均分子量の大きい重合体ブロックAmaxの数平均分子量[Mn(Amax)]と最も数平均分子量の小さい重合体ブロックAminの数平均分子量[Mn(Amin)]の比[Mn(Amax)/Mn(Amin)]が2以上である重合体ブロックを形成するために、重合体ブロックAmaxを形成するために使用する単量体の質量(Wmax)と重合体ブロックAminを形成するために使用する単量体の質量(Wmin)の比(Wmax/Wmin)を2以上に調整すると共に;
(iii)重合体ブロックAを形成させるための単量体の合計使用量を、ブロック共重合体を形成させるための全ての単量体の使用量に対して20〜45質量%の範囲内に調整して重合を行う;
ことを特徴とするブロック共重合体の製造方法。 - (i)有機アルカリ金属化合物および/または有機アルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合を行うことによって、請求項6に記載のトリブロック共重合体を製造する方法であって;
(ii)ブロック共重合体の製造時に、重合体ブロックAmaxを形成するために使用する単量体の質量(Wmax)と重合体ブロックAminを形成するために使用する単量体の質量(Wmin)の比(Wmax/Wmin)を2以上に調整すると共に;
(iii)重合体ブロックAmaxおよび重合体ブロックAminを形成させるための単量体の合計使用量を、ブロック共重合体を形成させるための全ての単量体の使用量に対して20〜45質量%の範囲内に調整して重合を行う;
ことを特徴とするトリブロック共重合体の製造方法。 - 有機アルミニウム化合物を助触媒として更に用いる請求項9または10に記載の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のブロック共重合体よりなる成形体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のブロック共重合体を含有してなる粘着剤組成物。
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