JP2020169294A - 塩化ビニル系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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友裕 小野
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Abstract

【課題】耐衝撃性と透明性のバランスに優れる塩化ビニル系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形品を提供する。【解決手段】塩化ビニル系樹脂、及びアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するアクリル系ブロック共重合体を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、前記(b2)の含有量が10〜25質量%の範囲であり、前記(b1)に含まれるアクリル酸エステル単位が、一般式CH2=CH−COOR1(式中、R1は炭素数1〜3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−1)単位及び一般式CH2=CH−COOR2(式中、R2は炭素数4〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−2)単位を含み、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、アクリル系ブロック共重合体を4〜25質量部含有する塩化ビニル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は塩化ビニル系樹脂組成物及び該組成物からなる成形品に関する。
塩化ビニル系樹脂組成物はその特性を生かして種々の成形品に汎用されており、各用途に応じた種々の特性が要求されている。このような要求特性としては、例えば電線被覆、ラップフィルム、シート等といった軟質用途分野では、高い体積固有抵抗値、良好な可塑剤吸収性、フィッシュアイの低減等が挙げられ、パイプ、継手、窓枠、工業用透明板、フィルム等といった硬質用途分野では、成形体に加工する際の成形加工性・熱的安定性、成形後の引張強度や耐衝撃性等の力学物性、及び透明性等が良好であることが求められる。
これらの要求特性を改良するために様々な工夫がなされてきており、例えば硬質用途分野、半硬質用途分野における耐衝撃性等の力学物性向上のために、塩化ビニル系樹脂にメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下MBS樹脂と略す)又は多官能性モノマーにより架橋したアクリル系重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合して得られるコアシェル型の耐衝撃改良剤を添加する方法(特許文献1)が検討されている。しかしながらこの方法では架橋構造を有する耐衝撃改良剤の流動性が低いため、成形加工時の溶融流動特性が悪く、例えば押出成形機のモーター負荷が高くなるなど製造条件面での問題が生じ得る。
また、成形加工時の溶融流動特性を改良するため、架橋構造を含まないアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルとの共重合体と塩化ビニルモノマーを共重合する方法(特許文献2)も検討されている。しかしながら、この方法では得られる塩化ビニル系共重合体の溶融流動性に改善は見られるものの、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルとからなる共重合体の耐衝撃性改良効果が十分ではなく、また架橋構造を含まないことから成形時の分散性が不安定となり透明性の面においても依然として課題が残っている。
さらに、耐衝撃性等の力学物性と成形加工性のバランスに優れる樹脂組成物を得る方法として、塩化ビニル系樹脂にブロック共重合体を添加する方法(特許文献3)も検討されている。しかしながら、この方法では、耐衝撃改良剤として芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロックと共役ジエンに由来する構造単位を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を添加しているため、透明性と耐候性に課題を残している。
耐衝撃性と透明性のバランスに優れる樹脂組成物を得る方法として、塩化ビニル系樹脂にアクリル系ブロック共重合体を添加する方法(特許文献4)も検討されている。しかしながら、耐衝撃性と透明性の両立という観点では、依然として課題が残っていた。
特開2001−89622号公報 特開2006−83332号公報 特開平6−87998号公報 特開2015−209504号公報 特開平11−335432号公報 特公平7−25859号公報 特開平6−93060号公報
マクロモレキュラ ケミカル フィジックス(Macromol.Chem.Phys.)201巻,1108〜1114頁(2000年)
本発明は、耐衝撃性と透明性のバランスに優れる塩化ビニル系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形品を提供することを目的とする。
本発明によれば、上記の目的は、
[1]塩化ビニル系樹脂(A)、及びアクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(B)を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、アクリル系ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が100,000〜250,000の範囲であり、前記重合体ブロック(b2)のアクリル系ブロック共重合体(B)中における含有量が10〜25質量%の範囲であり、前記重合体ブロック(b1)に含まれるアクリル酸エステル単位が、一般式CH=CH−COOR(1)(式中、Rは炭素数1〜3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−1)単位及び一般式CH=CH−COOR(2)(式中、Rは炭素数4〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−2)単位を含み、前記アクリル酸エステル(b1−1)単位及び前記アクリル酸エステル(b1−2)単位の質量比(b1−1)/(b1−2)が30/70〜85/15であり、塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、アクリル系ブロック共重合体(B)を4〜25質量部含有する塩化ビニル系樹脂組成物;
[2]アクリル系ブロック共重合体(B)が、重合体ブロック(b1)の両端に重合体ブロック(b2)が結合したトリブロック共重合体である[1]の塩化ビニル系樹脂組成物;
[3]アクリル系ブロック共重合体(B)の分子量分布が1.0〜1.4の範囲である[1]又は[2]の塩化ビニル系樹脂組成物;
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物からなる成形品;
に関する。
本発明によれば、耐衝撃性と透明性のバランスに優れる塩化ビニル系樹脂組成物、及び該樹脂組成物からなる成形品を提供することができる。
<塩化ビニル系樹脂(A)>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の構成成分である塩化ビニル系樹脂(A)は、塩化ビニル単位を主体とする樹脂であり、塩化ビニルを含む単量体を重合することにより得られる。上記塩化ビニル系樹脂(A)は塩化ビニル単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含む樹脂である。このような上記塩化ビニル系樹脂(A)としては、塩化ビニル単独重合体(ポリ塩化ビニル)、及び塩化ビニル共重合体が挙げられる。
塩化ビニル共重合体を構成する単位となる塩化ビニル単位以外の他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイミド類、塩化ビニリデン、スチレンなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。塩化ビニル共重合体に含まれるこれら他の単量体の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
上記塩化ビニル系樹脂(A)の重合度は、その用途等に応じて適宜設定すればよいが、通常100〜1万の範囲であり、成形性等の観点からは、400〜5000の範囲が好ましく、より好ましくは800〜2000、さらに好ましくは1000〜1300である。これら塩化ビニル系樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記塩化ビニル系樹脂には、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル共重合体、これらの混合物のほか、これらと他の樹脂との混合物も含まれる。該他の樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。塩化ビニル系樹脂中のこれら他の樹脂の含有量は好ましくは10質量%以下である。
<アクリル系ブロック共重合体(B)>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の構成成分であるアクリル系ブロック共重合体(B)は、アクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b2)を有する。
(重合体ブロック(b1))
上記重合体ブロック(b1)は、一般式CH=CH−COOR(1)(式中、Rは炭素数1〜3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−1)単位及び一般式CH=CH−COOR(2)(式中、Rは炭素数4〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−2)単位を含む。重合体ブロック(b1)にアクリル酸エステル(b1−1)単位が含まれることにより、耐衝撃性を保持したまま、塩化ビニル系樹脂との相容性が高くなるため、透明性も発現しやすい。
アクリル酸エステル(b1−1)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−プロピルなどの官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸グリシジルなどの官能基を有するアクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらの中でも、得られる塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性及び透明性を高める観点から、官能基を有さないアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがより好ましく、アクリル酸メチルがさらに好ましい。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
アクリル酸エステル(b1−2)としては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルなどの官能基を有さないアクリル酸エステル;アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−フェノキシエチルなどの官能基を有するアクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらの中でも、得られる塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性を高める観点から、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。また、塩化ビニル系樹脂との相容性を高める観点から、アクリル酸n−ブチルがより好ましい。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
上記重合体ブロック(b1)中のアクリル酸エステル(b1−1)単位及びアクリル酸エステル(b1−2)単位の質量比(b1−1)/(b1−2)は30/70〜85/15である。質量比が上記範囲内であると、耐衝撃性と塩化ビニル系樹脂との相容性、ひいては透明性とのバランスに優れる傾向にある。よって、耐衝撃性と透明性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。上記の観点から、上記アクリル酸エステルの質量比(b1−1)/(b1−2)は35/65〜78/22であることが好ましく、40/60〜75/25であることがより好ましい。
上記重合体ブロック(b1)に用いるアクリル酸エステルの組み合わせとしては、例えば、アクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル/アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル/アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル/アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル/アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
上記重合体ブロック(b1)は、重合体ブロック(b1)を構成するアクリル酸エステル(b1−1)及びアクリル酸エステル(b1−2)のランダム共重合体からなるものでもよいし、ブロック共重合体やグラフト共重合体からなるものでもよいし、さらにテーパー状ブロック共重合体(グラジェント共重合体)からなるものでもよい。上記アクリル系ブロック共重合体(B)に、重合体ブロック(b1)が2つ以上含まれる場合には、それら重合体ブロック(b1)の構造は、同一であっても異なっていてもよい。また、重合体ブロック(b1)中に含まれるアクリル酸エステル(b1−1)及び(b1−2)の合計単位の割合は、重合体ブロック(b1)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
上記重合体ブロック(b1)には、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル酸エステル単位以外の他の単量体単位を含有していてもよい。他の単量体としては、例えば、メタクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の、官能基を有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン等のオレフィン系単量体;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体等が挙げられる。これら他の単量体から構成される単量体単位は、重合体ブロック(b1)の全単量体単位に対し、通常少量であり、重合体ブロック(b1)中に含まれる他の単量体単位の割合は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
上記重合体ブロック(b1)のガラス転移温度は、−45〜55℃であることがより好ましく、−35〜50℃であることがより好ましく、−30〜45℃であることがさらに好ましく、−30〜25℃であることが最も好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあると、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物及びそれからなる成形品の耐衝撃性が優れる傾向にある。なお、本発明におけるガラス転移温度は、DSC測定で得られた曲線の外挿開始温度である。
(重合体ブロック(b2))
上記重合体ブロック(b2)の構成単位となるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸アルキル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキル以外の、官能基を有さないメタクリル酸エステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル等のメタクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等の官能基を有するメタクリル酸エステル;などが挙げられる。
これらの中でも、メタクリル酸アルキルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルがより好ましく、経済的に入手容易な点、得られる重合体ブロック(b2)が耐久性と耐候性に優れる点などから、メタクリル酸メチルがさらに好ましい。
上記重合体ブロック(b2)のメタクリル酸エステル単位は、メタクリル酸エステル1種のみから得られたものであってもよく、メタクリル酸エステル2種以上から得られたものであってもよい。重合体ブロック(b2)中に含まれるメタクリル酸エステル単位の割合は、重合体ブロック(b2)中60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、重合体ブロック(b2)はメタクリル酸エステル単位100質量%で構成されるもの、すなわちメタクリル酸エステル単位のみからなるもの、であってもよい。
上記重合体ブロック(b2)には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の単量体単位が含まれていてもよい。他の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の、官能基を有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン、オクテン等のオレフィン系単量体;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系単量体等が挙げられる。これら他の単量体から構成される単量体単位は、重合体ブロック(b2)の全単量体単位に対し、通常少量であり、重合体ブロック(b2)中に含まれる他の単量体単位の割合は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
上記重合体ブロック(b2)のガラス転移温度は50〜150℃であることが好ましく、60〜140℃であることがより好ましく、70〜130℃であることがさらに好ましい。重合体ブロック(b2)のガラス転移温度が上記範囲内であると、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物及びそれからなる成形品の耐熱性(高温での力学物性保持)が優れる傾向にある。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)には、重合体ブロック(b2)が2つ以上含まれてもよいが、その場合、それら重合体ブロック(b2)を構成するメタクリル酸エステル単位及び他の単量体は、同一であっても異なっていてもよい。
重合体ブロック(b2)の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000〜50,000の範囲にあることが好ましく、4,000〜30,000の範囲にあることがより好ましい。重合体ブロック(b2)の重量平均分子量が1,000より小さい場合には、得られるアクリル系ブロック共重合体(B)の凝集力が不足する場合がある。また、重合体ブロック(b2)の重量平均分子量が50,000より大きい場合には、得られるアクリル系ブロック共重合体(B)の溶融粘度が高くなり、上記塩化ビニル系樹脂(A)との溶融混練性が悪化し、生産性、加工性に劣る場合がある。なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
また、アクリル系ブロック共重合体(B)中の重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)とのガラス転移温度の差は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)は、重合体ブロック(b1)を「b1」;重合体ブロック(b2)を「b2」;としたときに、一般式:
(b2−b1)
(b2−b1)−b2
(b2−b1)−Z
(式中、nは1〜30の整数、Zはカップリング部位(カップリング剤がポリマー末端と反応して化学結合を形成した後のカップリング部位)を表す)で表されるものであることが好ましい。また、上記nの値は、1〜15であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。
上記構造の中でも、(b2−b1)、(b2−b1)−b2で表される直鎖状のブロック共重合体がより好ましく、b2−b1で表されるジブロック共重合体、及びb2−b1−b2で表されるトリブロック共重合体がさらに好ましく、b2−b1−b2で表されるトリブロック共重合体が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)における重合体ブロック(b2)の含有量は10〜25質量%である。
重合体ブロック(b2)の含有量が10質量%未満であると、アクリル系ブロック共重合体(B)の流動性が高く液状となりやすい傾向にある。重合体ブロック(b2)の含有量が25質量%を超えると、柔軟性が損なわれ、耐衝撃性が得られにくい傾向にある。
アクリル系ブロック共重合体(B)における重合体ブロック(b2)の含有量は、耐衝撃性と透明性のバランスの観点からは、11〜23質量%であることが好ましく、12〜21質量%であることがより好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GP
C)測定により求めたポリスチレン換算の重量平均分子量は、本発明の透明塩化ビニル系
樹脂組成物の耐衝撃性及び透明性のバランスの観点から、100,000〜250,000であり、110,000〜240,000であることがより好ましく、120,000〜230,000であることがさらに好ましく、130,000〜220,000であることがよりさらに好ましい。アクリル系ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が100,000未満であると、溶融粘度が低下して、上記塩化ビニル系樹脂(A)との溶融混練性が悪化し、得られる成形品の力学強度が劣る傾向となる。一方、アクリル系ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が250,000を超えると、溶融粘度が高くなりすぎ生産性、加工性に劣る場合がある。
上記アクリル系ブロック共重合体(B)は、分子量分布は1.0〜1.4であることがより好ましく、1.0〜1.3であることがさらに好ましい。分子量分布が上記範囲であると、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を溶融成形する際の成形加工性を安定化できる。なお、本明細書において数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された標準ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を意味する。
アクリル系ブロック共重合体(B)の製造方法は特に制限されず、これらアクリル系ブロック共重合体は、公知の方法に準じた製造方法により製造できる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位であるモノマーをリビング重合する方法が採用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(例えば、特許文献5)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等の鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(例えば、特許文献6)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でリビングアニオン重合する方法(例えば、特許文献7)、原子移動ラジカル重合方法(ATRP)(例えば、非特許文献1)等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系ブロック共重合体(B)が狭い分子量分布かつ高純度で得られること、すなわち本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の耐衝撃性を低下させる要因となるオリゴマーや、流動性を低下させる要因となる高分子量体の副生を抑制できることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下で、リビングアニオン重合する方法が好ましい。
上記有機アルミニウム化合物の存在下でのリビングアニオン重合方法としては、例えば、有機リチウム化合物、及び下記一般式(3)
AlR (3)
(式(3)中、R、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基又はN,N−二置換アミノ基を表すか、或いはRが上記したいずれかの基であり、R及びRが一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を形成している。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4等のエーテル化合物;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジル等の含窒素化合物をさらに添加して、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる方法が採用できる。
上記有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、テトラメチレンジリチウム等のアルキルリチウム又はアルキルジリチウム;フェニルリチウム、キシリルリチウム等のアリールリチウム又はアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウム又はアラルキルジリチウム;リチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム等のリチウムアルコキシドが挙げられる。
また、上記一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物としては、重合のリビング性の高さや取扱いの容易さ等の点から、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等が好ましい。
<塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、前記塩化ビニル系樹脂(A)及び前記アクリル系ブロック共重合体(B)を含有する。アクリル系ブロック共重合体(B)の本発明の塩化ビニル系樹脂組成物における含有量は、透明性及び耐衝撃性の両立の観点から、塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して4〜25質量部である。耐衝撃性を向上させる為にゴム系の改質剤を配合した場合、透明材料の場合は、改質剤を配合すると透明性(全光線透過率、ヘーズ値)と耐衝撃性(シャルピー衝撃強度)がトレードオフの関係にある。従って、アクリル系ブロック共重合体(B)の配合量が前記範囲より少ない場合には、透明性に優れるが耐衝撃性が不十分であり、前記範囲より多い場合には、耐衝撃性に優れるが透明性は低下することになる。本発明においては、前記アクリル系ブロック共重合体(B)を前記配合量とすることにより透明性と耐衝撃性のバランスに優れる塩化ビニル系樹脂組成物が得られることに特徴がある。前記の観点から、アクリル系ブロック共重合体(B)の含有量は、塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して5〜25質量部であることがより好ましく、6〜22質量部であることがさらに好ましい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物において、その全光線透過率は85%以上が好ましく、86%以上がより好ましい。また、ヘーズ値は6%以下が好ましく、4%以下がより好ましい。全光線透過率及びヘーズ値が前記範囲内であると、十分な透明性が得られる。また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物において、そのシャルピー衝撃強度は7kJ/m以上が好ましく、10kJ/m以上がより好ましく、15kJ/m以上がさらに好ましく、20kJ/m以上がよりさらに好ましい。シャルピー衝撃強度が前記数値以上であると、十分な耐衝撃性が得られる。なお、全光線透過率、ヘーズ値及びシャルピー衝撃強度は本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を成形した試験片(成形品)を用いて、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記塩化ビニル系樹脂(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)の他に、必要に応じて他の重合体や添加剤を含有していてもよい。配合しうる他の重合体としては、例えば、アクリルゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、EPR、EPDM等の合成ゴムなどが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性等の向上又は増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維又は有機繊維;塩化ビニル系樹脂組成物において一般的に用いられる可塑剤;滑剤;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着剤;粘着付与剤;帯電防止剤;発泡剤などが挙げられる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性をさらに良好なものとするために、熱安定剤、酸化防止剤などを添加することが実用上好ましい。熱安定剤としては、例えば、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、三塩基性硫酸鉛などを用いることができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法は特に制限されず、該樹脂組成物を構成する各成分の分散性を高める観点から、溶融混練する方法が好ましい。例えば、塩化ビニル系樹脂(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)を、必要に応じて上記した他の重合体又は添加剤と同時に溶融混練する方法;塩化ビニル系樹脂(A)を、上記した他の重合体又は添加剤とともに混合した後、アクリル系ブロック共重合体(B)を混合して溶融混練する方法などが挙げられる。
溶融混練操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合又は混練装置を使用して行なうことができる。特に、塩化ビニル系樹脂(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)の混練性、相容性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。溶融混練時の温度は、使用する塩化ビニル系樹脂(A)、アクリル系ブロック共重合体(B)などの溶融温度などに応じて適宜調節することができ、通常110℃〜300℃の範囲の温度で行う。このようにして、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態の樹脂組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
また、アクリル系ブロック共重合体(B)は、後述するアクリル系ブロック共重合体(B’)と混合してペレットを製造した後、塩化ビニル系樹脂(A)及び他の重合体又は添加剤とともに溶融混練してもよい。アクリル系ブロック共重合体(B)とアクリル系ブロック共重合体(B’)との質量比(B)/(B’)は90/10〜40/60が好ましく、85/15〜50/50がより好ましく、80/20〜55/45がさらに好ましい。上記の質量比でペレット化することで、十分に膠着防止され、アクリル系ブロック共重合体(B)が有する優れた特性を損なわない成形体を提供することができる。
上記アクリル系ブロック共重合体(B’)は、アクリル系ブロック共重合体(B)とは異なる重合体である。アクリル系ブロック共重合体(B’)は、アクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b1’)とメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b2’)とを有することが好ましい。また、アクリル系ブロック共重合体(B’)の重量平均分子量は、20,000〜250,000であることが好ましく、30,000〜200,000であることがより好ましく、40,000〜150,000であることがさらに好ましく、45,000〜100,000であることがよりさらに好ましい。さらに、アクリル系ブロック共重合体(B’)の重合体ブロック(b1’)に含まれるアクリル酸エステル単位が、一般式CH=CH−COOR(4)(式中、Rは炭素数4〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル単位のみからなることが好ましい。
<成形品>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、溶融流動性に優れ、熱可塑性樹脂に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いて、成形品を製造することができる。例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などによって成形加工でき、型物、パイプ、板、シート、フィルム、繊維状物などの成形品を得ることができる。また、その成形品は、塩化ビニル系樹脂組成物からなる層を含む積層体であってもよい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物からなる成形品は、透明性及び耐衝撃性等の力学物性のバランスに優れ、パイプ、板、フィルム、シート及び容器等のみならず、屋内、屋外用の構造部材、土木及び建築資材として適用できる。
また、得られた成形品は、その目的に応じて印刷、塗装、メッキ、蒸着、スパッタなどの表面処理を施すことができる。
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例の各種物性は以下の方法により測定又は評価した。
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定
後述する製造例において得られたアクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPCによりポリスチレン換算分子量で求め、分子量分布(Mw/Mn)はこれらの値から算出した。GPCで用いた測定装置及び条件は次のとおりである。
[GPC測定の装置及び条件]
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
(2)各アクリル系ブロック共重合体における各重合体ブロックの構成割合
後述する製造例において得られたアクリル系ブロック共重合体における各重合体ブロックの含有量は、H−NMR測定によって求めた。H−NMR測定で用いた測定装置及び条件は次のとおりである。
H−NMR測定の装置及び条件]
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM−ECX400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
H−NMRスペクトルにおいて、3.6ppm、3.7ppm付近のシグナルは、それぞれ、メタクリル酸メチル単位のエステル基(−O−C )、アクリル酸メチル単位のエステル基(−O−C )に帰属され、4.0ppm付近のシグナルは、アクリル酸n−ブチル単位のエステル基(−O−C −CH−CH−CH)又は(−O−C −CH(−C −CH)−CH−CH−CH−CH)に帰属され、これらの積分値の比から各単量体単位のモル比を求め、これを単量体単位の分子量をもとに質量比に換算することによって各重合体ブロックの含有量を求めた。
(3)全光線透過率
ISO14782:1999に準拠し、全光線透過率の測定を行った。後述する実施例及び比較例で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、200℃で3分間プレス成形して得られた厚さ1mmのプレス板より測定用試料を作製した。測定温度は23℃である。値が大きいほど透明性が良好である。
(4)ヘーズ値
ISO14782:1999に準拠し、上記(3)の全光線透過率測定に用いたプレス板より測定用試料を作製し、室温で測定を行った。値が小さいほど透明性が良好である。
(5)シャルピー衝撃強度(耐衝撃性)
JIS K7111:2012に準拠し、シャルピー衝撃強度を測定した。後述する実施例及び比較例で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、200℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より測定用試料を作製した。測定温度は23℃である。値が大きいほど耐衝撃性が良好である。
《製造例1》[アクリル系トリブロック共重合体(B−1)の製造]
(1)2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温で撹拌しながら、トルエン938gと1,2−ジメトキシエタン20.2gを加え、続いて、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20.8mmolを含有するトルエン溶液41.4gを加え、さらにsec−ブチルリチウム2.60mmolを含有するsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1.53gを加えた。
(2)続いて、これにメタクリル酸メチル21.8gを撹拌下室温で加えさらに60分間撹拌を続けた。反応液は当初、黄色に着色していたが、60分間撹拌後には無色となった。
(3)その後、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、撹拌下アクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルの混合液(質量比50/50)246gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃でさらに5分間撹拌を続けた。
(4)その後、これにメタクリル酸メチル25.2gを加え、一晩室温にて撹拌した。
(5)メタノール12.2gを添加して重合反応を停止した後、得られた反応液を撹拌下15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。得られた白色沈殿物を回収し、乾燥させることにより、アクリル系トリブロック共重合体(B−1)280gを得た。得られたアクリル系トリブロック共重合体(B−1)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を上述の方法でGPC測定により求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。また、上述したH−NMR測定により、アクリル系トリブロック共重合体(B−1)中のメタクリル酸メチル単位からなる重合体ブロックの合計含有量を求めた。アクリル系トリブロック共重合体(B−1)の性状を表1に示す。
≪製造例2〜12≫
工程(1)におけるsec−ブチルリチウムの添加量、工程(2)及び(3)における単量体の添加量、工程(2)における単量体の種類及び添加量を表1に示す通りに変更した以外は、製造例1と同様に、アクリル系ブロック共重合体(B−1)〜(B−6)、(B’−1)〜(B’−6)をそれぞれ製造した。なお、表1中、MMAはメタクリル酸メチル、nBAはアクリル酸n−ブチル、2EHAはアクリル酸2−エチルヘキシル、MAはアクリル酸メチルを意味する。
Figure 2020169294
《製造例13》
得られたアクリル系トリブロック共重合体(B−1)とアクリル系トリブロック共重合体(B’−5)を質量比60/40の割合で事前にドライブレンドした後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「JSW−JBaII」)にて溶融混練した後、アンダーウォーターカット方式によりペレット化した後、アエロジルR972をペレットに1000ppm打粉し、ペレット(D−1)を得た。
《製造例14》
得られたアクリル系トリブロック共重合体(B−1)とアクリル系トリブロック共重合体(B’−5)を質量比70/30の割合で事前にドライブレンドした後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「JSW−JBaII」)にて溶融混練した後、アンダーウォーターカット方式によりペレット化した後、アエロジルR972をペレットに1000ppm打粉し、ペレット(D−2)を得た。
実施例及び比較例では、以下のものを使用した。
・塩化ビニル系樹脂(A):信越化学工業株式会社製「TK−800」(平均重合度800)
・滑剤:クラリアントケミカルズ株式会社製「リコワックスOP」(モンタン酸エステルとモンタン酸カルシウムの混合物)
・ステアリン酸鉛:純正化学株式会社製
・ステアリン酸バリウム:川村化成工業株式会社製
・三塩基性硫酸鉛:NIケミテック株式会社製
[実施例1]
塩化ビニル系樹脂100質量部に、表1に示したアクリル系ブロック共重合体(B−1)7質量部、滑剤0.5質量部、ステアリン酸鉛0.8質量部、ステアリン酸バリウム0.6質量部及び三塩基性硫酸鉛1.8質量部をミキサーで混合した後、得られた混合物を190℃のロールで3分間混練し、塩化ビニル系樹脂組成物を作製した。得られた塩化ビニル系樹脂組成物の物性(全光線透過率、ヘーズ値及びシャルピー衝撃強度)を上述した方法により測定した。結果を表2に示す。
[実施例2〜6]
アクリル系ブロック共重合体(B)の種類を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に塩化ビニル系樹脂組成物を作製し、物性を測定した。結果を表2に示す。
[実施例7、8]
アクリル系ブロック共重合体(B−1)の代わりに、ペレット(D−1)、(D−2)を使用した以外は、実施例1と同様に塩化ビニル系樹脂組成物を作製し、物性を測定した。結果を表2に示す。
[実施例9〜11]
アクリル系ブロック共重合体(B−1)の添加量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に塩化ビニル系樹脂組成物を作製し、物性を測定した。結果を表2に示す。
[比較例1]
塩化ビニル樹脂100質量部に、滑剤0.5質量部、ステアリン酸鉛0.8質量部、ステアリン酸バリウム0.6質量部及び三塩基性硫酸鉛1.8質量部をミキサーで混合した後、得られた混合物を190℃のロールで3分間混練し、塩化ビニル系樹脂組成物を作製した。得られた塩化ビニル系樹脂組成物の物性を上述した方法により測定した。結果を表2に示す。
[比較例2、3]
アクリル系ブロック共重合体(B−1)の添加量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に塩化ビニル系樹脂組成物を作製し、物性を測定した。結果を表2に示す。
[比較例4〜10]
アクリル系ブロック共重合体(B−1)の代わりに、アクリル系ブロック共重合体(B’−1)〜(B’−6)を使用し、添加量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に塩化ビニル系樹脂組成物を作製し、物性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2020169294
表2より、実施例1〜11の本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を用いた成形品は、全光線透過率及びヘーズ値が比較例1の成形品と同等であり、耐衝撃性は大きく向上していることが分かる。このことから、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、透明性と耐衝撃性のバランスに優れていることは明らかである。
一方、アクリル系ブロック共重合体の含有量が4質量部未満である比較例2では、透明性は維持されるものの耐衝撃性が悪く、耐衝撃性向上効果がほとんど見られなかった。アクリル系ブロック共重合体の含有量が25質量部超である比較例3では、耐衝撃性向上効果は見られるものの透明性が悪化した。
比較例4、8、9は、アクリル系ブロック共重合体の重合体ブロック(b2)の含有量が25質量%超であり、アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が100,000未満であるため、透明性は維持されるものの耐衝撃性が不十分であり、耐衝撃性向上効果がほとんど見られなかった。
比較例5は、アクリル系ブロック共重合体の重合体ブロック(b2)の含有量、及びアクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量は本発明の範囲にあるが、重合体ブロック(b1)を構成する単量体単位が本発明とは異なるため、耐衝撃性向上効果は見られたが、透明性が悪化した。比較例10は、アクリル系ブロック共重合体の重合体ブロック(b2)の含有量は本発明の範囲にあるが、アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が100,000未満であり、重合体ブロック(b1)を構成する単量体単位が本発明とは異なるため、耐衝撃性及び透明性が悪化した。
比較例6は、アクリル系ブロック共重合体の重量平均分子量が100,000未満であるため、透明性は維持されるものの耐衝撃性が不十分であり、耐衝撃性向上効果がほとんど見られなかった。比較例7は、比較例6で用いたアクリル系ブロック共重合体の添加量を増やすことで、耐衝撃性は改良されたが、透明性が悪化し、耐衝撃性と透明性を両立することはできなかった。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、単独の塩化ビニル系樹脂と比較すると透明性及び耐衝撃性等の力学物性のバランスに優れるので、パイプ、板、シート、フィルム及び容器等のみならず、屋内、屋外用の構造部材、土木及び建築資材として有用である。

Claims (4)

  1. 塩化ビニル系樹脂(A)、及び
    アクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル単位からなる重合体ブロック(b2)とを有するアクリル系ブロック共重合体(B)を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、
    アクリル系ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が100,000〜250,000の範囲であり、
    前記重合体ブロック(b2)のアクリル系ブロック共重合体(B)中における含有量が10〜25質量%の範囲であり、
    前記重合体ブロック(b1)に含まれるアクリル酸エステル単位が、一般式CH=CH−COOR(1)(式中、Rは炭素数1〜3の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−1)単位及び一般式CH=CH−COOR(2)(式中、Rは炭素数4〜12の有機基を表す)で示されるアクリル酸エステル(b1−2)単位を含み、
    前記アクリル酸エステル(b1−1)単位及び前記アクリル酸エステル(b1−2)単位の質量比(b1−1)/(b1−2)が30/70〜85/15であり、
    塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、アクリル系ブロック共重合体(B)を4〜25質量部含有する塩化ビニル系樹脂組成物。
  2. アクリル系ブロック共重合体(B)が、重合体ブロック(b1)の両端に重合体ブロック(b2)が結合したトリブロック共重合体である請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  3. アクリル系ブロック共重合体(B)の分子量分布が1.0〜1.4の範囲である請求項1又は2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂組成物からなる成形品。
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