JP2006045418A - 難燃性アクリル系重合体組成物 - Google Patents

難燃性アクリル系重合体組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】成形加工性、力学的特性、柔軟性に優れ、かつハロゲン化合物を含まなくても十分な難燃性が発現する難燃性アクリル系重合体組成物を提供すること。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル酸エステルを主体とし、25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する重合体ブロック(a1)を少なくとも一つと、(メタ)アクリル酸エステルを主体とし、25℃以上のTgを有しており、かつ、重量平均分子量が50000以下である重合体ブロック(a2)を一つ以上有しており、該ブロック共重合体全体の重量平均分子量が6000〜700000の範囲であって、分子量分布が2以下であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体5〜95質量部、および(B)非ハロゲン系難燃剤95〜5質量部(但し、アクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量は100質量部である)を含有する難燃性アクリル系重合体組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は優れた成形加工性、力学的特性、柔軟性を有し、かつハロゲン化合物を含有しない難燃性アクリル系重合体組成物に関する。
ブロック共重合体、特にガラス転移温度(以下Tgと称することがある)が25℃未満の重合体ブロックを有するブロック共重合体は、柔軟性を有する材料や熱可塑性エラストマーとして広く使用されている。熱可塑性エラストマーとして使用されているブロック共重合体の中でも、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体は、安価に入手できるポリオレフィン系樹脂との相容性が良好であることなども相俟って、燃焼時にハロゲン系ガスなどの有毒ガスを発生するポリ塩化ビニル樹脂の代替として用いられるようになってきている。
かかるスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体およびポリオレフィン系樹脂の配合物は炭化水素系材料であるため可燃性であり、この欠点を改良するため、難燃剤の配合による難燃性能付与の検討がなされている。例えば、有機ホスフェート系難燃剤と、ハロゲン化ビスフタルイミド系難燃剤または1,2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンを併用して難燃剤として用いる難燃性を有する熱可塑性有機重合体組成物(特許文献1参照);水酸化マグネシウムを難燃剤として用いる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物(特許文献2参照);金属水酸化物、好適には水酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの混合物を難燃剤として用いる耐熱難燃性組成物(特許文献3参照)などが挙げられる。また、これらとは技術思想が異なるが、極性基を有する熱可塑性エラストマーである熱可塑性ポリエステル系エラストマーに対して、ハロゲンを含まないリン系化合物および窒素含有化合物を難燃剤として配合して、難燃性と耐熱老化性を維持した難燃性エラストマー組成物(特許文献4参照)などが知られている。
また、アクリル系のエラストマーとエチレン−アクリル酸エチル共重合体またはエチレン−酢酸ビニル系共重合体の特定量を混合した樹脂に金属水酸化物を特定量配合してなる難燃組成物(特許文献5参照);特定の一次構造を有する熱可塑性アクリル系共重合体、リン化合物及び分子中に水酸基を有する炭化水素化合物、さらに必要に応じて無機充填剤からなる耐火性を有するアクリル系樹脂組成物(特許文献6参照);などが提案されている。
特開平5−247262号公報 特開平5−32830号公報 特開2002−167494号公報 特開平8−259787号公報 特開平1−204945号公報 特開平10−237262号公報
特許文献1の組成物ではハロゲンを含む化合物を難燃剤として使用しており、火災時などの燃焼の際にハロゲン系ガスなどの有毒ガスを発生するという問題点がある。特許文献2の組成物では白化防止性、加工性を優れたものとするために、特殊な樹脂であるポリオレフィン変性ポリシロキサンを配合しなければならないという問題点を有する。特許文献3の組成物は、難燃剤を高充填してかつ成形加工性や耐折り曲げ白化性を悪化させないために、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムおよびHLB値が10以下の界面活性剤を添加する必要がある。特許文献4の組成物は、耐燃焼性(UL−94)は良好であるものの、表面硬度(ショアD)が比較的高く、柔軟性の観点から、なお改良の余地がある。
特許文献5で使用されるアクリル系のエラストマーはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルの共重合体と架橋剤を配合してなる組成物で熱硬化型のエラストマーであり、力学的特性が乏しいため、アクリル酸エステルとオレフィンとの共重合体、例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体を配合する必要がある。
特許文献6では、燃焼時の形状保持性を改善する目的などで水酸基含有炭化水素化合物を難燃助剤として配合しているが、樹脂組成物の成形加工時の熱安定性が損なわれ、溶融混練時にロール汚れなどが生じる問題がある。また、かかる樹脂組成物に難燃性を改良するため配合されているリン化合物は、得られる難燃樹脂組成物の力学的特性を損なうため、アクリル系重合体として、粘着性の強いアクリル系ブロック共重合体を使用せざるを得ない。したがって、その用途は主に粘着部材に限定され、環境問題への対応としての軟質ポリ塩化ビニル樹脂代替は困難であった。
しかして、本発明の目的は、特に特許文献6の組成物における、熱安定性の不足に伴う欠点を改善し、成形加工性、力学的特性、柔軟性に優れ、かつハロゲン化合物を含まなくても十分な難燃性が発現する難燃性アクリル系重合体組成物を提供することにある。
本発明者らは、特定のアクリル系ブロック共重合体と、非ハロゲン系難燃剤を特定量比で配合した組成物、さらに必要に応じて他の熱可塑性樹脂を配合した組成物が上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)(A)25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a1)を少なくとも一つと、25℃以上のTgを有しかつ重量平均分子量が50000以下である(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a2)を一つ以上有するアクリル系ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体全体の重量平均分子量が6000〜700000の範囲であり、そして分子量分布が2以下であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体5〜95質量部、および(B)非ハロゲン系難燃剤95〜5質量部(但し、アクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量は100質量部である)を含有する難燃性アクリル系重合体組成物;
(2)アクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量100質量部に対して、さらに(C)アクリル系ブロック共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を100質量部以下の範囲で含有する、(1)の難燃性アクリル系重合体組成物;である。
また、本発明は、好適態様として、
(3)JIS K 6253に準拠して測定したJIS−A硬度が30〜95の範囲であることを特徴とする(1)または(2)の難燃性アクリル系重合体組成物;
(4)アクリル系ブロック共重合体(A)全体の重量平均分子量が20000〜100000であり、アクリル系ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(a1)と重合体ブロック(a2)のみから構成される(1)〜(3)のいずれかの難燃性アクリル系重合体組成物;
(5)アクリル系ブロック共重合体(A)が、アニオン重合または原子移動ラジカル重合により得られた共重合体である(1)〜(4)のいずれかの難燃性アクリル系重合体組成物;
(6)アクリル系ブロック共重合体(A)が、有機アルミニウム化合物存在下でのアニオン重合により得られた共重合体である(1)〜(5)のいずれかの難燃性アクリル系重合体組成物;を包含する。
そして、本発明は、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの難燃性アクリル系重合体組成物を用いた樹脂加工布帛;
(8)上記(1)〜(6)のいずれかの難燃性アクリル系重合体組成物を用いた電線被覆材;である。
本発明によれば、成形加工性、力学的特性、柔軟性に優れ、かつハロゲン化合物を含まなくても十分な難燃性が発現する難燃性アクリル系重合体組成物が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は、25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a1)を少なくとも一つと、25℃以上のTgを有しかつ重量平均分子量が50000以下である(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a2)を一つ以上有するアクリル系ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体全体の重量平均分子量が6000〜700000の範囲であり、そして分子量分布が2以下であるアクリル系ブロック共重合体(A)を含有することを特徴とする。
アクリル系ブロック共重合体(A)が少なくとも一つ有する25℃未満のTgを有する重合体ブロック(a1)のTgは好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−15℃以下である。この条件を満たすアクリル系ブロック共重合体(A)を用いることにより、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は柔軟性に優れたものとなる。
25℃未満のTgを有する重合体ブロック(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
上記の(メタ)アクリル酸エステルを主体とし、25℃未満のTgを有する重合体ブロック(a1)は、上記した(メタ)アクリル酸エステル以外に、必要に応じてメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトン;また、上記以外の、Tgが25℃以上の重合体ブロック(a2)を構成する(メタ)アクリル酸エステルなどに由来する構成成分を少量、好ましくは重合体ブロック(a1)全体に対して30質量%以下の範囲で含有していてもよい。
Tgが25℃未満である重合体ブロック(a1)のアクリル系ブロック共重合体(A)中の含有量が多いほど、アクリル系ブロック共重合体(A)は柔軟性が高くなる。本発明の難燃性アクリル系重合体組成物においては、その力学的特性や材料表面の膠着などの観点から、かかる含有量は95〜30質量%の範囲であるのが好ましく、90〜40質量%の範囲であるのがより好ましく、85〜50質量%の範囲であるのがさらに好ましい。
一方、アクリル系ブロック共重合体(A)は、25℃以上のTgを有し、かつ重量平均分子量が50000以下である(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a2)を一つ以上有する。かかる重合体ブロック(a2)のTgは好ましくは60℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。この条件を満たすアクリル系ブロック共重合体(A)を用いることで、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は耐熱性に優れる。
25℃以上のTgを有する重合体ブロック(a2)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸トリメチルシリルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
上記の(メタ)アクリル酸エステルを主体とし、25℃以上のTgを有する重合体ブロック(a2)は、上記した(メタ)アクリル酸エステル以外に、必要に応じてメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトン;また、上記以外のTgが25℃未満の重合体ブロック(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルなどに由来する構成成分を少量、好ましくは重合体ブロック(a2)全体に対して30質量%以下の範囲で含有していてもよい。
重合体ブロック(a2)の重量平均分子量(Mw)は50000以下であり、構成成分の種類によっても異なるが、重合体としての特性を発現する観点、および本発明の難燃性アクリル系重合体組成物の溶融成形性を良好な範囲にするなどの観点から3000〜50000の範囲であるのが好ましく、5000〜40000の範囲であるのがより好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a1)を少なくとも1個と、重合体ブロック(a2)を1個以上有するが、本発明の効果を喪失しない限り、これらの重合体ブロックとは別の重合体ブロック(b)を有していてもよい。かかる重合体ブロック(b)は、重合体ブロック(a1)および(a2)を構成する単量体成分以外の単量体成分から誘導される構造単位を有するのが好ましい。そのような他の単量体成分としては、例えばメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトンなどが挙げられる。これらの単量体成分は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
重合体ブロック(b)の重量平均分子量(Mw)は、構成成分の種類によっても異なるが、重合体としての特性を発現する観点、および本発明の難燃性アクリル系重合体組成物の溶融成形性を良好な範囲にするなどの観点から3000〜150000の範囲であるのが好ましく、5000〜100000の範囲であるのがより好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)において、重合体ブロック(a1)と重合体ブロック(a2)の合計含有量が多いほど、難燃剤の分散性、重合体組成物の耐侯性が良好になる。この観点から、アクリル系ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(a1)と重合体ブロック(a2)の合計含有量は、他の重合体ブロック(b)の構造単位の種類にもよるが、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、アクリル系ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(a1)と重合体ブロック(a2)のみから構成されることがさらに好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)の形態は特に限定されず、少なくとも一つの重合体ブロック(a1)、および一つ以上の重合体ブロック(a2)を有していれば、必要に応じて他の重合体ブロック(b)と共に直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれの形式も取ることができる。それらのうちでも、重合体ブロックの結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては、構成する重合体ブロックが2個であるジブロック共重合体、3個であるトリブロック共重合体、4個であるテトラブロック共重合体、5個であるペンタブロック共重合体などが挙げられる。中でも、成形加工性(溶融流動性)と力学的特性のバランスの観点から、構成する重合体ブロックが重合体ブロック(a1)および重合体ブロック(a2)のみからなるジブロック共重合体またはトリブロック共重合体が特に好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)全体の分子量は、各重合体ブロックの構成成分の種類によっても異なるが、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物の成形加工性を良好にするなどの観点から、重量平均分子量(Mw)として6000〜700000の範囲であり、10000〜400000の範囲であるのがより好ましく、20000〜100000の範囲であるのがさらに好ましい。
また、アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物の皮膚刺激性などを低減する観点から2以下であることが必要であり、1.7以下であることがより好ましい。Mw/Mnが2よりも大きいと低分子量成分の含有量が多くなることに起因して皮膚刺激性が生じることになる。なお、本明細書においては、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた標準ポリスチレン換算の分子量を意味する。
アクリル系ブロック共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基などの官能基を有していてもよい。
本発明に使用するアクリル系ブロック重合体(A)の製造方法は、化学構造に関する本発明の条件を満足する重合体が得られる限り特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用できる。一般に、分子量分布の狭い重合体を得る方法としては、構成単位であるモノマ−をリビング重合する方法が用いられる。このようなリビング重合の手法としては、例えば〈a〉有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報参照);〈b〉有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照);〈c〉有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6−93060号公報参照);〈d〉α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下ラジカル重合する方法(原子移動ラジカル重合:マクロモレキュール ケミカル フィジックス(Macromol.Chem.Phys.),201巻,1108−1114頁(2000年)参照)などが挙げられる。また、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−2−メチルジシクロヘキセンなどの多価ラジカル重合開始剤を用いて、各ブロックを構成するモノマ−を順次重合させ、アクリル系ブロック共重合体(A)を含有する各ブロックのホモポリマーとの混合物として製造する方法なども挙げられる。
上記の製造方法のうち、アニオン重合または原子移動ラジカル重合による場合は、より分子量分布の狭いアクリル系ブロック重合体(A)を製造できる。かかる点から、本発明で使用するアクリル系ブロック重合体(A)は、アニオン重合(〈b〉の方法)または原子移動ラジカル重合(〈d〉の方法)によって得られるものが好ましい。さらに、〈b〉の方法は、より分子量分布が狭く残存モノマーが少ないアクリル系ブロック共重合体(A)を製造でき、低分子量成分の含有量が多くなることに起因する皮膚刺激性が低いという利点がある。また、極低温ではなく比較的温和な温度で重合を行うことができ、環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機に要する電力)を低減できる。かかる点から、本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体(A)は、有機アルミニウム化合物の存在下でのアニオン重合(〈b〉の方法)により得られるものがより好ましい。
上記〈b〉の方法としては、例えば、有機リチウム化合物、および下記一般式:
AlR
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、またはRが前記したいずれかの基を表し、RおよびRは一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を表す。)
で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4などのエーテル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジルなどの含窒素化合物などの添加剤をさらに共存させて、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる方法などが挙げられる。
上記有機リチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウムなどのアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、m−トリルリチウム、p−トリルリチウム、キシリルリチウム、リチウムナフタレンなどのアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、トリチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウムなどのアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド;リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムn−プロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムn−ブトキシド、リチウムsec−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、リチウムペンチルオキシド、リチウムヘキシルオキシド、リチウムヘプチルオキシド、リチウムオクチルオキシド、などのリチウムアルコキシド;フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウムなどが挙げられる。
また、上記一般式で表される有機アルミニウム化合物としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリs−ブチルアルミニウム、トリt−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム;ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジ−n−オクチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジ−n−オクチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウムなどのジアルキルフェノキシアルミニウム;メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのアルキルジフェノキシアルミニウム;メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、tert−ブトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、tert−ブトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、tert−ブトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどのアルコキシジフェノキシアルミニウム;トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウムなどのトリフェノキシアルミニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムが、重合のリビング性の高さ、取り扱いの容易さの点で特に好ましい。
〈b〉の方法における有機リチウム化合物の使用量は必ずしも限定されないが、有機リチウム化合物を、(メタ)アクリル酸エステル等の使用する全単量体の合計に対して0.01〜10モル%の範囲内となる割合で用いることが、目的とするアクリル系ブロック共重合体(A)を円滑に製造できる点から好ましい。
〈b〉の方法は溶媒の存在下または不存在下に行なうことができるが、溶媒の存在下に行なうのが好ましい。溶媒としては、重合反応に悪影響を与えない限り特に制限はないが、取り扱い時の安全性が比較的高く、廃水への混入が生じにくく、回収精製が容易であることなどの点から、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でもベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素が好ましい。溶媒は単独で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、溶媒は、使用に先だって予め脱気および脱水処理して精製しておくことが好ましい。溶媒の使用量に特に制限はないが、通常、アクリル系ブロック共重合体(A)の製造に用いる全単量体に対して2〜30質量倍の範囲であるのが好ましく、3〜20質量倍の範囲であるのがより好ましい。
また、有機リチウム化合物と有機アルミニウム化合物の使用割合については、溶媒の種類、その他種々の重合条件等に応じて適宜好適な割合を選択して採用することができるが、通常、有機アルミニウム化合物を、有機リチウム化合物1モルに対して1.0モル以上となるような割合で用いることが好ましく、2.0モル以上となるような割合で用いることがより好ましい。重合反応の進行の観点からは有機アルミニウム化合物の使用量に特に上限はないが、製造コスト、アクリル系ブロック共重合体(A)からの有機アルミニウム化合物残渣の除去等の点から、有機アルミニウム化合物の使用量は、有機リチウム化合物1モルに対して500モル以下の範囲であることが好ましく、100モル以下の範囲であることがより好ましい。
さらに、添加剤を共存させる場合、その使用量は特に限定されないが、通常、重合反応液中の濃度として0.1〜100mmol/lの範囲であるのが好ましく、1〜10mmol/lの範囲であるのがより好ましい。
また、重合温度は、使用する有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、添加剤、溶媒、重合させる単量体の種類、アクリル系ブロック共重合体(A)を形成させる重合工程の内容などに応じて適宜好適な条件を選んで採用できる。各重合体ブロックおよびアクリル系ブロック共重合体(A)全体における分子量(重合度)の揃ったアクリル系ブロック共重合体(A)を、高い収率で工業的に有利に製造できる点からは、通常、−100〜100℃の範囲であることが好ましく、−80〜60℃の範囲であることがより好ましい。ただし、反応の段階に応じて反応温度を制御することがより好ましい。
反応時間は、重合工程で使用する単量体、溶媒、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、添加剤の種類、重合温度、目的とするブロック共重合体の分子量、溶媒中における単量体濃度等の諸条件に応じて適宜好適な時間を採用できる。重合反応のスケールによっても重合時間は異なり得るが、通常、数秒間〜100時間の範囲である。重合時間が短すぎると、未反応の単量体の割合が多くなる傾向となり、重合時間が必要以上に長すぎると、形成された重合体の末端アニオンが失活し易くなる傾向となる。
一方、原子移動ラジカル重合としては、上記〈d〉の方法をより一般化し、有機ハロゲン化物を開始剤とし、遷移金属化合物および含窒素化合物の存在下で重合を行うことができる。
有機ハロゲン化物としては、ハロゲン原子がベンジル位、またはカルボニル基のα位に結合した構造を有する化合物を用いるのが極めて好ましい。具体例としては、ブロモメチルベンゼン、1−ブロモエチルベンゼン、1−ブロモイソプロピルベンゼン、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモエチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼン、2−ブロモプロピオン酸メチル、2−ブロモプロピオン酸エチル、2−ブロモプロピオン酸ブチル、2−ブロモイソ酪酸メチル、2−ブロモイソ酪酸エチル、2−ブロモイソ酪酸ブチル、ブロモジフェニル酢酸メチル、ブロモジフェニル酢酸エチル、ブロモジフェニル酢酸ブチル、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,3−ジブロモコハク酸ジブチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジメチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジブチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジブチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジメチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジブチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジメチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジエチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジブチル、クロロメチルベンゼン、1−クロロエチルベンゼン、1−クロロイソプロピルベンゼン、ビス(クロロメチル)ベンゼン、ビス(1−クロロエチル)ベンゼン、ビス(1−クロロイソプロピル)ベンゼン、2−クロロプロピオン酸メチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−クロロプロピオン酸ブチル、2−クロロイソ酪酸メチル、2−クロロイソ酪酸エチル、2−クロロイソ酪酸ブチル、クロロジフェニル酢酸メチル、クロロジフェニル酢酸エチル、クロロジフェニル酢酸ブチル、2,3−ジクロロコハク酸ジメチル、2,3−ジクロロコハク酸ジエチル、2,3−ジクロロコハク酸ジブチル、2,4−ジクロログルタル酸ジメチル、2,4−ジクロログルタル酸ジエチル、2,4−ジクロログルタル酸ジブチル、2,5−ジクロロアジピン酸ジメチル、2,5−ジクロロアジピン酸ジエチル、2,5−ジクロロアジピン酸ジブチル、2,6−ジクロロピメリン酸ジメチル、2,6−ジクロロピメリン酸ジエチル、2,6−ジクロロピメリン酸ジブチル、2,7−ジクロロスベリン酸ジメチル、2,7−ジクロロスベリン酸ジエチル、2,7−ジクロロスベリン酸ジブチル、ヨードメチルベンゼン、1−ヨードエチルベンゼン、1−ヨードイソプロピルベンゼン、ビス(ヨードメチル)ベンゼン、ビス(1−ヨードエチル)ベンゼン、ビス(1−ヨードイソプロピル)ベンゼン、2−ヨードプロピオン酸メチル、2−ヨードプロピオン酸エチル、2−ヨードプロピオン酸ブチル、2−ヨードイソ酪酸メチル、2−ヨードイソ酪酸エチル、2−ヨードイソ酪酸ブチル、ヨードジフェニル酢酸メチル、ヨードジフェニル酢酸エチル、ヨードジフェニル酢酸ブチル、2,3−ジヨードコハク酸ジメチル、2,3−ジヨードコハク酸ジエチル、2,3−ジヨードコハク酸ジブチル、2,4−ジヨードグルタル酸ジメチル、2,4−ジヨードグルタル酸ジエチル、2,4−ジヨードグルタル酸ジブチル、2,5−ジヨードアジピン酸ジメチル、2,5−ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5−ジヨードアジピン酸ジブチル、2,6−ジヨードピメリン酸ジメチル、2,6−ジヨードピメリン酸ジエチル、2,6−ジヨードピメリン酸ジブチル、2,7−ジヨードスベリン酸ジメチル、2,7−ジヨードスベリン酸ジエチル、2,7−ジヨードスベリン酸ジブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、ブロモメチルベンゼン、1−ブロモエチルベンゼン、1−ブロモイソプロピルベンゼン、2−ブロモプロピオン酸エチル、2−ブロモイソ酪酸エチル、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが入手性の点から好ましい。
遷移金属化合物としては、銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの化合物が挙げられ、中でも、反応速度と副反応抑制の観点から銅化合物が好ましい。銅化合物としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などが挙げられる。中でも塩化第一銅、臭化第一銅が反応速度と副反応抑制の観点から好ましい。
含窒素化合物としては、2,2’−ビピリジル、N,N,N’,N’−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。中でもN,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミンが反応速度と副反応抑制の観点から好ましい。
〈d〉の方法は溶媒の存在下または不存在下に行なうことができるが、溶媒の存在下に行なうのが好ましい。溶媒としては、重合反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエンなどの炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも炭化水素、エーテル、ニトリルが好ましい。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はないが、通常、アクリル系ブロック共重合体(A)の製造に用いる全単量体に対して2〜30質量倍の範囲であり、3〜20質量倍の範囲であるのがより好ましい。
〈d〉の方法における開始剤の使用量は、アクリル系ブロック共重合体(A)の目的とする重量平均分子量に応じて、単量体との比から決定することができる。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量を制御することができる。また、使用する遷移金属化合物および含窒素化合物の種類は、使用する開始剤、単量体および溶媒の種類にあわせて適宜決定することができる。例えば、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−臭素結合を持つことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機臭化物であり、遷移金属化合物として臭化銅、好ましくは臭化第一銅を、含窒素化合物としてN,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンを用いるのが好ましい。
さらに、遷移金属化合物および含窒素化合物の使用量は、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定することができる。遷移金属化合物の使用量に特に制限はないが、通常、使用する開始剤に対して0.005〜100モル倍の範囲であるのが好ましく、0.01〜50モル倍の範囲であるのがより好ましく、0.1〜10モル倍の範囲であるのがさらに好ましい。また、含窒素化合物の使用量に特に制限はないが、通常、使用する遷移金属化合物に対して0.005〜100モル倍の範囲であるのが好ましく、0.01〜50モル倍の範囲であるのがより好ましく、0.1〜10モル倍の範囲であるのがさらに好ましい。
〈d〉の方法は、25℃〜200℃の範囲、好ましくは50〜150℃の範囲で行うことができる。また、反応時間については、重合工程で使用する単量体、溶媒、遷移金属化合物および含窒素化合物の種類、重合温度、目的とするアクリル系ブロック共重合体(A)の分子量、溶媒中における単量体濃度等の諸条件に応じて適宜好適な時間を採用できる。重合反応のスケールによっても重合時間は異なり得るが、通常、数秒間〜100時間の範囲である。重合時間が短すぎると、未反応の単量体の割合が多くなる傾向となり、重合時間が必要以上に長すぎると、ラジカル同士のカップリング、不均化などの副反応により反応のリビング性が損なわれ易くなる傾向となる。
アクリル系ブロック共重合体(A)の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸2−エチルヘキシル−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリメタクリル酸ドデシル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリメタクリル酸ドデシル−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル、ポリアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリスチレンなどが挙げられる。
なお、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物において、アクリル系ブロック共重合体(A)は一種類を単独で使用しても良いし、二種類以上を混合して使用しても差し支えない。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物を構成する非ハロゲン系難燃剤(B)としては、ハロゲンを含有せずかつ難燃性能を付与できる物質であれば特に制限はない。しかしながら、本発明において用いる非ハロゲン系難燃剤(B)としては、リン、窒素、ホウ素、ケイ素を含む化合物または金属水酸化物が好ましい。かかるリン、窒素、ホウ素、ケイ素を含む化合物としては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリノニルフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシレニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、ビフェニルビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、エチレングリコールビス(ジフェニルホスフェート)、ペンタエリスリトールビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)などのリン酸エステル化合物;ホウ酸、ホウ酸亜鉛などのホウ素系化合物;メラミン、メラミンシアヌレート化合物、リン酸メラミン、メラミンボレートなどのメラミン系誘導体;グアニジン、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジンなどのグアニジン系誘導体;シリコーンオイル、シリコーンレジンおよびそれらの混合物などのケイ素系化合物;ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミド、赤リンなどが挙げられる。これらの中でも、リン酸エステル化合物は、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物が透明性を損なわず、さらに、他の難燃剤と併用した場合にも柔軟性や成形加工性を調節可能なことから好ましい。また、ケイ素系化合物の中でもシリコーンレジンは、燃焼時のドリップ抑制効果があり好ましい。
一方、金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。なお、かかる金属水酸化物は高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、および多価アルコールの脂肪酸エステル類よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の表面処理剤で表面処理されていてもよい。非ハロゲン系難燃剤(B)は、上記した化合物の一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して使用しても差支えない。
必要に応じて本発明の難燃性アクリル系重合体組成物の構成成分となる、アクリル系ブロック共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂(C)(以下、単に樹脂(C)と略称する)としては、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸亜鉛共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体及びその水素添加物などが挙げられる。これらの中でも難燃効果が高い観点から、酸素指数が20以上のもの、具体的にはポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましく、アクリル系ブロック共重合体(A)との相容性の観点からは、ポリカーボネート系樹脂を用いるのが特に好ましい。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)および非ハロゲン系難燃剤(B)の配合量は、アクリル系ブロック共重合体(A)5〜95質量部、非ハロゲン系難燃剤(B)95〜5質量部の範囲であり、より好ましくは、アクリル系ブロック共重合体(A)25〜75質量部、非ハロゲン系難燃剤(B)75〜25質量部の範囲である。なお、両者の配合量の合計量は100質量部である。
また、樹脂(C)をさらに配合する場合、その配合量はアクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量100質量部に対して100質量部以下であり、50質量部以下であるのがより好ましい。これらの成分の配合比は、得られる難燃性アクリル系重合体組成物に求められる成形加工性(溶融流動性)、硬度、成形後の表面性などの諸物性により適宜調整することができる。なお、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物が力学的特性を損なわない観点から、非ハロゲン系難燃剤(B)としてリンを含む化合物とそれ以外の上記難燃剤の二種類以上を混合して用いる場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量100質量部中の、かかるリンを含む化合物の含有量は50質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であることがより好ましい。
前記の特定のアクリル系ブロック共重合体(A)を構成成分とすることで、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は柔軟性にも優れる材料となる。本発明の難燃性アクリル系重合体組成物のJIS K 6253に準拠して測定したJIS−A硬度に厳密な意味での制限は特にないが、通常、30〜95の範囲であり、柔軟性を活かす材料としての観点からは35〜85の範囲であるのがより好ましく、40〜80の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物には、その用途、目的に応じて他の配合剤、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ワラストナイトなどの無機充填剤、ガラス繊維、カーボン繊維などの補強剤、難燃助剤、制電剤、熱安定剤、顔料、離型剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、相容化剤、酸化防止剤、耐候安定剤、発泡剤、防カビ剤などをさらに配合することができる。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は、各成分を、例えばニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機などを用いた公知の混練方法を用いて溶融混練することにより製造できる。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は、熱可塑性樹脂に対して一般に用いられる成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。例えば射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの加熱溶融を経る成形加工方法によって成形加工することができ、チューブ、シート、フイルム、繊維状物、該重合体組成物からなる層を含む積層体などの任意の形状の成形品を得ることができる。
本発明の樹脂加工布帛は、一般に用いられる成形加工方法や成形加工装置を用いて作成することができる。すなわち、例えば平織、綾織などの各種の編織物などの片面または両面に、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物を用いて、パディング法、コーティング法、トッピング法、ラミネート加工法、ディップ成形法などの通常行なわれている方法を適用することにより、該重合体組成物を含む樹脂加工布帛を得ることができる。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は難燃性だけでなく、柔軟性、力学的特性などに優れるので、食品包装シート、キャップライナーなどの食品包装材;日用雑貨;スキー靴、ゴルフボールの外皮、コア材などの運動用具;玩具;デスクマットなどの文具;バンパーガードなどの自動車内外装品;窓枠シーリング材、建築物用シーリング材などの建築材料;掃除機用コーナーバンパー、冷蔵庫用ドアシールなどの家電機器部品;事務機器;靴底、トップリフトなどの履物・衣料用品;医療用機器;防音シート、養生シート、防水シートなどの建築用樹脂加工布帛;軒出しテント、屋形テント、広告宣伝用膜材、テント倉庫などの建造物用樹脂加工布帛;トラック幌シートなどの運搬用樹脂加工布帛;ジオグリッド等の土木用樹脂加工布帛;アドバルーン、飛行船、浮き屋根等の気体充填膜用布帛;電線被覆材・ケーブル被覆材などの種々の用途に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下に示す合成例においては、化合物は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用した。また、化合物の移送および供給はアルゴン雰囲気下で行った。
重合体およびブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCによりポリスチレン換算分子量で求めた。また、ブロック共重合体における各重合体ブロックの構成割合は1H−NMR測定によって求めた。さらに、得られたブロック共重合体のガラス転移温度は、動的粘弾性の温度依存性を測定し、損失正接(tanδ)の最大値となる温度を示した。
上記の測定で用いた測定装置および条件は、以下のとおりである。
(1)GPC:
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」(すべて7.8mmI.D.×30cm)を直列に連結
・溶離液:テトラヒドロフラン(流量:1.0ml/分)
・カラム温度:40℃ ・検出方法:示差屈折率(RI)
(2)H−NMR:
・装置:日本電子株式会社製「JNM−LA400」
・溶媒:重クロロホルム
(3)動的粘弾性の測定:
・装置:広域動的粘弾性測定装置(強制振動非共振法)
DVE−V4 FTレオスペクトラー (株)レオロジ社製
・測定条件:測定周波数=11Hz、測定モード=引っ張り、昇温速度=3℃/分、
歪=0.03%
・サンプル形状:長さ20mm×幅5mm×厚さ1mmの短冊形状、プレスシート
また、得られた難燃性アクリル系重合体組成物の物性測定に用いた測定装置および条件は、以下のとおりである。
(1)難燃性:下記の実施例または比較例で得られた難燃性アクリル系重合体組成物を用いて、溶融混練温度と同温度で90秒間、50kgf/cm(4.9MPa)の圧力でプレス成形して厚さ2mmのプレスシートを作製し、長さ100mm×幅20mmに打ち抜いて試験片を得た。得られた試験片を用いて、UL耐炎性試験規格(94V)に準拠した器具および試験炎の条件にて評価を行った。
[難燃性の評価基準]
<V−0> 以下の条件をすべて満たす。
A:どの試験片も接炎後のFlamingが10秒以下。
B:5個の試験片に10回接炎した後のFlamingが合計50秒以内。
C:クランプまでFlaming、または、Glowingしない。
D:綿を発火するFlaming粒を滴下しない。
E:2回目の接炎後のGlowingは30秒以内。
<V−2> 以下の条件をすべて満たし、かつV−0の条件は満たさない。
A:どの試験片も接炎後のFlamingが30秒以内。
B:5個の試験片に10回接炎した後のFlamingが合計250秒以内。
C:クランプまでFlaming、または、Glowingしない。
D:FlamingまたはGlowing粒を滴下して綿を発火。
E:2回目の接炎後のGlowingは60秒以内。
F:94HB水平試験で標線まで燃えない。
<全焼>:試験片が完全に燃焼する。
(2)流動性:下記の実施例または比較例で得られた難燃性アクリル系重合体組成物を、メルトインデクサー(宝工業株式会社製:L244)を用いて、表中の温度、荷重下におけるメルトインデックス(MI:g/10min)を測定し、流動性の指標とした。MIの値が高いほど成形加工性に優れる。
(3)力学的特性:下記の実施例または比較例で得られた難燃性アクリル系重合体組成物を用いて、難燃性測定用のシートを得るのと同様にして厚さ2mmのプレスシートを作製し、得られたシートからJIS3号試験片を打ち抜き、JIS K 6251に準拠して引張強さを測定した。
(4)硬度:下記の実施例または比較例で得られた難燃性アクリル系重合体組成物を用いて難燃性測定用のシートを得るのと同様にして厚さ2mmのプレスシートを作製し、A型硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて、JIS K 6253に準じて得られたシートのタイプA硬度を測定し、柔軟性の指標とした。
(A)アクリル系ブロック共重合体
≪参考例1≫
(1)2リットルの三口フラスコを窒素で置換した後、トルエン800ml、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン2.5ml、0.6mol/Lのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液を34ml、さらに、1.3mol/Lのsec−ブチルリチウム3.5mlを加えた。これにメタクリル酸メチル25mlを加え、25℃で3時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−15℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル160mlを7時間かけて滴下した。続いてメタクリル酸メチル25mlを加え反応液を25℃に昇温して、約10時間攪拌した。この反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体を得た。
(2)上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体についてGPC測定を行って、Mw、Mw/Mn、メタクリル酸メチル重合体(PMMA)ブロックとアクリル酸n−ブチル重合体(PnBA)ブロックの質量比を求めたところ、最終的に得られた上記アクリル系ブロック共重合体は、PMMA−b−PnBA−b−PMMAからなるトリブロック共重合体であって、第1PMMAブロックのMwは7200、Mw/Mnは1.13であり、PMMA−b−PnBAのジブロック体のMwは69000、Mw/Mnは1.29であり、トリブロック共重合体全体のMwは82000、Mw/Mnは1.13であった。また、PnBAブロックのTgは−22℃、PMMAブロックのTgは140℃であった。さらに、このトリブロック共重合体における各重合体ブロックの割合はPMMA(12.5質量%)−b−PnBA(75質量%)−b−PMMA(12.5質量%)であった[以下この参考例1で得られたトリブロック共重合体を、「アクリル系ブロック共重合体(A−1)」という]。
≪参考例2≫
(1)2リットルの三口フラスコを窒素で置換した後、トルエン800ml、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン2.5ml、0.6mol/Lのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液を34ml、さらに、1.3mol/Lのsec−ブチルリチウム1.3mlを加えた。これにメタクリル酸メチル30mlを加え、25℃で3時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−15℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル150mlを7時間かけて滴下した。続いてメタクリル酸メチル30mlを加え反応液を25℃に昇温して、約10時間攪拌した。この反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体を得た。
(2)上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体について、参考例1と同じように分析を行ったところ、第1PMMAブロックのMwは20000、Mw/Mnは1.05、PMMA−b−PnBAのジブロック体のMwは138000、Mw/Mnは1.34、トリブロック共重合体全体のMwは170000、Mw/Mnは1.29、また、PnBAブロックのTgは−28℃、PMMAブロックのTgは125℃であった。各重合体ブロックの割合はPMMA(15質量%)−PnBA(70質量%)−PMMA(15質量%)であった[以下この参考例2で得られたトリブロック共重合体を、「アクリル系ブロック共重合体(A−2)」という]。
(B)非ハロゲン系難燃剤
(B−1):水酸化マグネシウム;キスマ5E(商品名、協和化学工業社製)
(B−2):水酸化マグネシウム;マグラックスNT(商品名、鋼管鉱業社製)
(B−3):水酸化アルミニウム;B1403(商品名、日本軽金属社製)
(B−4):リン酸トリクレジル;(ジェイ・プラス社製)
(B−5):シリコーンパウダー;DC4−7081
(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
(C)熱可塑性樹脂
(C−1):ポリカーボネート樹脂;パンライトL−1225(商品名、帝人化成社製)
≪実施例1〜7、比較例1〜3≫
上記の参考例で得られたアクリル系ブロック共重合体(A−1)または(A−2)、非ハロゲン系難燃剤(B−1)〜(B−5)、熱可塑性樹脂(C−1)を、ラボプラストミルにより、表中に示した配合量比(質量比)および温度で5分間溶融混練し、それぞれ難燃性アクリル系重合体組成物を得た。該重合体組成物を上記に記した方法で評価した結果を表1にまとめて示す。
Figure 2006045418
表1から、実施例1〜4における難燃性アクリル系重合体組成物は、比較例1と比べて、流動性(成形加工性)、力学強度を保持しながら、難燃性が改良されている。また、実施例5〜7では、非ハロゲン系難燃剤としてリン酸エステル化合物、および必要に応じて樹脂(C)を添加することで、得られる難燃性アクリル系重合体組成物の柔軟性、流動性(成形加工性)の調節が可能であることがわかる。一方、比較例2より、非ハロゲン系難燃剤(B)の配合量が本発明で規定する範囲よりも少ない場合には、難燃性は改良されない。また、比較例3より、樹脂(C)の配合量が本発明で規定する範囲よりも多い場合には、得られる難燃性アクリル系重合体組成物の柔軟性が劣る。
本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は難燃性、柔軟性、力学的特性、成形加工性などに優れる。これらの特性を活かして、本発明の難燃性アクリル系重合体組成物は食品包装シート、キャップライナーなどの食品包装材;日用雑貨;スキー靴、ゴルフボールの外皮、コア材などの運動用具;玩具;デスクマットなどの文具;バンパーガードなどの自動車内外装品;窓枠シーリング材、建築物用シーリング材などの建築材料;掃除機用コーナーバンパー、冷蔵庫用ドアシールなどの家電機器部品;事務機器;靴底、トップリフトなどの履物・衣料用品;医療用機器;防音シート、養生シート、防水シートなどの建築用樹脂加工布帛;軒出しテント、屋形テント、広告宣伝用膜材、テント倉庫などの建造物用樹脂加工布帛;トラック幌シートなどの運搬用樹脂加工布帛;ジオグリッド等の土木用樹脂加工布帛;アドバルーン、飛行船、浮き屋根等の気体充填膜用布帛;電線被覆材・ケーブル被覆材などの種々の用途に用いることができる。

Claims (8)

  1. (A)25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a1)を少なくとも一つと、25℃以上のTgを有しかつ重量平均分子量が50000以下である(メタ)アクリル酸エステルを主体とする重合体ブロック(a2)を一つ以上有するアクリル系ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体全体の重量平均分子量が6000〜700000の範囲であり、そして分子量分布が2以下であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体5〜95質量部、および(B)非ハロゲン系難燃剤95〜5質量部(但し、アクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量は100質量部である)を含有する難燃性アクリル系重合体組成物。
  2. アクリル系ブロック共重合体(A)と非ハロゲン系難燃剤(B)の合計量100質量部に対して、さらに(C)アクリル系ブロック共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を100質量部以下の範囲で含有する、請求項1に記載の難燃性アクリル系重合体組成物。
  3. JIS K 6253に準拠して測定したJIS−A硬度が30〜95の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性アクリル系重合体組成物。
  4. アクリル系ブロック共重合体(A)全体の重量平均分子量が20000〜100000であり、アクリル系ブロック共重合体(A)が重合体ブロック(a1)と重合体ブロック(a2)のみから構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性アクリル系重合体組成物。
  5. アクリル系ブロック共重合体(A)が、アニオン重合または原子移動ラジカル重合により得られた共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性アクリル系重合体組成物。
  6. アクリル系ブロック共重合体(A)が、有機アルミニウム化合物存在下でのアニオン重合により得られた共重合体である請求項項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性アクリル系重合体組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性アクリル系重合体組成物を用いた樹脂加工布帛。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性アクリル系重合体組成物を用いた電線被覆材。
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