JP4962270B2 - 発光装置及びこれの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、発光素子から発せられる出射光を反射可能な反射層が、透光性封止部材にて封止されてなる発光装置及びこれの製造方法に関するものである。
発光素子を光源とする発光装置は、これまでも種々提案されている。例えば、光源からの光を反射することが可能な金属反射部材上に発光素子を固定し、さらに透光性樹脂でもって、この金属反射部材及び発光素子の露出表面を被覆した発光装置が知られている。このような発光装置は、光源からの光が金属反射部材でもって光取り出し方向へと反射されることから、高い光取り出し効率を有している。しかしながら、所定の環境下において使用すると、外部のガスが金属反射部材へと透過されて、この結果、金属反射部材が変色劣化し、発光装置の外観品質と発光強度が次第に低下するという問題があった。
ところで、特許文献1では、発光素子の近傍を、予め変色劣化の生じ難いガラス材料にて被覆した後、樹脂材料でもって封止してなる発光装置が提案されている。このような発光装置は、樹脂と発光素子との界面に、近紫外線の光によって黄変・着色が生じ難いガラス材料からなる被覆体が介在することから、樹脂の変色劣化を防止することができる。この技術を採用すれば、介在されるガラス材料でもって金属反射部材への密封度が高まるため、金属反射部材での変色を低減できる。
特開2000−299503号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたゾルーゲル法の加水分解重合により形成されてなるガラス封止体は、発光素子の厚みよりもはるかに厚く形成されている。通常、このような厚みのあるガラス封止体であれば、発光装置の形成過程あるいは使用時において、部材の収縮によりガラス封止体にクラックが生じていると考えられるため、ガスバリア性が著しく低減される。加えて、厳しい環境下での使用を考慮し、発光素子の樹脂の材料として、耐熱性・耐候性の優れた樹脂材料を用いること多いが、概してこのような樹脂材料はガスバリア性が低い傾向にある。従って、特許文献1に記載された発光装置では樹脂を透過したガスをガラス封止体でもって遮断することができず、この結果、外部から金属反射部材まで透過したガスや水分に起因して、金属反射部材およびその付近の部材が劣化し、これにより発光装置自体の出力が低下してしまう。
上記の問題点を受け、クラックが生じない程度にガラス封止体の厚みを薄くしようとすれば、ガラス封止体の厚みが被覆面上において均一とならず、部位により厚薄差が生じる虞があった。これにより、ガラス封止体のガスバリア性を有効に活用できない。具体的には、パッケージの凹部内に、ガラス封止体の前駆体である溶液を充填した際、パッケージの底面における周壁近傍では、溶液が周壁に這い上がってしまい、底面の中央部と比較して溶液量が減少することに起因する。この結果、周壁近傍ではガラス封止体の膜厚が所望以上に薄くなってしまう。薄膜領域では密封性を十分に維持できないため、樹脂または金属反射部材の変色が誘発されてしまう問題があった。
この問題を解決するために、ガラス封止体の被覆面全域にわたって、ガスや水分の遮断が可能なガスバリア性を維持できるほどの厚みを備え、かつクラックが生じない程度の薄さとなるようガラス封止体の厚みを調節することは難しい。なぜなら、厚膜によるクラックを避けるため、ガラス材料を薄く均等に形成しようとすれば、上述のパッケージの周壁近傍における薄膜化がより進行してしまい、気密性を満足しないためである。一方、この周壁への這い上がり分を予め考慮し、薄膜部分においても十分な気密性を維持可能な程度の膜厚でもって形成しようとすれば、所望以上の厚膜部が形成され、クラックが発生してしまう。つまり、ガラス封止体が厚すぎても薄すぎてもガスバリア性が低減してしまう上、双方を満足する膜厚条件でもってガラス封止体を均等に形成させることが極めて厳しい。言い換えると、ガラス封止体の厚みに関して、クラックの防止と気密性の向上の実現は板挟み状態にあって、ガラス封止体の被覆面全域にわたって、双方の条件を満たす膜厚に調節することは困難であった。
本発明は、従来のこのような問題点を解消するためになされたものである。本発明の主な目的は、厳しい使用環境下においても高出力を保持することができる発光装置、すなわち気密性が高くライフ特性に優れた発光装置及びこれの製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発光装置は、光を反射可能な反射層と、記反射層に固定された発光素子11と、反射層および発光素子を覆う透光性樹脂とを有する発光装置であって、反射層と透光性樹脂との間にはガラス体が介在している。また、ガラス体15は、前記透光性樹脂側の疎な上部層と前記反射層側の密な下部層とを有していることを特徴とする。
また、本発明の第2の発光装置は、前記上部層の空隙内に、前記透光性樹脂が侵入していることを特徴とする。
また、本発明の第3の発光装置は、下部層の厚みは、0.05μm以上0.2μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の第4の発光装置は、ガラス体15の下部層の厚みは総厚の1%以上10%以下であることを特徴とする。
また、本発明の第5の発光装置は、反射層14として、少なくとも銀を含有する金属で構成できる。
また、本発明の第6の発光装置は、透光性樹脂16がシリコーンからなることを特徴とする。
また、本発明の第7の発光装置は、発光素子11の表面がケイ素を含有する絶縁膜によって被覆されていることを特徴とする。
また、本発明の第8の発光装置は、透光性樹脂16に波長変換部材17が混入されていることを特徴とする。
また、本発明の第9の発光装置の製造方法は、反射層14上に固定された発光素子11と、反射層14および発光素子11の少なくとも露出面に被覆されて、反射層14および発光素子11を気密状態に封止するガラス体15とを有する発光装置の製造方法であって、無機ポリマーを無水溶剤に希釈する第1の工程と、第1の工程で得られた溶液を、反射層14及び発光素子11に塗布する第2の工程と、溶液を静置して粒子状ガラスを析出させ、溶剤成分を揮発させた後ガラス転化を進行させる第3の工程とを有することを特徴とする。
本発明の発光装置によれば、ガラス体でもって反射層を気密状態に封止できるため、外部のガスや水分が反射層側へと透過するのを抑止できる。すなわち、ガス及び湿気に起因する反射層の劣化を有効に防止できる。これは、本発明のガラス体において、その少なくとも表面側が密な下部層と疎な上部層から形成されていることで得られる効果であり、すなわち、ガス及び水分が透過できない程度の厚みや表面積を稼ぎつつ、同時に空隙でもって外部からの応力を緩和させて、ガラス体におけるクラックの発生を防止できる。
また、本発明の発光装置の製造方法であれば、溶液を静置して粒子状ガラスが析出した後に溶剤を揮発させるため、溶剤の存在下で底面側へと沈降する粒子状ガラスは、溶剤の表面形状に依存しない。すなわち、粒子状ガラスの沈殿物からなるガラス体を略均一な膜厚とできる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための、発光素子及びこれを備える発光装置を例示するものであって、本発明は、発光素子及びこれを備える発光装置を以下のものに特定しない。さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」、及び「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。特に実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。また、本明細書において、層上などでいう「上」とは、必ずしも上面に接触して形成される場合に限られず、離間して上方に形成される場合も含んでおり、層と層の間に介在層が存在する場合も包含する意味で使用する。
(実施の形態1)
図1および図2は、実施の形態に係る発光装置10、20の模式断面図である。図1と図2に示す各発光装置10、20は、発光素子11の実装方法のみが相違しており、他の構造は実質的に同一である。すなわち図1の例では、電極形成面側を主光取出し面とするフェイスアップ実装にて、また図2の例では電極形成面と対向する成長基板側を主光取出し面とするフリップチップ実装にて、各々搭載されている。
双方の発光装置10、20とも、発光素子11と、この発光素子11を載置する支持体13と、発光素子11及び支持体13とを被覆する透光性樹脂16とを備える。また、図1、図2の例において、支持体13の表面には正負の導電性部材12が形成されており、さらに、この導電性部材12の表面には、光を反射可能な反射層14が構成されている。発光素子11は、この反射層14上に固定されて、その上方を透光性樹脂16にて被覆されている。また、透光性樹脂16と、反射層14及び発光素子11との間にはガラス体15が介在している。さらに、このガラス体15は反射層14及び発光素子11の露出面を覆い、反射層14と発光素子11とを気密状態に封止している。
また、導電性部材12と発光素子11とは、導電性の接合部材18を介して電気的に接続される。この導電性の接合部材18として、図1の例では導電性ワイヤが使用され、また図2の例ではバンプが採用されている。
さらに、図1、図2の発光装置10、20において、透光性樹脂16内には波長変換部材17を混入できる。この波長変換部材17でもって、発光素子11より放出される光の波長を変換し、この結果、発光素子11からの出射光と、波長変換部材17でもって波長変換された光との加色混合により、所望の光を発光可能な発光装置とできる。
(発光素子11)
また、実施の形態1に係る発光素子11では、窒化物半導体素子の一例であるLEDチップを採用している。その他、発光素子11は公知のものを適宜利用できるが、蛍光物質を備えた発光装置とするとき、その蛍光物質を励起する光を発光可能な半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子として、ZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適にあげられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。本実施の形態で用いられている発光素子11は、同一面側に正および負の電極が形成されているが、対応する面に正および負の電極がそれぞれ形成されているものであってもよい。また、正および負の電極は、必ずしも1つずつ形成されていなくてもよく、それぞれ2つ以上形成されていてもよい。
また、図1、図2に示すように、発光装置10、20は、反射層14及び発光素子11、ガラス体15、透光性樹脂16がこの順に積層されている。これにより、発光装置外部の水分や腐食性ガスが、透光性樹脂16を透過した場合であっても、ガスバリア性の高いガラス体15でもって水分や腐食性ガスが、反射層14及び発光素子11側へと透過されるのを遮断できる。この結果、水分や腐食性ガスに起因する反射層14及び発光素子11の劣化を防止することができる。具体的に、反射層14が金属材料である際、例えば常温付近では水分による腐食や、高温においては酸化などのガスによる腐食を抑止できる。さらに具体的に、金属材料が銀の場合、酸素の存在下で硫化水素と、水の存在下でオゾンや二酸化硫黄と反応して黒変劣化が発生するのを抑制できる。また、発光素子においては、水分により発光素子の構成元素が溶出し、出力が低下するのを抑止できる。加えて、高湿条件や窒素酸化物、硫黄酸化物等の腐食性ガスによって発光素子の電極部に腐食が発生し、Vfが悪化する現象を回避できる。
すなわち、実施の形態1の発光装置であれば、ガラス体15でもって反射層14及び発光素子11の気密性を有効に保持できるため、発光素子11及び透光性樹脂16の構成元素の選択肢が広がる。つまり、外部からの水分により劣化しやすいGaAs系、GaP系などの発光素子を利用できる他、透光性樹脂の材料や使用環境にかかわらず、反射層14及び発光素子11の劣化を防止できる。この結果、長期にわたって光取り出し効率の高い発光装置を実現することができる。
また、実施の形態1では、発光素子を単独で導電性部材に固定した発光装置について説明するが、発光素子を単独で配置させる形態に限定されることなく、受光素子、静電保護素子(ツェナーダイオード、コンデンサ等)、あるいはそれらを少なくとも二種以上組み合わせたものを搭載した半導体装置とすることができる。なお、静電保護素子は、発光素子との極性を考慮して、発光素子と同一の導電性部材あるいは異なる導電性部材のいずれに配置してもよい。
(保護膜9)
また、発光素子11において、接合部材18との接続領域を除く略全面に、絶縁性の保護膜9を形成できる保護膜9にはSiO2、TiO2、Al23、ポリイミド等が利用できる。特に保護膜として、SiO2を採用することが好ましい。なぜなら、後述するガラス体15及び透光性樹脂16と同様のケイ素材質を有する保護膜は、各部材の界面での屈折率差を近接させて、各界面での光の全反射または乱反射を抑制できるからである。この結果、発光装置における光取り出し効率が向上し、好適である。
(支持体13)
図1、図2に示す発光装置10、20において、支持体13は、その上方に発光素子11を固定可能であって、かつ表面に導電性部材12及び反射層14を保持することが可能であれば、材質は特に限定されない。なかでも、セラミック、乳白色の樹脂等、絶縁性および遮光性を有する材料でもって構成されることが好ましい。一方で、支持体13は熱源となりうる発光素子11の近傍に位置するため、熱伝導性に優れた材質であって、外部に放熱可能な構造とすることもできる。この場合の材質としては例えば、銅、銅合金、アルミニウム等が挙げられる。さらに、支持体13を導電性部材12と同部材とすることもできる。これにより一の支持体13でもって、発光素子11を固定可能な基台と、外部電極と電気的に接続可能な導電性部材12との双方の役割を担うことができ、工程を簡略化して歩留まりの向上につながる。
(導電性部材12)
支持体13の表面に形成される導電性部材12は、導電性であれば特に限定されず、発光素子11との電気的な接続に用いる部材との接着性及び電気伝導性が良好なものとする。導電性部材12の具体的な電気抵抗としては、300μΩ−cm以下が好ましく、より好ましくは3μΩ−cm以下である。材質としては、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等が挙げられる。
(反射層14)
また、導電性部材12の最表面には、メッキ等の加工により反射層14が形成される。これにより発光素子11からの出射光を、反射層14でもって、光取り出し方向へと効率よく反射させて、発光装置の集光能力を高められる。図1及び図2に示すように、反射層14は、発光素子11の近傍に位置するため、反射層14による光の反射は、発光装置の光出力、発光色に大きく影響を与える。したがって、反射層14は反射特性の高い材質から構成されることが好ましく、例えば光反射率の高い銀を含有する金属で構成されることが好ましい。
また、反射層14は、その表面に凹凸を有していることが好ましく、これにより発光素子11からの光をより一層効率よく外部へ取り出すことができる。さらに、図1、図2に示すように、支持体13の表面の一部には、導電性部材12の非形成領域を有することが好ましい。言い換えると、この導電性部材12の非形成領域が、導電性部材12の開口部19を構成しており、この領域では支持体13が露出されている。また、導電性部材12上に形成される反射層14においても、導電性部材12の開口部19と同位置に開口部19が構成されている。この構造により、ガラス体15を反射層14の表面に形成する際に、過剰なガラス形成材料は、低域の開口部19へと流入し、この結果、反射層14の表面には適切な量のガラス形成材料が残る。すなわち、導電性部材12及び反射層14の開口部19を、過剰なガラス形成材料の退避域とすることで、発光素子11又は反射層14上に沈殿する粒子状ガラスの積層量を好適なものとし、ひいてはガラス体15の厚みを適切に制御できる。この結果、高いガスバリア性を維持するに足りる程度の厚みを備えつつも、クラックが発生しないガラス体15を、反射層14の表面に容易に形成できる。
(接合部材)
また、図1及び図2の例では、導電性部材12の表面に形成された反射層14上に、接合部材(図示していない)を用いて発光素子11が載置されている。図1の例では、発光素子11が載置される部材は反射層14に限定されず、例えば、導電性部材12や支持体13の表面に直接固定されていてもよいし、これらの固定場所との間にヒートシンクを介してもよい。この際、発光視認側からの平面視において、発光素子11の被固定部材の露出面における、反射層14の形成領域を大きくすることが好ましい。
また、発光素子11を反射層14に固定するための接合部材は、金属材料を用いることが好ましい。これにより、発光素子11からの光照射や発熱による接合部材の劣化変色および劣化変色に伴う光吸収を防止することができる。具体的には、Au−Sn合金、SnAgCu合金、SnPb合金、InSn合金、Ag、SnAgを用いることができる。図1に示すように、同一面側に正および負の電極を有する発光素子11を用い、電極が形成されていない側の面を導電性部材と固定する場合、発光素子11の電極が形成されていない面に予め金属膜をスパッタ、蒸着、メッキ等により成膜したものを用いて導電性部材と固定することが好ましい。これにより、放熱性に優れた発光装置とすることができる。具体的には、金属材料とフラックスが混合されたペーストを導電性部材上にディスペンス、ピン転写、印刷等により塗布する。そのペースト上に予め金属膜が形成された発光素子を設置し、リフローにて金属材料を加熱溶融することで接合することができる。また、図2に示すように、発光素子11の電極を導電性部材12と接合する場合は、電極の表面にNi、Ti、Au、Pt、Pd、W等の金属又は合金の単層膜又は積層膜を施し、前記と同様の方法にて、金属材料を介して導電性部材と金属接合することが好ましい。
また、図1のように、発光素子11の電極面と導電性部材とを対向させずに電気的に接続する場合、導電性ワイヤ18を用いる。導電性ワイヤ18は、発光素子の電極とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。このような導電性ワイヤとして具体的には、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤがあげられる。
(ガラス体15)
本発明の実施の形態に係る発光装置は、上述の通り、発光素子11および反射層14は、ガラス体15によって被覆されており、言い換えると、透光性樹脂16と、発光素子11及び反射層14との界面にはガラス体15が介在されている。このガラス体15は、透光性樹脂16側の疎な上部層15aと、反射層14側の密な下部層15bとを有している。このようなガラス体15は、各部材との熱膨張差により発生する熱応力の影響を受けることなく、厳しい使用環境下においても長期にわたって高いガスバリア性を保持することができる。このようなガラス体15を反射層14と透光性樹脂16との間に介在させることにより、各構成部材の劣化が防止され、高い出力を保持することが可能な発光装置を得ることができる。また、ガラス体15は、上部層15aの空隙中に透光性樹脂16を有していることが好ましく、これによりガラス体にかかる熱応力を緩和することができる。
すなわち本実施の形態では、反射層14の材料を、水分や腐食性ガスの影響により、硫化、酸化、腐食が発生しやすい金属材料にて構成する際に、この表面をガラス体15でもって密封することで、反射層14の劣化に起因する発光装置の出力低下を防止できる。ひいては反射率の波長依存性を保持するとともに、発光色の変化を抑制することができる。特に、少なくとも発光視認側の表面が、銀、または銀を必須とする合金により構成されてなる反射層14は、ガスによる劣化が著しいことから、従来高温高湿下で使用される発光装置には不向きであったが、ガラス体15でもって気密性を高めることにより、透光性樹脂16の材料や使用環境にかかわらず、光取り出し効率の高い発光装置を実現することができる。
本実施の形態に係るガラス体15の形成方法は、特に限定されないが、無機ポリマーを主材料とするポリシラザン法により生成することが好ましく、これにより、容易にガラス粒子が凝集した疎な上部層15aと、ガラス膜状の密な下部層15bを有するガラス体を得ることができる。例えば、揮発性溶剤に溶解しているパーヒドロポリシラザンを使用し、大気中の酸素および水分と反応させ、溶剤揮発が発生する前に粒子状のシリカとして溶剤中に析出させる。その後、溶剤揮発を進行させることで、膜状ガラスの密な下部層15bの上に粒子状ガラスが凝集した疎な上部層15aを積層することができる。上部層15aの粒子状ガラスは、溶剤中で反応析出したシリカの核が核成長することで得られ、白色粒子状であり、粒子形状は不定形である。一方、下部層15bの膜状ガラスは、反射層14近傍で反応析出したシリカ核が反射層14上で核成長することで膜状態となったものである。このような上部層15aと下部層15bとを有するガラス体にて発光素子および反射層を覆うことで、これらのガスバリア性を保持することができる。
また、図3は、図1のガラス体15の模式的断面拡大図を示す。図3に示すように、ガラス体15は、微細な粒子状ガラスが凝集した疎な上部層15aと、膜状の下部層15bからなる。この上部層15aは、粒子が疎に積層されており、この結果、ガラス体15が多孔質状に構成されている。すなわち、ガラス体15の積層方向における上面側、少なくともその表面側は多孔質状に形成されている。下部層15bの厚みは、0.05μm以上0.2μmであることが好ましく、この下部層15bの厚みは、ガラス体15の総厚の1%以上10%以下に値することが好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性の維持と、クラックの抑制との双方を満たすガラス体15とできる。すなわち、ガス及び水分が透過できない程度の十分な厚みや表面積を備えつつ、細孔でもって外部からの応力を緩和させることができるため、ガラス体15のクラックの発生を防止できる。また、ガラス体15の膜厚が上記の範囲未満の場合、発光素子11や反射層14の保護効果が不十分となり好ましくない。またガラス体15の厚みが上記の範囲より大きい場合、製造時や点灯時においてガラス部での剥離が発生し、これによりガスバリア性が低減されて不適である。
本実施の形態に係るガラス体15は、無機ポリマーであるガラス主材料を無水溶剤に希釈する第1の工程と、第一の工程で得られた溶液を反射層14及び発光素子11上に塗布する第2の工程と、この溶液を静置して粒子状ガラスを析出させ、前記溶剤成分を揮発させた後ガラス転化を進行させる第3の工程と、を有してガラス体15が生成される。
実施の形態1において、具体的なガラス体15の製造方法の一例を以下に説明する。まず、ガラス主材料であるパーヒドロポリシラザンを、キシレン等の水分を含まない溶剤に希釈して、その濃度を0.2〜10%程度とする。この希釈した溶液を、スプレー等により発光素子のキャビティー内もしくは発光素子11及び反射層14周辺に塗布する。塗布厚は、パーヒドロポリシラザンの濃度および膜形成面の構造により硬化処理後、適宜選択することができる。塗布後に常温にて5時間程度静置し、粒子状ガラスの析出・沈殿、溶剤揮発をさせる。その後、得られたガラスを好ましくは60℃以上120℃以下の温度かつ80%以上の湿度雰囲気下、さらに好ましくは温度約120℃湿度約90%の条件下の恒温恒湿オーブンにて2時間以上加熱・硬化させガラス化反応を進行させる。これにより、ガラスの転化が進行し、多孔質の高純度無機膜となり、また適宜膜厚を調整することでガスバリア性の高い保護膜機能を備えるガラス体15とできる。
特に、実施の形態1に係るガラス体15の製造方法であれば、得られたガラス体15を、ほぼ均一な膜とできる。すなわち、ガラス主材料の溶液を静置させ、溶剤の揮発前、すなわち溶剤の存在下でもって析出した粒子状のガラスを、下方へと略均等に降り積もらせることで、積層された粒子の集合体を均一な厚みとできる。一方、ゾルーゲル法など、主材料の溶液から得られたゲルを収縮固化させてガラスを得る方法であれば、パッケージ等の充填容器内の壁面近傍において、底面に充填された主材料溶液が壁面へと這い上がる。これにより、壁面近傍の底面では、溶液が壁面へと吸い取られて溶液量が減少してしまい、中央部よりも膜厚が薄くなる。この結果、相対的なガラスの膜厚が不均等となる。他方、実施の形態1のガラス体であれば、溶剤の存在下で析出した粒子は、自重により下方へと沈降して積層されるため、その後に溶剤を揮発させた際に残存する粒子の集合体は略均一な膜厚を維持できる。すなわち、パッケージに溶液が充填されて、壁面への這い上がりが生じたとしても、溶液中に析出された粒子は下方へと沈殿されて均一な膜厚を形成できる。すなわちガラス体15の膜厚は、溶剤の表面状態に依存せず、均一なガラス体とできる。
また、析出された粒子状ガラスは、ガラス主材料であるパーヒドロポリシラザンが水分と反応しシリカへと転化されたものであり、したがって、シリカの集合体であるガラス体15を得ることができる。
ガラス体15の主材料を無機ポリマーとすることで、最終生成物であるガラス体15を無機物とできる。これにより耐熱性が増す他、光強度の大きい光がガラス体15へと進行した場合であっても変色を抑止でき、耐候性に富むガラス体15とできる。具体的に実施の形態1において、ガラス体15の主成分を、無機ポリマーを転化したSiO2とできるため、酸や有機溶媒などに侵食され難く、また酸化物であるため高温でも安定である。したがって長期使用上、寸法安定性や信頼性が高い。
(透光性樹脂)
本実施の形態の透光性樹脂16は、ガラス体15上を被覆しており、かつガラス体15の上部層15aの空隙に充填されている。透光性樹脂16は、搭載する発光素子の光に対して透光性であればどのような樹脂材料によって形成されていてもよい。例えば、シリコーン樹脂、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂等があげられる。これらの材料には、着色剤として、種々の染料または顔料等を混合して用いてもよい。たとえば、Cr23、MnO2、Fe23、カーボンブラック等があげられる。さらにまた、封止樹脂の光出射面側は、所望の形状にすることによってレンズ効果を持たせることができる。具体的には、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状にすることができる。なお、本明細書において透光性とは、発光素子から出射された光を70%程度以上透過させる性質を意味する。
実施の形態1では透光性樹脂16としてシリコーンを採用した。これにより、発光装置の耐熱性及び耐光性を高められる。すなわち、紫外光のように光源の光強度が大きい場合であっても、透光性樹脂が変色し難く、したがって長期にわたって安定した発光波長を外部へと放出できる。また、透光性樹脂16と反射層14との屈折率を略同一とできるため、双方の界面における乱反射或いは全反射を抑止でき、発光装置の集光能力が高まる。加えて、単一の際には白色であるガラス体15を、屈折率が僅差であるシリコーン樹脂にて被覆することにより、双方の部材を光に対して略透明とできるため、光の透過率が向上して好適である。また、図2のように、発光素子11の電極を導電性部材12と接合する場合において、発光素子11はサファイア基板上に半導体層および電極を有するものを用いることが好ましい。これにより、半導体層、サファイア基板、ガラス体、シリコーン樹脂と、順に光の屈折率を低くすることができ、光の取り出し効率を高めることができる。
また、透光性樹脂16には、光拡散材や波長変換部材17を含有させてもよい。光拡散材は、光を拡散させるものであり、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。また、波長変換部材17は、発光素子11からの光を変換できる。これにより、発光素子からの出射光である一次光と、一次光の少なくとも一部が波長変換部材でもって波長変換された二次光とを混色でき、この結果、所望の波長を発光可能な発光装置とできる。波長変換部材17としては、例えば、蛍光物質があげられる。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、有機蛍光物質であるペリレン系誘導体、ZnCdS:Cu、YAG:Ce、Euおよび/またはCrで賦活された窒素含有CaO−Al23−SiO2等の無機蛍光物質等、種々好適に用いられる。
本実施の形態において、白色光を得る場合、特にYAG:Ce蛍光物質を利用すると、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる黄色系が発光可能となり白色系が比較的簡単に信頼性良く形成できる。同様に、Euおよび/またはCrで賦活された窒素含有CaO−Al23−SiO2蛍光物質を利用した場合は、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる赤色系が発光可能であり白色系が比較的簡単に信頼性よく形成できる。これらの蛍光物質の他に、たとえば、特開2005−19646号公報、特開2005−8844号公報等に記載の公知の蛍光物質のいずれをも用いることができる。また、本実施の形態では導電性部材がガラスによって保護されている為、安価な硫化物蛍光体を使用する事もできる。硫化物蛍光体としてはアルカリ土類系、チオガレート系、チオシリケート系、硫化亜鉛系、酸硫化物系があり、アルカリ土類系蛍光体としてはMS:Re(Mは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種以上であり、ReはEu、Ceから選ばれる1種以上)等があり、チオガレート系蛍光体としてはMN24:Re(MはMg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種以上、Nは、Al、Ga、In、Yから選ばれる1種以上、ReはEu、Ceから選ばれる1種以上)等があり、チオシリケート系蛍光体としてはM2LS4:Re(Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Baから選ばれる1種以上、LはSi、Ge、Snから選ばれる1種以上、ReはEu、Ceから選ばれる1種以上)等があり、硫化亜鉛系蛍光体としてはZnS:K(KはAg、Cu、Alから選ばれる1種以上)等があり、酸硫化物系蛍光体としてはLn22S:Re(LnはY、La、Gdから選ばれる1種以上、ReはEu、Ceから選ばれる1種以上)等が挙げられる。実施の形態1で得られた発光装置において、2種の耐候試験を実施し、その結果を実施例1及び実施例2にそれぞれ示す。
実施例1では、ガラス体15の有無の点で構造的に相違するそれぞれの発光装置について、硫化物系ガス雰囲気下における劣化状態を調査するため、ガスの付与前後における発光特性を評価した。具体的に、発光装置Aはガラス体を有しておらず、一方、発光装置Bはガラス体を備える。試験前における発光装置Aの出力値を100としてこれを基準とし、他の条件における出力値を相対化して算出した。結果を以下の表1及び図4に示す。
Figure 0004962270
表1及び図4より、ガラス体を有しない発光装置Aでは実験前後で、相対出力値が35.8%減少した。一方、ガラス体を備える発光装置Bでは実験前後での出力減が7.9%となり、これは発光装置Aと比較して、出力値の減少率が4分の1以下に抑制された。
さらに、実施例2では、実施例1と同様の発光装置A及び発光装置Bにおいて、高温高湿条件下での劣化状態を調査した。実験は、双方の発光装置A、Bを温度85℃及び湿度85%の環境下で500時間通電させ、試験を開始した時点を0時間(以後、0Hと表記する)とし、終了時を500時間(以後、500H表記する)として、0Hと500H時点での出力値をそれぞれ測定した。また、発光装置A及び発光装置Bの双方とも、0Hにおけるそれぞれの出力値を100としてこれを基準とし、500Hにおける出力値を相対値として算出した。結果を以下の表2及び図5に示す。
Figure 0004962270
表2及び図5より、ガラス体を有しない発光装置Aでは、試験終了時(500H)での出力が、開始時(0H)と比較して12.6%の減少となった。一方、ガラス体を装着する発光装置Bでは、3.7%の出力減にとどまり、これは、発光装置Aと比較して出力値の減少率が3分の1以下に抑制されたことを示す。
上記の結果より、本実施の形態のガラス体を有する発光装置は、発光素子の気密性が高く、厳しい使用環境下においてもライフ特性及び発光特性に優れた発光装置と言える。
本発明の発光装置及びこれの製造方法は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶のバックライト用光源、センサー用光源、信号機、車載部品、看板用チャンネルレター等、種々の光源に使用することができる。
実施の形態1に係る発光装置の概略断面図である。 実施の形態1に係る発光装置の一部を拡大した概略断面図である。 実施の形態1に係るガラス体の概略断面図である。 実施例1に係る硫化試験結果を示すグラフである。 実施例2に係る高温高湿条件下での通電試験結果を示すグラフである。
符号の説明
9…保護膜
10、20…発光装置
11…発光素子
12…導電性部材
13…支持体
14…反射層(反射メッキ)
15…ガラス体
15a…上部層
15b…下部層
16…透光性樹脂
17…波長変換部材
18…接合部材
19…開口部

Claims (9)

  1. 光を反射可能な反射層と、
    前記反射層に固定された発光素子と、
    前記反射層および前記発光素子を覆う透光性樹脂と、
    を有する発光装置であって、
    前記反射層と前記透光性樹脂との間にガラス体が介在しており、
    前記ガラス体は、前記透光性樹脂側の疎な上部層と前記反射層側の密な下部層とを有していることを特徴とする発光装置。
  2. 請求項1に記載の発光装置であって、
    前記上部層の空隙内に、前記透光性樹脂が侵入していることを特徴とする発光装置。
  3. 請求項1又は2に記載の発光装置において、
    前記下部層の厚みは、0.05μm以上0.2μm以下であることを特徴とする発光装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一に記載する発光装置において、
    前記下部層の厚みは、前記ガラス体の総厚の1%以上10%以下であることを特徴とする発光装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一に記載の発光装置において、
    前記反射層として、少なくとも銀を含有する金属で構成されていることを特徴とする発光装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか一に記載の発光装置において、
    前記透光性樹脂が、シリコーンからなることを特徴とする発光装置。
  7. 請求項1ないし6のいずれか一に記載の発光装置において、
    前記発光素子の表面は、ケイ素を含有する絶縁膜によって被覆されていることを特徴とする発光装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一に記載の発光装置において、
    前記透光性樹脂に波長変換部材が混入されていることを特徴とする発光装置。
  9. 反射層上に固定された発光素子と、
    前記反射層および前記発光素子の少なくとも露出面に被覆されて、前記反射層および前記発光素子を封止するガラス体と、
    を有する発光装置の製造方法であって、
    無機ポリマーを無水溶剤に希釈する第1の工程と、
    前記第1の工程で得られた溶液を、前記反射層及び前記発光素子の表面に塗布する第2の工程と、
    前記溶液を静置して粒子状ガラスを析出させ、溶剤成分を揮発させた後ガラス転化を進行させる第3の工程と、
    を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
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