JP4961827B2 - 発光装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体発光素子を備えた発光装置及びその製造方法に関し、特に、窒化物半導体発光素子を用いた白色発光装置及びその製造方法に関する。
窒化物半導体を用いた青色の発光ダイオードは、黄色に発光する蛍光物質と組み合わせて白色発光装置に利用されている。発光ダイオードの発光面側に蛍光物質を配置させて、青色の射出光の一部を蛍光物質により黄色光に波長変換すると、波長変換されずに通過した青色光に黄色光が混色されて、白色光が得られる。
白色光の色度を均一にするためには、発光ダイオードの射出光の光路上に、蛍光物質を等しく配置する必要がある。その1つの方法として、帯電した蛍光物質を分散させた溶液中で、蛍光物質を電気泳動させる技術が知られている(例えば特許文献1参照。)。電気泳動では、溶液中に発光ダイオードと電極とを配置して、それらの間に電圧を印可するが、このときに、発光ダイオードに、蛍光物質の帯電極と反対の電位が発生するように電圧を印可すれば、蛍光物質は発光ダイオードの導電部分に引き寄せられる。蛍光物質を発光ダイオードの表面に付着させる結着材を溶液中に含ませておけば、発光ダイオードの表面には蛍光物質の均一な層(波長変換部材)を形成することができる。
特開2003−69086号公報
特許文献1のような電気泳動沈着の技術を用いる場合、完成直前の状態で、発光ダイオードに蛍光物質を付着させることが多い。これは、電着後にダイボンディングやワイヤボンディングを行う場合には、パッド電極の表面に蛍光物質が付着していると問題があるので、電着前にパッド電極をマスクしたり、電着後にパッド電極表面の蛍光物質を除去したりする必要があるが、電着前にダイボンディングやワイヤボンディングしておけば、それらの手間を省くことができるからである。この場合、フェースアップ実装した発光ダイオードでは、ワイヤボンディングが完了した状態で蛍光物質を付着させることになるため、ワイヤボンディング用の導電性ワイヤにも波長変換部材が形成される。すなわち、発光ダイオードは、導電性ワイヤに沿って、長い波長変換部材を有することになり、光の損失を増加させる原因となる。また、波長変換部材が付着した導電性ワイヤは、柔軟性が失われて切断しやすくなるという問題もある。
これらの問題を回避する手段として、発光ダイオードをフリップチップ実装する方法がある。特許文献1に開示されているフリップチップ実装の例では、発光ダイオードの活性層で発生した光のうち、サブマウントに向かって射出される光を取り出すために、半導体層側に反射層を形成している。すなわち、光がサブマウント側に抜けることなく、発光ダイオードの透光性基板側及び側面のみから取り出せるようにしている。不要な波長変換部材は光の損失の原因となることから、蛍光物質が光射出面以外には付着しないようにマスキングして電気泳動沈着が行われている。
しかしながら、反射層は、発光ダイオードのサブマウント側に抜ける光を完全に防止することは実質的に困難である。特許文献1では、n側電極及びp側電極を反射構造とし、n側電極が形成されていないn型半導体層にも反射層を形成しているが、n型半導体層を露出するために切欠いたときに形成されたp型半導体層の側面部には反射層がなく、光はその側面部から漏れだしてしまう。光は狭い隙間であっても容易に漏れ出すので、側面部からの漏れ光は、発光ダイオードとサブマウントの隙間から、発光装置の外に漏れ出る。
この漏れ光は、波長変換部材を通過しない経路を経て発光装置の外に出て行くので、白色の光源に、青色のリングを生じる原因となっていた。
そこで、本発明は、波長変換部材内の光導波による生じる光の損失を抑制でき、波長変換されていない漏れ光を生じない発光装置と、その製造方法とを提供することを目的とする。
本発明の発光装置は、透光性基板の下面側に半導体層が積層された半導体発光素子と、前記半導体層の下面に形成された一対の電極と、絶縁体から形成されており、前記一対の電極のぞれぞれと対向配置された一対の上面配線を有する実装基板と、前記一対の電極と前記一対の上面配線とを接続する少なくとも一対の導電性材料と、前記上面配線から前記実装基板の内部を通って前記実装基板の側面又は下面まで延設された内部配線と、前記半導体発光素子の上面及び側面に付着され、前記半導体発光素子からの発光の少なくとも一部を波長変換する蛍光物質を含む波長変換部材と、を備えた発光装置であって、前記半導体発光素子は、平面視にて前記上面配線を覆い、前記半導体発光素子の下面と前記実装基板の上面との互いに離間するように、前記一対の電極と前記一対の上面配線とが導電性材料によって接続され、前記半導体発光素子の下面にも前記波長変換部材が形成されており、前記発光素子の上面、側面及び下面の前記波長変換部材は均一な厚みであり、前記下面の波長変換部材と前記実装基板との間に、隙間を有することを特徴とする。
この発光装置は、半導体発光素子の下面にも波長変換部材が形成されているので、今まで考慮されていなかった実装基板側への漏れ光も波長変換することができる。これにより、発光装置の照射光に、漏れ光がリング状の色ムラを作るのを完全になくすことができる。
また、この発光装置は、半導体発光素子が平面視にて前記上面配線を覆っているので、波長変換部材の形成時にマスキングが不要である。ここで「平面視」とは、半導体発光素子の発光面側、すなわち透光性基板側から観察することを意味している。平面視にて上面配線が半導体発光素子に覆われていれば、上面配線と半導体発光素子の電極とを接続する導電性材料も、平面視にて半導体発光素子に覆われることになる。よって、波長変換部材を電気泳動沈着によって形成する場合、蛍光物質が半導体発光素子の平面視からはみ出すことがなく、それゆえ引用文献1のようなマスキングを必要としない。
波長変換部材を形成するときにマスキングが必要ないということは、単に工程が減るだけでなく、マスキング層によって半導体発光素子の周囲や塞がれることがない、という利点がある。このことは、半導体発光素子の下面に波長変換部材を形成する上で極めて重要になる。すなわち、本発明の一例では、半導体発光素子の下面と実装基板の上面とを導電性材料によって離間することにより、電気泳動沈着に用いる溶液が半導体発光素子の下面に接触し、且つ蛍光物質が半導体発光素子の下面に到達するようにし、これによって半導体発光素子の下面に波長変換部材を形成している。しかしながら、引用文献1のようなマスキングが形成されると、半導体発光素子の下面と実装基板の上面との隙間が狭くなって、溶液が浸入できなくなる問題や、隙間の周囲が完全に塞がれる問題がある。もしも、マスキングを形成しながら、半導体発光素子の下面に波長変換部材を形成しようとすれば、導電性材料の高さを増すなどして、半導体発光素子の下面と実装基板の上面とを離間させる方法があるが、これは装置の高さを増加したり、工程数を増したりすることになる。
よって、本発明は、半導体発光素子が平面視にて前記上面配線を覆っていることにより、電気泳動沈着による波長変換部材の形成ではマスキングを必要とせず、このため、半導体発光素子の下面に波長変換部材を確実に形成できるという効果がある。
また、本発明の発光装置を製造する方法は、上記の発光装置を製造するのに適している。すなわち、本発明は、透光性基板の下面側に発光機能を有する半導体層が積層された半導体発光素子と、前記半導体層の下面に形成された一対の電極と、絶縁体から形成されており、前記一対の電極のぞれぞれと対向配置され導電性材料により接続された一対の上面配線を有する実装基板と、前記一対の電極と前記一対の上面配線とを接続する少なくとも一対の導電性材料と、前記上面配線から前記実装基板の内部を通って前記実装基板の側面又は下面まで延設された内部配線と、前記半導体発光素子の上面及び側面に付着され、前記半導体発光素子から射出された発光の少なくとも一部を波長変換する蛍光物質を含む波長変換部材と、を備えた発光装置の製造方法であって、前記半導体発光素子の下面と前記実装基板の上面との互いに離間するように、前記一対の電極と前記一対の上面配線とを導電性材料によって接続すると共に、前記半導体発光素子が平面視にて前記上面配線を覆うように配置する工程と、前記半導体発光素子と前記実装基板とを、前記蛍光物質が含有された導電性溶液の中に浸漬し、前記半導体発光素子の下面と前記実装基板の上面との間に前記溶液を到達させる工程と、前記溶液中において、前記半導体発光素子及び前記実装基板にデバイス電圧を印可することにより、前記半導体素子の上面、側面及び下面に均一な厚さで且つ前記下面の波長変換部材と前記実装基板との間に隙間が残る厚さで前記蛍光物質を付着させる工程と、を含むことを特徴とする。
この製造方法は波長変換部材を形成するにあたり、特許文献1と同様に蛍光物質の電気泳動沈着を利用するが、このときに半導体発光素子の下面と実装基板の上面とが離間状態であるので、半導体発光素子の上面のみならず、下面や側面にも、同時に、且つ均一な厚みの波長変換部材を形成することができる。
本発明の発光装置は、波長変換部材内の光導波による生じる光の損失が少ないので発光効率がよく、波長変換されていない漏れ光を生じないので色ムラの少ない均一な射出光の発光装置になる。また、本発明の発光装置の製造方法は、発光効率が良く、色ムラの少ない発光装置を製造することができる。
図1に示すように、実施の形態1の発光装置10は、実装基板14と、実装基板14上にフリップチップ実装した半導体発光素子12から構成されている。
半導体発光素子12は、透光性基板16の下面16b側に、n型半導体層18、活性層20及びp型半導体層22を積層して構成されており、さらに、p型半導体層22の下面に形成されたp側電極24を備えている。また、半導体発光素子12の下面側にn型半導体層18が露出するように、p型半導体層22と活性層20と(さらに、必要に応じてn型半導体層18の厚さの一部)が、部分的に除去されて凹部26が形成されている。この凹部26から露出したn型半導体層18の下面には、n側電極28が形成されている。
実装基板14は絶縁体から形成されており、半導体発光素子12を実装する上面14aには、半導体発光素子12のp側電極24及びn側電極28と対応する位置に、上面配線30、32が形成されている。上面配線30、32は、実装基板14の内部に引き回された内部配線34、36によって、実装基板14の下面14bと接続されている。
内部配線34、36を備えた実装基板14は、公知の技術を用いて様々な構造にすることができる。図1の実装基板14の例では、上面配線30、32の直下に貫通孔を有する第1部材141と、切欠き部38、38を有する第2部材142との2つの部材を接合して構成されている。第1部材141の貫通孔には、導電ペーストなどの第1導電部材341、361が充填され、また、第2部材142の切欠き部38、38の表面にも金属膜などの第2導電部材342、362が被覆されている。そして、第1導電部材341、361と第2導電部材342、362とをそれぞれ接続する第3導電部材343、363を第1部材141と第2部材142との間に形成した後に、第1部材141と第2部材142とを接合することにより、内部配線34、36を備えた実装基板14が得られる。
半導体発光素子12のp側電極24及びn側電極28は、導電性材料(この例では金属バンプ)56、58によって実装基板14の2つの上面配線30、32のそれぞれに接続されている。半導体発光素子12は、この金属バンプ56、58によって、実装基板14の上面14aに支持されているので、半導体発光素子12の下面12bと実装基板14の上面14aとは、この金属バンプ56、58の高さと、半導体発光素子の電極24、28の厚さと、表面配線30、32の厚さの総和に相当する距離dだけ離間して、隙間62があいている。
発光装置10の半導体発光素子12の上面12a、下面12b及び側面12cには、ほぼ均一な厚さの波長変換部材40が形成されている。波長変換部材40には、半導体発光素子12から射出された光を波長変換する蛍光物質44が含まれている。半導体発光素子12の活性層20で発生した光は、半導体発光素子12の上面12a方向、下面12b方向、及び側面12cのすべての方向に射出され、外部に取り出される。半導体発光素子12からの光は、波長変換部材40を通過するときに蛍光物質44に一部吸収されて波長変換され、吸収されなかった光と混色される。本実施形態の発光装置10では、半導体発光素子12のいずれの面から射出された光であっても、ほぼ等しい厚さの波長変換部材を通過するので、蛍光物質44によって波長変換される光の割合もほぼ一定にすることができ、色ムラが少なくなる。特に、半導体発光素子12の下面12bにも波長変換部材40が形成されているので、今まで考慮されていなかった実装基板14側への漏れ光も波長変換することができる。これにより、発光装置10の照射光に、漏れ光がリング状の色ムラを作るのを完全になくすことができる。
波長変換部材40は、半導体発光素子12のみならず、p側電極24、n側電極28、金属バンプ56、58、及び上面配線30、32など、外部に露出した導電部分も覆っている。本発明の発光装置は、上面配線30、32が半導体発光素子12の正面視の範囲Lの範囲内に入っており、電極24、28も半導体発光素子12の下面に形成されているので当然に範囲Lに隠れており、そして上面配線30、32と電極24、28とを接続する金属バンプ56、58も範囲Lの範囲内に配置されている。よって、電極24、28、上面配線30、32及び金属バンプ56、58の表面に付着する波長変換部材40が、導体発光素子12表面の波長変換部材40からはみ出すことはなく、発光装置10の発光プロファイルを歪ませることがない。すなわち、波長変換部材40は、層内で光を導波するが、導電性部材を半導体発光素子12よりも狭い範囲に形成することにより、発光装置10を上側から観察したときに波長変換部材40で導波された光が半導体発光素子12からはみ出して見えることがない。また、波長変換部材40が比較的狭い範囲に形成されることになるので、波長変換部材40内の導波によって起こる光の減衰を抑制し、取り出し効率を向上させることができる。
波長変換部材40は蛍光物質を含むが、さらに蛍光物質を固着する絶縁性の結着材を含むことが好ましい。また、蛍光物質と結着材は、さらに透光性樹脂により被覆されていても良い。これにより、蛍光物質と結着材を半導体発光素子に対して更に強固に固定させ、外部環境から保護することができる。なお、透光性樹脂は、結着材によって半導体発光素子から離間して形成することが好ましく、それによって半導体発光素子からの光による着色劣化が抑制される。また、結着材の屈折率は、透光性樹脂の屈折率より大きいことが好ましい。光取り出し方向へ徐々に屈折を小さくすることにより、発光素子からの光、あるいは結着材に含有される蛍光物質により波長変換された光が全反射されることなく、発光観測方向に効率よく出力される。従って、光の取り出し効率が高い発光装置とすることができる。
本発明では、波長変換部材40を形成するにあたり、特許文献1と同様に蛍光物質44の電気泳動沈着を利用することができる。電気泳動沈着によれば、半導体発光素子12の上面12aのみならず、下面12bや側面12cにも、同時に、且つ均一な厚みの波長変換部材40を形成することができる。
図2を参照して、波長変換部材40の形成を説明する。
図2に示すように、発光装置10を支持電極50の上に固定し、電着浴42内の溶液(電解液)46に浸漬させる。溶液46中には、帯電した蛍光物質44が分散されている。支持電極50と対向するように対極48を設置し、外部電源52によって支持電極50と対極48の間に電圧を印加する。このとき支持電極50に対して蛍光物質44の帯電と異なる極性の電圧を印加することにより、内部配線34、36を介して半導体発光素子12にも電圧が印可され、溶液46中の蛍光物質44が半導体発光素子12に向かって泳動する。そして発光素子12の表面のうち、導電性の部分は蛍光物質44と逆の極性に帯電しているため、その表面に蛍光物質44が均一な膜厚で沈着する。その沈着物を乾燥させることによって沈着物に含まれる余分な溶媒を除去すれば、図1に示されるような、蛍光物質を含む波長変換部材40を略均一な膜厚で形成することができる。
ここで、半導体発光素子12の透光性基板16が導電性材料であれば、蛍光物質44は半導体発光素子12の表面すべてに付着する。しかしながら、透光性基板16が絶縁体材料であった場合には、蛍光物質44は透光性基板の表面には付着せず、よって透光性基板16に波長変換部材40を形成することができない。このような場合には、絶縁体基板の表面を覆う導電被膜を形成することができる。
図3の発光装置10には、絶縁性基板16の表面を覆う導電被膜60が形成されている。この導電被膜60は、最終製品の発光装置10にも残存するので、導電性の他に透光性が要求され、例えば金属薄膜や導電性酸化物などを利用することができる。また、導電被膜60は、n型半導体層18とp型半導体層22とを短絡しないように形成する必要がある。例えば、図3のように、導電被膜60が絶縁性基板16及びn型半導体層18に接触し、活性層20及びp型半導体層24には接触しないように形成すれば、電気泳動沈着の時にはn型半導体層18を介して電圧を印可でき、発光装置10として使用するときには、短絡することがない。
また、絶縁性基板に波長変換部材40を形成する別の方法としては、電気泳動沈着の工程中に徐々に溶解して、最終製品の発光装置10には残存しない導電被膜60を利用する方法がある。一例としては、絶縁性基板にアルミニウム薄膜から成る導電被膜60を形成し、アルミニウムアルコレートを材料とし、硝酸を含有する導電性のゾル溶液46を用いて電気泳動沈着を行う方法がある。アルミニウム薄膜は、電気泳動沈着の最中に徐々に溶解していき、電気泳動が完了する頃には殆ど溶解してしまう。また、アルミニウム薄膜が完全に溶解せずに若干残った場合には、蛍光体層を乾燥、焼成する際に酸化させて、絶縁性にすることもできる。この方法であれば、導電被膜60をn型半導体層18及びp型半導体層22の表面に渡って形成しても、最終的に除去されるか絶縁化されるので、最終製品の発光装置10において、n型半導体層18とp型半導体層22とが短絡する恐れがない。
また、導電被膜60は、溶液46中の帯電された蛍光物質44を絶縁性基板の表面に電気泳動させるためのものであるので、導電被膜60が半導体発光素子12に直接形成される形態に限定されることなく、導電被膜60と半導体発光素子12との間に他の部材(例えば、透光性の樹脂やガラスなど)を配置する形態にすることもできる。よって、n型半導体層18とp型半導体層22とが短絡しないように、導電被膜60と半導体発光素子12との間の必要な部分に透光性の絶縁材料を介在させることもできる。
電気泳動沈着に使用する溶液46は、蛍光物質44に加えて結着材や帯電材を含んでいても良い。その場合、形成される波長変換部材40には、蛍光物質44以外に結着材や帯電材が含まれることになる。さらに波長変換部材40は、蛍光物質や結着材を覆う透光性樹脂を有していても良い。波長変換部材40内において、蛍光物質は半導体発光素子からの発光を波長変換できるように配置されていればよく、半導体発光素子と蛍光物質との間に透光性の他の部材などを介在していても構わない。
本発明の半導体発光素子12は、図1に示すように、下面12bにも波長変換部材40を備えている点が特徴であり、特に、波長変換部材40の厚みが、他の面(上面12a及び側面12c)の波長変換部材40と同等であるのが好ましい。しかしながら、電気泳動沈着により波長変換部材40を形成するときには、半導体発光素子12が実装基板12に実装されているため、半導体発光素子12の下面12bと実装基板14の上面14aとの隙間62の離間距離dが狭いと、この隙間62に電気泳動沈着用の溶液46が浸入しないので、半導体発光素子12の下面12bには波長変換部材40が形成されない。また、隙間62に溶液46が浸入できたとしても、蛍光物質44の粒子寸法よりも十分に広く離間してなければ、隙間62に入ってくる蛍光物質44の量が少なく、下面12bに形成される波長変換部材40の厚さが薄くなる。そこで、波長変換部材40が適切な厚みまで成長するように、離間距離dの下限を設定するのが好ましい。溶液の粘度や使用する蛍光物質44の粒径にもよるが、離間距離が5μm以上にすれば、電気泳動沈着に使用される殆どの溶液46が浸入でき、よく利用される蛍光物質44の粒径よりも十分に広いので、半導体発光素子12の下面12bに波長変換部材40を形成できるので好ましい。
また、半導体発光素子12び下面12bに波長変換部材40を成長させるには、導電性材料(金属バンプ)56、58の配置を工夫するのも効果的である。金属バンプ56、58は、蛍光物質44の泳動を遮ってしまうので、金属バンプ56、58の配置方法によっては、波長変換部材40の成長が滞ってしまう。そこで、p側の金属バンプ56とn側の金属バンプ58との間に、蛍光物質44が侵入できる経路を形成するとよい。この経路の形状は、金属バンプ56、58によって接続される実装基板14の上面配線30、32と、半導体発光素子12のp側電極24及びn側電極28の形状によって決定される。
そこで、本発明に適した半導体発光素子12のp側電極24及びn側電極28と、実装基板14の上面配線30、32の形状の一例を図4A及び図4Bに示す。
図4Aは、電極形状が判りやすいように、半導体発光素子12の半導体層側を上向きにして図示している。図のように、p側電極24がT字状に、n側電極28がコの字状に形成され、n側電極28の矩形の空間に、p側電極24の一部が配置されている。そして、p側電極24とn側電極28とは、それぞれ向かい合った辺が一定の間隔をあけられている。この間隔が、蛍光物質44の侵入経路Rになる。
また、n側電極28は、凹部26から露出したn型半導体層18と部分的に接触し、p型半導体層22の表面にまで延在している。このとき、n側電極28が、凹部26の側面及びp型半導体層22の表面と直接接触しないように、絶縁層54が介在されている。こうすることにより、n側電極28の面積に比べてp型半導体層22及び活性層20を切除する面積を減少させることができ、半導体発光素子12の出力を向上させることができる。
図4Bに示す実装基板14の上面配線30、32は、図4Aの半導体発光素子12の電極形状に合わせて形成されており、p側上面配線30はT字状、n側上面配線32はコの字状で、電極24、28と同様の寸法で、同様の位置関係で配置されている。
半導体発光素子12の実装前に、実装基板14の上面配線30、32の上に金属バンプ56、58を形成しておくことが好ましい。特に、上面配線30、32の全体に渡って複数の金属バンプ56、58を形成しておくと、実装したときに半導体発光素子12が安定するので好ましい。また、金属バンプ56、58の高さは、半導体発光素子12の下面12bと実装基板14aとの離間距離dに影響を及ぼすので、リフロー時の広がり等を考慮して適切に調節される。
実装の時には、半導体発光素子12を半導体層が下向きになるように反転し、半導体発光素子12の電極24、28が実装基板14の上面配線30、32と一致するように位置決めして、金属バンプ56、58の上に半導体発光素子12を載置する。金属バンプ56、58をリフローして、半導体発光素子12の実装が完了する。
図5A〜図5Dには、本発明に適した蛍光物質44の侵入経路Rを形成できる半導体発光素子12のp側電極24及びn側電極28を例示する。なお、実装基板14の上面配線30、32は、半導体発光素子12の電極形状とほぼ同じである。
図5A及び図5Bは、n側電極28を小さめにして、凹部26内のみに形成している。その代わりにp側電極24を長く形成して、金属バンプの形成する面積を確保し、実装時の半導体発光素子12の安定性を向上させている。蛍光物質44は、侵入経路Rに沿って移動して、半導体発光素子12の下面12bに到達する。図のように、p側電極24とn側電極28と対面する辺を曲線にすると、侵入経路Rを進む蛍光物質44が局所的によどむことがないので、半導体発光素子12の下面12b全体に行き渡らせるのに効果的である。
図5C及び図5Dは、p電極24とn電極28とを、同じ形状にしたものである。いずれもn側電極24が大きいので、凹部26からp型半導体層22の上に延在させている。図4Aと同様に、n側電極28が、凹部26の側面及びp型半導体層22の表面と直接接触しないように、絶縁層54が形成されている。
図5Cは、蛍光物質44の侵入経路Rが外側に向かって広がるように形成されているので、蛍光物質44が侵入経路Rに侵入しやすい。
また、図5Dは、侵入経路Rが真っ直ぐなので、経路の途中で蛍光物質44がよどみにくく、半導体発光素子12の下面12b全体に均一に蛍光物質44を付着させることができる。
(電気泳動沈着)
以下、電気泳動沈着の詳細について説明する。
(a)電着浴42
電着浴42中の電解液46には、種々のものを用いることができる。溶媒としてはイソプロピルアルコール、アセトン等の非水系溶媒が好ましい。電解質としては、例えば、硝酸マグネシウム等を加えることができる。この中にYAG等の蛍光物質を分散させれば、YAG蛍光物質のゼータ電位がプラスであるため、YAG蛍光物質はプラスに帯電する。そこで半導体発光素子1をマイナス極性に帯電させれば半導体発光素子12に向かって蛍光物質が泳動し、窒化物半導体1の表面に蛍光物質を堆積させることができる。半導体発光素子12の表面に蛍光物質44が固着できるように蛍光物質粒子の表面に適当な結着作用を持つ樹脂層などを形成しておいても良いが、電解液46に適当な結着材を含ませることが好ましい。
電解液46に含ませる結着材は、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb及びアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種の元素を含む有機金属化合物(好ましくはさらに酸素を含む)から形成することが好ましい。これらの有機金属化合物を非水系ゾル溶液にして電気泳動沈着を行えば、水素ガスなどの気泡を発生させることなく、均一な形状の波長変換部材を形成させることができる。また、有機金属化合物は加水分解反応などによって最終的に酸化物からなる結着材となる。ここで、有機金属化合物には、アルキル基、アリール基を含む化合物等も含まれる。このような有機金属化合物として、例えば金属アルコキシド、金属ジケトナート、金属ジケトナート錯体、カルボン酸金属塩等が挙げられる。中でも金属アルコキシドが好ましい。有機金属化合物のうち常温で液体の有機金属化合物を使用すれば、IPA等の溶媒に容易に溶かすことができる。そうすれば作業性を考慮した電解液の粘度調節や、電解液中での有機金属化合物等の凝固物の発生防止が容易にできるため作業性を向上させることができる。また、このような有機金属化合物は、加水分解などの化学反応によって酸化物となりやすい。従って、これらの有機金属材料から成るゾル溶液に蛍光物質を分散させ、電気泳動沈着させた後、乾燥して溶媒を除去すれば、上記元素を含む酸化物によって蛍光物質を固着することができる。また、これらの有機金属材料から成るゾル溶液に蛍光物質を分散させると、蛍光物質が有機金属材料から成るゾルによって内包されて帯電する。したがって、予め蛍光物質を帯電させる工程を有することなく、結着材の材料自体で蛍光物質を帯電させることができるため、作業性よく発光装置を製造することができる。
以下、結着材のより具体的な例について説明する。
(SiOによる結着材)
SiOにより蛍光物質が固着されてなる結着材は、アルキルシリケートとアルコールやアセトンのような非水溶媒とを所定の割合で混合してなるシリカゾル中に蛍光物質(粉体)を均一に分散させた混合溶液を調整して、その混合溶液中で電気泳動沈着することにより形成することができる。
アルキルシリケートは、以下の[式1]のような一般式で表される単量体(モノマー)が加水分解してさらに縮重合したものである。ここで、Rはアルキル基であり、メチル基の場合メチルシリケート、エチル基の場合エチルシリケート、n−プロピル基の場合N−プロピルシリケート、n−ブチル基の場合N−ブチルシリケートとなる。
[式1]

Figure 0004961827
アルキルシリケートの一種であるエチルシリケートは、次に示すような構造をもち、主に四塩化ケイ素とエタノールとの反応、あるいは金属ケイ素とエタノールとの反応から合成される無色透明の液体である。即ち、上記一般式において、Rをエチル基とした構造式によって示される単量体(モノマー)が、加水分解してヒドロキシル基(OH基)を含む分子(中間体としてシラノールの単量体等が挙げられる)となり、さらにヒドロキシル基(OH基)を含む分子同士から水分子(HO)が取れて縮合し、Siが酸素を介して繋がったシロキサン結合が生成して、次の[式2]のような構造となる。
[式2]

Figure 0004961827
エチルシリケートの溶液を触媒の存在下で水と反応させると、以下の[式3]に示されるような加水分解反応により、溶液はSiOのコロイド粒子が分散したゾル溶液となる(ゾル化)。さらに、加水分解反応が進み、溶液を乾燥することにより、溶液濃度が高くなりゲル化する。反応が進行するに従って粘度が高くなるが、作業性等を考慮して反応の進行を調節する。

[式3]
Figure 0004961827
加水分解反応は、中性条件では極めて緩やかに進行するが、触媒として酸または塩基が存在すると発熱を伴い急速に進行する。塩基性触媒を使用する場合、得られる加水分解溶液は不安定で過度にゲル化しやすく作業性を低下させるため、塩酸等の酸性触媒を少量使用し、長時間かけて加水分解反応させることが好ましい。
エチルシリケートの加水分解反応は温度が高いほど速く進行し、生成物のエタノールが除去されるとそれはさらに進行し易くなる。また、エチルシリケートの加水分解を進行させて生成するゲルを加熱するとSiOが形成される。従って、エチルシリケートのゾル溶液に蛍光物質を含有させて発光素子の表面上に電気泳動沈着させ、乾燥させて溶媒を除去すると、SiOにより蛍光物質が固着されてなる結着材が発光素子に形成される。
特に、本形態において、予めエチルシリケートをゾル状態の加水分解溶液とし、該加水分解溶液に蛍光物質を含有させた後、発光素子表面に電気泳動沈着させる。蛍光物質等を混合した電解液に水分が多く含まれていると、電気泳動沈着したときに水素が発生して波長変換部材の表面状態が悪化し、発光装置の光学特性に悪影響を及ぼす場合がある。ゾル状態のエチルシリケート加水分解溶液は水分を殆ど含まない。従って、発光素子の光学特性に悪影響を及ぼすことなく、波長変換部材を容易に形成することができる。
尚、反応条件を適宜調整することにより、結着材中に、SiO生成の中間体であるSi(OH)や、出発物質であるエチルシリケート、エタノールを微量に含ませることができる。結着材にSi(OH)などの無機物、および未反応のエチルシリケートやエタノールなどの有機物が微量に存在することにより、結着材表面には、ヒドロキシル基やエチル基などの極性の強い官能基が存在することになる。このような官能基の存在により、フッ素樹脂のような極性を有する疎水性材料あるいは分子構造の末端にヒドロキシル基を有する封止樹脂との馴染み、或いは濡れ性が良好となる。従って、少量の封止樹脂を使用しても、結着材上に封止樹脂を接着性よく配置することができる。また、結着材にSiO、Si(OH)などの無機物が多量に存在することにより、半導体素子からの高出力光による結着材の劣化を防ぐことができるだけでなく、半導体素子あるいは半導体発光素子の表面に形成する導電被膜60との馴染み或いは濡れ性がよくなる。これは、SiO、Si(OH)などと、半導体素子あるいは導電被膜60に含まれる金属イオンとの静電気的な結合が生じていると考えられる。そのため、結着材の固着力が高まる。
即ち、エチルシリケートのような有機金属化合物を使用して、SiOにより蛍光物質が固着されてなる結着材を形成すると、結着材は、ほぼ無機物で形成されていながら、有機物としての性質も僅かながら残しているため、半導体発光素子や導電被膜60の表面、あるいは必要に応じて配される封止樹脂等に対してよく馴染み、製造歩留まりが向上し、かつ紫外線による劣化もほとんどない信頼性の高い発光装置とすることができる。
(Alによる結着材)
Alを主成分とする結着材は、アルミニウムアルコレート、あるいはアルミニウムアルコキサイドと有機溶剤とを所定の割合で混合してなるアルミナゾル中に粒子状蛍光物質を均一に分散させた混合溶液を材料として、電気泳動沈着を行うことにより形成することができる。例えば、イソプロピルアルコールを母液とする溶液に、有機溶剤としてアセトン、アルミナゾルおよび蛍光物質を含有させて混合溶液とする。
アルミニウムアルコレート、あるいはアルミニウムアルコキサイドの一種であるアルミニウムイソプロポキサイド、アルミニウムエトキサイド、およびアルミニウムブトキサイドは、常温で無色透明の液体であり、水酸化アルミニウムを生成し、その後、乾燥させると酸化アルミニウムを生成する。例えば、アルミニウムイソプロポキサイドは、以下の[式4]のように反応し、最終的には、水酸化アルミニウムからアルミナとなる。
[式4]
Figure 0004961827
アルミニウムイソプロポキサイドを含むゾル溶液に、粒子状蛍光物質を含有させて混合液とし、その混合液中で粒子状蛍光物質を帯電させることができる。さらに、その混合液を材料として電気泳動沈着させた後、生成するAl23にて蛍光物質を半導体発光素子に固着させることができる。
以下に、本形態の各構成に適した材料について詳述する。
(半導体発光素子12)
本実施の形態における半導体発光素子12について、LEDチップを例として説明する。尚、半導体発光素子12は、EL素子など、LEDチップ以外の適当な半導体発光素子であっても良い。LEDチップを構成する発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体により形成された半導体発光素子を挙げることができるが、蛍光物質を使用する場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体発光素子の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
(透光性基板16)
窒化物半導体を積層して半導体積層体を形成するための透光性基板16の材料として、例えば、GaN、SiC、Si、ZnOなどの導電性基板が好適である。特に、窒化物半導体層が窒化ガリウム系化合物半導体から成る場合は、熱膨張係数差や屈折率差の小さなGaNを用いることが好ましい。また、GaNは、450nm付近の短波長域においても可視光に対する吸収率が低いため膜厚を厚くしても発光効率が低下しないため好ましい。即ち、透光性基板2が厚い方が多重反射の回数が減るため、光取り出し効率が効率する。しかし、SiC等の可視光域における吸収率がある程度高いため、SiC等から成る透光性基板を厚くしていくと、ある程度の厚さまでは光取りだし効率が向上していくが、ある一定以上に厚くすると、透光性基板2による吸収が影響して光取りだし効率が却って低下する。これに対して、GaNから成る透光性基板2の場合には、吸収の影響が少ないため、200μm程度までは光取りだし効率が単調に増加していき、それより厚くしても光取りだし効率が低下することはない。従って、SiC等に比べて、より高い光取りだし効率を得ることができる。尚、GaNから成る透光性基板2には、Al、In等が少量含まれていても良く、導電性を付与するためにSi等の不純物が含まれていても良い。
また、透光性基板16は、サファイア、スピネルなどの絶縁性基板であっても良い。中でも、サファイア基板が好適に利用される。サファイア基板は、窒化物半導体を結晶性良く積層させることができるからである。その場合の導電被膜60として、サファイア基板に対して密着性がよい金属材料、例えば、アルミニウムを選択することが好ましい。これによって導電被膜60の剥離が起きにくく、信頼性の高い発光素子にできる。
導電被膜60は、波長変換部材を電気泳動沈着によって形成しながら、又はした後、透光性を向上する処理を行うことが好ましい。即ち、半導体発光素子を被覆する導電被膜60の材料の選択によっては、形成された発光装置の光学特性に悪影響を及ぼすことがある。例えば、導電被膜60がITOなどの導電性酸化物である場合、電気泳動沈着中に印加される電圧の極性によっては着色することがある。このように着色したITOが発光素子の上に残存すると、発光素子からの光が吸収され、発光装置の光取り出し効率が低下してしまう。その場合には、導電被膜60を加熱することにより、発光素子の光に対して高い透光性を有する酸化物にすることが好ましい。
また、アルミニウムのような金属材料を導電被膜60とすると、膜厚が厚いほど発光素子からの光の透過率が低下する。また、半導体発光素子の側面に直接アルミニウムのような導電被膜60が付着すると導電被膜60自身によって半導体発光素子の電気的な短絡やリークが起きる場合がある。一方で、電気泳動沈着によって蛍光物質を沈着させるためにはある導電被膜60にある程度の膜厚が必要である。そこでアルミニウムなどの導電被膜60をある程度の厚さに形成しておき、電気泳動沈着の電解液に導電被膜60を構成する金属材料を溶解させる材料を含有させることにより、電気泳動沈着中に導電被膜60を溶解させることができる。これによって金属材料から成る導電被膜60を薄膜化すれば、半導体発光素子の発光効率の低下や電気的リークを抑制することができる。
この方法を用いる場合、導電被膜60の材料は、電解液に可溶な金属であり、且つ発光素子を形成している透光性基板と密着性が良好な金属とすることが好ましい。このような導電被膜60の材料として、例えば、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)あるいはW(タングステン)から選択された少なくとも一種を含む金属材料が挙げられる。一方、電解液も導電被膜60の組成に応じて、導電被膜60を溶解可能な組成とする。例えば、導電被膜60がアルミニウムであるとき、有機金属化合物のゾルを、アルミニウムアルコレートを材料とするアルミナゾルとしたり、電解液にアルミニウムを溶解させる酸やアルカリ、例えば、塩酸や硝酸を含有させたりすれば、電着浴に浸漬している間にアルミニウムを溶解させることができる。導電被膜60の厚みは、電気泳動沈着の開始から終了まで導電性を有し、且つ電気泳動沈着の工程後は、十分な透光性を有する部材に変換されるように設定することが好ましい。具体的には、電解液に含有されて導電被膜60を溶解させる物質の量、電気泳動沈着の工程における電圧、その電圧の印加時間などを考慮して決定される。
このようにして形成された波長変換部材14には、その厚み方向に、導電被膜60を構成する物質が濃度勾配をもった領域が形成される。例えば、導電被膜60の材料をアルミニウムとし、電解液に塩酸を含有させると、アルミニウムが塩酸により溶解された成分(例えば、アルミニウムイオン)が濃度勾配をもった領域が形成される。この濃度勾配は、半導体発光素子の側で濃度が高く、半導体発光素子から遠ざかるに従って徐々に濃度が低下する濃度分布となっている。なお、この濃度分布の分析方法として、GDS(グロー放電発光分光分析)やSIMS(二次イオン質量分析)などを採用することができる。
尚、導電被膜60の透光性を高める処理は、電気泳動沈着の間に行っても良いし、電気泳動沈着が終了してから行っても良い。例えば、電着浴32から半導体発光素子1を取り出した後、導電被膜60及びその上への沈着物を自然乾燥又は加熱しながら乾燥する。この間にも、電気泳動沈着後に残存している導電被膜60の透光性部材への変換を促進させることができる。導電被膜60は、少なくとも発光素子の光を透過させれば、ある程度残存していてもよい。
(p側電極24、n側電極28)
p側上面配線30及びn側上面配線32に適した材料は、導電性を有している材料であれば限定されないが、例えばAuや銀白色の金属が利用でき、特に、反射率の高いAg、Alが好適である。反射率の高い銀白色の金属から形成すると、電極24、28によって遮られる光を反射して、基板16側から取り出せるので、発光装置の光取り出し効率が向上するため好ましい。
(波長変換部材40)
本形態における波長変換部材40は、発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光物質44を含有する。このような波長変換部材40は、蛍光物質と、その蛍光物質を固着させるための結着材と、を含むことが好ましい。特に、結着材は、金属アルコキシドのゾル溶液のゲル化生成物とすることが好ましい。また、波長変換部材の発光素子への固定を強化させるため、電気泳動沈着により形成された蛍光物質層に、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの透光性樹脂やガラスなどの、他の結着材を含浸させることが好ましい。
本実施の形態における蛍光物質44は、半導体発光素子12の光を変換させるものであり、半導体発光素子12からの光をより長波長に変換させるものの方が効率がよい。特に、半導体発光素子12の発光する青色光を黄色光に変換する蛍光物質を用いれば、白色を発光可能は発光装置が得られるため好ましい。特に、半導体発光素子12からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、アルミニウム酸化物系蛍光物質の一種であるセリウムで付活されたアルミニウム・ガーネット系蛍光物質が好適に用いられる。アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、耐久性に優れるため、発光素子1の出力が高い場合には特に好ましい。特に、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光物質(YAG:Ce)蛍光物質は、その含有量によってLEDチップからの青色系の光を一部吸収して補色となる黄色系の光を高効率に発するため、白色系の混色光を発する高出力な発光ダイオードを、比較的簡単に形成することができる。
本形態の形成方法における蛍光物質44は、媒質中を電気泳動しやすい形状および大きさとされていることが好ましい。特に、電解液中での電気泳動について、蛍光物質の形状は、ほぼ球形の粒子状とされていることが好ましい。さらに、粒子状の蛍光物質の粒径は、電気泳動されやすい粒径に調整されている。本形態における粒子状蛍光物質の中心粒径は、7μmから8μmが好ましく、平均粒径は、6μm程度とすることが好ましい。
なお、本明細書中における蛍光物質の粒径とは、体積基準粒度分布曲線により得られる値であり、体積基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により蛍光物質の粒度分布を測定し得られるものである。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、濃度が0.05%であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に蛍光物質を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A)により、粒径範囲0.03μm〜700μmにて測定し得られたものである。
(結着材)
結着材は、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb及びアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物であることが好ましい。一部にこれら元素の水酸化物を含んでいても良い。こうした結着材は、蛍光物質を結着する力が強い。したがって、半導体発光素子に形成された波長変換部材内の蛍光物質が剥離しにくく、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、これらの結着材は、絶縁性も良好であるため、ハンダなどの導電接合層16によるp側電極6と透光性基板2の間の短絡を有効に防止することができる。上記元素を含む酸化物の中でも、SiO、Al、MSiO(なお、Mとしては、Zn、Ca、Mg、Ba、Sr、Zr、Y、Sn、Pbなど)といった無機材料を結着材とすることが好ましい。これらの無機材料は、透光性が良好であるため発光素子の発光効率を高くでき、また、発光素子の強い光に対する耐久性も高い。
また、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb及びアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物を含む結着材は、上記元素を含む有機金属化合物(好ましくはさらに酸素を含む)のゾルとして電解液中に含ませておくことで容易に形成できる。このような有機金属化合物として、例えば金属アルコキシド、金属ジケトナート、金属ジケトナート錯体、カルボン酸金属塩等が挙げられる。このような有機金属化合物は、加水分解などの化学反応をして酸化物となりやすい。従って、これらの有機金属材料から成るゾル溶液に蛍光物質を分散させ、電気泳動沈着させた後、乾燥して溶媒を除去すれば、上記元素を含む酸化物によって蛍光物質を固着させることができる。また、これらの有機金属材料から成るゾル溶液に蛍光物質を分散させると、蛍光物質が有機金属材料から成るゾルによって内包されて帯電する。従って、特別な帯電剤を用いなくても良い。また、これらの有機金属化合物を非水系溶媒にゾルとして含ませれば、電気泳動沈着の際に水素ガスなどが発生しにくく、蛍光物質を固着させる結着材に気泡が残存することなく、均一な形状となる。これにより、蛍光物質により波長変換された出射光の色度を発光観測方位により均一とすることができる。
尚、本実施の形態では、透光性基板16上に、n型半導体層18、活性層20及びp型半導体層22を順に積層する例について説明したが、p型半導体層22とn型半導体層18を入れ替えて積層されていても良い。その場合、透光性基板16は別の基板に成長させた半導体積層体に貼りあわせたものであっても良い。また、半導体積層体には、少なくともn型半導体層18、活性層20及びp型半導体層22が発光機能を発揮できるように含まれていれば良く、例えばi型層が薄膜で含まれていても良い。
(実装基板14)
実装基板14は、Al、BN、C(ダイヤモンド)、AlN、SiNなどの絶縁材料が好適である。特に、半導体発光素子12と熱膨張係数差が小さい材料を用いることが好ましく、製造時や使用時に実装基板14と半導体発光素子12との間に発生する熱応力の影響を緩和することができる。例えば、窒化物半導体発光素子12を用いる場合、窒化アルミニウム(AlN)から形成するのが好ましい。
(上面配線30、32)
p側上面配線30及びn側上面配線32に適した材料は、導電性を有している材料であれば限定されないが、例えばAuや銀白色の金属が利用できる。
実施の形態1にかかる発光装置の概略断面図である。 実施の形態1にかかる発光装置の製造方法における電気泳動沈着を説明する概略図である。 実施の形態1にかかる発光装置に電気泳動沈着を行う前の概略断面図である。 実施の形態1にかかる発光装置用の半導体発光素子の概略斜視図である。 実施の形態1にかかる発光装置用の実装基板の概略斜視図である。 実施の形態1にかかる発光装置用の半導体発光素子の概略底面図である。 実施の形態1にかかる発光装置用の半導体発光素子の概略底面図である。 実施の形態1にかかる発光装置用の半導体発光素子の概略底面図である。 実施の形態1にかかる発光装置用の半導体発光素子の概略底面図である。
符号の説明
10 発光装置、 12 半導体発光素子、 12a 半導体発光素子の上面、 12b 半導体発光素子の下面、 12c 半導体発光素子の側面、 14 実装基板、 14a 実装基板の上面、 14b 実装基板の下面、 16 基板、 16a 基板の上面、 16b 基板の下面、 18 n型半導体層、 20 活性層、 22 p型半導体層、 24 p側電極、 26 凹部、 28 n側電極、 30 p側上面配線、 32 n側上面配線、 34 p側内部配線、 36 n側内部配線、 40 波長変換部材、 42 電着浴、 44 蛍光物質、 46 電解液、 56 p側導電性材料(金属バンプ)、 58 n側導電性材料(金属バンプ)、 62 半導体発光素子と実装基板との隙間

Claims (5)

  1. 透光性基板の下面側に半導体層が積層された半導体発光素子と、
    前記半導体層の下面に形成された一対の電極と、
    絶縁体から形成されており、前記一対の電極のぞれぞれと対向配置された一対の上面配線を有する実装基板と、
    前記一対の電極と前記一対の上面配線とを接続する少なくとも一対の導電性材料と、
    前記上面配線から前記実装基板の内部を通って前記実装基板の側面又は下面まで延設された内部配線と、
    前記半導体発光素子の上面及び側面に付着され、前記半導体発光素子からの発光の少なくとも一部を波長変換する蛍光物質を含む波長変換部材と、を備えた発光装置であって、
    前記半導体発光素子は、平面視にて前記上面配線を覆い、
    前記半導体発光素子の下面と前記実装基板の上面との互いに離間するように、前記一対の電極と前記一対の上面配線とが導電性材料によって接続され、
    前記半導体発光素子の下面にも前記波長変換部材が形成されており、
    前記発光素子の上面、側面及び下面の前記波長変換部材は均一な厚みであり、
    前記下面の波長変換部材と前記実装基板との間に、隙間を有することを特徴とする発光装置。
  2. 前記半導体発光素子の下面が、前記実装基板の上面と5μm以上離間していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記波長変換部材は、さらに前記蛍光物質を固着する結着材を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
  4. 前記結着材が、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb及びアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
  5. 透光性基板の下面側に発光機能を有する半導体層が積層された半導体発光素子と、
    前記半導体層の下面に形成された一対の電極と、
    絶縁体から形成されており、前記一対の電極のぞれぞれと対向配置され導電性材料により接続された一対の上面配線を有する実装基板と、
    前記一対の電極と前記一対の上面配線とを接続する少なくとも一対の導電性材料と、
    前記上面配線から前記実装基板の内部を通って前記実装基板の側面又は下面まで延設された内部配線と、
    前記半導体発光素子の上面及び側面に付着され、前記半導体発光素子から射出された発光の少なくとも一部を波長変換する蛍光物質を含む波長変換部材と、を備えた発光装置の製造方法であって、
    前記半導体発光素子の下面と前記実装基板の上面との互いに離間するように、前記一対の電極と前記一対の上面配線とを導電性材料によって接続すると共に、前記半導体発光素子が平面視にて前記上面配線を覆うように配置する工程と
    前記半導体発光素子と前記実装基板とを、前記蛍光物質が含有された導電性溶液の中に浸漬し、前記半導体発光素子の下面と前記実装基板の上面との間に前記溶液を到達させる工程と
    前記溶液中において、前記半導体発光素子及び前記実装基板にデバイス電圧を印可することにより、前記半導体素子の上面、側面及び下面に均一な厚さで且つ前記下面の波長変換部材と前記実装基板との間に隙間が残る厚さで前記蛍光物質を付着させる工程と、を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
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