JP4959212B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車に搭載される電動パワーステアリング装置に関し、特に操舵トルクの制御に関する。
走行車両は、操向車輪が路面から受けるセルフアライニングトルクにより自然と舵角を0(中立位置)に近づけようとする復元力が働くので、ハンドルを切った後の戻しは、操舵力を加えない手放し状態でもいいようであるが、特に低車速においては、セルフアライニングトルクは小さく、実際はステアリング系のフリクション等で中立位置までは戻らない。
そこで、電動パワーステアリング装置を備えた車両では、人力をアシストするモータを利用してハンドルの戻し操舵時も駆動制御する例が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−145094号公報
同特許文献1に記載された実施例では、操舵トルクが閾値以内のときは、ハンドル戻し状態(略手放し状態)と判定し、ハンドル戻し電流がアシスト電流に加算されて、低速走行時のハンドル戻り特性を改善するハンドル戻し制御手段を備えている。
すなわち、ハンドル戻し制御手段は、操舵トルクが閾値内にある略手放し状態では、ハンドル戻し電流をアシスト電流に加算して、モータの駆動により中立位置まで戻るようにハンドル戻し駆動を実行する。
しかるに、低車速で小さい舵角を保持した状態で大きく曲がろうとするとき、運転者は極めて小さい力で保舵(舵角を保持)することになり、操舵トルクが極めて小さい値となる。
そのため、特許文献1のように、操舵トルクが閾値内に入ったときにハンドル戻し駆動を実行するものであると、運転者が極めて小さい力で保舵しているとき、操舵トルクが閾値内に入ることがあり、するとハンドル戻し駆動が実行されるので、運転者はこれに抗して保舵しようとして力が加わり、操舵トルクが増加して閾値を超え、よってハンドル戻し駆動が停止される。
ハンドル戻し駆動が停止されることで、保舵力が小さくてすみ、運転者が力を抜くと、また、操舵トルクが閾値内に入り、ハンドル戻し駆動が実行されるというように、ハンドル戻し制御手段はハンドル戻し駆動の実行と停止を繰り返し、よって運転者は小舵角、特に低車速での操舵を安定して行うことが困難である。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ハンドル戻し制御を行いつつ小舵角での安定した保舵状態を維持できる電動パワーステアリング装置を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
操舵トルク(T)および車速(v)に基づきアシストベース電流値(Ib)を算出する操舵アシスト制御手段(31)を備え、前記アシストベース電流値(Ib)に基づくアシスト目標電流(Io)に従ってアシストモータ(M)が駆動制御されて人力をアシストする電動パワーステアリング装置において、
舵角(θ)を検出する舵角検出手段(34)と、
前記舵角(θ)と前記車速(v)と前記操舵トルク(T)に基づいて操舵トルクが略手放し状態と判定することができる小さい閾値以下のときに前記アシストベース電流値(Ib)にハンドル戻し補正電流値(Is)を加算するハンドル戻し制御手段(S)と、
前記車速(v)と前記舵角(θ)に基づいて小舵角時に舵角中立方向への戻し反力を与える反力電流値(Ia)を演算する反力電流演算手段(50)および前記操舵トルク(T)に基づいて前記反力電流値(Ia)を規制するトルクレシオ(r)を演算するトルクレシオ演算手段(51)を備え、前記反力電流値(Ia)に前記トルクレシオ(r)を乗算した反力電流値(Ia・r)を前記アシストベース電流値(Ib)に加算する反力電流付加手段(A)とを備え
前記反力電流演算手段(50)は、舵角が0から大きくなるに従い反力電流値が0から増加した後減少して0に至る特性を車速(v)毎に予め記憶する反力電流記憶手段(50a)を有し、同反力電流記憶手段(50a)に基づき前記車速(v)と前記舵角(θ)から反力電流値(Ia)を抽出演算し、
前記トルクレシオ演算手段(51)は、操舵トルク(T)が0のとき、トルクレシオ(r)は1.0を示し、操舵トルク(T)が0から左右ともに大きくなるに従いトルクレシオ(r)が減少し、緩減して滑らかに0に至る特性を記憶するトルクレシオ記憶手段(51a)を有し、同トルクレシオ記憶手段(51a)に基づき操舵トルク(T)からトルクレシオ(r)を抽出演算する電動パワーステアリング装置とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記反力電流記憶手段の記憶する特性は、車速が高い程前記反力電流値が低いことを特徴とする。
請求項1記載の電動パワーステアリング装置によれば、ハンドル戻し制御手段により操舵トルクが略手放し状態と判定することができる小さい閾値以下のときにアシストベース電流値にハンドル戻し補正電流値が加算されるので、略手放し状態のときはハンドル戻し補正電流値により低車速でもハンドルを中立位置まで戻すことができるとともに、小さい舵角を保舵して旋回走行するときは、反力電流付加手段により反力電流値がアシストベース電流値に加算されるので、操舵トルクが閾値以下となることはなく、ハンドル戻し制御手段によりハンドル戻し駆動の実行と停止が繰り返されることはなく、小舵角での操舵を安定して行うことができる。
反力電流付加手段は、舵角が0から大きくなるに従い前記反力電流値が0から増加した後減少して0に至る特性を車速毎に予め記憶する反力電流記憶手段を備えるので、所要の小さい舵角に限定して滑らかに変化する反力電流値が速やかに抽出演算され、アシストベース電流値に加算され、舵角変化にも円滑に対処することができる。
反力電流付加手段は、操舵トルクを入力して所定操舵トルク以上のときに前記反力電流値を規制するので、切込みや切戻し時には反力電流が影響しないようにすることができる。
請求項2記載の電動パワーステアリング装置によれば、反力電流記憶手段の記憶する特性は、車速が高い程反力電流値が低いので、セルフアライニングトルクの低い低車速時に高い反力電流値とし、セルフアライニングトルクの高い高車速時に低い反力電流値とするために、小舵角を保舵して旋回走行するときに、車速によってセルフアライニングトルクに過剰な反力電流のトルクが加わることにより違和感(過剰に戻される感覚)が生じるのを防止している。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図8に基づいて説明する。
本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置1の全体の概略後面図を図1に示す。
電動パワーステアリング装置1は、車両の左右方向(図1における左右方向に一致)に指向した略円筒状のラックハウジング2内にラック軸3が左右軸方向に摺動自在に収容されている。
ラックハウジング2の両端開口から突出したラック軸3の両端部にそれぞれジョイントを介してタイロッドが連結され、ラック軸3の移動によりタイロッドが動かされ、さらに転舵機構を介して車両の転舵輪が転舵される。
ラックハウジング2の右端部にステアリングギアボックス4が設けられている。
ステアリングギアボックス4には、ステアリングホイール(図示せず)が一体に取り付けられたステアリング軸にジョイントを介して連結される入力軸5が軸受を介して回動自在に軸支されており、図2に示すように入力軸5はステアリングギアボックス4内でトーションバー6を介して相対的なねじり可能に操舵ピニオン軸7と連結されている。
この操舵ピニオン軸7のはす歯7aがラック軸3のラック歯3aと噛合している。
したがってステアリングホイールの回動操作により入力軸5に伝達された操舵力は、トーションバー6を介して操舵ピニオン軸7を回動して操舵ピニオン軸7のはす歯7aとラック歯3aの噛合によりラック軸3を左右軸方向に摺動させる。
ラック軸3は、ラックガイドスプリング8に付勢されたラックガイド9により背後から押圧されている。
ステアリングギアボックス4の上部にはアシストモータMが取り付けられ、アシストモータMの駆動力を減速して操舵ピニオン軸7に伝達するウオーム減速機構10がステアリングギアボックス4内に構成されている。
ウオーム減速機構10は、操舵ピニオン軸7の上部に嵌着されたウオームホイール11にアシストモータMの駆動軸に同軸に連結されたウオーム12が噛合して構成されている。
アシストモータMの駆動力をこのウオーム減速機構10を介して操舵ピニオン軸7に作用させて操舵を補助する。
なお、アシストモータMには、その回転駆動軸の回転を直接検出するロータリエンコーダ、レゾルバなどの回転角センサ27が設けられている。
ウオーム減速機構10のさらに上方に操舵トルクセンサ20が設けられている。
トーションバー6の捩れをコア21の軸方向の移動に変換し、コア21の移動をコイル22,23のインダクタンス変化に変えて操舵トルクTを検出している。
なお、トーションバー6の捩れを光学的に検出するトルクセンサでもよい。
この操舵トルクをもとに制御され操舵を補助するアシストモータMは、CPUにより駆動制御されており、その操舵トルク制御装置30の概略ブロック図を図3に示す。
操舵トルクセンサ20が検出した操舵トルクTと車速センサ25が検出した車速vに基づい
て操舵アシスト制御手段31がアシストベース電流Ibを演算し出力する。
アシストベース電流Ibは、アシストモータMを駆動するベースとなる電流で、操舵トルクTが大きい程アシストベース電流Ibは大きくして操舵する者の負担を軽減するのを基本として演算され、同じ操舵トルクでも車速が高速のときより低速のときの方がハンドルは重くなるのでアシストベース電流Ibを大きくして操舵トルクを軽減する。
操舵アシスト制御手段31は、操舵トルクTと車速vから上記のことを考慮して適切なアシストベース電流Ibを演算する。
例えば、操舵トルクTに対するアシストベース電流Ibの最適な関係を所定の車速毎に予め決めておき、同関係をもとに操舵トルクTと車速vからアシストベース電流Ibを演算する。
さらに、ステアリング系の慣性トルクやモータの慣性トルクを補償する演算も加えてアシストベース電流Ibを求めるようにしてもよい。
このアシストベース電流Ibには、これから述べる反力電流付加手段Aによる反力電流値Iaが加算されるとともに、ハンドル戻し制御手段Sによる目標電流値Isがさらに加算されてアシスト目標電流Ioとされ、電流フィードバック制御手段32によってこのアシスト目標電流Ioとフィードバックしたモータ電流Imとの差を0にするように制御する駆動電流Idが演算されてモータ駆動回路33に出力されて、モータ駆動回路33のPWM制御によってアシストモータMが駆動される。
アシストモータMには、モータ電流Imを検出するモータ電流検出装置26を備えるとともに、回転角センサ27を備え、アシストモータMの回転角度すなわちモータ回転数nを検出している。
この回転角センサ27が検出するモータ回転数nに基づいて舵角θを検出する舵角演算手段34を備えている。
なお、舵角θを直接検出する舵角センサを設けてもよい。
まず、ハンドル戻し制御手段Sについて説明する。
舵角θに対する目標舵角速度を予め求め、舵角θに対する目標舵角速度ωmbの関係をマップとして予め目標舵角速度記憶手段35aに記憶しておき、目標舵角速度演算手段35がこの関係マップに基づき前記舵角演算手段34が演算した舵角θから目標舵角速度ωmbを抽出演算する。
図4に、目標舵角速度記憶手段35aが記憶する舵角θに対する目標舵角速度ωmbの関係を示す座標を図示する。
横軸が舵角θを示し、同横軸において原点が舵角0の中立位置で、原点より右が右舵角、左が左舵角である。
そして、縦軸が目標舵角速度ωmbを示し、同縦軸において原点が目標舵角速度0であり、原点より上方が右回転方向(ハンドルを右に切る方向)で、原点より下方が左回転方向(ハンドルを左に切る方向)である。
同座標に、舵角θに対する目標舵角速度ωmbの関係が曲線で表されている。
該関係曲線は、第2象限と第4象限に原点対称に滑らかな曲線で形成されている。
右舵角でみると、右舵角θが大きくなる程左操舵方向に目標舵角速度ωmbが大きくなり、舵角0から右舵角θが大きくなる初めのうちは目標舵角速度ωmbが急激に大きくなり、その後大きくなる割合が徐々に小さくなる曲線を描いている。
左舵角は右舵角と原点対称であり、左舵角θが大きくなる程右操舵方向に目標舵角速度ωmbが大きくなる。
目標舵角速度ωmbは、車速vに基づく車速乗算係数kvを乗算して補正する。
この車速乗算係数kvを演算する車速乗算係数演算手段36は、車速vに対する車速乗算係数kvの関係をマップとして記憶する車速乗算係数記憶手段36aを備え、前記車速センサ25の検出した車速vから同関係マップに基づき車速乗算係数kvを抽出演算する。
車速乗算係数記憶手段36aが記憶するマップを図5に示す。
車速vに対して車速乗算係数kvは、原点から車速vが大きくなる程大きくなり、車速10km/hで車速乗算係数kvは1.0を示し、車速vが小さいうちは急激に大きくなり、その後大きくなる割合が徐々に小さくなっている。
この車速乗算係数kvが乗算補正手段37により目標舵角速度ωmbに乗算されて最終目標舵角速度ωmが算出される。
車速乗算係数kvは、車速10km/h未満では1.0未満の値で目標舵角速度ωmbを抑制する方向に働き、車速10km/h以上では1.0以上の値で目標舵角速度ωmbを拡大する方向に働く。
一方で、前記舵角演算手段34が算出した舵角θは、舵角速度演算手段40によって時間微分されて実舵角速度ωが演算される。
この実舵角速度ωに対する前記最終目標舵角速度ωmの偏差Δω(=ωm−ω)を求め(図3の偏差演算手段41参照)、同偏差Δωを電流換算手段42が電流に換算してハンドル戻し補正電流値Isbが求められる。
この電流換算は、偏差Δωに所定の換算係数を乗算することで算出され、フィードバック制御される。
このハンドル戻し補正電流値Isbを乗算により補正する操舵トルク乗算係数ktを演算する操舵トルク乗算係数演算手段45が設けられており、同操舵トルク乗算係数演算手段45は、操舵トルクTに対する操舵トルク乗算係数ktの予め決められた関係をマップとして記憶する操舵トルク乗算係数記憶手段45aを備えている。
操舵トルク乗算係数記憶手段45aが記憶するマップを図6に示す。
横軸の原点より正側(右側)が右操舵トルク、負側(左側)が左操舵トルクで、縦軸が操舵トルク乗算係数ktである。
縦軸に対して対称であり、左右のトルク閾値−Tp,Tp間、すなわち−Tp<T<Tpの操舵トルク範囲では、操舵トルク乗算係数ktは1.0であり、トルク閾値範囲外(T<−Tp、Tp<T)では操舵トルク乗算係数ktは0である。
前記電流換算手段42が偏差Δωを換算したハンドル戻し補正電流値Isbに、この操舵トルク乗算係数ktが乗算手段46により乗算されて操舵トルクにより規制された最終ハンドル戻し補正電流値Isが算出される。
したがって、−Tp<T<Tpの操舵トルク範囲では操舵トルク乗算係数kt=1.0で最終ハンドル戻し補正電流値IsはIsbのままで、T<−Tp、Tp<Tのときはkt=0で最終ハンドル戻し補正電流値Isは0となる。
こうして求められた最終ハンドル戻し補正電流値Isが、前記操舵アシスト制御手段31が演算したアシストベース電流Ibに加算されて(図3の加算手段47参照)、アシストベース電流Ibが補正されるが、本操舵トルク制御装置30では、最終ハンドル戻し補正電流値Isが加算される前に、反力電流付加手段Aによる反力電流値Iaが加算される。
したがって、アシストベース電流Ibに反力電流値Iaが加算された後に最終ハンドル戻し補正電流値Isが加算されてアシスト目標電流Ioが得られる。
なお、アシストベース電流Ibに先に最終ハンドル戻し補正電流値Isが加算され、後で反力電流値Iaが加算されるようにしてもよい。
この補正されたアシスト目標電流IoによってアシストモータMが駆動制御される。
そこで、反力電流付加手段Aについて以下説明する。
車速v毎の舵角θに対する反力電流値Iaの関係マップを予め決めて反力電流記憶手段50aが記憶しており、反力電流演算手段50がこの反力電流記憶手段50aが記憶する関係マップに基づき前記舵角演算手段34が演算した舵角θと車速vから反力電流値Iaを抽出演算する。
図7に、反力電流記憶手段50aが記憶する車速v毎の舵角θに対する反力電流値Iaの関係を示す座標を図示する。
横軸が舵角θを示し、同横軸において原点が舵角0の中立位置で、原点より右が右舵角、左が左舵角である。
そして、縦軸が反力電流値Iaを示し、同縦軸において原点が反力電流値0であり、原点より上方が右回転方向(ハンドルを右に切る方向)にトルクを発生させる電流値を示し、原点より下方が左回転方向(ハンドルを左に切る方向)にトルクを発生させる電流値を示す。
舵角θに対する反力電流値Iaの関係曲線は、第2象限と第4象限に原点対称に滑らかな凸形状の曲線で形成されている。
すなわち、反力電流値Iaは舵角0の中立位置に戻す方向にトルクを発生させる電流値であり、舵角が0から大きくなるに従い反力電流値Iaが0から増加した後減少して0に至る特性を示している。
そして、この舵角θに対する反力電流値Iaの関係曲線は、任意に選択された車速毎に設定されており、車速が高い程前記反力電流値が低い値を示す。
反力電流値Iaが現れる舵角幅は相当程度狭い幅であり、小舵角で特に低車速旋回走行するときなどに、反力電流が出力されるものである。
反力電流演算手段50は、この関係マップに基づき舵角θと車速vから反力電流値Iaを抽出演算する。
なお、選択されていない車速vについての反力電流値は、その前後の選択されている車速の反力電流値から演算して求める。
したがって、小舵角で旋回走行するときは、舵角を中立位置に戻そうとする反力電流値Iaが出力される。
その反力電流値Iaは低車速ほど大きい。
この反力電流値Iaには、トルクレシオ演算手段51により操舵トルクTに基づき規制される。
トルクレシオ演算手段51は、操舵トルクTに対するトルクレシオrの予め決められた関係をマップとして記憶するトルクレシオ記憶手段51aを備えている。
トルクレシオ記憶手段51aが記憶するマップを図8に示す。
横軸の原点より正側(右側)が右操舵トルク、負側(左側)が左操舵トルクで、縦軸がトルクレシオrである。
操舵トルクTが0のとき、トルクレシオrは1.0を示し、操舵トルクTが0から左右ともに大きくなるに従いトルクレシオrが減少し、緩減して滑らかに0に至る。
このトルクレシオ記憶手段51aが記憶する操舵トルクTに対するトルクレシオrの関係マップに基づいてトルクレシオ演算手段51により抽出演算されたトルクレシオrが、乗算手段52により前記反力電流値Iaに乗算されることで反力電流が規制され、トルクレシオrが乗算された反力電流値Ia・rが、前記アシストベース電流Ibに加算手段53により加算される。
このように反力電流値Iaをトルクレシオrにより規制することで、積極的なハンドルの切込みや切戻し時には反力電流が影響しないようにしている。
したがって、トルクレシオrが0になる操舵トルクTの値は、明らかにハンドルの切込みまたは切戻しと判定できる程度に大きい値であって、前記図6に示す操舵トルクTに対する操舵トルク乗算係数ktの関係における操舵トルク乗算係数ktが0となるトルク閾値Tp(略手放し状態と判定できる最大操舵トルク)より相当程度大きい値である。
この反力電流値Ia・rが、アシストベース電流Ibに加算され、さらにハンドル戻し制御手段Sによる最終ハンドル戻し補正電流値Isが加算されてアシスト目標電流Io(=Ib+Ia・r+Is)とされ、アシストモータMの駆動に供される。
したがって、ハンドル戻し制御手段Sにより操舵トルクTが略手放し状態とすることができる小さいトルク閾値Tp以下のときには、アシストベース電流Ibに加算される修正電流Isにより低車速でもハンドルを中立位置まで戻すことができる
そして、小さい舵角を保舵して旋回走行するときは、反力電流付加手段Aにより反力電流値Ia・rがアシストベース電流値Ibに加算されているので、操舵トルクTが前記トルク閾値Tp以下となることはなく、ハンドル戻し制御手段Sによりハンドル戻し駆動の実行と停止が繰り返されることはなく、小舵角での操舵を安定して行うことができる。
反力電流付加手段Aの反力電流値Iaは、所要の小さい舵角に限定されて舵角θに対して滑らかな凸形状に変化するので、小舵角で旋回走行するときに保舵舵角が変化しても円滑に対処することができる。
また、車速が高い程反力電流値Iaは低い値を示すので、セルフアライニングトルクの低い低車速時に高い反力電流値とし、セルフアライニングトルクの高い高車速時に低い反力電流値とすることで、小舵角を保舵して旋回走行するときに、車速によってセルフアライニングトルクに過剰な反力電流のトルクがさらに加わることにより違和感(過剰に戻される感覚)が生じるのを防止している。
本発明の一実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の全体の概略後面図である。 ステアリングギアボックス内の構造を示す断面図である。 操舵トルク制御装置の概略ブロック図である。 舵角θに対する目標舵角速度ωmbの関係を示す座標である。 車速vに対する車速乗算係数kvの関係マップを示す図である。 操舵トルクTに対する操舵トルク乗算係数ktのマップを示す図である。 車速v毎の舵角θに対する反力電流値Iaの関係を示す座標である。 操舵トルクTに対するトルクレシオrの関係マップを示す図である。
符号の説明
M…アシストモータ、1…電動パワーステアリング装置、2…ラックハウジング、3…ラック軸、4…ステアリングギアボックス、5…入力軸、6…トーションバー、7…操舵ピニオン軸、8…ラックガイドスプリング、9…ラックガイド、10…ウオーム減速機構、11…ウオームホイール、12…ウオーム、
20…トルクセンサ、21…コア、22,23…コイル、25…車速センサ、26…モータ電流検出装置、27…回転角センサ、
30…操舵トルク制御装置、31…操舵アシスト制御手段、32…電流フィードバック制御手段、33…モータ駆動回路、34…舵角演算手段、
S…ハンドル戻し制御手段、35…目標舵角速度演算手段、35a…目標舵角速度記憶手段、36…車速乗算係数演算手段、36a…車速乗算係数記憶手段、37…乗算補正手段、40…舵角速度演算手段、41…偏差演算手段、42…電流換算手段、45…操舵トルク乗算係数演算手段、45a…操舵トルク乗算係数記憶手段、46…乗算手段、47…加算手段、
A…反力電流付加手段、50…反力電流演算手段、50a…反力電流記憶手段、51…トルクレシオ演算手段、51a…トルクレシオ記憶手段、52…乗算手段、53…加算手段。

Claims (2)

  1. 操舵トルク(T)および車速(v)に基づきアシストベース電流値(Ib)を算出する操舵アシスト制御手段(31)を備え、前記アシストベース電流値(Ib)に基づくアシスト目標電流(Io)に従ってアシストモータ(M)が駆動制御されて人力をアシストする電動パワーステアリング装置において、
    舵角(θ)を検出する舵角検出手段(34)と、
    前記舵角(θ)と前記車速(v)と前記操舵トルク(T)に基づいて操舵トルクが略手放し状態と判定することができる小さい閾値以下のときに前記アシストベース電流値(Ib)にハンドル戻し補正電流値(Is)を加算するハンドル戻し制御手段(S)と、
    前記車速(v)と前記舵角(θ)に基づいて小舵角時に舵角中立方向への戻し反力を与える反力電流値(Ia)を演算する反力電流演算手段(50)および前記操舵トルク(T)に基づいて前記反力電流値(Ia)を規制するトルクレシオ(r)を演算するトルクレシオ演算手段(51)を備え、前記反力電流値(Ia)に前記トルクレシオ(r)を乗算した反力電流値(Ia・r)を前記アシストベース電流値(Ib)に加算する反力電流付加手段(A)とを備え
    前記反力電流演算手段(50)は、舵角が0から大きくなるに従い反力電流値が0から増加した後減少して0に至る特性を車速(v)毎に予め記憶する反力電流記憶手段(50a)を有し、同反力電流記憶手段(50a)に基づき前記車速(v)と前記舵角(θ)から反力電流値(Ia)を抽出演算し、
    前記トルクレシオ演算手段(51)は、操舵トルク(T)が0のとき、トルクレシオ(r)は1.0を示し、操舵トルク(T)が0から左右ともに大きくなるに従いトルクレシオ(r)が減少し、緩減して滑らかに0に至る特性を記憶するトルクレシオ記憶手段(51a)を有し、同トルクレシオ記憶手段(51a)に基づき操舵トルク(T)からトルクレシオ(r)を抽出演算することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記反力電流記憶手段(50a)の記憶する特性は、車速(v)が高い程前記反力電流値(Ia)が低いことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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