JP4959203B2 - 発光素子及びその製造方法、並びにランプ - Google Patents
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Description
外部量子効率は、内部量子効率と光取り出し効率を掛け合わせたものとして表される。内部量子効率とは、素子に注入した電流のエネルギーのうち、光に変換される割合である。一方。光取り出し効率とは、半導体結晶内部で発生した光のうち、外部に取り出すことができる割合である。
しかしながら、ITOの屈折率は1.9とGaN系化合物半導体の2.6に比べて小さいので、ITOとGaN系化合物半導体の界面で全反射が生じてしまい、充分に光を取り出すことができない。
導電性を有する酸化チタンを透明電極に使用し、GaN系化合物半導体の表面には凹凸を形成せず、酸化チタンの表面に凹凸を形成することにより、発光素子の光取り出し効率を容易に向上させることができる。
しかしながら、酸化チタン系導電膜の表面に凹凸加工を施す場合、凹凸形状の加工制御が難しいため、酸化チタン系導電膜を必要以上にエッチングしてしまい、電流拡散特性が低下するという問題があった。
即ち、本発明は以下に関する。
[2] 前記第1層の、前記第2層側と反対側の面が凹凸形状とされていることを特徴とする[1]に記載の発光素子。
[3] 前記第1層に形成された凹凸形状がエッチングによって形成された凹凸であり、前記第1層は、前記第2層に用いられる材料よりもエッチング速度が速い材料からなることを特徴とする[2]に記載の発光素子。
[4] 前記第1層に形成された凹凸形状が、無秩序に形成された凹部と凸部とからなることを特徴とする[2]又は[3]に記載の発光素子。
[5] 前記凹部と凸部との高低差が35nm〜2000nmであることを特徴とする[4]に記載の発光素子。
[6] 前記酸化チタン系導電膜の第2層が、Tiと、Ta、Nb、V、Mo、W、Sbの群から選択される少なくとも1種類以上の元素とを含む酸化物であることを特徴とする[1]〜[5]の何れか1項に記載の発光素子。
[7] 前記酸化チタン系導電膜の第2層の膜厚が、35〜2000nmの範囲であることを特徴とする[1]〜[6]の何れか1項に記載の発光素子。
[8] 前記酸化チタン系導電膜の第1層が、Tiと、Ta、Nb、V、Mo、W、Sbの群から選択される少なくとも1種類以上の元素とを含む酸化物であることを特徴とする[1]〜[7]の何れか1項に記載の発光素子。
[9] 前記酸化チタン系導電膜の第1層の膜厚が、35〜2000nmの範囲であることを特徴とする[1]〜[8]の何れか1項に記載の発光素子。
[10] 発光素子が窒化物系半導体発光素子からなることを特徴とする[1]〜[9]の何れか1項に記載の発光素子。
[11] 前記窒化物系半導体発光素子がGaN系半導体発光素子であることを特徴とする[10]に記載の発光素子。
[13] n型半導体層、発光層、p型半導体層、酸化チタン系導電膜層をこの順で積層し、前記酸化チタン系導電膜層を、第1層と、該第1層の前記p型半導体層側に配した第2層とから形成してなる発光素子の製造方法であって、前記第1層を真空蒸着によって形成し、前記第2層をスパッタによって形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
[14] 前記工程(1)において、第2層を、300〜800℃の雰囲気温度下で真空蒸着して形成することを特徴とする[12]に記載の発光素子の製造方法。
[15] 前記工程(1)において、前記第2層を真空蒸着して形成した後、300〜800℃の温度で熱処理することを特徴とする[14]に記載の発光素子の製造方法。
[16] 前記第1層の、前記第2層側と反対側の面に凹凸形状を形成する凹凸形成工程を備えたことを特徴とする[12]〜[15]の何れか1項に記載の発光素子の製造方法。
[17] 前記凹凸形成工程は、ウェットエッチングによって凹凸形状を形成することを特徴とする[16]に記載の発光素子の製造方法。
[18] 前記凹凸形成工程は、エッチング溶液として、フッ酸、リン酸、硫酸、塩酸、フッ酸/硝酸混合液、フッ酸/過酸化水素水混合液、フッ酸/フッ化アンモニウム混合液、珪フッ化水素酸の群から選択される少なくとも1種類以上を用いてウェットエッチングを行なうことを特徴とする[17]に記載の発光素子の製造方法。
[20] [12]〜[18]の何れかに記載の発光素子の製造方法によって得られる発光素子を備えたことを特徴とするランプ。
従って、電流拡散特性、及び光取り出し効率に優れた発光素子が得られる。
また、本発明の発光素子の製造方法によれば、上述の構成により、電流拡散特性、及び光取り出し効率に優れた発光素子を製造することができる。
また、本発明のランプは、本発明の発光素子を用いたものであるので、優れた発光特性を持つものとなる。
但し、本発明は以下の実施形態の各々に限定されるものではなく、例えば、これら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせても良い。
図1は本発明の発光素子の断面を模式的に示した図である。
図1において、符号11は基板、12はn型半導体層、13は発光層、14はp型半導体層、15は酸化チタン系導電膜、16は光触媒反応防止層、17は正極、18は負極である。
本実施形態の発光素子1は、透明電極として酸化チタン系導電膜15が用いられ、該酸化チタン系導電膜15が、光取り出し層(第1層)15aと電流拡散層(第2層)15bとからなり、また、酸化チタン系導電膜15を覆うように光触媒反応防止層16が形成され、概略構成されている。
また、光触媒反応防止層16は、酸化チタン系導電膜15の直上か、あるいは、酸化チタン系導電膜15との間に他の透明膜(図示略)等を介し、酸化チタン系導電膜15を覆うように形成される。
以下、本実施形態の発光素子1について詳述する。
基板11としては、サファイア単結晶(Al2O3;A面、C面、M面、R面)、スピネル単結晶(MgAl2O4)、ZnO単結晶、LiAlO2単結晶、LiGaO2単結晶、MgO単結晶等の酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶及びZrB2等のホウ化物単結晶、等の基板材料が周知である。本発明においても、これら周知の基板材料を含めて、如何なる基板材料を何ら制限なく用いることができる。これらの中でも、サファイア単結晶及びSiC単結晶が特に好ましい。
なお、基板の面方位は特に限定されない。また、ジャスト基板でも良いしオフ角を付与した基板であっても良い。
上述の基板11上には、通常、図示略のバッファ層を介して、窒化物系化合物半導体からなるn型半導体層12、発光層13およびp型半導体層14が積層される。また、使用する基板やエピタキシャル層の成長条件によっては、バッファ層が不要である場合がある。
MOCVD法では、キャリアガスとして水素(H2)または窒素(N2)、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチルインジウム(TMI)またはトリエチルインジウム(TEI)、V族原料であるN源としてアンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)などが用いられる。また、ドーパントとしては、n型にはSi原料としてモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)を、Ge原料としてゲルマンガス(GeH4)や、テトラメチルゲルマニウム((CH3)4Ge)やテトラエチルゲルマニウム((C2H5)4Ge)等の有機ゲルマニウム化合物を利用できる。
MBE法では、元素状のゲルマニウムもドーピング源として利用できる。p型にはMg原料としては例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)またはビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を用いる。
下地層はAlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。下地層の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。膜厚を1μm以上とすることにより、結晶性の良好なAlXGa1―XN層が得られやすくなる。
また、nクラッド層のn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cm3の範囲が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の範囲である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
発光層13の膜厚としては、特に限定されないが、量子効果の得られる程度の膜厚、即ち臨界膜厚が好ましく、例えば1〜10nmの範囲であり、より好ましくは2〜6nmの範囲である。膜厚が上記範囲であると、発光出力の点で好ましい。
また、発光層は、上記のような単一量子井戸(SQW)構造の他、上記Ga1−sInsNを井戸層として、この井戸層よりバンドギャップエネルギーが大きいAlcGa1−cN(0≦c<0.3かつb>c)障壁層とからなる多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。また、井戸層および障壁層には、不純物をドープしてもよい。
pクラッド層としては、発光層のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層13へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AldGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)のものが挙げられる。pクラッド層が、このようなAlGaNからなると、発光層13へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。
pクラッド層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層のp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、p型ドーパントを1×1018〜1×1021/cm3の範囲の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましく、より好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の範囲である。
p型不純物としては、特に限定されないが、例えば、好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層の膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
本発明の酸化チタン系導電膜は、図1に示す例(符号15参照)のように、上層の光取り出し層15aと、該光取り出し層15aの、p型半導体層14側に配された、下層の電流拡散層15bとから構成され、p型半導体層14の直上、あるいはp型半導体層14上に図示略の金属層等を介して形成される。
この場合の酸化チタン系導電膜の組成としては、Ti1−xAxO2(A=Ta、Nb、V、Mo、W、Sb)とされたものを用いることが好ましい。また、この組成において、Xは1〜20at%の範囲とすることが好ましい。X=1at%未満であると、添加効果が小さく、良好な導電性が得られない。また、X=20at%を超えると、300〜550nmの波長における透過率が低下するため、発光素子の出力を低下させてしまう。さらに好ましくは、X=2〜10at%の範囲である。
また、それぞれの単体金属酸化物を、別々の蒸着源として成膜することも可能である。この方法を用いることにより、組成制御が容易になる利点がある。例えば、TiO2とTa2O5をそれぞれ別々の蒸着源で成膜し、任意のTi1−xTaxO2組成を作製することができる。
さらに、単体金属や合金金属を使用し、酸素ガスを導入して、プラズマ等を用いて反応性成膜をすることも可能である。例えば、TiとTaを別々の蒸着源で蒸発させ、プラズマでTiとTaを酸素ガスと反応させてTi1−xTaxO2組成を作製することができる。また、密着性や緻密さを向上させるため、基板加熱やイオンアシストを用いても良い。
また、それぞれの単体金属酸化物を別々のターゲットとして成膜することも可能である。この方法を用いることにより、組成制御が容易になる利点がある。例えば、TiO2とTa2O5を、それぞれ別々のターゲットで成膜し、任意のTi1−xTaxO2組成を作製することができる。
さらに、単体金属や合金金属を使用し、酸素ガスを導入して、反応性スパッタリング成膜をすることも可能である。例えば、TiとTaを別々のターゲットで放電させ、プラズマ中でTiとTaを酸素ガスと反応させてTi1−xTaxO2組成を作製することができる。また、密着性や緻密さを向上させるため、基板加熱やバイアスを用いても良い。
電流拡散層15bは、電流拡散機能を有する酸化チタン系導電膜からなるものであり、p型半導体層14の直上、あるいはp型半導体層の上に図示略の金属層などを介して形成される。電流拡散層15bとp型半導体層14との間に金属層を配した場合には、発光素子の駆動電圧(Vf)を低減させることができるが、透過率が減少して出力を低下させてしまう。従って、発光素子の用途等に応じて駆動電圧(Vf)と出力のバランスを取り、電流拡散層とp型半導体層との間に金属層等を設けるかどうか適宜判断する。電流拡散層とp型半導体層との間に金属層を配する場合、該金属層の材料として、NiやNi酸化物、Pt、Pd、Ru、Rh、Re、Os等からなるものを用いることが好ましい。
また、電流拡散層は、例えば、以下の2通りの方法で形成されることが好ましい。一つはスッパタ法によって成膜する方法であり、もう一つは真空蒸着法により成膜する方法である。
しかし、蒸着中に300℃〜800℃の温度で成膜するか、成膜後に300℃〜800℃で熱処理することにより、緻密で結晶性の高い膜を得ることができる。
なお、上記熱処理温度が300℃未満だと、結晶化を向上させる効果が小さく、800℃を越えると、窒化物系半導体素子にダメージを与えてしまう。
電流拡散層の膜厚は、薄すぎると電流拡散特性が落ちてしまい好ましくない。また、電流拡散層の膜厚が厚すぎると透過率が悪くなって出力が低下してしまう。よって、電流拡散層の膜厚は、35nm〜2000nmの範囲、より好ましくは50nm〜1000nmの範囲とし、最も好ましくは、100nm〜500nmの範囲とする。
光取り出し層15aは、光取り出し機能を有する酸化チタン系導電膜からなり、電流拡散層15bの上に形成される。なお、光取り出し層15aは、電流拡散層15bの直上に形成されてもよいし、光取り出し層15aと電流拡散層15bとの間には、図示略の金属層等を配した構成としても構わない。
発光素子の駆動電圧(Vf)を低減させるため、上述のように、光取り出し層15aと電流拡散層15bとの間に金属層などを成膜してもよいが、発光素子の透過率が低下して出力が低減するリスクがあるので、用途に応じたバランスによって決定する必要がある。光取り出し層15aと電流拡散層15bとの間に金属層を配置する場合、該金属層の材料として、NiやNi酸化物、Pt、Pd、Ru、Rh、Re、Os等からなるものを用いることが好ましい。
凹凸形状を形成する方法としては、ウェットエッチング、ドライエッチング等、従来公知のエッチング方法がいずれも適用可能であるが、酸化チタン系導電膜の結晶状態により、エッチング速度が大きく変化するウェットエッチングを用いることが好ましい。なお、マスクを用いて規則的に凹凸形状を形成することも可能であるし、エッチングだけで無秩序(ランダム)に凹凸形状を形成することも可能である。
また、光取り出し層の形成方法としては、光取り出し層をエッチングする際のエッチング速度が、電流拡散層のエッチング速度よりも速くなるように形成できる方法を用いることが望ましい。具体的には、光取り出し層の形成方法としては、例えば真空蒸着法を用いることが、アモルファス状または結晶性の低い膜を得ることが出来るので好ましい。
この特性を満足させる、エッチング後の光取り出し層の膜厚は35nm〜2000nmの範囲であり、好ましくは50nm〜1μmの範囲であり、より好ましくは100nm〜500nmの範囲である。なお、光取り出し層の膜厚は、光取り出し層の電流拡散層側の面(下面)から凸部の頂部までの高さと定義する。
凹部と凸部との高低差が小さ過ぎると、充分な光取り出し効率が得られない。また、凹部と凸部との高低差が大き過ぎると、光取り出し層の膜厚が厚くなり、透過率が悪くなって出力が低下してしまう。なお、凹部と凸部との高低差は、凹部の底部から凸部の頂部までの高さと定義する。
酸化チタン系導電膜15上に凹凸形状を形成した場合、その上に成膜する膜のステップカバレッジが問題となる。例えば、凹凸の斜面が急過ぎたり、アスペクト比が大き過ぎたり、また、凹凸の大きさが小さ過ぎる場合、酸化チタン系導電膜上に成膜する膜が凹凸に沿って成膜されず、空隙が生じてしまうことがある。空隙が生じると、その箇所の屈折率は1となるので、光取り出し効率の低下を招いてしまう。
具体的には、図4(b)に示すような斜面型の凸部、図4(c)に示すような曲面型の凸部等が好ましい例として挙げられる。斜面型の凸部の場合、基板法線に対して5度以上傾いていることが、ステップカバレッジが向上するので好ましい。但し、基板法線に対する傾きが大きすぎるとアスペクト比が取りにくくなるので、60度以下の角度とすることが好ましい。
本発明の光触媒反応防止層は、図1に示す例(符号16参照)のように、酸化チタン系導電膜15の直上か、あるいは、酸化チタン系導電膜15との間に他の透明膜等を介して形成される。
光触媒反応防止層16は、側面からの光触媒作用を防止するため、酸化チタン系導電膜15の側面を覆うように形成されていることが好ましい。
さらに、図2に示す発光素子2のように、光触媒反応防止層26が、n型半導体層22、発光層23、p型半導体層24の側面、及びp型半導体層24の上面外周部を覆うようにすれば、光触媒反応防止層26とp型半導体層24界面からの水分等の浸入による光触媒作用を防止できるのでさらに好ましい。また、正極27と酸化チタン系導電膜25との接合部からの、正極27側面への光触媒作用を防止するため、図示例のように、光触媒反応防止層26が正極27上面の外周部を覆うように形成されていることが好ましい。
本発明の光触媒反応防止層は、300〜550nmの範囲の波長において、80%以上の透過率を有する透光性物質からなることが好ましい。
また、光触媒反応防止層には、絶縁性透明膜、あるいは導電性透明膜の何れも用いることができる。
また、CVDでAl2O3を成膜する場合は、TMA(トリメチルアルミニウム)、DMA(ジメチルアルミニウム)、アルコキシ化合物(イソプロポキシジメチルアルミニウム、sec−ブトキシジメチルアルミニウム、イソプロポキシジエチルアルミニウム、tert−ブトキシジメチルアルミニウム)などを原料として用いることができる。
さらに、導電性透明膜を用いた場合、光触媒反応防止層とp型半導体との導通部分が、光触媒反応防止層をなす導電性透明膜の接触部分だけ増加するので、駆動電圧(Vf)の低減に有利である。
光触媒反応防止層の膜厚は、特に限定されるものではないが、10nm〜10μm(10000nm)の範囲であることが好ましい。光触媒反応防止層の膜厚が10nm未満であると、薄すぎて水分などの浸入を防ぐことができない。また、光触媒反応防止層の膜厚の上限は、特に限定されないが、生産性の点から10μmが上限と考えられる。
例えば、光触媒反応防止層16にSiO2(屈折率1.5)、Al2O3(屈折率1.6)を用いる場合、透明膜として、CeO2(屈折率2.2)、HfO2(屈折率1.9)、MgO(屈折率1.7)、ITO(屈折率1.9)、Nb2O5(屈折率2.3)、Ta2O5(屈折率2.2)、Y2O3(屈折率1.9)、ZnO(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.1)等を使用することができる。
但し、上述のような光触媒作用を弱める元素の添加量は、酸化チタン系導電膜の導電性と透過性を著しく損なうことの無い範囲とする必要がある。
正極17は、酸化チタン系導電膜15上に設けられるボンディングパッドであり、図1に示す例では、光触媒反応防止層16によって側面及び上面の周辺部が覆われている。
正極17の材料としては、Au、Al、NiおよびCu等を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。
正極17の厚さは、100〜10μmの範囲内であることが好ましい。また、ボンディングパッドの特性上、厚さが大きい方が、ボンダビリティーが高くなるため、正極17の厚さは300nm以上とすることがより好ましい。さらに、製造コストの観点から3μm以下とすることが好ましい。
このため、負極18を形成する際は、発光層13およびp型半導体層14の一部を除去してn型半導体層12のnコンタクト層を露出させ、この上に負極18を形成する。
負極18の材料としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
本発明の発光素子は、当業者周知の方法を用いてなんら制限無くLEDランプとして構成することができる。
図3は、本発明のランプの一例を模式的に示した断面図であり、このランプ5は、図2に示す本発明のフェイスアップ型の窒化物系半導体からなる発光素子2が砲弾型に実装されたものである。図3において、符号51、52はフレームを示し、符号53、54はワイヤー、符号55はモールドを示している。
また、本発明のランプは、一般用途の砲弾型、携帯のバックライト用途のサイドビュー型、表示器に用いられるトップビュー型等、何れの用途にも用いることができる。
図2に、本実験例で作製した窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面模式図を示すとともに、図5に、その平面模式図を示す。
まず、複数の発光素子の基板となる、サファイア製の基板21上に、MOCVD法によりAlNからなる図示略のバッファ層を介して、窒化ガリウム系化合物半導体層を積層した。
窒化ガリウム系化合物半導体層としては、図2に示すように、厚さ8μmのアンドープGaNからなる下地層、厚さ2μmのGeドープn型GaNコンタクト層及び厚さ0.02μmのn型In0.1Ga0.9Nクラッド層がこの順序で積層されたn型半導体層22、厚さ16nmのSiドープGaN障壁層及び厚さ2.5nmのIn0.06Ga0.94N井戸層を5回積層し、最後に障壁層を設けた多重量子井戸構造の発光層23、さらに厚さ0.01μmのMgドープp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層と厚さ0.18μmのMgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層がこの順序で積層されたp型半導体層24からなり、各層をこの順で積層して形成した。光取り出し面は半導体側とした。
上述のようにして得られた窒化ガリウム系化合物半導体層において、n型GaNコンタクト層のキャリア濃度は1×1019cm−3であり、GaN障壁層のSiドープ量は1×1017cm−3であり、p型AlGaNコンタクト層のキャリア濃度は5×1018cm−3であり、p型AlGaNクラッド層のMgドープ量は5×1019cm−3であった。
なお、上記窒化ガリウム系化合物半導体層の積層は、MOCVD法により、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。
次いで、反応性イオンエッチング装置のエッチング室内の電極上に半導体積層基板を載置し、エッチング室を10−4Paに減圧した後、エッチングガスとしてCl2を供給してn型GaNコンタクト層が露出するまでエッチングした。エッチング後、反応性イオンエッチング装置より取り出し、上記エッチングマスクを硝酸およびフッ酸により除去した。
次に、公知のフォトリソグラフィー技術及びリフトオフ技術を用いて、p型AlGaNコンタクト層表面の正極を形成する領域にのみ、Ti0.95Nb0.05O2からなる酸化チタン系導電膜を用いて、下記表1に示す条件(膜厚、成膜方法、熱処理条件)で電流拡散層を成膜した。実験例1においては、スパッタ法により、電流拡散層を200nmの膜厚で形成し、熱処理は行わなかった。
そして、上述のようにして形成した電流拡散層の結晶状態を調べ、下記表1に示した。
そして、形成した光取り出し層の結晶状態を調べ、下記表1に示した。
次いで、光取り出し層の表面に、公知のウェットエッチング技術を用いて凹凸形状を形成した。
この際、光取り出し層の表面を、フッ酸(濃度50%)と硝酸(濃度70%)とを1:8の比率で混合した混合液を用いて、常温(25℃)で5分間エッチングすることによって凹凸形状を形成し、表1に示す膜厚(エッチング後膜厚)、及び、凹部と凸部との高低差とした。ここで形成された凹凸形状は、凸部の平均直径が0.3μm、凸部の平均高さが0.3μm、凹部と凸部との間の距離の平均値が0.8μmであり、無秩序(ランダム)な凹凸形状であった。
(a)スキャン幅:10μm
(b)スキャンレート:1Hz
(c)測定回数:256
(d)モード:タッピングモード
次に、正極(ボンディングパッド)27および負極(ボンディングパッド)28を、以下のような手順で形成した。
まず、通常、リフトオフと呼ばれる周知の手順に則って処理し、さらに、同様の積層方法により、光取り出し層上の一部に、Auからなる第1の層、Tiからなる第2の層、Alからなる第3の層、Tiからなる第4の層、Auからなる第5の層を順に積層し、5層構造の正極を形成した。ここで、Au/Ti/Al/Ti/Auからなる各層の厚さは、それぞれ、50/20/10/100/500nmとした。
まず、レジストを、n型GaNコンタクト層の露出した領域全面に一様に塗布した後、公知のリソグラフィー技術を用いて、露出したn型GaNコンタクト層上の負極形成部分からレジストを除去した。そして、通常用いられる真空蒸着法により、半導体側から順に、Tiが100nm、Auが200nmの厚さとされた負極を形成した。その後、レジストを公知の方法により除去した。
次に、公知のフォトリソグラフィー技術及びリフトオフ技術を用いて、正極、負極の中心部を除いて、Al2O3からなる光触媒反応防止層をCVD法により500nm形成した。図2に示すように、光触媒反応防止層は正極側面、負極側面、および、発光層、n型半導体側面を覆うように成膜した。
このようにして、光触媒反応防止層まで形成したウエーハを、基板21裏面を研削・研磨することにより、基板21の板厚を80μmまで薄くして、レーザスクライバを用いて半導体積層側から罫書き線を入れた後、押し割って、350μm角のチップ(発光素子)に切断した。
上述のようにして得られたチップについて、プローブ針による通電を行い、20mAの印加電流における順方向電圧を測定し、駆動電圧(Vf)を調べ、下記表1に示した。
また、得られたチップをTO−18缶パッケージに実装し、テスターによって印加電流20mAにおける発光出力を計測し、下記表1に示した。
また、得られたチップの発光面の発光分布を調べた。その結果、正極上の全面で発光しているのが確認できた。
表1に示すように、電流拡散層をスパッタにより成膜し、光取り出し層を真空蒸着により成膜した実験例1〜9の発光素子は、印加電流20mAにおける発光出力が、全サンプルにおいて12.4mW以上であり、高い発光出力が得られた。また、実験例1〜9の発光素子は、駆動電圧(Vf)が、全サンプルにおいて3.6V以下と、充分に低い駆動電圧(Vf)であった。
これにより、電流拡散層をスパッタにより成膜し、光取り出し層を真空蒸着により成膜した実験例1〜9の発光素子は、ウェットエッチングによって光取り出し層の表面に凹凸形状を形成した場合でも、電流拡散層に対するダメージがほとんど無いことが確認できた。
この結果、駆動電圧(Vf)は3.4Vと低く抑えられているものの、発光出力が10.9mWと低いものとなり、電流拡散層の電流拡散作用が機能している一方、光取り出し層の光取り出し作用が充分に機能していないことが明らかとなった。
これにより、実験例12の発光素子は、電流拡散層及び光取り出し層ともに充分に機能していないことが明らかとなった。
さらに、電流拡散層の膜厚が上記範囲とされた実験例1〜10の発光素子では、全てのサンプルの発光出力が12.4mW以上となり、膜厚が2500nmと非常に厚く形成された実験例14の発光素子が10.7mWであるのに比べ、高い発光出力となっていることが明らかである。
さらに、光取り出し層のエッチング後の膜厚が上記範囲とされた実験例1〜10の発光素子では、光取り出し層の光透過率が高いため、エッチング後の膜厚が2400nmと非常に厚く形成された実験例16が10.8mWであるのに比べ、高い発光出力となっていることが明らかである。
Claims (20)
- n型半導体層、発光層、p型半導体層、酸化チタン系導電膜層がこの順で積層された発光素子であって、
前記酸化チタン系導電膜層が、粒状結晶からなる第1層と、該第1層の前記p型半導体層側に配され、柱状結晶からなる第2層とを有してなることを特徴とする発光素子。 - 前記第1層の、前記第2層側と反対側の面が凹凸形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
- 前記第1層に形成された凹凸形状がエッチングによって形成された凹凸であり、前記第1層は、前記第2層に用いられる材料よりもエッチング速度が速い材料からなることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
- 前記第1層に形成された凹凸形状が、無秩序に形成された凹部と凸部とからなることを特徴とする請求項2又は3に記載の発光素子。
- 前記凹部と凸部との高低差が35nm〜2000nmであることを特徴とする請求項4に記載の発光素子。
- 前記酸化チタン系導電膜の第2層が、Tiと、Ta、Nb、V、Mo、W、Sbの群から選択される少なくとも1種類以上の元素とを含む酸化物であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発光素子。
- 前記酸化チタン系導電膜の第2層の膜厚が、35〜2000nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の発光素子。
- 前記酸化チタン系導電膜の第1層が、Tiと、Ta、Nb、V、Mo、W、Sbの群から選択される少なくとも1種類以上の元素とを含む酸化物であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の発光素子。
- 前記酸化チタン系導電膜の第1層の膜厚が、35〜2000nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の発光素子。
- 発光素子が窒化物系半導体発光素子からなることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の発光素子。
- 前記窒化物系半導体発光素子がGaN系半導体発光素子であることを特徴とする請求項10に記載の発光素子。
- n型半導体層、発光層、p型半導体層、酸化チタン系導電膜層をこの順で積層し、前記酸化チタン系導電膜層を、第1層と、該第1層の前記p型半導体層側に配した第2層とから形成してなる発光素子の製造方法であって、
前記p型半導体層上に、電流拡散層としてなる第2層を形成する工程(1)と、
次いで、前記第2層上に、光取り出し層としてなる第1層を形成する工程(2)とを備え、
前記工程(1)において、第2層をスパッタによって形成し、前記工程(2)において、第1層を真空蒸着によって形成することを特徴とする発光素子の製造方法。 - n型半導体層、発光層、p型半導体層、酸化チタン系導電膜層をこの順で積層し、前記酸化チタン系導電膜層を、第1層と、該第1層の前記p型半導体層側に配した第2層とから形成してなる発光素子の製造方法であって、
前記第1層を真空蒸着によって形成し、前記第2層をスパッタによって形成することを特徴とする発光素子の製造方法。 - 前記工程(1)において、第2層を、300〜800℃の雰囲気温度下で真空蒸着して形成することを特徴とする請求項12に記載の発光素子の製造方法。
- 前記工程(1)において、前記第2層を真空蒸着して形成した後、300〜800℃の温度で熱処理することを特徴とする請求項14に記載の発光素子の製造方法。
- 前記第1層の、前記第2層側と反対側の面に凹凸形状を形成する凹凸形成工程を備えたことを特徴とする請求項12〜15の何れか1項に記載の発光素子の製造方法。
- 前記凹凸形成工程は、ウェットエッチングによって凹凸形状を形成することを特徴とする請求項16に記載の発光素子の製造方法。
- 前記凹凸形成工程は、エッチング溶液として、フッ酸、リン酸、硫酸、塩酸、フッ酸/硝酸混合液、フッ酸/過酸化水素水混合液、フッ酸/フッ化アンモニウム混合液、珪フッ化水素酸の群から選択される少なくとも1種類以上を用いてウェットエッチングを行なうことを特徴とする請求項17に記載の発光素子の製造方法。
- 請求項1〜11の何れか1項に記載の発光素子を備えたことを特徴とするランプ。
- 請求項12〜18の何れかに記載の発光素子の製造方法によって得られる発光素子を備えたことを特徴とするランプ。
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