以下の説明において、「第1の実施形態」とあるのは、「参考例」と読み替えるものとする。
本発明の第1の実施形態に係る衝突検知構造としての側突検知システム10について、図1〜図7に基づいて説明する。先ず、側突検知システム10が適用された車両としての自動車11の側突用乗員保護システム12の概略構成を説明し、次いで、側突検知システム10について説明することとする。なお、図中に記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印INは車幅方向内側を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示すものとする。
(側突用乗員保護システムの概略構成)
図7には、自動車11の前部が模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く側突用乗員保護システム12は、左右のシート14に対する車幅方向外側に配設された側突用エアバッグ装置15を備えている。側突用エアバッグ装置15は、自動車11に側面衝突が生じた場合に、インフレータ等のエアバッグ駆動装置15Aを作動させることで対応するシート14の乗員の車幅方向外側でエアバッグ15Bを展開させて該乗員を保護するようになっている。側突用エアバッグ装置15としては、カーテンエアバッグ、サイドエアバッグ、又はこれらの組み合わせ等を採用することができる。
左右の側突用エアバッグ装置15の作動は、制御装置としてコントローラ(ECU)16によって制御されるようになっている。コントローラ16は、例えばフロアトンネル18等の自動車11における車幅方向中央部に配置されており、この実施形態では前突用や後突用など他のエアバッグ装置やシートベルト装置の作動を制御するようになっている。
コントローラ16は、ローパスフィルタ30とCPU32とを有し、加速度センサとしての側突検出用Gセンサ20を備えた側突検知システム10の一部を構成しており、該側突検出用Gセンサ20からの信号に基づいて側突用エアバッグ装置15の作動を制御する構成とされている。側突検出用Gセンサ20は、例えばフロアトンネル18等の自動車11における車幅方向中央部に配置されている。すなわち、この実施形態では、フロアトンネル18における側突検出用Gセンサ20の設置部位が本発明における加速度検出部に相当する。なお、側突検出用Gセンサ20は、コントローラ16に内蔵されていても良い。
(側突検知システムの構成)
側突検知システム10は、フロアトンネル18に配置された側突検出用Gセンサ20に対し側面衝突に伴う荷重を2段階で伝達するための2段階荷重伝達部としての2段階荷重伝達構造22を有する。2段階荷重伝達構造22は、図2(A)に示される如く側面衝突の発生で1段目の荷重が立ち上がった後に2段目の荷重がさらに立ち上がる構成、又は図2(B)に示される如く側面衝突で1段目の荷重が徐々に立ち上がった後に2段目の入力で荷重変化率が増加する構成とすることができる。
図7に示される如く、2段階荷重伝達構造22は、左右のシート14に対する車幅方向外側にそれぞれ位置するサイドドア24にそれぞれ設けられている。具体的には、図1に示される如く、2段階荷重伝達構造22は、サイドドア24を構成するインパクトビーム26に対する車幅方向外側に、一次荷重伝達部材28を設けて構成されている。一次荷重伝達部材28は、例えばポリウレタンフォーム等の発泡材にてブロック状に形成されている。この一次荷重伝達部材28は、サイドドア24を構成するアウタパネル24A(衝突体)とインパクトビーム26との間に所定の空間(インパクトビーム26に当接するまでの空走区間を除くストロークSp(図示せず))を確保する構成とされている。
これにより、2段階荷重伝達構造22は、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達部材28からインパクトビーム26への荷重伝達が果たされ、一次荷重伝達部材28が潰れてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体(アウタパネル24A)からインパクトビーム26に直接的に荷重伝達が果たされるようになっている。この実施形態に係る2段階荷重伝達構造22は、図2(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。
そして、側突検知システム10では、1段目又は2段目にインパクトビーム26に入力された荷重は、自動車11の車体(ロッカ、フロアクロスメンバ等)を介して、側突検出用Gセンサ20の設置部位であるフロアトンネル18に伝達されるようになっている。上記したストロークSpは、この車体の伝達特性H又はコントローラ16を構成するローパスフィルタ30の特性に応じて、所定の衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に1段目の荷重伝達の開始時と2段目の荷重伝達の開始時との間に所定の時間差ΔTが生じるように設定されている。
具体的には、車体(ボデー)が比較的低い共振(周波数特性における加速度のピーク)を有する場合には、図4(A)に示される如く、その共振周波数を荷重伝達のピーク周波数Fpとし、車体が大きな共振を有しない場合には、図4(B)に示される如く、ローパスフィルタ30の特性で決まるピーク周波数Fpを用いて、時間差ΔTを設定している。この実施形態では、時間差ΔTは、ピーク周波数Fpの逆数(周波数Fpの振動の周期)として設定されている。この実施形態では、時間差ΔTは、略5[msec]である。
したがって、側突検知システム10では、衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に、1段目の荷重伝達で生じた加速度と、2段目の荷重伝達で生じた加速度とにはピーク周波数Fpの1周期分の位相差が生じる設定とされている。すなわち、側突検知システム10では、1段目の荷重伝達で生じた加速度の2回目の極大側ピークに、2段目の荷重伝達で生じた加速度の1回目の極大側ピークが重ね合わされるようになっている。換言すれば、図5(A)に示される如く加速度αの2回目のピークが増幅されるようになっている。
なお、衝突速度Vpは、側突用エアバッグ装置15の作動が要求される最低の衝突速度に近い速度として設定されている。すなわち、衝突速度Vpは、それよりも低い(後述する加速度増幅が期待できないほど低い)衝突速度では側突用エアバッグ装置15の作動が不要であり、それよりも高い(後述する加速度増幅が期待できないほど高い)衝突速度では加速度αの1回目のピークにて側面衝突を検出し得ることを考慮して、上記の如く設定されている。
以上により、側突検知システム10では、図3に示される如く、側面衝突に伴う荷重Fが2段階荷重伝達構造22を含むボデー伝達特性Hを介して側突検出用Gセンサ20に伝達され、側突検出用Gセンサ20の出力信号がコントローラ16のローパスフィルタ30を介してCPU32に入力され、該CPU32にて側面衝突が判断されるようになっている。したがって、CPU32(コントローラ16)は、本発明における衝突判断部に相当する。また、側突用乗員保護システム12では、CPU32は、この判断結果に基づいて側突用エアバッグ装置15の作動を制御するようになっている。
CPU32による衝突の判断について補足すると、2段階荷重伝達構造22によって側突検出用Gセンサ20に対し時間差ΔTをあけた2段階で荷重が伝達される側突検知システム10では、上記の通り1段目の荷重伝達で生じた加速度の2回目の極大側ピークに、2段目の荷重伝達で生じた加速度の1回目の極大側ピークが重ね合わされるので、側突検出用Gセンサ20の出力信号(加速度α)は、図5(A)に示される如く、2回目のピークP2が1回目のピークP1に対し大きくなる。
CPU32には、衝突速度Vpの場合に想定される1回目のピークP1よりも大きく、2回目のピークP2よりも小さい加速度が閾値αtとして設定されている。また、αtは、サイドドア24によるドア開口部の閉止に伴う想定最大荷重により生じる加速度よりも大きく設定されている。したがって、CPU32では、加速度αが閾値αtを越えたことに対応する信号が側突検出用Gセンサ20から入力されることが、側面衝突発生を検出する必要条件とされている。
次に、第1の実施形態の作用を、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の側突検知システム10では、CPU32は、ステップS10で側突検出用Gセンサ20からの信号を読み込み、ステップS12で側突検出用Gセンサ20からの信号に対応する加速度αが閾値αtを越えたか否かを判断する。CPU32は、加速度αが閾値αtを越えていないと判断した場合、ステップS10に戻る。
一方、CPU32は、ステップS12で加速度αが閾値αtを越えたと判断した場合、ステップS14に進み側突用エアバッグ装置15を作動させる。すなわち、CPU32は、側面衝突が生じたと判断した場合に側突用エアバッグ装置15を作動させる。これにより、自動車11の乗員が側面衝突に対し保護される。
ここで、側突検知システム10は、2段階荷重伝達構造22を備えるため、設定された衝突速度Vpに近い速度で側面衝突が生じた場合には、側突検出用Gセンサ20によって検出される加速度には、図5(A)に示される如く1回目のピークP1よりも高い2回目のピークP2が生じる。この2回目のピークP2に至る過程の加速度αが閾値αtを越えるか否かで、側面衝突(側突用エアバッグ装置15を作動させるべき側面衝突)を検出することができる。
例えば、サイドドア24によるドア閉じの場合、サイドドア24の質量mを20[kg]、ドア閉じの速度Vdを50[km/h](≒14[m/s])、ドア閉じの荷重Fdを10[kN]とすると、運動量保存則
m × Vd = ∫(Fd×T)dt
より、T≒28[msec]となる。この時間Tは、上記の通りΔT≒5[msec]である側突検知システム10における衝突速度がVpの場合に衝突開始から2回目のピークP2が生じるまでの時間T≒7.5[msec]に対し十分に長く、1段の荷重入力として捉えられる。したがって、図5(B)に示される如く、サイドドア24のドア閉じによっては、1回目のピークP1よりも高い2回目のピークP2は生じない。また、ドア閉じの場合は、時間T≒28[msec]の経過後、荷重が立ち下がるので、αtを超える加速度は生じない。
このように、側突検知システム10では、側面衝突による荷重のみ所定の時間差ΔTをあけた2段階で側突検出用Gセンサ20に伝達する2段階荷重伝達構造22を設けたため、ドア閉じの如き単純な1段階の荷重入力では側突検出用Gセンサ20に作用する加速度αが閾値αtを超えず、側面衝突のみを検出することができる。すなわち、側突検知システム10では、単一の側突検出用Gセンサ20で、車幅方向一方側における側面衝突とドア閉じ等とを判別(区別)することができる。
また、側突検知システム10では、側面衝突の速度が所定の衝突速度Vpに対し大幅に大である場合には、1回目のピークP1でαtを超える加速度が得られるので、より短時間で側突用エアバッグ装置15を作動させることができる。一方、側面衝突の速度が所定の衝突速度Vpに対し大幅に小である場合には、すなわち軽衝突の場合には、2段目の伝達荷重による加速度のピークが1段目の伝達荷重による加速度の2回目にピークから大きくずれ、2回目のピークP2でαtを超えることなく側突用エアバッグ装置15が不作動とされる。
(衝突判断の変形例)
上記した第1の実施形態では、CPU32は加速度αが閾値αtを越えたか否かに基づいて側面衝突(側突用エアバッグ装置15の作動可否)を判断する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図8に示される如く、CPU32は、2回目のピークP2に向かう加速度α2と1回目のピークP1での加速度α1との差分(α2−α1)が閾値Δαtを超えたか否かによって、側面衝突(側突用エアバッグ装置15の作動可否)を判断するように構成されても良い。
この場合、CPU32では、ステップS12に代えて、図8に示すステップS16で、上記差分(α2−α1)が閾値Δαtを超えたか否かを判断し、超えないと判断した場合にはステップS10に戻り、超えたと判断した場合にはステップS14に進む。この構成は、例えば、側突検出用Gセンサ20への伝達荷重が小さく加速度αの絶対値での判断が難しい場合に採用することができる。
(2段階荷重伝達構造の変形例)
上記した実施形態では、インパクトビーム26の車幅方向外側に一次荷重伝達部材28を配置することで、サイドドア24に2段階荷重伝達構造22を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図9〜図14に示される如く、各種変形例を採用することができる。
図9には、第1変形例に係る2段階荷重伝達構造35が示されている。2段階荷重伝達構造35は、インパクトビーム26に代えて設けられた円筒形状(パイプ状)のインパクトビーム34と、発泡材等より成り該インパクトビーム34の車幅方向外側でアウタパネル24Aに固定された一次荷重伝達部材36とを主要部として構成されている。この2段階荷重伝達構造35は、図2(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造35を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造22を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図10には、第2変形例に係る2段階荷重伝達構造40が示されている。2段階荷重伝達構造40は、サイドドア24を構成するインナパネル24Bの下部に、車体骨格部材であるロッカ42側に突出するように一次荷重伝達部材44を設けることで構成されている。一次荷重伝達部材44は、例えばポリウレタンフォーム等の発泡材にて緩衝材(EA材)として構成されている。この2段階荷重伝達構造40では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達部材44からロッカ42を介した荷重伝達が果たされ、一次荷重伝達部材44が潰れてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的にロッカ42を介して荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造40は、図2(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造40を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造22を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図11(A)には、第3変形例に係る2段階荷重伝達構造45が示されている。2段階荷重伝達構造45は、インパクトビーム46の形状によって構成されている。具体的には、インパクトビーム46は、アウタパネル24Aに対向する外壁46Aと、外壁46Aの車両上下方向の両端からそれぞれ車幅方向内向きに延設された上壁46B、下壁46Cと、上壁46B及び下壁46Cの車幅方向内端から車両上下方向に沿って延設された上下一対のフランジ部46Dとを有し、上下一対のフランジ部46Dにおいてサイドドア24に固定されている。そして、図11(B)にも示される如く、車幅方向に延在する上壁46B、下壁46Cには、インパクトビーム46の長手方向に沿って複数の切抜き部48が設けられている。複数の切抜き部48は、上壁46B、下壁46Cの脆弱部を構成している。この変形例では、上下一対のフランジ部46Dと、上壁46B及び下壁46Cにおける切抜き部48よりも車幅方向内側部分とが、インパクトビーム26等の同等の強度、剛性を有するインパクトビーム本体として捉えることができる。
この2段階荷重伝達構造45では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、外壁46Aから上壁46B、下壁46C、上下一対のフランジ部46D(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされ、切抜き部48の形成部位において上壁46B、下壁46Cが潰れてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的に上下一対のフランジ部46D(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造45は、図2(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造45を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造22を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図12には、第4変形例に係る2段階荷重伝達構造50が示されている。2段階荷重伝達構造50は、インパクトビーム52の形状によって構成されている。具体的には、インパクトビーム52は、サイドドア24に固定される基部52Aにおける車両上下方向の両端側から上下一対の凸部52Bが車幅方向外向きに突設されると共に、基部52Aにおける上下一対の凸部52B間から該凸部52Bよりも車幅方向外側まで一次荷重伝達凸部52Cが突設されて構成されている。基部52Aは、上下両端でサイドドア24に固定され、一対の凸部52Bと一次荷重伝達凸部52Cとの間の部分はサイドドア24に対しフリーとされている。この変形例では、基部52Aと一対の凸部52Bとが、インパクトビーム26等の同等の強度、剛性を有するインパクトビーム本体として捉えることができる。
この2段階荷重伝達構造50では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達凸部52Cから基部52A(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされ、基部52Aにおける一次荷重伝達凸部52Cと上下一対の凸部52Bの間の部分が延ばされてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的に上下一対の凸部52B(インパクトビーム本体)にを介した荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造50は、図2(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造50を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造22を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図13には、第5変形例に係る2段階荷重伝達構造55が示されている。2段階荷重伝達構造55は、インパクトビーム56の形状によって構成されている。具体的には、インパクトビーム56は、サイドドア24に固定される基部56Aにおける車両上下方向の中央部から一次荷重伝達凸部56Bが車幅方向外向きに突設されて構成されている。基部56Aは、上下両端でサイドドア24に固定され、該固定部位と一次荷重伝達凸部56Bとの間はサイドドア24に対しフリーとされている。この変形例では、基部56Aが、インパクトビーム26等の同等の強度、剛性を有するインパクトビーム本体として捉えることができる。
この2段階荷重伝達構造55では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達凸部56Bから基部56A(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされ、基部56Aにおける一次荷重伝達凸部56Bとの間の部分が延ばされてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的に基部56A(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造55は、図2(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造55を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造22を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図14には、第6変形例に係る2段階荷重伝達構造60が示されている。2段階荷重伝達構造60は、インパクトビーム62の形状(構造)によって構成されている。具体的には、インパクトビーム62は、車幅方向内向きに開口する断面形状を有するインナビーム62Aと、車幅方向外向きに開口する断面形状を有するアウタビーム62Bとが互いに接合されて構成されている。インナビーム62Aは、車幅方向の内側に向けて開口幅が徐々に増すように形成されており、該車幅方向内側の開口端においてサイドドア24(を介して車体)に荷重伝達可能に支持されている。アウタビーム62Bは、車幅方向の外側に向けて開口幅が徐々に増すように形成されている。したがって、インナビーム62A、アウタビーム62Bの車幅方向に延在する各傾斜壁62Cは板ばねの機能を有し、インパクトビーム62は、各傾斜壁62Cが鉛直方向に沿うまで変形された状態で、インパクトビーム26等の同等の強度、剛性を有する構成とされている。
この2段階荷重伝達構造60では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、インナビーム62A、アウタビーム62Bの各傾斜壁62Cが上下に離間するように変形されつつサイドドア24への低弾性的な荷重伝達が果たされ、該変形によってストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から変形後のインパクトビーム62を介した高弾性的(剛性的)な荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造60は、図2(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造60を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造22を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
説明は省略するが、本発明に係る荷重伝達構造としての2段階荷重伝達構造は、上記の他にも各種の構成を採ることができる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分には上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
(第2の実施形態)
図20には、本発明の第2の実施形態に係る側突検知システム70が適用された自動車11の前部が模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、側突検知システム10は、2段階荷重伝達構造22に代えて荷重伝達構造としての2段階荷重伝達構造72を備える点で、側突検知システム10とは異なる。
2段階荷重伝達構造72は、フロアトンネル18に配置された側突検出用Gセンサ20に対し側面衝突に伴う荷重を2段階で伝達する構成とされている。第2の実施形態に係る2段階荷重伝達構造72は、図17(A)に示される如く側面衝突の発生で1段目の荷重が立ち上がった後に2段目で荷重が立ち下がる構成、又は図17(B)に示される如く側面衝突で1段目の荷重が立ち上がった後に2段目で荷重変化率が減少する構成とすることができる。以下、具体的に説明する。
2段階荷重伝達構造72は、図15(A)に示される如く、サイドドア24のインパクトビーム74の形状(構造)によって構成されている。インパクトビーム74は、車幅方向外端に位置する外側壁74Aと、外側壁74Aの車両上下方向両端から該車幅方向の内側に向けて徐々に上下に離間されるように傾斜して延設された上下一対の傾斜壁74Bと、一対の傾斜壁74Bの車幅方向内端から車両上下方向に沿って互いの近接側に延設された一対の内側壁74Cと、一対の内側壁74Cの末端から車幅方向内向きに延設され互いに接合された一対のフランジ74Dとを有する閉断面構造体とされている。このインパクトビーム74は、一対の内側壁74Cにおいてサイドドア24(を介して車体)に荷重を伝達するように支持されている。一対のフランジ74Dは、所定の荷重が車両上下方向に作用した場合に、図15(B)に示される如く、互いの接合が解除される(剥がれる)ように、スポット溶接等にて接合されている。
これにより、2段階荷重伝達構造72は、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、図16(A)にも示される閉断面構造体としてのインパクトビーム74を介した車体への荷重伝達が果たされ、外側壁74Aへの車幅方向内向きの荷重によって図16(B)に矢印Aにて示される如く一対の傾斜壁74Bが互いの車幅方向内端を離間させるように変形することで、図15(B)に示される如く一対のフランジ74Dの接合が剥がれると、2段目の荷重伝達として、開断面構造体としてのインパクトビーム74を介した車体への荷重伝達が果たされるようになっている。この2段階荷重伝達構造72は、図17(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。なお、図16(B)は、ポール側突の場合を例示している。
そして、側突検知システム70では、自動車11の車体の伝達特性H又はコントローラ16を構成するローパスフィルタ30の特性に応じて、所定の衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に1段目の荷重立ち上がりの開始時と2段目の荷重立下り(一対のフランジ74Dの接合剥がれ)の開始時との間に、所定の時間差ΔT/2(≒2.5[msec]が生じるように、2段階荷重伝達構造72の材質、寸法形状等が決められている。
したがって、側突検知システム70では、衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に、1段目の荷重伝達で生じた加速度と、2段目の荷重伝達で生じた加速度とには半周期の位相差が生じる設定とされている。すなわち、側突検知システム70では、1段目の荷重伝達(立ち上がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークに、2段目の荷重伝達(立ち下がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークが重ね合わされるようになっている。これにより、側突検知システム70では、図18に示される如く加速度αの1回目の極小側ピークP3が負側に振れるようになっている。
また、側突検知システム70では、CPU32に代えて設けられたCPU76(図20参照)がコントローラ16を構成している。CPU76には、負の加速度が閾値αtとして設定されている。したがって、CPU76では、加速度αが閾値αtを下回った(加速度αの絶対値が負側において閾値αtの絶対値を超えた)ことに対応する信号が側突検出用Gセンサ20から入力されることが、側面衝突発生を検出する必要条件とされている。なお、以下の説明では、負の加速度αと閾値αtの大小の比較は、絶対値の比較とし、単に「加速度αが閾値αtを超えた」のように記載することとする。
そして、CPU76では、加速度αが閾値αtを超えたことの他に、衝撃の入力から加速度αが閾値αtを超えるまでの時間が所定時間内であることとが、側面衝突発生を検出する十分条件として設定されている。すなわち、上記の通りΔT≒5[msec]である側突検知システム70では、衝突開始から1回目の極小側ピークP3が生じるまでの時間が略5[msec]であることを考慮して、例えば衝撃の入力から加速度αが閾値αtを超えるまでの時間Tが基準時間Tt(この実施形態では、7.5[msec])を超えた場合には、想定される側面衝突以外に起因する加速度と判断し、側突用エアバッグ装置15を作動させない構成とされている。なお、側突用エアバッグ装置15の作動の必要条件として、例えばシート14への乗員の着座等の条件を適宜加えることができる。
次に、第2の実施形態の作用を、図19に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の側突検知システム70では、CPU76は、ステップS20で、側突検出用Gセンサ20からの信号を読み込み、ステップS22に進む。ステップS22でCPU76は、側突検出用Gセンサ20からの信号に基づいて、衝撃の入力(1段目の入力)があったか否かを判断する。具体的には、衝撃入力の閾値をαs(図18参照)とし、側突検出用Gセンサ20からの信号に対応する加速度αが閾値αsを超えた場合(α>αs)に、衝撃の入力があったと判断する。CPU76は、衝撃の入力がなかったと判断した場合、ステップS20に戻り、衝撃の入力があったと判断した場合、ステップS24に進んで内蔵のタイマをスタートさせる。
さらに、CPU76は、ステップS26に進み、衝撃の入力からの経過時間Tが基準時間Ttを超えていないか否かを判断する。上記経過時間Tが基準時間Ttを越えたと判断した場合CPU76は、ステップS28でタイマをリセットしてステップS20に戻る。一方、ステップS26で衝撃の入力からの経過時間Tが基準時間Ttを超えていないと判断した場合、CPU76は、ステップS30に進み側突検出用Gセンサ20からの信号を読み込む。
次いで、CPU76は、ステップS32に進み、側突検出用Gセンサ20からの信号に対応する加速度αが閾値αtを越えたか否かを判断する。CPU76は、加速度αが閾値αtを越えていないと判断した場合、ステップS26に戻る。一方、CPU76は、加速度αが閾値αtを越えたと判断した場合、ステップS34に進み、側突用エアバッグ装置15を作動させる。すなわち、CPU76は、側面衝突が生じたと判断した場合に側突用エアバッグ装置15を作動させる。これにより、自動車11の乗員が側面衝突に対し保護される。
ここで、側突検知システム10は、2段階荷重伝達構造72を備えるため、設定された衝突速度Vpに近い速度で側面衝突が生じた場合には、側突検出用Gセンサ20によって検出される加速度αには、図18に示される如く負の加速度が生じる。この加速度αが負側において閾値αtを超えるか否かで、側面衝突(側突用エアバッグ装置15を作動させるべき側面衝突)を検出することができる。
第1の実施形態において説明した通り、サイドドア24のドア閉じの荷重が作用する時間Tは、T≒28[msec]となり、1段の荷重入力として捉えられる。仮に、T≒28[msec]の経過後に立ち下がった荷重により、加速度αが負になる(αtを超える)時間帯が生じたとしても、基準時間Ttの経過後になるため、側突検知システム70において側面衝突として誤検出することがない。同様に、側突用エアバッグ装置15の作動が要求されない程度の低速度での側面衝突すなわち軽衝突が生じた場合には、2段目の加速度の重ね合わせにより加速度αが負になる時間帯が生じたとしても、基準時間Ttの経過後になるので、側突用エアバッグ装置15が作動されることがない。すなわち、側突検知システム70では、軽衝突を区別することができる。
このように、側突検知システム70では、側面衝突による荷重のみ所定の時間差ΔT/2をあけた2段階で側突検出用Gセンサ20に伝達する2段階荷重伝達構造72を設けたため、ドア閉じの如き単純な1段階の荷重入力では側突検出用Gセンサ20に作用する加速度αが閾値αtを超えず、側面衝突のみを検出することができる。すなわち、側突検知システム70では、単一の側突検出用Gセンサ20で、車幅方向一方側における側面衝突とドア閉じ等とを判別(区別)することができる。
また、側突検知システム70では、1段目の荷重伝達(立ち上がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークに、2段目の荷重伝達(立ち下がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークが重ね合わされるように2段階荷重伝達構造72が構成されているため、側突検知システム10に対し略半周期分(2.5[msec]程度)だけ短時間で側面衝突を検知することができる。
(2段階荷重伝達構造の変形例)
上記した第2の実施形態では、インパクトビーム74を所定の荷重で閉断面構造体から開断面構造に変化される構造とすることで、サイドドア24に2段階荷重伝達構造72を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図21〜図23に示される如く、各種変形例を採用することができる。
図21(A)には、第1変形例に係る2段階荷重伝達構造80が示されている。2段階荷重伝達構造80は、サイドドア24のインパクトビーム82の形状(構造)によって構成されている。インパクトビーム82は、車幅方向内端でサイドドア24に固定されたインナパネル82Aと、該インナパネル82Aに接合されたアウタパネル82Bとで閉断面構造体を成している。この実施形態では、車幅方向内向きに開口する断面略ハット形状とされたアウタパネル82Bのフランジが平板状のインナパネル82Aに接合されることで閉断面が構成されている。また、インパクトビーム82は、その図心(図示省略)近傍を通り車両上下方向に沿って延在する内部壁82Cを有する。
この2段階荷重伝達構造80では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、図21(B)に示される如く、1段目の荷重伝達として、インナパネル82Aとアウタパネル82Bとで構成される閉断面構造体としてのインパクトビーム82を介して車体への荷重伝達が果たされる。この際、インナパネル82Aには、インパクトビーム82の曲げに伴う引張荷重が作用し、アウタパネル82Bにおける車幅方向外側部分にはインパクトビーム82の曲げに伴う圧縮荷重が主に作用する。そして、図21(C)に示される如く、圧縮を受けたアウタパネル82Bにおける車幅方向に延在する上下一対の水平壁82Dの車幅方向外側部分が座屈されると、2段目の荷重伝達として、インナパネル82Aと一対の水平壁82Dの車幅方向内側部分と内部壁82Cとで構成される閉断面構造体にて荷重伝達が果たされる。この際、元の閉断面構造体に対し断面(断面係数)が縮小されるので、伝達荷重が低減される。この変形例に係る2段階荷重伝達構造80は、図17(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造80を備えた側突検知システム70によっても、2段階荷重伝達構造72を備えた側突検知システム70と同様の作用効果を得ることができる。
図22には、第2変形例に係る2段階荷重伝達構造85が示されている。2段階荷重伝達構造85は、サイドドア24を構成するインナパネル24Bの下端にロッカ42に向けて突出するように設けられた凸部86と、ロッカ42に形成された切抜き部42Aを塞ぐように該ロッカ42に接合された受け板88とを有して構成されている。受け板88は、所定値以上の荷重によってロッカ42に対する接合が解除される(剥がれる)構成とされている。この2段階荷重伝達構造85では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、凸部86、受け板88を介してサイドドア24からロッカ42を介して荷重が伝達され、受け板88のロッカ42に対する接合が剥がれると、2段目の荷重伝達として、立ち下がるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造85は、図17(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造80を備えた側突検知システム70によっても、2段階荷重伝達構造72を備えた側突検知システム70と同様の作用効果を得ることができる。
図23には、第3変形例に係る2段階荷重伝達構造90が示されている。この図に示される如く、2段階荷重伝達構造90は、インパクトビーム74と略左右対称に構成されたインパクトビーム92を主要部として構成されている。
すなわち、インパクトビーム92は、内側壁92Aと、内側壁92Aの車両上下方向両端から該車幅方向の外側に向けて徐々に上下に離間されるように傾斜して延設された上下一対の傾斜壁92Bと、一対の傾斜壁92Bの車幅方向外端から車両上下方向に沿って互いの近接側に延設された一対の外側壁92Cと、一対の外側壁92Cの末端から車幅方向内向きに延設され互いに接合された一対のフランジ92Dとを有する閉断面構造体とされている。このインパクトビーム74は、内側壁92Aにおいてサイドドア24(を介して車体)に荷重を伝達するように支持されている。一対のフランジ92Dは、所定の荷重が車両上下方向に作用した場合に、互いの接合が解除される(剥がれる)ように、スポット溶接等にて接合されている。この変形例に係るインパクトビーム92は、一対の傾斜壁92Bと対応する外側壁92Cとが接合された構成とされおり、この接合部は、側面衝突に対して一対のフランジ92Dの接合部に対し車体上下方向の荷重に対する接合強度が高い構成とされている。なお、一対の傾斜壁92Bと対応する外側壁92Cとは、2段階荷重伝達構造72と同様に一体に形成されても良い。
この2段階荷重伝達構造90では、サイドドア24への側面衝突が生じた場合には、閉断面構造体としてのインパクトビーム92を介した車体への荷重伝達が果たされ、一対の外側壁92Cへの車幅方向内向きの荷重によって一対の傾斜壁92Bが互いの車幅方向外端を離間させるように変形することで一対のフランジ92Dの接合が剥がれると、2段目の荷重伝達として、開断面構造体としてのインパクトビーム74を介した車体への荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造80は、図17(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造90を備えた側突検知システム70によっても、2段階荷重伝達構造72を備えた側突検知システム70と同様の作用効果を得ることができる。
説明は省略するが、本発明に係る荷重伝達構造としての2段階荷重伝達構造は、上記の他にも各種の構成を採ることができる。
(第3の実施形態)
図24には、本発明の第3の実施形態に係る側突検知システム100、該側突検知システム100が側突用乗員保護システム101が、図3に対応するブロック図にて示されている。この図に示される如く、側突検知システム10は、側突用エアバッグ装置15、CPU32に代えて、高荷重用エアバッグ装置102及び低荷重用エアバッグ装置104を有する乗員保護装置としての側突用エアバッグ装置105、衝突判断部及び制御装置としてのCPU106を備える点で、第2の実施形態に係る側突検知システム70とは異なる。すなわち、図示は省略するが、側突検知システム100は、本発明における荷重伝達構造として2段階荷重伝達構造72又は各変形例に係る80、85、90のうち1つを備えている。
側突用エアバッグ装置105の高荷重用エアバッグ装置102は、比較的高速度で側面衝突が生じた場合に乗員を効果的に保護することができる構成とされている。低荷重用エアバッグ装置104は、比較的低速度で側面衝突が生じた場合に乗員を効果的に保護することができる構成とされている。これらは、例えば、図24に示すようにインフレータ102A、104A、エアバッグ102B、104B共に独立して設けられた構成としても良く、高荷重用と低荷重用とで共通のエアバッグ(エアバッグ102B、104Bの何れか一方)を有すると共に高荷重用、低荷重用のインフレータ102A、104Aが独立して設けられた構成としても良い。
CPU106は、側突検出用Gセンサ20からの信号に基づいて、側面衝突の有無(高荷重用エアバッグ装置102及び低荷重用エアバッグ装置104の何れかの作動可否)、側面衝突の形態(高荷重用エアバッグ装置102及び低荷重用エアバッグ装置104の何れを作動させるべき衝突速度であるか)を判断する構成とされている。以下、具体的に説明する。
CPU106は、図26に示される如く、複数の閾値αtが設定されている。すなわち、高荷重用エアバッグ装置102の作動可否を判断するための閾値αth、低荷重用エアバッグ装置104の作動可否を判断するための閾値αtlが設定されている。閾値αth、αtlは、共に負の加速度とされ、αth<αtlとされている。すなわち、閾値αthの絶対値は閾値αtlの絶対値よりも大とされている。以下の説明では、加速度α、閾値αth、αtlの大小の比較は、絶対値の比較とし、単に「加速度αが閾値αthを超えた」のように記載することとする。
これらの閾値αth、αtlの設定について補足する。1段目の荷重入力(立ち上がり)と2段目の荷重入力(立ち下がり)との時間差がΔT/2の場合すなわち衝突速度がVpである場合には、図27(A)に示される如く、実線で示す加速度α(側突検出用Gセンサ20の出力信号)は、1段目の荷重伝達で生じた加速度(破線参照)の1回目の極小側ピークに、2段目の荷重伝達で生じた加速度(一点鎖線参照)の1回目の極小側ピークが重ね合わされ、負側への最大振幅となる。一方、衝突速度がVpよりも低い場合には、1段目の荷重入力から2段目の荷重入力までの時間差が長くなり、図27(B)、図27(C)に示される如く、これらにより生じる破線の加速度と一点鎖線の加速度との位相のずれが生じるので、衝突速度がVpである場合と比較して加速度αの負側のピークが小さくなる。
本実施形態に係る側突検知システム100では、想定される最高の側面衝突速度として衝突速度Vpが設定されており、この衝突速度Vpに対応して2段階荷重伝達構造72、80、85、90の構造(インパクトビーム74、82、86、92の材質、寸法形状等)が決められている。
そして、CPU106においては、閾値αthは、図26に実線にて示される如き高速(衝突速度Vpに近い速度)で側面衝突が生じた場合に生じる極小側ピークの加速度α3よりも小で、破線にて示される如き低速で側面衝突が生じた場合に生じる極小側ピークの加速度α4よりも大となるように設定されている。また、αtlは、上記した極小側ピークの加速度α4よりも小で、一点鎖線にて示される如き微速で側面衝突が生じた場合に生じる極小側ピークの加速度α5よりも大となるように設定されている。
CPU106では、側突検出用Gセンサ20からの信号に基づいて、加速度αが閾値αthを超えたことに対応する信号が側突検出用Gセンサ20から入力されることが、高荷重用エアバッグ装置102を作動させる必要条件とされている。また、CPU106では、側突検出用Gセンサ20からの信号に基づいて、加速度αが閾値αth、αtl間の値である(αtl<α<αth)ことに対応する信号が側突検出用Gセンサ20から入力されることが低荷重用エアバッグ装置104を作動させる必要条件とされている。
側突検知システム100の他の構成は、第2の実施形態に係る側突検知システム70の対応する構成と同じである。したがって、側突検知システム100では、基本的に第2の実施形態に係る側突検知システム70と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
さらに、第3の実施形態の作用を、主に第2の実施形態と異なる部分について、図25に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の側突検知システム100では、CPU106は、ステップS30で側突検出用Gセンサ20の信号を読み込んだ後、ステップS40に進み、該側突検出用Gセンサ20の信号に基づく加速度αがαthを超えたか否かを判断する。加速度αがαthを超えたと判断した場合、CPU106は、ステップS42に進み、高荷重用エアバッグ装置102を作動させる。これにより、側突検知システム100が適用された側突用乗員保護システム101では、高速での側面衝突に対し乗員が適切に保護される。
一方、ステップS40で加速度αがαthを超えないと判断した場合、CPU106は、ステップS44に進み、加速度αがαtlを超えたか否かを判断する。加速度αがαtlを超えたと判断した場合、CPU106は、ステップS46に進み、低荷重用エアバッグ装置104を作動させる。これにより、側突検知システム100が適用された側突用乗員保護システム101では、低速での側面衝突に対し乗員が適切に保護される。
他方、ステップS44で加速度αがαtlを超えないと判断した場合、CPU106は、ステップS26に戻る。
ここで、側突検知システム100が適用された側突用乗員保護システム101では、該側突検知システム100のCPU106が2つの閾値αth、αtlに基づいて、側面衝突の衝突速度に応じた乗員の保護形態となるように側突用エアバッグ装置105の作動形態を制御するため、乗員は衝突速度に応じて適切に保護される。すなわち、高速での側面衝突時には高荷重用エアバッグ装置102を作動して乗員を適切に保護し、低速での側面衝突時には低荷重用エアバッグ装置104を作動して乗員を適切に保護することができる。
なお、第3の実施形態では、2段目で伝達荷重が立ち下がる構成の2段階荷重伝達構造72、80、85、95の何れか1つを用いて側突検知システム100が構成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、2段目で伝達荷重が立ち上がる構成の2段階荷重伝達構造22、35、40、45、50、55、60の何れか1つを用いて側突検知システム100を構成しても良い。この場合、閾値αth、αtlは、ピークP1での加速度α1よりも大である正の加速度とされる。
また、第3の実施形態では、側突用エアバッグ装置105の高荷重用エアバッグ102及び低荷重用エアバッグ装置104を選択的に展開されることで、衝突速度に応じて乗員保護形態が異なる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、高速での側面衝突時にはサイドエアバッグとカーテンエアバッグとを共に作動させ、低速での側面衝突時にはサイドエアバッグ及びカーテンエアバッグの何れか一方だけを作動させることで乗員保護形態を異ならせる構成としても良い。さらに、乗員保護装置は、各種エアバッグ装置には限られず、例えば、側突用の乗員保護装置(の一部)としてシートベルト装置のウエビングに膨張部を設けたエアベルト装置等を採用することも可能である。
また、上記した各実施形態及び変形例では、側突検出用Gセンサ20がフロアトンネル18に設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、側突検出用Gセンサ20を左右のサイドドア24(インパクトビーム26等)にそれぞれ設けた構成としても良い。
さらに、上記した各実施形態及び変形例では、本発明が側面衝突を検出するための側突検知システム10、70、100に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、自動車11の後面衝突を検出するための後突検知システム等に本発明を適用することができる。
またさらに、上記した各実施形態及び変形例では、加速度αを閾値αt、αth、αtlと比較することで側面衝突の有無、衝突速度を判断する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、加速度の時間変化率(加加速度)を所定の閾値と比較することで側面衝突の有無、衝突速度を判断するようにしても良い。また、本発明における側突検出のフローは、図6、図8、図19、図20のフローには限られず、各種変更して実施可能であることは言うまでもない。