本発明の実施形態に係る衝突検知構造としての側突検知システム10について、図1〜図9に基づいて説明する。先ず、側突検知システム10が適用された車両としての自動車11の側突用乗員保護システム12の概略構成を説明し、次いで、側突検知システム10について説明することとする。なお、図中に記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印RHは車幅方向一方側である右側を、矢印LHは車幅方向他方側である左側をそれぞれ示すものとする。
(側突用乗員保護システムの概略構成)
図1には、自動車11の前部が模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く側突用乗員保護システム12は、右左のシート14R、14Lに対する車幅方向外側に配設された側突用エアバッグ装置15を備えている。側突用エアバッグ装置15は、第2の乗員保護装置としての右側座席用エアバッグ装置16と、第1の乗員保護装置としての左側座席用エアバッグ装置18とを有する。
右側座席用エアバッグ装置16は、自動車11に右側からの側面衝突が生じた場合に、インフレータ等のエアバッグ駆動装置16A(図6参照)を作動させることでシート14Rの乗員に対する車幅方向外側でエアバッグ16Bを展開させて該乗員を保護するようになっている。左側座席用エアバッグ装置18は、自動車11に左側からの側面衝突が生じた場合に、インフレータ等のエアバッグ駆動装置18Aを作動させることでシート14Lの乗員に対する車幅方向外側でエアバッグ18Bを展開させて該乗員を保護するようになっている。
側突用エアバッグ装置15を構成する右側座席用エアバッグ装置16、左側座席用エアバッグ装置18としては、それぞれカーテンエアバッグ、サイドエアバッグ、又はこれらの組み合わせ等を採用することができる。
側突用エアバッグ装置15の作動は、衝突判断部、制御装置としてコントローラ(ECU)20によって制御されるようになっている。コントローラ20は、例えばフロアトンネル22等の自動車11の車体における車幅方向中央部に配置されており、この実施形態では前突用や後突用など他のエアバッグ装置やシートベルト装置を含め統合的に作動を制御するようになっている。
コントローラ20は、加速度センサとしての単一の側突検出用Gセンサ24を備えた側突検知システム10の一部(少なくとも衝突判断部の機能)を構成しており、該側突検出用Gセンサ24からの信号に基づいて側突用エアバッグ装置15の作動を制御する構成とされている。側突検出用Gセンサ24は、例えばフロアトンネル22等の自動車11における車幅方向中央部に配置されている。なお、側突検出用Gセンサ24は、例えばコントローラ20に内蔵されていても良い。
図6に示される如く、コントローラ20は、側突検出用Gセンサ24の信号の高周波成分をカットするローパスフィルタ26と、ローパスフィルタ26を通過した信号に基づいて右側座席用エアバッグ装置16、左側座席用エアバッグ装置18の作動可否を判断するCPU28とを主要部として構成されている。CPUによる側面衝突の検知、右側座席用エアバッグ装置16、左側座席用エアバッグ装置18の作動可否の判断については、側突検知システム10の構成と共に後述する。
(側突検知システムの構成)
側突検知システム10は、フロアトンネル22に配置された側突検出用Gセンサ24に対し、車体左側面への側面衝突に伴う荷重を2段階で伝達するための第1の2段階荷重伝達部としての2段階荷重伝達構造30を有する。2段階荷重伝達構造30は、図4(A)に示される如く側面衝突の発生で1段目の荷重が立ち上がった後に2段目の荷重がさらに立ち上がる構成、又は図4(B)に示される如く側面衝突で1段目の荷重が徐々に立ち上がった後に2段目の入力で荷重変化率が増加する構成とすることができる。
図1に示される如く、2段階荷重伝達構造30は、左側のシート14Lに対する車幅方向外側に位置するサイドドア32に設けられている。具体的には、図2に示される如く、2段階荷重伝達構造30は、サイドドア32を構成するインパクトビーム34に対する車幅方向外側に、一次荷重伝達部材36を設けて構成されている。一次荷重伝達部材36は、例えばポリウレタンフォーム等の発泡材にてブロック状に形成されている。この一次荷重伝達部材36は、サイドドア32を構成するアウタパネル32A(衝突体)とインパクトビーム34との間に所定の空間(インパクトビーム34に当接するまでの空走区間を除くストロークSp(図示せず))を確保する構成とされている。
これにより、2段階荷重伝達構造30は、サイドドア32への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達部材36からインパクトビーム34への荷重伝達が果たされ、一次荷重伝達部材36が潰れてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体(アウタパネル32A)からインパクトビーム34に直接的に荷重伝達が果たされるようになっている。この実施形態に係る2段階荷重伝達構造30は、図4(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。
そして、側突検知システム10では、1段目又は2段目にインパクトビーム34に入力された荷重は、自動車11の車体(ロッカ、フロアクロスメンバ等)を介して、側突検出用Gセンサ24の設置部位であるフロアトンネル22に伝達されるようになっている。上記したストロークSpは、この車体の伝達特性H又はコントローラ20を構成するローパスフィルタ26の特性に応じて、所定の衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に1段目の荷重伝達の開始時と2段目の荷重伝達の開始時との間に所定の時間差ΔTが生じるように設定されている。
具体的には、車体(ボデー)が比較的低い共振(周波数特性における加速度のピーク)を有する場合には、図7(A)に示される如く、その共振周波数を荷重伝達のピーク周波数fpとし、車体が大きな共振を有しない場合には、図7(B)に示される如く、ローパスフィルタ26の特性で決まるピーク周波数fpを用いて、時間差ΔTを設定している。この実施形態では、時間差ΔTは、ピーク周波数fpの逆数(周波数fpの振動の周期)として設定されている。この実施形態では、時間差ΔTは、略5[msec]である。
したがって、側突検知システム10では、車体左側面に衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に、1段目の荷重伝達で生じた加速度と、2段目の荷重伝達で生じた加速度とにはピーク周波数fpの1周期分の位相差が生じる設定とされている。すなわち、側突検知システム10では、左側面衝突に対しては、1段目の荷重伝達で生じた加速度の2回目の極大側ピークに、2段目の荷重伝達で生じた加速度の1回目の極大側ピークが重ね合わされるようになっている。換言すれば、図8(A)に示される如く加速度αの2回目のピークが増幅されるようになっている。
また、側突検知システム10は、第2の荷重伝達構造としての2段階荷重伝達構造40を備えている。2段階荷重伝達構造40は、フロアトンネル22に配置された側突検出用Gセンサ24に対し、車体右側面への側面衝突に伴う荷重を2段階で伝達する構成とされている。この2段階荷重伝達構造40は、図5(A)に示される如く側面衝突の発生で1段目の荷重が立ち上がった後に2段目で荷重が立ち下がる構成、又は図5(B)に示される如く側面衝突で1段目の荷重が立ち上がった後に2段目で荷重変化率が減少する構成とすることができる。以下、具体的に説明する。
2段階荷重伝達構造40は、図3(A)に示される如く、右側のシート14Rに対する車幅方向外側に位置するサイドドア42を構成するインパクトビーム44の形状(構造)によって構成されている。インパクトビーム44は、車幅方向外端に位置する外側壁44Aと、外側壁44Aの車両上下方向両端から該車幅方向の内側に向けて徐々に上下に離間されるように傾斜して延設された上下一対の傾斜壁44Bと、一対の傾斜壁44Bの車幅方向内端から車両上下方向に沿って互いの近接側に延設された一対の内側壁44Cと、一対の内側壁44Cの末端から車幅方向内向きに延設され互いに接合された一対のフランジ44Dとを有する閉断面構造体とされている。このインパクトビーム44は、一対の内側壁44Cにおいてサイドドア42(を介して車体)に荷重を伝達するように支持されている。一対のフランジ44Dは、所定の荷重が車両上下方向に作用した場合に、図3(B)に示される如く、互いの接合が解除される(剥がれる)ように、スポット溶接等にて接合されている。
これにより、2段階荷重伝達構造40は、サイドドア42への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、閉断面構造体としてのインパクトビーム44を介した車体への荷重伝達が果たされ、外側壁44Aへの車幅方向内向きの荷重によって図3(B)に矢印Aにて示される如く一対の傾斜壁44Bが互いの車幅方向内端を離間させるように変形することで、一対のフランジ44Dの接合が剥がれると、2段目の荷重伝達として、開断面構造体としてのインパクトビーム44を介した車体への荷重伝達が果たされるようになっている。この2段階荷重伝達構造40は、図5(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。
そして、側突検知システム10では、自動車11の車体の伝達特性H又はコントローラ20を構成するローパスフィルタ26の特性に応じて、所定の衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に1段目の荷重立ち上がりの開始時と2段目の荷重立下り(一対のフランジ44Dの接合剥がれ)の開始時との間に、所定の時間差ΔT/2(≒2.5[msec]が生じるように、2段階荷重伝達構造40の材質、寸法形状等が決められている。すなわち、側突検知システム10では、ボデー伝達特性Hが左右対称であると共にローパスフィルタ26は左右で共通であるから、ピーク周波数fpは左右で共通である一方、同じ衝突速度Vpに対し左右で所定の時間差(2段目の荷重伝達の開始までの時間)が異なる構成とされている。
したがって、側突検知システム10では、車体右側面に衝突速度Vpの側面衝突が生じた場合に、1段目の荷重伝達で生じた加速度と、2段目の荷重伝達で生じた加速度とには半周期の位相差が生じる設定とされている。すなわち、側突検知システム10では、右側面衝突に対しては、1段目の荷重伝達(立ち上がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークに、2段目の荷重伝達(立ち下がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークが重ね合わされるようになっている。これにより、側突検知システム10では、図8(B)に示される如く加速度αの1回目の極小側ピークP3が負側に振れるようになっている。
以上説明した側突検知システム10では、図3に示される如く、側面衝突に伴う荷重Fが2段階荷重伝達構造30又は2段階荷重伝達構造40を含むボデー伝達特性Hを介して側突検出用Gセンサ24に伝達され、側突検出用Gセンサ24の出力信号がコントローラ20のローパスフィルタ26を介してCPU28に入力されるようになっている。そして、側突検知システム10では、CPU28にて側面衝突の発生有無、側面衝突の発生側(左右何れか)が判断されるようになっている。したがって、CPU28(コントローラ20)は、上記の通り本発明における衝突判断部に相当する。
ここで、CPU28による衝突の判断について補足すると、側突検出用Gセンサ24に対し、左側の2段階荷重伝達構造30を介して時間差ΔTをあけた2段階で荷重が伝達された場合、上記の通り1段目の荷重伝達で生じた加速度の2回目の極大側ピークに、2段目の荷重伝達で生じた加速度の1回目の極大側ピークが重ね合わされるので、側突検出用Gセンサ24の出力信号(加速度α)は、図8(A)に示される如く、正側において2回目のピークP2が1回目のピークP1に対し大きくなる。
CPU28には、衝突速度Vpの場合に想定される1回目のピークP1よりも大きく、2回目のピークP2よりも小さい加速度が閾値αtpとして設定されている。また、αtpは、サイドドア32によるドア開口部の閉止に伴う想定最大荷重により生じる加速度よりも大きく設定されている。したがって、CPU28では、加速度αが閾値αtpを越えたことに対応する信号が側突検出用Gセンサ24から入力されることが、左側の側面衝突発生を検出する必要条件とされている。
一方、側突検出用Gセンサ24に対し、右側の2段階荷重伝達構造40を介して時間差ΔT/2をあけた2段階で荷重が伝達された場合、上記の通り1段目の荷重伝達(立ち上がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークに、2段目の荷重伝達(立ち下がり)で生じた加速度の1回目の極小側ピークが重ね合わされるので、側突検出用Gセンサ24の出力信号(加速度α)は、図8(B)に示される如く、1回目の極小側ピークP3が負側に生じる。
CPU28には、負の加速度が閾値αtmとして設定されている。したがって、CPU28では、加速度αが閾値αtmを下回った(加速度αの絶対値が負側において閾値αtmの絶対値を超えた)ことに対応する信号が側突検出用Gセンサ24から入力されることが、右側の側面衝突発生を検出する必要条件とされている。
また、CPU28では、加速度αが閾値αtmを下回ったことの他に、衝撃の入力から加速度αが閾値αtmを下回るまでの時間が所定時間内であることが、右側の側面衝突発生を検出する十分条件として設定されている。すなわち、上記の通りΔT≒5[msec]である側突検知システム10では、衝突開始から1回目の極小側ピークP3が生じるまでの時間が略5[msec]であることを考慮して、例えば衝撃の入力から加速度αが閾値αtを超えるまでの時間Tが基準時間Tt(この実施形態では、10[msec])を超えた場合には、想定される右側の側面衝突が生じていない(負の加速度は他に起因するものである)と判断するようになっている。
そして、側突検知システム10が適用された側突用乗員保護システム12では、制御装置としても把握されるCPU28は、側突検出用Gセンサ24からの信号に基づいて加速度αが閾値αtpを越えたと判断した場合には左側座席用エアバッグ装置18を作動させるようになっている。また、CPU28は、側突検出用Gセンサ24からの信号に基づいて加速度αが基準時間Tt以内で閾値αtmを下回ったと判断した場合には右側座席用エアバッグ装置16を作動させるようになっている。なお、左側座席用エアバッグ装置18についても、加速度αが閾値αtpを超えるまでの時間Tが基準時間Tt以内の条件が付加されても良い。また、右側座席用エアバッグ装置16、左側座席用エアバッグ装置18の作動の必要条件として、例えばシート14L、14Rへの乗員の着座等の条件を適宜加えることができる。
次に、実施形態の作用を、図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の側突検知システム10では、ステップS10で、側突検出用Gセンサ24からの信号を読み込み、ステップS12に進む。ステップS12でCPU28は、側突検出用Gセンサ24からの信号に基づいて、衝撃の入力(1段目の入力)があったか否かを判断する。具体的には、衝撃入力の閾値をαs(図8参照)とし、側突検出用Gセンサ20からの信号に対応する加速度αが閾値αsを超えた場合(α>αs)に、衝撃の入力があったと判断する。CPU28は、衝撃の入力がなかったと判断した場合、ステップS10に戻り、衝撃の入力があったと判断した場合、ステップS14に進んで内蔵のタイマをスタートさせる。
さらに、CPU28は、ステップS16に進み、衝撃の入力からの経過時間Tが基準時間Ttを超えていないか否かを判断する。上記経過時間Tが基準時間Ttを越えたと判断した場合CPU28は、ステップS18でタイマをリセットしてステップS10に戻る。一方、ステップS16で衝撃の入力からの経過時間Tが基準時間Ttを超えていないと判断した場合、CPU28は、ステップS20に進み側突検出用Gセンサ24からの信号を読み込む。
次いで、CPU28は、ステップS22に進み、側突検出用Gセンサ24からの信号に対応する加速度αが閾値αtmを下回ったか否かを判断する。CPU28は、加速度αが閾値αtmを下回ったと判断した場合、ステップS24に進み右側座席用エアバッグ装置16を作動させる。すなわち、CPU28は、車体右側面(サイドドア42)に側面衝突が生じたと判断した場合に右側座席用エアバッグ装置16を作動させる。これにより、自動車11のシート14Rの乗員が側面衝突に対し保護される。
一方、ステップS22で加速度αが加速度αが閾値αtmを下回っていないと判断したCPU28は、ステップS26に進み、側突検出用Gセンサ24からの信号に対応する加速度αが閾値αtpを超えたか否かを判断する。CPU28は、加速度αが閾値αtpを超えたと判断した場合、ステップS28に進み左側座席用エアバッグ装置18を作動させる。すなわち、CPU28は、車体左側面(サイドドア32)に側面衝突が生じたと判断した場合に左側座席用エアバッグ装置18を作動させる。これにより、自動車11のシート14Lの乗員が側面衝突に対し保護される。
ステップS26で加速度αが閾値αtmを超えていないと判断した場合、CPU28は、ステップS16に戻り、1段目の入力に対応する基準時間Ttが経過するまで衝突の判断を繰り返す。基準時間Ttの経過後は、上記の通りステップS10に戻る。
ここで、側突検知システム10は、車幅方向の異なる側に配置された2段階荷重伝達構造30、40を備えるため、右側の側面衝突で生じる加速度(野時間変化の態様)と左側の側面衝突で生じる加速度(野時間変化の態様)とを異ならせることができる。このため、側突検知システム10では、白湯の側面衝突に異なる閾値を設定することで、単一の側突検出用Gセンサ24からの信号に基づいて、発生した側面衝突が右側の側面衝突であるか左側の側面衝突であるかをCPU28に判別(区別)させることができる。
特に、側突検知システム10では、2段目の伝達荷重が1段目の伝達荷重に対し立ち上がる2段階荷重伝達構造30と、2段目の伝達荷重が1段目の伝達荷重に対し立ち下がる2段階荷重伝達構造40とを備えるため、左右の側面衝突を区別するための閾値を正負に振り分けることができる。これにより、側面衝突の発生側を誤検出することが著しく効果的に抑制される。
また、側突検知システム10では、それぞれ衝突荷重を2段階で側突検出用Gセンサ24に伝える2段階荷重伝達構造30、2段階荷重伝達構造40を備えるため、単一の側突検出用Gセンサ24からの信号に基づいて、側面衝突の発生を例えばサイドドア32、42のドア閉じ等と区別して検出することができる。
例えば、サイドドア32によるドア閉じの場合、サイドドア32の質量mを20[kg]、ドア閉じの速度Vdを50[km/h](≒14[m/s])、ドア閉じの荷重Fdを10[kN]とすると、運動量保存則
m × Vd = ∫(Fd×T)dt
より、T≒28[msec]となる。この時間Tは、上記の通りΔT≒5[msec]である側突検知システム10における衝突速度がVpの場合に衝突開始から2回目のピークP2が生じるまでの時間T≒7.5[msec]に対し十分に長く、1段の荷重入力として捉えられる。したがって、サイドドア32のドア閉じによっては、1回目のピークP1よりも高い2回目のピークP2は生じない。また、ドア閉じの場合は、時間T≒28[msec]の経過後、荷重が立ち下がるので、閾値αtpを超える加速度は生じない。
これに対して2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10では、設定された衝突速度Vpに近い速度で左側面への側面衝突が生じた場合には、側突検出用Gセンサ24によって検出される加速度には、図8(A)に示される如く1回目のピークP1よりも高い2回目のピークP2が生じる。この2回目のピークP2に至る過程の加速度αが閾値αtを越えるか否かで、左側面への側面衝突を検出することができる。このように、側突検知システム10では、側面衝突による荷重のみ所定の時間差ΔTをあけた2段階で側突検出用Gセンサ24に伝達する2段階荷重伝達構造30を設けたため、ドア閉じの如き単純な1段階の荷重入力では側突検出用Gセンサ24に作用する加速度αが閾値αtを超えず、側面衝突のみを検出することができる。
すなわち、側突検知システム10では、単一の側突検出用Gセンサ24で、左側面への側面衝突とドア閉じ等とを判別(区別)することができる。さらに、側面衝突の速度が所定の衝突速度Vpに対し大幅に小である場合には、すなわち軽衝突の場合には、2段目の伝達荷重による加速度のピークが1段目の伝達荷重による加速度の2回目にピークから大きくずれ、2回目のピークP2でαtを超えることがなく、左側座席用エアバッグ装置18を作動させるべき側面衝突と軽衝突とを区別することができる。
また、2段階荷重伝達構造40を備えた側突検知システム10においては、設定された衝突速度Vpに近い速度で側面衝突が生じた場合には、側突検出用Gセンサ24によって検出される加速度αには、図8(B)に示される如く負の加速度が生じるため、この加速度αが負側において閾値αtを下回るか否かで、側面衝突をサイドドア42のドア閉じ等と判別することができる。
すなわち、上記した通り、サイドドア32と同様にサイドドア42のドア閉じの荷重が作用する時間Tは、T≒28[msec]となり、1段の荷重入力として捉えられる。仮に、T≒28[msec]の経過後に立ち下がった荷重により、加速度αが負になる(αtを超える)時間帯が生じたとしても、基準時間Ttの経過後になるため、側突検知システム10において右側の側面衝突として誤検出することがない。同様に、側突用エアバッグ装置15の作動が要求されない程度の低速度での側面衝突すなわち軽衝突が生じた場合には、2段目の加速度の重ね合わせにより加速度αが負になる時間帯が生じたとしても、基準時間Ttの経過後になるので、側突用エアバッグ装置15が作動されることがない。すなわち、側突検知システム10では、右側座席用エアバッグ装置16を作動させるべき側面衝突と軽衝突とを区別することができる。
(衝突判断の変形例)
上記実施形態では、単一の側突検出用Gセンサ24の出力信号に基づいて、側面衝突の発生有無、車幅方向における側面衝突の発生側を判別可能である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、さらに側面衝突の速度を判別する機能を付加しても良い。
この側面衝突の速度の判別機能について、2段階荷重伝達構造40を介した荷重伝達を例にして、図10、図11に基づいて補足する。
この変形例に係るCPU26では、図10に示される如く、複数の閾値αtmが設定されている。すなわち、高速での側面衝突を判断するための閾値αtmh、低速での側面衝突を判断するための閾値αtmlが設定されている。閾値αtmh、αtmlは、共に負の加速度とされ、αtmh<αtmlとされている。すなわち、閾値αtmhの絶対値は閾値αtmlの絶対値よりも大とされている。
これらの閾値αtmh、αtmlの設定について補足する。1段目の荷重入力(立ち上がり)と2段目の荷重入力(立ち下がり)との時間差がΔT/2の場合すなわち衝突速度がVpである場合には、図11(A)に示される如く、実線で示す加速度α(側突検出用Gセンサ24の出力信号)は、1段目の荷重伝達で生じた加速度(破線参照)の1回目の極小側ピークに、2段目の荷重伝達で生じた加速度(一点鎖線参照)の1回目の極小側ピークが重ね合わされ、負側への最大振幅となる。一方、衝突速度がVpよりも低い場合には、1段目の荷重入力から2段目の荷重入力までの時間差が長くなり、図11(B)、図11(C)に示される如く、これらにより生じる破線の加速度と一点鎖線の加速度との位相のずれが生じるので、衝突速度がVpである場合と比較して加速度αの負側のピークが小さくなる。
本変形例では、想定される最高の側面衝突速度として衝突速度Vpが設定されており、この衝突速度Vpに対応して2段階荷重伝達構造40の構造(インパクトビーム44の材質、寸法形状等)が決められている。
そして、CPU26においては、閾値αtmhは、図10に実線にて示される如き高速(衝突速度Vpに近い速度)で側面衝突が生じた場合に生じる極小側ピークの加速度α3よりも小で、破線にて示される如き低速で側面衝突が生じた場合に生じる極小側ピークの加速度α4よりも大となるように設定されている。また、αtmlは、上記した極小側ピークの加速度α4よりも小で、一点鎖線にて示される如き微速で側面衝突が生じた場合に生じる極小側ピークの加速度α5よりも大となるように設定されている。
これにより、本変形例に係るCPU28を備えた側突検知システム10では、側面衝突の発生有無、車幅方向における側面衝突の発生側に加え、側面衝突の速度を判別することができる。また、説明は省略したが、2段階荷重伝達構造30からの伝達加速度αによっても、設定された衝突速度Vpと実際の衝突速度とのずれに基づく加速度増幅効果の減少を利用して、複数の閾値αtpを設定することで、側面衝突の速度を判別することができる。
このような変形例に係るローパスフィルタ26を備えた側突検知システム10では、例えば、右側座席用エアバッグ装置16、左側座席用エアバッグ装置18のそれぞれを高荷重用エアバッグ装置と低荷重用エアバッグ装置とを有する構成とし、高速での側面衝突を検知した場合に高荷重用エアバッグ装置を作動させ、低速での側面衝突を検知した場合に低荷重用エアバッグ装置を作動させる制御を行うことも可能である。高荷重用エアバッグ装置と低荷重用エアバッグ装置とは、例えば、互いに独立して構成されても良く、共通のエアバッグを有するに対しガス供給量(速度)の異なる2つのインフレータを有して構成されても良い。また、高速での側面衝突時にはサイドエアバッグとカーテンエアバッグとを共に作動させ、低速での側面衝突時にはサイドエアバッグ及びカーテンエアバッグの何れか一方だけを作動させることで乗員保護形態を異ならせる構成としても良い。
(第1の2段階荷重伝達構造の変形例)
上記した実施形態では、インパクトビーム34の車幅方向外側に一次荷重伝達部材36を配置することで、サイドドア32に2段階荷重伝達構造30を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図12〜図17に示される如く、各種変形例を採用することができる。
図11(A)には、第1変形例に係る2段階荷重伝達構造45が示されている。2段階荷重伝達構造45は、インパクトビーム46の形状によって構成されている。具体的には、インパクトビーム46は、アウタパネル32Aに対向する外壁46Aと、外壁46Aの車両上下方向の両端からそれぞれ車幅方向内向きに延設された上壁46B、下壁46Cと、上壁46B及び下壁46Cの車幅方向内端から車両上下方向に沿って延設された上下一対のフランジ部46Dとを有し、上下一対のフランジ部46Dにおいてサイドドア32に固定されている。そして、図11(B)にも示される如く、車幅方向に延在する上壁46B、下壁46Cには、インパクトビーム46の長手方向に沿って複数の切抜き部48が設けられている。複数の切抜き部48は、上壁46B、下壁46Cの脆弱部を構成している。この変形例では、上下一対のフランジ部46Dと、上壁46B及び下壁46Cにおける切抜き部48よりも車幅方向内側部分とが、インパクトビーム34等の同等の強度、剛性を有するインパクトビーム本体として捉えることができる。
この2段階荷重伝達構造45では、サイドドア32への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、外壁46Aから上壁46B、下壁46C、上下一対のフランジ部46D(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされ、切抜き部48の形成部位において上壁46B、下壁46Cが潰れてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的に上下一対のフランジ部46D(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造45は、図4(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造45を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図12には、第2変形例に係る2段階荷重伝達構造50が示されている。2段階荷重伝達構造50は、インパクトビーム52の形状によって構成されている。具体的には、インパクトビーム52は、サイドドア32に固定される基部52Aにおける車両上下方向の両端側から上下一対の凸部52Bが車幅方向外向きに突設されると共に、基部52Aにおける上下一対の凸部52B間から該凸部52Bよりも車幅方向外側まで一次荷重伝達凸部52Cが突設されて構成されている。基部52Aは、上下両端でサイドドア32に固定され、一対の凸部52Bと一次荷重伝達凸部52Cとの間の部分はサイドドア32に対しフリーとされている。この変形例では、基部52Aと一対の凸部52Bとが、インパクトビーム34等の同等の強度、剛性を有するインパクトビーム本体として捉えることができる。
この2段階荷重伝達構造50では、サイドドア32への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達凸部52Cから基部52A(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされ、基部52Aにおける一次荷重伝達凸部52Cと上下一対の凸部52Bの間の部分が延ばされてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的に上下一対の凸部52B(インパクトビーム本体)にを介した荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造50は、図4(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造50を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図13には、第3変形例に係る2段階荷重伝達構造55が示されている。2段階荷重伝達構造55は、インパクトビーム56の形状によって構成されている。具体的には、インパクトビーム56は、サイドドア32に固定される基部56Aにおける車両上下方向の中央部から一次荷重伝達凸部56Bが車幅方向外向きに突設されて構成されている。基部56Aは、上下両端でサイドドア32に固定され、該固定部位と一次荷重伝達凸部56Bとの間はサイドドア32に対しフリーとされている。この変形例では、基部56Aが、インパクトビーム34等の同等の強度、剛性を有するインパクトビーム本体として捉えることができる。
この2段階荷重伝達構造55では、サイドドア32への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達凸部56Bから基部56A(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされ、基部56Aにおける一次荷重伝達凸部56Bとの間の部分が延ばされてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的に基部56A(インパクトビーム本体)を介した荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造55は、図4(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造55を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図14には、第4変形例に係る2段階荷重伝達構造60が示されている。2段階荷重伝達構造60は、インパクトビーム62の形状(構造)によって構成されている。具体的には、インパクトビーム62は、車幅方向内向きに開口する断面形状を有するインナビーム62Aと、車幅方向外向きに開口する断面形状を有するアウタビーム62Bとが互いに接合されて構成されている。インナビーム62Aは、車幅方向の内側に向けて開口幅が徐々に増すように形成されており、該車幅方向内側の開口端においてサイドドア32(を介して車体)に荷重伝達可能に支持されている。アウタビーム62Bは、車幅方向の外側に向けて開口幅が徐々に増すように形成されている。したがって、インナビーム62A、アウタビーム62Bの車幅方向に延在する各傾斜壁62Cは板ばねの機能を有し、インパクトビーム62は、各傾斜壁62Cが鉛直方向に沿うまで変形された状態で、インパクトビーム34等の同等の強度、剛性を有する構成とされている。
この2段階荷重伝達構造60では、サイドドア32への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、インナビーム62A、アウタビーム62Bの各傾斜壁62Cが上下に離間するように変形されつつサイドドア32への低弾性的な荷重伝達が果たされ、該変形によってストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から変形後のインパクトビーム62を介した高弾性的(剛性的)な荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造60は、図4(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造60を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図16には、第5変形例に係る2段階荷重伝達構造65が示されている。2段階荷重伝達構造65は、インパクトビーム34に代えて設けられた円筒形状(パイプ状)のインパクトビーム66と、発泡材等より成り該インパクトビーム34の車幅方向外側でアウタパネル32Aに固定された一次荷重伝達部材68とを主要部として構成されている。この2段階荷重伝達構造65は、図4(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造65を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図17には、第6変形例に係る2段階荷重伝達構造70が示されている。2段階荷重伝達構造70は、サイドドア32を構成するインナパネル32Bの下部に、車体骨格部材であるロッカ72側に突出するように一次荷重伝達部材74を設けることで構成されている。一次荷重伝達部材74は、例えばポリウレタンフォーム等の発泡材にて緩衝材(EA材)として構成されている。この2段階荷重伝達構造70では、サイドドア32への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、一次荷重伝達部材74からロッカ72を介した荷重伝達が果たされ、一次荷重伝達部材74が潰れてストロークSpが消費されると、2段目の荷重伝達として、衝突体から直接的にロッカ72を介して荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造70は、図4(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造70を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造30を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
説明は省略するが、本発明に係る第1の荷重伝達構造としての2段階荷重伝達構造は、上記の他にも各種の構成を採ることができる。
(第2の2段階荷重伝達構造の変形例)
上記した実施形態では、インパクトビーム44を所定の荷重で閉断面構造体から開断面構造に変化される構造とすることで、サイドドア42に2段階荷重伝達構造40を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図18〜図20に示される如く、各種変形例を採用することができる。
図18(A)には、第1変形例に係る2段階荷重伝達構造80が示されている。2段階荷重伝達構造80は、サイドドア42のインパクトビーム82の形状(構造)によって構成されている。インパクトビーム82は、車幅方向内端でサイドドア42に固定されたインナパネル82Aと、該インナパネル82Aに接合されたアウタパネル82Bとで閉断面構造体を成している。この実施形態では、車幅方向内向きに開口する断面略ハット形状とされたアウタパネル82Bのフランジが平板状のインナパネル82Aに接合されることで閉断面が構成されている。また、インパクトビーム82は、その図心(図示省略)近傍を通り車両上下方向に沿って延在する内部壁82Cを有する。
この2段階荷重伝達構造80では、サイドドア42への側面衝突が生じた場合には、図18(B)に示される如く、1段目の荷重伝達として、インナパネル82Aとアウタパネル82Bとで構成される閉断面構造体としてのインパクトビーム82を介して車体への荷重伝達が果たされる。この際、インナパネル82Aには、インパクトビーム82の曲げに伴う引張荷重が作用し、アウタパネル82Bにおける車幅方向外側部分にはインパクトビーム82の曲げに伴う圧縮荷重が主に作用する。そして、図18(C)に示される如く、圧縮を受けたアウタパネル82Bにおける車幅方向に延在する上下一対の水平壁82Dの車幅方向外側部分が座屈されると、2段目の荷重伝達として、インナパネル82Aと一対の水平壁82Dの車幅方向内側部分と内部壁82Cとで構成される閉断面構造体にて荷重伝達が果たされる。この際、元の閉断面構造体に対し断面(断面係数)が縮小されるので、伝達荷重が低減される。この変形例に係る2段階荷重伝達構造80は、図17(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造80を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造40を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図19には、第2変形例に係る2段階荷重伝達構造85が示されている。2段階荷重伝達構造85は、サイドドア42を構成するインナパネル42Aの下端にロッカ87に向けて突出するように設けられた凸部86と、ロッカ87に形成された切抜き部87Aを塞ぐように該ロッカ87に接合された受け板88とを有して構成されている。受け板88は、所定値以上の荷重によってロッカ87に対する接合が解除される(剥がれる)構成とされている。この2段階荷重伝達構造85では、サイドドア42への側面衝突が生じた場合には、1段目の荷重伝達として、凸部86、受け板88を介してサイドドア42からロッカ87を介して荷重が伝達され、受け板88のロッカ87に対する接合が剥がれると、2段目の荷重伝達として、立ち下がるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造85は、図17(A)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造80を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造40を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
図20には、第3変形例に係る2段階荷重伝達構造90が示されている。この図に示される如く、2段階荷重伝達構造90は、インパクトビーム44と略左右対称に構成されたインパクトビーム92を主要部として構成されている。
すなわち、インパクトビーム92は、内側壁92Aと、内側壁92Aの車両上下方向両端から該車幅方向の外側に向けて徐々に上下に離間されるように傾斜して延設された上下一対の傾斜壁92Bと、一対の傾斜壁92Bの車幅方向外端から車両上下方向に沿って互いの近接側に延設された一対の外側壁92Cと、一対の外側壁92Cの末端から車幅方向内向きに延設され互いに接合された一対のフランジ92Dとを有する閉断面構造体とされている。このインパクトビーム44は、内側壁92Aにおいてサイドドア42(を介して車体)に荷重を伝達するように支持されている。一対のフランジ92Dは、所定の荷重が車両上下方向に作用した場合に、互いの接合が解除される(剥がれる)ように、スポット溶接等にて接合されている。この変形例に係るインパクトビーム92は、一対の傾斜壁92Bと対応する外側壁92Cとが接合された構成とされおり、この接合部は、側面衝突に対して一対のフランジ92Dの接合部に対し車体上下方向の荷重に対する接合強度が高い構成とされている。なお、一対の傾斜壁92Bと対応する外側壁92Cとは、2段階荷重伝達構造40と同様に一体に形成されても良い。
この2段階荷重伝達構造90では、サイドドア42への側面衝突が生じた場合には、閉断面構造体としてのインパクトビーム92を介した車体への荷重伝達が果たされ、一対の外側壁92Cへの車幅方向内向きの荷重によって一対の傾斜壁92Bが互いの車幅方向外端を離間させるように変形することで一対のフランジ92Dの接合が剥がれると、2段目の荷重伝達として、開断面構造体としてのインパクトビーム44を介した車体への荷重伝達が果たされるようになっている。この変形例に係る2段階荷重伝達構造80は、図17(B)に示される如き2段階の荷重伝達を果たす構成とされている。この2段階荷重伝達構造90を備えた側突検知システム10によっても、2段階荷重伝達構造40を備えた側突検知システム10と同様の作用効果を得ることができる。
説明は省略するが、本発明に係る荷重伝達構造としての2段階荷重伝達構造は、上記の他にも各種の構成を採ることができる。
なお、上記した実施形態及び変形例では、本発明が左右の側面衝突を区別して検知するための側突検知システム10に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、自動車11の前面衝突と後面衝突とを区別して検知するための側突検知システムに本発明を適用することができる。
また、上記した実施形態及び変形例では、単一の側突検出用Gセンサ24からの信号により側面衝突の発生、側面衝突の発生方向を共に検知する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、側面衝突の発生を検知するための加速度センサと、側面衝突の発生方向を検知する側突検出用Gセンサ24とを有する構成としても良い。すなわち、本発明における側突検出用Gセンサ24を各サイドドア32、42にそれぞれ設けるサテライトセンサの代わりに用いる構成とすることができる。
さらに、上記した実施形態及び変形例では、右側座席用エアバッグ装置16、左側座席用エアバッグ装置18の何れか一方を作動させる制御例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、右側座席用エアバッグ装置16及び左側座席用エアバッグ装置18の一方の作動後に他方の作動可否を判断する制御をCPU28が行うようにしても良い。すなわち、本発明における側突検出のフローは、図9のフローには限られず、各種変更して実施可能であることは言うまでもない。
またさらに、上記した実施形態及び変形例では、CPU28は加速度αが閾値αtpを越えたか否かに基づいて左側の側面衝突(左側座席用エアバッグ装置18の作動可否)を判断する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、CPU28は、2回目のピークP2に向かう加速度α2と1回目のピークP1での加速度α1との差分(α2−α1)が閾値Δαtを超えたか否かによって、側面衝突を判断するように構成されても良い。
また、上記した実施形態及び変形例では、加速度αを閾値αtp、αtm、αtmh、αtmlと比較することで側面衝突の有無、側面衝突の発生側、衝突速度を判断する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、加速度の時間変化率(加加速度)を所定の閾値と比較することで側面衝突の有無、側面衝突の発生側、衝突速度を判断するようにしても良い。
さらに、上記した実施形態及び変形例では、乗員保護装置が各種のエアバッグ装置である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、側面衝突用の乗員保護装置(の一部)としてシートベルト装置のウエビングに膨張部を設けたエアベルト装置等を採用することも可能である。
またさらに、上記した実施形態では、1段目の伝達荷重に対する2段目の伝達荷重の変化方向が異なる2段階荷重伝達構造30、40を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されず、1段目の伝達荷重に対する2段目の伝達荷重の形態が異なれば足りる。したがって例えば、1段目の伝達荷重に対する2段目の伝達荷重の変化方向が同じ2段階荷重伝達構造を車体の左右に配置しても良い。この場合、例えば、ボデー伝達特性Hやローパスフィルタ26の特性を左右で異ならせて異なるピーク周波数fpを設定することで、側面衝突の発生側を区別するようにしても良い。また、上記した2段階荷重伝達構造30、40は、左右逆に配置しても良いことは言うまでもない。