請求項1に記載の発明は、交流電源と、前記交流電源から入力された交流を直流に整流する整流回路と、前記整流回路より得られる直流を交流に変換するインバータと、前記インバータから得られる交流を入力とし、負荷を駆動するモータと、前記インバータの直流母線間に接続された小容量のコンデンサと、前記インバータの直流母線間の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により検出された電圧によって前記モータを起動するためのタイミングを決定する起動タイミング決定手段と、前記電圧検出手段により検出された電圧と前記起動タイミング決定手段により決定されたタイミングによって前記インバータから前記モータへ印加される電圧を制御する制御手段を備え、前記起動タイミング決定手段による前記モータを起動するためのタイミングを、前記インバータの直流母線間における電圧が予め設定した電圧値以上のときに決定するようにしたものである。
かかる構成とすることにより、前記モータは、予め定められ、かつ前記平滑用コンデンサの容量に見合った電圧が印加できるタイミングで起動されるため、平滑用のコンデンサの容量が小さく、直流母線間の電圧に大きな脈動が含まれる場合であっても、振動を抑え、脱調することの無い安定した起動を行うことができる。
また、前記モータを起動するタイミングは、必ず前記モータを起動するために予め設定された印加電圧を印加することとなり、その結果、前記電圧検出手段による電圧の検出間隔が長く、電圧の上昇・下降を検出できないような場合でも確実に安定した起動を行うことができる。
請求項2に記載の発明は、前記起動タイミング決定手段による前記モータを起動するためのタイミングを、前記インバータの直流母線間における電圧を検出した最新の結果が前記予め設定した電圧値以上であり、かつ前記最新結果の一つ前の結果が前記予め設定した電圧値以下のときに決定するようにしたものである。
かかることにより、前記モータを起動するタイミングは、必ず予め設定された電圧を印加し、かつ印加できる時間を最長とすることができる。その結果、起動直後に極めて安定した回転を得ることができるものである。
請求項3に記載の発明は、前記モータへ所定の速度で回転するように電圧を印加する強制同期運転の開始タイミングを、前記起動タイミング決定手段で決定し、前記予め設定した電圧を、前記強制同期運転に最低限必要な電圧としたものである。
かかることにより、強制同期で前記モータを回転させるのに必要な電圧を、強制同期開始直後に確保することができ、確実に強制同期運転を開始することができる。
請求項4に記載の発明は、前記モータの位置を推定しながら運転を行うセンサレス運転の開始タイミングを、前記起動タイミング決定手段で決定し、前記予め設定した電圧を、前記センサレス運転でモータの位置を推定するために最低限必要な電圧としたものである。
かかることにより、センサレス運転を開始したときに前記モータの位置を推定することができ、確実にセンサレス運転を開始することができる。
請求項5に記載の発明は、前記モータの起動を、実使用の範囲で前記インバータの直流母線間の電圧低下率が0.7以上のときとしたものである。
かかることにより、前記電圧検出手段により検出された電圧がほぼ0[V]まで低下するような小さな容量のコンデンサにより駆動することができ、非常に小型のモータの起動装置を実現することができることとなる。
請求項6に記載の発明は、前記モータの負荷を、圧縮機の圧縮機構としたものである。
かかることにより、位置検出センサをつけることが困難あるいはできない用途においても、小容量のコンデンサによる圧縮機の起動が実現でき、その結果、起動装置の大幅な小型化を実現することができる。
請求項7に記載の発明は、前記圧縮機を、レシプロ型圧縮機としたものである。
かかることにより、レシプロ型圧縮機はイナーシャが大きいという特性を備えているため、起動の際に、加速中の印加電圧が不足する短時間の期間等が発生しても回転が大きく落ち込むことがなく、より安定した起動および加速を行うことができる。
請求項8に記載の発明は、前記圧縮機を、凝縮器、減圧器、蒸発器等を備え、冷凍空調システムを構成する冷凍サイクルに用いたものである。
かかる構成とすることにより、小容量コンデンサで実現する小型の起動装置が採用でき、これまで考えられていた以上の小型の冷凍空調システムが実現できる。このことは、冷蔵庫等の貯蔵装置に適用した場合、食品収納容積を大きく確保でき、また空気調和装置においてもユニットの小型化が図れるものである。
請求項9に記載の発明は、前記圧縮機が圧縮する冷媒ガスを、R600aとしたものである。
かかることにより、冷凍能力の低下を補うため、圧縮機の気筒容積が大きくでき、これに起因して圧縮機により大きなイナーシャを持たせることができ、より安定した起動および加速を行うことができるとともに、R600aを冷媒ガスとする環境負荷の小さい安価な圧縮機を提供することができる。
請求項10に記載の発明は、前記モータの負荷を、電気洗濯機の洗濯機構としたものである。
かかることにより、前記モータの起動装置の小型化に起因して、従来の電気洗濯機と同じ外形寸法で洗濯兼脱水槽の大容量化が可能となるものである。
請求項11に記載の発明は、前記モータの負荷を、衣類等を攪拌乾燥する電気乾燥機の攪拌機構としたものである。
かかることにより、前記モータの起動装置の小型化に伴って、従来の電気乾燥機と同じ外形寸法で乾燥物収容ドラムの大容量化が達成できる。
請求項12に記載の発明は、前記モータの負荷を、送風装置の送風機構としたものである。
かかることにより、前記モータの起動装置の小型化に起因して、従来の送風装置機に比べて小型化および軽量化を達成することができ、可搬性の高い送風装置を提供することができる。
請求項13に記載の発明は、前記モータの負荷を、電気掃除機の吸塵機構としたものである。
かかることにより、前記モータの起動装置の小型化に起因して掃除機の小型・軽量化が可能となり、一層可搬性が高くユーザにとってハンドリングが容易な電気掃除機を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるモータの起動装置のブロック図である。
図1において、交流電源101は、日本の場合、電圧が100[V]、周波数が50[Hz]または60[Hz]の一般的な商用の交流電源である。整流回路102は、交流電源101を直流電源に変換するもので、周知の如く4個のダイオードがブリッジ接続されたものである。小容量のコンデンサ103は、整流回路103の出力側である直流電圧母線X、Yの間に接続されており、ここでは1μFの積層セラミックコンデンサを採用している。前記積層セラミックコンデンサは、近年高耐圧で大容量のコンデンサがチップで実現でき、本実施の形態1においては、かかるチップ型を採用している。
従来、かかる箇所に設けられるコンデンサは、整流回路103の出力電源(直流)波形の平滑化を目的に取付けられ、主には大容量(200W出力の場合には数百μF)の電解コンデンサが使われていた。そのため、駆動装置の小型化が困難であったが、本実施の形態1においては、前述のチップ型の採用により、非常に小型の駆動装置が実現できることになる。
また、前述した平滑用のコンデンサの容量は、一般的にはインバータ104の出力容量(WまたはVA)や駆動装置全体の入力容量(WまたはVA)に対応し、直流電圧のリプル含有量やリプル電流による平滑用コンデンサの耐リプル電流の特性等から決定するものである。
これらの条件を加味して、一般的には2〜4μF/W程度の容量を確保している。例えば、200Wの出力容量の場合は、400〜800μF程度の電解コンデンサを使用していた。
これに対し、本実施の形態1では、小容量のコンデンサ103に0.1μF/W以下の容量を持つコンデンサを使用している。即ち、200Wの出力容量の場合は20μF以下のコンデンサを使用する。
直流母線X、Yの電源を入力するインバータ104は、スイッチング素子IGBTと逆向きに接続されたダイオードをセットにした回路を6回路備え、これを3相ブリッジ接続している。
インバータ104によって駆動されるモータ105は、本実施の形態1においてはブラシレスDCモータを使用しており、インバータ104の3相出力により駆動される。このモータ105の固定子には、3相スター結線された巻線が施されている。この巻き方は集中巻であっても、分布巻であっても構わない。また、回転子には、永久磁石を配置している。その配置方法は、表面磁石型(SPM)でも磁石埋め込み型(IPM)であっても構わず、また永久磁石はフェライトでも希土類でも構わない。
モータ105の回転子の軸に接続された圧縮要素106は、周知の構成からなり、冷媒ガスを吸入し、圧縮して、吐出する。モータ105と圧縮要素106を同一の密閉容器に収納し、圧縮機107を構成している。圧縮機107の圧縮方式(機構形態)はロータリーやスクロール等、どのような構成であっても構わないが、本実施の形態1においては、周知の構成からなるレシプロ型を採用している。このレシプロ型は、特にイナーシャが大きく、電圧低下時であっても回転数が低下しにくく、小容量のコンデンサでより滑らかに運転することができる特性を備えている。
また、前述の冷媒ガスは、R134a等、どのような種類(組成)のものであっても構わないが、本実施の形態1においては、R600aを採用している。R600aはR134aと比べ冷凍能力が低く、圧縮要素106の気筒容積を大きくして冷凍能力の低下を補うことができる。その結果、圧縮機107は、イナーシャが大きくなり、電圧低下時であっても、イナーシャによってモータ105が回転するため、速度が低下しにくく、小容量のコンデンサ103で運転した場合であっても、安定した運転が可能となる。
圧縮機107は、圧縮した吐出ガスを、凝縮器108、減圧器109、蒸発器110を通って圧縮機107の吸い込みに戻るような冷凍空調システムを構成する。この時、凝縮器108では放熱を、蒸発器110では吸熱を行うので、冷却や加熱を行うことができる。必要に応じて凝縮器108や蒸発器110に送風機等を使い、熱交換をさらに促進することもできる。
次に、モータ105を駆動するインバータ104の制御を行う制御回路について説明する。以下に説明する制御回路は、一例として周知の如くマイクロコンピュータを具備するLSI回路で構成されるものである。
位置検出手段111は、モータ105の誘起電圧またはモータ電流からモータ105における回転子の回転位置の検出を行う。本実施の形態1では、誘起電圧から回転子の回転位置を検出する方法について説明する。
即ち、インバータ104は、120度通電方式の矩形波駆動としているため、U、V、Wの3相の内、常時通電されていない相が所定の順で発生する。位置検出手段11は、この通電されていない相に発生する誘起電圧のゼロクロス点を検出し、前記回転子の回転位置を検出する。
同期運転手段112は、位置検出手段111が正常に位置検出しているときは、その検出タイミングで同期するように動作し、常にタイミング(動作済み)のイニシャライズを行っている。
また、周期測定手段113は、位置検出手段111が正常に位置検出しているときの周期の測定を行っているが、この測定する周期は、モータ105が少なくとも1回転以上している間の周期を測定する。位置信号が切替わる都度のタイミングでの周期測定の場合は、誤差が非常に多くあり、その測定周期は安定しないが、1回転以上で測定した場合は、その測定周期は非常に安定している。
そして、周期測定手段113の周期測定結果を基に同期運転手段112の出力する切換え周期、すなわち出力周波数を決定する。例えば、6極のモータの場合、1回転の測定周期が50ms(20r/sの回転数)の場合は、切換え周期を50/18msに設定する。
位置決め手段114は、モータ105が起動する前に該モータ105の固定子の位置を期待する位置に移動させる位置決めを行う。この位置決めは、位置決め手段114に運転を開始する指示信号である運転信号が入力されたときに行う。
前記位置決めの方法として、3相のうち2相に通電後、1相に通電する等の方法があるが、固定子の位置を決定できる方法であればいずれの方法であっても構わない。
強制同期運転手段115は、予め設定された電圧を各相へ設定通りのパターンで出力し、モータ105を同期させ強制的に運転するものである。そして、後述の起動タイミング決定手段117より起動許可信号が入力された時に、前述のパターン出力を開始する。
電圧検出手段116は、直流母線間X、Yの電圧である小容量のコンデンサ103の両端電圧を検出する。
起動タイミング決定手段117は、電圧検出手段116の出力を入力とし、強制同期運転手段115と切換手段118へ起動許可信号を出力する。
切換手段118は、運転時においては電圧検出手段116の出力を入力とし、位置検出手段111または同期運転手段112のいずれの信号を取込むかを選択し、出力する。また、停止時から起動時には、位置決め手段114から決定されるモータ105への印加パターンであるか、強制同期運転手段115による起動であるかを、起動タイミング決定手段117の出力により決定する。そして、強制同期運転手段115から位置検出手段111または同期運転手段112への取込み信号の切換えは、周期測定手段113により検出された運転周波数により決定する。
制御手段119は、切換手段118の出力を入力とし、インバータ104の6個のIGBTのON/OFFを制御するものである。
以上のように構成されたブラシレスDCモータの駆動装置について、その動作を説明する。
まず、位置決め手段114は、運転信号(運転開始信号)が入力されることにより位置決めパターンを出力する。この位置決めパターンが入力されることで、モータ105の回転子が期待する位置に移動する。
位置決め手段114は、モータ105の回転子の位置を実際には検出することなく、所定時間が経過したことによってモータ105の回転子が移動したと判断し、位置決め完了信号を出力する。
前記位置決め完了信号を受け取った起動タイミング決定手段117は、起動タイミングの判定を開始する。
この状態において、交流電源101は整流回路102で全波整流されるが、小容量のコンデンサ103が従来に比べて非常に小容量であるため、その出力電圧(小容量コンデンサ103の両端の電圧)は平滑されず、大きなリプルを持ったものとなる。
また、起動の際に必要な印加電圧は、モータ105とシステムの負荷特性によって予め決定されるから、直流母線X、Y間の電圧が低下した状態では必要な電圧が得られず、滑らかな起動を行うことができない。すなわち、かかる電圧状況下での起動は、振動の発生が伴い、最悪の場合では、脱調してしまうため、電圧検出手段116の電圧によって起動のタイミングを決定する必要がある。
前記起動のタイミング決定に際し、電圧検出手段116により検出された直流母線X、Y間の電圧が上昇中であるタイミングで起動許可信号を出力した場合は、必要な電圧に上昇した時点で回転が始まる。かかる制御の場合は、モータ105(回転子)の位置に対して電圧の位相が進んだ状態になるが、進み位相であるので大きな振動が伴うことなく起動することができる。また、電圧の上昇中であるので起動に必要な時間を長く確保することができる。
上述の如く、電圧検出手段116により検出された直流母線X、Y間の電圧が、起動に必要な予め定められた電圧である場合に起動許可信号を出力した場合は、強制同期運転の開始時に確実に回転することができる。
換言すると、電圧検出手段116により検出された最新(現時点)の直流母線X、Y間の電圧が、起動に必要な予め設定した電圧(設定電圧)以上であって、電圧検出手段116により検出された最新の一つ前の時点における直流母線間の電圧が設定電圧以下にある間が、前記起動に必要な電圧を確実に印加することができる最長期間となる。
したがって、本実施の形態1においては、起動タイミング決定手段117が、十分なサンプリング間隔であるとしてこの方式で起動タイミングを決定し、強制同期運転許可信号を出力する。
強制同期運転許可信号を受け取った強制同期運転手段115は、モータ105へ印加しようとする電圧パターンを出力し、切換手段118は位置決め手段114の信号から強制同期運転手段115の信号へと切換え、制御手段119へ出力する。
ここで、通常の整流回路から出力される直流母線間の電圧が大きな容量のコンデンサによって平滑された状態では、強制同期運転手段115によりモータ105を所定の回転数で所定の時間以上駆動することで、位置検出手段111によりモータ105の安定した位置情報と回転が得られる。
しかし、かかる場合において、位置検出手段111の位置情報を元にした運転への切換え直後に整流回路102から所定値以上の電圧が出力されない場合は、位置情報の要件である電圧あるいは電流値が判断できるレベルにないため、位置情報を正確に検出することが困難となる。
したがって、本実施の形態1においては、位置検出手段111の位置情報を基にした運転への切換え直後において、モータ105の位置を正確に検出するために、位置検出手段111の位置情報を基にした運転への切換えを、整流回路102から出力される直流母線X、Y間の電圧が正確に位置検出を行うための予め設定された電圧値以上であるときとしたものである。
これにより位置検出手段111の位置情報を基にした運転への切換え時でも安定して運転することが可能となるので、起動タイミング決定手段117は、位置検出手段111の位置情報を基にした運転許可信号を出力し、切換手段118は、強制同期運転手段115の信号に基づく同期運転から位置検出手段111の位置情報を基にした運転へと切換え、制御手段119へ出力する。
ここで、平滑用に用いた小容量のコンデンサ103で運転する方法として、本実施の形態1においては、直流母線X、Y間の電圧によって位置検出手段111による運転と同期運転手段112による運転を切換える運転制御としているが、小容量のコンデンサ103を運転する手段であればどのような運転方法でも構わない。
次に、小容量のコンデンサ103を用いた運転動作を説明する。
位置検出手段111は、誘起電圧またはモータ電流からモータ105の回転子の回転位置を検出するものであるから、整流回路102の出力電圧が低い時は、所望の電圧(電圧値)または電流(電流値)が十分に確保できないため、その位置検出は不可能となる。
一方同期運転手段112は、位置検出手段111の位置検出のタイミングと常に一致するようにしており、かつ周期測定手段113で測定した周期を基に切換え時間を設定しているために、位置検出信号と全く同一のタイミングで動作している。したがって、前述の位置検出信号が入力されなかった場合、切換手段118は同期運転手段112による運転に切換えるため、前のタイミングと同一のタイミングで運転するように駆動することができる。
電圧検出手段116で検出した小容量のコンデンサ103における両端の電圧が、予め設定された所定値(本実施の形態1では50Vとする)より高ければ切換手段118が位置検出手段111の信号を選択・切換えし、制御手段119に出力する。逆に所定値より低ければ切換手段118は同期運転手段112の信号を選択・切換えし、制御手段119に出力する。
ここで、図示ならびに説明を省略しているが、本実施の形態1においては、小容量のコンデンサ103の両端電圧が変化するのを電圧検出手段116で検出し、出力のPWM制御のデューティにフィードフォワード制御を行い、インバータ104の出力の電圧または電流を一定にするように制御を行うようにしている。
すなわち、速度制御で得られた基底デューティに対し、小容量のコンデンサ103の両端電圧が高い場合はデューティを低くし、逆に低い場合はデューティを高くすることによって、出力の電圧または電流を調整し、ブラシレスDCモータを滑らかに駆動する制御を行っている。
次に、小容量のコンデンサ103における両端の電圧波形について、図2および図1を用いて説明する。図2は本実施の形態1における直流母線X、Y間の電圧波形を示すタイミング図で、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。また交流電源101は、100[V]で50[Hz]の交流電源の場合である。
波形Aは、非常に負荷電流が小さい(ほとんど電流は流れていない)時の状態で、コンデンサ103の充電電荷がほとんど使われず、電圧の低下はほとんどない。ただし、ここでいう負荷電流は、整流回路102の出力電流、すなわちインバータ105への入力電流と定義する。
かかる場合は、整流後の電圧の最大値が141[V]、最小値も141[V]と電圧差はほぼ0である。ここで、電圧の低下の割合を表す概念として、単相交流電源101の半周期の電圧低下率を次式の通り定義するものとする。
電圧低下率%=(瞬時最高電圧[V]−瞬時最低電圧[V])÷瞬時最高電圧[V] …(式1)
次に、負荷電流が徐々に大きくなると、コンデンサ103の充電電荷が使われ、波形Bに示すように瞬時に最低電圧が低下する。ただし、電源電圧から決まる瞬時最高電圧は141[V]で変わらない。この波形Bに示す場合、瞬時最低電圧は40[V]であるので、電圧低下率は、上記(式1)からの計算式により
(141−40)÷141≒0.72
で、約72%となる。
さらに負荷電流が大きくなると、小容量のコンデンサ103にはほとんど充電電荷が蓄えられず、波形Cに示すように瞬時最低電圧がほとんど0[V]まで低下する。ただし、この場合も電源電圧から決まる瞬時最高電圧は141[V]で変わらない。
したがって、波形Cに示す場合、瞬時最低電圧は0[V]であるので、電圧低下率は上記式1に基づいて計算し、100%となる。
このように、小容量のコンデンサ103が小容量の場合、負荷電流を取り出すとほとんど平滑されずに入力の交流電源101を全波整流した波形となる。
次に、負荷電流と瞬時最低電圧、電圧低下率との関係について、図3を用いてさらに詳しく説明する。
図3は、本実施の形態1における負荷電流と瞬時最低電圧・電圧低下率を示す特性図で、横軸は負荷電流を、縦軸は瞬時最低電圧と電圧低下率をそれぞれ示す。また、実線は瞬時最低電圧の特性を、破線は電圧低下率の特性をそれぞれ示す。
同図に示す如く、図2において説明を行った波形Aに示す電流波形の時は、負荷電流が0[A]であり、瞬時最低電圧141[V]、電圧低下率0%である。また波形Bに示す電流波形の時は負荷電流0.25[A]であり、瞬時最低電圧40[V]、電圧低下率72%である。またCに示す電流波形の時は負荷電流0.35[A]であり、瞬時最低電圧0[V]、電圧低下率100%である。さらに、0.35[A]以上の電流においては、瞬時最低電圧、電圧低下率ともに変化はしない。
本実施の形態1におけるモータの駆動装置においては、実使用範囲を、負荷電流0.25[A]以上1.3[A]以下の範囲であるものとする。したがって、実使用範囲においては、電圧低下率は70%以上であるような小容量のコンデンサ103を選定している。
また、本実施の形態1においては、前述したように50[V]を境に切換手段118が同期運転手段112による運転と、位置検出手段111による運転に切換わる動作を行う制御であるため、50[V]以下において位置検出ができない状態であり、その結果、実使用範囲のいずれにおいても位置検出が不可能な部分が含まれることとなる。
次に、図1における動作を更に詳しく図4、図5、図6および図7を用いて説明する。図4は、本実施の形態1のモータの起動装置における位置決め手段の動作を示す流れ図である。図5は、本実施の形態1のモータの起動装置における起動タイミング決定手段の動きを示す流れ図である。図6は、本実施の形態1のモータの起動装置における位置決めから通常運転までの動きを示す流れ図である。図7は、本実施の形態1のモータの起動装置における通常運転時の動きを示す流れ図である。
まず、位置決め手段114動作について図4を用いて説明する。
図4のSTEP101において、まずモータ105を動作させる必要があるかどうかを判断するために、位置決め手段114に運転指令が入力されたかどうかを判定する。運転する必要があればSTEP102に移行し、なければ再びSTEP101に戻る。
次に、STEP102では、運転する必要があると判断されたことにより、モータ105の回転子の位置を期待する位置に移動させるため、予め決められた2相に対して電圧を印加するパターンAの出力を行い、STEP103に移行する。
そして、STEP103においてパターンAの出力を一定時間維持するために時間経過を待つ。時間が経過すればSTEP104に遷移し、時間が経過していない間は再びSTEP102に移行し、パターンAの出力を継続する。パターンAの出力を一定時間継続、維持することで、モータ105の回転子を期待する位置まで移動させる。
次に、STEP104では、パターンAの出力がSTEP103で定めた所定の時間を経過し、モータ105の回転子を所定の位置まで移動させることができたので、次に予め決められた1相に対して電圧を印加するパターンBの出力を行い、STEP105に移行する。
そして、STEP105においてパターンBの出力を一定時間維持するために時間経過を待つ。時間が経過すればSTEP106に移行し、時間が経過していない間は再びSTEP104に戻り、パターンBの出力を継続する。パターンBの出力を一定時間継続、維持することで、モータ105の回転子を最終的に期待する位置にまで移動させることができる。
そして、最後に位置決めが完了したことを示すために、STEP106で位置決め完了信号を出力し、フローを抜ける。
ここで、前記回転子の位置決めに際し、モータ105の回転子を2回(複数回)移動させる理由は、モータ105は、位置検出を行うセンサを具備しないセンサレスモータであり、モータ105の回転子の位置を直接検出していないためである。したがって、1回の移動ではモータ105の回転子が180度反転した状態になる可能性があり、複数回移動させることによって、前述した回転子の180度反転の可能性を低くするためである。
上述の位置決め動作により、モータ105を所定の位置に移動させる位置決めができ、強制同期運転で滑らかに起動することができる。
次に、位置決めが完了後の起動タイミング決定手段117の動作について図5を用いて説明する。
まず、STEP201において、図4のSTEP106で出力される位置決め完了信号が出力されているかどうかを判定する。位置決め完了信号が出力されていれば、STEP202に移行する。また出力されていなければ、STEP203に移行する。
次に、STEP202ではモータ105を起動する可能性がある状態で、印加するべき電圧の印加できる時間を最長にするため、強制同期運転に必要な電圧が印加できるかどうかを調べる。具体的には、電圧検出手段116により検出された電圧が、予め強制同期運転に必要なトルクとモータ105の特性から算出しておいた強制同期必要電圧よりも大きいかどうかを比較する。
すなわち、強制同期必要電圧より今回検出した電圧の方が大きければSTEP204に移行し、前回検出された電圧より今回検出された電圧のほうが小さければ、STEP204へ移行できる条件を検出するまで繰り返し前記電圧の検出を行う。
そして、STEP202で電圧が強制同期必要電圧以上であると判定されるとSTEP204へ移行する。このSTEP204では、電圧検出手段116で前回検出された電圧が、強制同期運転手段115が最初に印加しようとする電圧以下かどうかを判定する。
その結果、前回検出された電圧のほうが小さければ、強制同期運転手段115が最初に印加しようとする電圧を連続的に最長で印加することができるため、STEP205に移行し、起動許可信号を出力し、STEP206に移行する。
一方、前回検出された電圧のほうが大きければ、強制同期運転手段115が最初に印加しようとする電圧を連続的に最長で印加できないため、STEP202へ戻り、繰り返し所定電圧の検出を行う。
そして、STEP205からSTEP206へ移行し、強制同期運転を行っている経過時間をカウントするタイマをクリアすると、STEP207へ移行する。
STEP207では位置決め完了信号をクリアし、再びSTEP201に戻る。
上述の一連の制御処理によって、印加すべき起動時の電圧を、連続して最長となるように確保した時間にわたって印加することができ、モータ105の起動が可能となる。
ここで、モータ105の加速中に電圧が不足することがあっても、圧縮機107のイナーシャの影響により、速度はそれほど低下せず、安定した運転となる。また、多少の速度低下により、強制同期運転手段115の出力パターンよりモータ105が遅れたとしても、前記印加電圧は、モータ105の位相角に対して進んだ状態であるため、トルクを得ることができ、脱調等を生じて停止することはない。また、圧縮機107がレシプロ型であり、圧縮している冷媒がR600aであるため、特にイナーシャが大きく電圧低下時であっても特に速度が低下しにくく、安定した起動、加速が行える。
一方、STEP201において、位置決め完了信号が確認できなかった場合は、STEP203に移行する。また、前述のSTEP207から戻ってきた場合も、STEP207で位置決め完了信号がクリアされているため、このSTEP203に移行する。
STEP203では、強制同期運転許可信号があるかどうかの判定を行う。したがって、前述のSTEP207を経てきた場合は、STEP205で強制同期運転許可信号を出力しているため、STEP208に移行する。また、強制同期運転許可信号がない場合は、STEP201に移行する。
強制同期運転が許可された状態のSTEP208では、強制同期運転の経過時間を測定するためのタイマをスタートさせ、STEP209に移行する。
次の、STEP209では、強制同期運転がスタートして十分な速度が得られる時間が経過したかをタイマの値で判定する。この時間は、モータ105がどのような負荷を駆動するかによって予め設定している。
前記強制同期運転経過タイマの値が所定の値以上であれば、すなわち所定時間が経過すればSTEP210に移行し、所定時間が経過していなければ所定時間が経過するまでSTEP209を繰り返す。
強制同期運転が所定時間以上経過すると、STEP210へ移行し、ここで整流回路102から出力される直流母線X、Y間の電圧を電圧検出手段116で検出する。すなわち、電圧検出手段116が検出した値が、位置検出手段111によってモータ105の推定位置が検出可能な電圧値以上かどうかを判定する。
前記推定位置が検出可能な電圧値は、モータ105の特性に応じて予め設定されているもので、位置検出が可能な電圧以上であれば、STEP211へ移行し、検出電圧値が設定値未満であればSTEP210を繰り返す。
そして、STEP210を経て位置検出手段111による位置検出が可能な状態となると、STEP211でSTEP210の条件を満たした電圧値の判定が行われる。
すなわち、電圧検出手段116によって検出された今回の整流回路102から出力された直流母線X、Y間の電圧が、前回検出した値、すなわち、位置検出手段111によってモータ105の推定位置が検出可能な電圧値以下であるかどうかを判定する。前回の検出電圧が、今回検出した位置検出可能な所定の電圧値以下であれば、STEP212に移行し、前回の検出電圧が、今回検出した前記電圧値よりも高ければSTEP210に再び移行する。
そして、STEP211の条件を満足すると、STEP212では、モータ105の位置を検出することが可能な電圧を、起動直後に連続して最長の時間印加することができる状態にあり、このとき位置検出信号による運転許可信号を出力し、STEP213に移行する。
STEP213では、強制同期運転許可信号をクリアし、フローを抜ける。
次に図6を参照しながら位置決めから強制同期運転、強制同期運転から通常運転を行う際の切換手段118における動作の流れについて説明する。
まず、STEP301において、モータ105が駆動しているかどうかを判定するために、周期測定手段113によって測定された運転周波数が0であるかどうかを判定する。運転周波数が0であればSTEP302へ移行し、そうでなければSTEP305に移行する。
かかる場合において、通常始めはモータ105が停止している状態であるので、STEP302に移行する。
そして、STEP302では起動タイミング決定手段117から出力される起動許可信号があるかどうかを判定する。前記起動許可信号が無いということは、位置決めを継続しなければならないということになり、STEP303の位置決めパターンを出力に移行する。
一方、STEP302で起動許可信号が出力された場合は、強制同期運転手段115による出力パターンで運転することとなるので、STEP304の強制同期運転パターン出力に移行することとなる。
上述の如くSTEP302の判定結果に基づき、STEP303またはSTEP304へ移行し、移行したいずれかのSTEPに設定されたパターンを制御手段119に出力し、フローを抜ける。
ここで、STEP304において強制同期運転パターンが出力されると、正確では無いものの運転周波数が0でなくなるため、処理が再びSTEP301へ戻ると、次のSTEP301ではSTEP305に移行することとなる。
STEP305では、モータ105が回転中である状態で、強制同期運転を継続するか通常運転処理を行うかの判定を行う。このとき、強制同期運転がまだ十分に行われていない、もしくは位置検出が可能な電圧が得られていない状態のときである位置検出による運転許可信号がない場合は、STEP306に移行し、強制同期運転を継続する。
また、STEP307において、位置検出信号による運転許可信号がある場合は、STEP307へ移行し、通常運転に切換える処理を行う。
このように、STEP305の判定結果に基づき、STEP306またはSTEP307へ移行し、移行したSTEPに設定された強制同期運転パターン出力または通常運転処理の呼び出しを行ってフローを抜ける。
図6のフローは、定期的に繰り返し実行され、図5のフローとは並列に処理されるものである。これにより、STEP304に移行したときは、強制同期運転に必要な電圧が確保された状態となり、位置決め後に初めてSTEP307の通常運転処理に移行したときは、位置検出を行うのに必要な電圧が確保された状態となる。
次に、図7を用いて、通常運転時の位置検出手段111による運転と、同期運転手段112による運転の切換えについて説明する。ここで、位置検出ができなくなる電圧の所定値を説明の便宜上50[V]とする。
まずSTEP401において、電圧検出手段116で直流電圧Vdcを検出する。ここでいう直流電圧Vdcは直流母線X、Y間の電圧である。
次にSTEP402において、位置検出ができなくなる電圧の所定値50[V]と比較し、50[V]未満であれば、STEP403に進む。
STEP403においては、切換手段118が同期運転手段112を選択し、切換え動作を行う。
同期運転手段112による運転が選択されると、STEP404に示すように、位置検出信号が前の変化から一定時間経過したかどうかを判断する。この一定時間は、周期測定手段113によりあらかじめ決められた時間であり、回転数によりその時間は変化するものである。
STEP404において、一定時間が経過していなければ、そのまま通過・完了し、一定時間が通過していれば、STEP405に進み、転流すなわち、位置検出を行ったものとしてインバータ104のスイッチング素子を制御手段119で切換える動作を行う。
また、STEP402において、位置検出ができなくなる電圧の所定値50[V]と比較し、50[V]以上であれば、STEP406に進む。
STEP406において、切換手段118は位置検出手段114を選択し、切換え動作を行う。
位置検出手段114が選択されると、STEP407に示すように、位置検出信号が前の状態から変化したかどうかを判断する。
STEP407で状態が変化していなければ、そのまま通過・完了し、状態が変化していれば、STEP408に進み、転流すなわち位置検出を行ったものとしてインバータ104のスイッチング素子を制御手段119で切換える動作を行うと同時に、STEP409で同期運転手段112のタイミングをイニシャライズして合わせる。これにより少しの誤差が蓄積されて大きな誤差になることを防ぎ、安定した運転を実現することができる。
これらの動作を一定時間内に繰り返すことにより、常に電圧検出手段116で直流電圧の状態を検出し、その状態によって位置検出手段114と同期運転手段112との信号を切換手段118で切換えることができる。その結果、直流電圧の低い位置検出ができない状態においても転流動作を行うことができ、運転を継続することができる。
以上説明した動作を行った場合の電圧、電流それぞれの波形について、さらに図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態1のモータの起動装置における各部の波形を示すタイミング図である。
図8において、(A)は直流電圧であり、直流母線X、Y間に接続された小容量のコンデンサ103における両端の電圧である。(B)は電圧検出であり、電圧検出手段116の出力である。電圧検出手段116では、(A)の直流電圧を所定電圧(本実施の形態1では50[V])と比較した結果を出力し、50[V]以上であればHighレベルを、50[V]未満であればLowレベルの信号を出力する。ここで、図8の時間T6と時間T7の間は、直流電圧が50[V]以下である場合を示す。(C)は位置検出であり、位置検出手段114の出力を示す。直流電圧が50[V]以上の時は位置検出が可能で、図8の時間T1〜T5、T8〜T12の区間では位置検出を正常な状態で行うことができることを示している。
一方、図8の時間T6と時間T7の間では、直流電圧が50[V]未満であるので、位置検出手段114からの位置検出信号が正常に出力されず、図示したようにタイミングのずれた位置検出信号が得られる。この信号のまま転流を行うと誤動作を引き起こし、過電流が流れてシステムが停止する可能性が高い状態にある。
また、(D)は位置推定信号(同期信号)であり、同期運転手段112の出力を示す。同期信号における周期は、周期測定手段113で測定されたものであり、かつ位置検出手段114の転流タイミングで同期させているのでほぼ位置検出信号と同等の信号となり、かつ直流電圧の影響を受けない信号となる。
そこで時間T6と時間T7の間においては、切換手段118で同期運転手段112の信号に切換えることにより安定した運転信号が得られることとなる。
また、(E)は切換出力であり、切換手段118の出力の信号を示すものであるが、図示したように位置推定信号と略同期状態にある安定した信号が得られる。
以上のように、切換手段118は、時間T1〜T5および時間T8〜T12においては位置検出手段114の出力を選択して出力し、また時間T6と時間T7の間においては同期運転手段112の出力を選択して出力する。
そして、切換手段118の出力は、制御手段119に入力され、制御手段119ではインバータ104の6個のスイッチング素子を、図8の(F)〜(K)に示すようにON/OFFさせる。図8においてはHighレベルがON、LowレベルがOFF状態を示している。
インバータ104の出力電圧波形の一例として、図8(L)にU相電圧を示す。出力の最大電圧は直流電圧により規制され、破線で示すU相電圧の包絡線は、同図(A)の直流電圧の波形に一致する。残るV相、W相についても同様の波形が所定の位相で形成されるものである。
前述した通り、直流電圧の電圧レベルにより、PWM制御のデューティを変更しているので、図8(K)の転流Wに示すとおり、電圧の低いところ(例えば時間T5〜T6間)ではデューティを高くし、電圧の高いところ(例えば時間T11〜T12間)ではデューティを低くしている。これにより電圧変動による電流の不安定を未然に防止することができる。
以上のように、本実施の形態1においては、交流電源101と、交流電源101から出力される交流を直流に整流する整流回路102と、整流回路102より得られる直流を交流に変換するインバータ104と、インバータ104から得られる交流を入力とするモータ105と、インバータ104の直流母線X、Y間に接続される小容量のコンデンサ103と、直流母線X、Y間の電圧を検出する電圧検出手段116と、電圧検出手段116により検出された直流母線X、Y間の電圧によってモータ105を起動するタイミングを決定する起動タイミング決定手段117と、電圧検出手段116により検出されたインバータ104の直流母線X、Y間の電圧と起動タイミング決定手段117で決定されたタイミングにより、インバータ104からモータ105へ印加される電圧を制御する制御手段119を備えたことにより、予め定められた起動のための電圧を、所定のタイミングで印加し、モータ105を起動するものである。その結果、平滑用のコンデンサ103の容量が極めて小さく、直流母線X、Y間の電圧に大きな脈動が有る場合であっても、振動を抑え、脱調することを抑止し、安定した起動を行うことができる。
また、本実施の形態1では、起動タイミング決定手段117が、直流母線X、Y間の電圧が上昇中であるときにモータ105を起動するタイミングとするため、予め決められた起動のための印加電圧を印加する時間が長く得られることとなり、より安定した起動を行うことができる。
また、本実施の形態1では、起動タイミング決定手段117により、モータ105を起動するタイミングを、インバータ104の直流母線X、Y間の電圧があらかじめ設定された電圧値以上であるときとしたことにより、モータ105を起動するタイミングは、必ずモータ105を起動するために予め決められた印加電圧を印加することとなり、その結果、電圧検出段116による電圧の検出間隔が長く、電圧の上昇下降を検出できないような場合でも、確実に安定した起動を行うことができる。
また、本実施の形態1は、モータ105を起動するためのタイミングを、インバータ104の直流母線X、Y間の電圧を検出した最新の結果が前記予め設定した電圧以上であり、また、その最新結果の一つ前の結果が予め設定した電圧以下の場合とすることにより、モータ105を起動するタイミングは、必ず予め設定された電圧が印加され、また電圧が印加できる時間が最長状態にある環境となり、起動直後に極めて安定した回転が得られる。
さらに、本実施の形態1は、モータ105に所定の速度で回転するよう電圧を印加する強制同期運転手段115による運転を開始するタイミングを、予め設定した電圧が強制同期運転に最低限必要な電圧以上としたことにより、強制同期運転でモータ105を回転させるのに必要な電圧を、強制同期開始直後に確保することができ、確実に強制同期運転を開始することができる。
また、本実施の形態1は、モータ105のセンサレス運転(位置を位置検出手段111で推定しながら行う運転)を開始するタイミングを、位置検出手段111でモータ105の位置を推定するために最低限必要な電圧が得られる範囲としたことにより、センサレス運転を開始したときに、モータ105の位置を推定することができ、確実にセンサレス運転を開始することができる。
さらに、本実施の形態1は、電圧検出手段116が検出する直流母線X、Y間の電圧が実使用の範囲で電圧低下率を0.7以上としたことにより、電圧検出手段116により検出された電圧がほぼ0Vまで低下するような小容量のコンデンサ103により駆動することができ、その結果、非常に小型のモータの起動装置を実現することができる。
また、本実施の形態1では、モータ105を、圧縮機107の駆動用としたことにより、位置検出センサを取付けることが困難な用途でのモータ駆動が実現でき、大幅な起動装置の小型化を実現することができる。
さらに、本実施の形態1では、圧縮機107をレシプロ型圧縮機としたもので、レシプロ型圧縮機は、イナーシャが大きく、起動し加速中の印加電圧が不足する事態が生じても回転が大きく落ち込まないため、より安定した起動および加速を行うことができる。
また、本実施の形態1では、圧縮機107が凝縮器108、減圧器109、蒸発器110等とともに冷凍空調システムを構成するもので、前記小容量コンデンサで実現することで小型のモータの起動装置を提供することができる。したがって、これまで考えられていた以上の小型のシステムが実現でき、例えば、冷蔵庫に適用した場合、食品収納容積を大きく確保できる冷蔵庫が得られる。
また、本実施の形態1では、圧縮機107が圧縮する冷媒ガスをR600aとしたこにより、冷凍能力の低下を補うことができ、これに起因して圧縮機107の気筒容積を大きくすることとなり、より大きなイナーシャを持つ圧縮機が構成される。その結果、より安定した起動および加速を行うことができ、R600aを冷媒ガスとする安価な圧縮機を提供することができる。
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2におけるモータの起動装置を備えた電気洗濯機の電気回路構成を示すブロック図である。ここで、モータの駆動装置については、先の実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図9において、電気洗濯機201は、洗濯機外枠202を有し、この洗濯機外枠202内には外槽203が吊り棒204により吊り下げられている。外槽203内には、回転自在に洗濯兼脱水槽205が配設されている。
洗濯兼脱水槽205の底部には、攪拌翼206が回転自在に取付けられている。洗濯兼脱水槽205および攪拌翼206は、洗濯機構を構成する主要素である。
洗濯機外枠202内の外槽203下側のスペースには、洗濯兼脱水槽205及び攪拌翼206を回転させるモータ105が配置されている。また、洗濯機外枠202には、単相交流電源101、整流回路102、インバータ104、先の実施の形態1で説明した小容量のコンデンサ103、位置検出手段111、同期運転手段112、周期測定手段113、位置決め手段114、強制同期運転手段115、電圧検出手段116、起動タイミング決定手段117、切換手段118、制御手段119が、先の実施の形態1と同様の機能を果たすべく、接続構成されている。
上記電気洗濯機201において、位置決め手段114には、電気洗濯機201の動作を制御するマイクロコンピュータ(図示せず)から、ユーザの操作(選択設定された洗濯モード)に応じた指令回転数を示す指令信号が入力される。
次に、実施の形態2の電気洗濯機201における動作について説明する。ここで、前記各回路、各手段の動作内容は、先の実施の形態1と同様であるため、電気洗濯機としての動作内容を中心に説明する。
上記電気洗濯機201において、ユーザが所定の操作を行うと、前記マイクロコンピュータから位置決め手段114に前述の指令信号(運転信号)が入力され、電圧検出手段116で検出された電圧により、起動タイミング決定手段117がモータ105の起動タイミングを決定し、モータ105が起動する。
これにより、モータ105が駆動されて、攪拌翼206あるいは洗濯兼脱水槽205が回転し、洗濯兼脱水槽205内にある衣服等の洗濯や脱水が行われる。
したがって、電気洗濯機201では、前記ユーザの操作に応じた内容で動作し、洗濯物の量や汚れに応じた適切な動作が実行される。
以上のように、本実施の形態2では、モータ105が電気洗濯機201を起動する構成において、小型化したモータの起動装置を搭載できるため、従来の電気洗濯機と同じ外形寸法で洗濯兼脱水槽の大容量化が達成できる。
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3におけるモータの起動装置を備えた電気乾燥機の電気回路構成を示すブロック図である。ここで、モータの駆動装置については、先の実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図10において、電気乾燥機301は、乾燥機外枠302を有し、この乾燥機外枠302内には、ドラム303が回転可能に設けられており、このドラム303の回転により、内部に収容された被乾燥物を攪拌乾燥する。ドラム303は、電気乾燥機の攪拌機構を構成する主要部であり、このドラム303にはモータ105の回転軸が連結されており、モータ105によって回転駆動される。
そして、乾燥機外枠302の内部には、モータ105を起動、駆動するための、整流回路102、インバータ104、先の実施の形態1で説明した小容量のコンデンサ103、位置検出手段111、同期運転手段112、周期測定手段113、位置決め手段114、強制同期運転手段115、電圧検出手段116、起動タイミング決定手段117、切換手段118、制御手段119と、乾燥機外枠302の外部に単相交流電源101が、実施の形態1と同様の機能を果たすべく、接続構成されている。
ここで、位置決め手段114には、電気乾燥機301の動作を制御するマイクロコンピュータ(図示せず)から、ユーザの操作(選択設定された乾燥モード)に応じた指令回転数を示す指令信号が入力される。
次に、実施の形態3の電気乾燥機301における動作について説明する。ここで、前記各回路、各手段の動作内容は、先の実施の形態1、2と同様であるため、電気乾燥機としての動作内容を中心に説明する。
上記電気乾燥機301において、ユーザが所定の操作を行うと、マイクロコンピュータから位置決め手段114に運転信号が入力され、電圧検出手段116で検出された電圧により、起動タイミング決定手段117がモータ105の起動タイミングを決定し、モータ105が起動する。
その結果、乾燥用ヒータ(図示せず)に通電され、モータ105が駆動される。その結果、ドラム303が回転して、ドラム303内の衣服等が乾燥される。
したがって、本実施の形態3の電気乾燥機301においては、前記ユーザの操作に応じた内容で動作し、乾燥物の量や汚れに応じた適切な乾燥動作が実行される。
以上のように、本実施の形態3では、モータ105が電機乾燥機301を起動する構成において、小型化したモータの起動装置を搭載できるため、従来の電気乾燥機と同じ外形寸法でドラムの大容量化が達成できる。
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4におけるモータの起動装置を備えた送風機の電気回路構成を示すブロック図である。ここで、モータの駆動装置については、先の実施の形態1あるいは2、3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図11において、送風機401は、送風機構を構成するファン402と、このファン402を回転駆動するモータ105と、このモータ105を起動および駆動するための、整流回路102、インバータ104、先の実施の形態1で説明した小容量のコンデンサ103、位置検出手段111、同期運転手段112、周期測定手段113、位置決め手段114、強制同期運転手段115、電圧検出手段116、起動タイミング決定手段117、切換手段118、制御手段119を具備した構成となっている。そして、送風機401は、単相交流電源101と接続され、単相交流電圧が印加されるよう構成されている。
ここで、送風機401の内部に配置されているモータ105、整流回路102、インバータ104、小容量のコンデンサ103、位置検出手段111、同期運転手段112、周期測定手段113、位置決め手段114、強制同期運転手段115、電圧検出手段116、起動タイミング決定手段117、切換手段118、制御手段119、そして単相交流電源101は、先の実施の形態1と同様の機能、構成を有するものである。
そして、上記送風機401において、位置決め手段114には、送風機401の動作を制御するマイクロコンピュータ(図示せず)からユーザの操作(選択設定された送風モード)に応じた指令回転数を示す運転信号が入力される。
次に、実施の形態4の送風機401における動作について説明する。ここで、前記各回路、各手段の動作内容は、先の実施の形態1と同様であるため、送風機としての動作内容を中心に説明する。
上記送風機401において、ユーザが所定の操作を行うと、マイクロコンピュータから位置決め手段114に運転信号が入力され、電圧検出手段116により検出された電圧により、起動タイミング決定手段117がモータ105の起動タイミングを決定し、モータ105が起動する。
これにより、モータ105が駆動されて、ファン402が回転し、送風が行われる。その結果、送風機401では、所定の送風量と風の強さでの送風が行われる。もちろん、モータ105の回転数を調整することにより、風量の調整を行うことができるものである。
以上のように、本実施の形態4においても、小型化したモータの起動装置を搭載できるため、従来の送風機に比べて小型化および軽量化を達成することができ、可搬性の高い送風機を提供することができる。
(実施の形態5)
図12は、本発明の実施の形態5におけるモータの起動装置を備えた電気掃除機の電気回路構成を示すブロック図である。ここで、モータの駆動装置については、先の実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図12において、電気掃除機501は、掃除機本体502と、底面に吸引口(図示せず)が形成された床用吸込具503と、一端が床用吸込具503に、他端が掃除機本体502に接続された吸塵ホース504を有している。
また、掃除機本体502は、吸塵ホース504の掃除機本体側端部が接続された集塵室505と、この集塵室505の吹き出し側に配置された電動送風機506を備えている。
電動送風機506は、吸塵機構を構成するもので、集塵室505の吹き出し側に対向するよう配置されたファン507と、このファン507を回転させるモータ105を具備している。
モータ105には、このモータ105を起動および駆動するための整流回路102、インバータ104、先の実施の形態1で説明した小容量のコンデンサ103、位置検出手段111、同期運転手段112、周期測定手段113、電圧検出手段116、位置決め手段114、強制同期運転手段115、起動タイミング決定手段117、切換手段118、制御手段119と単相交流電源101が実施の形態1と同様の機能動作を行うように接続構成されている。
したがって、ファン507は、その回転により、床用吸込具503の底面にある吸引口(図示せず)から吸塵ホース504と集塵室505を介して空気を吸引する。
上記電気掃除機501において、位置検出手段111には、ファン507の動作を制御するマイクロコンピュータ(図示せず)からユーザの操作(選択設定された吸塵モード)に応じた指令回転数を示す運転信号が入力される。
次に、実施の形態5の電気掃除機501における動作について説明する。ここで、前記各回路、各手段の動作内容は、先の実施の形態1と同様であるため、電気掃除機としての動作内容を中心に説明する。
上記電気掃除機501において、ユーザが所定の操作を行うことにより、マイクロコンピュータから位置決め手段114に運転信号が入力される。
その結果、位置決め手段114に運転信号が入力されると、電圧検出手段116により検出された電圧により、起動タイミング決定手段117がモータ105の起動タイミングを決定し、モータ105が起動する。
その結果、ファン507が回転し、掃除機本体502内に吸引力が発生する。掃除機本体502で発生した吸引力は、吸塵ホース504を介して接続された床用吸込具503の底面に設けた吸引口から空気を吸引する。これにより、床用吸込具503の吸引口から被掃除面の塵埃が空気とともに吸引され、掃除機本体502の集塵室505に集塵される。
本実施の形態5の電気掃除機501においては、モータ105の回転数が制御されて、吸引力の強さの調整が行われる。
以上のように、本実施の形態5においても、小型化したモータの起動装置を搭載できるため、可搬性が高く、ユーザにとってハンドリングが容易な電気掃除機を提供することができる。