JP4955830B1 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきを抑制できる固体酸化物形燃料電池(SOFC)を提供すること。
【解決手段】このSOFCでは、燃料極20にインターコネクタ30が設けられ、このインターコネクタ30の表面に導電膜70が形成される。この導電膜70は、N型半導体(例えば、LaNiO)からなる。一般に、N型半導体は、温度が高いほど導電率が小さく(電流が流れ難く)なる性質を有する。従って、インターコネクタ30近傍の導電膜70内において電流密度が高い部位(従って、温度が高い部位)ほど導電率が小さく(電流が流れ難く)なる。この作用により、何らかの理由によって「インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が発生しても、このばらつきが抑制され得る。
【選択図】図14

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池に関する。
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)(の発電部)は、燃料側電極に、固体電解質からなる電解質膜、空気側電極を順に積層することで形成される。このSOFC(の発電部)に対して、燃料側電極に燃料ガス(水素ガス等)を供給するとともに空気側電極に酸素を含むガス(空気等)を供給することにより、電解質膜の両面の酸素ポテンシャル差に基づいて燃料側電極と空気側電極との間に電位差が発生する。
SOFCでは、通常、燃料側電極と空気側電極の何れか一方又は両方のそれぞれにインターコネクタ(集電用の導電性接続部材)が電気的に接続されるように設けられる。この(これらの)インターコネクタを介して前記電位差に基づく電力が外部に取り出される。
このようにインターコネクタが設けられたSOFCに関し、特許文献1では、燃料側電極に緻密な導電性セラミックからなるインターコネクタが設けられ、このインターコネクタの表面にP型半導体からなる導電膜が設けられたSOFCが記載されている。このようにインターコネクタの表面にP型半導体からなる導電膜を設けると、理由は明確ではないが電流を効率良く流すことができる(即ち、導電性が向上する)、と記載されている。
特許第4146738号公報
一般に、電流は、電気抵抗がより小さくなる経路を通過し易い傾向がある。従って、上記文献に記載のSOFCにおいて、導電膜→インターコネクタ→燃料側電極へと電流が流れる際、インターコネクタへ向けて導電膜内を流れる電流の流れの態様(電流の向き、範囲)等に依存して、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の大きさ(単位面積当たりの電流の大きさ、電流密度)にばらつきが生じ得る(後述する図13、図17を参照)。一般に、電流密度が大きい部位ほどジュール熱等に起因する発熱の度合が大きい。従って、インターコネクタ内及びその近傍において電流密度が高い部位ほど温度が高くなる。
他方、上記文献に記載のSOFCでは、上述のように、導電膜の材質としてP型半導体が使用されている。一般に、P型半導体は、温度が高いほど導電率が大きくなる性質を有する。従って、インターコネクタ近傍の導電膜内において電流密度が高い部位ほど導電率が大きくなる。このことは、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきが助長されることを意味する。
以上のように、上記文献に記載のSOFCでは、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度にばらつきが生じると、そのばらつきが助長される。この結果、インターコネクタ内及びその近傍において温度のばらつきが増大し、局所的に大きい熱応力が発生するという問題が発生し得る。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきを抑制できる固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明に係るSOFCは、燃料ガスと接触して前記燃料ガスを反応させる燃料側電極と、前記燃料側電極に設けられた固体電解質からなる電解質膜と、前記酸素を含むガスを反応させる空気側電極であって前記電解質膜を前記燃料側電極と空気側電極とで挟むように前記電解質膜に設けられた空気側電極と、からなる固体酸化物形燃料電池の発電部と、前記燃料側電極又は前記空気側電極に電気的に接続されるように設けられたインターコネクタとを備える。
本発明に係るSOFCの特徴は、前記インターコネクタの表面に形成された導電膜であって、650〜850℃の範囲内にて温度が高いほど導電率が小さくなる性質を有する導電性セラミックス材料からなる導電膜を備えたことにある。前記導電膜としては、N型半導体が採用され得る。
SOFCの作動温度は、650〜850℃である。従って、上記構成によれば、SOFCの作動中において、上記文献に記載したSOFCとは逆に、インターコネクタ近傍の導電膜内において電流密度が高い部位(温度が高い部位)ほど導電率が小さくなる。このことは、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきが抑制されることを意味する。この結果、インターコネクタ内及びその近傍において温度のばらつきが小さくなり、局所的に大きい熱応力が発生し難くなる。
上記本発明に係るSOFCにおいて、前記導電膜は、化学式LaNi1−x−yCuFe(x>0、y>0、x+y<1)で表わされる材料(N型半導体)からなることが好適である。この材料は、導電率が、例えば750℃において800S/cm以上と高く、且つ、熱膨張率が、例えば13.5ppm/K以下と低い。従って、この材料は、導電率と熱膨張率の両面において導電膜として好適な材料であるといえる。この材質についての詳細は、特願2010−070793に記載されている。
前記インターコネクタが前記燃料側電極に設けられている場合、前記インターコネクタは、化学式Ln1−xCr1−y−z(ただし、Ln:Y及びランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、A:Ca,Sr,及びBaからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、B:Ti,V,Mn,Fe,Co,Cu,Ni,Zn,Mg,及びAlからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、0.025≦x≦0.3、0≦y≦0.22、0≦z≦0.15)で表わされるクロマイト系材料(緻密な導電性セラミックス)からなることが好適である。例えば、LnとしてランタンLaが使用された「ランタンクロマイトLaCrO」が採用され得る。
これは、燃料側電極のインターコネクタ(端子電極)の一端(内側)が還元雰囲気に曝され且つ他端(外側)が酸化雰囲気に曝されることに基づく。酸化・還元の両雰囲気で安定な導電性セラミックスとしては、現状では、LaCrOが優れている。
或いは、前記インターコネクタが前記燃料側電極に設けられている場合、前記インターコネクタは、化学式(A1−x,B1−z(Ti1−y,D)O(ただし、A:アルカリ土類元素から選択される少なくとも1種類の元素、B:Sc,Y,及びランタノイド元素から選択される少なくとも1種類の元素、D:第4周期、第5周期、第6周期の遷移金属、及びAl,Si,Zn,Ga,Ge,Sn,Sb,Pb,Biから選択される少なくとも1種類の元素、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、−0.05≦z≦0.05)で表わされるチタン酸化物(緻密な導電性セラミックス)からなることが好適である。例えば、AとしてストロンチウムSrが使用された「ストロンチウムチタネートSrTiO」が採用され得る。SrTiOも酸化・還元の両雰囲気で安定である。
本発明の実施形態に係る燃料電池セルを示す斜視図である。 図1に示す燃料電池セルの2−2線に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの作動状態を説明するための図である。 図1に示す燃料電池セルの作動状態における電流の流れを説明するための図である。 図1に示す支持基板を示す斜視図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第1段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第2段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第3段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第4段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第5段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第6段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す燃料電池セルの製造過程における第7段階における図2に対応する断面図である。 図1に示す本発明の実施形態の比較例における、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきを説明するための図2に対応する図である。 図1に示す本発明の実施形態における、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきを説明するための図2に対応する図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る燃料電池セルの図2に対応する断面図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る燃料電池セルの正面図である。 図16に示す本発明の他の実施形態の変形例の比較例における、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきを説明するための図16のZ部の拡大図である。 図16に示す本発明の他の実施形態の変形例における、インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきを説明するための図16のZ部の拡大図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る燃料電池セルの図14に対応する図である。 本発明の実施形態の他の変形例に係る燃料電池セルの図5に対応する斜視図である。 図20に示した支持基板を採用した燃料電池セルの図2に対応する断面図である。 図21に示す支持基板の凹部に埋設された燃料極及びインターコネクタの状態を示した平面図である。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセルを示す。このSOFCセルは、長手方向を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このSOFCセルの全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが5〜50cmで長手方向に直交する幅方向の長さが1〜10cmの長方形である。このSOFCセルの全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCセルの全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有することが好ましいが、この限りでない。以下、図1に加えて、このSOFCセルの図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2を参照しながら、このSOFCセルの詳細について説明する。図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。支持基板10の側端部は、外側に(幅方向に)凸となる曲面状を呈している。支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板10の厚さは、1〜5mmである。以下、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図2に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)の上には、直方体状の燃料極20が設けられている。燃料極20は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。燃料極20は、後述する固体電解質膜40に接する燃料極活性部22と、燃料極活性部22以外の残りの部分である燃料極集電部21とから構成される。燃料極活性部22を上方からみた形状は、燃料極集電部21が存在する範囲に亘って幅方向に延びる長方形である。
燃料極活性部22は、例えば、酸化ニッケルNiOとイットリア安定化ジルコニアYSZ(8YSZ)とから構成され得る。或いは、酸化ニッケルNiOとガドリニウムドープセリアGDCとから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、酸化ニッケルNiOとイットリア安定化ジルコニアYSZ(8YSZ)とから構成され得る。或いは、酸化ニッケルNiOとイットリアYとから構成されてもよいし、酸化ニッケルNiOとカルシア安定化ジルコニアCSZとから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さは、50〜500μmである。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸素イオン伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
各燃料極20(より具体的には、各燃料極集電部21)の上面の所定箇所には、インターコネクタ30が形成されている。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な導電性セラミックス材料からなる焼成体である。インターコネクタ30を上方からみた形状は、燃料極20が存在する範囲に亘って幅方向に延びる長方形である。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
インターコネクタ30は、例えば、クロマイト系材料から構成され得る。クロマイト系材料の化学式は、Ln1−xCr1−y−z(ただし、Ln:Y及びランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、A:Ca,Sr,及びBaからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、B:Ti,V,Mn,Fe,Co,Cu,Ni,Zn,Mg,及びAlからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、0.025≦x≦0.3、0≦y≦0.22、0≦z≦0.15)で表わされる。この場合、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。
或いは、インターコネクタ30は、チタン酸化物から構成され得る。チタン酸化物の化学式は、(A1−x,B1−z(Ti1−y,D)O(ただし、A:アルカリ土類元素から選択される少なくとも1種類の元素、B:Sc,Y,及びランタノイド元素から選択される少なくとも1種類の元素、D:第4周期、第5周期、第6周期の遷移金属、及びAl,Si,Zn,Ga,Ge,Sn,Sb,Pb,Biから選択される少なくとも1種類の元素、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、−0.05≦z≦0.05)で表わされる。この場合、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成され得る。
複数の燃料極20が設けられた状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成された部分を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、Y(イットリア)を含有したYSZ(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、複数の燃料極20が設けられた状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。ここで、緻密材料からなる「インターコネクタ30及び固体電解質膜40」が、「ガスシール部」に対応する。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70(前記「導電膜」に対応)が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
空気極集電膜70は、「650〜850℃の範囲内にて温度が高いほど導電率が小さくなる性質を有する導電性セラミックス材料」から構成されている。係る材料の典型例としては、N型半導体等が挙げられる。このような材料を採用することによる作用・効果については後述する。
具体的には、空気極集電膜70は、LaNiO系の材料で構成され得る。この中でも、化学式LaNi1−x−yCuFe(x>0、y>0、x+y<1)で表わされる材料が好適である。この材料は、導電率が、例えば750℃において800S/cm以上と高く、且つ、熱膨張率が、例えば13.5ppm/K以下と低く構成され得る。従って、この材料は、導電率及び熱膨張率の両面において空気極集電膜70として好適な材料であるといえる。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、「電気的接続部」に対応する。
以上、説明した「横縞型」のSOFCセルに対して、図3に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O+2e→O2− (於:空気極60) …(1)
+O2−→HO+2e (於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図4に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図3に示すように、このSOFCセル全体から(具体的には、図3において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCセルの製造方法の一例について図5〜図12を参照しながら簡単に説明する。図5〜図12において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図5に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図5に示す支持基板の成形体10gの部分断面を表す図6〜図12を参照しながら説明を続ける。
図6に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図7に示すように、支持基板の成形体10gの上下面の所定位置に、燃料極の成形体(21g+22g)が形成される。各燃料極の成形体(21g+22g)は、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図8に示すように、各燃料極の成形体21gの外側面の所定箇所に、インターコネクタの成形膜30gが形成される。各インターコネクタの成形膜30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図9に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)が埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成された部分を除いた全面(支持基板の成形体10gの側端部の表面を含む)に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図10に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1400〜1500℃で1〜20時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCセルにおいて空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図11に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図12に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LaNiO)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて900〜1100℃で1〜20時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCセルが得られる。以上、図1に示したSOFCセルの製造方法の一例について説明した。
(インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつきの抑制)
次に、上述した本実施形態のSOFCにおける、インターコネクタ30の表面に形成された空気極集電膜70の材質の作用・効果について述べる。
本実施形態のSOFCでは、上述した図4に示すように、SOFC作動中において、空気極集電膜70→インターコネクタ30→燃料極20へと電流が流れる際、電流は、大略的には図4において、空気極集電膜70内にて先ず右方向に流れた後に下方向へ向きを変え、下方向へ向けて空気極集電膜70→インターコネクタ30→燃料極20へと流れる。
他方、一般に、電流は、電気抵抗がより小さくなる経路を通過し易い傾向がある。従って、本実施形態のSOFCでは、図13に示すように、インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流に関し、通過する位置が図13においてインターコネクタ30の左右方向における左側にあるほど、電流の大きさ(単位面積当たりの電流の大きさ、電流密度)が大きくなると考えられる。これは、通過する位置が図13においてインターコネクタ30の左右方向における左側にあるほど、電流の径路の距離が短くなること(従って、電気抵抗が小さくなること)等に起因する。なお、図13において、黒い矢印が太く且つ長いほど電流密度が大きいことを示す(後述する図14、図17、及び図18においても同様)。
このように、本実施形態では、インターコネクタ30へ向けて空気極集電膜70内を流れる電流の流れの向きに大きく依存して、インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度に不可避的にばらつきが生じ得る。加えて、一般に、電流密度が大きい部位ほどジュール熱等に起因する発熱の度合が大きい。従って、本実施形態では、インターコネクタ30内及びその近傍において電流密度が高い部位ほど温度が高くなる。
ここで、本実施形態に係る空気極集電膜70の材質の作用・効果を説明するため、先ず、比較例として、図13に示すように、空気極集電膜70の材質がP型半導体である場合を考察する。P型半導体としては、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)、LSM=(La,Sr)MnO(ランタンストロンチウムマンガナイト)等が挙げられる。
一般に、P型半導体は、温度が高いほど導電率が大きくなる性質を有する。従って、インターコネクタ30近傍の空気極集電膜70内において電流密度が高い(温度が高い部位)部位ほど導電率が大きく(電流が流れ易く)なる。このことは、上述した「インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が助長されることを意味する。
以上のように、空気極集電膜70の材質がP型半導体である場合、インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度にばらつきが一度生じると、そのばらつきが助長される。この結果、インターコネクタ30内及びその近傍において温度のばらつきが増大し、局所的に大きい熱応力が発生するという問題が発生し得る。
これに対し、図14に示すように、本実施形態では、上述したように、空気極集電膜70の材質として、「650〜850℃のSOFCの作動温度範囲内にて温度が高いほど導電率が小さくなる性質を有する導電性セラミックス材料」が使用される。この材料の典型例としては、N型半導体(例えば、LaNiO)が挙げられる。
本実施形態では、SOFCの作動中において、上述した比較例とは逆に、インターコネクタ30近傍の空気集電膜70内において電流密度が高い部位(温度が高い部位)ほど導電率が小さく(電流が流れ難く)なる。このことは、上述した「インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が抑制されることを意味する。従って、インターコネクタ30内及びその近傍において温度のばらつきが小さくなる、という作用・効果が奏される。この結果、インターコネクタ30内及びその近傍において局所的に大きい熱応力が発生し難くなる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の発電素子部Aが設けられているが、図15に示すように、支持基板10の片側面のみに複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層で構成されてもよい。
また、上記実施形態では、「横縞型」のSOFCが採用されているが、図16に示すように、所謂「縦縞型」のSOFCが採用されてもよい。図16において図2等に示す構成と対応する構成については図2等に示す符号と同じ符号が付されている。
図16に示す「縦縞型」のSOFCでは、2つのSOFCセルがセルの厚さ方向に積層されている。各SOFCセルの平板状の支持基板は、内部に燃料ガス流路を備えた燃料極20を兼ねている。各支持基板(燃料極)について、その上面には発電素子部Aが設けられ、その下面にはインターコネクタ30が設けられている。インターコネクタ30の下面には導電膜70が形成されている。互いに隣り合う2つのSOFCセルの一方の導電膜70と他方の発電素子部Aの空気極60とは、金属製の集電用部材で電気的に接続されている。この結果、互いに隣り合うSOFCセルが、金属製集電部材、導電膜70、及びインターコネクタ30を介して電気的に直列に接続されている。
図16に示す実施形態では、SOFC作動中において、電流は、大略的には図16において上方向に向けて集電用メッシュ→導電膜70→インターコネクタ30→燃料極20へと流れる。
他方、上述したように、電流は、電気抵抗がより小さくなる経路を通過し易い傾向がある。従って、図16に示す実施形態では、図17に示すように、インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流に関し、通過する位置がインターコネクタ30の左右方向において金属製集電部材が導電膜70と接触する領域では、電流の電流密度が大きくなる。ところが、金属製集電部材と導電膜70が接触していない領域では、導電膜70の内部を電流が余分に長く流れるため、電流が流れる経路が長くなり、電気抵抗が大きくなる。即ち、金属製集電部材が導電膜70と接触する領域の端部から離れるにつれて電流の電流密度が小さくなる。
このように、図16に示す実施形態では、インターコネクタ30へ向けて導電膜70内を流れる電流の流れの範囲に大きく依存して、インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度に不可避的にばらつきが生じ得る。従って、図2等に示した実施形態と同様、図16に示す実施形態でも、インターコネクタ30内及びその近傍において電流密度が高い部位ほど温度が高くなる。
ここで、図16に示す実施形態においても、図17に示すように導電膜70の材質がP型半導体である場合、図13に示した場合と同じ理由により、インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度にばらつきが一度生じると、そのばらつきが助長される。この結果、インターコネクタ30内及びその近傍において温度のばらつきが増大し、局所的に大きい熱応力が発生するという問題が発生し得る。
これに対し、図18に示すように、導電膜70の材質がN型半導体(例えば、LaNiO)である場合、図14に示した場合と同じ理由により、SOFCの作動中において、上述した「インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が抑制され得る。従って、インターコネクタ30内及びその近傍において温度のばらつきが小さくなる、という作用・効果が奏される。この結果、インターコネクタ30内及びその近傍において局所的に大きい熱応力が発生し難くなる。
加えて、上記実施形態では、N型半導体の導電膜が形成されたインターコネクタが燃料極に設けられているが、N型半導体の導電膜が形成されたインターコネクタ(緻密な導電性セラミックス)が空気極に設けられていてもよい。この場合も、上述と同様、「インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が抑制され得る。
また、上記実施形態では、図14に示すように、インターコネクタ30の外側面に、N型半導体(例えば、LaNiO)からなる空気極集電膜70が直接形成(積層)されているが、図19に示すように、インターコネクタ30の外側面にN型半導体(例えば、LaNiO)からなる膜が直接形成(積層)され、このN型半導体の膜の外側面に、LSCF等のP型半導体からなる空気極集電膜70が直接形成(積層)されていてもよい。これによっても、上述と同様、「インターコネクタ内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が抑制され得る。
また、上記実施形態では、平板状の支持基板10の外側面上(平面上)に燃料極20が形成(積層)され且つ燃料極20の外側面上(平面上)にインターコネクタ30が形成(積層)されているが、図20〜図22に示すように、燃料極20が支持基板10の外側面に形成された凹部(図20を参照)内に埋設され且つインターコネクタ30が燃料極20の外側面に形成された凹部内に埋設されていてもよい。以下、上記実施形態に対する、図20〜図22に示す形態の主たる相違点について簡単に説明する。
図20〜図22に示す形態では、支持基板10の主面(上下面)には、複数の凹部12が長手方向において所定の間隔をおいて形成されている。各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。周方向に閉じた側壁のうち、長手方向に沿う2つの側壁は支持基板10の材料からなり、幅方向に沿う2つの側壁は燃料極集電部21の材料からなる。
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の幅方向に沿う2つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の4つの側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸素イオン伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
図21に示すように、この例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図21を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図21では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図21では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図21では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図21では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、前記「電気的接続部」に対応する。
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における前記「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における前記「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
以上、図20〜図22に示す形態では、上記実施形態と同様、空気極集電膜70の材質として、「650〜850℃のSOFCの作動温度範囲内にて温度が高いほど導電率が小さくなる性質を有する導電性セラミックス材料」が使用される。この材料の典型例としては、N型半導体(例えば、LaNiO)が挙げられる。従って、上記実施形態と同様、上述した「インターコネクタ30内及びその近傍を通過する電流の電流密度のばらつき」が抑制されるので、インターコネクタ30内及びその近傍において温度のばらつきが小さくなる、という作用・効果が奏される。この結果、インターコネクタ30内及びその近傍において局所的に大きい熱応力が発生し難くなる。
また、燃料極20を埋設するための複数の凹部12のそれぞれが、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁を有している。換言すれば、支持基板10において各凹部12を囲む枠体がそれぞれ形成されている。従って、この構造体は、支持基板10が外力を受けた場合に変形し難い。
また、支持基板10の各凹部12内に燃料極20及びインターコネクタ30等の部材が隙間なく充填・埋設された状態で、支持基板10と前記埋設された部材とが共焼結される。従って、部材間の接合性が高く且つ信頼性の高い焼結体が得られる。
また、インターコネクタ30が、燃料極集電部21の外側面に形成された凹部21bに埋設され、この結果、直方体状のインターコネクタ30の4つの側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と底面とが凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。従って、燃料極集電部21の外側平面上に直方体状のインターコネクタ30が積層される(接触する)構成が採用される場合に比べて、燃料極20(集電部21)とインターコネクタ30との界面の面積を大きくできる。従って、燃料極20とインターコネクタ30との間における電子伝導性を高めることができ、この結果、燃料電池の発電出力を高めることができる。
また、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに、複数の発電素子部Aが設けられている。これにより、支持基板の片側面のみに複数の発電素子部が設けられる場合に比して、構造体中における発電素子部の数を多くでき、燃料電池の発電出力を高めることができる。
加えて、固体電解質膜40が、燃料極20の外側面、インターコネクタ30の外側面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、燃料極20の外側面とインターコネクタ30の外側面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、20…燃料極、21…燃料極集電部、21b…凹部、22…燃料極活性部、30…インターコネクタ、40…固体電解質膜、50…反応防止膜、60…空気極、70…空気極集電膜、A…発電素子部

Claims (3)

  1. 燃料ガスと接触して前記燃料ガスを反応させる燃料側電極と、前記燃料側電極に設けられた固体電解質からなる電解質膜と、前記酸素を含むガスを反応させる空気側電極であって前記電解質膜を前記燃料側電極と空気側電極とで挟むように前記電解質膜に設けられた空気側電極と、からなる固体酸化物形燃料電池の発電部と、
    前記燃料側電極又は前記空気側電極に電気的に接続されるように設けられたインターコネクタと、
    前記インターコネクタの表面に形成された導電膜であって、650〜850℃の範囲内にて温度が高いほど導電率が小さくなる性質を有する導電性セラミックス材料であり、且つ、N型半導体であり、且つ、化学式LaNi 1−x−y Cu Fe (x>0、y>0、x+y<1)で表わされる材料からなる導電膜と、
    を備えた固体酸化物形燃料電池。
  2. 請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記インターコネクタは前記燃料側電極に設けられていて、
    前記インターコネクタは、
    化学式Ln1−xCr1−y−z(ただし、Ln:Y及びランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、A:Ca,Sr,及びBaからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、B:Ti,V,Mn,Fe,Co,Cu,Ni,Zn,Mg,及びAlからなる群より選択される少なくとも1種類の元素、0.025≦x≦0.3、0≦y≦0.22、0≦z≦0.15)で表わされるクロマイト系材料からなる、固体酸化物形燃料電池。
  3. 請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記インターコネクタは前記燃料側電極に設けられていて、
    前記インターコネクタは、
    化学式(A1−x,B1−z(Ti1−y,D)O(ただし、A:アルカリ土類元素から選択される少なくとも1種類の元素、B:Sc,Y,及びランタノイド元素から選択される少なくとも1種類の元素、D:第4周期、第5周期、第6周期の遷移金属、及びAl,Si,Zn,Ga,Ge,Sn,Sb,Pb,Biから選択される少なくとも1種類の元素、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、−0.05≦z≦0.05)で表わされるチタン酸化物からなる、固体酸化物形燃料電池。
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