JP5621029B1 - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス流路が内部に形成された支持基板の主面に形成された凹部に内側電極が埋設された燃料電池において、還元処理後において、支持基板の表面を覆う第1シール部(固体電解質膜)にクラックが発生することを抑制すること。【解決手段】この燃料電池では、支持基板10の主面に形成された凹部12において、燃料極集電部21が、凹部12の底壁の全体と接触するように凹部12の底部に配置される。凹部12における燃料極集電部21の上部に、燃料極活性部22、シール部35、及び、インターコネクタ30が配置される。シール部35が、インターコネクタ30の側壁の全周と接触するように、インターコネクタ30の側壁の周囲にて全周に亘って配置される。シール部35が、燃料極活性部22の全体、及びインターコネクタ30の全体を取り囲むように、凹部12の周縁部にて全周に亘って配置される。【選択図】図3
Description
本発明は、燃料電池に関する。
従来より、「ガス流路が内部に形成された支持基板」と、「前記支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極が積層されてなる複数の発電素子部」と、「1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部」と、「1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、前記燃料極に供給される第1のガスと前記空気極に供給される第2のガスとの混合を防止する緻密な構成材料からなるガスシール部」と、を備えた燃料電池が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような構成は、「横縞型」とも呼ばれる。
この文献に記載の燃料電池では、前記支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる底壁と、前記支持基板の材料からなる側壁と、を有する凹部がそれぞれ形成されている。前記各凹部に、対応する前記発電素子部の前記燃料極がそれぞれ埋設されている。前記各電気的接続部は、緻密な材料で構成された第1部分(インターコネクタ)と、前記第1部分と接続され且つ多孔質の材料で構成された第2部分(空気極集電膜)とで構成され、前記第1部分は、前記隣り合う発電素子部の一方の燃料極と前記第2部分とに接続され、前記第2部分は、前記隣り合う発電素子部の他方の空気極と前記第1部分とに接続されている。
ところで、上記の構成を有する燃料電池では、前記ガスシール部のガスシール機能の低下を確実に抑制することが要求される。このため、本発明者は、特願2013−122592号にて、前記ガスシール部について以下の構成を既に提案している。即ち、前記ガスシール部における前記埋設された各燃料極の外側面を覆う部分では、前記ガスシール部は、前記発電素子部の一部としての緻密な前記固体電解質と、前記固体電解質と接続されるとともに前記固体電解質と同じ又は異なる緻密な構成材料からなる第1シール部と、前記第1シール部と接続されるとともに前記第1シール部とは異なる緻密な構成材料からなる第2シール部と、前記第2シール部と接続された前記電気的接続部の第1部分と、を含んで構成される。
この構成では、前記燃料極は、燃料極集電部と、前記燃料極集電部に対して酸素イオン伝導性を有する物質の含有割合が大きい燃料極活性部と、を含んで構成されている。前記各凹部には、対応する前記発電素子部の前記燃料極集電部及び前記燃料極活性部、並びに、対応する前記第2シール部及び前記電気的接続部の第1部分、がそれぞれ埋設されている。前記各凹部において、前記燃料極集電部が、前記凹部の底壁の全体と接触するように前記凹部の底部に配置されている。前記凹部における前記燃料極集電部の上部に、前記燃料極活性部、前記第2シール部、及び、前記電気的接続部の第1部分が配置されている。前記第2シール部が、前記電気的接続部の第1部分の側壁の全周と接触するように、前記電気的接続部の第1部分の側壁の周囲にて全周に亘って配置されている。
一般に、この構成を有する燃料電池の各構成部材は、酸素含有雰囲気での焼成によって形成される。この酸素含有雰囲気での焼成によって、燃料極に含まれるNi成分は、NiOとなっている。NiOは電子伝導性を有さない。従って、燃料極の電子伝導性を獲得するため、燃料極(燃料電池)の焼成後、燃料極に対して「還元処理」がなされる。「還元処理」とは、支持基板側から還元性の燃料ガスを流しながら、燃料極中のNiOを800〜1000℃程度の高温下にて還元する処理である。
上記還元処理の際、NiOからNiへの相変態により、前記燃料極集電部、及び前記燃料極活性部は、膨張又は収縮し、前記電気的接続部の第1部分(インターコネクタ、典型的には、ランタンクロマイト(LaCrO3)からなる)は、膨張する特性を有する。換言すれば、上記還元処理の際、前記燃料極集電部、前記燃料極活性部、及び前記電気的接続部の第1部分には、寸法変化が生じる。一方、上記還元処理の際、緻密な構成材料からなる前記第2シール部には、寸法変化が生じない。これらのことに起因して、前記凹部における前記燃料極集電部の上部にて、前記燃料極活性部、前記電気的接続部の第1部分、及び前記第2シール部が配置される態様によっては、上記還元処理後にて、緻密な構成材料からなる前記第1シール部(上記還元処理によって寸法変化が生じない)にクラックが生じる場合があった。係るクラックの発生を抑制することが望まれているところである。
即ち、本発明は、ガス流路が内部に形成された支持基板の主面に形成された凹部に内側電極が埋設された燃料電池であって、還元処理後において前記第1シール部にてクラックが発生することを抑制できるものを提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池は、上記の燃料電池と同様、前記各凹部において、前記燃料極集電部が、前記凹部の底壁の全体と接触するように前記凹部の底部に配置され、前記凹部における前記燃料極集電部の上部に、前記燃料極活性部、前記第2シール部、及び、前記電気的接続部の第1部分のそれぞれの底面が前記燃料極集電部と接触するように配置され、前記第2シール部が、前記電気的接続部の第1部分の側壁の全周と接触するように前記電気的接続部の第1部分の側壁の周囲にて全周に亘って配置された部分(第3部分)を備えている。
本発明に係る燃料電池の特徴は、前記第2シール部が、前記第3部分から連続するとともに前記燃料極活性部の側壁の全周と接触するように前記燃料極活性部の側壁の周囲にて全周に亘って配置された第4部分を備え、前記第1シール部が、前記電気的接続部の第1部分とは接触しないように構成されたことにある。ここにおいて、前記各凹部において、前記第2シール部の前記第3部分の外側面の周縁部の全周が前記第1シール部で覆われていることが好適である。
上記特徴によれば、前記第1シール部が、「上記還元処理の際に寸法変化が生じない前記第2シール部」とは接触する一方で、「上記還元処理の際に寸法変化が生じる前記電気的接続部の第1部分(、及び、前記燃料極集電部)」とは接触しない。従って、上記還元処理の際、前記第1シール部が、「前記電気的接続部の第1部分に発生する寸法変化」の影響を受け難い。この結果、前記第1シール部の内部において前記寸法変化に起因する過大な応力が発生し難くなり、還元処理後において、前記第1シール部にてクラックが発生することが抑制され得る。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCの構造体は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCの構造体は、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
このSOFCの構造体の全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが50〜500mmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが10〜100mmの長方形である。このSOFCの構造体の全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCの構造体の全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、図1に加えて、このSOFCの構造体の図1に示す2−2線に対応する部分断面図である図2を参照しながら、このSOFCの構造体の詳細について説明する。図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、図2に示す構成と同様である。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する図6に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。
支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」と、絶縁性セラミックスとを含んで構成され得る。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
また、絶縁性セラミックスとしては、MgO(酸化マグネシウム)、又は、「MgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とMgO(酸化マグネシウム)の混合物」が好適である。また、絶縁性セラミックスとして、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、Y2O3(イットリア)が使用されてもよい。
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。支持基板10の気孔率は、後述する「還元処理」の後において20〜60%である。なお、以下、他の部材の気孔率の値も、還元処理後の値である。なお、気孔率の測定は,樹脂埋めしたサンプル(還元処理後)の断面を研磨し、同断面についてのSEM(走査型電子顕微鏡)による画像(2次電子像)を解析することによって行われた。SEMの加速電圧は5kV、SEMの倍率は5000倍、又は7500倍に設定された。気孔率の測定は、サンプルの任意の10箇所の断面について行われ、それらの平均値が気孔率の値として採用された。
以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
図2及び図3に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21、燃料極活性部22、インターコネクタ30、及び、シール部35(前記第2シール部に対応)が埋設(充填)されている。
より具体的には、各凹部12において、燃料極集電部21の全体が、凹部12の底壁の全域、及び側壁の全域と接触するように、凹部12内に埋設されている。燃料極集電部21の上面には、凹部21aが形成されている。凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された窪みである。この凹部21a内に(即ち、燃料極集電部21の上部に)、燃料極活性部22の全体、インターコネクタ30の全体、及び、シール部35の全体が埋設(充填)されている。
シール部35の一部(四角の枠状を呈する)は、インターコネクタ30(直方体状(薄板状)を呈する)の側壁の全周、凹部21aの側壁の一部、及び、燃料極活性部22(直方体状(薄板状)を呈する)の側壁の一部、と接触するように、インターコネクタ30の側壁の周囲にて全周に亘って配置されている。即ち、シール部35のうちインターコネクタ30と燃料極活性部22との間に位置する部分は、燃料極活性部22と接触している。シール部35の前記一部以外の残りの部分(U字状を呈する)は、凹部21aの側壁における前記一部以外の残りの部分、及び、燃料極活性部22の側壁における前記一部以外の残りの部分、と接触するように、前記シール部35の前記一部と連続して、燃料極活性部22の側壁における前記残りの部分の周囲に配置されている。燃料極活性部22の底面の全域、インターコネクタ30の底面の全域、及び、シール部35の底面の全域は、燃料極集電部21(の凹部21aの底面)と接触している。
燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。
燃料極活性部22は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極集電部21は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmであり、燃料極集電部21の厚さは、50〜500μmである。燃料極集電部21の気孔率は、25〜50%であり、燃料極活性部22の気孔率も、25〜50%である。
このように、燃料極集電部21は、電子伝導性を有する物質を含んで構成される。燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と酸化性イオン(酸素イオン)伝導性を有する物質とを含んで構成される。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。インターコネクタ30は、例えば、ランタンクロマイト(LC)から構成され得る。ランタンクロマイトの化学式は、La1−xAxCr1−y−zByO3(ただし、A:Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種類の元素、B:Co,Ni,Mg,Alから選択される少なくとも1種類の元素、0.05≦x≦0.2、0.02≦y≦0.22、0≦z≦0.05)で表わされる。
或いは、インターコネクタ30は、チタン酸化物から構成され得る。チタン酸化物の化学式は、(A1−x,Bx)1−z(Ti1−y,Dy)O3(ただし、A:アルカリ土類元素から選択される少なくとも1種類の元素、B:Sc,Y,及びランタノイド元素から選択される少なくとも1種類の元素、D:第4周期、第5周期、第6周期の遷移金属、及びAl,Si,Zn,Ga,Ge,Sn,Sb,Pb,Biから選択される少なくとも1種類の元素、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、−0.05≦z≦0.05)で表わされる。この場合、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成され得る。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。インターコネクタ30の気孔率は、10%以下である。
シール部35は、電気絶縁性を有する緻密な材料からなる焼成体である。シール部35は、例えば、金属酸化物を含有し、好ましくは金属酸化物を主成分とする。具体的には、上記金属酸化物として、(AE)ZrO3、MgO、MgAl2O4、及びCexLn1−xO2からなる群より選択される少なくとも1種類の酸化物を含有してもよい。ここで、AEは、アルカリ土類金属であり、Lnは、Y及びランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種類の元素であり、xは0<x≦0.3を満たす。AEに該当する元素としては、Mg,Ca,Sr,及びBaが挙げられる。また、微量成分として、遷移金属酸化物(例えば、NiO、Mn3O4、Fe2O3、Cr2O3、CoO)が含まれても良い。これらの成分は、酸化物として存在していても良いし、上記「(AE)ZrO3、MgO、MgAl2O4、及びCexLn1−xO2からなる群より選択される少なくとも1種類の酸化物」に固溶する形で存在していても良い。金属酸化物の平均粒径は0.1〜5.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.3〜4.0μmである。シール部35の厚さは、10〜100μmである。シール部35の気孔率は、10%以下である。
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、シール部35の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面とシール部35の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
燃料極20、インターコネクタ30、及びシール部35がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面(主面を含む)において複数のシール部35及びインターコネクタ30に対応する部分を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。より具体的には、図4に示すように、固体電解質膜40は、シール部35の外側面の周縁部の全周を覆うように、支持基板10の主面上に形成されている。この結果、シール部35とインターコネクタ30とが接触し、シール部35と固体電解質膜40とが接触する一方で、インターコネクタ30と固体電解質膜40とは接触していない。
固体電解質膜40は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。固体電解質膜40の気孔率は、10%以下である。
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30とシール部35と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。
なお、図2に示すように、本例では、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。また、固体電解質膜40のうち「燃料極20及び空気極60との間に位置する部分(即ち、発電素子部Aの一部を構成する部分)」以外の残りの部分が、前記第1シール部に対応する。前記第1シール部は、固体電解質膜40とは異なる緻密な構成材料で構成されてもよい。
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。空気極集電膜70の気孔率は、20〜60%である。
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が前記「電気的接続部」に対応し、インターコネクタ30が前記「電気的接続部の第1部分」に対応し、空気極集電膜70が前記「電気的接続部の第2部分」に対応する。また、緻密な材料からなる「インターコネクタ30、シール膜35、及び、固体電解質膜40」が前記「ガスシール部」に対応する。なお、本願では、「緻密な材料」とは、ガスシール機能を有する程度に小さい気孔率を有する材料を指し、典型的には、その材料の気孔率が10%以下である。
以上、説明した「横縞型」のSOFCの構造体に対して、図5に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e− (於:燃料極20) …(2)
(1/2)・O2+2e−→O2− (於:空気極60) …(1)
H2+O2−→H2O+2e− (於:燃料極20) …(2)
発電状態においては、図6に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、図5に示すように、このSOFCの構造体全体から(具体的には、図5において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
(製造方法)
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの構造体の製造方法の一例について図7〜図16を参照しながら簡単に説明する。図7〜図16において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
次に、図1に示した「横縞型」のSOFCの構造体の製造方法の一例について図7〜図16を参照しながら簡単に説明する。図7〜図16において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
先ず、図7に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、図7に示す8−8線に対応する部分断面を表す図8〜図16を参照しながら説明を続ける。
図8に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、図9に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、図10に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された凹部の一部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとYSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
続いて、図11に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された前記凹部における前記一部以外の残りの部分の中央部に、直方体状のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次いで、図12に示すように、前記凹部の成形体30gの周囲に位置する周縁部、並びに、燃料極活性部の成形体22gの周囲に位置する周縁部に、シール材の成形体35gがそれぞれ埋設・形成される。各シール材の成形体35gは、例えば、シール部35の材料(例えば、MgO、或いは、MgOとCaZrO3のコンポジット材料)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
次に、図13に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数の成形体30g、35gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数の成形体30g、35gが形成されたそれぞれの部分を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
次に、図14に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCの構造体において空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
次に、図15に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
次に、図16に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、インターコネクタ30、及びシール部35の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、図1に示したSOFCの構造体が得られる。なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、支持基板10、及び燃料極20中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極20の導電性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが700〜1000℃で1〜100時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。以上、図1に示したSOFCの構造体の製造方法の一例について説明した。
(作用・効果)
上記実施形態では、「インターコネクタ30とシール部35と固体電解質膜40とが連続して接続されてなる緻密層」が、燃料ガスと空気との混合を防止するガスシール機能を発揮している。一般に、インターコネクタ(特に、ランタンクロマイトで構成されるインターコネクタ)は、上述した還元処理の際に膨張する性質を有する(還元膨張)。従って、インターコネクタの外側面の周縁部が電解質膜で覆われる構成では、この還元膨張に起因して、インターコネクタの外側面の周縁部と電解質膜の内側面との界面において剥離が発生し、「ガスシール機能」の低下が発生し易いという問題があった。これに対し、上記実施形態では、シール部35の外側面の一部(周縁部)が固体電解質膜40で覆われている一方で、インターコネクタ30の外側面は固体電解質膜40で覆われていない。従って、上述したインターコネクタの還元膨張による剥離に起因する「ガスシール機能」の低下が発生しない。即ち、「ガスシール機能」の低下を確実に抑制し得る。
上記実施形態では、「インターコネクタ30とシール部35と固体電解質膜40とが連続して接続されてなる緻密層」が、燃料ガスと空気との混合を防止するガスシール機能を発揮している。一般に、インターコネクタ(特に、ランタンクロマイトで構成されるインターコネクタ)は、上述した還元処理の際に膨張する性質を有する(還元膨張)。従って、インターコネクタの外側面の周縁部が電解質膜で覆われる構成では、この還元膨張に起因して、インターコネクタの外側面の周縁部と電解質膜の内側面との界面において剥離が発生し、「ガスシール機能」の低下が発生し易いという問題があった。これに対し、上記実施形態では、シール部35の外側面の一部(周縁部)が固体電解質膜40で覆われている一方で、インターコネクタ30の外側面は固体電解質膜40で覆われていない。従って、上述したインターコネクタの還元膨張による剥離に起因する「ガスシール機能」の低下が発生しない。即ち、「ガスシール機能」の低下を確実に抑制し得る。
加えて、上記実施形態では、固体電解質膜40(前記第1シール部に対応する部分)が、シール部35(前記第2シール部)とは接触する一方で、インターコネクタ30(及び、燃料極集電部21)とは接触しない。ここで、上記還元処理の際、シール部35には寸法変化が生じない一方で、インターコネクタ30(及び、燃料極集電部21)には寸法変化が生じる。以上より、上記実施形態では、上記還元処理の際、固体電解質膜40(前記第1シール部に対応する部分)が、「インターコネクタ30に発生する寸法変化」の影響を受け難い。これにより、固体電解質膜40(前記第1シール部に対応する部分)の内部において前記寸法変化に起因する過大な応力が発生し難くなる。この結果、上記還元処理後において、固体電解質膜40(前記第1シール部に対応する部分)にてクラックが発生することが抑制され得る。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、燃料電池を構成する積層体は、単独で存在しているが(図1を参照)、この積層体が、或る装置全体の一部分として存在していてもよい。また、上記実施形態では、図7等に示すように、支持基板10に形成された凹部12の平面形状(支持基板10の主面に垂直の方向からみた場合の形状)が、長方形になっているが、例えば、正方形、円形、楕円形、長穴形状等であってもよい。
また、上記実施形態においては、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、図17に示すように、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。
10…支持基板、11…燃料ガス流路、12…凹部、20…燃料極、21…燃料極集電部、21a…凹部、22…燃料極活性部、30…インターコネクタ、35…シール部、40…固体電解質膜、50…反応防止膜、60…空気極、70…空気極集電膜、A…発電素子部
Claims (2)
- ガス流路が内部に形成された支持基板と、
前記支持基板の主面における互いに離れた複数の箇所にそれぞれ設けられ、少なくとも燃料極、固体電解質、及び空気極が積層されてなる複数の発電素子部と、
1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、隣り合う前記発電素子部の一方の燃料極と他方の空気極とを電気的に接続する1つ又は複数の電気的接続部と、
1組又は複数組の隣り合う前記発電素子部の間にそれぞれ設けられ、前記燃料極に供給される第1のガスと前記空気極に供給される第2のガスとの混合を防止する緻密な構成材料からなるガスシール部と、
を備えた燃料電池において、
前記各電気的接続部は、緻密な材料で構成された第1部分と、前記第1部分と接続され且つ多孔質の材料で構成された第2部分とで構成され、前記第1部分は、前記隣り合う発電素子部の一方の燃料極と前記第2部分とに接続され、前記第2部分は、前記隣り合う発電素子部の他方の空気極と前記第1部分とに接続され、
前記ガスシール部は、前記燃料極と前記空気極との間に位置する前記発電素子部の一部としての緻密な前記固体電解質と、前記発電素子部の一部としての前記固体電解質から連続して延設された前記固体電解質と同じ緻密な構成材料からなる、又は、前記発電素子部の一部としての前記固体電解質と接続されるとともに前記固体電解質と異なる緻密な構成材料からなる第1シール部と、前記第1シール部と接続されるとともに前記第1シール部とは異なる緻密な構成材料からなる第2シール部と、前記第2シール部と接続された前記電気的接続部の第1部分と、を含んで構成され、
前記燃料極は、燃料極集電部と、前記燃料極集電部に対して酸素イオン伝導性を有する物質の含有割合が大きい燃料極活性部と、を含んで構成され、
前記支持基板の主面における前記複数の箇所に、前記支持基板の材料からなる底壁と、前記支持基板の材料からなる側壁と、を有する凹部がそれぞれ形成され、
前記各凹部に、対応する前記発電素子部の前記燃料極集電部及び前記燃料極活性部、並びに、対応する前記第2シール部及び前記電気的接続部の第1部分、がそれぞれ埋設され、
前記各凹部において、
前記燃料極集電部が、前記凹部の底壁の全体と接触するように前記凹部の底部に配置され、
前記凹部における前記燃料極集電部の上部に、前記燃料極活性部、前記第2シール部、及び、前記電気的接続部の第1部分のそれぞれの底面が前記燃料極集電部と接触するように配置され、
前記第2シール部が、前記電気的接続部の第1部分の側壁の全周と接触するように前記電気的接続部の第1部分の側壁の周囲にて全周に亘って配置された第3部分と、前記第3部分から連続するとともに前記燃料極活性部の側壁の全周と接触するように前記燃料極活性部の側壁の周囲にて全周に亘って配置された第4部分と、を備え、
前記第1シール部が、前記電気的接続部の第1部分とは接触しないように構成された、燃料電池。 - 請求項1に記載の燃料電池において、
前記各凹部において、
前記第2シール部の前記第3部分の外側面の周縁部の全周が前記第1シール部で覆われている、燃料電池。
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