JP4953295B2 - 特定細胞吸着器 - Google Patents

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Description

本発明は、特定細胞を選択的に吸着する特定細胞吸着器に関する。
近年、多発性硬化症,重症筋無力症,ギランバレー症候群等の神経免疫疾患の治療法として血液中のある特定の細胞のみを選択的に吸着する技術の研究が行われており、特定細胞吸着器が開発されつつある。この特定細胞吸着器は、特定細胞と親和性を有するリガンドが保持された繊維状の特定細胞吸着材を充填し、様々な細胞の中から特定細胞のみを特異的あるいは選択的に吸着することを目的としている。しかし、血液中には特定細胞以外の細胞が多数あり、中には吸着されやすい大きなサイズの細胞や、表面が高い粘着性を有する細胞なども含まれる。このように様々な細胞が存在する血液の中から、しかもある一定の血液線速の中で特定細胞のみを選択的に吸着することは技術的に極めて困難であった。
今までにも、このような特定細胞吸着器の検討は行われてきた。例えば特許文献1には、抗体を固定したポリスチレン製不織布を2枚充填したカラムに単核球浮遊液を流し、単核球中のCD4陽性細胞(以下、「CD4(+)細胞」と略す)のみを選択的に吸着できることが記載されている。しかし、特許文献1では粘着性の高い細胞を含む全血液ではなく単核球浮遊液を用いており、しかも不織布が少量であるために不織布の濾過方向厚みが薄く、特定細胞以外を吸着しにくい仕様であった。この不織布の濾過方向厚みを維持したまま血液体外循環を行うと、不織布の断面積が膨大になり、血液の均一な流れが確保できず吸着材が効率的に使用されないという問題が生じると予想される。また不織布を実用的な断面積にした場合は、不織布の濾過方向厚みが増大し特定細胞以外の細胞吸着が多くなるという問題が起こる可能性がある。
したがって、特定細胞と親和性を有する特定細胞吸着材が充填された特定細胞吸着器において、様々な特性を有する血液中の細胞から特定細胞を吸着する高い選択性を有する実用的な細胞吸着器はこれまでに見出されていなかった。
特開平9−75450号公報
本発明は、水不溶性担体に特定細胞と親和性を有するリガンドが保持された特定細胞吸着材の細胞吸着選択性を上げることを目的とし、様々な特性を持つ細胞含有液から特定細胞を選択的に吸着する特定細胞吸着器を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために特定細胞と親和性を有するリガンドが保持された繊維状の特定細胞吸着材において、特定細胞以外を吸着せずに特定細胞を選択的に吸着することを目的に鋭意検討を重ねた結果、繊維状の特定細胞吸着材の平均繊維直径と平均繊維間距離をある特定の範囲内にすることで、繊維の目の細かさや繊維の絡みによって生じる特定細胞以外の細胞の物理的な捕捉や粘着、吸着を大幅に低減できることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は以下を含む。
(1) 特定細胞の表面抗原と親和性を有するリガンドを繊維状の水不溶性担体に保持した特定細胞吸着材が血液入口および血液出口を有する容器の中に充填された特定細胞吸着器であって、該特定細胞吸着材の平均繊維直径が7μm以上20μm以下であり、かつ該容器に充填された特定細胞吸着材の平均繊維間距離が11μm以上38μm以下であることを特徴とする特定細胞吸着器。
(2) 前記リガンドが抗体である(1)記載の特定細胞吸着器。
(3) 前記特定細胞が白血球である(1)または(2)に記載の特定細胞吸着器。
(4) 前記白血球がリンパ球である(3)記載の特定細胞吸着器。
(5) 前記リンパ球がヘルパーT細胞である(4)記載の特定細胞吸着器。
(6) 前記特定細胞吸着材が滅菌されていることを特徴とする(1)乃至(5)の何れかに記載の特定細胞吸着器。
本発明に係る特定細胞吸着器は、該特定細胞吸着器に充填された特定細胞吸着材の平均繊維直径と平均繊維間距離を特定範囲に調整することで、目的とする特定細胞以外の細胞の物理的な捕捉や粘着、吸着を極端に減らし特定細胞を選択的に吸着できる。これにより、サイズの大きな細胞や粘着性の高い細胞など物理的に捕捉、あるいは粘着、吸着されやすい細胞が多く含まれる血液中であっても、特定細胞を選択的に吸着可能な特定細胞吸着器を提供できる。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明でいう特定細胞吸着器とは、入口と出口を有する容器に水不溶性担体に特定細胞と親和性を有するリガンドを保持させた特定細胞吸着材を充填してなるものである。容器の入口から血液を導入し、特定細胞吸着材に接触させた後に出口から処理された血液を回収することによって、特定細胞が吸着除去された血液が得られる。また本発明は、血液を容器内に導入し、特定細胞吸着材に接触させた後に特定細胞吸着材に吸着された特定細胞を分離回収して、血液中から特定細胞のみを得る場合にも有用に用いられる。さらに本発明は、血液の体外循環細胞除去療法により、疾患の起因あるいは誘因となっている細胞を選択的に吸着除去する治療法としても有効に用いられる。
本発明でいう特定細胞とは、特定の細胞表面抗原を発現している、該細胞表面抗原によって識別可能な細胞集団を指し、このような細胞であればどのような細胞でも良いが、特に血液中の免疫系単核球が好ましい。血液中の免疫系単核球としては、リンパ球、単球、造血幹細胞等の血液細胞を例示でき、過剰な免疫応答による免疫性疾患等の治療の場合は、特にヘルパーT細胞を例示できる。疾患により疾患治療に有用な特定細胞の種類は選択され、複数の場合もある。疾患治療に有用な特定細胞は、例えば多発性硬化症、クローン病やI型糖尿病のようなヘルパーT細胞の中でも1型(Th1型)
が優位な免疫性疾患においてはTh1細胞であり、また潰瘍性大腸炎のようなヘルパーT細胞2型(Th2型)が優位な免疫性疾患においてはTh2細胞である。
本発明でいう水不溶性担体とは、水に不溶(血液に不溶)で、特定細胞と親和性を有するリガンドを安定に固定できる繊維状のものであれば特に限定なく様々なものを用いることができるが、特定細胞との接触頻度を高めるために表面積が大きいものが好ましく、例えば綿状・布状・糸状・中空糸状・糸束状・織布状・不織布状等の繊維構造体が挙げられる。特に、血液細胞を分離、或いは吸着する場合、吸着効率の点より、織布や不織布が好ましく用いられ、担体の構造制御がしやすいという点から不織布が最も好ましい。
水不溶性担体の材質は、リガンドを安定に固定でき、かつ細胞と効率的に接触できる構造を保ち易い素材であれば特に限定はない。様々な形状に加工でき、リガンドを直接または間接的に化学結合でき、且つ医療材料として安全に用いることができる固体であれば何れのものでもよい。例えば、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン、デンプン、アガロース、蛋白質、天然ゴムなどの天然ポリマー、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミノ酸などの合成ポリマー等が挙げられ、次に述べる形状に適した素材を適宜選択すればよい。
ここで、繊維状の水不溶性担体としての不織布について更に具体的に示すと、不織布を構成する繊維の材質としては、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン等の繊維が強度や加工性、安全性の点から好ましく用いられる。不織布の構造は、例えば構成する繊維の平均繊維直径や平均繊維間距離を適宜選択することで制御することができる。
本発明では、特定細胞吸着材の平均繊維直径は、7μm以上である必要がある。平均繊維直径が7μm未満であると、特定細胞吸着材の目が細かくなる傾向があり、特定細胞以外の細胞を物理的に捕捉する非特異的細胞吸着が起こり易くなるため適さない。一方、20μmを超える場合、特定細胞とリガンドとの接触頻度が著しく低下し、これを補うために膨大な吸着材が必要となり、血液体外循環を想定した場合一時的に体外へ導出される血液量がおよそ500ml以上となるために安全上適さない。よって、安全性および選択的吸着性の観点から平均繊維直径は、7μm以上20μm以下であることが必要である。また、選択的に吸着する細胞がリンパ球のような比較的小さなサイズの細胞の場合、大きな細胞を捕捉、吸着しないために平均繊維径は10μm以上20μm以下が好ましく、特定細胞との接触頻度を確保するためには12μm以上18μm以下が最も好ましい。
ここでいう平均繊維直径とは、以下の手順により求められる値をいう。即ち、特定細胞吸着材を構成する実質的に均一と認められる部分をサンプリングし、走査型電子顕微鏡などを用いて写真に撮る。サンプリングに際しては、特定細胞吸着材の有効濾過断面積部分を、1辺が約0.5cmの正方形によって区分し、その中から6ヶ所をランダムサンプリングする。ランダムサンプリングするには、例えば上記各区分に番地を指定した後、乱数表を使うなどの方法で必要箇所の区分を選べばよい。またサンプリングした各区分について、3ヶ所以上、好ましくは5ヶ所以上を拡大倍率1000倍以上で写真に撮る。この写真の上に0.1mmから10mm程度の等間隔で縦及び横に格子状に線を引いた透明なシートを載せ、縦線と横線の交点、即ち格子点にある繊維について繊維軸に対して直角方向の繊維の幅を測定し、これを繊維径とする。このような無作為な選択によって、繊維径の異なる不織布についてそれぞれ各100本以上の繊維の幅を測定し、それらを数平均して得られた値をそれぞれ不織布の平均繊維直径とする。ただし、複数の繊維が重なり合っており、他の繊維の陰になってその幅が測定できない場合、また複数の繊維が溶融するなどして太い繊維になっている等の場合にはこれらのデータは削除する。
また本発明では特定細胞吸着材の平均繊維間距離に関して、後述の算出式から求めた平均繊維間距離が11μm以上である必要がある。平均繊維間距離が11μm未満の場合、繊維と繊維の間に捕捉される特定細胞以外の非特異的細胞吸着が起こり易くなり、また狭い空間を細胞が通過することで通過させたい細胞がダメージを受ける可能性があるため適さない。一方、平均繊維間距離が38μmを超えると繊維間の距離が大き過ぎるため特定細胞とリガンドの接触頻度の減少で特定細胞吸着能が低下するため適さない。よって、選択性・特異性の観点から平均繊維間距離は、11μm以上38μm以下であることが必要である。また、選択的に吸着する細胞がリンパ球のような比較的小さなサイズの細胞の場合、その他の大きな細胞を捕捉、吸着しないために平均繊維間距離は17μm以上38μm以下が好ましく、さらに特定細胞との接触頻度を確保するためには21.0μm以上33.7μm以下が最も好ましい。
ここでいう平均繊維間距離は、次のようにして求められる。まず、1)繊維が円柱状であり、2)繊維表面は平滑で内部に細孔は無く、3)繊維をカラムの長さ方向に揃えて等間隔に充填したモデル系を考える(図1)。このモデル系で繊維4本の中心を結んでできる菱形を底面とし、高さが(H)の四角柱をカラムの基本ユニット(図2)とすると、カラムの基本ユニットの体積(Vc)及びカラムの基本ユニットに含まれる繊維体積(Vf)は、平均繊維直径を(x)、平均繊維間距離を(y)、円周率を(π)とすると、次式(1)及び(2)で表される。

Vc=(√3/2)×(x+y)2×H・・・(1)
Vf=(π/4)×x2×H・・・(2)

ここで、繊維の比重を(ρf)とすると、カラムの充填密度(ρc)は、

ρc=(Vf × ρf)/Vc
=(π/2√3)×x2×(ρf)/(x+y)2・・・(3)

であるから、平均繊維間距離(y)は次式(4)により求められる。

y=x ×((π/2√3)1/2 ×(ρf/ρc)1/2−1)・・・(4)


不織布の場合、カラムの充填密度(ρc)は不織布の嵩密度に等しく、単位体積当りの不織布重量を指す。不織布の体積は不織布の面積に厚みをかけて算出するが、不織布の厚みとは、1.8Nの力でフィルター層を上下から挟んだときの直線距離をいい、例えばダイヤルシックネスゲージG(株式会社 尾崎製作所)等の市販の厚みゲージによって測定できる。
また不織布を容器に充填することで不織布が圧縮される場合、嵩密度が高くなり、上記式(4)から計算される平均繊維間距離が狭くなる。よってこの様な場合は、予め容器に充填した時の不織布の濾過方向厚みを測定し、この濾過方向厚みと不織布面積から不織布容積を算出し、充填した不織布重量をこの不織布容積で割った値を上記不織布の嵩密度(ρc)として平均繊維間距離を算出する。
本発明でいうリガンドとは、特定細胞と特異的あるいは選択的に結合する物質のことをいい、特定細胞と親和性を有するものであれば構造など特に限定はない。リガンドの種類としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等の抗体あるいはこれら抗体の断片または抗体の断片を用いた組換え抗体、また抗体以外では低分子化合物やペプチド、アプタマーなどが挙げられる。抗体は親和性が優れている点で好ましく、低分子化合物は安全性の点から血液体外循環の際に体内に混入することが万一生じても免疫原性が低いため好ましい。さらに好ましいのは、特定細胞への選択性がきわめて高いモノクローナル抗体あるいはその一部を用いた組み換え抗体である。
上記の抗体は、目的とする細胞の表面抗原に応じてどのような抗体でも用いることができるが、白血球に対しては下記の白血球表面抗原に対する抗体が使用できる。即ち、CD4,CD8,CD3,CD2,CD2R,TCR−Vβ,CXCR3,CCR2,CCR4,CCR5,CD1a,CD1b,CD5,CD6,CD7,CD9,CD10,CD11a,CD18,CD19,CD20,CD21,CD22,CD23,CD24,CD25,CD26,CD28,CD30,CD37,CD40,CD72,CD77,CD16,CD32,CD33,CD34,CD35,CD45RO,CD64,CD65,CD66b,CD66e,CD89,CD56,CD57,CD94,CD105,CD106,CD46,CD31,CD42a,CD42b,CD63,CD11b,CD11c,CD29,CD44,CD45,CD45RA,CD48,CD49a,CD49b,CD49c,CD49d,CD49e,CD49f,CD50,CD51,CD54,CD58,CD61,CD62E,CD62L,CD62P,CD103,CD69,CD70,CD71,CD95,CD96,CD117,CD122,CD126,CD127,IL−2R,CD152,CD154,CD178,CD183,CD184,CD195,CDw197,CD226,HLA−DR等の抗原が挙げられる。
特に免疫性疾患の治療に用いられる場合、下記のリンパ球系細胞の表面抗原に対する抗体が有効である。即ち、CD2,CD2R,CD3,CD4,CD8,TCR−Vβ,CXCR3,CCR2,CCR4,CCR5,CD20,CD25,CD26,CD27,CD28,CD34,CD45RA,CD45RO,CD69,CD95,CD96,CD103,CD154,IL−2R,HLA−DRなどの抗原が挙げられる。さらにその中でも、自己免疫疾患など免疫バランスが崩壊した疾患においては、免疫応答の中心的、司令塔的役割を果たすことで知られているヘルパーT細胞の表面抗原に対する抗体が有効に用いられる。ヘルパーT細胞の表面抗原としては、CD4,CD25,TCR−Vβ,CXCR3,CCR2,CCR4,CCR5,CD154,CD45RA,CD45ROなどの抗原が挙げられる。特に抗CD4抗体は、自己免疫疾患の中でも細胞性免疫が関与しているといわれている多発性硬化症のような疾患においてより好ましく用いられる。さらにヘルパーT細胞の1型(Th1型)が優位な免疫性疾患においてはTh1細胞表面のケモカインレセプターに対する抗CXCR3抗体、ヘルパーT細胞の2型(Th2型)が優位な免疫性疾患においてはTh2細胞表面のケモカインレセプターに対する抗CCR4抗体などが好ましく用いられる。
以下、リガンドが抗体の場合を例にとって説明する。
抗体の固定状態としては、抗体が担体表面に直接結合していてもよいし、リンカーを介して結合していてもよい。抗体の固定部位としては、固定後も抗体が細胞親和性を維持できる状態であればどのような部位であってもよいが、より安定した細胞親和力を維持する点から抗体のFc部分であることが好ましい。
また、抗体の固定は抗体流出を抑制する点から共有結合を用いることが好ましい。固定時の結合方法は、抗体の活性を維持できる方法であれば公知のいずれの反応でも用いることができ、例えば、置換反応、縮合反応、開環反応等を用いて良好に結合できる。
本発明における特定細胞吸着材上のリガンド固定量は、吸着する細胞の数や細胞表面の抗原発現量、リガンドの特異性、親和力によって異なるが、細胞との接触効率の点から、水不溶性担体の単位表面積当り0.13pmol/cm2以上固定されていることが好ましい。また、ある一定量以上のリガンドが固定されるとリガンドに吸着した細胞同士の距離が近すぎ、リガンドが有効に使用されない可能性がある為、0.13pmol/cm2以上1.0pmol/cm2以下の範囲が好ましく、リガンドが効率的に特定細胞と相互作用し易い、という観点からより好ましいのは0.2pmol/cm2以上0.8pmol/cm2以下である。さらに抗体の親和性が低いものや、特異性が低く非特異吸着を起こしやすい場合は0.2pmol/cm2以上0.6pmol/cm2以下の範囲が最も好ましく用いられる。
本発明で用いる水不溶性担体表面にリガンドを固定するためのリンカーは、リガンドと担体とを共有結合できる構造であれば公知のいずれの官能基であっても良い。例えば、N−ヒドロキシメチルハロアセトアミド、N−ヒドロキシメチルジハロアセトアミド等を用いて水不溶性担体表面をリガンドと結合可能な活性化状態にしたα−アセトアミノハロゲン基、N−ヒドロキシメチルジハロプロピオンアミド等を用いて水不溶性担体表面を活性化したα,β−プロピオンアミノハロゲン基、N−ヒドロキシメチルジハロアセトアミド等を用いて水不溶性担体表面を活性化したα,α−アセトアミノジハロゲン基、N−ヒドロキシメチルトリハロアセトアミド等を用いて水不溶性担体表面を活性化したα,α,α−アセトアミノトリハロゲン基等のハロアセトアミノアルカン化剤を用いたリンカー、エピクロロヒドリン等を用いて水不溶性担体を活性化したエポキシ基等が挙げられる。他に、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、ビニル基、ブロモシアンによるリンカー等も挙げられるがこれらに限定されるものではない。本発明においては、リガンドの機能を維持したまま穏和な条件で反応できる点より、ハロアセトアミノアルカン化剤を用いたリンカーが良好に用いられる。
また、前記リンカーの水不溶性担体当りの導入量は、リガンド固定量に影響する為、0.6nmol/m2以上が好ましいが、ある一定量以上になるとリガンド密度が増加し過ぎて有効に利用されないため、0.6nmol/m2以上250nmol/m2以下が好ましく、さらにリガンド固定の安定性の観点から50nmol/m2以上250nmol/m2以下が最も好ましい。
このような特定細胞吸着材は、被処理液の入口と処理された液の出口とを有する容器に公知の方法によって充填され、特定細胞吸着器とされる。特定細胞吸着器は組立てられた後滅菌されるが、滅菌後も抗体の機能を維持する為に滅菌保護液で浸漬又は湿潤化する方法が好んで用いられる。
ここでいう滅菌保護液とは、滅菌時に特定細胞吸着材のリガンドの抗原結合活性を損なわないようにするための充填液であり、リガンドを安定に保持できるものであれば特に限定はないが、滅菌時に発生するラジカルをトラップできるものや、ラジカルによる酸化を防ぐ抗酸化剤などがより効果的に用いられる。中でも安全性の点から、抗酸化剤であるアスコルビン酸塩などがより好ましく用いられる。溶解度の理由から、アスコルビン酸塩の最適濃度は5mM以上2M以下であることが好ましい。5mM未満の場合、担体表面に共有結合されたリガンドの近傍に存在するアスコルビン酸塩濃度が低い為、滅菌後に抗体の活性を維持でき難くなる傾向がある。また、2Mを超えるとアスコルビン酸塩の溶解度の関係でアスコルビン酸塩が析出し易くなり、好ましくない。さらに安全性の点から5mM以上20mM以下が好ましく、プライミング時の置換性の点から5mM以上10mM以下が最も好ましく用いられる。
上記アスコルビン酸塩とは、アスコルビン酸でもよいし、アスコルビン酸とアルカリ性物質等の反応により生成するアスコルビン酸塩でもよい。
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
<活性化不織布の作成>
ガラス製のフラスコにN−ヒドロキシメチルヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え、撹拌した。これにポリプロピレンからなる不織布(平均繊維直径16.9μm、目付80g/m2、厚み約0.7mm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し、エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
この活性化不織布を直径0.68cmの円に切断したもの12枚を、カルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下、「PBS(−)」と略す)に溶解した抗ヒトCD4モノクローナル抗体(以下、「抗ヒトCD4抗体」と略す)1.2ml(48μg/1.2ml)に常温で2.5時間浸し、モノクローナル抗体を固定後、PBS(−)3mlで洗浄した。次に0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下、「Tween20溶液」と略す)を加え常温で2.5時間浸漬した後、PBS(−)3mlで洗浄し、目的の特定細胞吸着材を得た。
入口と出口を有する容積約1mlの容器に上記特定細胞吸着材(平均繊維直径16.9μm、平均繊維間距離31.4μm、目付80g/m2、厚み約0.7mm、嵩密度0.11g/cm3、単位表面積当り抗体保持量0.55pmol/cm2)10枚と、充填液として10mMアスコルビン酸PBS(−)溶液(アスコルビン酸の分子量176)を充填し、有効濾過長が約7.0mmの特定細胞吸着器を作成した。この特定細胞吸着器の物性は特定細胞吸着材と同等であった。この特定細胞吸着材に約25kGyのγ線を照射して滅菌した。
<細胞吸着性の評価>
低分子ヘパリン加血液(5000IU/L)を体外循環に近い線速条件である流速0.2ml/minでシリンジポンプを用いて細胞吸着器の入口より送液し、出口から処理後の血液を回収した。血液の処理量は、平均繊維直径から算出した繊維表面積当りの血液処理量が約0.027ml/cm2となるように設定した。このときのCD4(+)細胞の吸着率とCD8(+)細胞の吸着率を、FACSCalibur(BECTON DICKINSON)を用いてフローサイトメトリー法で測定したところCD4(+)細胞の吸着率は93.4%、CD8(+)細胞の吸着率は17.2%でありCD4(+)細胞を選択的に吸着できた。この試験管スケールから血液体外循環を想定してスケールアップすると、血液処理量を3Lに設定した場合、血液と特定細胞吸着材の比を一定にして必要な特定細胞吸着材の重量を算出すると約9gとなる。この時の特定細胞吸着材の容積(ml)を、特定細胞吸着材の重量(g)、目付け(g/m2)、厚み(mm)を用いて次式(5)から算出される。

特定細胞吸着材の容積=特定細胞吸着材の重量/目付け×厚み×1000・・・(5)

これより算出された特定細胞吸着材の容積は約354mlであった。
[実施例2]
平均繊維直径が7.0μm、平均繊維間距離が11.0μm、目付80g/m2、厚み約0.7mm、嵩密度0.12g/cm3、単位表面積当り抗体保持量0.47pmol/cm2の不織布を10枚充填し、有効濾過長が約7.0mmの特定細胞吸着材を用いた以外は、実施例1と同じ方法で実施した。その結果、CD4(+)細胞の吸着率は98.6%、CD8(+)細胞の吸着率は36.3%でありCD4(+)細胞を選択的に吸着できた。またこの時の特定細胞吸着材を用いて実施例1と同様に血液体外循環を想定してスケールアップした場合、特定細胞吸着材の容積は136mlであった。
[比較例1]
平均繊維直径が3.8μm、平均繊維間距離が5.4μm、目付80g/m2、厚み約0.6mm、嵩密度0.14g/cm3、単位表面積当り抗体保持量0.58pmol/cm2の不織布を12枚充填し、有効濾過長が約7.2mmの特定細胞吸着材を用いた以外は、実施例1と同じ方法で実施した。その結果、CD4(+)細胞の吸着率は99.9%、CD8(+)細胞の吸着率は71.6%でありCD4(+)細胞を選択的に吸着できなかった。またこの時の特定細胞吸着材を用いて実施例1と同様に血液体外循環を想定してスケールアップした場合、特定細胞吸着材の容積は65mlであった。
[実施例3]
平均繊維直径が20.0μm、平均繊維間距離が38.0μm、目付80g/m2、厚み約0.7mm、嵩密度0.10g/cm3、単位表面積当り抗体保持量0.38pmol/cm2の不織布を10枚充填し、有効濾過長が約7.0mmの特定細胞吸着材を用いた以外は、実施例1と同じ方法で実施した。その結果、CD4(+)細胞の吸着率は72.3%、CD8(+)細胞の吸着率は22.0%でありCD4(+)細胞を選択的に吸着できた。またこの時の特定細胞吸着材を用いて実施例1と同様に血液体外循環を想定してスケールアップした場合、特定細胞吸着材の容積は480mlであった。
[比較例2]
平均繊維直径が7.0μm、平均繊維間距離が8.4μm、目付80g/m2、厚み約0.7mm、嵩密度0.17g/cm3、単位表面積当り抗体保持量0.40pmol/cm2の不織布を10枚充填し、有効濾過長が約7.0mmの特定細胞吸着材を用いた以外は、実施例1と同じ方法で実施した。その結果、CD4(+)細胞の吸着率は95.9%、CD8(+)細胞の吸着率は84.0%でありCD4(+)細胞を選択的に吸着できなかった。またこの時の特定細胞吸着材を用いて実施例1と同様に血液体外循環を想定してスケールアップした場合、特定細胞吸着材の容積は99mlであった。
これらの結果から、特定細胞吸着材の平均繊維直径が7μm未満または/および平均繊維間距離が11μm未満の場合は、CD8(+)細胞吸着率が高くなってCD4(+)細胞に対する吸着選択性が下がるため好ましくない。一方、平均繊維直径が20μmより大きくかつ平均繊維間距離が38μmより大きい場合は、血液体外循環を想定してスケールアップした場合の特定細胞吸着材の容積が480mlより大きくなり、一般的な体外循環用血液回路内の容積を含めると約600ml程度の血液が一時的に体外へ導出されることになる。これは患者体重50kgを想定した場合、全血液量の15%以上にあたるため実用的でない。
以上の結果を表1に示す。
本発明の特定細胞吸着器は特定細胞を選択的に吸着できるため、免疫系疾患のような疾患の原因となる、もしくは疾患を増悪する特定の細胞のみを吸着除去する治療において有用に用いることができる。
平均繊維間距離の計算式を誘導するためのモデル系。 平均繊維間距離の計算式を誘導するためのカラムの基本ユニット。
符号の説明
1・・・繊維
H・・・カラムの高さ
x・・・平均繊維直径
y・・・平均繊維間距離

Claims (6)

  1. 特定細胞の表面抗原と親和性を有するリガンドを繊維状の水不溶性担体に保持した特定細胞吸着材が血液入口および血液出口を有する容器の中に充填された特定細胞吸着器であって、該特定細胞吸着材の平均繊維直径が7μm以上20μm以下であり、かつ該容器に充填された特定細胞吸着材の平均繊維間距離が11μm以上38μm以下であることを特徴とする特定細胞吸着器。
  2. 前記リガンドが抗体である請求項1記載の特定細胞吸着器。
  3. 前記特定細胞が白血球である請求項1または2に記載の特定細胞吸着器。
  4. 前記白血球がリンパ球である請求項3記載の特定細胞吸着器。
  5. 前記リンパ球がヘルパーT細胞である請求項4記載の特定細胞吸着器。
  6. 前記特定細胞吸着材が滅菌されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の特定細胞吸着器。
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