JP4318234B2 - 単球を分化誘導せしめる方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は血液細胞等、各種の細胞を培養する方法及び装置に関する。得られた細胞は各種疾病の治療及び免疫学や細胞生物学等の基礎科学分野で用いることが可能となる。
【0002】
【従来の技術】
近年、細胞を培養して細胞数を増やしたり、別の機能を持つ細胞に分化させることが盛んに行われている。通常、細胞培養の原料となる細胞は血液等、種々の細胞の混合物から分離されて培養に供される。例えば特許第2530966号公報には機能的T細胞亜群の培養方法が開示されているが、同公報によれば採血された血液を比重液によりリンパ球に分離し、次にナイロンウールに通し単球及びB細胞を除去し、更にセルソーターにて分離して原料細胞を得ている。また、J.Exp.Med.Vol.179、p1109〜1118には樹状細胞の培養方法が開示されているが、同論文によればまず比重液にて単核球に分離し、10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地に浮遊し、6穴プレートで37℃2時間インキュベートした後、プレートに付着していない細胞をリンスにより除去し、更に0.5mMEDTA含カルシウム・マグネシウム不含リン酸塩緩衝液を加え37℃でインキュベートして付着細胞を脱離、回収して原料細胞を得ている。このように、細胞培養は原料細胞を得るまでに実験室レベルの極めて煩雑な処理操作の組み合わせが必須であり、必要な資材も多いという問題があった。この問題を克服するために種々の試みがなされている。例えば特開平9−107956号公報には少なくとも多孔質ビーズと、その表面(気孔内を含む)に存在するCD34陽性細胞からなることを特徴とする細胞培養出発組成物が開示されている。本方式によればCD34陽性細胞の分離操作を行うことなく細胞培養が可能となる。しかしながら、本方式ではビーズを用いており、培養中は常に攪拌していなければならない等、その取り扱い性にやや難がある。一方、特公平8−24583号公報には繊維状物質が容器に充填されてなるフィルターに有核細胞を吸着させた後、フィルターごと凍結し、室温で解凍することを含むDNAの抽出方法が開示されている。しかしながら同技術は各種遺伝子診断に用いるためにDNAを含む有核細胞を分離採取するもので、細胞培養とは全く異なる技術分野であるため、捕捉された細胞を培養することを示唆する記載は一切無い。
ところで、人工臓器20巻1号、p235〜240にはマウスの脾臓を摘出してホモジナイズし、トリス緩衝塩化アンモニウム溶液で赤血球を溶血して調製したリンパ球を1.5μm〜17μmの各種ポリプロプレン製不織布に吸着させ、培養を行うことが開示されている。しかしながら、同論文は不織布の繊維径が細胞機能に及ぼす影響を細胞が産生するサイトカイン量により検討したもの、即ち極細繊維と細胞の相互作用を利用し細胞機能の制御への応用を目指したものであり、分離と培養を同一の基材で行うという本発明の技術思想とは全く異なるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安価で且つ簡便・短時間操作で、細胞の分離と培養を行える方法及び装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる問題点を解決すべく鋭意検討した結果、細胞分離用の細胞捕捉材に単球を捕捉させ、浮遊細胞を除去した上で、単球を捕捉させたまま培養が可能であるという驚くべき事実を見出し、これにより細胞培養前の細胞分離回収操作を一切省略することを可能とし、本発明を完成させたものである。即ち、本発明は末梢血または臍帯血から比重遠心法により調製された単球とリンパ球を含む細胞含有液を不織布からなる細胞捕捉材が充填されている容器に導入し、細胞捕捉材に単球を捕捉させ、浮遊細胞を容器外に導出した後に容器ごと培養し、培養後の浮遊細胞を回収することを特徴とする単球を分化誘導せしめる方法である。
【0005】
以下本発明を詳細に説明する。本発明で言う培養原料細胞とは培養を行う対象となる細胞のことであり、除去対象細胞とは先述の用途には不要であるか、又は培養を阻害する等の理由で、培養原料細胞に混入することが問題となるため積極的に除去することが必要である細胞のことを言う。培養原料細胞としては例えば以下があげられるが、これらに限定されるものではない。白血球、顆粒球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、サプレッサーTリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、NKT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、造血幹/前駆細胞、骨髄球、赤芽球、巨核球、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、繊維芽細胞、軟骨芽細胞、間葉系幹/前駆細胞(stromal stem cell)。また、除去対象細胞としては例えば以下があげられるが、これらに限定されるものではない。赤血球、血小板、顆粒球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、サプレッサーTリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、NKT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、造血幹/前駆細胞、骨髄球、赤芽球、巨核球、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、繊維芽細胞、軟骨芽細胞、間葉系幹/前駆細胞(stromal stem cell)。これら培養原料細胞と除去対象細胞の組み合わせは、いかなる細胞を培養するかによって決定する。例えば、培養により造血前駆細胞を増幅する場合、培養原料細胞は造血幹/前駆細胞であり、除去対象細胞は赤血球、顆粒球等である。また、例えば、培養により樹状細胞を得る場合、培養原料細胞は造血幹/前駆細胞又は単球(樹状細胞は造血幹/前駆細胞を原料にする場合と単球を原料にする場合の2法がある)であり、除去対象細胞は赤血球、顆粒球、リンパ球等である。これら培養原料細胞と除去対象細胞を含む細胞含有液としては、末梢血、骨髄、臍帯血(臍帯血管から採取されたものだけでなく、胎盤血管から採取されたものも含む)、リンパ液及びこれらに遠心分離等何らかの処理を施したもの、あるいは各種臓器や組織から抽出した細胞を何らかの液体に再浮遊させたものがあげられる。
【0006】
本発明で言う多孔質体からなる細胞捕捉材とは培養原料細胞を実質的に捕捉し、除去対象細胞は実質的に捕捉しない細胞捕捉材で、細胞培養用担体として使用し得るものであればいかなる材料も使用出来るが、成型性、滅菌性や細胞毒性が低いという点で好ましいものを例示すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等の合成高分子、アガロース、セルロース、酢酸セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩等の天然高分子、ハイドロキシアパタイト、ガラス、アルミナ、チタニア等の無機材料、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属があげられる。また、ここで言う多孔質体とは例えば織布、不織布などの繊維塊、3次元連通孔を有するスポンジ状構造体、非連通孔を有する多孔質構造体などをさす。また、これらの捕捉材はこのままでも用いることができるが、細胞の選択的通過あるいは捕捉を行う等の必要に応じ、表面改質を施したものでもよい。例えば、血小板通過性を高めるにはWO87/05812公報で提案されている非イオン性親水基と塩基性含窒素官能基を有するポリマーのコートによる方法等があげられ、細胞の選択的捕捉を行う場合、アミノ酸、ペプチド、糖類、糖タンパク(抗体、接着分子等のバイオリガンドを含む)といった特定の細胞に親和性のあるリガンドを、例えば特開平2−261833号公報で提案されているハロアセトアミド法により固定する。不織布の場合、通常、繊維径は1.0μm以上50μm以下であり、好ましくは1.0μm以上40μm以下であり、更により好ましくは1.5μm以上30μm以下である。1.0μm未満では繊維の機械的強度が低いため、種々の操作を行っている際に繊維が破壊されるおそれがあるので好ましくない。50μmを超えると、培養原料細胞は繊維に捕捉されず素通りする可能性が高くなる。また、スポンジ状構造体の場合、孔径は通常2.0μm以上30μm以下であり、好ましくは2.5μm以上25μm以下であり、更により好ましくは3.0μm以上20μm以下である。2.0μm未満では流れ性が著しく劣り、通液自体が困難になるおそれがあり、また30μmを超えると、回収必要細胞の捕捉率の低下を招くので好ましくない。
前記細胞捕捉材を充填する容器の材質としては、成型性、滅菌性や細胞毒性が低いという点で好ましいものを例示すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、塩化ビニル等の合成高分子、ハイドロキシアパタイト、ガラス、アルミナ、チタニア等の無機材料、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属があげられる。また、前記細胞捕捉材と容器は凍結に耐えうるものであることが好ましい。前記細胞捕捉材と容器が凍結に耐えうるものであれば、細胞捕捉材に細胞を捕捉させ、そのまま凍結保存し、解凍後に培養液を同容器に導入し、細胞培養を行うことが可能となる。
【0007】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
本実施例は培養原料細胞が単球、除去対象細胞がリンパ球であり、単球を培養により樹状細胞に分化誘導せしめるものである。
▲1▼細胞培養装置
ポリエチレンテレフタレート製不織布(旭化成工業製“マイクロウェブ”、平均繊維径約3μm)、アクリル製不織布(旭化成工業製“シャレリア”、平均繊維径約15μm)、セルロース不織布(旭化成工業製“ベンリーゼ”、平均繊維径13μm)、ハイドロキシアパタイトコート不織布(旭光学工業製マスク“ウイルスガード”を解体し取り出したもの。平均繊維径約22μm)を23mmφに打ち抜き、ポリエチレンテレフタレート不織布は1枚、他は5枚をポリスチレン製浮遊細胞培養用6穴ディッシュ(住友ベークライト製)に敷き詰めて4種の細胞培養装置とした。
▲2▼細胞含有液の調製
娩出後の胎盤及び臍帯から50mLディスポーザブルシリンジ(18ゲージ針付き)を用いて、臍帯血を予め抗凝固剤CPD28mLが入っている200mL血液バッグに採取した。この臍帯血を比重遠心法(ベクトンディキンソン社製「CPTチューブ」を使用)により単核球画分(培養原料細胞である単球と除去対象細胞であるリンパ球が混在している)に分離し、細胞含有液とした。
▲3▼細胞分離・培養操作
▲2▼で調製した細胞含有液を▲1▼で作成した4種の細胞培養装置に1mL(細胞数=1×107 )添加し、CO2 インキュベーター(37℃、5%CO2 )で2時間静置後、浮遊細胞液を洗浄除去した。その後、GM−CSF(ペプロテック社製)800U/mL、IL4(ペプロテック社製)500U/mLと10%ウシ胎児血清(ギブコ社製)、1%ペニシリン−スプレトマイシン(ギブコ社製)を含むRPMI1640(ギブコ社製)を細胞培養用(樹状細胞への分化誘導用)培地として添加し、CO2 インキュベータ(37℃、5%CO2 )で7日間培養した。
培養細胞の回収は、単球から分化誘導され樹状細胞になることで付着性が失われることから、浮遊細胞を回収した。
▲4▼分析
フローサイトメーターにより同定されるCD14陰性、CD83陽性、HLA−DR陽性の細胞集団を樹状細胞として、回収細胞中の樹状細胞の比率を算出した。また、総細胞数はチュルク液による視算法により算出、樹状細胞数は以下の式から算出した。
樹状細胞数=総細胞数×樹状細胞比率(%)/100
▲5▼結果
結果のまとめを表1に示す。
【0008】
【発明の効果】
以上示したように、本発明によれば安価でかつ簡便・短時間操作で、細胞の分離と培養を行える方法及び装置を提供することができるので臨床現場での省力化に貢献するところ大である。
Claims (3)
- 末梢血または臍帯血から比重遠心法により調製された単球とリンパ球を含む細胞含有液を不織布からなる細胞捕捉材が充填されている容器に導入し、細胞捕捉材に単球を捕捉させ、浮遊細胞を容器外に導出した後に容器ごと培養し、培養後の浮遊細胞を回収することを特徴とする単球を分化誘導せしめる方法。
- 細胞捕捉材に単球を捕捉させ、浮遊細胞を容器外に導出した後かつ培養前に、前記容器を凍結保存する工程を含む請求項1記載の単球を分化誘導せしめる方法。
- 細胞捕捉材に単球を捕捉させ、浮遊細胞を容器外に導出した後に細胞捕捉材を前記容器から取り出し、別の培養用容器に移して培養する請求項1又は2記載の単球を分化誘導せしめる方法。
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1998
- 1998-11-24 JP JP34800398A patent/JP4318234B2/ja not_active Expired - Lifetime
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