JPH1014565A - 造血幹細胞濃縮材、造血幹細胞濃縮フィルターおよび造血幹細胞濃縮方法 - Google Patents

造血幹細胞濃縮材、造血幹細胞濃縮フィルターおよび造血幹細胞濃縮方法

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JPH1014565A
JPH1014565A JP8188060A JP18806096A JPH1014565A JP H1014565 A JPH1014565 A JP H1014565A JP 8188060 A JP8188060 A JP 8188060A JP 18806096 A JP18806096 A JP 18806096A JP H1014565 A JPH1014565 A JP H1014565A
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JP
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hematopoietic stem
cell
filter
stem cell
cells
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JP8188060A
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English (en)
Inventor
Norio Inama
徳生 稲摩
Masaya Sumida
政哉 澄田
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Asahi Kasei Medical Co Ltd
Original Assignee
Asahi Medical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞集団からの造血幹細胞の選択的濃縮を、
医療現場において安全、安価、簡便にしかも実用レベル
の回収率で実施できる、造血幹細胞の濃縮材、濃縮フィ
ルター及び濃縮方法を提供する。 【解決手段】 平均繊維径1.0μm以上10.0μm
以下の繊維塊からなることを特徴とする造血幹細胞濃縮
材。平均繊維径1.0μm以上10.0μm以下の繊維
塊を液体流入口と液体流出口を有する容器に充填したこ
とを特徴とする造血幹細胞濃縮フィルター。細胞液の全
処理白血球数と繊維塊を充填したフィルターの繊維表面
積比が1×106 個/m2 以上2×108 個/m2 以下
になる様に細胞液を調製し、該フィルターに該細胞液を
導入した後、該フィルターに洗液を注入して造血幹細胞
を回収することを特徴とする造血幹細胞濃縮方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、骨髄あるいは末梢血な
どの、赤血球、造血幹細胞および/または造血前駆細胞
(以下、「造血幹細胞」と言う)、リンパ球、単球、顆
粒球等を含む細胞集団から造血幹細胞を選択的に濃縮
(ここで言う濃縮とは、全細胞中における造血幹細胞含
有率増加のことである)する材料、該材料を用いたフィ
ルター及び該フィルターを用いた造血幹細胞濃縮方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】白血病などの造血器腫瘍及び固形癌の化
学療法における副作用である造血障害に対して、骨髄移
植療法が広く施行されている。骨髄移植療法とは、移植
骨髄による致死的造血障害の回復法であるため、患者に
とって致死的な大量放射線及び/または大量化学療法
(以下、「大量化学療法」と言う)の施行が可能とな
り、白血病や固形癌の治療につながる。また、近年、骨
髄と同様に末梢血中にも、これらの治療に必要な造血幹
細胞が含まれていることが明らかになった。通常、造血
幹細胞の末梢血中での含有率はかなり低値であり、採取
して骨髄移植の代わりに用いることは困難であるが、抗
癌剤及び/またはG−CSF(顆粒球コロニー刺激因
子)等のサイトカインを投与することにより、その含有
率が増大することが明らかにされ、骨髄採取と比べる
と、全身麻酔が不要で安全なことから、さかんに臨床応
用が行われている。更に近年、臍帯血中には末梢血より
もはるかに高濃度で造血幹細胞が含有されていることが
明らかになり、臨床応用が始まった。以下、本明細書で
は末梢血、臍帯血を用いる移植も、骨髄移植という語で
代表させることにする。
【0003】ここで、移植法は細胞を誰から得るかによ
って同種移植と自家移植に分けられる。前者は健康な他
人(血縁者または非血縁者)の細胞を用いるもので、後
者は患者本人の細胞を用いるものである。同種移植(臍
帯血を用いる場合を除く)が主に移植当日(大量化学療
法後)に細胞が採取され、すぐに移植されることが多い
のに対し、自家移植においては大量化学療法前に患者自
身の細胞を採取して造血幹細胞分画に濃縮して凍結保存
し、その後、大量化学療法を行い、凍結保存しておいた
細胞を解凍後、移植する事が通常行われる。また、臍帯
血を用いる同種移植の場合は、出産によって得られる臍
帯から採取した臍帯血を、前述した自家移植と同様、造
血幹細胞分画に濃縮して凍結保存し、大量化学療法後に
解凍して移植することが行われる。ここで、凍結保存に
際し、造血幹細胞濃縮が行われるのは、解凍時の破壊赤
血球の輸注による腎障害等の副作用を防止するととも
に、混入顆粒球による凝集を防止するためである。更に
近年、モノクローナル抗体固定器具を用いて更なる細胞
分離(目的:同種移植においては合併症の原因となる細
胞の除去、自家移植においてはCD34陽性造血幹細胞
の選択的採取など)を行うことが盛んに検討され始めて
いるが、このような細胞分離においては前処理として造
血幹細胞濃縮が必須である。
【0004】造血幹細胞濃縮の方法は、通常、密度勾配
遠心法と呼ばれる比重液(例えば、ファルマシア社製F
icoll)を用いた遠心分離法が用いられる。該方法
は非常に煩雑で処理時間が長く、比重液に細胞浮遊液を
重層する際に決して液面を乱してはならないなど、非常
に熟練を要する。また、比重液を用いることから、コス
ト高である。更に、細胞浮遊液重層操作はクリーンベン
チ内で行われるが、開放系であるため、細胞による汚染
が危惧されている。上記方法の煩雑さを克服するため
に、多くの試みがなされている(例えば、特開昭61−
84557、特開平2−134564など多数)。しか
しながら、これらも、比重液と遠心分離器を用いる点で
は何ら従来法と変わらず、簡便、低コスト、処理時間が
短く、閉鎖系の造血幹細胞濃縮システムが待望されてい
た。また、従来の方法では、血小板、単球を効率良く除
去することはできない。これらの細胞も顆粒球と同様、
凝集の原因となることから、これらの細胞の簡便かつ有
効な除去法が待望されていた。更に、従来法では比重で
細胞を分離するので、造血幹細胞と比重が同じであるリ
ンパ球を除去することは全く不可能であった。ところ
で、特開昭54−11905には白血球を捕捉するフィ
ルターで、白血球と他の血球を分離した後、上記フィル
ターに捕捉された白血球を回収し、次にこの白血球以外
の成分の細胞が少ない白血球浮遊液を、顆粒球、単球を
捕捉するフィルターに通し、顆粒球、単球を除去し、リ
ンパ球以外の成分の少ないリンパ球浮遊液を得る方法が
開示されている。しかしながら、同公報では造血幹細胞
の記述はない。そして、同公報で達成しようとしている
技術は、リンパ球の組成をなるべく変えることなく回収
する方法であり、リンパ球の除去は最小限に抑えられて
いる。したがって、同公報に記載の技術では造血幹細胞
を濃縮することは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、医療現場に
おいて安価、簡便に用いることができ、かつ、実用レベ
ルの回収率が維持されている造血幹細胞の濃縮材、濃縮
フィルター及び濃縮方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決するため鋭意研究を重ねた結果、医療用途に汎用
されている繊維塊のうち特定繊維径のものが造血幹細胞
を効果的に濃縮できることを見出し、更に特定の細胞数
と繊維表面積の比率を選択することにより、その濃縮性
能が向上することを見出し、本発明を完成するに至っ
た。即ち、本発明は平均繊維径1.0μm以上10.0
μm以下の繊維塊からなる造血幹細胞濃縮材に関する。
また、該繊維塊を液体流入口と液体流出口を有する容器
に封入した造血幹細胞濃縮フィルターに関する。更に、
全処理白血球数と該フィルターの繊維塊表面積比が1×
106 個/m2 以上2×108 個/m2 以下になる様に
細胞液を調製し、該フィルターに該細胞液を導入した
後、該フィルターに洗液を注入して造血幹細胞を回収す
ることを特徴とする造血幹細胞濃縮方法に関する。
【0007】本発明に用いる繊維塊は平均繊維径1.0
μm以上10.0μm以下である。繊維径が1.0μm
未満では捕捉した造血幹細胞の選択的回収が困難とな
り、10.0μmを超えると造血幹細胞の捕捉が困難と
なり、造血幹細胞の損失が大となる。その結果、いずれ
の場合でも造血幹細胞濃縮の特異性が低下する。更に好
ましくは1.4μm以上7.0μm以下、望ましくは
2.0μm以上7.0μm以下である。本発明による繊
維塊の形態としては繊維、多孔質体及び多孔膜体、不織
布等があげられるが、単位表面積が大きく、操作の簡便
さより不織布が好ましい。本発明による繊維塊の素材と
しては、水不溶性であればいかなる材質も使用可能であ
るが、成型性や、医療用具として必要な滅菌時の安定
性、安全性を考慮し、好ましいものを例示すると、ポリ
エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレ
ン、ナイロン、セルロース等があげられるが、これらに
限定されるものではない。更に、本発明の繊維塊に、細
胞回収率の向上、細胞浮遊液の流れ性向上を目的とし
て、親水性官能器による表面修飾で親水性を表面に付与
することが好ましい。表面修飾法を例示すると、共有結
合、イオン結合、コーティング、放射線グラフト等があ
げられるが、これらに限定されるものではない。親水性
官能器の例を示すと、繰り返し単位が2〜100のポリ
エチレングリコール鎖、水酸基、アミド基、エーテル
基、エステル基等があえられるが、これらに限定される
ものではない。具体的には特開昭55−129755で
開示されている繊維表面に抗血栓性材料をコートしたフ
ィルターを用いる方法、WO87/05812で開示さ
れている、繊維に非イオン性親水基と塩基性含窒素官能
基を含有するフィルターを用いる方法などがある。本発
明に用いる原料細胞液としては、骨髄、末梢血、臍帯血
あるいはこれらを遠心分離基により粗分離したものがあ
げられる。本発明に用いるフィルター容器としては液体
流入口と液体流出口を有するものであればよく、市販の
血液バッグ、シリンジなどがあげられるが、濃縮した造
血幹細胞を臨床用途で用いるには、滅菌可能なものが好
ましい。
【0008】本発明による造血幹細胞濃縮方法は、全処
理白血球数と上記の繊維塊を充填したフィルターの繊維
表面積比が1×106 個/m2 以上2×108 個/m2
以下になる様に細胞浮遊液を調製し、該フィルターに該
細胞液を導入する。全白血球数とフィルター表面積1m
2 当たりの比が2×108 個を越えると、回収細胞液に
単球、顆粒球、Bリンパ球、NK細胞が混入してくるた
め、造血幹細胞濃縮の特異性が低下する。この理由は明
らかではないが、本発明者らは、繊維塊表面に粘着した
造血幹細胞が他の細胞(単球、顆粒球、Bリンパ球、N
K細胞)と凝集塊を形成するためと推測している。ま
た、1×106 個/m2 未満では造血幹細胞濃縮は認め
られるものの、造血幹細胞の損失(絶対数の減少)が多
くなり好ましくない。即ち、本発明の全白血球数とフィ
ルターの表面積比は、1×106 個/m2 以上2×10
8 個/m2 以下、好ましくは1×107 個/m2 以上1
×108 個/m2 以下、より好ましくは2×107 個/
2 以上1×108 個/m2以下である。原料細胞液か
ら調製した細胞浮遊液をフィルターに注入すると、赤血
球は該フィルターから流出するが、造血幹細胞を含有す
る白血球分画はフィルター内に保持される。しかしなが
ら若干の赤血球がフィルター内に残存することがあるの
で、洗液を導入し、残存赤血球を洗い流すことが好まし
い。次にフィルターに洗液をシリンジなどで勢い良く注
入して造血幹細胞を回収する。ここで、造血幹細胞以外
の細胞は、フィルター内に保持されてほとんど出てこな
い。フィルター内への洗液の注入は入口側から、あるい
は出口側からのいずれでも良いが、出口側から注入した
場合、造血幹細胞の回収率が良く、入口側から注入した
場合、造血幹細胞の純度が良い傾向があるが、その理由
は明らかではない。また、シリンジで、洗液を吸引する
ことでも細胞を回収することができる。洗液としては生
理食塩水、ハンクス液(HBSS)、ダルベッコリン酸
緩衝液(D−PBS)などの緩衝液に、必要に応じてヒ
ト血清アルブミンなどの蛋白あるいはACD(Acid
−Citrate−Dextrose)などの抗凝固剤
を添加したものが用いられる。なお、ここで注入する洗
液量はフィルター内容積の2分の1以上200倍以下が
好ましい。ここで、2分の1未満では造血幹細胞の回収
が充分ではなく、また200倍を超えると、膨大な洗液
量のため造血幹細胞の濃度が大幅に低下するため、遠心
分離等で濃縮を行う際に大幅な細胞ロスを生じる危険性
があるため好ましくない。また、より好ましくは1以上
100倍以下である。本発明により造血幹細胞が濃縮さ
れた細胞集団は、遠心分離等、必要な操作を加えた後、
患者に輸注されるか、また、凍結保存可能な容器に充填
され、凍害防止剤等を添加して凍結保存された後、患者
に輸注されるか、あるいは何らかの更なる細胞処理(モ
ノクローナル抗体を用いた精密分離等)を施された後、
保存または輸注される。更に、本発明の用途としては前
述した骨髄移植に限らず、養子免疫療法、遺伝子治療の
細胞ソースの調製等、幅広い用途がある。
【0009】
【実施態様】以下に実施例で本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0010】
【実施例1】 フィルター 有効濾過部寸法2.15×2.15cmのハウジングに
平均繊維径2.3μm(電子顕微鏡による測定)のポリ
エステル不織布を表面積1.0m2 、寸法が1.8×
1.8cmとなるように切断して充填した。このフィル
ターに親水性を付与する目的で、ヒドロキシエチルメタ
クリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのモ
ノマーをモル組成比97:3にて、通常のラジカル重合
したポリマー(以下HM−3と称す)をエタノールに1
wt%となるように溶解した溶液を注入後、窒素ガスに
より乾燥させてコーティングとした。酸化エチレンガス
滅菌を行い、実験用フィルターとした。このフィルター
嵩密度は0.2g/cm3 であった。 実験用検体 化学療法及びG−CSF投与後の悪性腫瘍患者からCO
BE社製「Spectra」成分採血装置を用いて常法
により末梢血幹細胞を含む末梢血を採取し、ACD−A
液20mlに浮遊させたものを実験用検体とした。な
お、本検体は白血球濃度5.0×105 個/ml、白血
球数1.0×107 個、白血球中の造血幹細胞含有率
(CD34陽性細胞をフローサイトメーターにより測
定)1.3%であった。この時の全処理白血球数と繊維
表面積比は1.0×107 個/m2 であった。 濃縮操作及び結果 実験用検体をシリンジポンプにて5ml/minでフィ
ルターの入口側から注入し、出口側から流出した赤血球
含有液をコニカルチューブで回収した。その後生理食塩
水25mlを5ml/minで入口側から注入し、フィ
ルター内の残存赤血球を前述のコニカルチューブに洗い
流した。次にフィルターの入口側と出口側を逆にして、
生理食塩水60mlをフィルターの出口側からペリスタ
ーポンプを用いて50ml/minで注入し、入口側か
ら流出した造血幹細胞含有液を別のコニカルチューブに
て回収した。本操作により、白血球数1.6×106
個、白血球中の造血幹細胞含有率5.5%となった。ま
た、細胞回収率=100×フィルター処理後/フィルタ
ー処理前細胞数として各細胞の回収率を算出したとこ
ろ、造血幹細胞回収率は67.7%となり、高率に造血
幹細胞が回収されていた。更に、造血幹細胞濃縮倍率=
処理後の造血幹細胞含有率/処理前の造血幹細胞含有率
として、造血幹細胞濃縮倍率を計算すると、約4.2倍
となり、造血幹細胞が効率よく濃縮されたことが明らか
になった。
【0011】
【実施例2】 フィルター 実施例1と同一のフィルターを用いた。 実験用検体 健常人から常法により採取した200mlの末梢全血を
遠沈管に入れ、日立社製遠心分離器CR7B3により3
500rpmで5分間、遠心分離を行った。上層の血漿
層をピペットで廃棄した後、ピペットでバフィーコート
層を採取した。なお、このバフィーコートの性状は赤血
球数2.1×1011個、白血球数5.0×108 個、血
小板数1.4×1011個であった(自動血球計算器にて
測定)。このバフィーコートをACD−A液で、全処理
白血球数と繊維表面積の比が1.4×108 個/m2
なるように希釈して実験用検体とした。なお、本実験用
検体は赤血球数7.0×1010個、血小板数4.2×1
10個、白血球数1.4×108 個、(以上、自動血球
計算器にて測定)、白血球亜分画では顆粒球49%、単
球8%、リンパ球43%(塗沫標本を検鏡で測定)、白
血球中の造血幹細胞含有率0.3%(CD34陽性細胞
をフローサイトメーターにより測定)であった。 濃縮操作及び結果 実施例1と同様な操作を行った。得られた造血幹細胞含
有液の性状は赤血球数3.9×108 個、血小板数1.
3×108 個、白血球数4.0×107 個、白血球亜分
画では顆粒球18%、単球2%、リンパ球80%、白血
球中の造血幹細胞含有率1.0%となった。実施例1と
同様に造血幹細胞濃縮倍率を計算したところ3.0倍と
なり、造血幹細胞が効率よく濃縮されていることが分か
った。また各細胞の回収率を計算したところ、赤血球回
収率0.55%、血小板回収率0.30%、顆粒球回収
率10.5%、単球回収率7.1%、リンパ球回収率5
3.2%、造血幹細胞回収率95.2%となり、他の細
胞に比して造血幹細胞が高率に回収できていることが明
らかになった。
【0012】
【実施例3】 フィルター 実施例1のフィルターでHM−3未コートのものを用い
た。 実験用検体 実施例2と同様の検体を用いた。全処理白血球数と繊維
表面積比は1.4×108 個/m2 であった。 濃縮操作及び結果 実施例1と同様な操作を行った。得られた造血幹細胞含
有液の性状は赤血球数4.1×108 個、血小板数2.
6×109 個、白血球数2.7×107 個、白血球亜分
画では顆粒球28%、単球4%、リンパ球68%、白血
球中の造血幹細胞含有率1.5%であった。実施例1と
同様に造血幹細胞濃縮倍率を計算したところ5.0倍と
なり、造血幹細胞が効率よく濃縮されていることが分か
った。また各細胞の回収率を計算したところ、赤血球回
収率0.60%、血小板回収率6.2%、顆粒球回収率
11%、単球回収率9.6%、リンパ球回収率30.5
%、造血幹細胞回収率96.4%となった。実施例2と
比べると血小板の混入率が若干高く、また回収白血球数
が若干低かった。これは本実施例ではHM−3をコート
していないフィルターを用いたためと考えられる。以上
の結果より、本フィルターを用いると造血幹細胞を高率
に濃縮することが可能となることが分かる。また、各種
細胞回収率の値において、顆粒球、単球の回収率に比
し、リンパ球回収率が高く、更に、リンパ球回収率に比
し造血幹細胞回収率が高いことから、本条件では顆粒
球、単球とリンパ球の分離における差別化はもちろん、
従来、困難であったリンパ球と造血幹細胞の分離におけ
る差別化も達成していることが分かる。
【0013】
【実施例4】 フィルター 不織布の繊維径を7.0μmとする以外は実施例1と同
様のフィルターを用いた。 実験用検体 実施例2と同様の検体を用いた。全処理白血球数と繊維
表面積比は1.4×108 個/m2 であった。 濃縮操作及び結果 実施例1と同様な操作を行った。得られた造血幹細胞含
有液の性状は赤血球数3.9×108 個、血小板数2.
2×108 個、白血球数2.0×107 個、白血球亜分
画では顆粒球25%、単球3%、リンパ球72%、白血
球中の造血幹細胞含有率1.8%となった。実施例1と
同様に造血幹細胞濃縮倍率を計算したところ6.0倍と
なり、造血幹細胞が効率よく濃縮されていることが分か
った。また各細胞の回収率を計算したところ、赤血球回
収率0.56%、血小板回収率5.2%、顆粒球回収率
7.2%、単球回収率5.5%、リンパ球回収率23
%、造血幹細胞回収率85.7%となった。実施例2と
比べると造血幹細胞回収率が若干低いが、これは捕捉さ
れた造血幹細胞の回収率が実施例2より低かったのでは
なく、実施例2よりも繊維径が若干太いため、最初の注
入時及び残存赤血球の洗流の際に、造血幹細胞が漏出し
たためであると考えた。
【0014】
【比較例1】全処理白血球数と繊維表面積比を4.6×
108 個/m2 とする以外は実施例2と同様な実験を行
った。なお、本実験用検体は赤血球数4.6×10
11個、血小板数1.4×1011個、白血球数4.6×1
8 個、白血球亜分画では顆粒球45%、単球10%、
リンパ球45%、白血球中の造血幹細胞含有率0.35
%であった。得られた造血幹細胞含有液の性状は赤血球
数2.3×1010個、血小板数9.4×109 個、白血
球数2.0×108 個、白血球亜分画では顆粒球47
%、単球8%、リンパ球45%、白血球中の造血幹細胞
含有率0.42%となった。実施例1と同様に造血幹細
胞濃縮倍率を計算したところ1.2倍と低値であった。
また各細胞の回収率を計算したところ、赤血球回収率
5.0%、血小板回収率6.7%、顆粒球回収率45.
7%、単球回収率34.8%、リンパ球回収率46.6
%、造血幹細胞回収率52.2%となり、造血幹細胞の
回収率は比較的高かったものの、他の細胞の混入も多
く、幹細胞移植のためには更に何らかの方法で、造血幹
細胞の含有率を高めてやる必要がある。これは、全処理
白血球数と繊維表面積比が4.6×108 個/m2 と高
く、造血幹細胞が粘着性の強い顆粒球、単球、Bリンパ
球、NK細胞と凝集塊を形成したためと考えた。
【0015】
【比較例2】不織布の繊維径を33μmとし、フィルタ
ー嵩密度は0.20g/cm3 とする以外は実施例2と
同様な実験を行った。なお、本実験用検体の性状は赤血
球数5.5×109 個、血小板数2.3×109 個、白
血球数3.7×107 個、白血球亜分画では顆粒球44
%、単球8%、リンパ球48%、白血球中の造血幹細胞
含有率0.22%であり、全処理白血球数とフィルター
繊維の表面積比は1.2×108 個/m2 であった。得
られた造血幹細胞含有液の性状は赤血球数1.7×10
6 個、血小板数1.6×106 個、白血球数3.1×1
6 個、白血球亜分画では顆粒球30%、単球8%、リ
ンパ球62%、白血球中の造血幹細胞含有率0.39%
であり、造血幹細胞濃縮倍率は1.7倍と低値であっ
た。また各細胞の回収率を計算したところ、赤血球回収
率0.03%、血小板回収率0.07%、顆粒球回収率
5.7%、単球回収率8.4%、リンパ球回収率10.
8%、造血幹細胞回収率14.8%となり、顆粒球、単
球とリンパ球の回収率に、さらにはリンパ球と造血幹細
胞の回収率には大差が無かったことが低濃縮倍率の原因
と考えた。また、全体的に、白血球回収率が低値である
のは繊維径が33.0μmと太いため、白血球の捕捉が
不十分であったためと考えた。
【0016】
【比較例3】不織布の繊維径を0.5μmとする以外は
実施例2と同様な実験を行った。なお、本実験用検体の
性状は赤血球数6.7×1010個、血小板数3.3×1
10個、白血球数4.6×107 個、白血球亜分画では
顆粒球43%、単球7%、リンパ球50%、白血球中の
造血幹細胞含有率0.33%であり、全処理白血球数と
フィルター繊維の表面積比は4.6×107 個/m2
あった。得られた造血幹細胞含有液の性状は赤血球数
5.4×109 個、血小板数9.9×108 個、白血球
数2.8×106 個、白血球亜分画では顆粒球30%、
単球9%、リンパ球61%、白血球中の造血幹細胞含有
率0.63%であり、造血幹細胞濃縮倍率は1.90倍
であった。また各細胞の回収率を計算したところ、赤血
球回収率8.0%、血小板回収率3.0%、顆粒球回収
率4.2%、単球回収率7.8%、リンパ球回収率7.
4%、造血幹細胞回収率11.6%となり、造血幹細胞
の低回収率が低濃縮倍率の原因と考えた。これは繊維径
が0.5μmと細いため、捕捉された造血幹細胞が回収
時にも捕捉されたままで充分に回収できなかったためと
考えた。
【0017】
【実施例5】白血球処理細胞数と繊維表面積比を7.0
×106 個/m2 とする以外は実施例2と同様な実験を
行った。なお、本実験用検体は赤血球数2.3×1011
個、血小板数7.0×1010個、白血球数2.3×10
8 個、白血球亜分画では顆粒球45%、単球10%、リ
ンパ球45%、白血球中の造血幹細胞含有率0.35%
であった。得られた造血幹細胞含有液の性状は赤血球数
1.1×1010個、血小板数4.7×109 個、白血球
数8.0×107 個、白血球亜分画では顆粒球27%、
単球4%、リンパ球69%、白血球中の造血幹細胞含有
率1.1%となった。実施例1と同様に造血幹細胞濃縮
倍率を計算したところ約3.1倍となった。また各細胞
の回収率を計算したところ、赤血球回収率4.8%、血
小板回収率6.7%、顆粒球回収率5.3%、単球回収
率3.5%、リンパ球回収率13.3%、造血幹細胞回
収率34.7%となり、造血幹細胞の濃縮倍率は高かっ
たものの、造血幹細胞の回収率が若干低かった。表1に
実施例1〜5、比較例1〜3のまとめを示す。 実験3以外はHM−3コート有り
【0018】
【発明の効果】以上示したように、本発明による造血幹
細胞の濃縮方法は、安価、簡便かつ効果的に造血幹細胞
を濃縮することができ、更に、回収率も実用レベルを維
持しているので、安全性の向上した、かつ省力化された
骨髄移植を臨床現場において実現することが可能とな
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均繊維径1.0μm以上10.0μm
    以下の繊維塊からなることを特徴とする造血幹細胞濃縮
    材。
  2. 【請求項2】 平均繊維径1.0μm以上10.0μm
    以下の繊維塊を液体流入口と液体流出口を有する容器に
    充填したことを特徴とする造血幹細胞濃縮フィルター。
  3. 【請求項3】 細胞液の全処理白血球数と繊維塊を充填
    したフィルターの繊維表面積比が1×106 個/m2
    上2×108 個/m2 以下になる様に細胞液を調製し、
    該フィルターに該細胞液を導入した後、該フィルターに
    洗液を注入して造血幹細胞を回収することを特徴とする
    造血幹細胞濃縮方法。
JP8188060A 1996-07-01 1996-07-01 造血幹細胞濃縮材、造血幹細胞濃縮フィルターおよび造血幹細胞濃縮方法 Pending JPH1014565A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1484390A1 (en) * 2003-06-02 2004-12-08 Blutspendedienst des Bayerischen Roten Kreuzes Methods of preparing peripheral stem cells from leukocyte reduction filters
JP2010531142A (ja) * 2007-06-22 2010-09-24 サークル バイオロジクス、 エルエルシー. 液体濃縮装置、オートロガスな濃縮体液、およびそれらの使用方法

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