JP4949074B2 - プラズマ式溶融炉の運転制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
そのため、スラグ層厚さが所定の厚さになったら、一旦炉を保温状態とし、一定電力を一定時間投入後、所定の傾動操作で炉を傾け、溶融メタル56を出湯するようにしている。
そこで、特許文献1(特許第3408772号公報)では、溶融炉への廃棄物投入量を計測し、廃棄物投入総量が所定の規定値を超えた場合に傾動操作を行うようにした制御方法が提案されている。本来、溶融炉の傾動操作タイミングは溶融メタルの量で決定されることが望ましいが、炉内は高温で腐食性の高いガスがあり、また溶融メタルは溶融スラグに覆われているため計測し難いため、特許文献1のように廃棄物投入量を検出することにより溶融メタルの適性な排出時期を精度良く予測することを可能としている。
しかし、被処理物の投入量やその性状が変化すると、傾動予定時期にスラグ厚さが所定の厚さと異なってしまう場合がある。スラグ厚さが異なる状態で通常の溶融運転又は保温操作を行い、一定電力を投入してもメタル温度が適性値とならないという問題がある。
また、スラグ層厚さが一定であっても、炉径が異なるとメタル温度が変化する。図9(b)にメタル層の温度と炉径の関係を示す。同グラフに示されるように、スラグ層液面やメタル層との界面で放熱量が増えるので、出滓口近傍で一定のスラグ温度を維持する場合、炉中心のスラグ温度は高くなる。このため、メタル層温度も上昇の傾向を示す。
このように、被処理物の投入量や性状が変化しスラグ層厚さが異なったり、炉径が異なったりするとメタル層温度も変化するため、メタル層温度を適性値に維持することは困難であった。ここで、メタル層の温度を直接計測して制御することも考えられるが、メタル層温度を直接計測することは非常に困難で、且つ正確な温度を計測することは出来なかった。
特に、外部から灰を回収して溶融処理する単独溶融炉では、灰性状や投入量の毎日の変動が大きく、スラグ層厚さの変化が予測しづらいため傾動計画が立てづらく、スラグ層厚さ一定での傾動とならない場合がある。このため、メタル層温度が変化し、上記したような不具合が多く発生することが考えられる。
特許文献1に記載される方法では、スラグ厚さが一定であることを前提としているが、スラグ厚さが異なる場合には、やはり上記したような不具合が発生してしまう。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、炉体傾動時に、メタル層温度の変動による不具合を生じることなく安定して溶融メタルの排出を行うことができるプラズマ式溶融炉の運転制御方法及び装置を提供することを目的とする。
予めスラグ層厚さ毎のスラグ層温度−メタル層温度の相関関係を求めておき、
前記炉本体の傾動前に、スラグ層厚さを計測し、該計測したスラグ層厚さに対応した前記スラグ層温度−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル温度となるスラグ層温度の設定範囲を求め、前記設定範囲となるようにスラグ層温度を制御して溶融運転又は保温運転を行った後、前記炉本体を傾動させることを特徴とする。
予めスラグ層厚さ毎の投入電力−メタル層温度の相関関係を求めておき、
前記炉本体の傾動前に、スラグ層厚さを計測し、該計測したスラグ層厚さに対応した前記投入電力−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル温度となる投入電力の設定範囲を求め、前記設定範囲となるように投入電力を制御して溶融運転又は保温運転を行った後、前記炉本体を傾動させることを特徴とする。
前記スラグ層の厚さを計測するスラグ層厚さ計測手段と、前記スラグ層の温度を計測するスラグ層温度計側手段と、傾動時における前記メタル層の温度を監視するメタル温度制御装置と、を備え、
前記メタル温度制御装置は、予め求めておいたスラグ層厚さ毎のスラグ層温度−メタル層温度の相関関係が蓄積された記憶部と、該当するスラグ層厚さに対応したスラグ層温度−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル温度となるスラグ層温度の設定範囲を算出する演算部とを備え、前記炉本体の傾動前に、前記演算部により算出された設定範囲となるようにスラグ層温度を制御して溶融運転又は保温運転を行うことを特徴とする。
前記スラグ層の厚さを計測するスラグ層厚さ計測手段と、傾動時における前記メタル層の温度を監視するメタル温度制御装置と、を備え、
前記メタル温度制御装置は、予め求めておいたスラグ層厚さ毎の投入電力−メタル層温度の相関関係が蓄積された記憶部と、該当するスラグ層厚さに対応した投入電力−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル温度となる投入電力の設定範囲を算出する演算部とを備え、前記炉本体の傾動前に、前記演算部により算出された設定範囲となるように投入電力を制御して溶融運転又は保温運転を行うことを特徴とする。
また、スラグ層温度により運転制御する場合は、精度の高い運転制御が可能となり、一方投入電力により運転制御する場合は、より簡単な運転制御が可能である。
図1は本発明の実施例に係るプラズマ式溶融炉の全体構成図、図2は図1に示したプラズマ式溶融炉の傾動操作時を表す図、図3はスラグ層厚さ毎のスラグ層温度−メタル層温度の相関関係を示すグラフ、図4はスラグ層厚さ毎の投入電力−メタル層温度の相関関係を示すグラフ、図5は本実施例に係る運転制御方法のフローを示す図、図6は本実施例における熱流動解析を説明する図、図7は本実施例の溶融炉における熱流動解析モデルの一例を示す図である。
プラズマ式溶融炉10は、炉本体14の炉蓋から主電極11が垂下され、これに対向して炉底から炉底電極12が挿設されている。主電極11は不図示の可動装置により昇降可能で、炉底電極12は炉本体14に固定される。炉本体14の側壁及び蓋部の内側は不定形耐火材15で形成され、炉底17には、侵食に強いアーチ状の耐火レンガ18が内側に配設され、その下に耐火レンガ19が配設される。これらの耐火物の外表面は鋼板製のケーシング16で被覆されている。
プラズマ式灰溶融炉10では、電極11、12間に直流電源(不図示)により直流電流を通流して炉内にプラズマアーク24を発生させる。投入ホッパ21より投入された被処理物は、炉壁に設けられた被処理物投入口20より炉内に投下され、プラズマアーク熱及び前記電極間を流れる電流のジュール熱により溶融処理され、溶融スラグ(スラグ層)22として炉底に溜まる。また溶融スラグ22の下部には比重差により溶融メタル(メタル層)23が形成されている。
一方、メタル層23は、所定の排出時期に炉本体14を傾動操作することにより出滓樋25より排出される。図2に傾動操作時の溶融炉を示す。溶融炉10の傾動装置は、溶融炉底部の片側に配設された蝶番(不図示)と、その反対側に設けられた油圧ジャッキ、電動シリンダなどの押し上げ装置40とから構成される。押し上げ装置40により炉本体14の片側を持ち上げることで炉本体14を傾かせることができ、徐々に炉本体14を傾けていき、炉に設定された所定角度まで傾けると出滓樋25から溶融メタル23が排出される。排出された溶融メタルは水槽29に落下し水冷されて回収される。溶融メタルの排出が終了したら炉本体14を元の位置に戻す。
スラグ層温度計測手段は周知でありその計測方法は特に限定されないが、放射温度計28に代表される非接触型温度計や、熱電対に代表される接触型温度計などの温度計を用いて直接スラグ層温度を計測する手段、被処理物の投入量と電極への投入電力と炉本体の放熱量からスラグ層温度を算出する手段などが挙げられる。
スラグ層厚さ計測手段も周知の構成を用いることができるが、例えば主電極11と炉底電極12との間の抵抗を用いる方法がある。これは、主電極11をメタル層23内に浸漬させて抵抗を測定し、大気、スラグ層、メタル層の抵抗の違いと主電極11の移動距離からスラグ層厚さを測定するものである。
スラグ層温度−メタル層温度の相関関係、投入電力−メタル層温度の相関関係を求める方法は、熱流動解析により求める方法や実測値から求める方法などがあり、何れの方法を用いてもよい。
熱流動解析から求める場合、例えば図7に示すような解析モデルが得られる。これは図6に示すように、溶融炉内部ではプラズマ発熱とジュール発熱による熱が、浮力対流、放射伝熱、プラズマ噴流伝熱などにより移動することに基づいて解析を行うことにより得られるものである。
同様に、投入電力−メタル層温度の相関関係は、図4に示すグラフのようになる。これはスラグ層温度の場合と同様に、メタル層温度の適性範囲の上限値と下限値が設定され、これに応じて投入電力が設定される。
スラグ層温度に基づいて運転制御を行う場合、メタル層23の傾動前に、スラグ層厚さ計測手段によりスラグ層厚さを計測し、該計測したスラグ層厚さに対応したスラグ層温度−メタル層温度の相関関係に基づいて、適性メタル温度となるスラグ層温度の設定範囲を求める。そして、この設定範囲となるようにスラグ層温度を制御しながら炉内を溶融又は保温した後、炉本体14を傾動させてメタル層23を排出するようになっている。
同様に、投入電力に基づいて運転制御を行う場合、メタル層23の傾動前に、スラグ層厚さ計測手段によりスラグ層厚さを計測し、該計測したスラグ層厚さに対応した投入電力−メタル層温度の相関関係に基づいて、適性メタル温度となる投入電力の設定範囲を求める。そして、この設定範囲となるように投入電力を制御しながらに炉内を溶融又は保温した後、炉本体14を傾動させてメタル層23を排出するようになっている。
尚、メタル層温度の制御には、上記したスラグ層温度による制御方法と、投入電力による制御方法のうち少なくとも何れか一方を用いるようにする。
まず、予めスラグ層厚さ毎のスラグ層温度−メタル層温度の相関関係、及びスラグ層厚さ毎の投入電力−メタル層温度の相関関係を求めておき、メタル温度制御装置30の記憶部31に蓄積しておく。尚、これらの相関関係のうち何れか一方のみでもよい。
そして、溶融炉10の運転中(S1)、所定のメタル排出時期にて(S2)、スラグ層厚さ計測装置によりスラグ層の厚さを計測する(S3)。
運転上の都合等で溶融時のスラグ温度調整が不可の場合は(S9)、保温運転に移行し(S10)、電力調整により所定のスラグ温度に調整後(S11)、傾動を開始し(S14)、メタル層23を排出する。保温操作は、溶融炉10への被処理物の投入を停止して電極11、12への電力供給だけを行う操作である。
さらに、メタル層温度の制御にスラグ層温度を用いることにより、精度の高い制御が可能となる。一方、メタル層温度の制御に投入電力を用いることにより、より簡単にメタル層温度を制御することが可能となり、スラグ層温度の計測が困難な場合にも適用可能である。
11 主電極
12 炉底電極
14 炉本体
20 被処理物投入口
22 スラグ層(溶融スラグ)
23 メタル層(溶融メタル)
25 出滓樋
28 放射温度計
30 メタル温度制御装置
31 記憶部
32 演算部
33 スラグ層厚さ入力部
34 スラグ層温度入力部
35 投入電力入力部
40 押し上げ装置
Claims (4)
- プラズマ式溶融炉に電力を供給して被処理物を溶融処理し、炉底に堆積したスラグ層は出滓口よりオーバーフローさせて排出し、該スラグ層の下方に堆積したメタル層は所定のタイミングで炉本体を傾動させて排出するようにしたプラズマ式溶融炉の運転制御方法において、
予めスラグ層厚さ毎のスラグ層温度−メタル層温度の相関関係を求めておき、
前記炉本体の傾動前に、スラグ層厚さを計測し、該計測したスラグ層厚さに対応した前記スラグ層温度−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル層温度となるスラグ層温度の設定範囲を求め、前記設定範囲となるようにスラグ層温度を制御して溶融運転又は保温運転を行った後、前記炉本体を傾動させることを特徴とするプラズマ式溶融炉の運転制御方法。 - プラズマ式溶融炉に電力を供給して被処理物を溶融処理し、炉底に堆積したスラグ層は出滓口よりオーバーフローさせて排出し、該スラグ層の下方に堆積したメタル層は所定のタイミングで炉本体を傾動させて排出するようにしたプラズマ式溶融炉の運転制御方法において、
予めスラグ層厚さ毎の投入電力−メタル層温度の相関関係を求めておき、
前記炉本体の傾動前に、スラグ層厚さを計測し、該計測したスラグ層厚さに対応した前記投入電力−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル層温度となる投入電力の設定範囲を求め、前記設定範囲となるように投入電力を制御して溶融運転又は保温運転を行った後、前記炉本体を傾動させることを特徴とするプラズマ式溶融炉の運転制御方法。 - 炉本体の上部と下部に夫々対向して配設された電極と、炉底に堆積したスラグ層をオーバーフローにより排出する出滓口と、炉本体を傾動させる傾動機構とを備えたプラズマ式溶融炉にて、所定のタイミングで前記傾動機構を駆動して前記スラグ層の下方に堆積した溶融メタルを排出するようにしたプラズマ式溶融炉の運転制御装置において、
前記スラグ層の厚さを計測するスラグ層厚さ計測手段と、前記スラグ層の温度を計測するスラグ層温度計側手段と、傾動時における前記メタル層の温度を監視するメタル温度制御装置と、を備え、
前記メタル温度制御装置は、予め求めておいたスラグ層厚さ毎のスラグ層温度−メタル層温度の相関関係が蓄積された記憶部と、該当するスラグ層厚さに対応したスラグ層温度−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル温度となるスラグ層温度の設定範囲を算出する演算部とを備え、前記炉本体の傾動前に、前記演算部により算出された設定範囲となるようにスラグ層温度を制御して溶融運転又は保温運転を行うことを特徴とするプラズマ式溶融炉の運転制御装置。 - 炉本体の上部と下部に夫々対向して配設された電極と、炉底に堆積したスラグ層をオーバーフローにより排出する出滓口と、炉本体を傾動させる傾動機構とを備えたプラズマ式溶融炉にて、所定のタイミングで前記傾動機構を駆動して前記スラグ層の下方に堆積した溶融メタルを排出するようにしたプラズマ式溶融炉の運転制御装置において、
前記スラグ層の厚さを計測するスラグ層厚さ計測手段と、傾動時における前記メタル層の温度を監視するメタル温度制御装置と、を備え、
前記メタル温度制御装置は、予め求めておいたスラグ層厚さ毎の投入電力−メタル層温度の相関関係が蓄積された記憶部と、該当するスラグ層厚さに対応した投入電力−メタル層温度の相関関係に基づいて、傾動に適した適性メタル温度となる投入電力の設定範囲を算出する演算部とを備え、前記炉本体の傾動前に、前記演算部により算出された設定範囲となるように投入電力を制御して溶融運転又は保温運転を行うことを特徴とするプラズマ式溶融炉の運転制御装置。
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