JP3771800B2 - プラズマ式灰溶融炉の運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ごみ等の焼却灰を溶融処理してスラグ化した焼却灰を、資源化若しくは減量化するプラズマ式の灰溶融炉において、灰炉本体を焼却灰量に対応させて運転することができるプラズマ式灰溶融炉及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
灰溶融炉は、ごみ焼却灰の有効利用を図るためのものであり、灰溶融炉により溶融した焼却灰は、低沸点の揮散物や、金属類及びその他成分のスラグに分け、無害化するとともに、そのリサイクルを図っている。こうした焼却灰の溶融炉のニーズが増加してきている。これらの灰溶融炉には、焼却灰の溶融のために重油等を燃料にするバーナ式灰溶融炉や、電気抵抗式灰溶融炉及びプラズマ式灰溶融炉等のように電気を熱源として灰を溶融するものが知られている。
【0003】
図3は従来のプラズマアーク式灰溶融炉51を示し、灰溶融炉51には、溶融炉本体52に囲まれた炉室56を設けている。灰溶融炉51には、主電極54、炉底電極57及び直流電源58等を備えたプラズマ装置が設けられ、主電極54は、溶融炉本体52の天井壁53を貫通して配設されるとともに、昇降装置65に支持されることにより炉室56を上下動できるように構成されている。主電極54の下端部には、その先端と対向する炉底壁55に炉底電極57を設置し、これらの電極54,57間に、プラズマ発生用の直流電源58を接続している。
溶融炉本体52は、外壁を鉄皮60で覆い、内壁61はレンガ等の耐火材で形成し、溶融炉本体52の周壁部には、溶融スラグ63の排出口である出滓口68が配設され、出滓口68には出滓樋69に接続されている。そして、出滓樋69の先端部の下方には出滓コンベア70上に載置されているモールド71が配設されている。
【0004】
このような構成により、灰溶融炉51の炉室56には、図示しない焼却灰の投入口から炉底壁上に焼却灰が投入され、灰溶融炉51の炉室56を還元雰囲気にした状態で、直流電源58により電圧を電極54,57間に印加する。すると、該電極54,57間にプラズマアークが発生し、焼却灰は加熱されて溶融してスラグ63となり、焼却灰中に含まれているメタル成分が溶融して溶融メタル64となり炉底に沈む。溶融スラグ63が炉底に溜まり出滓口68の高さに達すると、スラグ63が出滓口68から溢れでて出滓樋69を通って、モールド71に供給され、スラグ63は冷却処理される。他方、溶融メタル64は、溶融炉本体51が傾倒式のものであれば、溶融炉本体を傾倒させて、出滓口から溶融メタルを排出し、またマッドガン方式のものであれば、溶融炉本体の炉壁に孔を開けて溶融メタルを炉外に排出するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
灰溶融炉の運転中は、プラズマ電極の主電極が消耗することから、その消耗量だけ、昇降装置を用いて、主電極を下降する必要がある。しかし、炉室内のプラズマアークのアーク長を可視カメラ等で計測しようとしても、炉内に浮遊する煤塵に遮られプラズマアークのアーク長を運転中に把握することができない。
したがって、経験値に基づいて電極消耗量を判断することとなるが、これは個人差や精度に問題があり、長時間連続運転してアーク長が長くなると、天井耐火物の高温化やスラグへの入熱効率の低下が生じたりする。反対に主電極がスラグ面より下に沈むと、液面が低温となりスラグの出滓不良が生じる。
【0006】
灰溶融炉の炉室に投入される焼却灰の量が異なるような場合は、それに応じてプラズマ電極の出力を調整する必要があるが、処理物である焼却灰の性状変化や供給装置の不具合などにより電力が過剰となったときは、高温運転となり炉室を形成する耐火材の寿命が低下する。反対に、電力が不足したときは、低温運転となり、スラグが出滓口を閉塞して、灰溶融炉が運転不能になる。
一方、溶融スラグよりも比重の大きい溶融メタルは、溶融スラグ層の下に沈殿し、灰溶融炉の運転を長時間継続すると溶融メタル層が厚くなり、溶融スラグ層の割合が低くなる。スラグ層が薄くなると電源電圧が変動し、運転に支障をもたらしたりするため、溶融メタルの沈殿層が灰溶融炉の炉底に溜まった場合は、炉室外に排出するようにしている。従来では、溶融メタルを炉室から排出するときに、灰溶融炉を運転(プラズマアークを点灯)しながら排出する場合は、主電極と炉底電極との間の電圧値をほぼ一定にしながら、メタルの出湯を行っていた。しかしながら、電圧値では変動幅が大きいことから、電圧値が上昇しているのか上昇していないかの判断が困難であり、誤ってプラズマアークを切ってしまうこともある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、焼却灰を溶融してスラグ化するために、過電力や電力不足がないように、一定条件すなわちプラズマ電極を一定電圧(一定アーク長)で運転することにより、各部温度を変えることなく該電圧を基準として溶融温度が低ければプラズマ電極に電流を多く流すことによりスラグの溶融温度を高くし、溶融温度が高ければプラズマ電極に電流を少なく流すことによりスラグの溶融温度を低くすることができ、さらには灰溶融炉の底部に溜まる溶融メタルを、灰溶融炉を運転しながら排出する場合に、プラズマアークが消失することのないプラズマ式灰溶融炉の運転方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、焼却灰を炉本体の炉室内に投入し、該焼却灰をプラズマアークにより加熱して溶融することにより溶融スラグを生成するものであって、プラズマアーク長が一定値または所定範囲内になるように主電極を上下動させるようにしたプラズマ式灰溶融炉の運転方法において、
上記焼却灰に含まれるメタル成分が溶融した溶融メタルが上記炉本体内に溜まってきた場合、上記炉本体を傾動させて上記溶融メタルを炉室外に排出する際に、8μm以上の波長の赤外線カメラの画像より上記プラズマアーク長を直接観察し、上記プラズマアークの室内側に配設されている主電極の下端部と溶融スラグ面までの長さを求め、上記主電極の下端部から溶融スラグ面までの長さを一定値または所定範囲内に調整するようにした。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による灰溶融炉の運転方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る傾動式のプラズマアーク式灰溶融炉1を示し、この灰溶融炉1は内壁11に囲まれた炉室6を設け、内壁11は耐熱レンガ等の耐熱材により形成されている。また、灰溶融炉1には、炉室6側に配設される主電極4、炉室6の炉底壁5に配設される炉底電極7及び直流電源8等を備えたプラズマ装置が設けられている。主電極4は、溶融炉本体2の天井壁3を貫通して垂下されて配設されるとともに、昇降装置15に支持されることにより炉室6内を上下動できるように構成されている。主電極4は、金属または黒鉛製であり、内部にプラズマ用ガスを発生させる通路を形成した円筒形状のものを用いている。主電極4の下端部には、その先端と対向する炉底壁5に炉底電極7を設置し、これらの電極4,7間に、プラズマ発生用の直流電源8を接続している。直流電源8は、炉底電極7側に+を接続し、主電極4側に−を接続している。
【0010】
溶融炉本体2の壁部には覗き窓12が設けられ、覗き窓12の近傍には、可視カメラ13が配設され、内壁11には該内壁11の高さ位置を計測するための目盛りが表示されている。可視カメラ13は目盛りを視ることによりスラグの液面高さを計測することができる。
図2は、図1の溶融炉本体2を別角度から見た断面図である。図2に示すように、溶融炉本体2には内壁11及び鉄皮10を貫通する覗き窓16を設け、覗き窓16の外側には、赤外線カメラ17を配設している。赤外線カメラ17の波長は、3μm以上のものが使用できるが、8μm以上のものが好ましい。この赤外線カメラ17は、主電極4の先端部に向けて配設され、覗き窓16を介してプラズマアークのアーク長をモニター等を介して観察することができる。
【0011】
溶融炉本体2の炉底5の一端には、油圧シリンダ25が設置され、シリンダ25の伸縮ロッド26の先端部が炉底5に枢支されている。また、このシリンダ25の取付部に対向して炉底5の他端側には、溶融炉本体2を傾動させるための中心軸となる回転軸27が設けられている。溶融炉本体2は、油圧シリンダ25の伸縮ロッド26を伸ばすことにより、溶融炉本体2の一端側を持ち上げることにより、他端側の出滓口19側を低くすることができる。
溶融炉本体2の内壁11の周りには、図示しない冷却ジャケットを配設し、溶融炉本体2の下壁部には、溶融スラグ23の排出口である出滓口18が配設され、出滓口18には、出滓樋19が接続されている。この出滓口18及び出滓樋19は、耐火材で形成されている。出滓樋19の先端部の直下には出滓コンベア21上に載置されているモールド22を配設している。モールド22は、出滓樋19から流下する溶融スラグ23を回収する。
なお、この灰溶融炉1には、その他、図示されていない灰投入用のホッパー等の装備や、プラズマ等を制御する制御装置等が多数配設されているが、それらの詳細な説明は省略する。
【0012】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
図1に示すように、灰溶融炉1の炉室6には、焼却灰の図示しない投入口から炉底壁上に焼却灰が投入され、灰溶融炉1の炉室6を還元雰囲気にした状態で、直流電源8により電圧を電極4,7間に印加する。すると、該電極4,7間にプラズマアークが発生し、炉室6内が1000℃以上の雰囲気となり、焼却灰が溶融する。焼却灰は溶融してスラグ23となり、焼却灰中に含まれているメタル成分が溶融して溶融メタル24となり炉底に沈む。その上澄みの溶融スラグ23が炉底に溜まり出滓口18の高さに達すると、スラグ23が出滓口18から溢れでて出滓樋19を通って、出滓コンベア21に配設されている回収容器であるモールド22に供給され、スラグ23は空冷処理される。
【0013】
この灰溶融炉1の運転中では、図2に示す赤外線カメラ17が、プラズマ電極の主電極4の先端部を撮影している。赤外線カメラ17はプラズマアークの形状を撮影するものであり、プラズマアークの形状をモニターで視ることができる。よって、赤外線カメラ17が撮影した映像をモニターが写し出し、そのアーク形状を画像解析して、アーク長を導き出す。そして、焼却灰の溶融中は、主電極4を昇降装置により上下動させることにより、常時アーク長の長さを一定長さに維持するようにして主電極4の位置(スラグ面上の高さ)、及びこれにより各部温度を一定にする。これは、制御装置等により自動化してもよいし、手動でプラズマ装置の制御部により作業者が手動で行ってもよい。このように、主電極4のスラグ面上の高さを一定にすることにより、プラズマアークのアーク長を一定の長さに維持することができる。
【0014】
なお、スラグ23が出滓口18から排出されるようになった場合は、スラグ23の液面高さが出滓口18の高さとなるのでスラグ23の液面高さが分かり、また、主電極4の下端部の高さは赤外線カメラ17で視ることができ、赤外線カメラ17の取付角度と主電極4の位置を割り出すことにより、プラズマアークの形状を解析しなくとも正確にアーク長を求めることができる。
図1に示す、可視カメラ13は、溶融スラグ23の内壁11に表示した目盛りを視ることができるので、スラグ23の液面高さを計測することができる。よって、上記のように主電極4の下端部の高さを赤外線カメラ17で計測することができ、この方法でも、プラズマアークを解析することなく、アーク長を求めることができる。
【0015】
このように、主電極4とスラグ23面の距離、すなわちプラズマアークのアーク長を一定にすることにより、炉内温度分布を一定にすることができ、スラグ23の溶融温度が設定値よりも低いと判断すれば、溶融スラグ23の温度を上昇させて、制御装置等を介してプラズマ電極4,7の電流量を大きくしてプラズマ電極4,7の発熱量を増加し、焼却灰若しくは溶融スラグ23を加熱することができる。
また、スラグ23の溶融温度が設定値よりも高いと判断すれば、制御装置等を介してプラズマ電極の電流量を減らすことにより発熱量を減少し、溶融スラグ23の溶融温度を下げることができる。
【0016】
溶融炉本体2に溶融メタル24が溜まってきたような場合に、本実施の形態では、上述したように溶融炉本体2自身を傾動させて溶融メタル24を炉室6外に排出する。すなわち、図3に示すように、シリンダ25のロッド26を上方に伸ばすことにより、溶融炉本体2のシリンダ25側の位置を高くし、反対に出滓口18の位置を低くすることにより、溶融メタル24を炉室6外に排出する。
この際、溶融炉本体2から溶融メタル24を排出すると、溶融炉本体2が傾動するにしたがって、溶融メタル24が排出され主電極4の下端部と溶融スラグ23の表面の距離が大きくなり、プラズマアークの長さが長くなってプラズマアークが消失するおそれがある。本実施の形態では、図2に示す赤外線カメラ17によって、プラズマアークのアーク長を観察していることから、溶融炉本体2の傾動量が大きくなるにしたがって、主電極4を下降させて主電極4の下端部と溶融スラグ23面の距離を一定に維持することができる。
【0017】
溶融メタル24の排出作業が終了した場合は、溶融炉本体2を通常の直立状態に戻す。すなわち、シリンダ25のロッド26を縮めることにより、溶融炉本体2のシリンダ25側の位置を低くし、出滓口18の高さをもとに戻す。
この際、溶融炉本体2が直立状態に近づくにしたがって、主電極4の下端部と溶融スラグ23の表面の距離が変動するが、赤外線カメラ17によって、プラズマアークのアーク長を観察していることから、溶融炉本体2の傾倒量が小さくなるにしたがって、主電極4の高さを調整し、主電極4の下端部と溶融スラグ23面の距離を一定に維持することができる。よって、プラズマアークの消失を防止することができる。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態では、赤外線カメラ17によりプラズマアークのアーク長を計測して、主電極4の位置、及びこれにより各部温度を一定にすることができる。そして、その状態からスラグ温度に変化があればプラズマ電極4,7の電流値を変動させることにより、焼却灰の加熱の増減を炉室6の状態に応じて適温に行うことができる。これにより、炉室6内の溶融スラグ23の温度を必要以上に高くすることがなく、内壁11の耐火材の寿命を長くすることができるとともに無駄な電力を防止することができる。
また、溶融メタル24の排出時にプラズマアークを着火させたまま、溶融メタル24を排出することができ、プラズマアークの再着火の手間を省略することができる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形が可能である。
例えば、本実施の形態では、溶融メタル24の排出を溶融炉本体2を傾倒させることによって、溶融メタル24を排出していたが、炉壁に排出口を穿設して溶融メタル24を排出するマッドガン方式による場合も、赤外線カメラ17を用いて、プラズマアークのアーク長を観察し、溶融メタル24の排出量に応じて主電極4を下降させることができる。
また、本願発明は交流アーク炉やツイントーチにも適用が可能である。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、赤外線カメラを介して、プラズマアークのアーク長を解析しているので、一定長さのアーク長にすることにより、炉内の各部温度を一定に維持することができる。これにより、アーク長の変動がないので、炉室内の溶融スラグの温度を必要以上に高くすることがなく、内壁の耐火材の寿命を長くするとともに無駄な電力を防止し、反対に溶融スラグの温度が低く出滓口を閉塞することもなくなる。
また、赤外線カメラを用いてアーク長を観察しているので、溶融メタルの排出時において、主電極の下端部と溶融スラグ面の距離を一定に維持することができ、プラズマアークの消失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマアーク式灰溶融炉の出滓口の断面を通る概略断面図である。
【図2】図1の灰溶融炉を別の角度から見た概略断面図である。
【図3】図1のプラズマアーク式灰溶融炉の傾倒させた状態を示す概略断面図である。
【図4】従来のプラズマアーク式灰溶融炉の出滓口の断面を通る概略断面図である。
【符号の説明】
1 プラズマアーク式灰溶融炉
2 溶融炉本体
3 天井壁
4 主電極
5 炉底壁
6 炉室
7 炉底電極
8 直流電源
10 鉄皮
11 内壁
12,16 覗き窓
13 可視カメラ
15 昇降装置
17 赤外線カメラ
18 出滓口
19 出滓樋
21 出滓コンベア
22 モールド
23 溶融スラグ
24 メタル
25 シリンダ
26 ロッド
27 回転軸
Claims (1)
- 焼却灰を炉本体の炉室内に投入し、該焼却灰をプラズマアークにより加熱して溶融することにより溶融スラグを生成するものであって、プラズマアーク長が一定値または所定範囲内になるように主電極を上下動させるようにしたプラズマ式灰溶融炉の運転方法において、
上記焼却灰に含まれるメタル成分が溶融した溶融メタルが上記炉本体内に溜まってきた場合、上記炉本体を傾動させて上記溶融メタルを炉室外に排出する際に、8μm以上の波長の赤外線カメラの画像より上記プラズマアーク長を直接観察し、上記プラズマアークの室内側に配設されている主電極の下端部と溶融スラグ面までの長さを求め、上記主電極の下端部から溶融スラグ面までの長さを一定値または所定範囲内に調整するようにしたことを特徴とするプラズマ式灰溶融炉の運転方法。
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