JP4948799B2 - 作用極及びその製造方法、並びに太陽電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、Cu−In−Se系(CIS系とも呼ぶ)等の化合物系太陽電池が開発されており、極めて高い変換効率を示す等優れた特徴を有しているが、コストや環境負荷等の問題があり、やはり大幅普及への障害となっている。
図6は、従来の色素増感型太陽電池の一例を示す断面図である。
この色素増感型太陽電池600は、増感色素を担持させた多孔質半導体層603が一方の面に形成された第一基板601と、透明導電層604が形成された第二基板605と、これらの間に封入された例えばゲル状電解質からなる電解質層を主な構成要素としている。
第二基板605としては、電解質層606と接する側の面には導電性を持たせるために例えば炭素や白金等からなる導電層604が設けられ、第二基板及び導電層604により対極609を構成している。
そして、この封止剤607を介して2つの基板601、605を貼り合わせてセルを積み上げ、電解液の注入口610を介して、両極608、609間にヨウ素・ヨウ化物イオン等の酸化・還元極を含む有機電解液を充填し、電荷移送用の電解質層606を形成したものが挙げられる。
O' Regan B, Gratzel M. A low cost, high-efficiency solar cell based on dye-sensitized colloidal TiO2 films, Nature 1991;353:737-739
本発明の請求項2に係る作用極は、請求項1において、前記透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さが23nm以上42nm以下であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る作用極は、請求項1又は2において、前記透明導電層は、2つ以上の透明導電膜を重ねた積層構造からなり、該透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面は、下層に位置する透明導電膜の表面形状を反映した形状を有することを特徴とする。
本発明の請求項4に係る太陽電池は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作用極と、少なくとも一部に電解質層を介して該作用極と対向して配される対極とを備えてなることを特徴とする。
本発明の請求項5に係る作用極の製造方法は、少なくとも一部に電解質層を介し対極と対向して配され、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有し、窓極として機能する作用極の製造方法であって、透明基材の一面に透明導電層を形成する工程αと、前記透明導電層に重ねて前記多孔質酸化物半導体層を形成する工程βと、を少なくとも備え、前記工程αは、前記透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さが20nm以上50nm以下の範囲となるように、且つ、前記工程βは、前記多孔質酸化物半導体層の膜厚が10.2μm〜20.6μmとなるように、成膜条件を制御することを特徴とする。
本発明の請求項6に係る作用極の製造方法は、請求項5において、前記透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さを23nm以上42nm以下とすることを特徴とする。
本発明の請求項7に係る作用極の製造方法は、請求項5又は6において、前記工程αは、前記透明導電層の成膜方法としてスプレー熱分解法を用いることを特徴とする
本発明の請求項8に記載の作用極の製造方法は、請求項5〜7のいずれか一項において、前記スプレー熱分解法は、濃度をmol/L単位において0.4以上0.75以下とした出発原料を用いることを特徴とする。
本発明の請求項9に係る太陽電池の製造方法は、請求項5〜8のいずれか一項に記載の製造方法により得た作用極に増感色素を担持させ、少なくとも一部に電解質層を介し対極と対向して配することを特徴とする。
また、本発明では、より厚い多孔質酸化物半導体層を有する作用極を用いることで、光電変換効率に優れた色素増感太陽電池を提供することができる。
この色素増感型太陽電池10は、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層3が一方の面に形成された第一基板1と、導電膜4が形成された第二基板5と、これらの間に封入された例えばゲル状電解質からなる電解質層6とを主な構成要素としている。
透明導電層2の平均表面粗さを10nm以上55nm以下にすることにより、その上に形成される多孔質酸化物半導体層3との密着性が向上し、厚い多孔質酸化物半導体層3を形成することができる。その結果、多孔質酸化物半導体層3の担持する増感色素の量を増大できるので、このような作用極を備えた太陽電池10の光電変換効率を向上させることが可能となる。
前記透明導電層2の平均表面粗さは、20nm以上50nm以下であることがより好ましい。透明導電層2の平均表面粗さを前記範囲にすることにより、光電変換効率をさらに向上させることが可能となる。
透明導電層2は、第一の透明導電膜2aと第2の透明導電膜2bとを重ねた積層構造からなる。
第一の透明導電膜2aの材料としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
第二の透明導電膜2bの材料としては、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等が挙げられる。
そして上層に位置する第二の透明導電膜2bにおける多孔質酸化物半導体層3と接する面は、下層に位置する第一の透明導電膜2aの表面形状を反映した形状を有することが好ましい。これにより下層の形状を維持しつつ、耐熱性の向上を図ることが可能となる。
増感色素としては、例えばビピリジン構造等を配位子に含むルテニウム錯体(N3色素)等を用途や多孔質酸化物半導体層の材料に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明では、前記作用極を作製する際に、第一基板1の一面に透明導電層2を形成する工程αと、透明導電層2に重ねて多孔質酸化物半導体層3を形成する工程βと、を少なくとも備え、工程αは、前記透明導電層2における多孔質酸化物半導体層3と接する面の平均表面粗さが10nm以上55nm以下の範囲となるように、成膜条件を制御することを特徴とする。
透明導電層2を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法、スプレー熱分解法(SPD法)、蒸着法等の薄膜形成法が挙げられる。
スプレー熱分解法を用いて透明導電層2を第一基板1上に成膜するとき、出発原料溶液濃度を変えることにより基板表面での結晶成長速度を調節し、平均表面粗さの異なる透明導電層2を成膜する。
スプレー熱分解法における成膜条件のうち、特に、出発原料の濃度を0.4mol/L以上0.75mol/L以下とすることにより、透明導電層2の平均表面粗さを10nm以上55nm以下の範囲に制御することができる。これにより、透明導電層上に多孔質酸化物半導体層を設けた際に密着性が改善され、多孔質酸化物半導体層の圧膜化が図れる。よって、この構成とした作用極は、多孔質酸化物半導体層の担持する増感色素の量を増大できるので、光電変換効率の高い太陽電池をもたらす。
そして、この封止剤7を介して2つの基板1、5を貼り合わせてセルを積み上げ、電解液の注入口11を介して、両極8、9間にヨウ素・ヨウ化物イオン等の酸化・還元種を含む有機電解液を充填し、電荷移送用の電解質層6が形成される。
まず、ITO透明導電膜を形成するための出発原料を、次のようにして調製した。
塩化インジウム(III)四水和物(InCl3・4H2O,Fw:293.24)3と塩化スズ(II)二水和物(SnCl2・2H2O,Fw:225.65)とを、インジウムとスズのモル比が95:5となるように調製し、0.15〜1.0mol/Lの各濃度になるようにエタノールを加えて溶解させた。
上記原料溶液を用いて、スプレー熱分解法(Spray Pyrolysis Deposition;SPD)法によりITO透明導電膜を成膜した。
成膜条件は、ノズル口径:0.3mm、ノズル−基板間距離:600mm、塗布圧力:約0.06MPa、成膜基板表面温度:350℃とした。
そして、剥離しない限界の厚さまで酸化チタン微粒子多孔質層(面積5×9mm2 )を形成した。そして該酸化チタン微粒子多孔質膜にN3色素(Ru(2,2’-bipyridine-4,4’-dicarboxylic acid)2(NCS)2)を担持させることで多孔質酸化物半導体層を形成し、作用極を得た。
対極は、ガラス基板上にFTO(フッ素ドープ酸化スズ)を成膜し、さらにその上に白金をスパッタリング法により成膜することで作製した。
得られた作用極と対極との間に電解質を介在させて積層し、色素増感太陽電池を作製した。電解質には、メトキシアセトニトリルを溶媒とした揮発系電解液を用いた。
以上のようにして得られた色素増感太陽電池について、光電変換効率を測定した。
なお、実験例1,5,6,7,8は、参考例1,2,3,4,5であり、実験例2,3,4は、実施例1,2,3である。
原料溶液の濃度が高いほど、形成される透明導電層の平均表面粗さが大きくなっている。
酸化チタン多孔質層の厚さは透明導電層の平均表面粗さに依存し、透明導電層の平均表面粗さが大きいほど、その上に形成される酸化チタン多孔質層をより厚く形成することが可能であることがわかる。
特に、透明導電層の平均表面粗さが20nm以上50nm以下(実験例2〜4)であるときに、特に高い光電変換効率が得られていることがわかる。
このような平均表面粗さを有する透明導電層は、0.4mol/L以上0.75mol/L以下(実験例2〜4)とした出発原料を用いることで容易に形成することが可能であることがわかる。
実験例では、図2からわかるように、ITO透明導電膜の表面には、長円形状の大きな粒が、その長手方向を揃えて分布している。また、図中、黒く見える大きな谷が、単位面積あたり少ない。
各粒の表層部には、細かいシワが見られる。図3に示すグラフからも、個々の山(凸部)に細かい波が存在していることがわかる。
各粒の表層部は起伏がなく平らで、のっぺりとしている。図5に示すグラフからも、個々の山(凸部)には小さな波は見られない。
Claims (9)
- 少なくとも一部に電解質層を介し対極と対向して配され、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有し、窓極として機能する作用極であって、
前記多孔質酸化物半導体層は、透明基材の一面をなす透明導電層上に配され、該透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さが20nm以上50nm以下であり、
前記多孔質酸化物半導体層の膜厚が10.2μm〜20.6μmであることを特徴とする作用極。 - 前記透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さが23nm以上42nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の作用極。
- 前記透明導電層は、2つ以上の透明導電膜を重ねた積層構造からなり、該透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面は、下層に位置する透明導電膜の表面形状を反映した形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の作用極。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の作用極と、少なくとも一部に電解質層を介して該作用極と対向して配される対極とを備えてなることを特徴とする太陽電池。
- 少なくとも一部に電解質層を介し対極と対向して配され、増感色素を担持させた多孔質酸化物半導体層を有し、窓極として機能する作用極の製造方法であって、
透明基材の一面に透明導電層を形成する工程αと、前記透明導電層に重ねて前記多孔質酸化物半導体層を形成する工程βと、を少なくとも備え、
前記工程αは、前記透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さが20nm以上50nm以下の範囲となるように、且つ、前記工程βは、前記多孔質酸化物半導体層の膜厚が10.2μm〜20.6μmとなるように、成膜条件を制御することを特徴とする作用極の製造方法。 - 前記透明導電層における前記多孔質酸化物半導体層と接する面の平均表面粗さを23nm以上42nm以下とすることを特徴とする請求項5に記載の作用極の製造方法。
- 前記工程αは、前記透明導電層の成膜方法としてスプレー熱分解法を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の作用極の製造方法。
- 前記スプレー熱分解法は、濃度をmol/L単位において0.4以上0.75以下とした出発原料を用いることを特徴とする請求項7に記載の作用極の製造方法。
- 請求項5〜8のいずれか一項に記載の製造方法により得た作用極に増感色素を担持させ、少なくとも一部に電解質層を介し対極と対向して配することを特徴とする太陽電池の製造方法。
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