以下に添付図面を参照して、受光装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、たとえば、車両(四輪車、二輪車を含む)などの移動体に搭載されたナビゲーション装置などの車載機に接続される受光装置によって受光装置を実施した場合の一例について説明する。
(実施の形態1)
(位置標定システムの概要)
まず、図1を用いて、実施の形態1にかかる位置標定システムの概要について説明する。図1は、実施の形態1にかかる位置標定システムの概要を示す説明図である。
図1において、実施の形態1にかかる位置標定システム100は、光ビーコンなどの路側機101を用いて、先進安全サービスを提供する先進安全サービスエリア110を走行する車両102の位置を標定するシステムである。
具体的には、たとえば、先進安全サービスは、交差点やカーブなどから所定範囲(たとえば、中心部まで100m圏内)の先進安全サービスエリア110に進入した車両102に対して、自他車両の位置情報や信号情報や標識情報などを提供し、運転者の死角、不注意および見落としなどによる交通事故を予防するサービスである。
つぎに、図2を用いて、先進安全サービスエリア110に進入した車両102の概要について説明する。図2は、実施の形態1にかかる先進安全サービスエリアに進入した車両の概要を示す説明図である。
図2において、先進安全サービスエリア110は、初期値設定エリア201と、自律測位エリア202と、高精度測位エリア203と、から構成されている。
先進安全サービスエリア110に進入した車両102は、光ビーコンなどの路側機101の下方を通過して、交差点(先進安全サービスエリア110の中心)に向かって走行している。
具体的には、たとえば、車両102は、先進安全サービスエリア110に進入して、初期値設定エリア201を走行中に、路側機101から受光される光信号を用いて、先進安全サービスエリア110内の車両102の位置標定に関する初期値を設定する。初期値は、たとえば、車両102に搭載された図示しない車載機による自律測位の基準となる基準位置で、路側機101の設置位置を用いて設定される構成でもよい。
つづいて、車両102は、自律測位エリア202を走行し、初期値設定エリア201において設定された初期値を用いて自律測位によって位置標定をおこなう。自律測位エリア202は、たとえば、交差点中心から20m〜80m程度の範囲でもよい。
そして、車両102は、高精度測位エリア203を走行中に、図示しない通信部を介して、高精度測位エリア203を走行する他の車両に自車位置を送信するとともに、他の車両位置および信号機や標識の情報を受信する。高精度測位エリア203における通信は、たとえば、車車間通信や、交差点に設置された通信機器を介しておこなってもよい。
上述のような先進安全サービスエリア110では、高精度測位エリア203において、正確に自車両および他車両の位置標定がおこなわれることによって、交通安全を図ることができる。具体的には、たとえば、高精度測位エリア203における位置標定の誤差は、運転者に自他車両の位置関係に誤解を与えないようにするため、半車両(たとえば、約2.5m)以下であることが望ましい。そして、自律測位によって生じる誤差は、先進安全サービスエリア110程度の範囲(たとえば、100m)であれば、2.0m以下であることが知られている。
したがって、高精度測位エリア203において、位置標定の誤差を目標以内にするためには、初期値設定エリア201において設定する初期値の誤差を0.5m以内にする必要がある。
ここで、図3を用いて、実施の形態1にかかる初期値設定エリア201における初期値の設定の概要について説明する。図3は、実施の形態1にかかる初期値設定の概要を示す説明図である。
図3において、受光装置300は、車両102(102a,102b,102c,102d)に備えられており、図1および図2に示した路側機101の発信部301から発信される光信号310を受光する。
発信部301は、路側機101に設置されており、通信可能エリア320を走行中の車両102に対して、光信号310を発信する。具体的には、たとえば、光信号310は、道路交通情報や路側機101の設置位置に関する位置情報や路側機101のID情報などを含むダウンリンク(DL)信号である。
すなわち、図示しない車載機は、受光装置300によって受光される光信号310における位置情報から、路側機101の設置位置を取得する。また、位置情報の代わりに路側機101のID情報を受光した場合、図示しないデータベースに記録された路側機101の情報と、ID情報とを用いて路側機101の設置位置を取得してもよい。
ここで、DL信号とは、ネットワークの中心側から端末側へ送信する信号であり、路側機101の通信可能エリア320を走行中の車両102に対して周期的に送信される。通信可能エリア320は、たとえば、発信部301から発信される光信号310が車両102に到達する範囲である。より具体的には、たとえば、光ビーコンであれば既定で3.7mとされているが、気象条件や光信号の送受信部の汚れやワイパーによる遮蔽などに起因する受信感度の低下などによって異なり、最大で12m程度となることもある。
また、図3では説明を省略したが、通信可能エリア320内では、発信部301から発信される光信号310(DL信号)の他に、車両102から路側機101へ送信されるアップリンク信号の通信がおこなわれることとしてもよい。アップリンク(UL)信号は、たとえば、ネットワークの端末側から中心側へ送信する信号であり、車両102の識別情報である車両IDを含む信号である。
詳細は図4,図5−1および図5−2を用いて説明するが、受光装置300は、通信可能エリア320において、光信号310の受光および遮蔽をおこなう。具体的には、たとえば、受光装置300は、車両102aが通信可能エリア320に進入する前は、光信号310を受光せず、車両102bが通信可能エリア320における受光エリア330に進入すると、光信号310を受光する。
そして、受光装置300は、車両102cが通信可能エリア320における遮蔽エリア340に進入すると、光信号310の遮蔽を開始して、車両102dが遮蔽エリア340を退出すると光信号310がすべて遮蔽されて、光信号310を受光しなくなる。
したがって、受光装置300によれば、光信号310を遮蔽する仕組みにより光信号310を受光しなくなる境界位置を設定することによって、初期値となる自律測位の基準となる基準位置を高精度に設定することができる。すなわち、路側機101の設置位置から特定される境界位置を自律測位の基準となる基準位置とすることで、図1に示した先進安全サービスエリア110内で、車両102の位置標定を正確におこなうことができる。
また、光信号310の受信開始位置付近(図3の通信可能エリア320では右端付近部に相当)や終了エリア(図3の通信可能エリア320では左端付近部に相当)においては、ビーコンの光量が不安定であるため車種、ガラス透過率、車高などに応じて位置検出がズレてしまうことがありえる。本発明によれば、光量が大きくかつ決められている受信範囲を阻害しない地点で光を遮断することが可能になる。光量が大きいところで光を遮断できる、すなわち、受光量不足による感度不安定領域をなくすことができるため、車両102の位置標定を正確におこなうことができる。
光信号310を受光しなくなる境界位置は、たとえば、発信部301の周辺環境などによる影響の少ない地点に設定する。具体的には、たとえば、境界位置は、発信部301と、受光装置300との距離が近く、光信号310の光量が強いために受信感度への影響が少ない発信部301の直下地点に設定する。発信部301の直下であれば、車両102の車高による影響も最小限に抑制することができる。
また、境界位置は、たとえば、発信部301(路側機101)の仕様で定められた、通信が最低限保障されるエリアの境界位置にあわせて設定することとしてもよい。通信が最低限保障されるエリアに境界位置を設定することによって、光信号310の受光および遮蔽が確実におこなわれるため、境界位置を的確に検出することができる。
(受光装置300の概要)
つぎに、図4を用いて、実施の形態1にかかる受光装置300の概要について説明する。図4は、実施の形態1にかかる受光装置の概要を示す説明図である。
図4において、受光装置300は、受光部401と、遮蔽板402と、から構成されている。受光部401は、図3に示した発信部301から発信される光信号310を受光する。また、受光部401は、高さH1、幅X1からなる遮蔽板402の内側に設置されている。
詳細については図5−1および図5−2を用いて説明するが、受光装置300は、遮蔽板402によって所定の入射角度以上の光信号310を遮蔽して、受光部401によって光信号310を受光しなくなる。入射角度は、たとえば、受光部401の設置面に対する光信号310の角度であり、設置面と受光面とが平行である場合は、受光部401の受光面に対する光信号310の角度としてもよい。
具体的には、たとえば、光信号310の遮蔽は、正面図では、入射角度がβ1以上β2未満の場合に光信号310の一部が遮蔽され、入射角度がβ2以上の場合に光信号310のすべてが遮蔽される。また、断面図では、入射角度がα1以上α2未満の場合に光信号310の一部が遮蔽され、入射角度がα2以上の場合に光信号310のすべてが遮蔽されることとなる。
なお、図4の説明では、遮蔽板402を用いて光信号310を遮蔽する構成としたが、遮蔽板402の形状はこれに限ることはなく、所定の入射角度に応じての受光部401が受光する光信号310を遮蔽できる構成であればよい。すなわち、遮蔽板402は、受光部401への光信号310の入射光路上に設けられ、所定の入射角度に応じて受光部401が受光する光信号310を遮蔽できる構成であればよい。
遮蔽板402は、発信部301からの光信号310の出射光路上に設けられる構成である。遮蔽板402と受光部401の設置面との角度α(α1≦α≦α2)により、光信号310の遮断開始位置が決定されることになる。また、高さH1により、光信号310が完全に遮断される位置(遮断完了位置)が決定されることになる。また、幅X1により、遮蔽板402(遮蔽板402を搭載した車両)の車線幅方向へのズレに対し、どの程度のズレで光信号310を遮蔽するかが決定されることになる。
なお、言うまでもないが、光信号310が完全に遮断される位置は、高さH1により決定されるだけでなく、遮蔽板402の長さによっても決定される。すなわち、同じ高さH1であっても、遮蔽板402が長ければ(前に(図4の断面図で右方向に)突き出た状態であれば)遮断の完了が早くおこなわれることになる。
ここで、図5−1および図5−2を用いて、実施の形態1にかかる受光装置300による光信号310の遮蔽について説明する。図5−1は、実施の形態1にかかる受光装置による光信号の遮蔽についての断面を示す説明図である。
図5−1において、受光装置300は、図3に示した車両102に搭載された車載機に具備され、受光した光信号310を車載機に出力する構成であるが、本図では、車両102を省略して受光装置300について説明する。
受光装置300は、通信可能エリア320における受光エリア330で光信号310を受光する。具体的には、たとえば、受光装置300は、受光エリア330において光信号310の入射角度がα1よりも小さいため、遮蔽板402によって光信号310が遮蔽せず、受光部401によって受光することとなる。
また、受光装置300は、通信可能エリア320における遮蔽エリア340で光信号310の一部を遮蔽する。具体的には、たとえば、受光装置300は、遮蔽エリア340において光信号310の入射角度がα1以上α2未満の場合、遮蔽板402によって光信号310の一部を遮蔽して、受光部401によって光信号310を一部受光することとなる。
遮蔽エリア340は光信号310の光量が強い範囲であるため、遮蔽板402によって遮光された光信号310の影は受光装置300の移動に応じてはっきりと受光面上を移動する。従って、受光部401上の影部(もしくは受光部)位置の時間的変化量を受光素子で捕らえれば、受光装置300(受光装置300を搭載した車両)の位置を動的に算出することが可能となる。
さらに、受光装置300は、通信可能エリア320における遮蔽エリア340を退出すると、光信号310のすべてを遮蔽する。具体的には、たとえば、受光装置300は、遮蔽エリア340において光信号310の入射角度がα2以上の場合、遮蔽板402によって光信号310を遮蔽して、受光部401によって光信号310を受光しないこととなる。
上述のように、光信号310の遮蔽は、たとえば、入射角度α1,α2および高さH1によって、開始する位置および遮蔽を完了する位置を設定することができる。具体的には、たとえば、入射角度α1,α2は、路面2000から発信部301までの高さHbと、路面2000から受光部401までの高さHaと、発信部301の路面2000への垂線Pから受光部401までの距離Xa,Xb,Xcとを用いて設定することができる。より具体的には、たとえば、入射角度α1,α2は、周辺環境の影響が少ない発信部301の直下で遮蔽を完了するような構成であればよい。また、発信部301から受光部401までの高さHcと、発信部301の路面2000への垂線Pから受光部401までの距離Xa,Xb,Xcとを用いて設定することもできる。
すなわち、受光装置300は、光ビーコンの通信可能エリア320のうちの所定の領域(遮蔽エリア340)において、発信部301と遮蔽板402の先端部(図4の遮蔽板402の上端辺)とを結ぶ線(すなわち、遮蔽板402の先端部を通過する光信号310の見通し線)が、受光部401の上を通るように、遮蔽板402の先端部の位置が決められていることになる。
また、車両102のダッシュボードに受光装置300を設置する場合は、運転者の視界を遮ったりしないように、路側機101の仕様で定められた、通信が最低限保障される通信エリアの境界位置にあわせて受光装置300を小型にするように入射角度α1,α2および高さH1を設定する構成でもよい。具体的には、たとえば、高さH1は、高く設定することで、入射角度α1,α2の範囲を狭くして、光信号310の遮蔽の精度を上げることができるが、運転者の邪魔にならない程度とすることが望ましい。
このように受光装置300は、入射角度α1,α2および高さH1となる遮蔽板402を用いて、受光部401によって受光される光信号310を遮蔽して、光信号310を受光しなくなる境界位置を任意に設定することができる。すなわち、受光装置300は、進行方向をX、幅方向をYとした場合、X成分の光を遮蔽する遮蔽板を持つ受光装置ということができる。そして、設定された境界位置を自律測位の基準となる基準位置とすることで、先進安全サービスエリア110内で、車両102の位置標定を正確におこなうことができる。
なお、図5−1の説明では、入射角度α1およびα2を用いて説明したが、出射角度(90−α1)および(90−α2)でも、同様の説明となる。具体的には、たとえば、受光装置300は、通信可能エリア320において、発信部301から路面への垂線に対する光信号310の出射角度が(90−α1)よりも小さな場合に光信号310を受光する。そして、受光装置300は、出射角度が(90−α2)よりも大きく(90−α1)以下の場合、光信号310を一部受光し、(90−α2)以下となると、光信号310を受光しないこととなる。
図5−2は、実施の形態1にかかる受光装置による光信号の遮蔽についての正面を示す説明図である。図5−2は、図5−1に示した遮蔽エリア340における正面図であり、受光装置300は、図3に示した車両102に搭載された車載機に具備され、受光した光信号310を車載機に出力する構成であるが、本図では、車両102を省略して受光装置300について説明する。
受光装置300は、図5−1に示したように、遮蔽エリア340では、光信号310の一部を遮蔽し、遮蔽エリア340を退出すると、光信号310のすべてを遮蔽する構成としている。そして、光信号310をすべて遮蔽することによって、境界位置を任意に設定して、設定された境界位置を正確な位置標定に用いることとしている。
図5−2では、遮蔽エリア340において、車線幅方向の光信号310の入射角度がβ2以上の場合、遮蔽板402によって光信号310をすべて遮蔽することができるが、β1以上β2未満の場合、遮蔽板402によって光信号310の一部を遮蔽し、β1未満の場合、光信号310をすべて受光する構成である。換言すれば、遮蔽エリア340であっても受光装置300の位置が車線幅方向にずれている場合は、正面からみて横や斜め方向からの光信号310を受光してしまうこととなり、境界位置がずれてしまうこととなる。
すなわち、遮蔽エリア340を退出する際に、遮蔽板402によって、光信号310をすべて遮蔽するように高さH1および幅X1を設定することとすればよい。具体的には、たとえば、発信部301を備える路側機101は、1つの車線に1台設置される構成であることから、受光装置300を搭載した車両の1つの車線内の走行について、遮蔽エリア340を退出する位置で光信号310をすべて遮蔽するように、高さH1および幅X1を設定することとすればよい。
すなわち、受光装置300は、光ビーコンの通信可能エリア320のうちの所定の領域(遮蔽エリア340)において、発信部301と遮蔽板402の先端部(図4の遮蔽板402の側辺)とを結ぶ線(すなわち、遮蔽板402の先端部を通過する光信号310の見通し線)が、受光部401の上を通るように、遮蔽板402の先端部の位置が決められていることになる。
(位置標定システムの機能的構成)
ここで、図6を用いて、実施の形態1にかかる受光装置300を用いた位置標定システムの機能的構成について説明する。図6は、実施の形態1にかかる位置標定システムの機能的構成を示すブロック図である。
図6において、位置標定システム(たとえば、図1に示した位置標定システム100)は、路側に設置された光ビーコン610と、車両に搭載されたナビゲーション装置620と、から構成されている。光ビーコン610は、たとえば、図1に示した路側機101などで、投受光器611と、データ通信部612と、から構成されている。
投受光器611は、データ通信部612の制御にしたがって、光ビーコン610の通信可能エリアに進入した車両に搭載されたナビゲーション装置620と、光信号の送受信をおこなう。
具体的には、たとえば、光信号は、ナビゲーション装置620へ送信する、光ビーコン610の位置情報やID情報や道路交通情報などを含むDL信号や、ナビゲーション装置620から送信される、ナビゲーション装置620を搭載した車両の識別情報などを含むUL信号である。より具体的には、たとえば、投受光器611は、DL信号を送信する場合、図3に示した発信部301によってその機能を実現する。
データ通信部612は、投受光器611を制御して光ビーコン610の通信可能エリア320に進入した車両に搭載されたナビゲーション装置620と、光信号の送受信をおこなう。
ナビゲーション装置620は、たとえば、図1に示した車両102に搭載されており、投受光器621と、データ通信部622と、境界位置検出部623と、受信データ処理部624と、位置情報算出部625と、自律測位部626と、から構成されている。
投受光器621は、データ通信部622の制御にしたがって、ナビゲーション装置620が搭載された車両が光ビーコン610の通信可能エリア320に進入した場合、光ビーコン610と光信号310の送受信をおこなう。
具体的には、たとえば、光信号は、光ビーコン610から送信される、光ビーコン610の位置情報やID情報や道路交通情報などを含むDL信号や、光ビーコン610へ送信する、ナビゲーション装置620を搭載した車両の識別情報などを含むUL信号である。より具体的には、たとえば、投受光器621は、DL信号を受信する場合、図3に示した受光装置300によってその機能を実現する。
データ通信部622は、投受光器621を制御してナビゲーション装置620が搭載された車両が光ビーコン610の通信可能エリア320に進入した場合、光ビーコン610と光信号の送受信をおこなう。
境界位置検出部623は、光ビーコン610との通信における光信号の境界位置を検出する。境界位置は、たとえば、光ビーコン610から送信されるDL信号の受信が開始された位置や受信が終了した位置である。また、境界位置は、光ビーコン610へ送信するUL信号の送信を開始した位置や送信を終了した位置でもよい。
実施の形態1では、境界位置の検出は、たとえば、図3に示した受光装置300によってDL信号がすべて遮蔽された位置を検出する。すなわち、DL信号がすべて遮蔽された信号の立下がりによって、境界位置を的確に検出する構成である。
受信データ処理部624は、データ通信部622によって受信されたデータを処理する。具体的には、たとえば、受信データ処理部624は、光ビーコン610の設置位置やID情報や道路交通情報を処理することとなる。
位置情報算出部625は、境界位置検出部623によって検出された境界位置と、受信データ処理部624によって処理された光ビーコン610の設置位置とを用いて、後述する自律測位部626による自律測位の基準となる基準位置を算出する。具体的には、たとえば、位置情報算出部625は、光ビーコン610の設置位置の位置情報を取得した場合、光ビーコン610の仕様や受光装置300の形状から境界位置を算出することとしてもよい。
自律測位部626は、位置情報算出部625によって算出された基準位置を用いて自律測位をおこなって、車両の現在位置を標定する。具体的には、たとえば、自律測位による位置標定は、車速パルス、加速度センサやジャイロセンサなどの自律測位センサと、自律測位センサから得られた車両の速度ベクトルを測位情報として、時系列に管理することによって基準位置からの距離を算出する。
(ナビゲーション装置620の処理の内容)
つぎに、図7を用いて、実施の形態1にかかる受光装置300を用いた位置標定システムにおけるナビゲーション装置620の処理の内容について説明する。図7は、実施の形態1にかかるナビゲーション装置の処理の内容を示すフローチャートである。
図7において、まず、投受光器621によって、光ビーコン610からDL信号を受光したか否かを判断する(ステップS701)。ステップS701において、DL信号を受光するのを待って(ステップS701:No)、受光した場合(ステップS701:Yes)は、境界位置検出部623によって、DL信号の立下がりを検出したか否かを判断する(ステップS702)。具体的には、たとえば、DL信号の立下がりの検出は、図3に示した受光装置300によってDL信号がすべて遮蔽されることによって検出される。
ステップS702において、DL信号の立下がりを検出するのを待って(ステップS702:No)、検出した場合(ステップS702:Yes)は、位置情報算出部625によって、基準位置の座標を算出する(ステップS703)。基準位置は、たとえば、自律測位の基準となる位置で、ステップS702において検出されたDL信号の立下がりから特定される境界位置と、ステップS701において受信されたDL信号に含まれる光ビーコン610の設置位置とを用いて算出される。
つぎに、自律測位部626によって、ステップS703において算出された基準位置を用いて位置を補正して(ステップS704)、基準位置からの自律測位を開始する(ステップS705)。そして、ステップS701へ戻って処理を繰り返す。なお、図7のフローチャートでは説明を省略したが、図7における処理は、車両の走行が停止されるまで繰り返すこととしてもよい。
(基準位置の設定結果)
つぎに、図8を用いて、実施の形態1にかかる受光装置300を用いた基準位置の設定結果について説明する。図8は、実施の形態1にかかる基準位置の設定結果の一例を示す説明図である。
図8において、基準位置の設定結果を示すテーブル800は、受光装置300を搭載した車両102における車幅方向の走行位置、車高(路面から受光装置300の設置高さ)、車速に応じた基準位置の設定結果の誤差を示している。
テーブル800より、基準位置の設定誤差は0.5m未満となっており、たとえば、図1に示した先進安全サービスエリア110では、自律測位によって生じる車両102の位置標定の誤差は、運転者に自他車両の位置関係に誤解を与えない範囲(たとえば、約2.5m)となる。
以上説明したように、実施の形態1によれば、路側機の設置位置から特定される境界位置を用いて、自律測位の基準となる基準位置を高精度に設定することができるため、車両の位置標定の誤差の低減および位置標定の信頼性向上を図ることができる。具体的には、先進安全サービスを提供するエリア(たとえば、100m程度の走行範囲)においては、位置標定の誤差を半車両分(たとえば、約2.5m)以下とすることができ、適切な先進安全サービスの提供を受けることができる。
また、実施の形態1によれば、光ビーコンなどの既存のインフラを有効活用して、車両の位置標定をおこなうことができるため、新たなインフラの設置に関する負担をかけることがない。くわえて、受光部に遮蔽板を設置するだけでよいため、簡便かつ低コストで正確な位置標定を実現することができる。さらに、遮蔽板の幅や高さ、光信号の入射角度(出射角度)によって、境界位置や基準位置設定の精度を調整することができ、車両の位置標定の利便性の向上を図ることができる。
さらに、路側機からの光信号を確実に受信できる地点で光信号の受光および遮蔽をおこなって境界位置を検出できるため、気象条件、走行条件に影響を受けることなく、確実かつ的確に基準位置を設定することができる。
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。前述の実施の形態1では、図5−2に示した高さH1および幅X1の遮蔽板402によって、1つの車線内の走行について遮蔽エリア340を退出する位置で光信号310をすべて遮蔽する場合について説明したが、実施の形態2では、図3に示した通信可能エリア320において、車線幅方向の光信号310の受光された割合を用いて、車線幅方向の車両位置を検出する場合について説明する。
なお、実施の形態2にかかる位置標定システムの概要については図1、先進安全サービスエリアに進入した車両の概要については図2、初期値設定の概要については図3、受光装置の概要については図4、とそれぞれほぼ同様であるため説明を省略する。
図9を用いて、実施の形態2にかかる通信可能エリア320における受光装置300による車線幅方向の光信号310の遮蔽について説明する。図9は、実施の形態2にかかる受光装置による光信号の遮蔽についての正面を示す説明図である。
図9において、受光装置300は、受光部401の受光面に受光する光信号310の受光範囲を検出できる構成とし、光信号310が受光される受光範囲を用いて、車線幅方向の車両位置を検出する。すなわち、受光装置300は、進行方向をX、幅方向をYとした場合、Y成分の光を遮蔽する遮蔽板を持つ受光装置ということができる。具体的には、たとえば、光信号310を受光する受光範囲は、受光面に複数の受光素子を配置し、光信号310を受光した受光素子と、光信号310を受光しなかった受光素子とを特定することで検出できる。
より具体的には、たとえば、図9は、受光面のR1の受光範囲で光信号310を受光する場合と、受光面のR2の受光範囲で光信号310を受光する場合について示している。すなわち、受光範囲がR2である場合、光信号310の入射角度は十分に小さく、車幅方向の車両位置が発信部301から離れていることとなる。また、受光範囲がR1である場合、光信号310の入射角度が大きく、光信号310の一部が遮蔽されているため、車幅方向の車両位置が発信部301に近いこととなる。
このように、受光装置300は、発信部301に対して、車線幅方向の距離が大きくなるほど受光面の受光範囲が大きくなり、車線幅方向の距離が小さくなるほど受光面の受光範囲が小さくなることを利用して、車線幅方向の車両位置を検出する。
また、図9の説明では、光信号310の受光範囲を用いて、車線幅方向の車両位置を検出する構成としたが、光信号310の光量を用いて車線幅方向の車両位置を検出することとしてもよい。
また、図9の説明では、受光面に対する光信号310の受光範囲によって、車線幅方向の車両位置を検出する構成としたが、複数の受光装置300によって、車線幅方向の車両位置を検出する構成でもよい。
具体的には、たとえば、複数の受光装置300は、車両が通信可能エリア320を走行中に、発信部301よりも車線幅方向の右側に位置する場合に光信号310を受光可能かつ左側に位置する場合に光信号310を受光不可能とする受光装置300と、発信部301よりも車線幅方向の左側に位置する場合に光信号310を受光可能かつ右側に位置する場合に光信号310を受光不可能とする受光装置300とを用いることによって、発信部301の左右の車両位置を的確に検出することとしてもよい。
遮蔽板402により光信号310が遮蔽されるエリアは、発信部301から近く、光信号310の光量が強い範囲である。したがって、遮蔽板402によって遮光された光の受光領域(影領域)については受光面上での領域の変化を、また、受光量については受光面上での受光量の変化を、明確に検出することが可能である。したがって、受光面上の受光範囲(影範囲)もしくは受光量の時間的変化量を受光素子で捕らえれば、受光装置300(受光装置300を搭載した車両)の位置を動的に算出することが可能となる。
以上説明したように、実施の形態2によれば、車線幅方向の車両位置を検出することによって、基準位置の設定の正確化を図ることができる。すなわち、実施の形態1とともに使用することで、高精度な基準位置の設定ができ、車両の位置標定の誤差の低減および位置標定の信頼性向上を図ることができる。
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3について説明する。前述の実施の形態1では、図4に示した構造からなる受光装置300によって、光信号310を遮蔽する構成としたが、実施の形態3では、図4とは異なる構造の受光装置について説明する。
なお、実施の形態3にかかる位置標定システムの概要については図1、先進安全サービスエリアに進入した車両の概要については図2、初期値設定の概要については図3、とそれぞれほぼ同様であるため説明を省略する。
図10を用いて、実施の形態3にかかる受光装置の概要について説明する。図10は、実施の形態3にかかる受光装置の概要を示す説明図である。
図10において、受光装置1000は、受光部1001と、遮蔽板1002と、から構成されている。受光部1001は、図3に示した発信部301から発信される光信号310を受光する。また、受光部1001は、高さH2、幅X2からなる遮蔽板1002の内側に設置されている。
受光装置1000は、遮蔽板1002によって所定の入射角度以上の光信号310を遮蔽して、受光部1001によって光信号310を受光しなくなる。入射角度は、たとえば、受光部1001の設置面に対する光信号310の角度であり、設置面と受光面とが平行である場合は、受光部1001の受光面に対する光信号310の角度としてもよい。
具体的には、たとえば、光信号310の遮蔽は、正面図では、入射角度がβ3以上β4未満の場合に光信号310の一部が遮蔽され、入射角度がβ4以上の場合に光信号310のすべてが遮蔽される。また、断面図では、入射角度がα3以上α4未満の場合に光信号310の一部が遮蔽され、入射角度がα4以上の場合に光信号310のすべてが遮蔽されることとなる。
なお、図10の説明では、遮蔽板1002を用いて光信号310を遮蔽する構成としたが、遮蔽板1002の形状はこれに限ることはなく、所定の入射角度に応じての受光部1001が受光する光信号310を遮蔽ができる構成であればよい。すなわち、遮蔽板1002は、受光部1001への光信号310の入射光路上に設けられ、所定の入射角度に応じての受光部1001が受光する光信号310を遮蔽できる構成であればよい。換言すれば、遮蔽板1002は、発信部301からの光信号310の出射光路上に設けられる構成である。
以上説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1に示した形状とは異なる遮蔽板であっても、自律測位の基準となる基準位置を高精度に設定することができるため、車両の位置標定の誤差の低減および位置標定の信頼性向上を図ることができる。すなわち、車両における設置箇所の状況や用途に応じて遮蔽板の形状を変更してもよいため、汎用性に富んだ利用を図ることができる。
(実施の形態4)
つぎに、実施の形態4について説明する。前述の実施の形態1および実施の形態3では、図4および図10に示した構造からなる、受光部401と受光部401の設置面が平行な受光装置(300,1000)によって、光信号310を受光する構成としたが、実施の形態4では、図4および図10とは異なる形状の受光装置について説明する。
なお、実施の形態4にかかる位置標定システムの概要については図1、先進安全サービスエリアに進入した車両の概要については図2、初期値設定の概要については図3、とそれぞれほぼ同様であるため説明を省略する。
図11を用いて、実施の形態4にかかる受光装置の概要について説明する。図11は、実施の形態4にかかる受光装置の概要を示す説明図である。
図11において、受光装置1100は、受光部1101と、遮蔽板1102と、から構成されている。受光部1101は、図3に示した発信部301から発信される光信号310を受光する。また、受光部1101は、高さH3、幅X3からなる遮蔽板1102の内側に設置されている。
受光装置1100は、遮蔽板1102によって所定の入射角度以上の光信号310を遮蔽して、受光部1101によって光信号310を受光しなくなる。入射角度は、たとえば、受光部1101の設置面に対する光信号310の角度である。
具体的には、たとえば、光信号310の遮蔽は、正面図では、入射角度がβ5以上β6未満の場合に光信号310の一部が遮蔽され、入射角度がβ6以上の場合に光信号310のすべてが遮蔽される。また、断面図では、入射角度がα5以上α6未満の場合に光信号310の一部が遮蔽され、入射角度がα6以上の場合に光信号310のすべてが遮蔽されることとなる。
なお、図11の説明では、遮蔽板1102を用いて光信号310を遮蔽する構成としたが、遮蔽板1102の形状はこれに限ることはなく、所定の入射角度に応じての受光部1101が受光する光信号310を遮蔽できる構成であればよい。すなわち、遮蔽板1102は、受光部1101への光信号310の入射光路上に設けられ、所定の入射角度に応じての受光部1101が受光する光信号310を遮蔽できる構成であればよい。換言すれば、遮蔽板1102は、発信部301からの光信号310の出射光路上に設けられる構成である。
以上説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1〜3に示した形状とは異なる受光部であっても、自律測位の基準となる基準位置を高精度に設定することができるため、車両の位置標定の誤差の低減および位置標定の信頼性向上を図ることができる。すなわち、車両における設置箇所の状況や用途、受光素子の性能に応じて受光部の形状を変更してもよいため、汎用性に富んだ利用を図ることができる。
(実施の形態5)
つぎに、実施の形態5について説明する。実施の形態5にかかる交差点サービスシステムは、具体的には、たとえば交差点において、交差点を通行する車両にとって有用となるサービスを、交差点を通過する車両ごとに提供するシステムである。交差点サービスシステムは、交差点に限らず道路上の任意の地点を通行する車両に対するサービスを提供することができる。
具体的には、たとえば、進行方向前方の道路交通情報を提供するサービス、交差点の右左折に際して運転者の死角となる部分の画像を提供するサービス、交差点における信号の切り換えタイミングを案内するサービスなど、車両が安全かつ快適に交差点を通行するために有用となる情報を提供するシステムである。
図12は、実施の形態5にかかる交差点サービスシステムのシステム構成を示す説明図である。図12において、交差点サービス(通行支援)システムは、センター装置1210と、カメラ1220と、車両システム(後述する図15を参照)と、路側機(通信機器)101と、を含んでいる。実施の形態5においては、以降、路側機101を光ビーコン101として説明する。
センター装置1210は、各種情報を記憶する記憶装置や、外部装置との間で通信をおこなう通信装置などを備えるコンピュータ装置である。記憶装置は、たとえばサービスの提供に用いる各種の交通情報を記憶する。交通情報は、上述したサービスの提供に用いる情報である。
具体的には、交通情報は、たとえば、交差点の周囲(たとえば運転者の死角となる部分)の状況をあらわす画像情報であったり、交差点の形状をあらわす図形情報であったり、過去の事故歴を通知する文字情報であったり、事故防止の注意を喚起する音声情報などである。また、交通情報は、たとえば車両内のディスプレイなどに画像情報を表示させるためのプログラムや、表示させる画像を撮像するカメラ1220を起動するためのプログラムなどであってもよい。
交通情報は、交差点ごとに1つまたは複数存在する。たとえば、1つの交差点の交通情報として、交差点の中心位置に対応付けられた交通情報と、直進する車両が交差点に進入する位置に対応付けられた交通情報と、右折車線にいる車両が交差点内に進入する位置に対応付けられた交通情報と、のように複数存在する。
具体的には、センター装置1210は、交差点サービスシステムを構成するカメラ1220、サービス提供装置、光ビーコン101などとの間で通信をおこなう。なお、センター装置1210を実現するコンピュータ装置は、広く利用されているコンピュータ装置と同様であるため、その構成や機能についての説明は省略する。
カメラ1220は、交差点1230あるいは交差点1230の周囲を撮影する。カメラ1220は、交差点1230の形状、交差点1230における交通量、交差点1230周辺の建築物の有無あるいはその形状などに応じて、交差点1230ごとに1台または複数台適宜設置されている。たとえば、見通しの悪い交差点1230であれば見通しのよい交差点1230よりも多くのカメラ1220を設置し、多方向からの映像を撮影するようにしてもよい。
カメラ1220は、センター装置1210や車両システムなどと通信をおこなう通信機能を備えており、撮像した画像を外部へ送信することが可能である。カメラ1220およびカメラ1220が備える通信機能については公知の技術であるため、ここではその説明を省略する。
車両システムは、車両に搭載され、光ビーコン101が発信する光信号を受光する受光装置を備えている。受光装置は、上述した実施の形態1〜4に示した受光装置(図15を参照)のいずれを用いてもよい。受光装置は、光信号の受光/遮光を判断するために比較用の受光部を備えている。比較用の受光部には、たとえば上述した受光装置300が備える遮蔽板402などが設けられておらず、光ビーコン101が発信した光信号が全て入射する構成となっている。
受光装置は、比較用の受光部における受光量に対する、受光装置の受光部における受光量の割合が所定の閾値以下となったことをもって、受光装置に入射する光信号が遮断されたと判断する。車両システムは、受光装置における光信号の受光状態に応じて、サービスを提供するための各種のプログラムを実行する。車両システムについては、詳細を後述する。
光ビーコン101は、道路の脇など路側に設置され、渋滞情報・リンク旅行時間情報・規制情報・駐車場情報・区間旅行時間情報などの道路交通情報を含む光信号を発信する。光ビーコン101は、光ビーコン101の設置位置に直近の道路(たとえば走行中の道路および当該道路に接続する道路)についての道路交通情報を含む光信号を発信する。道路交通情報は、簡易図形や文字情報の形態であらわされる。
また、光ビーコン101は、道路交通情報に加えて各種エリアの位置および大きさをあらわす情報(以下、「エリア指定情報」という)を含む光信号を発信する。各種エリアとは、交差点1230あるいは交差点1230に接続する道路上に設定された仮想的な領域である(図13を参照)。各種エリアの位置および大きさは、エリア指定情報に含まれる、各種エリアの中心座標と中心座標を基準とするエリアの大きさとをもって定められる。
エリア指定情報は、たとえば交差点1230周辺の環境に関する情報、車両Cの環境に関する情報、あるいは、車両Cの運転者の生体情報のうち少なくとも1種類の情報の変化に応じて更新される。エリア指定情報の更新は、たとえばセンター装置1210を管理する管理者などによっておこなわれ、更新されたエリア指定情報はセンター装置1210を介して光ビーコン101に送信される。エリア指定情報の更新タイミングは、たとえば交差点サービスの提供者の任意のタイミングとすることができる。また、更新の基となる情報に変化があったタイミングで自動的に更新することも可能である。
交差点1230周辺の環境に関する情報とは、たとえば交差点1230における交通量や歩行者の多少、交差点1230の形状、周辺施設の有無(幼稚園が近いなど)、事故発生頻度などをあらわす情報である。車両Cに関する情報とは、たとえば車両Cに搭載されたジャイロセンサや速度センサの出力値などである。車両Cの運転者の生体情報とは、たとえば運転者の心拍数や瞬き回数の変化などである。
図13は、各種エリアを示す説明図である。各種エリアは、交差点サービスシステムにおいて交通情報の提供を受ける車両Cの位置を特定したり、特定された車両Cの位置に応じて提供するサービス内容を決定したりすることを目的として、目的(サービス内容)ごとに設けられている。
図13においては、各種エリアとして、「初期位置設定(基準位置標定)エリア」1310、「赤信号警告エリア」1320、「右折車両向けサービス提供エリア」1330、「直進車両向けサービス提供エリア」1340、「死角画像受信エリア」1350、「交差点サービス終了エリア」1360があらわされている。
各種エリア1310〜1360のうち、初期位置設定エリア1310の中心座標は、光ビーコン101の設置の直下の位置座標(以下、適宜「初期位置(X,Y)」という)であらわされる。その他のエリア1320〜1360の中心座標は、それぞれ、初期位置(X,Y)に対する相対的な座標であらわされる。たとえば、右折車両向けサービス提供エリア1330の中心座標は、初期位置(X,Y)に対して、x軸方向にα、y軸方向にβの値だけずれている。このため、右折車両向けサービス提供エリア1330の中心座標は、(X+α,Y+β)であらわされる。
各種エリア1310〜1360の大きさは、車線を横切る方向を横方向、道路進行方向を縦方向とした場合、横方向および縦方向の長さを設定することによって定められる。たとえば、横方向の長さをWメートルとし、縦方向の長さをLメートルとした場合、W×Lの略長方形状あるいは同程度の大きさの楕円形状がエリアの大きさとして定められる。
初期位置設定(基準位置標定)エリア1310は、交差点サービスを開始する初期位置として設定されたエリアであり、交差点1230に進入する車両Cを検出するエリア(サービス実行開始エリア)である。初期位置設定エリア1310は、車両Cと車両Cの移動方向前方に位置する交差点1230との間に設けられている。なお、初期位置設定エリア1310は、上述した図2において説明した初期値設定エリア201と同様のエリアである。
初期位置設定エリア1310は、初期位置設定エリア1310の中心座標とエリアの大きさとによって指定する以外に、たとえば「交差点の中心位置よりも40m手前の位置から50m手前までの10mの区間の全車線」などのように指定することも可能である。
赤信号警告エリア1320は、交差点1230において車両Cに対する信号が赤信号であることを警告するエリアである。具体的には、赤信号警告エリア1320に車両Cが進入した場合、たとえば「前方の信号は赤です。停車してください。」などの音声あるいは文字情報の提供による警告を開始する。
赤信号警告エリア1320は、初期位置設定エリア1310と交差点1230における停止線の位置との間に設けられている。赤信号警告エリア1320は、赤信号警告エリア1320の中心座標とエリアの大きさとによって指定する以外に、たとえば「交差点における停止線の位置よりも30m手前の位置から40m手前までの10mの区間」などのように指定することも可能である。
右折車両向けサービス提供エリア1330は、交差点1230を右折する予定の車両Cに対するサービスを提供するエリアである。具体的には、右折車両向けサービス提供エリア1330に車両Cが進入した場合、たとえば死角画像受信エリア1350においてサービスを提供するためのプログラムを起動したり、交差点1230付近の撮影を開始したりする。右折車両向けサービス提供エリア1330は、右折車両向けサービス提供エリア1330の中心座標とエリアの大きさとによって指定する以外に、たとえば「交差点1230における停止線の位置から10m手前までの10mの区間」などのように指定することも可能である。
直進車両向けサービス提供エリア1340は、交差点1230を直進する予定の車両Cに対するサービスを提供するエリアである。具体的には、直進車両向けサービス提供エリア1340に車両Cが進入した場合、たとえば交差点1230通過後の道路情報などの提供を開始する。直進車両向けサービス提供エリア1340は、直進車両向けサービス提供エリア1340の中心座標とエリアの大きさとによって指定する以外に、たとえば「交差点1230から20m手前までの20mの区間」などのように指定することも可能である。
死角画像受信エリア1350は、交差点1230を右折する車両Cの運転者から見て死角となる部分の画像の提供を開始するエリアである。具体的には、車両Cが死角画像受信エリア1350に進入した場合に、たとえば車両Cの運転者にとって死角となる部分の画像の運転者への提供や、交差点1230付近の車両C・自転車・歩行者などの存在を案内する音声や文字情報の提供を開始する。
赤信号警告エリア1320、右折車両向けサービス提供エリア1330、直進車両向けサービス提供エリア1340、死角画像受信エリア1350は、車両システムを介して、運転者の目に見える(あるいは耳で聞くことができる)サービスの提供がおこなわれるエリア(サービス実行エリア)である。赤信号警告エリア1320、右折車両向けサービス提供エリア1330、直進車両向けサービス提供エリア1340は、レーン検出エリア内に設けられている。
交差点サービス終了エリア1360は、交差点サービスを終了するタイミングを図るエリア(サービス実行終了エリア)である。具体的には、車両Cが交差点サービス終了エリア1360に進入した場合、たとえば死角画像受信エリア1350において開始した情報など、交差点1230において提供可能なサービスの提供を停止する。
つぎに、交差点サービスシステムによって提供するサービスについて具体例を挙げて説明する。図14は、交差点サービスによって提供するサービスの一例について説明する説明図である。図14においては、右折車両C向けに提供するサービスについての略図をあらわした。図14において、車両Cは、道路1410上を右側から左側方向に移動して交差点1230に進入し、初期位置設定エリア1310を通過した後、そのまま移動を継続して交差点1230で右折するものとする。
交差点サービスシステムにおいては、車両Cが初期位置設定エリア1310に進入したことを検出すると、以降、車両Cが搭載するジャイロセンサや速度センサ(図15を参照)からの出力値を取得する。そして、取得した出力値および初期位置(X,Y)を用いて自律航法にしたがった演算をおこない、初期位置(X,Y)に対する車両Cの相対的な位置を特定する。
自律航法を用いた演算の結果、車両Cが右折車両向けサービス提供エリア1330まで移動したことが特定された場合、死角画像提供サービスを起動する。死角画像提供サービスの起動に際しては、具体的には、たとえば交差点1230の周囲に設置され、交差点1230の周囲を撮影するカメラ1220を起動し、各カメラ1220における撮像を開始する。併せて、車両Cの運転者にとって死角となる部分を撮影するカメラ1220を選択する。
なお、死角画像提供サービスの起動に際しては、車両Cの運転者にとって死角となる部分を撮影するカメラ1220を選択し、選択されたカメラ1220のみを起動し、当該カメラ1220における撮像を開始するようにしてもよい。
図14における車両Cは右折を予定しているため、右折車両向けサービス提供エリア1330を経由して死角画像受信エリア1350に進入する。交差点サービスにおいては、車両Cが死角画像受信エリア1350に進入したことを検出すると、選択されたカメラ1220が撮影した画像を車両Cに搭載されたディスプレイ(図15を参照)に表示する。
その後も継続してジャイロセンサや速度センサからの出力値を取得し、取得した出力値および初期位置(X,Y)を用いて自律航法にしたがった演算をおこない、初期位置(X,Y)に対する車両Cの相対的な位置を特定する。そして、自律航法を用いた演算の結果、車両Cが交差点サービス終了エリア1360まで移動したことが特定された場合、選択されたカメラ1220が撮影した画像の表示を停止して、交差点サービスの提供を終了する。交差点システムにおいては、車両Cに搭載された車両システム(通行支援装置)が、車両Cの位置に応じた所定のプログラムを実行することによって、各種サービスの提供が実現される。
つぎに、車両システムについて説明する。図15は、車両システムの概要を示すブロック図である。図15において、車両システムは、CPU1501と、メモリ1502と、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という)1503と、ハードディスク(以下、「HD」という)1504と、光ディスク1506と、光ディスクドライブ(以下、「光DD」という)1505と、インターフェイス(以下、「I/F」という)1507と、受光装置1508と、ジャイロセンサ1509と、速度センサ1510と、ディスプレイ1511と、スピーカ1512と、を備えている。各構成部1501〜1512は、バス1513によってそれぞれ接続されている。当然ながら、各構成部は互いにデータの送受信が可能なように接続されていれば、バス1513により接続されていなくても構わない。
ここで、CPU1501は、車両システム全体の制御を司る。メモリ1502は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶するROMやCPU1501のワークエリアとして使用されるRAMなどによって実現される。HDD1503は、CPU1501の制御にしたがってHD1504に対するデータのリード/ライトを制御する。HD1504は、HDD1503の制御で書き込まれたデータを記憶する。HD1504は、たとえば地図情報や交通情報などを書き換え可能に記憶する。
光DD1505は、CPU1501の制御にしたがって光ディスク1506に対するデータのリード/ライトを制御する。光ディスク1506は、光DD1505の制御で書き込まれたデータを記憶したり、光ディスク1506に記憶されたデータをCPU1501に読み取らせたりする。光ディスク1506は、光DD1505に対して着脱可能な記録媒体である。
光ディスク1506は、具体的にはたとえばCD−ROM(CD−R、CD−RW)、DVD(Digital Versatile Disk)などである。着脱可能な記録媒体として、光ディスク1506以外の記録媒体であってもよい。この場合の着脱可能な記録媒体としては、具体的には、たとえばフレキシブルディスク、MO、メモリカードなどであってもよい。
I/F1507は、通信回線を通じてインターネットなどのネットワークに接続され、このネットワークを介して他の装置に接続される。I/F1507は、ネットワークと内部のインターフェイスを司り、たとえばセンター装置1210などの外部装置からのデータの入出力を制御する。また、I/F1507は、光ビーコン101が発信した光信号を受信する。
ジャイロセンサ1509は、車両Cの方向変化を計測する。速度センサ1510は、車両Cの走行距離を検出する。基準となる位置(たとえば初期位置(X,Y))に対する車両Cの相対的な位置は、基準となる位置座標と、ジャイロセンサ1509で検出した方向と、速度センサ1510で検出した走行距離と、を用いて自律航法にしたがった演算をおこなうことによって算出することができる。自律航法にしたがった演算については、公知の技術であるためここではその説明を省略する。
ディスプレイ1511は、上述した交通情報や、上述したカメラ1220が撮影した画像などのデータを表示する。ディスプレイ1511は、地図、地図上の自車位置、誘導経路などを表示してもよい。また、ディスプレイ1511は、車両システムが提供可能な各種機能リストなどを表示してもよい。
リストに表示された各種の機能は、車両Cに設けられた操作部(図示を省略する)の操作によって選択し実行する。操作部は、キーボタン、タッチパネル、リモコンなど、公知の各種操作手段を用いることが可能であり、ここではその説明を省略する。ディスプレイ1511は、たとえばTFT液晶ディスプレイなどを採用することができる。なお、TFT液晶ディスプレイをはじめとする各種の液晶ディスプレイについては、公知の技術であるためここではその説明を省略する。
スピーカ1512は、ボイスコイルと、ボイスコイルの周囲に設けられた磁石と、ボイスコイルに取り付けられたスピーカーコーンと、を備えている。スピーカ1512は、CPU1501の制御にしたがってボイスコイルへの通電がおこなわれた場合に、磁石によってボイスコイル周辺に作られる磁場を利用して音声を出力する。スピーカ1512の構造および音声の出力方法については、公知の技術であるためここではその説明を省略する。
つぎに、車両システムの機能的構成について説明する。図16は、車両システムの機能的構成を示すブロック図である。図16において、車両システムの機能は、検出部1601と、取得部1602と、特定部1603と、受付部1604と、記憶部1605と、更新部1606と、抽出部1607と、決定部1608と、判定部1609と、出力部1610と、によって実現される。
検出部1601は、受光装置1508における受光状態に基づいて、受光装置1508に入射する光信号310が遮断されたことをもって、車両Cが初期位置(X,Y)を通過したことを検出する。検出部1601は、比較用の受光部における受光量に対する受光装置1508の受光部における受光量の割合が所定の閾値以下となったことをもって、受光装置1508に入射する光信号が遮断されたと判断し、車両Cが初期位置(X,Y)を通過したことを検出する。検出部1601は、具体的には、たとえば、受光装置1508からの出力値に基づいてCPU1501がメモリ1502に記憶されたプログラムを実行することによってその機能を実現することができる。
取得部1602は、検出部1601によって車両Cの通過が検出された場合、初期位置設定エリア1310を通過後に継続して移動する車両Cの、初期位置(X,Y)に対する相対的な位置に関する情報を取得する。取得部1602は、具体的には、たとえば、ジャイロセンサ1509や速度センサ1510からの出力値に基づいてCPU1501がメモリ1502に記憶されたプログラムを実行することによってその機能を実現することができる。
特定部1603は、取得部1602によって取得された情報に基づいて、交差点1230に対する車両Cの位置を特定する。特定部1603は、たとえば、ジャイロセンサ1509や速度センサ1510からの出力値に基づいて車両Cの移動方向および移動距離を、初期位置(X,Y)に加算することによって車両Cの現在の位置座標を算出する。
そして、算出された位置座標と交差点1230の中心座標とに基づいて、交差点1230に対する車両Cの位置座標を算出する。特定部1603は、たとえば地図上の特定の地点をあらわす絶対的な位置座標を算出する。特定部1603は、交差点1230に対する相対的な位置をあらわす位置座標を算出してもよい。交差点1230の中心座標は、HD1504に記憶された地図情報から取得できる既知の値である。特定部1603は、具体的には、たとえば、CPU1501がメモリ1502に記憶されたプログラムを実行することによってその機能を実現することができる。
受付部1604は、上述したエリア指定情報の入力を受け付ける。受付部1604は、たとえば光ビーコン101から発信された光信号をI/F1507を介して受信することによってエリア指定情報の入力を受け付ける。受付部1604は、具体的には、たとえば上述した操作部(キーボタン、タッチパネル、リモコンなど)によってその機能を実現することができる。
記憶部1605は、地図情報および地図情報によってあらわされる地図中の交差点1230に対応付けられた交通情報を記憶する。地図中の交差点1230の位置は、交差点1230の中心の座標情報によってあらわされる。記憶部1605は、具体的には、たとえばHDD1503およびHD1504によってその機能を実現することができる。また、記憶部1605は、具体的には、たとえば上述した光DD1505および光ディスク1506によってその機能を実現することもできる。
更新部1606は、センター装置1210から配信される情報に基づいて、HD(記憶装置)1504が記憶する交通情報を更新する。更新部1606は、具体的には、たとえばCPU1501がメモリ1502に記憶されたプログラムを実行してHDD1503を制御し、HD1504に記憶された交通情報を書き換えることによってその機能を実現することができる。
抽出部1607は、記憶部1605が記憶する交通情報であって該当する交差点1230の交通情報の中から、特定部1603によって特定された位置に対応付けられた交通情報(以下、「特定交通情報」という)を抽出する。抽出部1607は、たとえば該当する交差点1230内およびその周辺の路上をあらわす各位置座標と交差点1230に対する車両Cの位置座標とを比較し、交差点1230に対する車両Cの位置座標と一致する位置座標に対応付けられた交通情報を抽出する。抽出部1607は、具体的には、たとえば、CPU1501がメモリ1502に記憶されたプログラムを実行することによってその機能を実現することができる。
決定部1608は、抽出部1607によって複数の特定交通情報が抽出された場合に、抽出された複数の特定交通情報のそれぞれの優先順位を決定する。決定部1608は、車両Cに関する情報(ジャイロセンサ1509や速度センサ1510の出力値など)、車両C周辺の環境に関する情報(交通量や歩行者の多少、交差点1230の見通しの善し悪しなど)、あるいは、車両Cの運転者の生体情報(心拍数や瞬き回数の変化など)のうち少なくとも1種類の情報に基づいて、複数の特定交通情報の優先順位を適宜更新して決定する。
判定部1609は、特定部1603によって特定された位置が、上記の各種エリア(サービス実行エリア)内の位置であるか否かを判定する。判定部1609は、たとえば同じ交差点1230における各種エリア内の位置座標と特定された車両Cの位置座標とを比較し、特定された車両Cの位置座標と一致する位置座標を含むエリアがある場合に、特定部1603によって特定された位置がサービス実行エリア内にあると判定する。
判定部1609は、受付部1604によって受け付けた最新のエリア指定情報に基づいて、特定部1603によって特定された位置が各種エリア内の位置であるか否かを判定する。判定部1609は、具体的には、たとえば、HD1504に記憶された地図情報などを用いてCPU1501がメモリ1502に記憶されたプログラムを実行することによってその機能を実現することができる。
出力部1610は、抽出部1607によって抽出された交通情報(特定交通情報)を出力する。出力部1610は、たとえば、抽出された交通情報が交差点1230を通行する際の注意喚起に関わる情報である場合、注意を喚起する文字情報(左折時であれば『後方からの歩行者に注意』など)をディスプレイ1511に表示したり、スピーカ1512を介して音声(右折時であれば『対向車にご注意ください』など)を出力したりする。
また、たとえば、抽出された交通情報が死角画像の提供に関わる情報である場合、死角画像の提供に関わる各部に対して起動あるいは動作を開始させる情報を、I/F1507を介して出力する。出力部1610は、具体的には、たとえば、ディスプレイ1511、スピーカ1512、I/F1507などによってその機能を実現することができる。
抽出部1607によって複数の特定交通情報が抽出された場合、出力部1610は、決定部1608によって決定された優先順位にしたがって複数の特定交通情報を順次出力する。また、出力部1610は、判定部1609による判定結果に基づいて、車両Cの位置が各種エリア内となった場合に該当するエリアに対応付けられた交通情報を出力し、車両Cの位置が各種エリア外となった場合に該当する交通情報の出力を停止する。
判定部1609は、特定部1603によって特定された位置が、サービス実行開始エリアまたはサービス実行終了エリア内の位置であるか否かを判定するようにしてもよい。ここで、サービス実行開始エリアおよびサービス実行終了エリアは、初期位置(X,Y)に対する相対座標であらわされる。サービス実行開始エリアに車両Cが進入した場合、たとえば交差点1230ごとに提供可能なサービスの起動を開始する。サービス実行終了エリアに車両Cが進入した場合、当該交差点1230において提供可能なサービスの提供をすべて停止する。
そして、この場合の出力部1610は、判定部1609による判定結果に基づいて、特定部1603によって特定された位置がサービス実行開始エリアに含まれる場合には、該当する交通情報の出力を開始し、特定された位置がサービス実行終了エリアに含まれる場合には交通情報の出力を停止する。
つぎに、車両システムにおける機能と情報との関連について説明する。図17は、車両システムの概略を示す説明図である。図17において、車両システムは、上述した各部によって、車両Cの位置(自車位置)を測位する測位機能と、交差点ごとのサービスを自車位置に応じて選択する実行サービス選択機能とを実現する。
車両システムにおいては、光ビーコン101から発信された光信号を受信することによって、初期位置(X,Y)、提供可能なサービス名、エリア座標およびエリア大きさ、各サービスの提供を実行する優先度などの情報を抽出する。光信号から取得された情報は、サービス実行エリア情報として車両システムに取り込まれる。
サービス名によって特定されるサービスを提供するためのサービスコンポーネント(信号情報や車両位置を表示するためのプログラム情報など)は、車両Cが備えるHD1504などの記憶装置内にあらかじめ記憶されている。サービスコンポーネントはセンター装置1210などから定期的または不定期に配信され、I/F1507を介してHD1504などの記憶装置に記憶される。
実行サービス選択機能は、測位機能によって得られた自車位置情報と光信号から得られたサービス実行エリア情報とを用いて提供するサービスを選択し、選択されたサービスを起動する。サービスの起動に際しては、起動するサービスに用いるサービスコンポーネントを起動する。車両システムにおけるこのような機能によって、自車位置に応じたサービスを提供することができる。
図18は、実施の形態5にかかる交差点サービスシステムを構成する車両システムの処理手順を示すフローチャートである。図18のフローチャートにおいて、まず、受光装置1508において光信号が遮断されるまで待つ(ステップS1801:No)。光信号が遮断された場合(ステップS1801:Yes)は、車両Cの位置に関する情報の取得を開始する(ステップS1802)。ステップS1802においては、具体的には、ジャイロセンサ1509および速度センサ1510からの出力値を検出する。ステップS1802の処理は、車両Cが交差点から退出するまで継続しておこなわれる。
つぎに、光ビーコン101から発信された光信号を、I/F1507を介して受信したか否かを判断し(ステップS1803)、受信していない場合(ステップS1803:No)は、一連の処理を終了する。ステップS1803において受信した場合(ステップS1803:Yes)は、ステップS1803:Yesにおいて受信した光信号の中から、初期位置設定エリア1310および交差点1230の中心座標を抽出する(ステップS1804)。
そして、初期位置設定エリア1310および交差点1230の中心座標と、ステップS1802において取得を開始した情報と、を用いて車両Cの現在位置(自車位置)の特定を開始する(ステップS1805)。ステップS1805の処理は、車両Cが交差点から退出するまで継続しておこなわれる。
つぎに、ステップS1803:Yesにおいて受信した光信号の中から、エリア指定情報を抽出する(ステップS1806)。そして、抽出されたエリア指定情報によって指定されるエリア1310〜1360の中に、ステップS1805において特定される自車位置を含むエリア(該当するエリア)があるか否かを判定する(ステップS1807)。ステップS1807においては、該当するエリアがあるまで待機する(ステップS1807:No)。
ステップS1807において、ステップS1805において特定される自車位置を含むエリアがある場合(ステップS1807:Yes)は、自車位置を含むエリアに対応付けられた交通情報をHD1504から抽出し(ステップS1808)、抽出した交通情報が複数か否かを判断する(ステップS1809)。
ステップ1809において、抽出された交通情報が1つである場合(ステップS1809:No)は、ステップS1811へ移行して、車両システム外部に対して抽出した交通情報を出力する(ステップS1811)。一方、抽出された交通情報が複数ある場合(ステップS1809:Yes)は、優先順位を決定して(ステップS1810)からステップS1811へ移行して抽出した交通情報を出力する。
その後、ステップS1805において特定を開始した自車位置が交差点サービス終了エリア1360に進入したか否かを判断し(ステップS1812)、進入していない場合(ステップS1812:No)はステップS1807に戻る。一方、進入した場合(ステップS1812:Yes)は、進入した時点において出力途中の交通情報を含めすべての交通情報の出力を停止して(ステップS1813)、一連の処理を終了する。
上述したように、実施の形態5によれば、車両Cの位置を精度よく特定し、特定された位置ごとに適した交通情報を出力することにより、交差点1230を通行する車両Cにとって有用となるサービスを、交差点1230を通過する車両Cごとに提供することができる。これによって、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、一度に複数の交通情報が抽出された場合には優先順位を決定し、決定された優先順位にしたがって交通情報を出力することにより、交差点1230を通行する車両Cにとって有用となるサービスを、有用性の高い順に提供することができる。
これによって、たとえばエリアが重なった場合や自律航法による演算の誤差などによって一度に複数の交通情報が抽出された場合にも有用性の高い交通情報を確実に出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、車両Cに関する情報、車両Cの周辺の環境に関する情報、あるいは、車両Cの運転者の生体情報など、車両Cあるいは車両Cの挙動に関わる情報に応じて優先順位を適宜決定することができる。これによって、状況の変化に対応して適宜最適な交通情報を優先して出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、車両Cの自車位置がサービス実行エリア1320〜1350内にある場合に交通情報を出力することができる。これによって、自車位置に適した交通情報を出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、各種エリア1310〜1360の位置や大きさを変更することができる。これにより、たとえば、複数車線にまたがるサービス実行エリア、右側車線のみに存在するサービス実行エリア、交差点1230内のみに存在するサービス実行エリアなどのように、様々なサイズおよび形状のサービス実行エリアを柔軟に設定することができる。
これによって、たとえば時間帯の変化にともなう交通量の変動など、交差点1230における状況変化に対応して自車位置に適した交通情報を常に出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、初期位置(X,Y)の通過時に受信した光信号に含まれるエリア指定情報にしたがって、各種エリア1310〜1360の位置や大きさを定めることができる。これによっても、たとえば時間帯の変化にともなう交通量の変動など、交差点1230における状況変化に対応して自車位置に適した交通情報を常に出力し、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、エリア指定情報は、交差点1230の周辺の環境に関する情報、車両Cの周辺の環境に関する情報、あるいは、車両Cの運転者の生体情報など、交差点1230の通行に際して有用な車両Cあるいは車両Cの挙動に関わる情報に応じて更新されたエリア指定情報にしたがって、サービス実行エリアの位置や大きさを定めることができる。
これによって、たとえば時間帯の変化にともなう交通量の変動など、交差点1230における状況変化に対応して自車位置に適した交通情報を常に出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、自車位置が初期位置設定エリア1310に含まれる場合に交通情報の出力を開始し、自車位置が交差点サービス終了エリア1360に含まれる場合に交通情報の出力を停止することができる。これによって、自車位置に適した交通情報を出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、HD1504が記憶する交通情報を更新することで、たとえば、交差点1230における信号の切り換えタイミングが更新された場合や、交差点1230に対する道路の接続関係が変わった場合(新道路の建設など)にも更新された交通情報を提供することができる。これによって、交差点1230における状況変化に対応して自車位置に適した交通情報を出力し、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5によれば、直進車両向けサービス提供エリア1340に存在する車両Cに対して、交差点1230通過後の道路情報などを提供することにより、直進を予定している車両であっても交差点1230を左折するなどして、道路状況に応じて進路変更することが可能となる。これによって、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図るとともに、運転の快適性の向上を図ることができる。
(実施の形態6)
つぎに、実施の形態6について説明する。実施の形態1〜5では、受光装置に遮蔽板を設けた構成としたが、実施の形態6では、受光装置300側ではなく、光ビーコン101側に、光信号の光照射エリアを規制する規制手段を設けた構成である。これにより、光照射エリアの境界を人為的に発生させ、明確な境界を作り出し、また境界の位置を設定することができる。
規制手段により境界の位置を設定することで、光照射エリアの開始地点、終了地点を自由に設定することが可能となる。また、車両102側で各エリア境界の接触イベントを検出することにより位置標定が実現する。位置標定精度は光ビーコン101の設置地点の周辺状況(道路勾配、天候、道路形状など)により変化するため、その周辺状況を考慮した適切な地点にエリア境界を設定することで、位置標定精度の向上が可能となる。なお、車両102側には、受光装置300に遮蔽板402がないナビゲーション装置620が搭載されているものとする。
図20は、実施の形態6にかかる光ビーコンの概要を示す説明図であり、図21は、光ビーコン101の側面図および正面図である。なお、図20において、路面2000の長手方向が車線方向であり、紙面を貫通する方向が車幅方向である。図20において、光ビーコン101には、第1の規制板2001と第2の規制板2002とが設けられている。第1の規制板2001は、光照射エリアの終了地点となる境界B1を規定する規制板であり、第2の規制板2002は、光照射エリアの開始地点となる境界B2を規定する規制板である。
また、図21において、光ビーコン101は、ダウンリンク用の投光装置2101とアップリンク用の受光装置2102とからなる投受光器611を備えている。投光装置2101からは光ビーコン101の設置位置情報を含む光信号を路面2000に向けて照射する。照射された光信号は、第1の規制板2001および第2の規制板2002により境界B2〜B1間で光照射エリアが区画される。
また、図20において、Hbは、光ビーコン101から路面2000に下ろした垂線Pであらわされる光ビーコン101の高さであり、Dfは、垂線Pを路面2000に下ろしたときの交点Cから終了地点B1までの距離である。αは、第1の規制板2001の車線方向の設置角度である。αは垂線Pと第1の規制板2001とのなす角度であるため、HbとDfにより、α=arctan(Df/Hb)であらわすことができる。これにより、終了地点B1で光遮断が可能となる。
図22は、境界B1における光の漏れを示す説明図である。投光装置2101は路面2000に向けて傾いて設置されているため、投光装置2101は、車線方向の長さLbを有する。このLbにより、終了地点となる境界B1から光照射エリアの外側の地点となる境界B3まで光が漏れることとなる。光が漏洩する範囲の車線方向の長さをDaとすると、第1の規制板2001の路面2000に向けて突出する方向の長さLは、以下の式で求めることができる。
L=Hb×Lb/{(Lb+Da)cosα}
この式により、Lを長くすればDaが短くなるため、Daの長さを許容される範囲(精度)に抑えることで、境界B1と境界B3とを一致させることができ、終了地点B1で光遮断が可能となる。
図23は、第1の規制板2001の車幅方向の設置位置を示す説明図である。境界B1が車幅方向にどれだけ有効とするかを設定するためには、投光装置2101を基準とした第1の規制板2001の車幅方向の位置を設定する必要がある。図23に示したように、光ビーコン101の上面から見たときの投光装置2101から第1の規制板2001までの長さLsは、第1の規制板2001の車線方向の設置角度α(図22を参照)を用いると、Ls=Lsinαであらわすことができる。
また、光ビーコン101の設置位置から車線方向における境界B1までの距離をDf、光ビーコン101に向かって右側における境界B1の車幅方向の有効距離をDwrとすると、第1の規制板2001の車幅方向の右側の長さWrは、以下の式で求めることができる。
Wr=(Dwr×Lsinα)/Df
左側も同様に、光ビーコン101の設置位置から車線方向における境界B1までの距離をDf、光ビーコン101に向かって左側における境界B1の車幅方向の有効距離をDwlとすると、第1の規制板2001の車幅方向の左側の長さWlは、以下の式で求めることができる。
Wl=(Dwl×Lsinα)/Df
これらの式により、第1の規制板2001を、投光装置2101から左右にそれぞれWl,Wr分突き出た形状とすることにより、境界B1の車幅方向の範囲を設定することができる。
図24は、第1の規制板2001の実施例を示す側面図であり、図25は、第1の規制板2001の実施例を示す正面図である。図24および図25に示されている数値は、第1の規制板2001の寸法(単位は[mm])と角度(単位は[°])を示している。既存の位置標定方式では位置を光照射エリアに近似するため、約12[m]の測位精度となるが、図24および図25の場合、測位精度は1[m]となる。
この実施の形態6によれば、光ビーコン101側に第1の規制板2001を設けたことにより、各車両102の受光装置300に遮蔽板402を設ける必要がない。したがって、受光装置300に遮蔽板402がない車両102であっても高精度な位置標定をおこなうことができる。
また、光照射エリアの境界を明確に規定することができるため、車両102における位置標定の高精度化を図ることができる。
なお、上述した第1の規制板2001では、角度αを固定させていたが、角度αを可変にしてもよい。具体的には、たとえば、気象条件などの外的要因や、光信号発信部の劣化による光強度の低下などの内的要因などに応じ、光信号(または電磁波による信号)が届きにくい場合に、車両102が、確実に通信を行えるように通信範囲を広くするように角度を変更する。この角度αの変更は、人手でおこなってもよく、また、自動制御によりおこなうこととしてもよい。以下、自動制御する場合の構成について説明する。
図26は、光ビーコン101における第1の規制板2001の自動制御の構成を示す説明図である。図26において、光ビーコン101には、検出部2601と、決定部2602と、角度調節部2603と、補正部2604とから構成されている。検出部2601は、光信号が届きにくい状況を検出する。具体的には、たとえば、降雨計、降雪計、光信号の光量計測装置などにより構成される。
決定部2602は、回転させる角度を決定する。具体的には、たとえば、検出部2601による検出結果により変更後の角度αが決まるため、現在の角度αと比較して回転方向も決定し、そして、不足分の角度に応じたパルス信号を生成する。また、第1の規制板2001の角度を変更した場合には、光照射エリアの終了地点となる境界B1も、変更後の角度αに応じて変化する。したがって、決定部2602は、デフォルトの角度αと変更後の角度αとの差分Δαを補正部2604に送る。決定部2602は、LSIで実現してもよく、また、メモリに記憶されたプログラムをCPUに実行させることとしてもよい。
角度調節部2603は、第1の規制板2001により設定される角度αを調節する。具体的には、決定部2602からパルス信号と回転方向を受け付けると、モータなどの回転制御により、光ビーコン101に取り付けられている第1の規制板2001の一端2001aを回動軸として、他端2001bを揺動させる。これにより角度αが変化する。
補正部2604は、設置位置情報をΔαに応じた距離分補正する。補正後の設置位置情報は、投光装置2101に送られる。これにより、補正後の設置位置情報が投光装置2101から照射される。この場合、車両102側にはあらたな構成を追加する必要がない。補正部2604は、LSIで実現してもよく、また、メモリに記憶されたプログラムをCPUに実行させることとしてもよい。
また、補正部2604を光ビーコン101に設けず、車両102側で補正させる構成としてもよい。この場合、投光装置2101から差分Δαが車両102に照射される。車両102側では、光ビーコン101の設置位置情報とともに差分Δαも受信されるため、差分Δαに応じて変更された境界B1のデフォルトの位置からのずれを算出し、設置位置情報に補正をおこなうことで、自車位置を正確に標定することができる。
このように、第1の規制板2001の設定角度αを調節可能とすることにより、気象状況に応じた位置標定を実現することができる。特に、自動調節することにより、リアルタイムな気象状況に適応することができる。したがって、気候の変化が激しい地域、特に、寒冷地では人手による作業にも限界があるため有用である。
実施の形態6は、図22のDaに示したように光が漏洩する可能性がある。また、第一の規制板2001と車両102に搭載された遮蔽板402がない受光装置2700(受光装置300,1000,1100)との距離が離れるほど、受光装置2700の受光面2701上にできる影の境界がぼやける。従って、実施の形態1〜5に記載した受光装置2700の方が、実施の形態6よりも遮断完了位置を精度良く検出することができる。
さて、受光装置2700に遮蔽板402,1002,1102を設けずに受光面2701自体を斜めに設置することでも光ビーコン101からの光信号を意図的に遮断することができる。以下に遮蔽板を設けなかった場合の光信号の遮断方法を説明する。受光面2701における受光強度は、受光面が光源から発せられる光に対して90度に固定されていると最も大きく、90度から離れていくと小さくなっていくという特徴を持つ。
図27は、受光面の傾きによる受光強度の変化を示す説明図である。図27において、光ビーコンのような光源から発せられる光に対して受光面2701を垂直に固定すると、受光面2701は受光面長Lの分だけ受光することが可能となる(図27(A))。
受光面を斜めに傾けると、光源である光ビーコン101からみて受光面2701は見かけ上小さくなり、例えば受光面2701を光ビーコン101からの光に対して45度に傾けるとL/√2の分だけ受光する(図27(B))。
つまり、受光面2701を光ビーコン101に対して傾ければ傾けるほど、受光可能な受光面長は小さくなり、受光面2701で得られる光強度(受光強度)も小さくなる。さらに、受光面2701を光ビーコン101からの光に対して平行にすると(図27(C))、受光面2701には光が当たらなくなり、光が遮断されていることと同じ状態となる。
図28は、受光面2701の傾きによる光遮断例を示す説明図である。図28では、受光面2701の傾きを利用することで、任意の地点にて光遮断を発生させることが可能となる。例えば、光ビーコン101の直下にて光を遮断する場合、受光面2701を光ビーコン101からの光に対して平行(地面に対して垂直)とすることで実現する。即ち、車両102が光源に近づくにつれて受光面2701に対する光源からの光の入射角度が変化し、光ビーコン101からの光と受光面2701の傾きが平行に近づく。光ビーコン102直下になると、受光面2701と光ビーコン102からの光の角度が平行となるため、光遮断が発生する。
図29は、光遮断開始・完了地点を示す説明図である。図29では、光遮断開始と完了の地点を、受光面の傾きにより設定することが可能となる。例えば光ビーコン101の直下地点を基準地点P0として、車両102から見て基準地点P0から前方2m地点を光遮断完了地点Pfとする場合、受光面2701の設置角度を地面から約66度とすることで実現可能となる。
また、それに伴い光遮断開始地点Psは、車両102から見て基準地点から後方10.125mとなる。さて、車両102が光ビーコン101に近づくにつれ、受光面2701の設置角度と光ビーコン101からの光が平行に近づくため、受光強度は減少する。また、受光強度の減少が開始されるのは、受光強度が最も強い地点である。つまり、受光面2701の設置角度を基準として光ビーコン101からの光入射角度が垂直になる地点が光遮断開始地点Psとなる。
図30は、受光面2701の角度Kらの遮断開始・完了地点算出方法を示す説明図である。光遮断開始地点Psと光遮断完了地点Pfは、受光面2701の傾きの設定により決定することができる。地上から受光面2701までの高さをHc、光ビーコン101までの高さをHbとし、受光面2701をα度だけ傾けたとする。そのときの光ビーコン101直下から遮断開始地点Psまでの距離は(Hb−Hc)/tanαとなり、光ビーコン101直下から遮断完了地点Pfまでの距離は(Hb−Hc)/tan(90゜−α)となる。
上述のように、受光面2701自体を斜め設置することによって、光信号の遮断開始地点Ps、遮断完了地点Pfを設定できると思われる。しかし、遮蔽板を設けずに受光面2701自体を斜めに設置する受光装置2700よりも、上述した実施の形態1〜5による遮蔽板を備えた受信装置のほうが、以下の(1)〜(3)の点で優れている。
(1)光遮断開始・完了地点は個別に設定することができる。
実施の形態1〜5で説明した受光装置においては、光遮断開始の設定に関するパラメータは遮蔽板角度、光遮断完了地点の設定に関するパラメータは遮蔽板高さ(遮蔽板先端部の位置と受光面との関係)と、それぞれ独立していた。従って、光遮断開始地点、光遮断完了地点をそれぞれ別個に設定することが可能である。
これに対し、図27〜図30で説明した遮蔽板を設けずに受光面2701自体を斜めに設置する受光装置2700においては、受光面2701の傾きの角度により光遮断開始地点Ps、遮断完了地点Pfの両方が決まってしまう(図30を参照。)。つまり、遮蔽板を備える実施の形態1〜5で説明した受光装置の方が、遮蔽板を設けずに受光面自体を斜めに設置する受光装置よりも、光遮断地点の設定における柔軟さが優れている。
(2)受光強度が強い地点に光遮断地点を設定することができる。
光ビーコン101の通過後は、受光面2701にほとんど光が届かない。また、光ビーコン101から離れるほど、受光面2701の受光強度は低くなる。受光強度が低いと光の遮断を検出し難いため、受光強度が低い地点で光遮断を検出するためには、受光装置性能を高いものにする必要が生じる。
実施の形態1〜5で説明した受光装置においては、遮蔽板により、光遮断開始地点を光ビーコンの近くに設けることができるので、受光強度が強い地点に遮断開始地点を設定することができる。また、受光強度が強い地点で光を遮断できるので、高精度ではない受光装置であっても遮断を容易に検出しやすい。
これに対し、遮蔽板を設けずに受光面2701自体を斜めに設置する受光装置2700においては、受光強度が強い地点、即ち、光ビーコン101直下付近で光を遮断するためには、受光面2701の設置角度を0〜30°程度に設置する必要がある。受光面2701の設置角度が0°の場合、光遮断開始地点Psは、光ビーコン101からの照射光が地面に対して平行である地点である。
光ビーコン101は受光面2701よりも高い位置に設置されているため、理論上、光ビーコン101からの照射光が地面に対して平行な地点に受光面2701が存在することは不可能である。また、光ビーコン101の通信範囲に入った時点では、すでに光遮断が始まった後の状態となるため、光信号を受信し、該信号内容を解析するに必要な受光強度(受信強度)を得られない可能性がある。
(3)隣車線の光ビーコンの影響を排除できる。
実施の形態1〜5で説明した受光装置においては、遮蔽板に幅を持たせることで隣車線の光ビーコン101からの光信号をカットできる。従って、走行中の車線に設けられた光ビーコン101からの光信号に対しての遮断を精度良く検出することが可能である。これに対し、遮蔽板を設けずに受光面2701自体を斜めに設置する受光装置2700においては、隣車線の光ビーコンからの光信号を遮るものがないため、隣車線からの光を受光して光遮断の誤検出を生む可能性がある。
以上説明したように、この発明によれば、簡便かつ安価な構成で適切に設定された境界位置における光信号を遮蔽することで、自律測位の基準となる基準位置を設定し、高精度な車両の位置標定をおこなうことで、既存の設備の有効活用を図ることができる。
また、この発明によれば、高精度な車両の位置標定により、交差点1230を通行する車両Cにとって有用となるサービスを、交差点1230を通過する車両Cごとに提供することができるので、既存の設備の有効活用を図りつつ、交差点1230を通行する車両C(の運転者)や歩行者などの安全性の向上を図ることができる。
また、上述した各実施の形態1〜6においては光信号の場合について説明したが、光信号に限るものではなく、直進性があり、信号を載せることができる電磁波を発信する通信機器であってもよい。この場合、受信装置を、電磁波を遮蔽できる物質で構成された遮蔽板と電磁波を検出できる受信部とで構成すればよい。
(付記1)移動体に設けられた受光装置であって、
前記移動体と離れて設置された通信機器の発信部から発信される光信号を受光する受光部と、
前記受光部の設置面に対する前記光信号の入射角度が所定の入射角度以上になった場合、当該光信号を遮蔽する遮蔽部と、
を有することを特徴とする受光装置。
(付記2)前記遮蔽部は、
前記受光部への前記光信号の入射光路上に設けられた遮蔽板であることを特徴とする付記1に記載の受光装置。
(付記3)前記所定の入射角度は、
路面から前記発信部までの高さと、当該路面から前記受光部までの高さと、当該発信部の当該路面への垂線から当該受光部までの距離とを用いて設定されることを特徴とする付記1または2に記載の受光装置。
(付記4)前記所定の入射角度は、
前記通信機器から前記受光部までの高さと、前記発信部の地面への垂線から前記受光部までの距離とを用いて設定されることを特徴とする付記1または2に記載の受光装置。
(付記5)路側に設置された通信機器の発信部から発信される光信号を受光する受光部と、
前記発信部から路面への垂線に対する前記光信号の出射角度が所定の出射角度以下になった場合、当該光信号を遮蔽する遮蔽部と、
を有することを特徴とする受光装置。
(付記6)前記遮蔽部は、
前記発信部からの前記光信号の出射光路上に設けられた遮蔽板であることを特徴とする付記5に記載の受光装置。
(付記7)前記所定の出射角度は、
路面から前記発信部までの高さと、当該路面から前記受光部までの高さと、当該発信部の当該路面への垂線から当該受光部までの距離とを用いて設定されることを特徴とする付記5または6に記載の受光装置。
(付記8)前記受光部は、
前記光信号の光量を検知する受光素子によって前記光信号を受光することを特徴とする付記1または2に記載の受光装置。
(付記9)前記受光部は、
前記光信号の受光範囲を検知する受光素子によって前記光信号を受光することを特徴とする付記1または2に記載の受光装置。
(付記10)前記受光部は、
複数の受光素子によって前記光信号を受光することを特徴とする付記1または2に記載の受光装置。
(付記11)移動体に設けられ、該移動体と離れて設置された通信機器の発信部から発信される光信号を遮蔽する遮蔽板であって、
該遮蔽板の先端位置が、前記発信部と該遮蔽板の先端とを結ぶ線が、前記光信号を受信可能な領域のうちの所定の領域において前記光信号を受光する受光部を通るように設定されていることを特徴とする遮蔽板。
(付記12)付記1〜10のいずれか一つに記載の受光装置を搭載した車両に搭載されたコンピュータを通行支援装置として動作させるためのプログラムであって、
当該受光装置における受光状態に基づいて、所定方向に移動する車両と当該車両の移動方向前方に位置する交差点とを通る路上の初期位置を前記車両が通過したことを検出させる検出工程と、
前記検出工程によって前記車両の通過が検出された場合、前記初期位置を通過後に継続して移動する前記車両の当該初期位置に対する相対的な位置に関する情報を取得させる取得工程と、
前記取得工程によって取得された情報に基づいて、前記交差点に対する前記車両の位置を特定させる特定工程と、
前記交差点内の各位置に対応付けられた前記交差点の交通情報の中から、前記特定工程によって特定された位置に対応付けられた交通情報(以下、「特定交通情報」という)を抽出させる抽出工程と、
前記抽出工程によって抽出された特定交通情報を出力させる出力工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする通行支援プログラム。
(付記13)前記抽出工程によって複数の特定交通情報が抽出された場合、前記複数の特定交通情報のそれぞれに関連付けられた優先順位を決定させる決定工程を前記コンピュータに実行させ、
前記出力工程は、
前記決定工程によって決定された優先順位にしたがって前記複数の特定交通情報を順次出力させることを特徴とする付記12に記載の通行支援プログラム。
(付記14)前記決定工程は、
前記車両に関する情報、前記車両周辺の環境に関する情報、あるいは、前記車両の運転者の生体情報のうち少なくとも1種類の情報に基づいて、前記複数の特定交通情報の優先順位を決定させることを特徴とする付記13に記載の通行支援プログラム。
(付記15)前記特定工程によって特定された位置が前記初期位置に対する相対座標であらわされるサービス実行エリア内の位置であるか否かを判定させる判定工程を前記コンピュータに実行させ、
前記出力工程は、
前記判定工程による判定結果に基づいて、前記車両の位置が前記サービス実行エリア内となった場合に前記特定交通情報を出力させ、その後前記車両の位置が前記サービス実行エリア外となった場合に前記特定交通情報の出力を停止させることを特徴とする付記12に記載の通行支援プログラム。
(付記16)前記サービス実行エリアの中心座標と前記サービス実行エリアの大きさとを指定する情報(以下、「エリア指定情報」という)の入力を受け付けさせる受付工程を前記コンピュータに実行させ、
前記判定工程は、
前記受付工程によって受け付けられたエリア指定情報に基づいて、前記特定工程によって特定された位置がサービス実行エリア内の位置であるか否かを判定させることを特徴とする付記15に記載の通行支援プログラム。
(付記17)
前記抽出工程は、
さらに、前記受光装置によって受光された光信号の中から、前記サービス実行エリアに関する情報を抽出させ、
前記判定工程は、
前記抽出工程によって抽出された情報に基づいて、前記サービス実行エリア内の位置であるか否かを判定させることを特徴とする付記15または16に記載の通行支援プログラム。
(付記18)前記受付工程は、
前記交差点周辺の環境に関する情報、前記車両の環境に関する情報、あるいは、前記車両の運転者の生体情報のうち少なくとも1種類の情報の変化に応じて更新されたエリア指定情報の入力を受け付けることを特徴とする付記16に記載の通行支援プログラム。
(付記19)付記1〜10のいずれか一つに記載の受光装置を搭載した車両に搭載されたコンピュータによって実行される方法であって、
当該受光装置における受光状態に基づいて、所定方向に移動する車両と当該車両の移動方向前方に位置する交差点とを通る路上の初期位置を前記車両が通過したことを検出する検出工程と、
前記検出工程によって前記車両の通過が検出された場合、前記初期位置を通過後に継続して移動する前記車両の当該初期位置に対する相対的な位置に関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された情報に基づいて、前記交差点に対する前記車両の位置を特定する特定工程と、
前記交差点内の各位置に対応付けられた前記交差点の交通情報の中から、前記特定工程によって特定された位置に対応付けられた交通情報(以下、「特定交通情報」という)を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程によって抽出された特定交通情報を出力する出力工程と、
を含むことを特徴とする通行支援方法。
(付記20)車両に搭載された通行支援装置であって、
付記1〜10のいずれか一つに記載の受光装置と、
前記受光装置における受光状態に基づいて、所定方向に移動する前記車両と当該車両の移動方向前方に位置する交差点とを通る路上の初期位置を通過したことを検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記初期位置の通過が検出された場合、前記初期位置を通過後に継続して移動する前記車両の前記初期位置に対する相対的な移動量に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された情報に基づいて、前記交差点に対する前記車両の位置を特定する特定手段と、
車両に搭載された記憶装置に記憶されて、前記交差点内の各位置に対応付けられた前記交差点の交通情報の中から、前記特定手段によって特定された位置に対応付けられた交通情報(以下、「特定交通情報」という)を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された特定交通情報を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする通行支援装置。
(付記21)前記初期位置に対する相対座標であらわされるサービス実行エリアの中心座標と前記サービス実行エリアの大きさとを指定する情報(以下、「エリア指定情報」という)の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって入力を受け付けた情報に基づいて、前記特定手段によって特定された位置が前記サービス実行エリア内の位置であるか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記出力手段は、
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記車両の位置が前記サービス実行エリア内となった場合に前記特定交通情報を出力し、その後前記車両の位置が前記サービス実行エリア外となった場合に前記特定交通情報の出力を停止することを特徴とする付記20に記載の通行支援装置。
(付記22)前記抽出手段によって複数の特定交通情報が抽出された場合、前記複数の特定交通情報のそれぞれに関連付けられた優先順位を決定する決定手段を備え、
前記出力手段は、
前記決定手段によって決定された優先順位にしたがって前記複数の特定交通情報を順次出力することを特徴とする付記20に記載の通行支援装置。
(付記23)前記決定手段は、
前記車両に関する情報、前記車両周辺の環境に関する情報、あるいは、前記車両の運転者の生体情報のうち少なくとも1種類の情報に基づいて、前記複数の特定交通情報の優先順位を決定することを特徴とする付記22に記載の通行支援装置。
(付記24)前記特定手段によって特定された位置が前記初期位置に対する相対座標であらわされるサービス実行開始エリアまたはサービス実行終了エリア内の位置であるか否かを判定する判定手段を備え、
前記出力手段は、
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記特定手段によって特定された位置が前記サービス実行開始エリアに含まれる場合に前記特定交通情報の出力を開始し、前記特定手段によって特定された位置が前記サービス実行停止エリアに含まれる場合に前記特定交通情報の出力を停止することを特徴とする付記20に記載の通行支援装置。
(付記25)前記車両の外部に設けられた情報提供サーバから配信される情報に基づいて、前記記憶装置が記憶する前記交通情報を更新する更新手段を有することを特徴とする付記20〜24のいずれか一つに記載の通行支援装置。
(付記26)付記1に記載の受光装置により受信した光信号に含まれる位置情報に基づいて、前記移動体の位置情報を補正する位置情報算出部を有することを特徴とするナビゲーション装置。
(付記27)路側に設置された通信装置であって、
受光装置が搭載された移動体に光信号を照射する照射手段と、
前記光信号の照射エリアの境界が所定の位置となるように前記光信号の照射方向を規制する規制手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
(付記28)前記規制手段は、前記照射エリアのうち、前記光信号が照射される路面の車線方向の境界を規制することを特徴とする付記27に記載の通信装置。
(付記29)前記規制手段は、前記境界のうち、前記通信装置に近い境界を規制することを特徴とする付記28に記載の通信装置。
(付記30)前記規制手段は、前記光信号の照射方向を規制する規制板であることを特徴とする付記29に記載の通信装置。
(付記31)前記規制板の路面に向けて突出する方向の長さは、前記境界の前記車線方向の幅が所定長以下となるように設定されていることを特徴とする付記30に記載の通信装置。
(付記32)前記規制板の車幅方向の長さは、前記境界の前記車幅方向の長さを規制する長さに設定されていることを特徴とする付記30または31に記載の通信装置。
(付記33)前記規制板により規制される前記通信装置に近い境界が前記車線方向に変更するように、前記規制板の設置角度が調節可能であることを特徴とする付記30に記載の通信装置。
(付記34)前記規制板の設置角度は気象状況に応じて調節可能であることを特徴とする付記33に記載の通信装置。
(付記35)前記光信号に含まれている前記通信装置の設置位置情報を、調節後における前記規制板の設置角度に応じて補正する補正手段を備え、
前記照射手段は、前記補正手段によって補正された補正後の設置位置情報を含む光信号を照射することを特徴とする付記33または34に記載の通信装置。
(付記36)前記光信号に含まれている前記通信装置の設置位置情報を、調節後における前記規制板の設置角度に応じて補正する補正手段を備え、
前記照射手段は、前記補正手段によって補正された補正後の設置位置情報を含む光信号を照射することを特徴とする付記35に記載の通信装置。
(付記37)前記照射手段は、前記通信装置の設置位置情報と調節後における前記規制板の設置角度に関する情報とを含む光信号を照射することを特徴とする付記35に記載の通信装置。