JP4946721B2 - 水素透過膜およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、水素ガスを含む混合ガスから水素ガスを選択的に透過および分離させるための水素透過膜およびその製造方法に関する。
従来、半導体用シリコン製造工程において還元ガスとして使用される高純度水素を精製する装置において、Pd膜またはPd合金膜を用いた水素透過膜が使用されている。また、近年、低公害エネルギーとして燃料電池が注目されているが、この燃料電池の燃料として用いる水素ガスを精製および分離する装置に、Pd膜またはPd合金膜を用いた水素透過膜を適用することが検討されている。
かかるPd膜およびPd合金膜の水素透過性は、様々なガス成分の中で水素ガスだけが、膜中に水素原子となって溶解し、膜の反対側まで拡散し、水素原子同士が結合して再び水素分子に戻ることにより、発現する。
水素透過膜の水素透過流量J(molH2・m-2・sec-1)は、水素透過係数φ(molH2・m-1・sec-1・Pa-0.5)、加圧側の水素分圧Ph(Pa)、透過側の水素分圧Pl(Pa)、および水素透過膜の膜厚d(m)を用いて、次式のように表される。
J=φ・(Ph0.5−Pl0.5)/d
この式から、膜厚が薄いほど、水素透過流量Jが増加することが理解される。例えば、温度を400℃、加圧側の水素分圧を0.2MPa、透過側の水素分圧を常圧とした条件で、膜厚が20μmであるPd膜の水素透過流量Jが20mL/(min・cm2)であった場合、膜厚を1/20の1μmにすると、水素透過流量Jは、20倍の400mL/(min・cm2)まで増加する。ここで、Pdの使用量は膜厚に比例するので、Pdの使用量は1/20となる。このため、膜厚を薄くすることは、水素透過膜の水素透過性および材料費の両面から有利である。
ただし、膜厚を薄くすると、ピンホール欠陥が増加して、水素透過膜の選択機能が損なわれるという問題がある。
これに対して、特許文献1には、浮遊型コールドクルーシブル溶解法により得たPd合金インゴットから、ピンホールの原因となるインゴット中の介在物を除去し、該インゴットを鍛造および圧延することにより、水素透過膜を得る方法が開示されている。しかしながら、圧延により得られる水素透過膜の膜厚には限界があり、膜厚が5μm以下で、かつ、リークのない水素透過膜を得ることは困難である。
また、特許文献2には、複数のTa箔を重ねて、両面からPd箔で挟んで、ホットプレスにより接合した後、圧延する水素透過膜の製造方法が開示されている。この方法では、Ta箔を重ねることで、それぞれのTa箔にピンホールが生じていても、Ta箔全体としてリークの可能性を減ずることにより、透過する水素の純度を向上させている。しかしながら、ホットプレスを用いて接合する際に、リークの原因となる欠陥が導入されやすく、また、圧延により膜を得ていることから、同様に、膜厚が5μm以下で、かつ、リークのない水素透過膜を得ることは困難である。また、TaとPdの拡散接合層が厚くなると、水素透過性を高く維持することができないという問題もある。
一方、特許文献3には、スパッタリング法を用いて、基板上にPd膜またはPd合金膜を形成し、基板から剥離することで、圧延では作製することが困難である膜厚5μm以下のPd合金膜を得ることが開示されている。しかしながら、ピンホールの発生を抑制するためには、スパッタリングに用いる基板の洗浄およびハンドリングなど、製造工程における高度のクリーン化が要求され、かかるクリーン化が不十分であるとピンホールの発生が増加してしまうことから、水素透過膜の製造において品質の管理に手間がかかるという問題がある。
特開2006−175379号公報 特開2004−202479号公報 特開2005−218963号公報
本発明は、スパッタリング法を用いて、膜厚が薄く、水素透過性が良好である水素透過膜を得る際に、高度なクリーン化を必要とせずに、ピンホールの発生を効果的に抑制しうる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、このような課題に対して鋭意研究を重ねた結果、スパッタリング法により得られたPd膜またはPd合金膜を成膜する際に、基板上に第1層を形成し、その後、第1層を洗浄することにより、基板に起因し、第1層のピンホールの形成の要因となった異物を除去し、その後、第2層を積層させることにより、第1層のピンホールを封孔すると共に、第2層におけるピンホールの形成が抑止されることにより、全体としてピンホールのないPd膜またはPd合金膜が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
本発明は、膜厚が5μm以下の水素透過膜の製造方法に係る。特に、本発明の水素透過膜の製造方法は、スパッタリング法で基板上に、膜厚が0.05μm以上の第1のPd層またはPd合金層を形成する工程と、該第1のPd層またはPd合金層を洗浄する工程と、該洗浄した第1のPd層またはPd合金層の上に、スパッタリング法で、膜厚が0.1μm以上であって、該第1のPd層またはPd合金層の膜厚よりも厚い、第2のPd層またはPd合金層を積層して、該第1のPd層またはPd合金層と該第2のPd層またはPd合金層からなり、膜厚が0.15〜5μmである一体構造膜を得る工程と、前記一体構造膜を前記基板から剥離する工程と、前記一体構造膜を400〜1200℃の温度にて、真空中または不活性雰囲気中で熱処理する工程とを有する。
前記洗浄工程が、ガス噴付け、ブラッシングおよび超音波洗浄のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記第1のPd層またはPd合金層を形成する工程の前に、前記基板を洗浄する工程を有する。
また、前記Pd合金層が、Pd−Ag合金、Pd−Cu合金、Pd−Y合金、およびPd−希土類金属合金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、前記第2のPd層またはPd合金層の上面外周部に枠体を形成することが好ましい。
本発明に係る水素透過膜の製造方法により、前記第1のPd層またはPd合金層に形成されたピンホールが、前記積層した第2のPd層またはPd合金層で封孔され、かつ、第1層と第2層の一体構造膜としてはピンホール欠陥のない水素透過膜が得られる。
本発明により、製造工程における高度のクリーン化を要求することなく、スパッタリング法により、ピンホールによる欠陥がなく、水素透過性が良好である5μm以下の水素透過膜を得ることができる。従って、水素を精製および分離する装置の材料である水素透過膜を低コストでかつ効率的に提供できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
本発明の水素透過膜の製造方法の一実施形態は、図1に示すように、基板洗浄工程(S1)、スパッタリング工程(S2)、膜洗浄工程(S3)、スパッタリング積層工程(S4)、枠体形成工程(S5)、剥離工程(S6)および熱処理工程(S7)からなる。図2に、水素透過膜の形成過程を概略的に示す。
まず、基板洗浄工程(S1)において、Pd層またはPd合金層を形成するための基板1を準備し、洗浄する(図2(a)参照)。
基板1の材料としては、スパッタリング工程(S2)で成膜中に第1のPd層またはPd合金層2が自然剥離しない程度に強い付着力が得られ、剥離工程(S16)で基板上のPd層・Pd合金層を剥離可能であれば、任意の材料を用いることができる。例えば、平滑なガラス基板、または表面に酸化物もしくは窒化物が被覆された金属板やSiウェハを用いることができる。
基板1には、帯電により、その表面に異物が静電気的に付着する。スパッタリング工程(S2)において、成膜されるPd層またはPd合金層にピンホールが発生すること自体を完全に抑止する必要はないため、当該工程を粉塵を抑制するクリーンルームなどの特別な設備内で行う必要はなく、また、清浄な基板が用意できる場合には、当該工程を省略することができる。
基板1の洗浄方法としては、例えば、超音波洗浄や蒸気洗浄が挙げられる。また、代替的または付加的に、スパッタリング装置内で基板1にスパッタエッチングを施してもよい。基板1の洗浄により、基板1に起因するピンホール発生原因を排除することができる。
なお、同様に、スパッタリング工程(S2)におけるピンホールの発生を完全に抑制する必要はないため、洗浄後に基板1をスパッタリング装置に取り付ける際に、この作業を、粉塵を抑制するクリーンルームなどの特別な設備内で行う必要もない。
次いで、スパッタリング工程(S2)において、洗浄後の基板1を装着したスパッタリング装置を用いて、スパッタリング法により、基板上に第1のPd層またはPd合金層2を形成する(図2(b)参照)。
第1のPd層またはPd合金層2の材料としては、純Pd、Pd−Ag合金、Pd−Cu合金、Pd−Y合金、およびPd−希土類金属合金などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、スパッタリング条件は、Pd層やPd合金層を形成するための公知の条件に従えばよい。
第1のPd層またはPd合金層2には、基板1に付着する異物に起因するピンホールが形成されてしまうため、また、一体構造膜の全体の膜厚が薄い方がよいことから、基本的には、第2のPd層またはPd合金層3よりも薄くする。ただし、0.05μm未満では、次の膜洗浄工程(S3)で破損してしまう。
次いで、膜洗浄工程(S3)において、基板1に付着したままの第1のPd層またはPd合金層2にガス噴付け、ブラッシングおよび超音波洗浄のうちの少なくとも1つの方法を用いて洗浄を行う。ガス噴付けは、乾燥圧縮空気や窒素ガスなどの不活性圧縮ガス、および代替フロンガススプレーなどを用いて行うとよい。ブラッシングは、除電ブラシ、不織布および無塵布などで膜表面を拭いて行うとよい。超音波洗浄はエタノール、アセトンおよびイオン交換水などを用いて行うとよい。また、ガス噴付け、ブラッシングおよび超音波洗浄などを適時組み合わせて行ってもよい。この工程で基板1や、膜状の第1のPd層またはPd合金層2に付着していた異物が除去される。
なお、膜洗浄工程(S3)を行わないと、異物が介在したまま第2層も形成され、剥離工程(S6)で脱落して水素透過膜8(図2(l)記載)全体にピンホールを形成することになる。
ここで、第1のPd層またはPd合金層2は導電性があるので、除去された異物の静電気的な再付着が抑制され、絶縁性の基板洗浄工程(S1)よりも効率よく異物を除去することができる。そして、異物が除去されると第1のPd層またはPd合金層2にピンホール2aが生じて基板1が露出する(図2(c)参照)。しかしながら、スパッタリング積層工程(S4)において、第2のPd層またはPd合金層3が成膜される際に、そのピンホールの原因となる異物が除去され、かつ、ほとんど再付着することもないため、当該異物が第1層の表面上にはほとんど存在しないこととなる。
次いで、スパッタリング積層工程(S4)で、第2のPd層またはPd合金層3を積層する。この際、ピンホール2aは、第2のPd層またはPd合金層3の成膜時に封孔される(図2(d)参照)。
スパッタリング工程(S2)と同様に、スパッタリング積層工程(S4)において積層されるPd層またはPd合金層3の材料としては、純Pd、Pd−Ag合金、Pd−Cu合金、およびPd−希土類金属合金などが挙げられるが、これらに限定されない。また、スパッタリング条件は、Pd層やPd合金層を形成するための公知の条件に従えばよい。
スパッタリング工程(S2)とスパッタリング積層工程(S4)で得られるPd層またはPd合金層2,3の合計の厚さは、0.15〜5μmとする。厚さが5μmを超えると、最終的に得られる水素透過膜8(図2(l)記載)において、水素透過性が不十分となる。一方、合計の厚さが0.15μm未満では、一体構造膜4(図2(i)記載)を基板1から剥離することが困難となる。なお、薄膜を損傷することなく、基板1からの剥離などのハンドリングを可能とする手段がある場合には、0.15μm未満であってもよい。
このスパッタリング積層工程(S4)における第2のPd層またはPd合金層3の厚さは0.1μm以上であることが好ましい。0.1μm未満であると第1のPd層またはPd合金層2のピンホールの封孔部分の膜厚が0.1μm未満となり、一体構造膜4(図2(f)記載)を損傷しないで剥離させることが困難となる。損傷により、ピンホールが一体構造膜4の厚さ方向全体にわたり貫通してしまい、リーク欠陥の原因となる。
次いで、枠体形成工程(S5)において、第2のPd層またはPd合金層3にメタルマスク5を載置してマスキングを施し(図2(e)参照)、この第2のPd層またはPd合金層3の上面外周部に、スパッタリングにより金属膜を成膜して、枠体6を形成する(図2(f)参照)。該金属膜としては、PdまたはPd合金が好ましいが、Pd層またはPd合金層と反応して脆い金属間化合物を生成しない材料、例えば、CuまたはCu合金を用いることができる。
これにより、一体構造膜4を基板1より剥離させる際、および、剥離した一体構造膜4を重ね合わせる際に、ハンドリングが容易となる。該枠体6の厚さは、5〜50μmとすることが好ましい。また、枠体6は、Pd層またはPd合金層3の外周縁より2〜20mmの幅に形成することが好ましい。
なお、枠体形成工程(S5)はスパッタリング工程(S2)の前に行ってもよい(図3および図4参照)。
次いで、メタルマスク5を取り除いた後(図2(g)参照)、剥離工程(S6)において、Pd層またはPd合金層2,3、メタルマスク5および枠体6からなる一体構造膜4を基板1から剥離する(図2(h)(i)参照)。基板1から一体構造膜4を剥離するには、例えば、ピンセットPを用いて機械的に引き剥がしてもよいし、水素ガスを用いて剥がしてもよい。また、例えば、硝酸などの無機酸に浸漬することにより剥離してもよい。かかる手段は、Pd層またはPd合金層の膜厚および組成により、適宜、選択される。
次いで、熱処理工程(S7)において、剥離工程(S6)により得られた前記一体構造膜4を、真空中または不活性雰囲気中で熱処理する。これは、基板上から剥離したままのPdまたはPd合金からなるスパッタ膜は、硬く脆性的で損傷しやすいからである。
真空中または不活性雰囲気中での熱処理は、該一体構造膜4を平らな板7の上に載せて行う(図2(j)(k)参照)。平らな板7としては、アルミナやジルコニアなどのセラミックス焼結板、または、アルミナやTiNなどのセラミックスを被覆した金属板などを用いることができる。金属板を単体で用いるとPdと反応するため、金属板を単体で用いることは好ましくない。要するに、Pdと化学的に反応しない材料であればよい。
真空中または不活性雰囲気中の熱処理温度は、400〜1200℃とする。400℃より低い温度では、完成品である水素透過膜8(図2(l)参照)は硬く脆性的で損傷しやすい。一方、1200℃を超える温度では、水素透過膜8が変形するおそれがある。
本発明では、スパッタリング法により、5μm以下のきわめて薄い水素透過膜8が得られ、水素透過性を向上させることができる。また、このような薄膜でありながら、導電性のある膜の状態で洗浄することによって基板1や、第1のPd層またはPd合金層2に付着した異物を効率よく除去することができ、第2のPd層またはPd合金層3でのピンホールの形成が抑制される。また、続く第2のPd層またはPd合金層3を積層する工程において、この第2のPd層またはPd合金層3で第1のPd層またはPd合金層2に形成されたピンホール2aを封孔することにより、水素透過膜8の厚さ方向の全体に渡るピンホールの発生を防止することができる。
以上、本発明を説明してきたが、本発明は前述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本質を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることはいうまでもない。
(実施例1)
実施例1の工程を図1および図2を用いて説明する。
基板洗浄工程(S1):50mm×50mmの大きさのクラウンガラス基板1(松浪硝子工業株式会社製)を準備し(図2(a)参照)、エタノール中で20分間、超音波洗浄した。
スパッタリング工程(S2):基板1をPdターゲットと共に、スパッタリング装置(ULVAC社製、SBH2306RDE)に取り付けた。その後、スパッタリング装置内を5×10-4Pa以下に真空排気した後、Arガス圧1Paにおいて、基板洗浄のためにRF200Wで基板のスパッタエッチングを行った。続いて、PdターゲットにDC1.0Aの電流を流し、基板上に膜厚が0.5μmであるPd層2を形成した(図2(b)参照)。
膜洗浄工程(S3):基板1に付着したままのPd層2をエタノール中で20分間、超音波洗浄した。該洗浄により、ピンホール2aが形成された(図2(c)参照)。
スパッタリング積層工程(S4):超音波洗浄したPd層2が形成された基板1を再びスパッタリング装置に取り付けて、5×10-4Pa以下に真空排気した後、Arガス圧1Paにおいて、PdターゲットにDC1.0Aの電流を投入して、前記工程(S3)で膜洗浄したPd層2の上にさらにPd層3を1.5μm形成した(図2(d)参照)。
枠体形成工程(S5):Pd層3の上に、30mm×30mmの大きさのSUS430製メタルマスク5を取り付け(図2(e)参照)、再び、スパッタリング装置内を5×10-4Pa以下に真空排気した後、PdターゲットにDC1.0Aの電流を流し、前記Pd層3の上面外周部に、膜厚8μmのPd層を積層して、枠体6を形成した(図2(f)参照)。
剥離工程(S6):メタルマスク5を取り除いた後(図2(g)参照)、Pd層2,3,6からなる一体構造膜4をピンセットPで摘んで基板1から引き剥がした(図2(h)(i)参照)。剥離した一体構造膜4は、外形が50mm×50mmで30mm×30mmより外側が10μmの厚さの枠体6が形成されたものであって、枠体6の内側は、合計膜厚が2.0μmのPd膜である。
熱処理工程(S7):剥離した一体構造膜4をアルミナ板7に載せて(図2(j)(k)参照)、真空加熱炉に入れ、5×10-3Paまで真空排気した後、500℃で2時間、熱処理を施して水素透過膜8を得た(図2(l)参照)。
得られた水素透過膜8を光学顕微鏡で観察したところ、開口したピンホールによる透過光は認められなかった。
次に、得られた水素透過膜8をφ10mmの大きさに切り取って、多孔質支持体と重ね合わせて、本発明者が作製した透過面φ8mmの水素透過測定装置に取り付けた。水素透過測定装置内を真空排気した後、窒素ガスを導入することにより、水素透過膜8に0.8MPaの加圧を行った結果、ピンホールからの窒素ガスのリークは認められなかった。
次に、水素透過測定装置の電気炉を加熱して、500℃に昇温し、窒素ガスから水素ガスに置換して、水素透過膜に0.2MPaの圧力を加えたところ、マスフローメータ(日本アエラ株式会社製、FM−390)により、1atm、0℃で、114cm3/minの水素透過流量が測定された。測定された水素透過流量は、Pdの公知の水素透過係数から計算された、膜厚が2μmのPd膜の水素透過流量と一致した。その測定結果を表1に示す。
以上のように、本実施例では、ピンホールの発生を抑止し、膜厚が薄く、水素透過性が良好である水素透過膜が得られた。
(実施例2)
この実施例2の工程を図3および図4を用いて説明する。
基板洗浄工程(S1):50mm×50mmの大きさのクラウンガラス基板1(松浪硝子工業株式会社製)を準備し(図4(a)参照)、エタノール中で20分間、超音波洗浄した。
枠体形成工程(S5):クラウンガラス基板1の上に30mm×30mmの大きさのSUS430製メタルマスク5を取り付け(図4(b)参照)、Pd−23mol%Ag合金ターゲットと共に、スパッタリング装置(ULVAC社製、SBH2306RDE)に取り付けた。その後、スパッタリング装置内を5×10-4Pa以下に真空排気した後、Arガス圧1Paにおいて、基板洗浄のためにRF200Wで基板1のスパッタエッチングを行った。続いて、Pd−Ag合金ターゲットのみにDC1.0Aの電流を流し、基板上のマスク以外の部分に膜厚が9μmのPd−Ag合金層からなる枠体6を形成した(図4(c)参照)。
スパッタリング工程(S2):基板1からメタルマスク5を取り外し(図4(d)参照)、再びスパッタリング装置を5×10-4Pa以下に真空排気した後、Arガス圧1Paにおいて、Pd−Ag合金ターゲットのみにDC1.0Aの電流を流して膜厚0.1μmのPd−Ag合金層2を形成した(図4(e)参照)。
膜洗浄工程(S3):Pd−Ag合金層2の表面を乾いた不織布でブラッシングした後に、代替フロンガスをスプレーした。該洗浄により、ピンホール2aが形成された(図4(f)参照)。
スパッタリング積層工程(S4):再びスパッタリング装置内を5×10-4Pa以下に真空排気した後、Arガス圧1Paにおいて、Pd−Ag合金ターゲットにDC1.0Aの電流を流し、基板上に膜厚が0.9μmであるPd−Ag合金層3を形成した(図4(g)参照)。
剥離工程(S6):Pd−Ag合金層2,3付きの基板1をスパッタリング装置から取り出し、真空グローブボックスに入れて、真空排気し、95%窒素−5%水素の混合ガスを導入して、Pd−Ag合金層2,3と同じくPd−Ag合金製の枠体6とからなる一体構造膜4を基板1から剥離した(図4(h)(i)参照)。剥離した一体構造膜4は外形が50mm×50mmで30mm×30mmより外側が10μmの厚さの枠体6が形成されたものであって、枠体6の内側は合計膜厚が1μmのPd−23mol%Ag膜であった。
熱処理工程(S7):アルミナ板7に載せて(図4(j)(k)参照)、真空加熱炉に入れ、5×10-3Paまで真空排気した後、1000℃で2時間、熱処理を施して水素透過膜8を得た(図4(l)参照)。
得られた水素透過膜8を光学顕微鏡で観察したところ、開口したピンホールによる透過光は認められなかった。
次に、実施例1と同様にして水素透過測定装置で窒素ガス加圧したところ、窒素ガスのリークは認められなかった。続いて、実施例1と同様にして水素透過流量を測定したところ、1atm、0℃換算で、265cm3/minであった。測定された水素透過流量は、Pd−23mol%Ag合金の公知の水素透過係数から計算された、膜厚が1μmであるPd−23mol%Ag合金膜の水素透過流量と一致した。その測定結果を表1に示す。
以上のように、本実施例では、ピンホールの発生を抑止し、膜厚が薄く、水素透過性が良好である水素透過膜が得られた。
(比較例1)
膜洗浄工程(S3)を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてPd膜を作製した。光学顕微鏡で観察したところ、水素透過膜8には、開口したピンホールによる透過光が認められた。ピンホール密度は0.44個/cm2 であった。また、実施例1と同様にして水素透過測定装置で窒素ガス加圧したところ、窒素ガスのリークが生じた。ピンホールから水素が洩れ出てしまうので、水素透過流量測定は実施しなかった。その結果を表1に示す。
(比較例2)
スパッタリング工程(S2)の膜厚を1.95μm、スパッタリング積層工程(S4)の膜厚を0.05μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして水素透過膜8を作製した。光学顕微鏡で観察したところ、水素透過膜8には、封孔したピンホール2aの部分の破損によって再び開口し、ピンホールによる透過光が認められた。ピンホール密度は0.21個/cm2 であった。また、実施例1と同様にして水素透過測定装置で窒素ガス加圧したところ、窒素ガスのリークが生じた。ピンホールから水素が洩れ出てしまうので、水素透過流量測定は実施しなかった。その結果を表1に示す
(比較例3)
熱処理工程(S7)の温度が300℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてPd膜を作製した。光学顕微鏡で観察したところ、水素透過膜8には、開口したピンホールによる透過光は認められなかった。しかしながら、実施例1と同様にして水素透過測定装置で窒素ガス加圧したところ、水素透過膜8が破損して窒素ガスのリークが生じた。水素透過膜として使用できなかったため、水素透過流量は測定不能であった。その結果を表1に示す。
(実施例3)
基板洗浄工程(S1)およびスパッタリング工程(S2)のスパッタエッチングを行わなかった以外は実施例1と同様にして水素透過膜8を作製した。光学顕微鏡で観察したところ、水素透過膜8には、開口したピンホールによる透過光は認められなかった。また、実施例1と同様にして水素透過測定装置で窒素ガス加圧しても窒素ガスのリークは認められなかった。続いて、実施例1と同様にして水素ガスに置換して透過流量を測定した結果、1atm、0℃換算で、116cm3/minの水素透過流量が測定された。測定された水素透過流量は、Pdの公知の水素透過係数から計算された、膜厚が2μmのPd膜の水素透過流量と一致した。その測定結果を表1に示す。
以上のように、この実施例3では、基板洗浄を実施なくても水素透過膜のピンホールの発生は抑止され、膜厚が薄く、水素透過性が良好である水素透過膜が得られた。
(比較例4)
スパッタリング工程(S2)の膜厚を2μmとし、膜洗浄工程(S3)とスパッタリング積層工程(S4)を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にして、水素透過膜8を得た。光学顕微鏡で観察したところ、水素透過膜8には、開口したピンホールによる透過光が認められた。ピンホール密度は0.32個/cm2 であった。また、実施例1と同様にして水素透過測定装置で窒素ガス加圧したところ、窒素ガスのリークが生じた。ピンホールから水素が洩れ出てしまうので、水素透過流量測定は実施しなかった。その結果を表1に示す。
Figure 0004946721
図1は、本発明の水素透過膜の製造方法の第1実施形態および実施例1の流れを示す説明図である。 図2は、本発明の水素透過膜の製造方法の第1実施形態および実施例1の工程図である。 図3は、本発明の水素透過膜の製造方法の実施例2の流れを示す説明図である。 図4は、本発明の水素透過膜の製造方法の実施例2の工程図である。
符号の説明
1 基板
2 第1のPd層またはPd合金層
2a ピンホール
3 第2のPd層またはPd合金層
4 一体構造膜
5 メタルマスク
6 枠体
7 平らな板(アルミナ板)
8 水素透過膜
P ピンセット
S1 基板洗浄工程
S2 スパッタリング工程
S3 膜洗浄工程
S4 スパッタリング積層工程
S5 枠体形成工程
S6 剥離工程
S7 熱処理工程

Claims (6)

  1. 膜厚が5μm以下の水素透過膜の製造方法であって、
    スパッタリング法で基板上に、膜厚が0.05μm以上の第1のPd層またはPd合金層を形成する工程と、
    該第1のPd層またはPd合金層を洗浄する工程と、
    該洗浄した第1のPd層またはPd合金層の上に、スパッタリング法で、膜厚が0.1μm以上であって、該第1のPd層またはPd合金層の膜厚よりも厚い、第2のPd層またはPd合金層を積層して、該第1のPd層またはPd合金層と該第2のPd層またはPd合金層からなり、膜厚が0.15〜5μmである一体構造膜を得る工程と、
    前記一体構造膜を前記基板から剥離する工程と、
    前記一体構造膜を400〜1200℃の温度にて、真空中または不活性雰囲気中で熱処理する工程と、
    を有する水素透過膜の製造方法。
  2. 前記洗浄工程が、ガス噴付け、ブラッシングおよび超音波洗浄のうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の水素透過膜の製造方法。
  3. 前記第1のPd層またはPd合金層を形成する工程の前に、前記基板を洗浄する工程を有する請求項1に記載の水素透過膜の製造方法。
  4. 前記Pd合金層が、Pd−Ag合金、Pd−Cu合金、Pd−Y合金、およびPd−希土類金属合金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の水素透過膜の製造方法。
  5. 前記第2のPd層またはPd合金層の上面外周部に枠体を形成する請求項1に記載の水素透過膜の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の水素透過膜の製造方法により得られ、前記第1のPd層またはPd合金層に形成されたピンホールが、前記積層した第2のPd層またはPd合金層で封孔されていることを特徴とする水素透過膜。
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