JP4945947B2 - 路面状態判定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輪速度センサの検出信号に基づいて路面状態の判定を行う路面状態判定装置に関するものである。
従来、特許文献1において、車輪速度センサの検出信号に基づいて車輪速度の加減速度を求め、この加減速度の設定時間内の状態に基づいて、具体的には設定時間内に求められた加減速度が設定加速度以上もしくは設定減速度以下の値を繰り返す場合に、路面状態が悪路であると判定し、悪路用と通常用とでABS制御の切り替えを行うABS制御装置が提案されている。
特開平11−78840号公報
図8は、車輪速度センサJ1の車体に取り付けたときの様子を示した模式図である。この図に示されるように、車輪速度センサJ1は、所定数の歯が形成されたセンサリング(ロータ)J2から所定間隔空けた位置、つまりセンサリングJ2から所定のエアギャップが形成されるように配置され、外周部に備えられるスプリングスペーサJ3にて車体に固定される。
そして、センサリングJ2の回転に伴ってセンサリングJ2に形成された歯部の山と谷が入れ替わると、車輪速度センサJ1は、その入れ替わりに応じたパルス信号をセンサ出力として発生する。このため、車輪速度センサJ1からのセンサ出力を受け取った図示しないECUは、所定期間内に受け取ったパルス信号の数から車輪速度の演算を行う。
このとき、車輪速度センサJ1のセンサ出力は、車輪速度センサJ1とセンサリングJ2の間のエアギャップが所定間隔とされているため、所望の大きさの出力となり、ECUにセンサ出力が的確に入力される。
しかしながら、車速が極低速度の場合や車輪速度センサJ1とセンサリングJ2の間が所定間隔以上に空いた場合には、センサ出力が期待する大きさよりも低くなり、ECUがパルス信号を取りこぼしてしまうことがある。このようなパルス信号の取りこぼしが発生すると、ECUで正確な車輪速度演算が行えなくなり、ECUで路面状態が良路であるにもかかわらず悪路であると誤判定してしまうことがある。
本発明は上記点に鑑みて、車速が極低速度の場合や車輪速度センサからセンサリングまでの距離が所定間隔以上に空いた場合に、路面状態を誤判定してしまわない路面状態検出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車輪速度検出手段(100)によって車輪速度センサ(1FL〜1RR)からのパルス信号の検出信号に基づいて車輪速度を検出し、検出した車輪速度に基づいて路面状態判定手段(220)で路面状態を判定する路面状態判定装置において、車輪速度検出手段(100)が検出した車輪速度に基づいて正しい車輪速度が求められる速度域を設定する速度域設定手段(110〜140)と、車輪速度検出手段(100)で検出した車輪速度が速度域設定手段(110〜140)で設定された速度域であるか否かを判定し、速度域でない場合には路面状態判定手段(220)による路面状態の判定を実行させず、速度域である場合に路面状態判定手段(220)による路面状態の判定を実行させる路面状態判定実行手段(210)と、を備えることを特徴としている。
このように、車輪速度検出手段(100)が検出した車輪速度に基づいて正しい車輪速度が求められる速度域を設定し、正確な車輪速度演算が行える場合にのみ、正しい車輪速度に基づいて路面状態判定を行うようにしている。したがって、路面状態が良路であるにもかかわらず悪路であると誤判定されることを防止できる。これにより、車速が極低速度の場合や車輪速度センサ(1FL〜1RR)からセンサリングまでの距離が所定間隔以上に空いた場合に、路面状態を誤判定してしまわない路面状態検出装置とすることができる。
例えば、請求項2に示されるように、速度域設定手段(110〜140)に変動幅判定手段(110)を備え、これによって車輪速度検出手段(100)が検出した車輪速度の所定時間毎の変動幅を求め、該変動幅がしきい値以下であると判定した場合の車輪速度を正しい車輪速度が求められる速度域として設定することができる。
この場合、請求項3に示されるように、速度域設定手段(110〜140)は、パルス信号のパルス数を積算した積算パルス数が所定パルス数分となる間、変動幅判定手段(110)によって変動幅がしきい値以下であると判定された場合に、そのときの車輪速度を正しい車輪速度が求められる速度域として設定すると好ましい。
請求項4に記載の発明では、路面状態判定実行手段(210)によって速度域でないと判定された場合に、悪路判定禁止手段(240)にて悪路と判定することを禁止して良路であると判定することを特徴としている。
このように、速度域でないと判定された場合に良路と断定することで、良路であるにもかかわらず悪路であると判定されることを防止することができる。
請求項5に記載の発明では、路面状態判定実行手段(210)によって速度域でないと判定された場合に、路面状態判定手段(220)で前回判定された路面状態の判定結果を保持することを特徴としている。
このように、前回の路面状態の判定結果がある場合には、一般的に路面状態が急変し難いことから、前回得た判定結果を保持することで、ほぼ正確な路面状態を求めることが可能となる。
請求項6に記載の発明は、履歴判定手段(250)にて、路面状態判定実行手段(210)によって速度域でないと判定された場合に、以前に速度域であると判定された履歴があるか否かを判定し、履歴がないと判定された場合には、悪路判定禁止手段(240)により、良路であると判定し、履歴があると判定された場合には、路面状態判定手段(220)で以前判定された路面状態の判定結果を保持することを特徴としている。
このように、速度域であると判定された履歴があるか否かに応じて、請求項4に記載の発明と請求項5に記載の発明とを切替えて適用することも可能である。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態が適用された路面状態判定装置が備えられる車両走行制御装置のブロック構成を示したものである。以下、この図を参照して車両走行制御装置の構成について説明する。
車両走行制御装置は、車輪速度センサ1FL、1FR、1RL、1RR、統合ECU2、ブレーキ装置3FL、3FR、3RL、3RRを備えている。
車輪速度センサ1FL〜1RRは、各車輪4FL、4FR、4RL、4RRそれぞれに備えられており、センサリングから所定間隔のエアギャップを設けた位置に例えばスプリングスペーサを介して保持されている。車輪速度センサ1FL〜1RRには、電磁ピックアップ式など周知の構造のものが用いられている。
この車輪速度センサ1FL〜1RRは、各車輪4FL〜4RRの回転に伴うセンサリングの回転により、センサリングに形成された歯部の山や谷が入れ替わると、車輪速度センサ1FL〜1RRがその入れ替わりに応じたパルス信号をセンサ出力として発生する。
統合ECU2は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムにしたがって、ABS制御やトラクション制御など、車両走行に関わる制御を実行するものである。この統合ECU2が本発明における路面状態判定装置を構成するものである。
具体的には、統合ECU2は、車輪速度センサ1FL〜1RRが発生させるパルス信号のセンサ出力を受け取り、予め記憶してある規定時間内に入力されたパルス信号の数から各車輪4FL〜4RRの車輪速度を求める。
さらに、統合ECU2は、必要に応じて求められた各車輪4FL〜4RRの車輪速度を利用して車体速度の演算などを行うと共に、車体速度と各車輪4FL〜4RRの車輪速度との偏差からスリップ率を求める。これに基づいて、統合ECU2にて、スリップ率がトラクション制御開始条件となる所定のしきい値を超えるか否かの判定を行うことでトラクション制御を実行したり、スリップ率がABS制御開始条件となる所定のしきい値を超えるか否かの判定を行うことでABS制御を実行したりする。そして、トラクション制御やABS制御の実行時には、統合ECU2からブレーキ装置3FL〜3RRに向けて制御信号を出力することで、ブレーキ装置3FL〜3RRの制動力を調整する。
ブレーキ装置3FL〜3RRは、各車輪4FL〜4RRそれぞれの制動力を調整するもので、ディスクロータ5FL、5FR、5RL、5RRやそれを挟むように配置されたキャリパ6FL、6FR、6RL、6RRなどを備えている。各ブレーキ装置3FLは、統合ECU2からの制御信号に基づき、キャリパ6FL〜6RR内に備えられた図示しない電動モータを駆動することで、キャリパ6FL〜6RRに保持された図示しない摩擦材をディスクロータ5FL〜5RRに押し付ける。この摩擦材のディスクロータ5FL〜5RRへの押し付け力の大きさに応じた摩擦力でディスクロータ5FL〜5RRの回転力が抑制され、その結果、各車輪4FL〜4RRに制動力が発生する。
次に、上記のように構成された車両走行制御装置によって実行される車輪速度測定処理および路面状態判定処理について説明する。
車輪速度確定処理および路面状態判定処理は統合ECU2で実行されるもので、統合ECU2は、車輪速度センサ1FL〜1RRから検出信号を受け取ると、予め記憶されたプログラムに基づき、所定の演算周期毎(例えば6msもしくは8ms毎)にこれら各処理を実行する。
図2は、車輪速度確定処理のフローチャートを示したものである。まず、この図を参照して車輪速度確定処理について説明する。
車輪速度確定処理は、正しく車輪速度を計算できると考えられる車輪速度の速度域を確定するための処理である。統合ECU2は、この車輪速度確定処理を各車輪4FL〜4RRそれぞれに対して順番に実行する。
まず、ステップ100では、車輪速度計算処理を実行する。統合ECU2のうち、この処理を実行する部分が車輪速度検出手段を構成する。具体的には、統合ECU2は、各車輪速度センサ1FL〜1RRから送られるパルス信号の検出信号を受け取ると、予め記憶された規定時間内におけるパルス信号の数(パルス数)を求め、この数が車輪4FL〜4RRの何回転分に相当するかを求めることで速度換算を行い、車輪速度を求めている。
次に、ステップ110では、車輪速度の変動幅がしきい値以下であるか否かを判定する。統合ECU2のうち、この処理を実行する部分が変動幅判定手段を構成する。
ここでいう変動幅のしきい値は、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号として通常得られる変動幅を超える値、つまり正常な検出信号が出力されているときには想定できない変動幅として定義されるもので、予め統合ECU2に記憶されている。このステップで肯定判定された場合には、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号が正常であると想定され、ステップ120に進み、否定判定された場合には、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号が正常ではないと想定され、ステップ150に進む。
ステップ120では、入力パルス数の積算を行う。すなわち、車輪速度センサ1FL〜1RRから送られるパルス信号の検出信号のパルス数を加算し、その積算パルス数を記憶する。このとき、既に前の演算周期などにおいて車輪速度確定処理が実行されており、かつ、このステップ120で入力パルス数の積算が行われていた場合には、そのときに既に記憶されていた積算パルス数に対して今回の演算周期のときのパルス数を加算する。
続いて、ステップ130に進み、積算パルス数がしきい値以上であるか否かを判定する。ここでいう積算パルス数のしきい値とは、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号が車輪4FL〜4RRの所定回転数分(例えば1回転分)に相当する所定パルス数が集まったことを意味している。つまり、ステップ110で単発的に肯定判定されただけでは、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号が正常であると断定できないが、ステップ110で連続して肯定判定され、積算パルス数がしきい値を超えるような場合には、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号が正常であると言える。
このため、積算パルス数がしきい値以上となるまで上記各処理を繰り返し、積算パルス数がしきい値以上となったときにステップ140に進み、そのときに得られた車輪速度の速度域を正しく車輪速度を計算できる速度域として確定する。
なお、ここで説明したステップ110〜140の処理は、正しい車輪速度が求められる速度域を設定するためのものであり、統合ECU2のうち、これら各処理を実行する部分が速度域設定手段を構成している。
一方、積算パルス数がしきい値以上となるまでの間に、一度でもステップ110で車輪速度の変動幅がしきい値を超えれば、ステップ150にて、積算パルス数をリセットし、正しく車輪速度を計算できる速度域に達していないものとする。
このようにして、車輪速度確定処理が実行され、正しく車輪速度を計算できる速度域が確定される。
続いて、図3に路面状態判定処理のフローチャートを示し、この図を参照して路面状態判定処理について説明する。
路面状態判定処理は、各車輪4FL〜4RRが走行中の路面の状態(路面状態)を判定するための処理である。具体的には、良路であるか悪路であるかを判定する悪路判定を行い、ABS制御やトラクション制御が路面状態に応じた適切な制御形態となるように、判定結果に基づいて制御形態の切り替えを行う。統合ECU2は、この路面状態判定処理を各車輪4FL〜4RRそれぞれに対して順番に実行する。
まず、ステップ200では、正しく車輪速度を計算できる速度域を検出する。この処理は、上述した図2に示されるステップ140で確定された速度域を読み込むことで行われる。
次に、ステップ210に進み、現在求められた車輪速度がステップ200で検出した正しく車輪速度を計算できる速度域か否かを判定する。統合ECU2のうち、この処理を実行する部分が路面状態判定実行手段を構成する。なお、現在求められた車輪速度とは、図2のステップ100で求められた車輪速度を意味している。
このとき、正しく車輪速度を計算できる速度域であると判定した場合には、悪路判定を正確に行うことが可能であるものとして、ステップ220に進み、悪路判定処理を行う。統合ECU2のうち、この処理を実行する部分が路面状態判定手段を構成する。
悪路判定処理は、車輪4FL〜4RRが走行中の路面が良路であるか悪路であるかを判定する処理である。例えば、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号に基づいて車輪速度の加減速度を求め、この加減速度の設定時間内の状態、具体的には設定時間内に求められた加減速度が設定加速度以上もしくは設定減速度以下の値を繰り返す場合に、路面状態が悪路であると判定することができる。なお、悪路判定処理の具体的な手法に関しては、従来より提案されているため説明を省略するが、いずれの手法を用いて悪路判定を行っても良い。
そして、ステップ220で悪路判定が行うと、その結果、つまり良路であるか悪路であるかという結果が得られる。このため、ステップ230にて、その判定結果に応じて、ABS制御やトラクション制御の制御形態をどのように切り替えるかを決める制御処理を実行する。このようにして各種制御の制御形態をどのように切り替えるかが決まると、ABS制御やトラクション制御を実行する際に、各制御の制御形態の切り替えを行った上で各種制御を実行することになり、それに応じた制御信号が統合ECU2から出力される。
一方、ステップ210で否定判定されれば、まだ正しく車輪速度を計算できる速度域に達していないとして、ステップ240に進む。この場合には、悪路判定禁止処理、つまり悪路判定を行わずに、良路であると一義的に決める処理が行われる。統合ECU2のうち、この処理を実行する部分が悪路判定禁止手段を構成する。
この後、ステップ230に進み、良路という結果に応じて、ABS制御やトラクション制御の制御形態を制御処理を実行する。これにより、ABS制御やトラクション制御を実行する際には、良路であることを前提とした制御形態で各種制御を実行することになり、それに応じた制御信号が統合ECU2から出力される。
このように、統合ECU2から制御形態に応じた制御信号を出力することで、キャリパ6FL〜6RR内の電動モータを制御し、キャリパ6FL〜6RRに保持された摩擦材をディスクロータ5FL〜5RRに押し付ける力を制御できるため、各車輪4FL〜4RRの制動力を制御形態に応じた値に調整できる。
以上のように、本実施形態では、正しい車輪速度が求められる速度域を求め、求められた車輪速度がこの速度域に達していない場合には、路面状態判定処理(悪路判定処理)を行わないようにしている。
このため、例えば、車輪4FL〜4RRのいずれかに対応する車輪速度センサ1FL〜1RRがセンサリングから所望のエアギャップ以上の距離離れた位置に設置された場合、センサ出力が期待する大きさよりも低くなり、統合ECU2がパルス信号を取りこぼしてしまうことがある。このようなパルス信号の取りこぼしが発生すると、統合ECU2で正確な車輪速度演算が行えなくなり、統合ECU2で路面状態が良路であるにもかかわらず悪路であると誤判定してしまうことがある。
車輪速度センサ1FL〜1RRは、スプリングスペーサにて車体に取り付けられることになるが、基本的にスプリングスペーサによって車輪速度センサ1FL〜1RRの軸方向の垂直方向に対する移動を規制することができるものの、軸方向への移動を規制できない。このため、車輪4FL〜4RRの取替えの際などに、車輪速度センサ1FL〜1RRが奥側に移動し、上記のように、車輪速度センサ1FL〜1RRとセンサリングの間が所定間隔以上に空いてしまうことがある。
図4、図5は、それぞれ、4つの車輪4FL〜4RRのいずれかに対応する車輪速度センサ1FL〜1RRとセンサリングの間のエアギャップが所定間隔以上に空いた場合において、エアギャップが所定間隔であった正常車輪の車輪速度とエアギャップが所定間隔以上であった異常車輪の車輪速度の一例を示したタイミングチャートである。
これら図4、図5に示されるように、正常車輪の場合、極低速度の場合には車輪速度がバタつき、正確に求められないものの、車輪速度がある程度大きくなると正常に求められる。これに対して、異常車輪の場合には、元々センサ出力が小さなものとなるため、所定の速度域に達するまでは車輪速度が求められないし、かつ、車輪速度が求められてもパルス信号の取りこぼしが発生するために、求められた車輪速度が大きくばらつく。
例えば、図4の例では、車輪速度が約20km/hとなるまではセンサ出力が小さいために車輪速度を求めることができず、図5の例では、車輪速度が約30km/hとなるまではセンサ出力が小さいために車輪速度を求めることができない。このように正確に車輪速度を求めることができる速度域は、車輪速度センサ1FL〜1RRとセンサリングの間のエアギャップの大きさによっても異なるし、車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号の周波数に応じた二値化の限界の相違によっても異なるため、一義的に決めることができない。
しかしながら、本実施形態の場合、車輪速度の変動幅がしきい値以下である場合にのみ、正しく車輪速度を検出することが可能であるとして、そのときの速度域を記憶しておき、その速度域に車輪速度が達したときに初めて路面状態判定を行うようにしている。
このため、統合ECU2で正確な車輪速度演算が行える場合にのみ、正しい車輪速度に基づいて路面状態判定が行われる。したがって、統合ECU2で路面状態が良路であるにもかかわらず悪路であると誤判定してしまうことを防止できる。これにより、車速が極低速度の場合や車輪速度センサ1FL〜1RRからセンサリングまでの距離が所定間隔以上に空いた場合に、路面状態を誤判定してしまわない路面状態検出装置とすることができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明した路面状態判定処理の手法を変更したものであり、車両走行制御装置の構成等に関してはすべて第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
図6は、本実施形態の車両走行制御装置の統合ECU2が実行する路面状態判定処理のフローチャートである。この図に示される路面状態判定処理は、上記第1実施形態に示した図3に示す路面状態判定処理に代えて行われる。統合ECU2は、この路面状態判定処理を各車輪4FL〜4RRそれぞれに対して順番に実行する。
まず、ステップ200〜ステップ230では、図3と同様の処理を行う。そして、ステップ210において、現在求められた車輪速度がステップ200で検出した正しく車輪速度を計算できる速度域か否かを判定したときに、否定判定されると、何も処理を行うことなくステップ230に進む。
このような路面状態判定処理が行われる場合、ステップ210で否定判定されると、今回の演算周期の際に悪路判定が行われないことになる。このため、前回の悪路判定の判定結果がそのまま引き継がれる。このため、ステップ230にて、前回の悪路判定の判定結果に応じて、ABS制御やトラクション制御の制御形態をどのように切り替えるかを決める制御処理を実行する。
このように、本実施形態では、正しく車輪速度を計算できる速度域でない場合において、以前の演算周期の際に悪路判定の判定結果が得られている場合には、その判定結果がそのまま用いられるようにしている。例えば、一旦は正しく車輪速度を計算できる速度域まで車輪速度が大きくなったものの、減速して再び正しく車輪速度を計算できる速度域から外れてしまった場合には、以前の演算周期の際に得た判定結果が用いられる。
一般に、路面状態は急変しないため、以前の演算周期の際に悪路判定の判定結果が得られていたのであれば、それ以降もその判定結果と同様の判定結果となる可能性が高い。このため、本実施形態のように、以前の演算周期の際に得た判定結果を用いるようにすれば、正しい車輪速度を計算できる速度域から外れてしまった場合にも、ほぼ正確な路面状態判定結果に基づいて、ABS制御やトラクション制御等の制御形態を決めることが可能になる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態と第2実施形態で説明した路面状態判定処理の手法を組み合わせたものであり、車両走行制御装置の構成等に関してはすべて第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
図7は、本実施形態の車両走行制御装置の統合ECU2が実行する路面状態判定処理のフローチャートである。この図に示される路面状態判定処理は、上記第1実施形態に示した図3に示す路面状態判定処理に代えて行われる。統合ECU2は、この路面状態判定処理を各車輪4FL〜4RRそれぞれに対して順番に実行する。
まず、ステップ200〜ステップ230では、図3と同様の処理を行う。そして、ステップ210において、現在求められた車輪速度がステップ200で検出した正しく車輪速度を計算できる速度域か否かを判定したときに、否定判定されると、ステップ250に進む。
ステップ250では、正しく車輪速度が計算できる速度域以上に車輪速度が大きくなった履歴があるか否かを判定する。統合ECU2のうち、この処理を実行する部分が履歴判定手段を構成する。
例えば、ステップ210において肯定判定されたときにその履歴を示すフラグがセットされるようにしておき、そのフラグを確認することで本判定を行っている。なお、このフラグは、例えばすべての車輪4FL〜4RRの車輪速度がゼロになったとき、すなわち車両が停止したときにリセットされる。
そして、ステップ250で正しく車輪速度が計算できる速度域以上に車輪速度が大きくなった履歴があると判定された場合には、そのときに得られた悪路判定の判定結果を用いるべく、何も処理を行うことなくステップ230に進む。
逆に、ステップ250で正しく車輪速度が計算できる速度域以上に車輪速度が大きくなった履歴がないと判定された場合には、ステップ240に進み、図3と同様に、悪路判定禁止処理を実行する。
このように、正しく車輪速度を計算できる速度域以上に車輪速度が大きくなった履歴があるか否かに応じて、以前の演算周期の際に得られた悪路判定の判定結果を用いるか、悪路判定禁止処理を行うことで良路であると断定するかを決めても良い。
(他の実施形態)
上記実施形態では、車両走行制御装置として、ブレーキ装置3FL〜3RRを備えたものを例に挙げて説明したが、トラクション制御を実行する場合には、エンジンが発生させる駆動力を調整する場合もある。このような場合にも、本発明を適用することが可能であり、駆動力調整の制御形態を悪路判定の判定結果に基づいて決めることができる。
上記実施形態では、求められた車輪速度の変動幅が予め設定されたしきい値以下であることが車輪速度センサ1FL〜1RRの検出信号の所定パルス数分、つまり車輪4FL〜4RRの所定回転数分継続した場合に、正しい車輪速度が求められるものと判定しているが、これ以外の判定条件を用いても良い。
例えば、車両が停止状態から発進したときに、4つの車輪4FL〜4RRの各車輪速度を比較し、大きい側の2輪の車輪速度の平均値から所定値だけ小さい速度にしきい値を儲け、そのしきい値以下にあった車輪速度が上記しきい値以上に遷移したときに、正しい車輪速度が求められるものと判定しても良い。
また、求められた車輪速度の変動幅が予め設定されたしきい値以下であることが所定期間中継続した場合に、正しい車輪速度が求められるものと判定しても良い。
なお、上記各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
本発明の第1実施形態における適用された路面状態判定装置が備えられる車両走行制御装置のブロック図である。 図1に示す車両走行制御装置の統合ECU2が実行する車輪速度確定処理のフローチャートである。 図1に示す車両走行制御装置の統合ECU2が実行する路面状態判定処理のフローチャートである。 エアギャップが所定間隔であった正常車輪の車輪速度とエアギャップが所定間隔以上であった異常車輪の車輪速度の一例を示したタイミングチャートである。 エアギャップが所定間隔であった正常車輪の車輪速度とエアギャップが所定間隔以上であった異常車輪の車輪速度の一例を示したタイミングチャートである。 本発明の第2実施形態にかかる車両走行制御装置の統合ECU2が実行する路面状態判定処理のフローチャートである。 本発明の第3実施形態にかかる車両走行制御装置の統合ECU2が実行する路面状態判定処理のフローチャートである。 車輪速度センサJ1の車体に取り付けたときの様子を示した模式図である。
符号の説明
1FL〜1RR…車輪速度センサ、2…統合ECU、
3FL〜3RR…ブレーキ装置、4FL〜4RR…車輪、
5FL〜5RR…ディスクロータ、6FL〜6RR…キャリパ。

Claims (6)

  1. 車輪速度センサ(1FL〜1RR)からのパルス信号の検出信号に基づいて車輪速度を検出する車輪速度検出手段(100)と、
    前記車輪速度検出手段(100)が検出した車輪速度に基づいて路面状態を判定する路面状態判定手段(220)と、
    前記車輪速度検出手段(100)が検出した車輪速度に基づいて正しい車輪速度が求められる速度域を設定する速度域設定手段(110〜140)と、
    前記車輪速度検出手段(100)で検出した前記車輪速度が前記速度域設定手段(110〜140)で設定された前記速度域であるか否かを判定し、前記速度域でない場合には前記路面状態判定手段(220)による路面状態の判定を実行させず、前記速度域である場合に前記路面状態判定手段(220)による路面状態の判定を実行させる路面状態判定実行手段(210)と、を有して構成されることを特徴とする路面状態判定装置。
  2. 前記速度域設定手段(110〜140)は、前記車輪速度検出手段(100)が検出した前記車輪速度の所定時間毎の変動幅を求めると共に、該変動幅がしきい値以下であるか否かを判定する変動幅判定手段(110)を有し、前記変動幅判定手段(110)によって前記変動幅が前記しきい値以下であると判定された場合の前記車輪速度を前記速度域として設定することを特徴とする請求項1に記載の路面状態判定装置。
  3. 前記速度域設定手段(110〜140)は、前記パルス信号のパルス数を積算した積算パルス数が所定パルス数分となる間、前記変動幅判定手段(110)によって前記変動幅が前記しきい値以下であると判定された場合に、そのときの前記車輪速度を前記速度域として設定することを特徴とする請求項2に記載の路面状態判定装置。
  4. 前記路面状態判定実行手段(210)によって前記速度域でないと判定された場合に、悪路と判定することを禁止して良路であると判定する悪路判定禁止手段(240)を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の路面状態判定装置。
  5. 前記路面状態判定実行手段(210)によって前記速度域でないと判定された場合に、前記路面状態判定手段(220)で前回判定された路面状態の判定結果を保持することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の路面状態判定装置。
  6. 前記路面状態判定実行手段(210)によって前記速度域でないと判定された場合に、悪路と判定することを禁止して良路であると判定する悪路判定禁止手段(240)と、
    前記路面状態判定実行手段(210)によって前記速度域でないと判定された場合に、以前に前記速度域であると判定された履歴があるか否かを判定する履歴判定手段(250)と、を有し、
    前記履歴判定手段(250)にて、履歴がないと判定された場合には、前記悪路判定禁止手段(240)により、良路であると判定し、履歴があると判定された場合には、前記路面状態判定手段(220)で以前判定された路面状態の判定結果を保持することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の路面状態判定装置。
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