JP4945860B2 - バリア性チューブ状容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック薄膜によりバリア性を改善させたバリア性チューブ状容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、練り歯磨き、接着剤、食品、化粧品、医薬品などの容器として、チューブ状容器が広く用いられており、外部からの酸素や水分などの侵入防止、あるいは内容物の水分や香気成分の飛散防止などを目的としたバリア性が求められている。このチューブ状容器の代表例として、ラミネートチューブ、ブローチューブなどがある。
【0003】
ラミネートチューブは、その胴部として、ガスバリア層を含む多層シートを所定の大きさの方形に切断し、両側端を重ね合わせて筒状にし、その重ね合わせ部を接合して作製されている。このため、この重ね合わせ部から侵入してくる酸素などにより、あるいはこの重ね合わせ部から内容物の成分が透過飛散することにより、内容物が劣化することが問題となることがあった。
【0004】
この問題点を解決するために、例えば、実公昭61−17006号公報や特開昭63−55063号公報で開示された技術がある。前者は、重ね合わせ部の接合に際し、多層シート端面において露出する多層シートに含まれる層の保護、接合工程の作業性の向上、接合部の接着強度向上などを目的として、重ね合わせ部の多層シート端部を耐水性合成樹脂材で被覆する技術であり、後者は、重ね合わせ部の対向する多層シート間に、熱溶融性樹脂層を挟み込む技術であった。しかしながら、これらの技術を用いた方法は、製造工程が複雑であった。
【0005】
さらに、特開平4−114869号公報には、肩部におけるバリア性を向上させる方法の1つとして、(A)ポリエチレン、(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体または、エチレン酢酸ビニル共重合体けん化物、及び(C)カルボン酸変性ポリエチレン接着性樹脂からなるブレンド材料にて単層で構成した肩部を有するラミネートチューブ容器が開示されている。しかしながら、この様なブレンド材料を用いると、材料コストが上がり、リサイクル性も劣る問題があった。
【0006】
また、ブローチューブでは、バリア性向上のため、多層構成によるブロー成形が行われているが、この様な多層構成を用いると材料コストが上がり、リサイクル性にも問題が生じていた。さらに、このブローチューブでは内容物成分が吸着する問題があり、内容物成分の低吸着性が求められていた。この低吸着性に関しては、前述のラミネートチューブにおいても問題となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来のチューブ状容器、特にラミネートチューブでは、容器全体としてのバリア性を向上させるため、ガスバリア層を含む多層シートを胴部に用いたり、重ね合わせ部や肩部のバリア性を部分的に付加したりと、複雑な構造をとっていた。
【0008】
本発明は、簡単な方法でバリア性を付与し、底コストなバリア性チューブ容器を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、チューブ状容器の内面に、セラミック薄膜をコーティングし、チューブ状容器のエンドシール部の内面にセラミック薄膜をコーティングした部分とコーティングしない部分が存在するバリア性チューブ状容器において、前記エンドシール部の内面のセラミック薄膜をコーティングしない部分が、エンドシール部の下方部であることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、チューブ状容器の内面に、セラミック薄膜をコーティングし、チューブ状容器のエンドシール部の内面にセラミック薄膜をコーティングした部分とコーティングしない部分が存在するバリア性チューブ状容器において、前記エンドシール部の内面のセラミック薄膜をコーティングしない部分がエンドシール部の下方部であってエンドシール部の全高に対する高さの割合が50〜90%の範囲であることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る発明において、前記セラミック薄膜が、化学蒸着法で形成されていることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1又は2に係る発明において、前記セラミック薄膜が、物理蒸着法で形成されていることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1及至4のいずれか1項に係る発明において、前記セラミック薄膜が、酸化珪素、ダイアモンドライクカーボン、アルミナ又はアルミニウムのいずれかを主成分とすることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0014】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項1及至5のいずれか1項に係る発明において、前記セラミック薄膜の膜厚が、10〜100nmであることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0015】
本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項1及至6のいずれか1項に係る発明において、前記チューブ状容器が、ラミネートチューブであることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0016】
本発明の請求項8に係る発明は、上記請求項1及至6のいずれか1項に係る発明において、前記チューブ状容器が、ブローチューブであることを特徴とするバリア性チューブ状容器である。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のバリア性チューブ状容器100の一実施形態の胴部の断面図であり、内容物に接する内面側にセラミック薄膜層110、外面側に樹脂層120が積層されている。
【0019】
セラミック薄膜のコーティング方法としては、3次元形態の容器表面に均一に、しかも低コストでセラミック薄膜をコーティングすることができることから、化学蒸着法(CVD法)又は物理蒸着法(PVD法)を用いることが望ましい。その他にも、スパッタリング法などを用いることもできる。化学蒸着法によるセラミック薄膜コーティングの一実施形態としては、図2に示した化学蒸着装置200のチャンバー内を真空引きしたのち、ガス供給管201に接続するガス供給孔206から原料ガスを導入して、高周波電源202から外部電極203に高周波を流して、外部電極203と内部電極205の間にプラズマを発生させ、チューブ状容器209の内面に成膜する方法がある。なお、204は、外部電極天蓋部であり、207は、絶縁板で、208は、排気口である。
【0020】
コーティングされるセラミック薄膜は、材質および厚みに制限はないが、高いバリア性が得られること、内容物の低吸着性が得られること、およびコーティングが比較的容易にできることから、酸化珪素薄膜、ダイヤモンドライクカーボン薄膜、アルミナ薄膜又はアルミニウム薄膜とすることが特に望ましい。また、その厚みは、10nm以下では酸素や水蒸気などのバリア性が低下し、100nm以上ではクラックが形成されるため、10〜100nmの範囲に設定することが好ましい。
【0021】
チューブ状容器のエンドシール部は、ヒートシール、高周波シール、インパルスシールなどの公知の方法で熱接着されているが、エンドシール部内面にセラミック薄膜がコーティングされているとシール性が低下するため、エンドシール部内面にはセラミック薄膜がコーティングされていないことが好ましいが、エンドシール部に全くセラミック薄膜がコーティングされていないとバリア性が低下する。このため、図3に示すように、内面にセラミック薄膜をコーティングする胴部に連続させて、エンドシール部130の内面にセラミック薄膜をコーティングする部分131を、エンドシール部の上方部に設け、エンドシール部130の内面にセラミック薄膜をコーティングしない部分132を、エンドシール部の下方部に設け、そのコーティングしない部分の高さの割合を、エンドシール部の全高に対する50〜90%の範囲にすることが望ましい。このようなコーティングしない部分を作製する一実施形態としては、図2に示すように、成膜時にエンドシール部内側にスペーサー210を入れて、セラミック薄膜を蒸着させない方法がある。
【0022】
このチューブ状容器としては、ラミネートチューブ、ブローチューブなどが挙げられる。ラミネートチューブでは、容器全体としてのバリア性を向上させるため、ガスバリア層を含む多層シートを胴部に用いたり、重ね合わせ部や肩部のバリア性を部分的に付加したりと、複雑な構造をとっているが、この容器内面にセラミック薄膜をコーティングすることで、より簡単な構造で容器全体のバリア性を向上することができ、しかも内容物の低吸着性も向上するため特に望ましい。
【0023】
また、ブローチューブでは、バリア性向上のため多層構成によるブロー成形が行われているが、この容器内面にセラミック薄膜をコーティングすることで、単層構成のブローチューブでもバリア性を向上することができ、さらに内容物の低吸着性も向上するため望ましい。
【0024】
【実施例】
次に、本発明のバリア性チューブ状容器について、具体的な実施例を挙げて更に説明する。
【0025】
<実施例1>
胴部がφ50、高さ150mm、厚さ100μmの低密度ポリエチレンからなり、肩部も低密度ポリエチレンで形成されたラミネートチューブを作製した。この容器の内面にプラズマ化学蒸着法を用いて膜厚約80nmの酸化珪素薄膜をコーティングした。この際、エンドシール部の内容物充填側から幅5mmは酸化珪素膜をコーティングしなかった。さらに、この容器のエンドシールを400℃に設定したハンドシーラーに5秒間通し、圧着させてエンドシールを行った。このときのエンドシール幅は8mmとした。次に、得られた容器の酸素バリア性をモコン法により測定した。また、エンドシール部のヒートシール強度を試験速度300mm/minで測定した。得られた測定結果を表1に示す。
【0026】
<実施例2>
コーティングするセラミック薄膜にダイヤモンドライクカーボンを用いた以外は、実施例1と同様の方法でバリア性チューブ状容器を作製した。得られた容器の酸素バリア性の測定結果とエンドシールの密着性を表1に示す。
【0027】
<比較例1>
実施例1と同様の構成のラミネートチューブに酸化珪素薄膜をコーティングしない構成とした。得られた容器の酸素バリア性の測定結果とエンドシールの密着性を表1に示す。
【0028】
<比較例2>
実施例1と同様の構成のラミネートチューブで、内面全体に酸化珪素薄膜をコーティングした構成とした。得られた容器の酸素バリア性の測定結果とエンドシールの密着性を表1に示す。
【0029】
<比較例3>
実施例1と同様の構成のラミネートチューブで、幅8mmのエンドシール部には全く酸化珪素薄膜をコーティングせず、エンドシール部以外の内面には酸化珪素薄膜をコーティングした構成とした。得られた容器の酸素バリア性の測定結果とエンドシールの密着性を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1の測定結果をみると、実施例1及び実施例2の容器は、酸素透過度が極めて小さくバリア性が良好であり、また、エンドシール部の強度が強く良好であった。内面に酸化珪素薄膜をコーティングしない比較例1の容器は、酸素透過度が極めて大きくてバリア性が悪いが、エンドシール部の強度は、強く良好であった。内面全体に酸化珪素薄膜をコーティングした比較例2の容器は、酸素透過度が小さかったが、エンドシール部の強度が弱かった。エンドシール部に全く酸化珪素薄膜をコーティングしない比較例3は、エンドシール部の強度は強く良好であったが、酸素透過度が実施例1及び実施例2に比較して大きかった。
【0032】
【発明の効果】
本発明により、簡単な構造、かつ低コストなバリア性チューブ状容器を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のバリア性チューブ状容器の構成を示す胴部の断面図である。
【図2】本発明のバリア性チューブ状容器の内面にセラミック薄膜を成膜するために使用する一例の化学蒸着装置の構造を示す説明図である。
【図3】本発明のバリア性チューブ状容器のエンドシール部の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
100……バリア性チューブ状容器
110……セラミック薄膜層
120……樹脂層
130……エンドシール部
131……エンドシール部の内面にセラミック薄膜をコーティングする部分
132……エンドシール部の内面にセラミック薄膜をコーティングしない部分
200……化学蒸着装置
201……ガス供給管
202……高周波電源
203……外部電極
204……外部電極天蓋部
205……内部電極
206……ガス供給孔
207……絶縁板
208……排気口
209……チューブ状容器
210……スペーサー
Claims (8)
- チューブ状容器の内面に、セラミック薄膜をコーティングし、チューブ状容器のエンドシール部の内面にセラミック薄膜をコーティングした部分とコーティングしない部分が存在するバリア性チューブ状容器において、前記エンドシール部の内面のセラミック薄膜をコーティングしない部分が、エンドシール部の下方部であることを特徴とするバリア性チューブ状容器。
- チューブ状容器の内面に、セラミック薄膜をコーティングし、チューブ状容器のエンドシール部の内面にセラミック薄膜をコーティングした部分とコーティングしない部分が存在するバリア性チューブ状容器において、前記エンドシール部の内面のセラミック薄膜をコーティングしない部分がエンドシール部の下方部であってエンドシール部の全高に対する高さの割合が50〜90%の範囲であることを特徴とするバリア性チューブ状容器。
- 前記セラミック薄膜が、化学蒸着法で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のバリア性チューブ状容器。
- 前記セラミック薄膜が、物理蒸着法で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のバリア性チューブ状容器。
- 前記セラミック薄膜が、酸化珪素、ダイアモンドライクカーボン、アルミナ又はアルミニウムのいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項1及至4のいずれか1項記載のバリア性チューブ状容器。
- 前記セラミック薄膜の膜厚が、10〜100nmであることを特徴とする請求項1及至5のいずれか1項記載のバリア性チューブ状容器。
- 前記チューブ状容器が、ラミネートチューブであることを特徴とする請求項1及至6のいずれか1項記載のバリア性チューブ状容器。
- 前記チューブ状容器が、ブローチューブであることを特徴とする請求項1及至6のいずれか1項記載のバリア性チューブ状容器。
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