JP4943591B2 - 極めて付着性の高い表面触媒層により特徴づけられる電極 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電解及び電気冶金の工業的分野におけるガス発生用の電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス状生成物を発生できる電極を使用する電解及び電気冶金のいくつかの工業的用途が知られており、このガス状生成物は、ある事例では、生成物の中で主目的の生成物(例えば、アルカリ塩化物又は塩酸の電気分解における陽極で発生する塩素)を構成する。他の事例では、発生したガスは単なる反応副生物(例えば、アルカリ塩化物電気分解における陽極で発生した水素、又は典型的にガルバニ工業の陰極金属電気メッキにおける陰極で発生した酸素)である。上記2つ事例において、ガス発生電極を製造する主な目的の一つは高い電気化学活性であり、これはプロセス全体のエネルギー効率を増大させるために、出来るだけ低い過電圧で作動させる必要がある。従って、通常はこのような反応を触媒表面上で実施しており、その場合、電極で発生したガスは単なる副生物である。最高の電気触媒特性を有する材料は極めて高価であり、この種類は基本的に白金族金属及びそれらの酸化物から構成されるため、これらの使用は導電性支持体上に堆積した薄い表面層に限定される。
【0003】
良好な導電特性と耐蝕性を有し、そして一つの表面が貴金属及び/又はその合金から成る薄層で被覆された金属基板を使用することは当業者に公知であり、これらの具体例は、例えば、米国特許3,428,544及び米国特許3,711,385等に記載されている。耐蝕性は特に陽極として作動するのに適した電極の場合に極めて重要なパラメーターであり、この場合、電解液の攻撃的な作用が電気化学電位により増大する。このため、電解及び電気冶金用の陽極は好ましくは弁金属基板から形成され、この弁金属は不活性酸化物の薄い表面層により付与される保護を考慮した耐蝕性金属である。これらの弁金属の中で、価格と作業性を考慮すると、最も一般的に用いられているのはチタンである。貴金属酸化物に基づく触媒で被覆されたチタン基板の電気化学的特性はほぼ全ての工業分野においてガス発生用陽極として極めて満足できると考えられる。反対に、これらの寿命は、特に多くの臨界的操作条件(極めて攻撃的な電解液、極めて高い電流密度、等)では、包括的な技術文献はこの分野で得られた基本的な進歩を証言しているが、多くの場合、未だ完全には解決されていない問題を提起する。長い電極寿命は電気化学の分野で工業的に成功するための必須の条件である。その理由としては、不活性化の場合に、新しい電気触媒被膜が付与される必要があり、これは一方では材料及び製造の点に関して高価であり、他方では電極交換を通じてのプラントの運転停止に基づく生産損失が生じるためである。電気触媒被膜の形成に使用される貴金属はそれ自体が通常の操業状態で腐蝕されないため、不活性化の主な原因は前記被膜が基板から局部的に分離して、基板を腐蝕又は不動態化させることにある。この電気触媒被膜の分離は表面に発生した泡の機械的作用に基づく同じガス発生により強められ、そしてこの現象は高電流密度で更に増大する。特に、酸素が陽極で発生する電気冶金の分野において、例えば、自動車産業で使用されるシートの亜鉛メッキ、又は電子産業用の銅箔の製造において、陽極電流密度は15kA/m2を超える。
【0004】
前記被膜が前記基板に粘着するのが不安定になるその他の原因は被膜の多孔性に由来し、その結果、保護されていない金属基板に電解液が浸透して直接接触するためである。このような場合、局部的な分離が微細な領域で生じても、基板は不動態化して非導電性酸化物を生じ、これが電気触媒層を物理的に分離させることなく基板と電気触媒層との間に成長する。
【0005】
前記触媒被膜を充分に固定するために、例えば、サンドブラスチング処理により、又は腐蝕剤でエッチングすることにより基板表面を粗面化することが有利である。表面の粗面化により前記基板と触媒層との相互の混合が良好に行われ、前記触媒層は前記基板に塗布された塗料の形状の前駆体化合物を熱処理することにより得られる。チタンの場合、例えば、砂、水又はコリンドン(corindone)と混ぜられた砂を用いた研摩処理、及び塩酸を用いたエッチング処理が知られている。これらの処理により、電極が周期的な再活性化をかなり頻繁に行う必要がある場合に、多くの工業的用途に適した電極を得ることができる。この点に関して、酸素が陽極で発生する電気冶金法は、特に10kA/m2より高い電流密度で操業される場合、最も困難な方法であると考えられる。また低電流密度法については、しかしながら、鉱物を最初に溶解することにより得られる酸性溶液から金属を電解採取する場合、電解浴中に常に存在する不純物に関連する問題はチタン基板の不動態化に極めて有害な影響を与える。この典型的な例はチタンを錯体化させるフッ化物であって、これは関連の保護フイルムを破壊して、下側の金属母体、特に電気触媒被膜と基板との接合部分に生じる微小欠陥の領域を腐蝕させる。
【0006】
この理由により、腐蝕を抑制する性質を有し、金属基板と電気触媒被膜との間に介在する中間層を使用することが幾つかの事例で提案され、前記微小欠陥が存在する場所の局部的な腐蝕を阻止することが目的とされる。弁金属のセラミック酸化物に基づく中間層の例がヨーロッパ特許EP0545869に記述されており、また中間層のその他の例も公知である。
【0007】
中間層を使用すると、ガス発生電極の寿命が極めて増大することは多くの場合疑いの余地がない。しかしながら、これは不便でる。前記セラミック酸化物は、例えば、チタンよりも、また電気触媒被膜に使用される材料よりも、低い電気伝導率を有しており、従ってプロセス全体の電気効率にマイナスの影響を与え、更に触媒被膜を接着する際に下側の粗面にマイナスの影響を与える。従って、セラミック酸化物を堆積した後に、それらの厚さ及び全体の構造特性を制御することが必須である。電気触媒被膜を被覆するのに適した基板の最適の粗さパラメーターを設定することが、例えば、USAのEltech Systems株式会社に譲渡されたEP0407349に開示され、ここでは被膜の高品質の接着力を確保するためには、平均表面粗さは250マイクロインチ(約6マイクロメートル)以上であり、インチ当り少なくとも40ピークの平均頻度を有すること(プロフィルメーターによる400マイクロインチ、即ち約10マイクロメートルの上方限界値及び300マイクロインチ、即ち約8マイクロメートルの下方限界値に基づく)が必要であることが明示される。このような粗さはサンドブラスチング等のような研摩処理で表面を損傷させないために、エッチングにより得られる。
【0008】
この制約は前記表面プロフィールの前記2つの基本的特性、即ち前記平均粗さと頻度、を考慮すると、容易に理解できる。前記頻度は、もっと平易な用語では、基準の長さ、例えば1cm、に基づいて観察されるピークの母集団である。前記平均粗さは、研摩粉末が適切な粒径を有するならば、サンドブラスチングにより容易に得られる。生じる不都合は内部応力を持つ金属が強力に硬化することであって、この内部応力はチタニウムの場合、後のアニール処理を500〜700℃で行うことにより解放できる。前記頻度、又はピークの母集団を得ることは逆にむしろ問題があって、ノズルの形式、空気ジェットの圧力、金属表面に対するノズルの離間距離と角度のような、サンドブラスチングのパラメーターを最適化することが必要であると共に処理時間を延長することが必要である。この処理時間の延長は陽極の稼動中にいわゆる“割れ目腐蝕”の出発点を構成する微小亀裂又は曲げのような表面欠陥の核を形成する。更に、所望の頻度又はピークの母集団が達成されたことを検査するためには長時間を必要とするため、製造コストが増大し、本質的に問題がある。最高の結果はセンチメートル当りのピークの数が所望の数であるのみならず、前記ピークが略均等であって、互いに密集しない時に得られるため、粗さが不十分な領域が多少残留する。EP0407349の教示は最適の構造の基板を提供するのに重要であるが、電極、特に多くの重要な工業用の陽極に長寿命を与えるのには不十分である。同じ表面パラメーターを保持して触媒被膜を正確に固定するセラミック酸化物の中間層にEP0407349の粗さのパラメーターを組合せて使用すると、電極寿命が驚くほど延びることがヨーロッパ特許(EP0576402)に開示される。しかしながら、このような発明を使用することは極めて問題であると思われる。何故ならば、EP0407349の粗さを得ることの困難さに関連する問題に加えて、中間層は一方では十分に保護性能を有し、他方では表面粗さのパラメーターを変更するほど厚くてはいけないからである。この点に関して、EP0576402のクレイム1は電極の製造方法が中間層の堆積後に、また被膜の形成前に表面粗さを検査する必要があることを記述する。従って、極めて限定されたパラメーター内で操業することが必要であるが、これは制御が困難であり、また中間層の堆積の後に粗さを検査することは後の電気触媒被膜の接着に最適の構造を与えるが、同一の中間層がその保護機能を電極表面全体に付与するのに十分な密集性と密着性を有しないことが明らかである。
【0009】
従って、従来技術においては、電気触媒被膜を良好に固定するのに適した表面構造特性を備える金属基板に基づいて電極の形状を決定する必要があることが説明されており、同時に、高価で複雑な表面前処理工程を実施することなく、また基板と電気触媒被膜との間に中間層を使用することなく、臨界的操作条件の下で、前記基板を不動態化現象から保護することが説明されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は制御された表面構造を有する金属基板と電気触媒被膜を含み、中間層なしで従来技術の制限を克服できるガス発生用の電極を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は制御された表面構造を有する金属基板と電気触媒被膜を含み、中間層のないガス発生用の電極の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は制御された表面構造を有する金属基板と表面上でガス状反応物を発生する反応が生じる電気触媒被膜を含み、中間層のないガス発生用の少なくとも1つの電極を利用する電解法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は制御された表面構造を有する金属基板と表面上でガス状反応物、例えば、酸素を発生する反応が生じる電気触媒被膜を含み、中間層のない少なくとも1つの陽極を利用する陰極金属メッキの電気冶金法を提供することである。
【0013】
これら及びその他の目的は以下の記述及び実施例から明らかになるであろう。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は金属基板、好ましくは弁金属それ自体から構成されるか、又は弁金属、遷移金属、白金族の貴金属、より好ましくはチタンから選ばれる貴金属の群から選ばれる他の金属との合金から構成される金属基板を含む電極から構成され、前記金属基板はマクロ‐粗さプロフィール(macro-rough profile)及びミクロ‐粗さプロフィール(micro-rough profile)の組合せから生じる表面プロフィールを有する。
【0015】
ミクロ‐粗さプロフィールの平均粗さがマクロ‐粗さプロフィールの平均粗さの5〜20%から成る組合せが特に有利である。本発明において、用語の平均粗さ(Ra)は平坦な水平面に対して平均表面レベルからの絶対偏差の算術平均を示す。
【0016】
実際の測定の場合、機器測定は予め決められた空間バンド幅に制限される。これはある特徴が測定されるのに広すぎる(遠すぎる)こと、及び他の特徴が狭すぎる(近すぎる)ことを意味する。このため、測定された粗さのパラメーターを定める場合、測定されるバンド幅は、機器に基づいて設定された比表面積幅の範囲に従って、記述されるであろう。
【0017】
本発明のミクロ‐粗さプロフィールの平均粗さはそれぞれプロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及びプロフィルメーターによる7.5マイクロメートルの下方限界値を基準にして、少なくとも5マイクロメートル及び、好ましくは20マイクロメートルである。
【0018】
前記ピーク頻度及び関連の限界値に関して、本発明は特定の注意を必要としない。満足な結果はEP0407349(制御されたピーク頻度を組合された平均粗さ)の粗さ又は本発明のマクロ及びミクロ‐粗さの組合せにより得られることが判明した。
【0019】
ピーク頻度(又はピークの母集団)が重要なパラメーターではないという事実は前記マクロ‐粗さプロフィールを達成するための極めて簡単な方法を暗示しており、平均粗さを制御することだけが求められる。特に、表面粗さがサンドブラスチングにより作られる特殊な場合には、作動時間はかなり低下し、装置制御パラメーターは重要ではなく、とりわけ、金属表面は微小亀裂又は曲げにより生じる有害な欠陥が実質的になくなる。また、作動時間が減少すると、金属硬化が低下し、その結果、反り現象が低下して、次のアニール処理を任意にする。従って、前記マクロ‐粗さプロフィールがサンドブラスチングにより得られる場合でも、金属をミクロ‐粗さプロフィールを形成する次の工程に直接に送ることができる。処理される対象物が特定の平面条件を求められ、そしてそのマクロ‐粗さプロフィールがサンドブラスチングにより得られる場合には、アニール処理が有益である。チタンの場合、アニール処理は500〜750℃、好ましくは550〜700℃で1〜2時間実施できる。この処理は通常、工程を簡素化するために、空気雰囲気中で実施されるため、金属は表面的に酸化される。チタンの特殊な場合、酸化物被膜は次のミクロ‐粗さプロフィールの形成工程を強く妨害するであろう。熱処理後に、金属は化学浸蝕(エッチング)される必要があり、この化学浸蝕のパラメーター(酸の種類、濃度、温度、処理時間)はサンドブラスチングにより形成されるマクロ‐粗さプロフィールを変えることなく、酸化物被膜を完全に溶解するために設定される。
【0020】
この目的に適合する酸の例は80℃〜沸点の範囲の温度で30〜40分の接触時間使用される15〜25重量%の塩酸、及び室温で5〜15分の接触時間使用される30〜40重量%の硝酸と3〜5重量%のフッ化水素酸の混合物である。
【0021】
溶融塩浴も同様に良好に使用できる。マクロ‐粗さプロフィールはサンドブラスチング処理よりもむしろ酸エッチングによって良好に得られることが理解できる。
【0022】
この種の浸蝕用の特に好ましい酸は90℃〜沸点の範囲の温度で使用される15〜25重量%(より好ましくは20重量%)の塩酸である。エッチング時間は前述の場合(熱処理を通じて生成した単なる酸化物層の溶解を目的とすることに必然的に限定された)に示された時間より通常は長く、好ましくは1〜2時間である。金属の損失重量が酸に接触する表面の平方メートル当り100〜1000グラム、好ましくは平方メートル当り400〜500グラムである場合、適切な平均粗さが達成されることが判明した。
【0023】
このようにして得られたマクロ‐粗さプロフィールにミクロ‐粗さプロフィールが重ねられる。このミクロ‐粗さプロフィールは、シュウ酸又は硫酸を用いて良好に形成できるが、酸化物層が存在しないチタンの場合、前もって塩酸により(又は上述の硝酸/フッ酸混合物又は溶融塩浴により)除去される。これらの酸は弁金属、特にチタンを、吸着された陰イオン錯体から成る中間体の生成に基づく遅いメカニズムを通して、腐蝕する。この吸着は溶解速度の加速又は減速の効果を実質的に低下させて、金属表面を均一化させる。例えば、この吸着は結晶の結晶配向及び転位のような結晶秩序の欠陥を均一化させる。その結果、前記腐蝕は遅いばかりでなく、比較的に均一になり、実質的に変化していない既に存在するマクロ‐粗さプロフィールに重ねられたミクロ‐粗さプロフィールを生成できる。最適のミクロ‐粗さはマクロ‐粗さの平均値の5〜20%、好ましくは8〜10%により特徴づけられる値であることが判明した。従って、例えば、30〜70マイクロメートルの平均マクロ‐粗さの値を使用することにより、ミクロ‐粗さ平均値が2〜7マイクロメートルである場合、触媒被膜の最高の接着が得られる。これらの最適条件は、例えば、20〜30重量%の硫酸、又は20重量%のシュウ酸を、好ましくは80℃〜沸点の範囲の温度で1〜3時間適用することにより達成される。
【0024】
本発明の有効性を説明するのに特定の理論に拘束されることは望まないが、論理的根拠は下記の点に基づくであろう。
ミクロ‐粗さプロフィールにより触媒被膜と金属基板との間の相互浸透が可能となり、その結果良好な機械的安定性が得られる。しかしながら、被覆されない金属ピークが被膜の内部から表面まで達することはない。触媒被膜は5〜10マイクロメートルの厚さを有することができるので、上述したように、2〜7マイクロメートルの平均ミクロ‐粗さが最適の結果になる理由が容易に理解される。
【0025】
マクロ‐粗さプロフィールは高い表面成長を確実にするため、即ち、実際の表面は突出した表面よりも高くなるため、電流は広く分配され、発生ガス、特に酸素の集中は減少する。その結果、触媒被膜上の機械的応力は低下する。高い機械的安定性(ミクロ‐粗さに基づく)と低い機械的応力(マクロ‐粗さに基づく)の組合せ効果により、特に酸性度、温度、電流に関して臨界状態で陽極として使用される場合、本発明の電極の稼動寿命は実質的に増大する。
【0026】
機械的な接着力が良好なため、触媒被膜と金属基板との境界面に微小欠陥が発生し難くなる。この種の微小欠陥は不動態化する腐蝕生成物の核になる点を通常は構成するため、微小欠陥が存在しないことは稼動寿命の増大に更に貢献する。
【0027】
【実施例】
下記の実施例はチタン基板の触媒活性化により得られる酸素発生用の陽極に関する本発明のいくつかの具体例を示す。同じ原理が別の種類の電気触媒被膜の接着力を増大させるために適用できることは明らかであろう。例えば、塩素を発生する陽極の被膜、及び異なる母材、例えば、水素を発生する陰極を製造ためのニッケル基板に適用できる。
【0028】
実施例1
ASTM B265に従う厚さが0.2cmのチタン等級1のシートであって、35cm×35cmの表面を有するシートをアセトンで脱脂し、脱イオン水で洗浄し、空気で乾燥した。このシートを次いで鉄砂利GL18でショットブラスチングし、そして550℃で2時間アニール処理した。次に、最初のエッチングを20%塩酸中において沸点で10分間実施した。
【0029】
上記シートを次いで脱イオン水を用いて加圧下で洗浄し、そして粗さの検査を実施した。センチメートル当り18ピークを有する21マイクロメートルの平均粗さをプロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及び7.5マイクロメートルの下方限界値に基づいて検出した。
【0030】
次に最終エッチングを27重量%の硫酸中において90℃で180分間実施した。この処理の終了後、先在するマクロ‐粗さプロフィールは実質的に不変であり、そして1.5マイクロメートル平均のミクロ‐粗さプロフィールが、微視的組織分析により証明されるように、更にこれに重複されたことが判明した。
【0031】
このシートを次いでタンタルと酸化イリジウムから成る被膜であって、金属について65:35の重量比を有し、24g/m2の全荷重を有する被膜を用いて活性化した。この被膜は上記2種類の金属の塩化物の酸性溶液を用いる従来の技術に従って前記基板にブラッシングにより付与され、そして空気中において525℃で分解した。
【0032】
このようにして得られたシートは次いで150g/l硫酸溶液中において60℃で酸素を発生する陽極として特徴づけられる複数のサンプルに切断された。陽極電位は3kA/m2において1096mV及び10kA/m2において1120mVであることが検出された。引続いて、前記と同じ電解液を使用し、また対向電極として水素発生用の陰極を使用し、合格基準として全体のセル電圧を採用して、酸素発生下の寿命試験を30kA/m2で実施した。即ち、約4.5Vの初期のセル電圧が8Vの限界値を超えた時間を測定した。上述のサンプルについて、3120時間の平均値が得られた。
【0033】
実施例2
ASTM B265に従う厚さが0.2cmのチタン等級1のシートであって、35cm×35cmの寸法を有するシートをアセトンで脱脂し、脱イオン水で洗浄し、空気で乾燥した。このシートを次いで砂と水の混合ジェットでショットブラスチングした。
【0034】
最初のエッチングを20%塩酸中において沸点で10分間実施した。
上記シートを次いで脱イオン水を用いて加圧下で洗浄し、そして粗さの検査を実施した。センチメートル当り19ピークを有する20マイクロメートルの平均粗さをプロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及び7.5マイクロメートルの下方限界値に基づいて検出した。
【0035】
最終エッチングを20重量%の二水和シュウ酸中において沸点で60分間実施した。
この処理の終了後、先在するマクロ‐粗さプロフィールは実質的に不変であり、そして1マイクロメートル平均のミクロ‐粗さプロフィールが、微視的組織分析により証明されるように、更にこれに重複された。
【0036】
このシートを次いで先の実施例のタンタルと酸化イリジウムから成る被膜を用いて活性化した。このようにして得られたシートは次いで150g/l硫酸溶液中において60℃で酸素を発生する陽極として特徴づけられる2cm×2cmの寸法の複数のサンプルに切断された。陽極電位は3kA/m2において1100mV及び10kA/m2において1126mVであることが検出された。次いで寿命試験を先の実施例と同じように実施して、3050時間の平均寿命を検出した。
【0037】
実施例3
ASTM B265に従う厚さが0.2cmのチタン等級1のシートであって、35cm×35cmの寸法を有するシートをアセトンで脱脂し、脱イオン水で洗浄し、そして25重量%の塩酸中に95℃で180分間浸漬した。
【0038】
この処理の終了後に、金属の約150マイクロメートルの溶解に相当する600g/m2の減量が検出された。このシートを次いで脱イオン水で洗浄し、そして乾燥した。
【0039】
センチメートル当り41ピークを有する30マイクロメートルの平均マクロ‐粗さプロフィールをプロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及び7.5マイクロメートルの下方限界値に基づいて検出した。最終の酸エッチングを30重量%の硫酸中において95℃で180分間実施した。
【0040】
この処理の終了後、先在するマクロ‐粗さプロフィールは実質的に不変であり、6マイクロメートル平均のミクロ‐粗さプロフィールが、微視的組織分析により証明されるように、更にこれに重複された。
【0041】
このシートを次いで先の実施例と同じタンタルとイリジウムの被膜を用いて活性化した。
このようにして得られたシートを複数のサンプルに切断し、これらに実施例1で述べた寿命試験を実施した。
平均寿命は2200時間であった。
【0042】
実施例4
ASTM B265に従う厚さが1.5cmのチタン等級1のメッシュであって、100cm×50cmの寸法を有するメッシュ(突出表面比が2.2)をアセトンで脱脂し、脱イオン水で洗浄し、そして20重量%の塩酸中に85℃で120分間浸漬した。この処理を通じて、前記メッシュは約50マイクロメートルの溶解金属に相当する真表面の200g/m2の合計重量を喪失した。この処理の終了後、このシートを脱イオン水で洗浄し、乾燥し、そして粗さ測定を実施した。
【0043】
平均のマクロ‐粗さプロフィールは、プロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及び7.5マイクロメートルの下方限界値に基づいて、センチメートル当り35ピークを有する10マイクロメートルを示した。最終の酸エッチングを20重量%の硫酸中において90℃で120分間実施した。この処理の終了後、先在するマクロ‐粗さプロフィールは実質的に不変であり、1マイクロメートル平均のミクロ‐粗さプロフィールが、微視的組織分析により証明されるように、更にこれに重複された。
【0044】
このメッシュを次いで先の実施例と同じタンタルと酸化イリジウムの被膜を用いて活性化し、次いで複数のサンプルに切断し、実施例1で述べた寿命試験を実施した。
平均寿命は2450時間であった。
【0045】
比較例1
従来技術に相当する下記の方法に基づいて電極を準備した。ASTM B265に従う厚さが0.2cmのチタン等級1のシートであって、35cm×35cmの表面を有するシートをアセトンで脱脂し、脱イオン水で洗浄し、空気で乾燥した。このシートを次いで鉄砂利GL18でショットブラスチングし、そして550℃で2時間焼ならし処理した。次に、エッチングを20%塩酸中において沸点で30分間実施した。このシートを次いで脱イオン水を用いて加圧下で洗浄し、そして粗さの検査を実施した。センチメートル当り19ピークを有する20マイクロメートルの平均粗さプロフィールをプロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及び7.5マイクロメートルの下方限界値に基づいて検出した。
【0046】
前記前処理の終了時に、前記基板をタンタルと酸化イリジウムから成る前述の実施例と同じ被膜を用いて活性化した。このようにして得られた電極は150g/l硫酸溶液中において60℃で酸素を発生する陽極として特徴づけられた。3kA/m2において1095mV及び10kA/m2において1121mVの陽極電位が検出された。寿命試験を先の実施例と同じように実施して、600時間の寿命を検出した。
【0047】
比較例2
3個の電極を従来技術に相当する下記の方法に基づいて準備した。ASTM B265に従う厚さが0.2cmのチタン等級1のシートであって、35cm×35cmの表面を有するシートをアセトンで脱脂し、脱イオン水で洗浄し、空気で乾燥した。このシートを次いで鉄砂利GL18でショットブラスチングし、そして550℃で2時間焼ならし処理した。
【0048】
次いで前記3個の全サンプルを20%塩酸中において沸点で30分間エッチングした。
これらのシートを次いで脱イオン水を用いて加圧下で洗浄し、そして粗さの検査を実施した。前記3個のサンプル表面上に、センチメートル当り16〜18ピークを有する19〜21マイクロメートルの平均粗さプロフィールがプロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及び7.5マイクロメートルの下方限界値に基づいて検出された。前記3個のサンプル表面上に中間層を9:1のモル比のチタンと酸化ニオブに基づいて形成した。即ち、この中間層は前記2種類の金属の塩化物を含有する弱酸性の水性塗料を塗布し、そして空気中450℃で焼成する工程を4回繰返すことにより得られる。
【0049】
前記粗さプロフィールを次いで再検査した結果、センチメートル当り16〜18ピークを有する15〜17マイクロメートルの値が検出された。
これらのサンプルはタンタルと酸化イリジウムから成る前述の実施例と同じ被膜を用いて活性化されて、150g/l硫酸溶液中において60℃で酸素を発生する陽極として特徴づけられた。3kA/m2において1095〜1160mVの陽極電位及び10kA/m2において1033〜1120mVの陽極電位が検出された。寿命試験を先の実施例と同じように実施して、2600時間、2420時間、及び675時間の寿命をそれぞれ検出した。
Claims (22)
- プロフィルメーターによる10マイクロメートルの上方限界値及びプロフィルメーターによる7.5マイクロメートルの下方限界値を基準にして30〜70マイクロメートルの平均粗さ(Ra)の値を有するマクロ‐粗さプロフィール及び前記マクロ‐粗さプロフィールの平均粗さ(Ra)の5〜20%である平均粗さ(Ra)の値を有するミクロ‐粗さプロフィールの組合せから生じる表面プロフィールを有する金属基板及び前記金属基板に付与された電気触媒被膜を含むガス発生用の電極。
- 前記電気触媒被膜は少なくとも1つの貴金属又はその酸化物を含む請求項1記載の電極。
- 前記金属基板は少なくとも1つの弁金属を含む請求項2記載の電極。
- 前記弁金属はチタンである請求項3記載の電極。
- 前記金属基板はニッケル基板である請求項2記載の電極。
- 前記マクロ‐粗さプロフィールの平均粗さ(Ra)は少なくとも5マイクロメートルである請求項1記載の電極。
- 前記マクロ‐粗さプロフィールは
a)サンドブラスト工程、及び
b)マクロ‐粗さプロフィールを形成する予備の酸エッチング工程、
から選ばれた少なくとも1つの工程の手段により得られ、そして前記ミクロ‐粗さプロフィールはミクロ‐粗さプロフィールを形成する最終の酸エッチングにより得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極の製造方法。 - 前記予備の酸エッチングは塩酸を用いて実施される請求項7記載の方法。
- 前記塩酸の重量濃度は15〜25%であり、持続時間は60〜120分であり、また温度は90℃〜沸点である請求項8記載の方法。
- 前記サンドブラスト工程に続いてアニール処理と前記予備の酸エッチングが順番に実施される請求項7記載の方法。
- 前記予備の酸エッチングはフッ化水素酸と硝酸との混合物及び溶融塩を含む群から選ばれる薬剤を用いて実施される請求項10記載の方法。
- 前記予備の酸エッチングは塩酸を用いて実施される請求項10記載の方法。
- 前記塩酸の重量濃度は15〜25%であり、温度は80℃〜沸点であり、また持続時間は5〜30分である請求項12記載の方法。
- 前記最終の酸エッチングは金属基板上に吸着した該金属の陰イオン錯体を形成できる酸又は酸混合物を含む薬剤を用いて実施される請求項7記載の方法。
- 前記薬剤は硫酸及びシュウ酸を含む群から選ばれる請求項14記載の方法。
- 前記薬剤は20〜30%の重量濃度を有する硫酸であり、温度は80℃〜沸点であり、前記最終の酸エッチングの持続時間は60〜180分である請求項14記載の方法。
- 請求項1〜6に記載の電極の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのガス状生成物の発生を含む電気分解の方法。
- 前記少なくとも1つのガス状生成物は酸素、塩素及び水素を含む群から選ばれる請求項17記載の方法。
- 請求項1〜6に記載の電極の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのガス状生成物の発生を含む金属の電気メッキの方法。
- 前記少なくとも1つのガス状生成物は酸素である請求項19記載の方法。
- 前記のガスの発生は10kA/m2より高い電流密度で生じる請求項19記載の方法。
- 前記のガスの発生はフッ化物イオンを含有する電解液中で生じる請求項19記載の方法。
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