JP4943099B2 - ベリリウム銅合金 - Google Patents

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Description

本発明は、ベリリウム(Be)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)を含むベリリウム銅合金、及び、このベリリウム銅合金を製造する製造方法に関する。
従来、ばね材、リレー、端子、コネクターやリードフレーム等(以下、リードフレーム等)として、ベリリウム(Be)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)を含む銅合金(以下、ベリリウム銅合金)が広く用いられている。このようなベリリウム銅合金には、強度(例えば、0.2%耐力)及び導電率(例えば、IACS;International Annealed Copper Standard)がいずれも所望の値以上となることが求められる。
強度及び導電率の向上を図ったベリリウム銅合金として、Be-Niの質量比(mass%)を工夫したベリリウム銅合金が提案されている(例えば、非特許文献1)。具体的には、ベリリウム銅合金の質量比(mass%)をCuNi2Be0.18としたり、CuNi1Be0.25としたりすることによって、時効硬化処理による硬化で優れた強度のベリリウム銅合金が得られ、ベリリウム銅合金の導電率が50〜60%IACSとなる(以下、第1のベリリウム銅合金)。
また、すず(Sn)、ジルコニウム(Zr)やチタン(Ti)を加えることによって、強度及び導電率の向上を図ったベリリウム銅合金も提案されている(特許文献1)。具体的には、ベリリウム銅合金の質量比(mass%)をCuNi0.4-1.25Be0.15-0.5Zr(and/orTi)0.06-1.0Sn0-0.25とすることによって、ベリリウム銅合金の強度が556MPaとなり、ベリリウム銅合金の導電率が66%IACSとなる(以下、第2のベリリウム銅合金)。
さらに、Be及びNiの含有比(以下、Be/Ni比)を工夫することによって、圧延用のロールなどのように比較的大きな部材として用いられるベリリウム銅合金の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2)。具体的には、ベリリウム銅合金の質量比(mass%)をCuNi1.2-2.6Be0.1-0.45とし、Be/Ni比を5.5〜7.5とすることによって、ベリリウム銅合金の強度及び導電率との組合せが681MPa-68.4%IACS(40.2m/Ωmm2)や711MPa-68.2%IACS(40.1m/Ωmm2)となる(以下、第3のベリリウム銅合金)。
しかしながら、上述したいずれのベリリウム銅合金も、リードフレーム等として十分な強度及び十分な導電率をともに備えていなかった。具体的には、上述したベリリウム銅合金は、0.2%耐力が650MPa以上であり、かつ、IACSが70%以上であるという特性を有していなかった。
また、上述した第3のベリリウム銅合金は、圧延用のロールなどのように比較的大きな部材として用いられる場合には有用であるが、ベリリウム銅合金を薄板状や帯状に形成するために、固溶熱処理の後に圧延処理を行うと、ベリリウム銅合金の導電率が44〜54%IACSに低下してしまう。
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、薄板状や帯状の形状を有していても、十分な強度及び十分な導電率をともに備えたベリリウム銅合金、及び、このベリリウム銅合金を製造する製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の特徴は、0.05mm〜0.5mmの厚さを有するベリリウム銅合金を製造する製造方法が、Cu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)の質量比(mass%)を有する銅合金を、前記Ni及び前記Beが前記Cuに固溶する温度域である固溶温度域となるまで加熱した後に、前記固溶温度域となるまで加熱された前記銅合金を所定の冷却速度で急冷する固溶熱工程と、前記固溶熱工程で前記銅合金が急冷された後に、前記Ni及び前記Beが析出しない温度域で、前記銅合金に塑性歪みを加える冷間圧延工程と、前記Ni及び前記Beが析出する温度域である時効硬化温度域で、前記冷間圧延工程で塑性歪みが加えられた前記銅合金を所定の時効硬化時間に亘って保持する時効硬化工程とを含み、前記冷間圧延工程及び前記時効硬化工程は、少なくとも1回以上繰り返して行われることを要旨とする。
かかる特徴によれば、ベリリウム銅合金の質量比(mass%)を、Cu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)とすることにより、Ni及びBeによって構成される析出物の析出を促し、ベリリウム銅合金の導電率(IACS)の向上を図ることができる。また、Ni及びBeの質量比(mass%)を低減することにより、ベリリウム銅合金の導電率(IACS)を全体として向上させることができる。
また、冷間圧延工程及び時効硬化工程が少なくとも1回以上繰り返して行われることにより、Ni及びBeの質量比(mass%)を低減したために低下するベリリウム銅合金の
強度(0.2%耐力)を向上させることができる。
すなわち、上述した製造方法によれば、ベリリウム銅合金が薄板状や帯状の形状を有していても、リードフレーム等として十分な強度及び十分な導電率をともに備えたベリリウム銅合金を製造することができる。
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴において、前記固溶温度域が、850℃〜1000℃の範囲内であり、前記所定の冷却速度が、100℃s -1 以上であることを要旨とする。
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴において、1回の前記冷間圧延工程で前記銅合金に加えられる前記塑性歪みの量が、0.05以上であり、前記冷間圧延工程で前記銅合金に加えられる前記塑性歪みの累計量が、0.3以上であることを要旨とする。
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴において、前記固溶熱工程で前記銅合金が急冷された後に最初に行われる前記冷間圧延工程で前記銅合金に加えられる前記塑性歪みの量が、2回目以降に行われる前記冷間圧延工程で前記銅合金に加えられる前記塑性歪みの量以上であることを要旨とする。
本発明の第5の特徴は、本発明の第1の特徴において、前記時効硬化温度域が、400℃〜530℃の範囲内であり、前記所定の時効硬化時間が、3分〜24時間の範囲内であることを要旨とする。
本発明の第6の特徴は、0.05mm〜0.5mmの厚さを有し、かつ、Cu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)の質量比(mass%)を有しており、650MPa以上の0.2%耐力及び70%IACS以上の導電率をベリリウム銅合金が有することを要旨とする。
本発明の第7の特徴は、本発明の第6の特徴において、前記ベリリウム銅合金に形成された結晶粒の平均結晶粒径が5μm〜35μmの範囲内であることを要旨とする。
本発明の第8の特徴は、前記ベリリウム銅合金の引張強さと前記ベリリウム銅合金の0.2%耐力との差が40MPa以上であることを要旨とする。
本発明によれば、薄板状や帯状の形状を有していても、十分な強度及び十分な導電率をともに備えたベリリウム銅合金、及び、このベリリウム銅合金を製造する製造方法を提供することができる。
[実施形態]
(ベリリウム銅合金)
以下において、本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金10を示す概観図である。
図1に示すように、ベリリウム銅合金10は、薄板状又は帯状の形状を有しており、ベリリウム銅合金10の厚さaは、約0.05mm〜0.5mmの範囲内である。なお、ベリリウム銅合金の厚さaを約0.05mm〜0.5mmの範囲内とした理由は、ばね材、リレー、端子、コネクターやリードフレーム等(以下、リードフレーム等)として最適な厚みとするためである。
また、ベリリウム銅合金の組成比率は、これを質量比(mass%)で表すと、Cu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)である。
なお、ベリリウム銅合金の質量比(mass%)をCu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)とした理由は、以下に示す通りである。
具体的には、Niの質量比(mass%)を1.0未満とし、Beの質量比(mass%)を0.15未満とすると、結晶粒が粗大化してしまって、ベリリウム銅合金の脆弱化を招くためである。また、Niの質量比(mass%)を2.0よりも大きくし、Beの質量比(mass%)を0.35よりも大きくすると、Ni及びBeによって構成される粗大な析出物の影響で、時効硬化工程にて逆に軟化を引き起こして、所望の強度(0.2%耐力)を得ることができないためである。
Ni/Be比(a/b)を5.5〜6.5の範囲内とした理由は、Niの原子量(58.7)とBeの原子量(9.0)とが異なっていても、NiとBeとが析出物に1:1で含まれるようにするためである。このように、NiとBeとが析出物に1:1で含まれるようにすることによって、ベリリウム銅合金の導電率が向上する。
また、Niの原子量(58.7)とBeの原子量(9.0)比は、58.7/9.0≒6.5であるにもかかわらず、Ni/Be比(a/b)を5.5〜6.5の範囲内とずらした理由は、Cuに固溶したNi及びBeが析出する際に、析出しないBeがCu内に残存することを考慮したためである。
なお、Ni/Be比(a/b)の詳細については、「日本金属学会誌」、第36巻、pp.1034、1972、及び、「銅と銅合金」、第41巻1号、pp.7、左段L.6〜L.15、2002に開示されている。
さらに、ベリリウム銅合金は、650MPa以上の0.2%耐力及び70%IACS以上の導電率を有する。また、ベリリウム銅合金の結晶粒の平均結晶粒径は、5μm〜35μmの範囲内である。
さらに、ベリリウム銅合金の引張強さと0.2%耐力との差は、40MPa以上である。なお、引張強さ(UTS;UltimateTensileStrength)とは、ベリリウム銅合金10が破断するまでベリリウム銅合金10を変位させた際に、ベリリウム銅合金10に加えられた最大応力を示している。
このように、ベリリウム銅合金の引張強さと0.2%耐力との差を40MPa以上とした理由は、ベリリウム銅合金をリードフレーム等として用いる場合に、ベリリウム銅合金に曲げ加工を加えても、ベリリウム銅合金が破断しにくいためである。すなわち、ベリリウム銅合金を加工しやすいためである。
(ベリリウム銅合金の製造方法)
以下において、本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金10の製造方法を示すフロー図である。
図2に示すように、ステップ100において、Cu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)の質量比(mass%)を有する銅合金を高周波溶解炉で溶解するとともに、溶解された銅合金を鋳造してビレット状の形状を有する銅合金を取得する。
ステップ110において、ステップ100でビレット状の形状に鋳造された銅合金を熱間において圧延装置で圧延する。
ステップ120において、ステップ110で熱間において圧延された銅合金を冷間において圧延装置で圧延する。
このように、ビレット状の形状に鋳造された銅合金をステップ110及びステップ120で圧延してストリップ状の形状を有する銅合金を取得する。
ステップ130において、ストリップ状の形状を有する銅合金を銅合金の過時効温度以上となるまで加熱する。
ステップ140において、ステップ130で過時効温度以上となるまで加熱された銅合金を冷間において圧延装置で圧延する。
このように、ストリップ状の形状を有する銅合金をステップ130及びステップ140で圧延してさらに薄いストリップ状の形状を有する銅合金を取得する。なお、ステップ110及びステップ120で取得された銅合金をさらに薄いストリップ状の形状とする必要がなければ、ステップ130及びステップ140の処理は行われなくてもよい。
ステップ150において、ステップ140で冷間において圧延された銅合金を固溶温度域となるまで加熱した後に、固溶温度域となるまで加熱された銅合金を所定の冷却速度で急冷する。具体的には、ステップ140で冷間において圧延された銅合金を約850℃〜1000℃の範囲内(固溶温度域)となるまで加熱した後に、固溶温度域となるまで加熱された銅合金を約100℃s -1以上(所定の冷却速度)で急冷する。
なお、ステップ150で急冷された銅合金の結晶粒の平均結晶粒径は、約5μm〜35μmの範囲内である。
ステップ160において、Cuに固溶したNi及びBeが析出しない温度域(冷間)で、銅合金に塑性歪みを加える。具体的には、銅合金には、約0.05〜0.4の範囲内の塑性歪み量が加えられる。すなわち、銅合金は、約5%〜40%の範囲内の圧延率で圧延される。
なお、1回の冷間圧延処理で加えられる塑性歪み量を約0.05以上とした理由は、ステップ170の処理(時効硬化処理)で、所望の強度(0.2%耐力)や導電率(IACS)を得るために、後述する所定の時効硬化時間が長くなることを防止するためである。
また、塑性歪み量(ε)は、圧延される前の厚みを”L”とし、圧延された後の厚みを”l”とした場合に、ε=(L-l)/Lで表される。
ステップ170において、Cuに固溶したNi及びBeが析出する温度域である時効硬化温度域で、ステップ160で圧延された銅合金を所定の時効硬化時間に亘って保持する。具体的には、ステップ160で圧延された銅合金を約400℃〜530℃の範囲内で約3分〜24時間に亘って保持する。
なお、時効硬化温度を約400℃以上とした理由は、時効硬化処理で十分な導電率(IACS)を得るためであり、時効硬化温度を約530℃以下とした理由は、時効硬化処理で十分な強度(0.2%耐力)を得るためである。
ステップ180において、ステップ160及びステップ170の処理が繰り返される回数である繰り返し回数が所定の繰り返し回数であるか否かを判定する。ステップ160及びステップ170の処理の繰り返し回数が所定の繰り返し回数である場合には、製造方法に係るフローを終了し、ステップ160及びステップ170の処理の繰り返し回数が所定の繰り返し回数でない場合には、ステップ160の処理に戻る。
なお、所定の繰り返し回数は、少なくとも1回以上である。すなわち、ステップ160及びステップ170の処理は、ステップ150の処理(固溶熱処理)が行われた後に、少なくとも2回以上行われる。
ここで、ステップ150の処理(固溶熱処理)が行われた後に最初に行われるステップ160の処理(冷間圧延処理)で銅合金に加えられる塑性歪み量(圧延率)は、2回目以降に行われるステップ160の処理(冷間圧延処理)で銅合金に加えられる塑性歪み量(圧延率)以上である。
なお、最初に行われるステップ160の処理で銅合金に加えられる塑性歪み量を2回目以降に行われるステップ160の処理で銅合金に加えられる塑性歪み量以上とした理由は、以下に示す通りである。具体的には、2回目以降に行われるステップ160の処理で塑性歪みが加えられる銅合金は、最初に行われるステップ160及びステップ170の処理で既に硬化しており、2回目以降に行われるステップ160の処理で、最初に行われるステップ160の処理よりも大きな塑性歪みを加えることは好ましくないためである。
また、ステップ160の処理(冷間圧延処理)で銅合金に加えられる塑性歪みの累計量は、0.3以上である。すなわち、銅合金は、ステップ160の処理が繰り返されることによって、圧延率の累計値が30%以上となるように圧延される。
なお、所定の繰り返し回数に亘って繰り返される冷間圧延処理で加えられる塑性歪みの累計量を約0.30以上とした理由は、ステップ170の処理(時効硬化処理)で、所望の強度(0.2%耐力)や導電率(IACS)を得るために所定の時効硬化時間が長くなることを防止するためである。
(作用及び効果)
本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金10の製造方法によれば、ベリリウム銅合金10の質量比(mass%)を、Cu 100-(a+b) Ni a Be b (1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)とすることにより、Ni及びBeによって構成される析出物の析出を促し、ベリリウム銅合金10の導電率(IACS)の向上を図ることができる。また、ASTM B442で規定されているC17510(Cu100-(a+b)NiaBeb(1.4≦a≦2.2、0.2≦b≦0.6)よりもNi及びBeの質量比(mass%)を低減することにより、ベリリウム銅合金10の導電率(IACS)を全体として向上させることができる。
また、冷間圧延工程及び時効硬化工程を少なくとも1回以上繰り返して行うことにより、Ni及びBeの質量比(mass%)を低減したために低下するベリリウム銅合金10の強度(0.2%耐力)を向上させることができる。
すなわち、上述した製造方法によれば、ベリリウム銅合金10が薄板状や帯状の形状を有していても、リードフレーム等として十分な強度及び十分な導電率をともに備えたベリリウム銅合金10を得ることができる。
さらに具体的には、従来の製造方法では、固溶熱処理後に行われる冷間圧延処理及び時効硬化処理は、製造工程の煩雑化を回避するという観点、及び、1回でも十分な強度(0.2%耐力)が得られるという観点から、繰り返して行われることがなかった。
また、従来の製造方法では、固溶熱処理後に冷間圧延処理及び時効硬化処理が行われると、ベリリウム銅合金の強度(0.2%耐力)が高くなってしまい、冷間圧延処理を繰り返して行うことが困難であった。
これに対して、本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金10の製造方法によれば、Ni及びBeの質量比(mass%)を低減することにより、ベリリウム銅合金10の導電率(IACS)を全体として向上させ、冷間圧延工程及び時効硬化工程を少なくとも1回以上繰り返して行うことにより、Ni及びBeの質量比(mass%)を低減したために低下するベリリウム銅合金10の強度(0.2%耐力)を向上させる点で、従来の製造方法と大きく異なる。
また、固溶熱処理(ステップ150)において、固溶温度域が約850℃〜1000℃の範囲内であり、冷却速度が100℃s -1 であることにより、ベリリウム銅合金10の結晶粒の平均結晶粒径を5μm〜35μmの範囲内とすることができる。
さらに、1回の冷間圧延処理(ステップ160の処理)で加えられる塑性歪み量を約0.05以上とし、冷間圧延処理(ステップ160の処理)で加えられる塑性歪みの累計量を約0.30以上とすることにより、所望の強度(0.2%耐力)や導電率(IACS)を得るために、時効硬化処理(ステップ170の処理)における所定の時効硬化時間が長くなることを防止することができる。
また、最初に行われる冷間圧延処理(ステップ160の処理)で銅合金に加えられる塑性歪み量を2回目以降に行われる冷間圧延処理(ステップ160の処理)で銅合金に加えられる塑性歪み量以上とすることにより、最初に行われる冷間圧延処理で銅合金が硬化した場合であっても、2回目以降に行われる冷間圧延処理で容易に塑性歪みを銅合金に加えることができる。
さらに、時効硬化処理(ステップ170)において、時効硬化温度を約400℃〜530℃の範囲内とすることにより、リードフレーム等として十分な導電率(IACS)及び十分な強度(0.2%耐力)を有するベリリウム銅合金10を得ることができる。
[実施例]
以下において、上述した製造方法によって製造されたベリリウム銅合金10の評価結果について説明する。表1は、ベリリウム銅合金の組成比率を質量比(mass%)で示すとともに、NiとBeとの比であるNi/Be比を示す表である。
表1に示すように、質量比(mass%)で表される組成比率が異なる複数の銅合金(Lot.A〜Lot.E)を準備した。Lot.Aは、本発明の一実施例に係る組成比率を有する銅合金であり、Lot.B〜LotEは、比較例に係る組成比率を有する銅合金である。具体的には、Lot.Bは、Niの質量比(mass%)が2.0よりも大きく、Beの質量比(mass%)が0.35よりも大きく、本発明に係る銅合金と異なる。Lot.Cは、Niの質量比(mass%)が1.0未満であり、本発明に係る銅合金と異なる。Lot.Dは、Beの質量比(mass%)が0.15未満であり、Ni/Be比が6.5よりも大きく、本発明に係る銅合金と異なる。Lot.Eは、Ni/Be比が5.5未満であり、本発明に係る銅合金と異なる。
表2は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造されたベリリウム銅合金と、比較例に係る製造方法によって製造されたベリリウム銅合金との比較結果を示す表である。
具体的には、上述した組成比率を有する銅合金(Lot.A〜Lot.E)を高周波溶解炉でそれぞれ溶解して、直径80mm及び高さ100mmである円柱状の鋳塊を取得した。また、この円柱状の鋳塊を6時間に亘って900℃で保持することによって、円柱状の鋳塊を均質化して、厚さ10mm、幅50mm及び長さ60mmである板状の形状を有するサンプル部材を円柱状の鋳塊から切り出した。さらに、熱間圧延処理、冷間圧延処理及び軟化熱処理をサンプル部材に適宜加えることによって、厚さが0.4mmとなるようにサンプル部材を加工した。
次に、厚さが0.4mmとなるように加工されたサンプル部材を900℃に加熱して、Ni及びBeをCuに固溶させた後に、冷間圧延処理及び時効硬化処理を表2に示す条件で適宜繰り返した。
なお、表2では、平均結晶粒径は、求積法によって求めた値を示している(JIS H0501を参照)。また、疲労特性は、表面の最大応力が400MPaとなるようにベリリウム銅合金を繰り返して曲げ変位させることによってベリリウム銅合金が破断するまでに曲げ変位させられた回数を示している(JCBA(日本伸銅協会) T308、又は、JIS Z2273を参照)。
さらに、耐応力緩和特性は、表面の最大応力が0.2%耐力の75%となるようにベリリウム銅合金を曲げ変位させた状態で、1000時間に亘って150℃でベリリウム銅合金を保持した後に、ベリリウム銅合金に残留する応力である残留応力によって算出された値を示している。具体的には、耐応力緩和特性は、ベリリウム銅合金に加えられた初期応力と緩和応力との差を初期応力で除した値を示している(JCBA T309、又は、ASTM E328を参照)。
また、曲げ成形性は、ベリリウム銅合金をV字状に90°曲げた際に、V字状に曲げられたベリリウム銅合金の部分に割れが生じない最大曲げ半径Rをサンプル部材の厚さで除した値を示している(JIS Z2248を参照)。
表2に示すように、本発明の一実施例に係る銅合金(Lot.A)を用いて、上述した製造方法によって製造されたベリリウム銅合金(Sample No.1〜3)では、平均結晶粒径、0.2%耐力及び導電率の点で、いずれも所望の値を得られた。
具体的には、Sample No.1〜3に示すように、平均結晶粒径が5μm〜35μmの範囲内であり、0.2%耐力が650MPa以上であり、導電率が70%IACS以上であるベリリウム銅合金が得られることが確認された。また、Sample No.1〜3に示すように、疲労特性、耐応力緩和特性及び曲げ成形性で良好な特性を有するベリリウム銅合金が得られることが確認された。さらに、Sample No.1〜3に示すように、0.2%耐力が650MPa以上であり、かつ、0.2%耐力と引張強さとの差が40MPa以上であるベリリウム銅合金が得られることが確認された。

一方、比較例に係る製造方法によって製造されたベリリウム銅合金(Sample No.4〜9)では、平均結晶粒径、0.2%耐力及び導電率の点で、いずれも所望の値を得ることができなかった。
具体的には、Sample No.4及びNo.5に示すように、本発明の一実施例に係る組成比率を有する銅合金を用いたにもかかわらず、650MPa以上の0.2%耐力及び70%IACS以上の導電率をともに満たす特性を有するベリリウム銅合金が得られないことが確認された。さらに具体的には、Sample No.4に示すように、冷間圧延処理のみを繰り返して、時効硬化処理を繰り返さないと、ベリリウム銅合金の耐応力緩和特性や曲げ成形性などが悪化してしまうことが確認された。
Sample No.6、No.7及びNo.9に示すように、上述した製造方法によって製造されたにもかかわらず、本発明に係る銅合金とは異なる組成比率を有する銅合金を用いると、650MPa以上の0.2%耐力及び70%IACS以上の導電率をともに満たす特性を有するベリリウム銅合金が得られないことが確認された。
Sample No.8に示すように、本発明に係る銅合金とは異なる組成比率を有する銅合金を用いて、上述した製造方法とは異なる製造方法によって製造されると、650MPa以上の0.2%耐力及び70%IACS以上の導電率をともに満たす特性を有するベリリウム銅合金が得られないことが確認された。
以下において、本発明の一実施例に係るベリリウム銅合金の結晶粒と、比較例に係るベリリウム銅合金の結晶粒との比較結果について、図面を参照しながら説明する。図3は、上述したSample No.7のベリリウム銅合金の結晶粒を示す図であり、図4は、上述したSample No.1のベリリウム銅合金の結晶粒を示す図である。
図3及び図4に示すように、上述したSample No.1のベリリウム銅合金では、上述したSample No.7のベリリウム銅合金よりも、結晶粒の平均結晶粒径が著しく小さいことが確認された。
本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金10を示す概観図である。 本発明の一実施形態に係るベリリウム銅合金10の製造方法を示すフロー図である。 比較例に係るベリリウム銅合金の結晶粒を示す図である。 本発明の一実施例に係るベリリウム銅合金の結晶粒を示す図である。
符号の説明
10・・・ベリリウム銅合金

Claims (3)

  1. 0.05mm〜0.5mmの厚さを有し、かつ、Cu100-(a+b)NiaBeb(1.0≦a≦2.0、0.15≦b≦0.35、5.5≦a/b≦6.5)の質量比(mass%)を有しており、650MPa以上の0.2%耐力及び70%IACS以上の導電率を有することを特徴とするベリリウム銅合金。
  2. 前記ベリリウム銅合金の結晶粒の平均結晶粒径が5μm〜35μmの範囲内であることを特徴とする請求項に記載のベリリウム銅合金。
  3. 前記ベリリウム銅合金の引張強さと前記ベリリウム銅合金の0.2%耐力との差が40MPa以上であることを特徴とする請求項又はに記載のベリリウム銅合金。
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